説明

吸水処理材

【課題】耐火性能が高く、効率的な処分が可能であり、地球温暖化の防止に寄与することが可能となる吸水処理材を提供する。
【解決手段】総重量に対して、20重量%乃至90重量%の廃棄物を含み、前記廃棄物は、2種類以上のプラスチック材料を含有する粒状の吸水処理材であって、発火点が400℃以上であり、灰分が20重量%以下であり、前記総重量の1.1倍乃至1.6倍の範囲内の重量の水分を吸収した状態での発熱量が2930J/g乃至10465J/gの範囲内であるとともに、二酸化炭素発生量が1700g/kg乃至2500g/kgの範囲内であること、を特徴とする吸水処理材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物の排泄物などの液体を吸収するための粒状の吸水処理材(以下、単に「吸水処理材」という)に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、愛玩動物等の動物用排泄物処理材の製造を先駆的に行っており、高発熱量の紙おむつ廃材を原料として利用することにより、使用後(排尿を含んだ状態)に焼却処理可能な動物用排泄物処理材の開発を行っている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2895963号公報
【特許文献2】特許第3007164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近時、吸水処理材の認知が進み、使用者が増加したことに伴い種々のニーズが生じており、単に使用後においても焼却処理可能であるというだけでは、使用者の支持がえられない状況となってきている。
【0005】
例えば、近年、カーテンや壁紙など、居室内の装備品は防火材料を用いて作られているが、吸水処理材も室内で使用されることが多いため、吸水処理材にも防火性能を期待されるようになってきている。
また、環境意識の高まりから、各種の製造物に関して廃棄物の効率的処分や地球温暖化の防止に伴う二酸化炭素の発生削減が叫ばれているが、吸水処理材も例外ではなく、そのようなニーズを満たすような要請が高まっている。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、耐火性能が高く、効率的な処分が可能であり、地球温暖化の防止に寄与することが可能となる吸水処理材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の吸水処理材は、総重量に対して、20重量%乃至90重量%の廃棄物を含み、前記廃棄物は、2種類以上のプラスチック材料を含有する粒状の吸水処理材であって、発火点が400℃以上であり、灰分が20重量%以下であり、吸水前の前記総重量の1.1倍乃至1.6倍の範囲内の重量の水分を吸収した吸水後の状態での発熱量が2930J/g(700kcal/kg)乃至10465J/g(2500kcal/kg)の範囲内であるとともに、二酸化炭素発生量が1700g/kg乃至2500g/kgの範囲内であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の吸水処理材は、総重量に対して、20重量%乃至90重量%の廃棄物を含み、前記廃棄物は、2種類以上のプラスチック材料を含有する粒状の吸水処理材であって、発火点が400℃以上であり、灰分が20重量%以下であり、吸水前の発熱量が11871J/g(2836kcal/kg)乃至34250J/g(8182kcal/kg)の範囲内であるとともに、二酸化炭素発生量が1700g/kg乃至2500g/kgの範囲内であることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明において前記吸水処理材(吸水処理材を構成する個々の吸水体)を、粒状の芯部と、前記芯部を被覆する被覆層部を有する複層構造とすることもできる。
【0010】
また、前記被覆層部は、未発色の水溶性色素材料の粉末を含有し、外部から吸収された水分(尿など)との接触により前記水溶性色素材料が発色可能となるように構成することもできる。
【0011】
ここで、廃棄物とは、一般廃棄物及び産業廃棄物を含むことは勿論、企業又は個人が製造した未使用の製造品であるにも関わらず何らかの理由で本来の使用目的で使用されなかった物や、他の用途に転用処分された物を含むものとする。
【0012】
また、発火点とは、物質を空気中で加熱するとき、火源がなくても発火する温度である。
また、灰分とは、試料中に含まれる不燃焼性物質の総量をいい、本明細書では550〜600℃で試料を完全に灰化処理したときの残灰の重量を、灰化処理前の重量で除した値として定義する。
【0013】
さらに、上記性質を有する吸水処理材の構成材料としては、廃棄物から回収された2種類以上のプラスチック材料を必須とし、その他の有機質廃材を適宜の割合で混合することが好適である。
【0014】
上記本発明の吸水処理材によれば、発火点が400℃以上と高いため、防火性能を向上させ、火災に対する安全性を高めることができる。
【0015】
また、本発明の吸水処理材によれば、灰分が20重量%以下であるため、焼却処分後の減量化が可能となり、効率的に焼却処分することができる。
さらに、本発明によれば、全重量の1.1倍乃至1.6倍の重量の水分を吸収した状態での発熱量(以下「吸水後発熱量」という。)が2930J/g(700kcal/kg)以上、若しくは、吸水前の発熱量(以下「吸水前発熱量」という。)が11871J/g(2836kcal/kg)以上であることから、吸水した吸水処理材を焼却する場合であっても自燃可能である。従って、燃焼処理時に石油燃料などの補助燃料を用いることなく、効率的に焼却処分することができる。さらに、吸水後発熱量の上限が10465J/g(2500kcal/kg)、若しくは、吸水前発熱量の上限が34250J/g(8182kcal/kg)であり、焼却時の発熱により焼却炉を毀損することを防止することができるため、一般焼却炉を使用して焼却処分をすることができる。
【0016】
また、本発明の吸水処理材によれば、廃棄物を構成材料としているため、本来処分すべき廃棄物等から発生する二酸化炭素を抑制することができる。加えて、多量に排出されている廃棄物等を再利用した吸水処理材を提供することが可能になるため、省資源の要請に資するとともに、安価に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吸水処理材によれば、耐火性能が高く、効率的な処分が可能であり、地球温暖化の防止に寄与することが可能となる吸水処理材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の排泄物処理材の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための一形態(以下「実施形態」という)について、猫や犬等の愛玩動用の排泄物を処理するための吸水処理材(排尿処理材)を例として、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[排泄物処理材]
本発明の吸水処理材は、粒状の芯部と、この芯部の表面を被覆する被覆層部とから形成される複層構造を有している。なお、複層構造の吸水処理材自体は、出願人がこれまで多数出願しているように公知の技術である。
【0021】
(1)吸水処理材の性質
本発明を構成する吸水処理材の性質は、発火点が400度以上であること、灰分が20重量%以下であること、全重量の1.1倍乃至1.6倍の重量の水分を吸収した状態での吸水後発熱量が2930J/g(700kcal/kg)乃至10465J/g(2500kcal/kg)の範囲内であること、若しくは、吸水前発熱量が11871J/g(2836kcal/kg)乃至34250J/g(8182kcal/kg)の範囲内であること、使用前の吸水処理材のCO発生量が1700g/kg乃至2500g/kgの範囲内であること、を特徴としている。従来、上記4種類の性質のうち、個々の性質を満たす吸水処理材は存在していたが、本発明を構成する吸水処理材はこれらの性質を総てみたしている点に特徴を有している。
【0022】
<発火点>
防火効果を有するためには、発火点は高い方が好ましいことは勿論である。しかし、一般的な紙の発火点は300℃程度であり、吸水処理材は常温で保存されるものであるため、少なくとも安全性として+100℃を見込んだ400℃以上、好ましくは、容器や包装用フィルムをはじめ、様々な用途に利用されているポリエチレンの発火点である450度以上の発火点を有していることが、防火性能上好ましいものである。
【0023】
<灰分>
出願人が開発した従来品である焼却処分を可能とした吸水処理材の灰分は、40重量%程度にすぎないものであった。しかし、灰分は少ないほど好ましいものであり、埋め立て処分を行うための処分費用を少なくするためには、少なくとも従来品の1/2である20重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下とすることで、その目的を達成することが可能である。
【0024】
<発熱量>
吸水した吸水処理材を焼却する場合において、自燃可能(補助燃料を必要とせずに燃焼可能)であるためには、総重量(全重量)の1.1倍以上の重量の水分を吸収した状態での吸水後発熱量が2930J/g(700kcal/kg)以上であることが必要となる。
【0025】
すなわち、吸水処理材は、通常、本体1重量部に対し、水分1.1重量部乃至1.6重量部を吸水可能、すなわち吸水倍率が1.1倍乃至1.6倍となっている。この場合、吸水後の吸水処理材の重量に対する吸水前の吸水処理材の重量比は47.6%乃至38.5%となる。標準大気圧における水の蒸発潜熱は約2260J/g(540kcal/kg)であるが、通常、吸水処理材が対象とする液体は尿等の不純物を有しているため、蒸発潜熱は約2721J/g(650kcal/kg)と考えることができる。そして、吸水した吸水処理材を焼却するにあたり、自燃可能となる発熱量は2930J/g(700kcal/kg)以上(より好ましくは、3767J/g(900kcal/kg)以上)である。
一方、一般的な焼却炉での焼却処分時において、当該焼却炉を毀損しないための限界的な熱量は10465J/g(2500kcal/kg)であると言われている。
【0026】
従って、吸水処理材の吸水前発熱量(使用前の発熱量)Xは、下式を満たす必要がある。
10465J/g(2500kca/kg)
≧0.476X〜0.385X−2721(650kca/kg)
≧2930(700kca/kg)
よって、吸水処理材の吸水前(使用前)の発熱量Xの下限は概ね11871J/g(2836kcal/kg)〜14676J/g(3506kcal/kg)、上限は27703J/g(6618kcal/kg)〜34250J/g(8182kcal/kg)であることが必要となる(この結果によれば、11871J/g乃至34250J/g、より好ましくは、14676J/g乃至27703J/gの範囲内であることが必要である)。
【0027】
<CO発生量>
吸水処理材は焼却処分をする際にCOが発生するが、このCOが地球温暖化の原因となることは周知の事実であり、その削減が求められている。
ところで、紙くずのCOの排出量は1520g/kg(環境省地球環境局地球温暖化対策課温室効果ガス排出量算定方法検討会2002.8)であり、廃ブラスチックのCOの排出量は2600g/kg(環境省温室効果ガス排出量算定方法検討会 平成14年度 温室効果ガス排出量算定方法検討会 廃棄物分科会 報告書)であるが、本発明は、廃プラスチックより少ないCOの排出量を実現するために、その構成材料を工夫したものである。
勿論、COの排出量は少ないほど好ましいが、上記他の3つの性質を満たすようにするためには、紙くずのCOの排出量を上回らざるをえないため、使用前の吸水処理材のCO発生量を1700g/kg乃至2500g/kgの範囲内としたものである。
【0028】
(2)吸水処理材の構成材料
以下、上記性質を有する吸水処理材の構成材料につき詳細に説明する。
本発明の吸水処理材では、廃棄物を原料とする性質の異なる2種類以上のプラスチック材料を選択し、その全重量に対して、20重量%乃至90重量%の範囲内で混合している。
一般的に、プラスチック材料は、石油を原材料としているため、発火点が低く、灰分が少なく、発熱量が大きいという性質を有している。一方、紙類は、プラスチック材料と比較して発火点が高いが、灰分が多く、発熱量も小さいという性質を有している。
そこで、本発明の吸水処理材では、複数のプラスチック材料を使用するとともに、紙類や無機材料から構成される難燃材を付加することにより、灰分、発火点、発熱量及びCO量が所望の値になるようにしているものである。
【0029】
<芯部の構成材料>
上記吸水処理材を形成する芯部の構成材料としては、二種類以上のプラスチック材料を使用する必要がある。
周知のように、プラスチックは、通常、石油を原料とした合成樹脂をさすものであり、その性質により種々の分類方法があるが、例えば、非結晶性プラスチック、結晶性プラスチックなどに分類できる。
具体的には、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニール、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、塩化ビニリデン、アクリル樹脂等の他、生分解性プラスチックなどの種類が存在している。
【0030】
このようなプラスチック材料のうち、本発明に適した廃棄物から回収可能なプラスチック材料として、第一に、冷蔵庫等の家電製品から回収可能であるポリウレタン(ウレタンフォーム)を使用することが好適である。
【0031】
また、それ以外の廃棄物から回収可能なプラスチック材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、プラスチックゴム等の他、動物用排泄物処理材の廃材、紙おむつ廃材、紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用紙おむつ廃材、動物用紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物、乳パッド廃材、乳パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、汗パッド廃材、汗パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、失禁パッド廃材、失禁パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用シーツ廃材、動物用シーツ廃材のプラスチックに富む分離産物、衛生用品の製造時に発生する抜き廃材(トリムロス)、若しくは他の合成樹脂繊維廃材を用いる(以下、これらの材料を総称して「衛生廃材等」ということがある。)ことが好適である。
【0032】
上記プラスチック材料に加えて、他の有機質廃材を加えることもできる。それらの有機質廃材としては、薄葉紙廃材、衛生用紙廃材、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉(主として印刷会社において、製本の切断時や削り時に発生する微細な紙粉)、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、チタン紙廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、不織布廃材、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生用品製造時に発生する紙粉、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑、ダンボール屑、製紙スラッジ、パルプスラッジ、木材屑、鉋屑、木粉、紙粉、焙煎コーヒー豆の抽出残渣、茶殻、野菜屑、使用済み切符若しくはパンチ屑、又はこれら二以上の材料の混合物の粉砕物を(以下、これらの材料を総称して「有機質廃材」ということがある。)用いることができる。
【0033】
そして、少なくとも2種類のプラスチック材料(例えば、ポリウレタンと衛生廃材等)の合計重量が20重量%乃至90重量%、有機質廃材の合計材料が80重量%乃至10重量%の範囲内となるように配合割合を決定することが好適である。
【0034】
なお、核部は、染料(着色に用いる粉末で水や油に溶解するものの総称)や、顔料(着色に用いる粉末で水や油に不溶のものの総称)等により所望の色に着色することができる。
このような染料としては、動物染料、植物染料、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、フタロシアニン染料又は塩基性染料を用いることができる。また、顔料としては、無機顔料を用いることが好ましく、一例として、コバルト顔料、鉄顔料、クロム顔料、マンガン顔料、銅顔料、バナジウム顔料又は硫化物顔料を用いることができる。
これらの染料又は顔料は、構成材料に直接混入する方法、液体に溶解させた状態で混入する方法、他の物質に含浸させて混入する方法など、種々の方法により混入することができる。
【0035】
<被覆層部の構成材料>
被覆層部は、使用時に尿等の排泄物で濡れた吸水処理材同士を付着させて塊状とさせ、排泄物をその周囲から包み込む等の作用を奏させることを第1の意図として設けられている。このような被覆層部の構成材料の例としては、吸水性樹脂、接着性を有する材料若しくは両材料の混合物と、紙粉の混合物とを用いることが好適である。
【0036】
本発明において、接着剤としては、例えば、糊料やポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂がある。このような接着剤として機能する糊料としては、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、デキストリン、各アルファ(α)化した澱粉などの澱粉類、アクリルアミド、PVA、カルボキシメチルセルロース又はアルギン酸ナトリウムを使用することができ、又はこれらのうちの二種類以上の物質を組み合わせて使用することができる。また、その他の接着剤としては、高吸水性樹脂、ビニルエステル、ベントナイト、プルラン、カゼイン又はゼラチンなどがあり、これらは、単独で使用されるか、又はこれら2種以上を混合して使用される。また、アルコール溶解性の接着剤としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はポリビニルピロリドン(PVP)などがあり、この場合も同様に、単独で使用されるか、又はこれら2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
紙粉としては、薄葉紙、薄葉紙廃材、衛生用紙、衛生用紙廃材、トイレットペーパー用紙、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー用紙、ティッシュペーパー廃材、化粧紙用紙、化粧紙廃材、ちり紙用紙、ちり紙廃材、紙タオル、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞用紙、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉、機械パルプ、機械パルプ廃材、化学パルプ、化学パルプ廃材、セミケミカルパルプ、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ、綿状パルプ廃材、木材パルプ、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、吸水性繊維廃材、製本時に発生する紙粉、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生用品製造時に発生する紙粉(高吸水性樹脂を含む紙粉等)又はこれら二以上の粉砕物の混合物であり、何れも、0.5ミリメートル以下、好ましくは、0.3ミリメートル以下の粒度の粒状物に粉砕されて使用される。
【0038】
また、被覆層部は、芯部が固有の色調を有している場合に、当該色調を隠すという作用を奏させることを第2の目的として設けられている。
その際、着色作用を効果的に行うために、予め着色物質により着色されている比較的不活性である微細な無機酸化物等の無機質材料の粉体を被覆材料に配合することもできる。このような無機質材料の粉体の例としては、カオリンクレー、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、チタンホワイト、石膏、二酸化チタン、二酸化珪素、酸化アルミニウム、ゼオライト、ベントナイト、カオリン又は活性炭などの粉体を使用することができる。この中で、ゼオライト、ベントナイト、カオリン又は活性炭の粉体を使用すると、吸着作用により、排泄物処理材に脱臭機能を持たせることができるのでより好ましいものである。
そして、微細な無機質材料を着色する着色物質として、上記顔料及び染料を使用することができ、その混入方法に関しても、上記と同様の方法を用いることができる。
【0039】
特に、未発色である公知の水溶性色素材料の粉末を直接的に被覆層部に混入し、外部から浸透する水分と当該水溶性色素材料が接触することにより発色可能となるように構成することができる。例えば、芯部と被覆層部の色(色合い、明度、彩度)を異なる色として、被覆層部を発色させることにより他色に変化させること(例えば、芯部を黄色とし被覆層部を青色に発色させて全体を緑色にすることや、芯部を白色とし被覆層部を赤色に発色させて全体を桃色にすることなど)や、芯部と被覆層部を同色系の色にすることなどを可能とすることができる。
【0040】
なお、芯部又は被覆層部には、脱臭材料、消臭材料、殺菌作用を有する物質、検査用指示薬等、吸水性能を阻害することなく、他の効果を奏することが可能となるような物質を配合することができる。
【0041】
(3)作用効果
本発明の吸水処理材は、愛玩動物の排尿時に使用されるものである。
すなわち、適量を容器に入れ、その状態で愛玩動物に排尿させる。尿は被覆層部を浸透して芯部に吸収されることになるが、尿が芯部に吸収されると当該芯部の色が被覆層部を透過して露見し、使用部分と未使用部分の判別が可能となるとともに、尿で濡れた被覆層部同士が付着し、複数の吸水処理材が塊状となる。そのため、使用者は、使用部分のみを取り出して、焼却処分することができることになる。
【0042】
本発明によれば、吸水処理材の発火点が400℃以上と高いため、防火性能を向上させ、火災に対する安全性を高めることができる。
また、吸水処理材の灰分が20重量%以下であるため、焼却処分後の減量化が可能となるため効率的に焼却処分することができ、焼却後の残留物の廃棄処分コスト等を低減することができる。
【0043】
また、本発明によれば、吸水処理材の総重量の1.1倍乃至1.6倍の範囲内の重量の水分を吸収した状態での吸水後発熱量が2930J/g(700kcal/kg)以上、若しくは、吸水前発熱量が11871J/g(2836kcal/kg)以上であるため、吸水した状態において吸水処理材を焼却するにあたり、処分時に石油燃料などの補助燃料を削減することができることから、燃料費を節減でき、効率的な焼却処分が可能となる。また、当該吸水後発熱量の上限が10465J/g(2500kcal/kg)、若しくは、吸水前発熱量が34250J/g(8182kcal/kg)であり、焼却時の発熱により焼却炉を毀損することを防止することができるため、一般焼却炉を使用して焼却処分をすることができる。
さらに、本発明によれば、廃棄物である2種類以上のプラスチック材料を使用することにより、本来処分すべき廃棄物から発生する二酸化炭素を抑制することができる。加えて、廃棄物由来の原材料を使用することにより、省資源の要請に資するとともに、安価に製造することが可能となる。
【0044】
また、本発明において、未発色の水溶性色素材料の粉末を直接的に被覆層部に混入し、外部から浸透する水分と当該水溶性色素材料が接触することにより発色可能となるように構成することにより、容易に所望の色(色合い、明度、彩度)に発色可能とすることができる。
これにより、被覆層部の水溶性色素は、使用前(吸水前)は発色していないため、被覆層部本来の色を保っているが、吸水後には、外部から浸透する水分によって被覆層部の水溶性色素材料が発色することにより、吸水した状態を判別することができる。その際、芯部分と被覆層部の色(色合い、明度、彩度)の違いにより、当該芯部分の色を隠したり、芯部分の色と被覆層部の色を混合させて異なる色に変化させることができる。また、被覆層部の一部が流出して、芯部が露見する場合もあるが、その場合であっても、被覆層部と芯を同系色にすることで美観を保たせることができる。
【0045】
[製造方法]
続いて、本発明の吸水処理材の製造方法について、図1を参照して説明する。
本発明に係る排泄物処理材の製造方法は、造粒工程(S1)と、被覆工程(S2)と、分粒工程(S3)と、乾燥工程(S4)とから構成されている。
【0046】
(1)造粒工程
本工程は、芯部を形成する工程である(S1)。
本工程では、プラスチック材料、有機質廃材等の構成材料を破砕機で所定の大きさに粉砕し、当該粉砕された構成材料を所定の割合となるようにミキサーに投入して混ぜ合わせる。そして、加水して水分含有率を20重量%程度に高めた後に、基材を押出造粒することにより、芯部を形成する作業を行うことになる。
【0047】
(2)被覆工程
本工程は、芯部の周囲に被覆層部を形成する工程である(S2)。
本工程では、被覆層部の構成材料(被覆材料)を調合し、当該構成材料を、コーティング装置等を用いて、芯部の周囲に被覆層部を形成することにより、二層構造の粒状の吸水処理材を製造する作業を行うことになる。
【0048】
(3)分粒工程
本工程は、吸水処理材の寸法が所定の規格になるように分粒する工程である(S3)。
本工程では、所定の寸法の篩目を有する篩に、前工程で製造された吸水処理材を通過させることにより規格外の製品を分別し、所定の規格品のみを抽出する作業を行うことになる。
【0049】
(4)乾燥工程
本工程は、規格品として抽出した吸水処理材を乾燥機で乾燥させる工程である(S4)。
【0050】
このように、本発明の吸水処理材は公知の製造方法で製造することができ、適宜、他の工程を追加することも可能である。
【0051】
[他の実施形態]
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
特に、上記実施形態では、粒状の芯部と当該芯部を被覆する被覆層部を備える二層構造の吸水処理材を例として説明を行った。しかし、本発明の吸水処理材は、被覆層部を有しない粒状の吸水処理材のみから構成されているものであってもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0052】
本発明の吸水処理材の性能を調べるために、下記の配合でサンプルを作成し、性能試験を行った。
【0053】
[サンプルの製造方法]
本サンプルは、上記実施の形態と同様に芯部と被覆層部とから形成される複層構造の粒状の吸水処理材であり、当該芯部と被覆層部を構成する材料の重量比を83%対17%として(各サンプル共通)、図1の製造方法と同様の方法により製造した。
【0054】
(1)芯部
<サンプル番号1乃至サンプル番号7>
ポリウレタン、紙おむつ廃材(衛生材メーカーから発生する紙おむつ廃材の規格外品を主材料とし、これを粗粉砕することにより中身のフラッフパルプといわれる紙粉と吸水性ポリマーを分離し、当該紙粉と吸水性ポリマーを除いた外層体のみを用いる)及びポリアクリルアミドを共通の構成材料とし、塩化ビニル壁紙、バフ粉を選択的に加えた。
各構成材料及びその配合割合は、表1の通りである。
【0055】
<サンプル番号8>
紙おむつ廃材35重量%、塩化ビニル廃材30重量%、不織布廃材とトリムロスの混合物30重量%及びたばこフィルター5重量%を構成材料とした。
【0056】
(2)被覆層部
被覆層部の材料は、総てのサンプルに関して同様であり、紙粉60重量%(破砕機の0.35mm篩目を通過したもの)、接着剤(澱粉、ポリアクリルアミド及び吸水性樹脂(40μm篩目を通過したもの)の混合物)30重量%、吸水剤(80μm篩目を通過したもの)10重量%を混合して被覆材料を生成し、これを芯部の表面に塗して被覆層部を形成した。
【0057】
[性能試験の方法]
(1)発火点
米国材料・試験協会(ASTM)(American Society of Testing and Materials)のASTM E659に準拠した試験方法により、発火点を測定した。
【0058】
(2)CO発生量
サンプル(0.20g(製造した吸水処理材を3×3mm角に細切したもの))を、燃焼管中に充填し、支援ガス(空気 0.3±0.05リットル/分)を供給して、設定温度(850±10℃)に保ち、燃焼管式空気法(JISK2541−3に準拠)により燃焼させ、発生した二酸化炭素量をガスクロマトグラフ法(GC−TCD)により測定した。
【0059】
(3)灰分
550℃でサンプルを燃焼させ、1時間強熱してその質量を計測する。前後のひょう量差が前回に量った強熱残留物の質量の0.1%以下となったときを恒量(重量)として計測し、当初のサンプルの重量に対する恒量の割合を算出した。
【0060】
(4)発熱量
熱量を計測するためのボンブカロリーメータ(爆灼熱量計)を用い、当該ボンブカロリーメータ中で各サンプルを燃焼させて、吸水処理材の使用前の発熱量を測定した。
【0061】
[測定結果]
表1及び表2は、各サンプルに関して、上記の方法で、発火点、灰分、発熱量、CO発生量を測定等したものである。
これらの各サンプルは、本発明の吸水処理材の性質を満たしているものであり、さらに詳細に検討する。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
(サンプル番号1及びサンプル番号7)、(サンプル番号2とサンプル番号6)、(サンプル番号3とサンプル番号5)の対比によれば、ポリウレタンの含有量が多いと灰分及び発熱量が増加し、発火点が低下することが明らかとなった。また、紙おむつ廃材が多くなると、発火点が高くなり、灰分及び発熱量が減少することが明らかになった。
これによれば、複数のプラスチック材料を組み合わせることにより、所望の性質とすることができることが確認された。
【0065】
(サンプル番号1とサンプル番号2)の対比によれば、塩化ビニル壁紙の含有量が多いと、灰分が増加することが明らかになった。なお、塩化ビニル壁紙の含有量は、発火点には大きな影響を与えないことが明らかになった。
【0066】
(サンプル番号2とサンプル番号3)、(サンプル番号5とサンプル番号6)の対比によれば、ポリウレタン若しくは紙おむつ廃材に代えてバフ粉の含有量を多くすると、灰分及び発熱量が増加し、発火点が高くなることが明らかになった。
【0067】
なお、サンプル番号1乃至サンプル番号7に関するCO発生量は、概ね2000g/kgであり、大きな変動は見られなかった。
【0068】
そこで、各材料の特性を生かして、発火点及び発熱量が高く、灰分が少なくなるように、芯部の配合を決定する必要があるが、塩化ビニル壁紙及びバフ粉を10重量%ずつ、ポリウレタン30重量%乃至40重量%、紙おむつ廃材(衛生廃材等)50重量%乃至40重量%の配合比率で配合することが特に好適であることが明らかになった。
【0069】
サンプル番号8は、サンプル番号1乃至サンプル番号7と比較して、プラスチック材料の重量比を少なくして、有機質廃材の重量比を多くしている。これによれば、他のサンプルと比較して、サンプル番号8では、CO発生量は減少するが、発火点が低下し、灰分が増加し、発熱量が低下する(サンプル番号7の場合を除く)ことが明らかになった。
【符号の説明】
【0070】
S1 造粒工程
S2 被覆工程
S3 分粒工程
S4 乾燥工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
総重量に対して、20重量%乃至90重量%の廃棄物を含み、
前記廃棄物は、2種類以上のプラスチック材料を含有する粒状の吸水処理材であって、
発火点が400℃以上であり、
灰分が20重量%以下であり、
前記総重量の1.1倍乃至1.6倍の範囲内の重量の水分を吸収した状態での発熱量が2930J/g(700kcal/kg)乃至10465J/g(2500kcal/kg)の範囲内であるとともに、
二酸化炭素発生量が1700g/kg乃至2500g/kgの範囲内であること、を特徴とする吸水処理材。
【請求項2】
総重量に対して、20重量%乃至90重量%の廃棄物を含み、
前記廃棄物は、2種類以上のプラスチック材料を含有する粒状の吸水処理材であって、
発火点が400℃以上であり、
灰分が20重量%以下であり、
吸水前の発熱量が11871J/g(2836kcal/kg)乃至34250J/g(8182kcal/kg)の範囲内であるとともに、
二酸化炭素発生量が1700g/kg乃至2500g/kgの範囲内であること、を特徴とする吸水処理材。
【請求項3】
前記吸水処理材は、粒状の芯部と前記芯部を被覆する被覆層部とを有する複層構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸水処理材。
【請求項4】
前記被覆層部は、未発色の水溶性色素材料の粉末を含有し、外部水分との接触により前記水溶性色素材料が発色可能となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の吸水処理材。



【図1】
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【公開番号】特開2011−56490(P2011−56490A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238769(P2009−238769)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(509229795)
【Fターム(参考)】