説明

吸水性ポリマー粒子の製造法

水性ポリマーゲルを強制通風型ベルト式乾燥機内で連続コンベヤベルト上で乾燥させ、かつ該コンベヤベルトの表面が少なくとも0.9μmの粗さを有している、吸水性ポリマー粒子の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリマーゲルを強制通風型ベルト式乾燥機内で連続コンベヤベルト上で乾燥させ、かつ該コンベヤベルトの表面が少なくとも0.9μmの粗さを有している、吸水性ポリマー粒子の製造法に関する。
【0002】
吸水性ポリマー粒子は、おむつ、タンポン、生理用ナプキン及びその他の衛生用品の製造に使用されるが、農業園芸における保水剤としても使用される。吸水性ポリマー粒子は高吸収体とも称される。
【0003】
吸水性ポリマー粒子の製造は、論文"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F. L. Buchholz及びA. T. Graham, Wiley-VCH, 1998, 第71頁〜第103頁に記載されている。
【0004】
重合により得られた水性ポリマーゲルは、典型的には強制通風型ベルト式乾燥機で乾燥される。ここで、強制通風型ベルト式乾燥機のコンベヤベルト上でのポリマーゲルの収縮が問題となっている。この収縮によって、乾燥の進行に伴って、ポリマーゲルによるコンベヤベルトの被覆はもはや該コンベヤベルトの全幅にわたっては行われず、縁部範囲では乾燥空気の一部が使用されずにコンベヤベルトを通過する。
【0005】
前記課題の解決のために、多段階の強制通風型ベルト式乾燥機の使用が提案されており、その際、乾燥物はその都度隣のコンベヤベルトに新たに分配される("Perry's Chemical Engineers' Handbook", 第7版, McGraw-Hill, 第12頁〜第48頁も参照のこと)。
【0006】
本発明の課題は、強制通風型ベルト式乾燥機を用いて水性ポリマーゲルを乾燥させるための改善された方法を提供することであった。
【0007】
前記課題は、以下:
a)少なくとも部分的に中和されていてよい、少なくとも1の、エチレン系不飽和の、酸基を含有するモノマー、
b)少なくとも1の架橋剤、
c)少なくとも1の開始剤、
d)場合により、a)で挙げられたモノマーと共重合可能な1以上のエチレン系不飽和モノマー、及び
e)場合により、1以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液又は−懸濁液を重合させ、得られた水性ポリマーゲルを強制通風型ベルト式乾燥機内で連続コンベヤベルトを用いて乾燥させ、粉砕し、分級し、かつ場合により熱的に表面後架橋させることを含む、吸水性ポリマー粒子の製造法において、該連続コンベヤベルトの表面が少なくとも0.9μmの粗さRzを有していることを特徴とする方法により解決された。
【0008】
連続コンベヤベルトの表面は、有利には少なくとも0.95μm、特に有利には少なくとも1μm、極めて特に有利には少なくとも2μmの粗さRzを有している。粗さRzは断面形の最大高さであり、DIN EN ISO 4287に記載されている。
【0009】
本発明は、結果的に亀裂形成の増大が生じることなく、乾燥の間のポリマーゲルの収縮を適切な表面の選択によって低減させることができるという知見に基づいている。これは恐らく、乾燥すべきポリマーゲルが乾燥の間にガラス転移温度TGを上回る温度を有することが原因である。ガラス転移温度TGを上回ると、ポリマーはゴム弾性でかつ粘性となる。従って、ポリマー粒子はその粘性に基づきコンベヤベルトの表面に粘着し、生じる引張力を吸収し、かつ亀裂形成を防止することが可能である。この表面への粘着性は、粗さRzが大きいことによって促進される。
【0010】
本発明による方法に好適な強制通風型ベルト式乾燥機は、例えば論文"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F. L. Buchholz及びA. T. Graham, Wiley-VCH, 1998, 第89頁〜第92頁に記載されている。
【0011】
有利には、本発明による方法において、生成物と接触する表面がステンレス鋼からなるコンベヤベルトを有する強制通風型ベルト式乾燥機を使用する。ここで、相応する表面処理によって、例えばサンドブラストによって、粗さRzを所望の値に調節することができる。サンドブラストされた鋼表面は、マットな、又は研磨された鋼表面よりも大きな粗さRzを有する。
【0012】
ステンレス鋼は、通常はクロム10.5〜13質量%のクロム含分を有する。クロム割合が高いと、鋼表面上で二酸化クロムからの保護作用を有する不動態化が生じる。他の合金成分によって耐腐食性が向上し、かつ機械的特性が改善される。
【0013】
特に好適なステンレス鋼は、例えば少なくとも0.08質量%の炭素を含有するオーステナイト鋼である。有利には、該オーステナイト鋼は、鉄、炭素、クロム、ニッケル及び場合によりモリブデンの他に、更なる合金成分、有利にはニオブ又はチタンを含有する。
【0014】
有利なステンレス鋼は、DIN EN 10020による材料番号1.43xx又は1.45xxを有する鋼であり、その際、xxは0〜99の自然数であることができる。特に有利な材料は、材料番号1.4301、1.4541及び1.4571を有する鋼、特に材料番号1.4301を有する鋼である。
【0015】
連続コンベヤベルトは、通常は多数の開口部を有している。本発明の有利な一実施態様において、連続コンベヤベルトは、輸送方向に対して横向きに、ずれた列内に配置された、有利には5〜50mm、特に有利には10〜40mm、極めて特に有利には15〜30mmの長さ、有利には0.5〜5mm、特に有利には1〜4mm、極めて特に有利には1.5〜3mmの幅、及び、有利には2〜20、特に有利には5〜15、極めて特に有利には8〜12の幅に対する長さの比を有する多数のスリットを有している。
【0016】
強制通風型ベルト式乾燥機の幅は、有利には1〜10m、特に有利には2〜7.5m、極めて特に有利には3〜5mである。
【0017】
強制通風型ベルト式乾燥機の長さは、有利には10〜80m、特に有利には30〜60m、極めて特に有利には40〜50mである。
【0018】
強制通風型ベルト式乾燥機のコンベヤベルト速度は、有利には0.005〜0.05m/s、特に有利には0.01〜0.35m/s、極めて特に有利には0.015〜0.025m/sである。
【0019】
強制通風型ベルト式乾燥機の滞留時間は、有利には10〜120分、特に有利には20〜90分、極めて特に有利には30〜60分である。
【0020】
供給帯域におけるポリマーゲル層の水含有量は、有利には25〜90質量%、特に有利には35〜70質量%、極めて特に有利には40〜60質量%である。水性ポリマーゲルの平均粒度は、有利には0.1〜10mm、特に有利には0.5〜5mm、極めて特に有利には1〜2mmである。
【0021】
強制通風型ベルト式乾燥機のコンベヤベルト上のポリマーゲル層の高さは、供給帯域において有利には2〜20cm、特に有利には5〜15cm、極めて特に有利には8〜12cmである。
【0022】
強制通風型ベルト式乾燥機のガス入口温度は、有利には150〜200℃、特に有利には160〜190℃、極めて特に有利には170〜180℃である。
【0023】
乾燥に使用するガス流は、水蒸気を含有してよい。しかしながら、この水蒸気割合は、有利には最高でも50℃、特に有利には最高でも40℃、極めて特に有利には最高でも30℃の露点に相応する値を超えないことが望ましい。
【0024】
強制通風型ベルト式乾燥機上での乾燥後のポリマーゲルの水含有量は、有利には0.5〜15質量%、特に有利には1〜10質量%、極めて特に有利には2〜8質量%である。
【0025】
特に有利な乾燥法は、WO2001/100300A1に記載されている。
【0026】
以下に、吸水性ポリマー粒子の製造を詳説する:
【0027】
吸水性ポリマー粒子は、モノマー溶液又は−懸濁液の重合により製造され、かつ通常は非水溶性である。
【0028】
モノマーa)は有利には水溶性であり、即ち、23℃での水中での溶解度は、典型的には少なくとも1g/100g 水、有利には少なくとも5g/100g 水、とりわけ有利には少なくとも25g/100g 水、極めて有利には少なくとも35g/100g 水である。
【0029】
好適なモノマーa)は、例えばエチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸である。特に有利なモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸である。アクリル酸が特にとりわけ有利である。
【0030】
更なる好適なモノマーa)は、例えばエチレン系不飽和スルホン酸、例えばスチレンスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0031】
不純物は重合に対して重大な影響を有し得る。従って、使用原料が可能な限り高い純度を有することが望ましい。従って、モノマーa)を特別に精製することがしばしば有利である。好適な精製方法は、例えばWO2002/055469A1、WO2003/078378A1及びWO2004/035514A1に記載されている。好適なモノマーa)の一つは、例えばWO2004/035514A1により精製された、アクリル酸99.8460質量%、酢酸0.0950質量%、水0.0332質量%、プロピオン酸0.0203質量%、フルフラール0.0001質量%、無水マレイン酸0.0001質量%、ジアクリル酸0.0003質量%及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.0050質量%を含有するアクリル酸である。
【0032】
モノマーa)の全量に対するアクリル酸及び/又はその塩の割合は、有利には少なくとも50モル%、特に有利には少なくとも90モル%、とりわけ特に有利には少なくとも95モル%である。
【0033】
モノマーa)は、通常は重合阻害剤、有利にはヒドロキノン半エーテルを、貯蔵安定剤として含む。
【0034】
モノマー溶液は、中和されていないモノマーa)に対してその都度、有利には250質量ppmまでの、有利には最高で130質量ppm、とりわけ有利には最高で70質量ppm、有利には少なくとも10質量ppm、とりわけ有利には少なくとも30質量ppm、特に約50質量ppmのヒドロキノン半エーテルを含有する。例えば、モノマー溶液の製造のために、ヒドロキノン半エーテルの相応の含有量を有する、エチレン系不飽和の、酸基を含有するモノマーを使用することができる。
【0035】
有利なヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及び/又はアルファ−トコフェロール(ビタミンE)である。
【0036】
好適な架橋剤b)は、架橋に適した基を少なくとも2個有する化合物である。この種の基は、例えば、ポリマー鎖へのラジカル重合導入が可能なエチレン系不飽和基、及び、モノマーa)の酸基と共有結合を形成し得る官能基である。更に、モノマーa)の少なくとも2個の酸基と配位結合を形成し得る多価金属塩も架橋剤b)として適している。
【0037】
架橋剤b)は、有利には、ポリマー網目構造へのラジカル重合導入が可能な少なくとも2個の重合性基を有する化合物である。好適な架橋剤b)は、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン(例えばEP0530438A1に記載)、ジ−及びトリアクリレート(例えばEP0547847A1、EP0559476A1、EP0632068A1、WO93/21237A1、WO2003/104299A1、WO2003/104300A1、WO2003/104301A1及びDE10331450A1に記載)、アクリレート基以外に更なるエチレン系不飽和基を含有する混合アクリレート(例えばDE10331456A1及びDE10355401A1に記載)、又は架橋剤混合物(例えばDE19543368A1、DE19646484A1、WO90/15830A1及びWO2002/032962A2に記載)である。
【0038】
有利な架橋剤b)は、ペンタエリトリットトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、メチレンビスメタクリルアミド、15回エトキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリアリルアミンである。
【0039】
特にとりわけ有利な架橋剤b)は、例えばWO2003/104301A1に記載されているような、複数回エトキシ化及び/又はプロポキシ化され、ジ−及び/又はトリアクリレートを得るためにアクリル酸又はメタクリル酸とエステル化されたグリセリンである。3〜10回エトキシ化されたグリセリンのジ−及び/又はトリアクリレートが特に有利である。1〜5回エトキシ化及び/又はプロポキシル化されたグリセリンのジ−又はトリアクリレートが特にとりわけ有利である。3〜5回エトキシ化及び/又はプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレート、特に3回エトキシ化されたグリセリンのトリアクリレートが最も有利である。
【0040】
架橋剤b)の量は、モノマーa)に対してその都度、有利には0.05〜1.5質量%、特に有利には0.1〜1質量%、特にとりわけ有利には0.3〜0.6質量%である。架橋剤含有量の増加に伴って遠心分離保持力(CRC)は低下し、圧力21.0g/cm2下での吸収量(AUL0.3psi)は最大値を通過する。
【0041】
開始剤c)として、重合条件下にラジカルを生じる全ての化合物、例えば、熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤を使用することができる。好適なレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/重亜硫酸ナトリウム及び過酸化水素/重亜硫酸ナトリウムである。有利には、熱開始剤とレドックス開始剤とからの混合物、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸を使用する。しかしながら、還元性成分として有利には、2−ヒドロキシ2−スルフィナト酢酸のナトリウム塩と、2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸の二ナトリウム塩と、重亜硫酸ナトリウムとからの混合物を使用する。この種の混合物は、Brueggolite(R) FF6及びBrueggolite(R) FF7(Brueggeman Chemicals; Heilbronn; DE)として入手可能である。
【0042】
エチレン系不飽和の、酸基を含有するモノマーa)と共重合可能なエチレン系不飽和モノマーd)は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートである。
【0043】
水溶性ポリマーe)として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、改質セルロース、例えばメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリグリコール又はポリアクリル酸、有利にはデンプン、デンプン誘導体及び改質セルロースを使用することができる。
【0044】
通常は、モノマー水溶液を使用する。モノマー溶液の水含有量は、有利には40〜75質量%、特に有利には45〜70質量%、特にとりわけ有利には50〜65質量%である。モノマー懸濁液、即ち、過剰のモノマーa)、例えばアクリル酸ナトリウムを含有するモノマー溶液を使用することも可能である。水含有量の増加に伴って、引き続く乾燥時のエネルギー消費が増大し、水含有量の減少に伴って、重合熱を不十分にしか排出できなくなる。
【0045】
有利な重合阻害剤は、最適な作用のためには溶存酸素を必要とする。従って、モノマー溶液から、重合前に、不活性化、即ち不活性ガス、有利には窒素又は二酸化炭素の導通によって溶存酸素を除去することができる。有利には、重合前のモノマー溶液の酸素含有量を、1質量ppm未満に、特に有利には0.5質量ppm未満に、とりわけ特に有利には0.1質量ppm未満に低下させる。
【0046】
好適な反応器は、例えばニーダー式反応器又はベルト式反応器である。ニーダー中で、モノマー水溶液又は−懸濁液の重合の際に生じる水性ポリマーゲルを、例えばWO2001/038402A1に記載されているように反転撹拌軸によって連続的に破砕する。ベルト上での重合は、例えばDE3825366A1及びUS6,241,928に記載されている。ベルト式反応器内での重合の場合には、生じた水性ポリマーゲルを更なる方法工程において例えば押出機又はニーダー中で破砕する必要がある。
【0047】
乾燥特性を改善するために、ニーダーを用いて得られた破砕された水性ポリマーゲルをさらに押出することができる。
【0048】
得られた水性ポリマーゲルの酸基は、通常は部分的に中和されている。この中和を、有利にはモノマーの段階で実施する。この中和を、通常は、中和剤を水溶液としてか又は有利には固体として混入することにより行う。中和度は、有利には25〜95モル%、特に有利には30〜80モル%、極めて特に有利には40〜75モル%であり、その際、通常の中和剤、有利にはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩並びにその混合物を使用することができる。アルカリ金属塩の代わりにアンモニウム塩を使用することもできる。アルカリ金属としてはナトリウム及びカリウムが特に有利であるが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム並びにその混合物が極めて特に有利である。
【0049】
しかしながら、この中和を、重合後に、重合の際に生じる水性ポリマーゲルの段階で実施することもできる。更に、重合前に中和剤の一部をモノマー溶液に既に添加することによって、酸基の40モル%まで、有利には10〜30モル%、特に有利には15〜25モル%を中和し、かつ所望の最終中和度を重合後に初めて水性ポリマーゲルの段階で調節することも可能である。水性ポリマーゲルを少なくとも部分的に重合後に中和する場合には、水性ポリマーゲルを有利には機械的に、例えば押出機を用いて破砕し、その際、中和剤を吹き付けるか、散布するか又は注ぎ込み、次いで慎重に混合することができる。そのために、得られたゲル材料をさらに数回、均質化のために押出することができる。
【0050】
次いで、この水性ポリマーゲルを、強制通風型ベルト式乾燥機を用いて、残留湿分含有量が有利には0.5〜15質量%、特に有利には1〜10質量%、特にとりわけ有利には2〜8質量%となるまで乾燥させ、その際、この残留湿分含有量をEDANAにより推奨されている試験法No. WSP 230.2-05 "Moisture Content"に従って測定する。残留湿分が高過ぎると、乾燥したポリマーゲルのガラス転移温度Tgは低過ぎてしまい、かつ更なる後加工は困難である。残留湿分が低過ぎると、乾燥したポリマーゲルは脆過ぎてしまい、引き続く破砕工程において小さ過ぎる粒度を有するポリマー粒子(「fines」)が不所望にも多量に生じてしまう。このゲルの固体含有量は、乾燥前には有利には25〜90質量%、特に有利には35〜70質量%、特にとりわけ有利には40〜60質量%である。
【0051】
この後で、この乾燥したポリマーゲルを粉砕及び分級し、その際、粉砕のために通常は1段階又は多段階のロールミル、有利には2段階又は3段階のロールミル、ピンミル、ハンマーミル又はスイングミルを使用することができる。
【0052】
生成物画分として分離したポリマー粒子の平均粒度は、有利には少なくとも200μm、特に有利には250〜600μm、極めて特に有利には300〜500μmである。生成物画分の平均粒度は、EDANAによって推奨されている試験法No. WSP 220.2-05 "Partikel Size Distribution"に従って算出することができ、その際、篩画分の質量割合を累積的にプロットして平均粒度をグラフにより決定する。ここで、平均粒度は、累積して50質量%となる目開きの値である。
【0053】
少なくとも150μmの粒度を有する粒子の割合は、有利には少なくとも90質量%、特に有利には少なくとも95質量%、特にとりわけ有利には少なくとも98質量%である。
【0054】
小さ過ぎる粒度を有するポリマー粒子は、透過性(SFC)を低下させる。従って、小さ過ぎるポリマー粒子(「fines」)の割合は低いことが望ましい。
【0055】
従って通常は、小さ過ぎるポリマー粒子を分離して本方法に返送する。これは有利には、重合の前、間又は直後に、即ち水性ポリマーゲルの乾燥前に行う。小さ過ぎるポリマー粒子を、返送の前又は間に、水及び/又は水性界面活性剤で湿潤させることができる。
【0056】
後の方法工程で、例えば表面後架橋又は他のコーティング工程の後で、小さ過ぎるポリマー粒子を分離することも可能である。この場合、返送する小さ過ぎるポリマー粒子は、表面後架橋されているか、又は他の方法で、例えば熱分解法シリカでコーティングされている。
【0057】
ニーダー式反応器を重合に使用する場合には、小さ過ぎるポリマー粒子を有利には重合の最後の1/3の間に添加する。
【0058】
小さ過ぎるポリマー粒子を、極めて早期に、例えば既にモノマー溶液に添加する場合には、これによって、得られた吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持力(CRC)は低下する。しかしながらこれは、例えば架橋剤b)の使用量を適合させることにより補償可能である。
【0059】
小さ過ぎるポリマー粒子を、極めて遅くに、例えば重合反応器に後接続された装置、例えば押出機中で初めて添加する場合には、この小さ過ぎるポリマー粒子を得られた水性ポリマーゲルに組み込むのは極めて困難である。しかしながら、不十分に組み込まれた小さ過ぎるポリマー粒子は粉砕の間に乾燥ポリマーゲルから再度外れるため、分級の際に再度分離され、それによって、返送すべき小さ過ぎるポリマー粒子の量が高まる。
【0060】
最高で850μmの粒度を有する粒子の割合は、有利には少なくとも90質量%、特に有利には少なくとも95質量%、特にとりわけ有利には少なくとも98質量%である。
【0061】
最高で600μmの粒度を有する粒子の割合は、有利には少なくとも90質量%、特に有利には少なくとも95質量%、特にとりわけ有利には少なくとも98質量%である。
【0062】
大き過ぎる粒度を有するポリマー粒子によって、膨潤速度は低下する。従って、大き過ぎるポリマー粒子の割合も同様に低いことが望ましい。
【0063】
従って通常は、大き過ぎるポリマー粒子を分離し、乾燥したポリマーゲルの粉砕に返送する。
【0064】
ポリマー粒子を、特性のさらなる改善のために表面後架橋させることができる。好適な表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2個のカルボキシレート基と共有結合を形成し得る基を含む化合物である。好適な化合物は、例えば多官能性アミン、多官能性アミドアミン、多官能性エポキシド(例えばEP0083022A2、EP0543303A1及びEP0937736A2に記載)、二官能性又は多官能性アルコール(例えばDE3314019A1、DE3523617A1及びEP0450922A2に記載)、又はβ−ヒドロキシアルキルアミド(例えばDE10204938A1及びUS6,239,230に記載)である。
【0065】
更に、DE4020780C1には環状カーボネートが、DE19807502A1には2−オキサゾリジノン及びその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリジノンが、DE19807992C1にはビス−及びポリ−2−オキサゾリジノンが、DE19854573A1には2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジン及びその誘導体が、DE19854574A1にはN−アシル−2−オキサゾリジノンが、DE10204937A1には環状尿素が、DE10334584A1には二環式アミドアセタールが、EP1199327A2にはオキセタン及び環状尿素が、またWO2003/031482A1にはモルホリン−2,3−ジオン及びその誘導体が、好適な表面後架橋剤として記載されている。
【0066】
有利な表面後架橋剤は、エチレンカーボネート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドとエピクロロヒドリンとの反応生成物、及びプロピレングリコールと1,4−ブタンジオールとからの混合物である。
【0067】
特にとりわけ好ましい表面後架橋剤は、2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリジノン、2−オキサゾリジノン及び1,3−プロパンジオールである。
【0068】
更に、DE3713601A1に記載されているような、付加的な重合性エチレン系不飽和基を含む表面後架橋剤を使用することもできる。
【0069】
表面後架橋剤の量は、ポリマー粒子に対してその都度、有利には0.001〜2質量%、特に有利には0.02〜1質量%、特にとりわけ有利には0.05〜0.2質量%である。
【0070】
本発明の有利な一実施態様において、表面後架橋の前、間又は後に、表面後架橋剤に加えて多価カチオンを粒子表面に施与する。
【0071】
本発明による方法において使用可能な多価カチオンは、例えば二価カチオン、例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄及びストロンチウムのカチオン、三価カチオン、例えばアルミニウム、鉄、クロム、希土類及びマンガンのカチオン、四価カチオン、例えばチタン及びジルコニウムのカチオンである。対イオンとして、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びカルボン酸イオン、例えば酢酸イオン及び乳酸イオンが考えられる。硫酸アルミニウム及び乳酸アルミニウムが好ましい。金属塩以外に、多価カチオンとしてポリアミンを使用することもできる。
【0072】
多価カチオンの使用量は、ポリマー粒子に対してその都度、例えば0.001〜1.5質量%、有利には0.005〜1質量%、とりわけ有利には0.02〜0.8質量%である。
【0073】
通常は、表面後架橋剤の溶液を乾燥したポリマー粒子に吹き付けることによって表面後架橋を実施する。この吹付けに引続き、表面後架橋剤で被覆されたポリマー粒子を熱的に乾燥させ、その際、表面後架橋反応は乾燥の間でも乾燥後でも生じ得る。
【0074】
表面後架橋剤の溶液の吹付けを、有利には、可動式混合器具を有する混合機、例えばスクリュー型混合機、ディスク型混合機及びパドル型混合機中で実施する。水平型混合機、例えばパドル型混合機は特に有利であり、垂直型混合機は特にとりわけ有利である。水平型混合機と垂直型混合機とは混合軸の位置により区別され、即ち、水平型混合機は水平に配置された混合軸を、垂直型混合機は垂直に配置された混合軸を有する。好適な混合機は、例えばHorizontale Pflugschar(R) Mischer (Gebr. Loedige Maschinenbau GmbH; Paderborn; DE), Vrieco-Nauta Continuous Mixer (Hosokawa Micron BV; Doetinchem; NL), Processall Mixmill Mixer (Processall Incorporated; Cincinnati; US)及びSchugi Flexomix(R)(Hosokawa Micron BV; Doetinchem; NL)である。しかしながら、流動層内で表面後架橋剤溶液を吹き付けることも可能である。
【0075】
典型的には、表面後架橋剤を水溶液として使用する。非水性溶剤含有量ないし全溶剤量によって、ポリマー粒子への表面後架橋剤の侵入深さを調節することができる。
【0076】
溶剤として水のみを使用する場合には、有利には界面活性剤を添加する。これによって湿潤挙動が改善され、塊状化傾向は減少する。しかしながら有利には、溶剤混合物、例えばイソプロパノール/水、1,3−プロパンジオール/水及びプロピレングリコール/水を使用し、その際、混合質量比は有利には20:80〜40:60である。
【0077】
乾燥機中での吸水性ポリマー粒子の温度は、有利には100〜250℃、特に有利には130〜220℃、特にとりわけ有利には150〜200℃である。乾燥機中での滞留時間は、有利には10〜120分、特に有利には10〜90分、極めて特に有利には30〜60分である。乾燥機の充填度は、有利には30〜80%、特に有利には40〜75%、極めて特に有利には50〜70%である。乾燥機の充填度は、流出堰の高さによって調節可能である。
【0078】
引き続き、この表面後架橋させたポリマー粒子を改めて分級することができ、その際、小さ過ぎる及び/又は大き過ぎるポリマー粒子を分離して、本方法に返送する。
【0079】
この表面後架橋させたポリマー粒子を、特性のさらなる改善のために被覆又は後湿潤させることができる。
【0080】
この後湿潤を、有利には30〜80℃、特に有利には35℃〜70℃、特にとりわけ有利には40〜60℃で実施する。温度が低過ぎると吸水性ポリマー粒子は塊状化傾向を示し、比較的高温であると水が既に著しく蒸発してしまう。後湿潤に使用する水量は、有利には1〜10質量%、特に有利には2〜8質量%、特にとりわけ有利には3〜5質量%である。後湿潤によってポリマー粒子の機械的安定性が高められ、かつ該粒子の帯静電気傾向が減少する。
【0081】
膨潤速度並びに透過性(SFC)の改善に適したコーティングは、例えば無機不活性物質、例えば非水溶性金属塩、有機ポリマー、カチオン性ポリマー並びに二価又は多価の金属カチオンである。ダスト結合に適したコーティングは、例えばポリオールである。ポリマー粒子の不所望なケーキング傾向への抵抗に適したコーティングは、例えば熱分解法シリカ、例えばAerosil(R) 200及び界面活性剤、例えばSpan(R) 20である。
【0082】
本発明による方法により製造された吸水性ポリマー粒子は、有利には0〜15質量%、特に有利には0.2〜10質量%、極めて特に有利には0.5〜8質量%の湿分含有量を有しており、その際、該湿分含有量はEDANAにより推奨されている試験法No. WSP 230.2-05 "Moisture Content"に従って測定される。
【0083】
本発明による方法により製造された吸水性ポリマー粒子は、典型的には少なくとも15g/g、有利には少なくとも20g/g、有利には少なくとも22g/g、特に有利には少なくとも24g/g、極めて特に有利には少なくとも26g/gの遠心分離保持力(CRC)を有する。吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持力(CRC)は、通常は60g/g未満である。該遠心分離保持力(CRC)は、EDANAにより推奨されている試験法No. WSP 241.2-05 "Centrifuge Retention Capacity"に従って測定される。
【実施例】
【0084】
実施例
実施例1(水性ポリマーゲルの製造)
37.3質量%ナトリウムアクリレート水溶液4485gを、アクリル酸427g及び水1024gと混合し、窒素で不活性化した。この混合物を、窒素で不活性化させたWerner & Pfleiderer LUK 8.0 K2ニーダー(2軸、Σ型ブレード)中へ入れ、順に、15回エトキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート11.96g、0.5質量%アスコルビン酸水溶液20.50g及び15質量%過硫酸ナトリウム水溶液31.66gと混合した。該ニーダーを、最大回転数(より高速の軸 約98rpm、より低速の軸 約49rpm、約2:1の比)で撹拌した。過硫酸ナトリウムの添加直後に、ニーダージャケットを74℃の温かい熱媒体で加熱した。最大温度に達した後、ジャケット加熱のスイッチを切り、該ニーダー中でさらに15分間後反応させた。得られたポリマーゲルを63℃に冷却し、排出し、後続の試験に使用した。
【0085】
実施例2(比較例)
実施例1からの水性ポリマーゲル1234gを乾燥トレイに注ぎ入れ、強制通風型乾燥棚中で175℃で370分間乾燥させた。該乾燥トレイは、高さ5cm、内部寸法23.7×23.7cmの特殊鋼フレームと、交換可能な特殊鋼底板(材料番号14301)とからなっていた。特殊鋼底板は正方形であり、2×20mmの開口部を有するスリットの平行な列を有しており、かつ特殊鋼フレームにぴったりとはめ込まれていた。
【0086】
特殊鋼底板の表面は0.32μmの粗さRzを有していた。
【0087】
特殊鋼フレームに予めPTFEスプレーを噴霧することで、生じ得る付着を回避した。乾燥前に、乾燥トレイ内の水性ポリマーゲルに適切な特殊鋼板で負荷をかけることで、ポリマーゲルの縁部が乾燥の際に上方へ湾曲するのを防いだ。該特殊鋼板は2×20mmの開口部を有するスリットの平行な列を有していた。
【0088】
ポリマーゲルは乾燥の際に三次元的に収縮した。収縮の評価のために、二次元ないし平面状の収縮のみを測定した。そのために、乾燥したポリマーゲルを完全ブロックとして黒色の基材上に配置し、上方56cmの距離から撮影し、収縮パーセンテージをピクセル測定により記録した。
【0089】
ポリマーゲルの老化プロセス及び他の妨害パラメータを排除するために、並行して、1.03μmの粗さRzを有する特殊鋼底板を用いて乾燥を実施し、かつこの対照測定の収縮を100%とした。
【0090】
0.32μmの粗さRzを有する試験した特殊鋼底板の収縮は95%であった。乾燥したポリマーゲルを特殊鋼底板からはがすことはできたものの、極めて困難であった。
【0091】
実施例3(比較例)
実施例2と同様に行った。特殊鋼底板を交換した。
【0092】
特殊鋼底板の表面は0.87μmの粗さRzを有していた。
【0093】
0.87μmの粗さRzを有する試験した特殊鋼底板の収縮は、152%であった。乾燥したポリマーゲルを特殊鋼底板から容易にはがすことができた。
【0094】
実施例4
実施例2と同様に行った。特殊鋼底板を交換した。
【0095】
特殊鋼底板の表面は7.32μmの粗さRzを有していた。
【0096】
7.32μmの粗さRzを有する試験した特殊鋼底板の収縮は92%であった。乾燥したポリマーゲルを特殊鋼底板から容易にはがすことができた。
【0097】
実施例5
実施例2と同様に行った。特殊鋼底板を交換した。
【0098】
特殊鋼底板の表面は18.4μmの粗さRzを有していた。
【0099】
18.4μmの粗さRzを有する試験した特殊鋼底板の収縮は67%であった。乾燥したポリマーゲルを特殊鋼底板から容易にはがすことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
a)少なくとも部分的に中和されていてよい、少なくとも1の、エチレン系不飽和の、酸基を含有するモノマー、
b)少なくとも1の架橋剤、
c)少なくとも1の開始剤、
d)場合により、a)で挙げられたモノマーと共重合可能な1以上のエチレン系不飽和モノマー、及び
e)場合により、1以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー水溶液又はモノマー水性懸濁液を重合させ、得られた水性ポリマーゲルを強制通風型ベルト式乾燥機内で連続コンベヤベルトを用いて乾燥させ、粉砕し、分級し、かつ場合により熱的に表面後架橋させることを含む、吸水性ポリマー粒子の製造法において、該連続コンベヤベルトの表面が少なくとも0.9μmの粗さRzを有していることを特徴とする方法。
【請求項2】
連続コンベヤベルトがオーステナイト鋼からなっている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
連続コンベヤベルトが多数の開口部を有している、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
連続コンベヤベルトが、輸送方向に対して横向きに、ずれた列内に配置された、長さ5〜50mm、幅0.5〜5mm及び幅に対する長さの比2〜20を有する多数のスリットを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
連続コンベヤベルトが少なくとも1mの幅を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
コンベヤベルト速度が0.005〜0.05m/sである、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
強制通風型ベルト式乾燥機内での乾燥前のポリマーゲルの水含有量が30〜70質量%である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
強制通風型ベルト式乾燥機内での乾燥後のポリマーゲルの水含有量が0.5〜15質量%である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
連続コンベヤベルト上のポリマーゲル充填層の高さが2〜20cmである、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
吸水性ポリマー粒子が少なくとも15g/gの遠心分離保持力を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2013−520540(P2013−520540A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554291(P2012−554291)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052284
【国際公開番号】WO2011/104152
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】