説明

吸引型およびその製造方法ならびに異方性導電膜およびその製造方法

【課題】型裏面に大きな空間を形成しなくても粒子吸引性に優れる吸引型を提供する。
【解決手段】吸引型10は、多数の吸引孔12を備える。吸引孔12は、型表面Sから吸引される粒子を収容可能な収容部12aと、収容部12aの底部から型裏面BSにかけて貫通する貫通孔12bとを有している。貫通孔12bの収容部12a側における開口は、粒子を通過させない大きさに形成されており、かつ、貫通孔12bの型裏面BS側における開口は、貫通孔12bの収容部12a側における開口よりも大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引型およびその製造方法ならびに異方性導電膜およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粒子を規則的に配列させ、その規則性を利用して、各種機能の実現が図られている。例えば、電気・電子機器等の分野では、接着性樹脂フィルムに導電性粒子を規則的に配列させることにより異方導電性を付与した異方性導電膜が使用されている。
【0003】
粒子を配列させる手法としては、吸引型を利用する方法が知られている。例えば、特許文献1には、導電性粒子より小さい吸引孔が所定の配置で形成されている吸着面を有する吸着装置を用い、この吸着装置の吸着面に導電性粒子を吸着させて所定の配列を形成する方法が開示されている。この同文献1には、さらに、導電性粒子が所定の配列で吸着している吸着面に接着剤層を押しつけ、接着剤層内に導電性粒子を取り込むことにより製造される異方性導電膜が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ドライエッチングにより規則的に配列形成した多数の吸引孔を有するSi製の吸引型が開示されている。図11に示すように、当該吸引型100において、各吸引孔102の底部には、型裏面に形成された一つの大きな空間104に一定径にて連通する貫通孔106が形成されている。この同文献2には、さらに、当該吸引型100の空間104に隣接して多孔質部材108を配置して吸引を行い、吸引孔102内に導電性粒子を収容することにより規則的な配列を形成する点、さらに、この吸引型100を用いて規則的に配列させた導電性粒子を有する異方性導電膜およびその製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−332461号公報
【特許文献2】特開2008−300306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術は以下の点で問題があった。すなわち、特許文献1に示されるように、粒子より小さい吸引孔を有する吸引型を用いて粒子を吸引した場合、吸引孔に収容されない状態で粒子が吸引されるため、孔部以外の型表面や吸引粒子に静電気力等によって付着した余剰粒子と吸引粒子とを分離することがそもそも難しい。無理に余剰粒子を除去しようとすれば、一部の吸引粒子も一緒に除去されてしまい、せっかく形成した粒子配列が乱れてしまうおそれがある。
【0007】
また、図11に示されるように、吸引型100裏面の空間104に隣接させて多孔質部材108を配置して吸引を行うと、吸引安定性が増す。そのため、吸引孔102への粒子吸引率が高まり、粒子を規則的に配列させやすくなると考えられる。しかしながら、空間104を形成すると型強度が低下してしまう。また、余分な型加工も発生することから、型費が増加する。さらに、ドライエッチング法は加工領域が狭いことから、吸引型100の大面積化が難しいといった問題もある。
【0008】
一方、空間104の形成を止めることも考えられるが、この場合には、多孔質部材108の孔部がない部位に貫通孔106の開口が位置する頻度が増加する。そのため、吸引不能な吸引孔102が生じやすくなり、吸引孔102への粒子吸引率が低下してしまうものと考えられる。
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、型裏面に大きな空間を形成しなくても粒子吸引性に優れる吸引型を提供することにある。また、上記吸引型を比較的大面積で得ることが可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸引型は、型表面から吸引される粒子を収容可能な収容部と、上記収容部の底部から型裏面にかけて貫通する貫通孔とを有する吸引孔を多数備え、上記貫通孔の収容部側における開口は、上記粒子を通過させない大きさに形成されており、かつ、上記貫通孔の型裏面側における開口は、上記貫通孔の収容部側における開口よりも大きく形成されていることを要旨とする。
【0011】
ここで、上記収容部の内壁は、型表面側から型裏面側に向かって先細るテーパ状に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記収容部は、一つの粒子を収容可能な大きさに形成されていることが好ましい。
【0013】
また、上記吸引孔は、上記収容部の底部の大きさが、上記粒子の粒子径の1倍以上2倍未満、上記収容部の深さが、上記粒子の粒子径の1倍以上2倍未満、上記貫通孔の収容部側における開口が、上記粒子の粒子径の0.1倍以上1倍未満に設定されていることが好ましい。
【0014】
また、上記吸引型は、金属めっきより形成されていることが好ましい。
【0015】
また、上記吸引型は、その外周に支持体が固定されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る吸引型の製造方法は、基材表面に、吸引孔の配置、収容部の形状に対応させてフォトレジストパターンを形成する工程と、上記基材表面から上記フォトレジストパターンの上表面にかけて、上記フォトレジストパターンの上表面が一部露出された状態となるように金属めっきを形成する工程と、フォトレジストパターンを除去する工程とを少なくとも有することを要旨とする。
【0017】
ここで、上記金属めっきは、電解金属めっきであることが好ましい。
【0018】
また、上記フォトレジストパターンは、X線リソグラフィ法にて形成されることが好ましい。
【0019】
本発明に係る異方性導電膜は、上述した本発明に係る吸引型を利用して配列させた導電性粒子を有することを要旨とする。
【0020】
本発明に係る異方性導電膜の製造方法は、上述した本発明に係る吸引型の吸引孔内に導電性粒子を吸引、保持させる吸引・保持工程と、上記吸引孔内に保持された導電性粒子を第1の接着層に直接転写する、あるいは、上記吸引孔内に保持された導電性粒子を粘着体に一次転写し、上記一次転写された導電性粒子を第1の接着層に二次転写する転写工程と、上記第1の接着層の粒子転写面に第2の接着層を積層する積層工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る吸引型は、型表面から吸引される粒子を収容可能な収容部と、上記収容部の底部から型裏面にかけて貫通する貫通孔とを有する吸引孔を多数備え、上記貫通孔の収容部側における開口は、上記粒子を通過させない大きさに形成されており、かつ、上記貫通孔の型裏面側における開口は、上記貫通孔の収容部側における開口よりも大きく形成されている。
【0022】
そのため、吸引力を安定させるために型裏面に多孔質部材を当接させて使用した場合に、従来に比べ、貫通孔の型裏面側における開口が多孔質部材の孔部をより多く捕捉することが可能となる。
【0023】
したがって、型裏面に大きな空間を形成しなくても吸引孔の吸引力が低下し難く、粒子吸引性に優れる。また、型裏面に大きな空間を形成する必要がないので、型強度の向上に有利である。また、上記吸引型は、めっき技術を適用して形成することが可能であるため、大面積化にも有利である。
【0024】
ここで、上記収容部の内壁が、型表面側から型裏面側に向かって先細るテーパ状に形成されている場合には、テーパ状の内壁に沿って粒子が吸引されやすくなる。そのため、粒子吸引性の向上に寄与しやすくなる。また、吸引された粒子が収容部内で動き難くなり、規則的に粒子を配列させる際に有利である。
【0025】
また、上記収容部が、一つの粒子を収容可能な大きさに形成されている場合には、収容部内に一つずつ粒子が収容・保持されやすくなる。そのため、一つずつ粒子を離間させて配列させるのに有利である。
【0026】
また、上記吸引孔における収容部の底部の径、収容部の深さおよび貫通孔の収容部側における開口が、上記粒子の粒子径に対して特定範囲内の大きさに設定されている場合には、収容部内に一つずつ粒子を収容する粒子収容性、収容部内での粒子保持性、粒子吸引性のバランスに優れる。
【0027】
また、上記吸引型が金属めっきより形成されている場合には、型強度、製造性、コストパフォーマンスに優れる。
【0028】
また、当該吸引型の外周に支持体が固定されている場合には、吸引型の取扱い性を向上させることができる。
【0029】
本発明に係る吸引型の製造方法は、基材表面に、吸引孔の配置、収容部の形状に対応させてフォトレジストパターンを形成する工程と、上記基材表面から上記フォトレジストパターンの上表面にかけて、上記フォトレジストパターンの上表面が一部露出された状態となるように金属めっきを形成する工程と、フォトレジストパターンを除去する工程とを少なくとも有する。
【0030】
そのため、上述した収容部および貫通孔を有する吸引孔を多数備えた吸引型を、比較的簡単かつ大面積で得ることができる。
【0031】
ここで、上記金属めっきが電解金属めっきである場合には、型の厚みを厚く形成しやすく、型強度の向上に寄与できる等の利点がある。
【0032】
また、上記フォトレジストパターンをX線リソグラフィ法にて形成する場合には、波長が短いことから、より微細なパターンを形成しやすい等の利点がある。
【0033】
本発明に係る異方性導電膜は、上述した本発明に係る吸引型を利用して配列された導電性粒子を有している。そのため、導電性粒子の配列乱れが少なく、高い接続信頼性を発揮することができる。
【0034】
本発明に係る異方性導電膜の製造方法は、上述した本発明に係る吸引型を利用して導電性粒子を配列させる。そのため、導電性粒子の配列乱れが少なく、高い接続信頼性を発揮することが可能な異方性導電膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る吸引型を模式的に示した断面図である。
【図2】支持体を有する本実施形態に係る吸引型を模式的に示した断面図である。
【図3】本実施形態に係る吸引型の製造方法において、パターン形成工程におけるパターニングの様子を模式的に示した断面図である。
【図4】本実施形態に係る吸引型の製造方法において、パターン形成工程にて形成したフォトレジストパターンを模式的に示した図であり、(a)は、形成したフォトレジストパターンを上方から見た図、(b)は、その断面図である。
【図5】本実施形態に係る吸引型の製造方法において、めっき形成工程にて形成した金属めっきを模式的に示した図であり、(a)は、形成した金属めっきを上方から見た図、(b)は、その断面図である。
【図6】本実施形態に係る異方性導電膜を模式的に示した断面図である。
【図7】本実施形態に係る異方性導電膜の製造方法における各工程を模式的に示した断面図である。
【図8】実施例1に係る電解ニッケルめっきよりなる吸引型の断面写真である。
【図9】実施例1に係る電解ニッケルめっきよりなる吸引型の型表面を示した写真である。
【図10】実施例1に係る電解ニッケルめっきよりなる吸引型の型裏面を示した写真である。
【図11】比較例1に係る従来の吸引型を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本実施形態に係る吸引型(以下、「本吸引型」ということがある。)およびその製造方法(以下、「本製法」ということがある。)、ならびに、本実施形態に係る異方性導電膜(以下、「本ACF」)およびその製造方法(以下、「本ACF製法」)について詳細に説明する。
【0037】
1.本吸引型
図1に、本実施形態に係る吸引型の模式的な断面図を示す。図1に示すように、本吸引型10は、吸引面となる型表面Sに多数の吸引孔12を備えている。各吸引孔12は、互いに離間された状態で型表面Sに配列されている。各吸引孔12の配列は、特に限定されるものではなく、本吸引型10の用途に応じて決定される。各吸引孔12の平面的な配列としては、具体的には、例えば、格子状、千鳥状、ハニカム状等の配列、これら配列を所定角度だけ傾斜させた配列などを例示することができる。
【0038】
吸引孔12は、収容部12aと、貫通孔12bとを有している。収容部12aは、型表面Sから吸引される粒子を収容し、保持するためのものである。なお、上記粒子の材質は、特に限定されるものではなく、本吸引型10の用途に応じて選択される。
【0039】
上記粒子としては、具体的には、例えば、金属粒子;樹脂粒子の表面に1層または2層以上の金属めっき層(電解めっき、無電解めっきなど)やスパッタ層などを有する粒子;カーボン粒子;シリカ粒子;セラミック粒子;樹脂粒子;トナー粒子など、各種の材質よりなる粒子を例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。より具体的には、例えば、本吸引型10を異方性導電膜の製造に使用する場合であれば、粒子として、金属粒子;樹脂粒子の表面に1層または2層以上の金属めっき層(電解めっき、無電解めっきなど)やスパッタ層などを有する粒子;カーボン粒子等の導電性粒子が選択される。
【0040】
収容部12aの形態としては、略角柱状、略円柱状等を例示することができる。好ましくは、吸引孔12の形成性、粒子吸引性等の観点から、収容部12aの形態は、略角柱状であると良い。
【0041】
収容部12aの内壁は、型表面Sから型裏面BSに向かって先細るテーパ状に形成されていると良い。テーパ状の内壁に沿って粒子が吸引されやすくなるため、粒子吸引性の向上に寄与しやすくなるからである。また、吸引された粒子が収容部12a内で動き難くなり、規則的に粒子を配列させる際に有利だからである。
【0042】
収容部12aは、一つの粒子を収容可能な大きさに形成されていると良い。収容部12a内に一つずつ粒子が収容・保持されやすくなるため、一つずつ粒子を離間させて配列させるのに有利だからである。
【0043】
収容部12aの底部の大きさR(例えば、収容部12aの形態が略角柱状であればRは角形状底部の1辺、略円柱状であればRは円形状底部の直径)は、吸引する粒子の粒子径の1倍以上〜2倍未満、好ましくは、1.05倍以上〜1.8倍以下、より好ましくは、1.1倍以上〜1.6倍以下であると良い。また、収容部12aの深さD(型表面Sから収容部12aの底部までの距離)は、好ましくは、吸引する粒子の粒子径の1倍以上〜2倍未満、好ましくは、1.05倍以上〜1.8倍以下、より好ましくは、1.1倍以上〜1.6倍以下であると良い。収容部12aの底部の大きさR、深さDが上記範囲内にあれば、収容部12a内に一つずつ粒子を収容する粒子収容性、収容部12a内での粒子保持性等に優れるからである。
【0044】
一方、貫通孔12bは、収容部12aの底部から型裏面BSにかけて貫通している。これにより、型裏面BS側から貫通孔12bを通じて吸引装置(不図示)によるエアの出し入れが可能となる。
【0045】
ここで、貫通孔12bの両端開口のうち、収容部12a側の開口は、吸引された粒子を収容部12a内に留め、かつ、貫通孔12b内に吸い込まれないように、吸引された粒子を通過させない大きさに形成されている。
【0046】
また、貫通孔12bの両端開口のうち、収容部12a側の開口の大きさをr1、型裏面BS側の開口の大きさをr2とすると、r1およびr2は、r1<r2の関係を満たしている。そのため、吸引力を安定させるために型裏面BSに多孔質部材を当接させて使用した場合に、r1=r2とした場合に比較して、型裏面BS側における開口が多孔質部材の孔部をより多く捕捉することが可能となる。また、r1=r2とした場合に比較すると、r1<r2の関係にある場合には、貫通孔12bの容積が相対的に大きくなるため、吸引によるエアの通り道が相対的に拡大し、粒子吸引性の向上に寄与しやすくなる。
【0047】
上記収容部12a側における開口の大きさr1は、吸引する粒子の粒子径の0.1倍以上〜1倍未満、好ましくは、0.2倍以上〜0.8倍以下、より好ましくは、0.4倍以上〜0.6倍以下であると良い。粒子を収容部12aに保持しつつ、粒子吸引を行いやすくなるからである。
【0048】
なお、上述した粒子の粒子径は、粒度分布測定装置(セイシン企業製「PITA−1」)またはこれと同等の装置にて測定される平均粒子径D50の値である。
【0049】
貫通孔12bは、基本的に、収容部12a側における開口が粒子を通過させない大きさに形成されており、かつ、r1<r2の関係を満たしておれば、特にその形態は限定されるものではない。なお、図1では、貫通孔12bの内壁が、貫通孔12bの内部空間側に凸となるように形成されている場合を例示している。
【0050】
本吸引型10の材質としては、例えば、Ni、Ni合金、Cu、Cu合金等の金属材料を好適なものとして例示することができる。この際、本吸引型10が、電解Ni(Ni合金)めっき、電解Cu(Cu合金)めっき等の金属めっきより形成されている場合には、型強度、製造性、コストパフォーマンスに優れる等の利点がある。本吸引型10は、2以上の金属めっき層から構成される等、2以上の材質が積層されて形成されていても良い。
【0051】
本吸引型10の厚みは、型強度、取扱い性、製造コスト等の観点から、好ましくは、3〜100μm、より好ましくは、4〜50μm、さらに好ましくは、5〜10μmの範囲内にあると良い。
【0052】
なお、本吸引型10の型表面Sには、離型性、耐摩耗性等を付与する目的で、必要に応じて、DLC、SiC等の各種の被膜が1または2以上被覆されていても良い。
【0053】
図2は、支持体を有する本実施形態に係る吸引型の模式的な断面図である。図2において、本吸引型10は、上述した吸引孔12が多数が形成された吸引孔形成領域14と、吸引孔12が形成されていない外周領域16とを有している。なお、図2において、型表面Sは図の下方側である。
【0054】
本吸引型10の外周領域16には、吸引孔形成領域14を取り囲むようにして支持体18が固定されている。このように支持体18を設けた場合には、本吸引型10の取扱い性を向上させることが可能となる。なお、支持体18は、連続的に形成されていても良いし、部分的に途切れる箇所がある等、不連続な部分を含んで形成されていても良い。
【0055】
支持体18の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、プラスチック等、各種の材質を適用することが可能である。
【0056】
2.本製法
本製法は、上述した本吸引型10を好適に製造することが可能な方法である。本製法は、パターン形成工程と、めっき形成工程と、除去工程とを少なくとも有している。以下、図3〜図5を用いて、本製法について説明する。
【0057】
(パターン形成工程)
パターン形成工程は、基材表面に、形成する吸引孔の配置、収容部の形状に対応させてフォトレジストパターンを形成する工程である。パターンの形成方法は、例えば、次のようにして行うことができる。
【0058】
先ず、図3に示すように、金属基材等の導電性基材20の表面に、フォトレジスト層22を形成する。なお、導電性基材20には、非導電性基材の表面に導電性材料を積層したものなども含まれる。
【0059】
フォトレジスト層22は、ポジ型またはネガ型のフォトレジスト材料をスピンコーター等の公知の塗工手段により塗布して形成することができる。ここでは、ポジ型のフォトレジスト材料によるフォトレジスト層22を形成した場合について例示している。また、フォトレジスト層22の厚みは、製造する吸引型10の収容部12aの深さDに合わせて決定すれば良い。
【0060】
次いで、製造する吸引型10の吸引孔12の配置および収容部12aの開口に対応させた光遮蔽部を有するフォトマスク24を準備する。このフォトマスク24をフォトレジスト層22の上方に配置し、フォトマスク24の上から、X線等のフォトレジスト材料に適した光Lを照射する。
【0061】
次いで、所定の現像処理を行い、光Lが照射された部分を除去する。これにより、図4に示すように、導電性基材20上に、吸引孔12の配置、収容部12aの形状に対応したフォトレジストパターン26が形成される。なお、図4では、導電性基材20上に、略角柱状の柱状体を複数有するフォトレジストパターン26が形成された場合を例示している。
【0062】
(めっき形成工程)
めっき形成工程は、基材表面からフォトレジストパターンの上表面にかけて、フォトレジストパターンの上表面が一部露出された状態となるように金属めっきを形成する工程である。
【0063】
具体的には、図4に示すように、導電性基材20上にフォトレジストパターン26を形成した後、電解金属めっき法により、導電性基材20表面から電解金属めっき28を成長させる。
【0064】
ここで、このめっき形成工程では、図5に示すように、フォトレジストパターン26の厚み(つまり、柱状体の高さ)を越え、さらに、フォトレジストパターン26の上表面26a(つまり、柱状体の頂面)の一部が露出された状態となるまで電解金属めっき28を成長させる。
【0065】
このような金属めっきを行うことにより、上述した形状の貫通孔12bを形成することができる。この際、貫通孔12bの開口の大きさは、めっき時間、めっき浴組成等のめっき条件を適宜調節することにより変化させることができる。
【0066】
なお、上記では、電解金属めっき法を適用する場合について説明したが、無電解金属めっき法も適用可能である。この場合には、プラスチック等の非導電性基材上にフォトレジストパターン26を形成し、フォトレジストパターン26のない基材面に選択的にPd等の触媒金属を付与し、無電解Niめっき等の無電解金属めっきを行うなどすれば良い。
【0067】
(除去工程)
除去工程は、フォトレジストパターンを除去する工程である。フォトレジストパターン26は、化学的または物理的に除去することができる。好ましくは、除去容易性等の観点から、有機溶媒による溶解等の方法により、化学的に除去するのが好ましい。
【0068】
この際、基材を分離せずにフォトレジストパターン26を除去し、その後に基材を分離しても良いし、基材を分離した後にフォトレジストパターン26を除去しても良い。
【0069】
なお、基材の分離は、基材の材質に応じたエッチングや物理的な剥離などにより行うことができる。
【0070】
以上の工程を経ることにより、図1に示した本吸引型10を得ることができる。
【0071】
3.本ACF
図6に、本実施形態に係る異方性導電膜の模式的な断面図を示す。本ACF30は、上述した本吸引型10を利用して配列させた導電性粒子32を有している。
【0072】
具体的には、本ACF30は、上述した本吸引型10を利用して配列させた導電性粒子32と、第1の接着層34と、第2の接着層36とを有している。本ACF30において、第1の接着層34は、導電性粒子32を保持しており、この導電性粒子32の保持面に、第2の接着層36が積層されている。
【0073】
導電性粒子32としては、例えば、金属粒子;樹脂粒子の表面に1層または2層以上の金属めっき層(電解めっき、無電解めっきなど)やスパッタ層などを有する粒子;カーボン粒子等を例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0074】
第1の接着層34および第2の接着層36を構成する材料としては、具体的には、各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂やゴムなどを用いることができる。各接着層の材質は、材料の溶融粘度等を考慮して適宜選択することができる。
【0075】
第1の接着層34および第2の接着層36を構成する材料としては、より具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ビスマレイミドトリアジン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を1種または2種以上含むゴムやエラストマーなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0076】
これら材料中には、硬化剤、硬化促進剤、改質剤、酸化防止剤、充填剤などの各種添加剤が、必要に応じて、1種または2種以上添加されていても良い。
【0077】
第1の接着層34の厚みは、適正な抵抗値が得やすくなる、圧着時の導電性粒子32の動きを抑制しやすいなどの観点から、好ましくは、導電性粒子32の粒子径の1/10倍〜3/2倍、より好ましくは、1/5倍〜1倍、さらに好ましくは、1/3倍〜2/3倍の範囲内にあると良い。
【0078】
第2の接着層36の厚みは、第2の接着層36と接着する被接続物が有する導体(ICチップのバンプなど)の高さ、被接続物同士(ICチップと配線基板など)の間に生じる隙間量などを考慮して決定することができる。
【0079】
第2の接着層36の厚みは、好ましくは、第2の接着層36と接着する被接続物が有する導体の高さの1倍〜3倍、より好ましくは、1.2倍〜2倍、さらにより好ましくは、1.3倍〜1.75倍の範囲内にあると良い。
【0080】
4.本ACF製法
本ACF製法は、上述した本ACFを好適に製造することが可能な方法である。本ACF製法は、吸引・保持工程と、転写工程と、積層工程とを少なくとも有している。図7に、本ACF製法の概略工程を示す。
【0081】
(吸引・保持工程)
吸引・保持工程は、図7(a)に示すように、上述した吸引型10の吸引孔12内に上述した導電性粒子32を吸引、保持させる工程である。
【0082】
具体的には、先ず、外周に支持体18を固定した吸引型10の型裏面BSに多孔質カーボン、多孔質樹脂、多孔質繊維等の多孔質部材を当接させる。型裏面BSに多孔質部材を当接させることにより、吸引型10と多孔質部材との間にほとんど隙間がなくなる。そのため、吸引型10の反り、撓み等を少なくできる。この際、多孔質部材として多孔質カーボンを好適に用いると良い。多孔質カーボンは硬質であるため、上記吸引型10の反り、撓みをより少なくすることができ、次工程において規則性を維持した転写を行いやすくなる等の利点があるからである。
【0083】
次いで、上記多孔質部材を当接させた吸引型10を、吸引装置(不図示)に取り付ける。この際、吸引型10は、型表面Sを下方にして吸引可能となるように取り付けることが好ましい。転写工程において、吸引させた導電性粒子32を自重や静電気力を利用して余剰粒子を除去し、そのまま転写させやすい等の利点があるからである。
【0084】
次いで、導電性粒子32の大きさ等を考慮し、最適な条件で吸引装置による吸引を開始すれば、吸引型10の吸引孔12内に導電性粒子32を吸引、保持させることができる。この際、吸引孔12への導電性粒子32の吸引を促進させる目的で、必要に応じて、ブラシ、ブレード等により吸引型10の型表面Sをならしても構わない。なお、吸引装置による吸引を解除しても、一旦吸引孔12内に吸引された導電性粒子32は、静電気力等によって吸引孔12内に保持されている。
【0085】
(転写工程)
転写工程は、吸引孔内に保持された導電性粒子を第1の接着層に直接転写する、あるいは、吸引孔内に保持された導電性粒子を粘着体に一次転写し、一次転写された導電性粒子を第1の接着層に二次転写する工程である。
【0086】
前者の場合、具体的には、PETフィルム等の基材の表面に上述した第1の接着層材料を塗工して第1の接着層34を形成し、吸引孔12内に保持されている導電性粒子32と第1の接着層34とを接触させ、第1の接着層34表面に導電性粒子32を転写する等すれば良い。
【0087】
一方、後者の場合、具体的には、先ず、粘着フィルム等、基材表面に粘着層が形成された粘着体を準備する。この際、上記粘着層材料としては、例えば、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、ポリエステル樹脂系等の各種の粘着性物質を例示することができる。
【0088】
次いで、吸引型10の型表面Sと粘着体の粘着層面とを近接または当接させ、粘着体の基材表面上にて加圧ロールを転がす等して、粘着層表面に吸引孔12内の導電性粒子32を粘着させる。これにより、粘着体表面に導電性粒子32を一次転写させる。
【0089】
次いで、PETフィルム等の基材の表面に上述した第1の接着層材料を塗工する等して形成した第1の接着層34と、粘着体表面の粒子転写面とを当接させ、この積層体を加熱・加圧ロールに供給し、ロール間を通過させた後、粘着体を剥離するなどして、第1の接着層34表面に導電性粒子32を二次転写させる。
【0090】
なお、加熱温度、加圧力は、第1の接着層34の軟化による二次転写性、粘着体の粘着性等を考慮して適宜最適な加熱温度、加圧力に設定すれば良い。
【0091】
また、二次転写後、二次転写された導電性粒子32を第1の接着層34に埋め込んで保持性を向上させても良い。この場合、具体的には、二次転写面にセパレータなどの離型性を有する基材を重ね合わせ、加熱・加圧ロールを通過させる等の操作を行えば良い。
【0092】
(積層工程)
積層工程は、第1の接着層の粒子転写面に第2の接着層を積層する工程である。
【0093】
具体的には、PETフィルム等の基材の表面に上述した第2の接着層材料を塗工する等して形成した第2の接着層36と、第1の接着層34の粒子転写面とを貼り合わせる等すれば良い。
【0094】
以上により、上述した本ACFを得ることができる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
【0096】
1.吸引粒子の準備
実施例で作製する吸引型に吸引させる粒子として、ジビニルベンゼン系架橋樹脂よりなる粒子の表面に、Niめっき層、Auめっき層が順に被覆された、平均粒子径4μmの樹脂めっき粒子(積水化学工業(株)、「ミクロパールAU−204」)を準備した。
【0097】
2.吸引型の作製
2.1 実施例1
(パターン形成)
金属基材表面に、厚み4μmのフォトレジスト層を形成し、その上に5μm角、10μmピッチでX線非透過部が規則的に配列されているフォトマスクを配置し、このフォトマスクの上からX線を照射した。
【0098】
次いで、所定の現像処理行い、フォトレジスト層のうち、X線が照射された部分を溶出させた(照射部位は、ポリマー分子鎖が切断されることで溶出されやすくなる。<X線リソグラフィ法>)。
【0099】
これにより、基材表面に、形成する吸引孔、収容部の形状に対応したフォトレジストパターン(5μm角、10μmピッチ、高さ4μmの柱状体が規則的に配列されている)を形成した。
【0100】
(金属めっき)
電解金属めっき法を用いて、上記フォトレジストパターンが形成された基材の基材表面(溝部分)からフォトレジストパターンの上表面にかけて電解ニッケルめっきを成長させた。つまり、上記柱状体の高さを越えて溝部分から膨出するように電解ニッケルめっきを成長させた。この際、柱状体の頂面が約2〜3μmの径で露出された状態となるまで電解ニッケルめっきを続けた。
【0101】
(フォトレジストパターン、基材の除去)
上記電解ニッケルめっき後、フォトレジストパターンを有機溶媒に溶解して除去するとともに基材をエッチング法により除去した。
【0102】
以上により、図8〜10に示すように、型表面側に開口した収容部と、収容部の底部から型裏面にかけて貫通する貫通孔とを有する吸引孔を多数備えた、電解ニッケルめっきよりなる吸引型を得た。
【0103】
なお、得られた吸引型の吸引孔は、その収容部の内壁が、型表面側から型裏面側に向かって先細るテーパ状に形成されている。また、吸引孔における収容部の底部の大きさは5μm角、収容部の深さは4μm、貫通孔の収容部側における開口は2.5μm、貫通孔の型裏面側における開口は4.5μmであり、各吸引孔のピッチは10μmである。また、吸引孔形成領域は、80mm角である。
【0104】
また、得られた吸引型の型裏面外周に、吸引孔形成領域を取り囲むように金属リングを貼り合わせ、ハンドリング性を向上させた。
【0105】
2.2 比較例1
図11に示すように、ドライエッチング法により、シリコンウェハ(直径6インチ、厚み525μm)の表面に、粒子を収容する収容部とこの収容部の底部からシリコンウェハの裏面にかけて一定孔径で貫通する貫通孔とを有する吸引孔を多数形成した。また、シリコンウェハの裏面に、一つの空間(深さ490μm)を形成し、各貫通孔をこの空間に連通させた。これにより比較例1に係る吸引型を作製した。
【0106】
なお、作製した吸引型の吸引孔は、その収容部の形態が円柱状である。また、吸引孔における収容部の開口径は直径5μm、収容部の深さは4μm、貫通孔の孔径は2.5μmで一定であり、各吸引孔のピッチは10μmである。また、吸引孔形成領域は、100mm角であり、この100mm角の中に、100μm×250μmの小領域が10万個存在している。このように複数の小領域を形成したのは、ドライエッチングでは一度に広い領域を加工することが難しいといった製造上の制約があったためである。
【0107】
3.吸引評価
実施例1に係る吸引型の型裏面に多孔質カーボン((株)タンケンシールセーコウ製、「ポーラスカーボンパット」、平均気孔径5μm、表面気孔面積率35%)を当接させた状態で取り付けた。一方、図11に示すように、比較例1に係る吸引型の型裏面にステンレスケースに入れた上記と同じ多孔質カーボンを空間を空けたままの状態で取り付けた。
【0108】
型表面を下側に向けた状態でこれら吸引型を真空吸引装置に装着し、ステンレス製トレイ内に準備した上記粉末に型表面を近づけ、エアによる粒子の吸引を行った。この際、吸引孔への粒子の吸引を促すため、型表面をブラシを用いてならした。
【0109】
その後、型表面にPETフィルム(リンテック(株)製、「PET5011」)を押しつけ、静電気力、重力を利用して、吸引孔へ吸引されずに型表面に付着していた余剰粒子をドライ状態で当該フィルム側へ移行させた。
【0110】
真空吸引装置から吸引型を取り外し、吸引孔内に吸引された粒子を、外観検査装置((株)テクノス製、「テクノス5000K」)を用いて画像化した。当該画像から吸引された粒子の数を算出し、粒子吸引率を以下の式より求めた。
・粒子吸引率(%)=(吸引された粒子の数)/(吸引孔の数)×100
【0111】
この際、実施例1については、923μm×923μmの吸引孔形成領域5箇所について求めた粒子吸引率の平均値を、実施例1の粒子吸引率とした。また、比較例1については、100μm×250μmの吸引孔形成領域5箇所について求めた粒子吸引率の平均値を、比較例1の粒子吸引率とした。
【0112】
その結果、実施例1の粒子吸引率は97%、比較例1の粒子吸引率は97%であった。
【0113】
4.考察
上記吸引評価の結果によれば、以下のことが分かる。すなわち、比較例1に係る吸引型は、型裏面に、全ての貫通孔と繋がる1つの大きな空間が形成されており、型裏面側の貫通孔の開口と多孔質カーボンとの間に上記空間を介在させた状態で、粒子吸引率が97%であったということになる。
【0114】
つまり、比較例1に係る吸引型は、型裏面に空間を形成するといった吸引条件が良好な状態で比較的高い粒子吸引率を示したが、逆にこの結果から、型裏面に空間を形成しなければ、粒子吸引率が低下することが容易に類推される。また、その吸引型の製法もドライエッチングによる加工を用いているため、一度に加工できる加工領域が比較的狭く限定されてしまい、大面積化に対して不利であると言える。また、一つの加工領域と隣接する他の加工領域との間にどうしても所定の隙間が形成されてしまうことから、粒子転写等の際に位置合わせを行う回数が増加してしまう。
【0115】
これに対し、実施例1に係る吸引型は、図8に示すように、貫通孔の収容部側における開口が、粒子を通過させない大きさに形成されており、かつ、貫通孔の型裏面側における開口が、貫通孔の収容部側における開口よりも大きく形成されている。
【0116】
そのため、型裏面に多孔質カーボンを当接させても、粒子を収容部内に留めつつ、貫通孔の型裏面側における開口が多孔質カーボンの孔部をより多く捕捉することが可能となり、型裏面に従来のような大きな空間を形成しなくても吸引孔の吸引力が低下し難く、粒子吸引性に優れていることが分かる。
【0117】
また、実施例1に係る吸引型は、型裏面に従来のような大きな空間を形成する必要がないので、型強度の向上に有利であり、さらに、めっき技術を適用して比較的簡単に大面積化できることが分かる。
【0118】
5.異方性導電膜
(粘着テープの準備)
PET基材の表面に、アクリル系粘着層(厚み22μm)が形成された粘着テープ(フジモリ(株)製、「TFB4130」)を準備した。
【0119】
(第1の接着層の準備)
第1の接着層を以下の手順により準備した。すなわち、アルコール可溶ポリアミド系樹脂23.39質量部と、フェノキシ系樹脂(東都化成(株)製、「EFR−0010M30」)25.16質量部と、エポキシ系樹脂(東都化成(株)製、「FX289EK75」)4.9質量部と、エポキシ系樹脂(東都化成(株)製、「FX305EK70」)2.67質量部と、メラミン系樹脂(三和ケミカル(株)製、「ニカラックMX−750」)1.37質量部と、硬化剤(四国化成(株)製、「C11Z」)0.38質量部と、硬化剤(三菱ガス化学(株)製、「F−TMA」)0.57質量部と、メタノール24.26質量部と、トルエン48.05質量部と、メチルセロソルブ69.2質量部とを混合し、第1の接着層溶液を調製した。
【0120】
次いで、コンマコーターを用い、連続的に供給されるベース基材(ポリエチレンテレフタレート、厚み38μm、リンテック(株)製「PET38X」)の離型面に、上記第1の接着層溶液を塗工した。
【0121】
次いで、この塗工層を160℃で90秒間乾燥させ、ポリアミド系樹脂とフェノキシ系樹脂とを主成分とする樹脂よりなる平坦な第1の接着層を形成した。その後、この第1の接着層の表面に、セパレータ(ポリエチレンテレフタレート、厚み75μm、リンテック(株)製、「PET75C」)の離型面を合わせて巻き取った。
【0122】
これにより、ベース基材とセパレータとの間に挟持された、ポリアミド系樹脂とフェノキシ系樹脂とを主成分とする第1の接着層(厚み1.5μm、幅100mm、20m)を準備した。
【0123】
(異方性導電膜の作製)
<吸引型の準備>
上述した手順により、吸引孔内に樹脂めっき粒子を吸引・保持させた実施例1に係る吸引型を準備し、型表面(吸引孔形成面)を上向きにした状態で基台上に載置・固定した。なお、本異方性導電膜の作製では、実施例1に係る吸引型を転写型として使用することになる。
【0124】
<一次転写>
一対の支持ロール間に所定の張力で張った上記粘着テープを、上記吸引型の上方に、粘着層が吸引型と対向するように配置した。なお、粘着テープは、一方の供給源から連続的に供給され、他方の巻き取り源に連続的に巻き取り可能に設定されている。
【0125】
次いで、両支持ロールを下降させ、吸引型の型表面に粘着テープの粘着層を当接させ、粘着テープの基材表面に、室温下(非加熱下)、0.01〜1MPaの加圧力でゴムロールを押しつけ、当該ロールを0.5m/minで移動させることにより、室温加圧を行った。
【0126】
次いで、両支持ロールを上昇させ、吸引型から粘着テープを引き離した。
【0127】
なお、樹脂めっき粒子は、吸引型の吸引孔の規則性を維持したまま、粘着テープの粘着層表面に一次転写された。また、一次転写された樹脂めっき粒子は、その底部で粘着層表面に貼り付いており、その表面の大部分は露出された状態になっていた。
【0128】
次いで、上記一次転写後に、吸引型の大きさ分だけ、粘着テープを走行させ、樹脂めっき粒子が保持されている新たな吸引型を基台上に載置・固定した。この際、粘着テープに既に一次転写されている樹脂めっき粒子と、新たな吸引型に保持されている樹脂めっき粒子との位置を光学顕微鏡で確認し、同ピッチになるように位置合わせを行った。
【0129】
次いで、両支持ロールを下降させ、吸引型の型表面に粘着テープの粘着層を当接させ、それ以降、一次転写工程を繰り返し行った。そして、一次転写面にセパレータ(ポリエチレンテレフタレート、厚み50μm、リンテック(株)製、「PET5011」)の離型面を合わせながら、3インチコア管に巻き取った。
【0130】
これにより、吸引型の吸引孔内に保持されていた樹脂めっき粒子を、粘着層表面に一次転写させた長尺物の粘着テープ(長さ20m)を得た。
【0131】
<二次転写>
各セパレータを剥離しながら、粘着テープおよび第1の接着層を巻き出し、粘着テープにおける樹脂めっき粒子の転写面と第1の接着層表面とを重ね合わせ、これを、加熱加圧ロールにより、温度110℃、加圧力5MPa、ロール速度0.2m/分の条件で、熱ラミネートした。次いで、上記熱ラミネート後、直ちに第1の接着層から粘着テープを引き剥がした。
【0132】
これにより、粘着テープの粘着層表面に一次転写されていた樹脂めっき粒子を、第1の接着層表面に二次転写した。樹脂めっき粒子は、吸引型の吸引孔の規則性を維持したまま、第1の接着層表面に二次転写された。
【0133】
その後、第1の接着層表面における樹脂めっき粒子の二次転写面にセパレータ(ポリエチレンテレフタレート、厚み38μm、リンテック(株)製「PET38C」)を重ね合わせ、これを、温度140℃、加圧力0.1MPa、加熱加圧時間60秒の条件で、熱ラミネートした。
【0134】
これにより、樹脂めっき粒子を、その規則的な配列を維持したまま第1の接着層に確実に保持させた。
【0135】
<積層化>
ジシクロペンタジエン型エポキシ系樹脂(大日本インキ(株)製、「エピクロンHP7200HH」)90質量部と、ニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン(株)製、「ニポール1072J」)10質量部と、硬化剤(旭化成ケミカルズ(株)製、「ノバキュアHXA3932HP」)187質量部とを、固形分量が42%となるようにトルエンにて希釈し、第2の接着層溶液を調製した。
【0136】
次いで、コンマコーターを用い、連続的に供給されるベース基材(ポリエチレンテレフタレート、厚み38μm、リンテック(株)製「PET38C」)の離型面に、上記第2の接着層溶液を塗工した。
【0137】
次いで、この塗工層を110℃で90秒間乾燥させ、第2の接着層(厚み20μm)を形成した。その後、この第2の接着層の表面に、セパレータ(ポリエチレンテレフタレート、厚み38μm、リンテック(株)製、「PET38B」)の離型面を合わせて巻き取った。
【0138】
これにより、ベース基材とセパレータとの間に挟持された第2の接着層を用意した。
【0139】
次に、それぞれのセパレータを剥離して露出させた、第2の接着層の表面と第1の接着層の粒子転写側表面とを重ね合わせ、両者を貼り合わせた。これにより、第1の接着層の粒子転写面に第2の接着層を積層した。
【0140】
上記の通りにして、2層構造の異方性導電膜を作製した。
【0141】
以上、本発明の一実施形態、一実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0142】
10 吸引型
12 吸引孔
12a 収容部
12b 貫通孔
14 吸引孔形成領域
16 外周領域
18 支持体
20 導電性基材
22 フォトレジスト層
24 フォトマスク
26 フォトレジストパターン
26a フォトレジストパターンの上表面
28 電解金属めっき
30 異方性導電膜
32 導電性粒子
34 第1の接着層
36 第2の接着層
S 型表面
BS 型裏面
L 光
100 吸引型
102 吸引孔
104 空間
106 貫通孔
108 多孔質部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型表面から吸引される粒子を収容可能な収容部と、前記収容部の底部から型裏面にかけて貫通する貫通孔とを有する吸引孔を多数備え、
前記貫通孔の収容部側における開口は、前記粒子を通過させない大きさに形成されており、かつ、
前記貫通孔の型裏面側における開口は、前記貫通孔の収容部側における開口よりも大きく形成されていることを特徴とする吸引型。
【請求項2】
前記収容部の内壁は、型表面側から型裏面側に向かって先細るテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸引型。
【請求項3】
前記収容部は、一つの粒子を収容可能な大きさに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の吸引型。
【請求項4】
前記吸引孔は、
前記収容部の底部の大きさが、前記粒子の粒子径の1倍以上2倍未満、
前記収容部の深さが、前記粒子の粒子径の1倍以上2倍未満、
前記貫通孔の収容部側における開口が、前記粒子の粒子径の0.1倍以上1倍未満に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の吸引型。
【請求項5】
前記吸引型は、金属めっきより形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の吸引型。
【請求項6】
その外周に支持体が固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の吸引型。
【請求項7】
多数の吸引孔を備えた吸引型の製造方法であって、
基材表面に、吸引孔の配置、収容部の形状に対応させてフォトレジストパターンを形成する工程と、
前記基材表面から前記フォトレジストパターンの上表面にかけて、前記フォトレジストパターンの上表面が一部露出された状態となるように金属めっきを形成する工程と、
フォトレジストパターンを除去する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする吸引型の製造方法。
【請求項8】
前記金属めっきは、電解金属めっきであることを特徴とする請求項7に記載の吸引型の製造方法。
【請求項9】
前記フォトレジストパターンは、X線リソグラフィ法にて形成されることを特徴とする請求項7または8に記載の吸引型の製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか1項に記載の吸引型を利用して配列させた導電性粒子を有することを特徴とする異方性導電膜。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか1項に記載の吸引型の吸引孔内に導電性粒子を吸引、保持させる吸引・保持工程と、
前記吸引孔内に保持された導電性粒子を第1の接着層に直接転写する、あるいは、前記吸引孔内に保持された導電性粒子を粘着体に一次転写し、前記一次転写された導電性粒子を第1の接着層に二次転写する転写工程と、
前記第1の接着層の粒子転写面に第2の接着層を積層する積層工程と、
を有することを特徴とする異方性導電膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−218875(P2010−218875A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64096(P2009−64096)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】