説明

吸水シートとその製造方法

【課題】現存のマットタイプの吸水シートに較べ、薄型でありながら吸水量が大で、かつ嵩が少なくなることにより物流コストの低減を図ることができるなど、取り扱いやすい吸水シートを提供する。
【解決手段】上層2および下層3がポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)からなり、中間層4がレーヨンが65〜75%とPE/PPが35〜25%からなる3層構造とした、総厚が30φ測定子8.3hpa荷重ダイヤルゲージによる測定値0.35〜0.60mmとされている吸水シート1にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水シートに係り、特に汁分を含む食品等の包装に用いて最適な吸水シートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から惣菜や鮮魚、精肉等、水分や油分を含む食品の販売時にこれらを包装する包装材として吸水シートが用いられている(特許文献1、2参照)。
【0003】
従来から一般に使用されているこの種の吸水シートは、PE/PP70%、PE/PET30%を原料とする2層構造であり、被包装物から滲出する水分や油分を貯留する「保水性」を重視した構造とされていた。
【0004】
したがって、油分の場合は粘度が高いことから保持することができるが、水分を「吸水」することには不十分であり、被包装物の性状によっては好ましくないものとなっている。
【0005】
また吸水性を高めるため、木材等の有機物を原料とするレーヨンを用いると、吸水性は増すものの「けば」が立ち、このけばが被包装物に付着するなどの問題をもたらす。
【特許文献1】特開平6−39279号公報
【特許文献2】特開2005−119073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、厚みを増すことなく吸水性を高め、かつ被包装物を包みやすく、けば立ちが生じることのない吸水シートを提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段として本発明は、上層および下層をポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)の層とし、これら上層と下層との間にレーヨン繊維とPE/PPからなる中間層を挟在せしめた構成としたことにある。
【0008】
すなわち上層および下層をPE/PPの層とし、中間層がレーヨン層とPE/PPからなる3層構造としたことを特徴としている。
【0009】
前記上層および下層と中間層とは、エンボスロール加工またはエアエンボス加工による綴着により一体化することが好ましい。
【0010】
前記上層および下層のPE/PPを100%とするとき、中間層のレーヨンが65〜75%、同PE/PPが35〜25%とすることがよく、最も好ましくはレーヨン70%、PE/PPが30%とするのがよい。
【0011】
また前記上層および下層を8〜12g/mとするとき、中間層を26〜34g/mとすることがよく、最も好ましくは上、下層を10g/m、中間層を30g/mとするのがよい。
【0012】
さらに上層、下層、および中間層を含む総厚を30φ測定子8.3hpa荷重ダイヤルゲージによる測定値0.35〜0.60mmとするのがよい。
【0013】
上記の吸水シートの製法として、上層を構成するPE/PPと、下層を構成するPE/PPとをそれぞれ供給する経路の間に中間層を構成するレーヨンおよびPE/PPを供給して重ね合わせ、これら上層、中間層、下層が重ね合わされた後エンボスロール加工またはエアエンボス加工により3層を綴着する工程を経て吸水シートを形成するようにすることができる。
【0014】
上記各層の材料供給系にカードマシンを用い、一定の厚さに成形して3層重ね合わせ部へ供給するようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、PE/PPからなる上層と下層との間にレーヨン繊維とPE/PPからなる中間層を挟み込んでシート状に形成したことにより、従来のPE/PPの2層構造によるシートに較べ吸水量を倍増することができ、特にレーヨン層をPE/PP層間に挟在して薄型構造としているので現存のマットタイプの吸水シートに較べ厚みを半減することができ、かつ嵩が少なくなることにより物流コストの低減を図ることができる。
【0016】
上層、下層にPE/PPを使用し、その間にレーヨン繊維、PE/PPを中間層として介在させているので、機械的または空圧的のエンボス加工を加えることによって特別なバインダを使用することなく3者を綴着することができ、衛生的な吸水シートとすることができる。
【0017】
また3層構造であるため表裏がなく、両面使用ができ、取り扱い上極めて高い利便性を得ることができる。
【0018】
吸水時はレーヨン繊維が吸水するので、外圧を加えても一旦吸水した水分が逆流出することがなく、保水性をも十分に得ることができる。
【0019】
特に吸水を司る中間層のレーヨン繊維はその表裏がPE/PPで覆われているのでけば立つことがなく、これにより「けば」が被包装物に付着するような不都合も全く生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明による吸水シート1の一部の拡大断面を模式的に示すもので、上層2と下層3との間に中間層4が挟在された3層構造とされ、これら3者はエンボス加工により綴着されて一体化されている。
【0021】
前記上層2、下層3はポリエチレンPE/ポリプロピレンPPからなっており、その割合は約50%ずつとされている。
【0022】
前記上層2と下層3との間に挟み込まれる中間層4はレーヨン繊維とPE/PPからなっている。このPE/PPのPEはフルダル繊維からなっており、これらの上層2、下層3および中間層4の各々はカードマシンにより所定の厚さに成形され、その繊維の白さを出したいときは各層のPE/PPのPEに酸化チタンを練り込ませてフルダル繊維とすればよい。
【0023】
上記中間層4の組成としては、
レーヨン 65%〜75%
PE/PP 35%〜25%
とされる。
【0024】
なおレーヨンが多いほど吸水性が増して好ましいといえるが、PE/PPは上層2と下層3との接着剤としての機能を司ることから25%より低い値では好ましくない。また35%以上にするとそれに応じてレーヨンの量が減少することになって吸水性が劣ることになり、必要な吸水量が得られなくなるので好ましくない。
【0025】
一方、各層2、3、4の重量は、
上層2および下層3 8〜12g/m
中間層4 26〜34g/m
とされている。
【0026】
上記中間層4が26g/m以下であると、レーヨン量が少なすぎて吸水量が減り、34g/mを超えると全体が重くなりすぎて好ましくない。
【0027】
上記レーヨンの繊維は、自己の重量の約2倍の吸水量を吸水する能力を有するので、ちなみに30g/m、レーヨン量70%の吸水量は42g(1/m当り)の吸水を得ることができる。
【0028】
さらに厚みに関しては、上層2、下層3、中間層4を含む総厚Tを30φ測定子8.3hpa荷重ダイヤルゲージによる測定時0.35〜0.60mmとされている。
【0029】
この総厚が0.35mm以下であると薄すぎて強度不足をきたし、0.60mm以上であると厚くなりすぎて物流面で取り扱いにくくなると同時にコストアップを招くことになって好ましくない。
【0030】
図2は本発明の製法の一例を図式で示すもので、上層2を構成するPE/PPと、下層3を構成するPE/PPとをそれぞれ供給する経路の間に中間層4を構成するレーヨンおよびPE/PPをシート状として供給し、これら3者を重ね合わせたのちエアスルー熱融着炉8を経由し、次いでエンボスロール5、5によるエンボス加工工程6を経て3者が綴着固定され、シート状に形成される。
【0031】
上記各層の材料の供給に関しては、ガードマシン7により一定の厚さ(例えばレーヨンは10mm)に成形して送り出すようにすることができる。
【0032】
また前記エンボス加工に関しては、エンボスロール5、5による加圧加工によるほか圧力エアの吹き付けによるエアエンボス加工によるものであってもよい。上記エンボスロールによる場合、下側のロールはメッキのプレーンロールとされ、上側のロールをエンボスロールとされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による吸水シートの一実施形態の構成例を示す一部の拡大断面図。
【図2】図1の吸水シートの製法の一例を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
1 本発明による吸水シート
2 上層
3 下層
4 中間層
5 エンボスロール
6 エンボス加工工程
7 カードマシン
8 エアスルー熱融着炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層および下層をポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)の層とし、これら上・下層の間にレーヨンとPE/PPとからなる中間層を挟在せしめたことを特徴とする吸水シート。
【請求項2】
前記上層および下層と中間層とは、エンボスロール加工またはエアエンボス加工による綴着により一体化されている請求項1記載の吸水シート。
【請求項3】
前記上層および下層のPE/PPを100%とするとき、中間層のレーヨンが65〜75%、同PE/PPが35〜25%とされている請求項1または2記載の吸水シート。
【請求項4】
前記上層および下層が8〜12g/m、中間層が26〜34g/mとされている請求項1〜3のいずれか1項記載の吸水シート。
【請求項5】
前記上層、下層、および中間層を含む総厚が30φ測定子8.3hpa荷重ダイヤルゲージによる測定値0.35〜0.60mmとされている請求項1〜4のいずれか1項記載の吸水シート。
【請求項6】
前記上層および下層を構成するPE/PPに原綿が用いられている請求項1〜5のいずれか1項記載の吸水シート。
【請求項7】
前記原綿はフルダル原綿である請求項6記載の吸水シート。
【請求項8】
上層を構成するPE/PPと、下層を構成するPE/PPとをそれぞれ供給する経路の間に中間層を構成するレーヨンおよびPE/PPを供給して重ね合わせ、これら上層、中間層、下層が重ね合わされた後エンボスロール加工またはエアエンボス加工により3者を綴着する工程を経て吸水シートを形成することを特徴とする吸水シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−196143(P2009−196143A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38390(P2008−38390)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(390000387)福助工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】