説明

吸着剤含有人工燃料供給原料

開示されるのは、新規人工燃料供給原料、記述されているプロセスによって生成される供給原料、該燃料供給原料を作製する方法、該燃料供給原料からエネルギーを生成する方法である。処理済みのMSW廃棄物流に由来する成分を使用して、ガラス、金属、砂塵および不燃物が実質的になく、かつ吸着剤を含有するそのような供給原料を作製することができる。これらの供給原料は、ガス化および燃焼燃料を含む様々な目的に有用である。加えて、硫黄および塩素を含むがこれらに限定されない、伝統的な燃料および供給原料中に存在する様々な汚染物質の量を低減するために、1つまたは複数の吸着剤を供給原料に添加してよい。さらに、吸着剤が添加されたこれらの供給原料は、腐食を軽減し、燃料変換を改善し、発電所の寿命を延長し、灰スラグ化を低減し、かつ動作温度を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本願は、米国特許法第119条の下で、2009年12月22日に出願された米国仮出願第61/289,217号に基づく優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体について本明細書で援用する。
【0002】
[0002] 本発明は、代替燃料に関する。特に、本発明は、排出プロフィール、腐食防止、ならびに燃焼およびガス化適用中の操作性能改善を制御するための人工燃料供給原料に関する。本明細書において記述される供給原料は、処理済みの都市固形廃棄物(municipal solid waste)、吸着剤、および任意選択により他の成分のうち少なくとも1つの成分を含む。
【背景技術】
【0003】
[0003] 化学物質および石油化学製品の加熱、輸送および生成に有用な化石燃料の供給源は、ますます希少かつ高価になりつつある。エネルギー生成産業および石油化学製品製造産業等の産業は、それらの生成物およびその他多くのものを産出するのに使用するための費用効果の高い人工燃料供給原料代替物を、積極的に探し求めている。加えて、増加の一途をたどる化石燃料の費用が原因で、エネルギーおよび石油化学製品の生成用の人工燃料供給原料を移動させるための輸送費用は急速に上昇している。
【0004】
[0004] これらのエネルギー生成産業および石油化学製品製造産業等は、加熱用エネルギーおよび電気の生成、ならびに化学物質および液体燃料の下流生成のために使用される合成ガスならびにタービン用エネルギー源の産出のための燃焼およびガス化プロセスにおいて使用するために、石炭および油および天然ガス等の化石燃料の使用に依存してきた。
【0005】
[0005] 燃焼およびガス化は、燃料源内に蓄えられているエネルギーを放出するために使用される熱化学プロセスである。燃焼は、反応炉内、過剰空気または過剰酸素の存在下で起こる。燃焼は概して蒸気を産出するために使用され、この蒸気を使用して、電気を生成するためのタービンに動力を供給する。しかしながら、燃料の燃焼の強力な性質は、生成されるガス中に有意な量の汚染物質を産出させる。例えば、石炭、油および天然ガス等の化石燃料の酸化雰囲気における燃焼は、例えば、喘息発作を刺激し得る地表レベルオゾンの前駆体である窒素酸化物を放出する。燃焼は、二酸化硫黄の最大の源でもあり、これが今度は極めて微細な粒子である硫酸塩を生成する。米国の発電所からの微粒子汚染は、毎年30,000人を超える人々の命を奪っている。何十万人もの米国人が、発電所からの微粒子に関連する喘息発作、心臓の問題および上下気道の問題に悩まされている。
【0006】
[0006] ガス化も、空気の非存在下または準化学量論量の酸素の存在下ではあるが、反応炉内で起こる。酸素の非存在下または準化学量論量の酸素下で起こる熱化学反応は、窒素酸化物の形成も硫黄酸化物の形成ももたらさない。したがって、ガス化は、燃料の発火中に形成された汚染物質の大部分を消失させることができる。
【0007】
[0007] ガス化は、合成ガス(シンガス)として知られるガス状の燃料リッチ生成物を産出する。ガス化中に、燃料源を使用可能な燃料ガスに変換する2つのプロセスが起こる。第一段階において、熱分解により、600℃(1112°F)を下回る温度で燃料の揮発性成分を放出し、これは揮発分除去(devolatization)として知られるプロセスである。熱分解は、主として炭素または木炭および灰からなる炭化物も生成する。第二のガス化段階において、熱分解後に残っている炭素を、蒸気、水素または純酸素のいずれかと反応させる。純酸素または蒸気によるガス化は、空気由来の窒素が希釈されていないことが原因で、一酸化炭素と水素との高品質混合物をもたらす。
【0008】
[0008] ガス化のための大量の供給原料の1つの潜在源は、廃棄物である。都市固形廃棄物(MSW)等の廃棄物は、典型的には、処分されるか、あるいは加熱もしくは冷却に直接使用するための熱および/もしくは蒸気を産出するための燃焼プロセスにおいて、または発電用のタービンにおいて使用される。燃料に由来する廃棄物流は、多くの場合、ごみ固形燃料またはRDFと呼ばれる。窒素酸化物、硫黄酸化物、粒子および塩素生成物等、環境を破壊する汚染物質の生成を含む、燃焼に付随する欠点については、上記で記述した。
【0009】
[0009] 塩化水素(HCl)は現在(他の酸性ガス状汚染物質とともに)、公益事業および工業用の石炭火力炉によって、ならびに都市廃棄物、医療廃棄物および危険廃棄物の焼却炉によって、膨大な分量で排出されている。石炭は微量の塩素しか含有しないが、電気公共事業の炉は大量の石炭を燃やす。廃棄物焼却炉の場合において、塩素は、ポリ(塩化ビニル)(PVC)(CCl)およびポリ(塩化ビニリデン)(PVDC)(CCl)等のいくつかのプラスチック廃棄物中、ならびにいくつかの食品および庭廃棄物中に大量に含有される。PVCおよびPVDCの熱分解中、塩素は、350℃での燃焼の予備段階において、大部分がHClとして発生する(Panagiotou, T., Levendis, Y.A., 1996. Combust. Sci. Technol. 112, 117, 1996)。HClは、有害、腐食性であり、かつ酸性雨の一因となるため、その捕捉は重要であり、HClの排出は現在規制されている(Fellows, K.T., Pilat, M.J., J. Air Waste Manag. Assoc. 40, 887, 1990)。その上、HClは、直接的に、または塩素(ディーコン反応によるCl)の生成を介して間接的に、炉廃液中におけるその後の塩化未燃炭化水素、ポリ塩化ジベンゾ−ダイオキシン、およびポリ塩化ジベンゾ−フランの形成に寄与し得る(Addink, R., Bakker, W.C.M., Olie, K., Environ. Sci. Technol. 2055, 1995)。従って、HClの捕捉は不可避である。廃液が冷却すると形成される毒性の高いダイオキシンおよびフランの生成を回避するために、塩化種の捕捉は高温、好ましくは約500℃で行われなくてはならない。ポリ塩化ジベンゾ−ダイオキシンおよびフラン(PCDD/PCDF)の形成は、廃液流が中程度の温度(≒300℃)まで冷却すると飛散灰中で生じる(Stieglitz, L., Zwick, G., Beck, J., Roth, W., Vogg, H., Chemosphere 18, 1219, 1989)。
【0010】
[0010] 工業操作に関係する二酸化硫黄排出は、発電所(木炭または油火力)、焼却炉、蒸気発生設備、プロセス加熱器、化学反応炉、および他同様の設備等の燃焼源および熱プロセスから主に生じる。これらの排出はすべて、1990年改正大気浄化法によって定められた環境保護庁(「EPA」)規制に準拠しなくてはならない。最近、新たな発電施設の建築が重視され、かつ該施設のほとんどが石炭の使用を計画しているため、新しくかつより関心の高いSO排出の経済的な方法が必要となる(Wu, C, Khang, S.-J., Keener, T.C., およびLee, S.-K., Adv. Environ. Research, 8, 655-666, 2004)。世界的な規模で排煙脱硫(FGD)のための250を超える技術が提案または開発されていることが報告されている(Oxley, J.H., Rosenberg, H.S., Barrett, R.E., Energy Eng. 88, 6, 1991)。しかしながら、低効率のために、現在使用されているのはそれらのプロセスのうち比較的少数である(Makansi, J., Power, 137, 23-56, 1993)。
【0011】
[0011] 通常、有意な量の硫黄または塩素を含有する燃料および廃棄物は、燃焼およびガス化反応には好ましくない。有意な量は、最終燃料供給原料に添加された場合に、2%を超える硫黄または1%を超える塩素を最終供給原料に有させる量として定義される。例えば、石炭を含有する高硫黄、中古タイヤ、カーペット、ゴム、およびPVCのようなある特定のプラスチック等の材料は、燃焼させると、許容できない量の有害な硫黄系および塩素系ガスを放出する。このような理由で、この材料は燃料源としては通常回避される。
【0012】
[0012] 数年にわたって、文献は、ボイラーにおける高温表面の塩化物誘導性の腐食が業界において最も費用のかかる問題の1つであることを広く報告してきた。この問題は、運転および維持費用のかなりの割合を占める、プラントのダウンタイムおよび周期的な完全操業停止をもたらし得る。これは、いくつかのユニットにおける年に1回の頻度での過熱器ペンダントの交換、または金属表面を遮蔽するためもしくは交換管材料としての役割を果たすための、高合金材料の費用のかかる使用につながる。
【0013】
[0013] 腐食問題は、バイオマスおよび廃棄物に由来する燃料が使用される場合、バイオマスおよび廃棄物燃料の灰が石炭の灰と極めて異なる組成および異なる融解特性を有するという事実により、さらに深刻である。灰におけるこの相違は、腐食ならびに過熱器管およびプラントの熱伝達デバイスに含まれている他の部品上への塩化物塩沈着をもたらす。塩素による腐食は、およそ480℃(900°F)の過熱器内、蒸気温度で開始し、最大およそ500〜600℃(930〜1100°F)まで温度とともに増大する。これは、実際に、バイオマスからエネルギーおよび廃棄物からエネルギーにおける過熱蒸気温度を限定し、結果的に、石炭火力発電所と比較して発電効率プラントを限定する。
【0014】
[0014] バイオマスおよび化石燃料は、多くの場合、複数の化学元素を異なる割合で含有し、それらがエネルギー源として使用されている最中またはその後に種々の環境または技術的問題を生じさせ得る。そのような化学元素は、他のハロゲンガス(すなわち、Cl、FおよびBr)、窒素(N)、微量金属および水銀(Hg)を含む。より高含有量の硫黄、塩素またはフッ素は、システム設備の重度の腐食を引き起こし、上記で論じた通りの危険大気汚染物質を作成する。微量元素はまた、環境またはヒトの健康にとって脅威となり得(例えば、Hg、Cd、Pb、As、Cr、Tl)、追加の腐食問題を引き起こし得(例えば、Na、K、V、Zn、Pb)、タービン翼のファウリングにつながる(主としてCa)、または、使用される任意の触媒(主としてAs)もしくは下流の吸着剤を汚染もしくは毒化する。これらの問題、変換プロセス(例えば、ガス化、燃焼)の最中またはその後に遊離または生成され得るこれらの元素、および/またはこれらの元素から形成される生成物を回避または最小化するために、1つまたは複数の好適な技術を整備して、その燃料またはプロセス生成物(気体、液体または固体)におけるそれらの存在を低減する必要がある。
【0015】
[0015] ガス化および/または燃焼プロセスにおけるガス清浄のためにこれまで開発または実装されたシステムは、実際の燃料自体における(すなわち、高度に汚染された燃料の使用を限定することによる)、または煙道ガス流に対する後処理、例えば吸着剤の添加によって大気への放出を制御することによる、これらの汚染物質の制御に焦点を合わせている。塩素および硫黄含有汚染物質の出口ガスを清浄するための試みにおいて、消石灰、炭酸カルシウム、セスキ炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよび酸化マグネシウム等の吸着剤が、燃焼排気筒ガスに注入されてきた(米国特許第6,303,083号、同第6,595,494号、同第4,657,738号および同第5,817,283号)。しかしながら、これらの乾式吸着剤は、800℃〜約2000℃の温度で最適に動作し、従って、排気筒または燃焼ユニットにおいてのみ使用されてきた。石灰石等の吸着剤が800℃を下回る温度で使用されれば、汚染物質の20%未満の変換が生じ、時として毒性生成物をもたらす。したがって、これらの吸着剤は、多くの場合、スラリー形態で作製され、かつ、より複雑なシステムを必要とし、廃水産出しながら作動する半乾式/湿式および湿式スクラバーにおいて使用され、より高い資本および運転費用につながる。バイオマスまたはMSWに由来する燃料のガス化は通例、850℃以下の温度で実施される。吸着剤は今まで、処理済みの都市固形廃棄物の少なくとも1つの成分を含む固体燃料供給原料には混合されていなかった。
【0016】
[0016] したがって、燃焼およびガス化時に生成される有意な量の汚染物質が原因で使用できない種々の燃料供給原料の、燃焼またはガス化用途における使用を可能にする方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
[0017] 本発明の目的は、燃焼またはガス化用途のための、有意なレベルの硫黄または塩素を含有する廃棄物材料の使用を可能にする吸着剤を含む人工燃料供給原料を提供することである。
【0018】
[0018] 本発明のさらなる目的は、特定汚染物質、または好ましくは同時に多くの汚染物質を制御するために使用され得る1つまたは複数の吸着剤を含む人工燃料供給原料を提供することである。複数の汚染物質制御を達成するために、理想的には多機能吸着剤が必要とされ、あるいは、各吸着剤が特定の元素を処理するように選択される複数の吸着剤を利用してよい。吸着剤の選択は、下記:(i)燃料の特性、本質的にどのような種類および量の汚染物質を吸着剤によって制御する必要があるか;(ii)還元性または酸化性環境、温度、圧力、および変換技術(例えば、固定床、高密度流動床、循環流動床等)等の動作条件;(iii)吸着剤の反応性および副生成物の特性、例えば、安定性、融点、沸点および毒性;ならびに(iv)経済効果を含むがこれらに限定されない種々の考慮事項によって決まる。
【0019】
[0019] 本発明のさらなる目的は、下記の、反応速度論の改善、吸着剤反応性の改善、汚染物質除去効率の改善、燃料変換の改善、腐食制御の改善、灰スラグ化の低減、動作温度の低減、発電施設の寿命の延長、高価な改造費用の回避、運転および維持費用の低減を含むがこれらに限定されないいくつかの明白な利点を持つ、吸着剤が統合した人工燃料供給原料を提供することである。
【0020】
[0020] 供給原料内に包埋された吸着剤を用いて、それらが産出される場合には吸着剤と汚染物質との間の密接な接触を達成することができる。燃料粒子内からバルク燃料または煙道ガス流へ汚染物質を移動させた炉注入と比較して、吸着剤が燃料の一部である場合の粒子内における汚染物質の濃度の方が高い。この構造は、反応速度論を改善し、従って反応を増強する。
【0021】
[0021] さらに、燃料粒子間の温度勾配が原因で、燃料粒子内部における吸着剤の焼結が低減され、従って吸着剤反応性が高くなる。
【0022】
[0022] 吸着剤を供給原料と組み合わせて統合した燃料粒子を形成することにより、炉注入の場合ではわずか1〜2秒間であるのと比較して約数分間になり得る燃焼室内での長い滞留時間を引き続き達成しながら、微細な吸着剤粒子(例えば<1μm)の使用も可能になる。微細な吸着剤粒子および長い滞留時間が一緒になって、汚染物質除去効率を有意に増大させるであろう。
【0023】
[0023] 不完全に反応した吸着剤が燃料粒子から分離して煙道ガス流に入り込むことができる場合においては、ガス流中のHS(またはSO)との連続反応が続くことになる。結果として、吸着剤利用が大幅に改善されることになる。
【0024】
[0024] 吸着剤が燃料供給原料の一部であるため、乾式吸着剤注入システムに通常必要とされる吸着剤取扱いシステム(貯蔵、送達、噴霧等)を有する必要はない。
【0025】
[0025] また、吸着剤/汚染物質反応の生成物は、大部分がボトムアッシュ中に残っており、したがって、下流の収集器(すなわち、電気集塵装置、バグハウス、粒子状物質スクラバー)に装填された粒子または粉塵は低減され得、そうでなければこれらのデバイスに必要とされる資本、運転および維持費用の節約をもたらす。
【0026】
[0026] ガス化について、吸着剤材料は燃料変換を触媒的に改善させることもでき、従って、ガス化率および性能が増強され得る(J. Weldon, G. B. Haldipur, D. A. Lewandowski, K. J. Smith, "Advanced coal gasification and desulfurization with calcium-based sorbent", KR W Energy Systems Inc., Madison, PA 15663)。
【課題を解決するための手段】
【0027】
[0027] 本開示は、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分および吸着剤を含む人工燃料供給原料であって、様々な燃焼およびガス化目的に有用となる様々な化学分子特性を保有する供給原料について記述している。供給原料は、疎性(loose)材料、高密度化立方体、ブリケット、ペレット、ハニカム、シートの形態、または他の好適な形状および形態であってよい。処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分および吸着剤を含む人工燃料供給原料を生成するプロセスについて記述されており、これは、固形および液体廃棄物を含む複数の廃棄物流が処理され、必要ならば、材料回収センターにおいて廃棄物流を含む成分の目録を作るように分離されるプロセスを含む。本明細書において記述される人工燃料供給原料を作製するための方法についても記述されている。
【0028】
[0028] HHV燃料を人工的に作るためのアルゴリズムは、米国特許出願第12/492,096号において開示されており、その内容を全体について本明細書で援用する。燃料供給原料は、適量の吸着剤の添加によって、有害排出を最小化するように人工的に作れることが判明している。燃料供給原料の硫黄含有量は、約0.2 lb/MMBTU〜約2.5 lbs/MMBTUの範囲である。これらの燃料は、燃焼またはガス化される際、適量の吸着剤が添加されれば、30体積ppm未満のSOまたは塩素汚染物質の排出を生成する。例えば、燃料供給原料は、約13,000BTU/lbの石炭と同等の高位発熱量を有し、約0.05重量%または0.04 lbs/MMBTU未満の硫黄または塩素を含有するように人工的に作れる。この人工燃料供給原料は、燃焼またはガス化される際、後処理なしに30ppm体積未満のSOまたはHClを排出するであろう。これらの燃料は、石炭に匹敵するエネルギー密度(BTU/lb)を有するが、スラグ化、融合および硫黄汚染の問題がなく、石炭の置換または石炭の補足としての役割を果たすことができる。また、人工燃料供給原料は、例えば、供給原料中のC、HおよびOの含有量をガス化前に最適化することによって、高品質合成ガスを生成するように設計され得る。そのような人工燃料供給原料は、合成ガスが発電用途に使用される場合にはHHVの観点から、または合成ガスが化学合成用途において使用されるという場合にはH/CO比、つまり生成物合成ガス中に存在するCOおよびHの量の観点から、高品質合成ガスを生成する。現在、再利用可能な材料および再利用残留物を含む種々の廃棄物流成分、ならびに硫黄および塩素含有量が高い材料を使用して、所望の人工燃料供給原料を生成することができる。
【0029】
[0029] したがって、一態様において、本発明は、処理済みのMSW廃棄物流に由来する成分および吸着剤を含む人工燃料供給原料であって、約30%〜約80%の炭素含有量と、約3%〜約10%の水素含有量と、約10%未満の灰含有量とを有する供給原料を提供する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約3,000BTU/lb〜約15,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約40%〜約80%の揮発性物質含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約30%未満の水分含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約10%〜約30%の水分含有量を有する。他の実施形態において、供給原料は、約10%〜約20%の水分含有量を有する。またさらなる実施形態において、供給原料は、約1%および約10%の水分含有量を有する。人工燃料供給原料は、ガラス、金属、砂塵および不燃物(人工燃料供給原料を不活性にするために必要なもの以外)を実質的に含有しない。いくつかの実施形態において、吸着剤はカルシウム吸着剤である。いくつかの実施形態において、カルシウム吸着剤は、石灰石(CaCO)、石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)、ドロマイト(CaCO・MgO)から選択される。いくつかの実施形態において、カルシウム吸着剤は、非再生可能資源からのものである。いくつかの実施形態において、カルシウム吸着剤は、採鉱された材料に由来する。いくつかの実施形態において、吸着剤は、再生可能資源からのものである。いくつかの実施形態において、吸着剤は、卵殻に由来するものである。さらなる実施形態において、水酸化鉄、酸化鉄が吸着剤として選択される。いくつかのさらなる実施形態において、酸化亜鉛、酸化銅または酸化ニッケル等のいくつかの金属酸化物が、単独でまたは組み合わせて、吸着剤として選択され得る。さらに他の実施形態において、石炭または木灰、セメント、鉄屑、石灰泥等の1つまたは複数の上記で述べた元素が豊富にあり得るいくつかの廃棄物材料が、吸着剤として使用され得る。さらに、木および石炭両方からの純粋な炭素および木炭等の材料は、作成する廃棄物が少ないため、いずれも吸着剤として有用である。特に、石炭灰は、追加の吸着剤能力を有する高級ケイ酸アルミナを有する。他の実施形態において、吸着剤はナトリウム吸着剤である。他の実施形態において、ナトリウム吸着剤はセスキ炭酸ナトリウム(「トロナ」)である。
【0030】
[0030] いくつかの実施形態において、吸着剤は、約0.1%(吸着剤重量/燃料供給原料重量(w/w))〜50%(w/w)の量である。他の実施形態において、吸着剤は、約1%(w/w)〜20%(w/w)の量である。さらなる実施形態において、吸着剤は、約3%(w/w)〜15%(w/w)の量である。また他の実施形態において、吸着剤は、約5%(w/w)〜10%(w/w)の量である。いくつかの実施形態において、吸着剤は、硫黄に由来するまたは塩素に由来する汚染物質が除去される量に基づき、特定の化学反応のための化学量論要件によって決定される量である。いくつかの実施形態において、吸着剤は、硫黄に由来するもしくは塩素に由来する汚染物質、または除去される他の汚染物質の量より化学量論的に約10%〜約50%多い量である。いくつかの実施形態において、吸着剤は、硫黄に由来するもしくは塩素に由来する汚染物質、または除去される他の汚染物質の量より化学量論的に約20%〜約40%多い量である。いくつかの実施形態において、吸着剤は、硫黄に由来するもしくは塩素に由来する汚染物質、または除去される他の汚染物質の量より化学量論的に約30%多い量である。いくつかの実施形態において、吸着剤は、硫黄に由来するもしくは塩素に由来する汚染物質、または除去される他の汚染物質の量より化学量論的に約10%〜約20%多い量である。さらなる実施形態において、2つ以上の吸着剤を、それぞれ上述した通りの量で添加してよい。
【0031】
[0031] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料が、石炭、油、天然ガス、RDF、他の人工燃料供給原料または他の好適な燃料等の別の燃料と共ガス化または共燃焼させるために使用される場合、人工燃料供給原料と混合される吸着剤の量は、人工燃料供給原料および他の燃料両方からの硫黄に由来するまたは塩素に由来する汚染物質の総量に基づいて決定され得る。
【0032】
[0032] いくつかの実施形態において、供給原料は、約40%〜約70%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約50%〜約60%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約30%〜約40%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約40%〜約50%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約60%〜約70%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約70%〜約80%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約35%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約45%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約55%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約65%の炭素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約75%の炭素含有量を有する。
【0033】
[0033] いくつかの実施形態において、供給原料は、約4%〜約9%の水素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約5%〜約8%の水素含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約6%〜約7%の水素含有量を有する。
【0034】
[0034] いくつかの実施形態において、供給原料は、約12%〜約28%の水分含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約14%〜約24%の水分含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約16%〜約22%の水分含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約18%〜約20%の水分含有量を有する。
【0035】
[0035] いくつかの実施形態において、供給原料は、約10%未満の灰含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約9%未満の灰含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約8%未満の灰含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約7%未満の灰含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約6%未満の灰含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約5%未満の灰含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約4%未満の灰含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約3%未満の灰含有量を有する。
【0036】
[0036] いくつかの実施形態において、供給原料は、約3,000BTU/lb〜約15,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約4,000BTU/lb〜約14,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約5,000BTU/lb〜約13,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約6,000BTU/lb〜約12,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約7,000BTU/lb〜約11,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約8,000BTU/lb〜約10,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約9,000BTU/lbのHHVを有する。
【0037】
[0037] いくつかの実施形態において、供給原料は、約50%〜約70%の揮発性物質含有量を有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約60%の揮発性物質含有量を有する。
【0038】
[0038] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.025〜約0.20のH/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.05〜約0.18のH/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.07〜約0.16のH/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.09〜約0.14のH/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.10〜約0.13のH/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.11〜約0.12のH/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.13のH/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.08のH/C比を有する。
【0039】
[0039] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.01〜約1.0のO/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.1〜約0.8のO/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.2〜約0.7のO/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.3〜約0.6のO/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.4〜約0.5のO/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.9のO/C比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約0.01のO/C比を有する。
【0040】
[0040] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、850℃および0.34の空気当量比(air equivalent ratio)(ER)におけるガス化時に、約6体積%〜約30体積%の量のH、約14体積%〜約25体積%の量のCO、約0.3体積%〜約6.5体積%の量のCH、約6.5体積%〜約13.5%体積%の量のCO、および約44体積%〜約68体積%の量のNを含む合成ガスを生成する。
【0041】
[0041] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、850℃および0.34のERにおけるガス化時に、約0.3〜約2.0のH/CO比を有する合成ガスを生成する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、850℃および0.34のERにおけるガス化時に、約0.5〜約1.5のH/CO比を有する合成ガスを生成する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、850℃および0.34のERにおけるガス化時に、約0.8〜約1.2のH/CO比を有する合成ガスを生成する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、850℃および0.34のERにおけるガス化時に、約1.0のH/CO比を有する合成ガスを生成する。
【0042】
[0042] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、850℃および0.34のERにおけるガス化時に、約20体積%の量のH、約46体積%の量のN、約25体積%の量のCO、約1体積%の量のCH、約8体積%の量のCO、および約160のBTU/scfを有する合成ガスを生成する。
【0043】
[0043] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、燃焼させると、石炭の燃焼と比較して低い有害排出を生成する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、燃焼させると、石炭の燃焼と比較して低い硫黄排出を生成する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、燃焼させると、石炭の燃焼と比較して低いHCl排出を生成する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、燃焼させると、石炭の燃焼と比較して低い重金属排出、例えば水銀等を生成する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、粒子状物質、NOx、CO、CO、揮発性有機化合物(VOC)およびハロゲンガスの排出を回避するように設計される。
【0044】
[0044] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、燃焼した石炭から排出されるGHGと比較して低減された、GHGについての排出プロフィールを有するように設計される。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、例えば木、スイッチグラス等のバイオマスの燃焼から排出されるGHGについて、低減された排出プロフィールを有するように設計される。
【0045】
[0045] いくつかの実施形態において、供給原料は、疎性非高密度化形態である。他の実施形態において、人工燃料供給原料は、高密度化形態である。いくつかの実施形態において、高密度化形態は立方体である。いくつかの実施形態において、高密度化形態は長方形である。他の実施形態において、高密度化形態は円柱状である。いくつかの実施形態において、高密度化形態は球状である。いくつかの実施形態において、高密度化形態はブリケットである。他の実施形態において、高密度化形態はペレットである。いくつかの実施形態において、高密度化燃料は、異なる厚さのシートにスライスされる。いくつかの実施形態において、厚さは、約3/16インチ〜約3/4インチである。いくつかの実施形態において、高密度化形態はハニカムである。
【0046】
[0046] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は不活性にされる。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、供給原料を不活性にする少なくとも1つの添加物を含む。いくつかの実施形態において、添加物は、得られるペレットを不活性にし得る処理済みのMSW廃棄物流に混和されてよい。いくつかの種類の湿式MSWは、湿式条件下での発酵中、例えば長期貯蔵または輸送中に熱および水素ガスを産出し得る、比較的多数の生存細菌細胞を含有する。例えば、食品廃棄物の腐敗防止のためおよび固形廃棄物の乾燥促進のために、水酸化カルシウム等の添加物をMSWに添加してよい。いくつかの実施形態において、供給原料を不活性にする添加物はCaOである。添加物の他の非限定的な例は、人工燃料供給原料が使用される下流プロセスを妨げない限り、カルシウムスルホアルミネートおよび他の硫酸塩化合物である。
【0047】
[0047] あるいは、MSWは、生物学的材料を不活性化するための任意の公知の方法を介して生物学的に不活性にされ得る。例えば、X線を使用して、MSWを処理前または処理後に失活させることができる。乾燥を使用して、微生物等の生物にとって成長するために必要な水を除去することができる。高熱および任意選択により圧力下での高熱(加圧滅菌)によるMSWの処理も、MSWを生物学的に不活性にするであろう。一実施形態において、人工ペレットを燃料とする往復エンジンまたはタービンによって産出された過剰熱は、システムを介して方向転換され、MSWを不活性にするために使用され得る。他の実施形態において、供給原料は、マイクロ波照射等の手段を介して不活性にされる。
【0048】
[0048] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約0.25インチ〜約1.5インチの直径を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約0.5インチ〜約6インチの長さを有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約20:1〜約3:1の表面対体積比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約10 lb/ft〜約75 lb/ftのバルク密度を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約0.2〜約0.6の孔隙率を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約1〜約10のアスペクト比を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約0.023BTU/(ft・hr・°F)〜約0.578BTU/(ft・hr・°F)の熱伝導率を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約4.78×10−5BTU/(lb・°F)〜4.78×10−4BTU/(lb・°F)の比熱容量を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、約1.08×10−5ft/s〜2.16×10−5ft/sの熱拡散率を有する。
【0049】
[0049] いくつかの実施形態において、燃料供給原料のガス化を増強する少なくとも1つの廃棄物材料は、脂肪、油および獣脂(FOG)から選択される。いくつかの実施形態において、燃料供給原料のガス化を増強する少なくとも1つの廃棄物材料は、スラッジである。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の高密度化形態は、実質的にFOG成分内に封入される。実施形態のいくつかにおいて、封入層は刻み目が付けられる。またさらなる実施形態において、人工燃料供給原料の封入された高密度化形態の刻み目付けは、ガス化プロセス中、刻み目付けのない燃料よりも効率的に燃料を揮発分除去する。
【0050】
[0050] 別の態様において、
a)複数のMSW廃棄物供給を、材料回収施設で受け取る工程と、
b)工程a)の複数のMSW廃棄物供給の成分が材料回収施設を通過する際に、該成分の化学分子特性に基づき、それらの目録を作る工程と、
c)工程b)において目録を作られた複数のMSW廃棄物供給の成分の化学分子特性を、人工燃料供給原料の化学分子特性と比較する工程と、
d)吸着剤を添加する工程と、
e)任意選択により、工程b)の目録を作った成分との和が該人工燃料供給原料の化学分子特性と等しい、化学分子特性を含有する追加の人工燃料供給原料成分を添加する工程と
を含むプロセスによって生成される、約30%〜約80%の炭素含有量、約3%〜約10%の水素含有量、約10%〜約30%の水分含有量、約10%未満の灰含有量、および約0.1%(w/w)〜50%(w/w)の吸着剤を有する人工燃料供給原料について記述する。
【0051】
[0051] いくつかの実施形態において、供給原料は、約3,000BTU/lb〜約15,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約40%〜約80%の揮発性物質含有量を有する。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、供給原料を均質化するためにサイズが縮小される。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、高密度化される。いくつかの実施形態において、高密度化供給原料は、ブリケットの形態である。いくつかの実施形態において、高密度化供給原料は、ペレットの形態である。いくつかの実施形態において、高密度化供給原料は、立方体の形態である。
【0052】
[0052] 別の態様において、
a)複数のMSW廃棄物供給を、材料回収施設において、化学分子特性に基づき複数のMSW廃棄物成分に分離する工程と、
b)約30%〜約80%の炭素含有量、約3%〜約10%の水素含有量、約10%〜約30%の水分含有量、および約10%未満の灰含有量を含む人工燃料供給原料のために、化学分子特性を選択する工程と、
c)化学分子特性の合計が工程b)において選択された化学分子特性と等しい工程a)からのMSW廃棄物成分を選択する工程と、
d)任意選択により、工程c)において選択されたMSW廃棄物成分の化学分子特性が工程b)の選択の化学分子特性と等しくない場合、工程c)の選択に他の燃料成分を添加する工程と、
e)ある量の吸着剤を選択する工程と、
f)工程c)およびe)、ならびに任意選択により工程d)の成分を混合する工程と
を含むプロセスによって生成される、人工燃料供給原料について記述する。
【0053】
[0053] いくつかの実施形態において、工程f)の混合物のサイズは、人工燃料供給原料を均質化するのを助けるために縮小される。いくつかの実施形態において、工程f)の混合物の高密度化形態または工程e)のサイズ縮小混合物について、サイズおよび形状が決定される。いくつかの実施形態において、工程f)の混合物は、高密度化される。他の実施形態において、工程f)のサイズ縮小混合物は、高密度化される。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約3,000BTU/lb〜約15,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約40%〜約80%の揮発性物質含有量を有する。
【0054】
[0054] 別の態様において、
a)その成分が、組み合わせて、約30%〜約80%の炭素含有量、約3%〜約10%の水素含有量、約10%〜約30%の水分含有量、10%未満の灰含有量、および2%未満の硫黄含有量を含む化学分子特性を有する処理済みのMSW廃棄物流から複数の成分を選択する工程と、
b)工程a)の選択された成分を組み合わせ、かつ一緒に混合して、供給原料を形成する工程と、
c)工程b)の供給原料の得られた化学分子特性を、工程a)の化学分子特性と比較する工程と、
d)任意選択により、工程b)において選択されたMSW廃棄物成分の化学分子特性が工程a)の化学分子特性と等しくなければ、工程b)の選択された成分に他の燃料成分を添加する工程と、
e)吸着剤を添加する工程と
を含む、処理済みのMSW廃棄物流から人工燃料供給原料を生成する方法について記述する。
【0055】
[0055] いくつかの実施形態において、工程b)または工程d)の混合物のサイズは、人工燃料供給原料を均質化するのを助けるために縮小される。いくつかの実施形態において、工程b)の混合物の高密度化形態または工程b)もしくはd)のサイズ縮小混合物について、サイズおよび形状が決定される。他の実施形態において、工程e)のサイズ縮小混合物は、約10 lbs/ft〜約75 lbs/ftの密度に高密度化される。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約3,000BTU/lb〜約15,000BTU/lbのHHVを有する。いくつかの実施形態において、供給原料は、約40%〜約80%の揮発性物質含有量を有する。
【0056】
[0056] 別の態様において、
a)複数のMSW廃棄物流を受け取る工程と、
b)人工燃料供給原料のために、約30%〜約80%の炭素含有量、約3%〜約10%の水素含有量、約10%〜約30%の水分含有量、および10%未満の灰含有量を含む化学分子特性を選択する工程と、
c)該複数のMSW廃棄物流の成分の化学分子特性に基づき、該成分の目録を作る工程と、
d)工程c)の複数のMSW廃棄物流の目録を作った成分の化学分子特性を、工程b)の選択された化学分子特性と比較する工程と、
e)任意選択により、人工燃料供給原料のための工程b)の所望の化学分子特性を満たすために、必要とされる化学分子特性を持つ追加の燃料成分を工程c)の目録を作った成分に添加する工程と、
f)吸着剤を添加する工程と、
を含む、人工燃料供給原料を生成する方法について記述する。
【0057】
[0057] いくつかの実施形態において、工程c)またはe)の人工燃料供給原料は、混合される。いくつかの実施形態において、工程c)またはe)の人工燃料供給原料は、サイズが縮小される。いくつかの実施形態において、工程c)またはe)の人工燃料供給原料は、高密度化される。いくつかの実施形態において、工程c)またはe)のサイズ縮小人工燃料供給原料は、高密度化される。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、約10 lbs/ft〜約75 lbs/ftに高密度化される。
【0058】
[0058] いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料は、高密度化されてブリケットを形成する。他の実施形態において、人工燃料供給原料は、高密度化されてペレットを形成する。
【0059】
[0059] 本発明のさらなる目的は、特定汚染物質、または好ましくは同時にいくつかの汚染物質を制御するために使用され得る1つまたは複数の吸着剤を含む人工燃料供給原料を提供することである。複数の汚染物質制御を達成するために、理想的には多機能吸着剤が必要とされ、あるいは、各吸着剤が特定の元素を処理するように選択される複数の吸着剤を利用してよい。吸着剤の選択は、下記:(i)燃料の特性、本質的にどのような種類および量の汚染物質を吸着剤によって制御する必要があるか;(ii)還元性または酸化性環境、温度、圧力、および変換技術(例えば、固定床、高密度流動床、循環流動床等)等の動作条件;(iii)吸着剤の反応性および副生成物の特性、例えば、安定性、融点、沸点および毒性;ならびに(iv)経済効果を含むがこれらに限定されない種々の考慮事項によって決まる。
【0060】
[0060] 以下でさらに十分に記述する通り、本発明のさらなる目的は、反応速度論の改善、吸着剤反応性の改善、汚染物質除去効率の改善、燃料変換の改善、腐食制御の改善、灰スラグ化の低減、動作温度の低減、発電施設の寿命の延長、高価な改造費用の回避、運転および維持費用の低減を含むがこれらに限定されない数個の明白な利点を持つ、吸着剤が統合された人工燃料供給原料を提供することである。
【0061】
[0061] 供給原料内に包埋された吸着剤を用いて、それらが産出される場合には吸着剤と汚染物質との間の密接な接触を達成することができる。燃料粒子内からバルク燃料または煙道ガス流へ汚染物質を移動させた炉注入と比較して、吸着剤が燃料の一部である場合の粒子内における汚染物質の濃度の方が高い。この構造は、反応速度論を改善し、従って反応を増強する。
【0062】
[0062] さらに、燃料粒子間の温度勾配が原因で、燃料粒子内部における吸着剤の焼結が低減され、従って吸着剤反応性が高くなる。
【0063】
[0063] 吸着剤を供給原料と組み合わせて統合された燃料粒子を形成することにより、炉注入の場合ではわずか1〜2秒間と比較して約数分間になり得る燃焼室内での長い滞留時間を引き続き達成しながら、微細な吸着剤粒子(例えば<1μm)の使用も可能になる。微細な吸着剤粒子および長い滞留時間は、汚染物質除去効率を有意に増大させるであろう。
【0064】
[0064] 不完全に反応した吸着剤が燃料粒子から分離して煙道ガス流に入り込むことができる場合においては、ガス流中のHS(またはSO)との連続反応が続くことになる。結果として、吸着剤利用が大幅に改善されることになる。
【0065】
[0065] 吸着剤が燃料供給原料の一部であるため、乾式吸着剤注入システムに通常必要とされる吸着剤取扱いシステム(貯蔵、送達、噴霧等)を有する必要はない。
【0066】
[0066] また、吸着剤/汚染物質反応の生成物は、大部分がボトムアッシュ中に残っており、下流の粉塵収集器(すなわち、電気集塵装置、バグハウス、粒子状物質スクラバー)に装填された粉塵は低減することができ、これらのデバイスに他に必要とされる資本、運転および維持費用の節約をもたらす。
【0067】
[0067] ガス化について、吸着剤材料は燃料変換を触媒的に改善させることもでき、従って、ガス化率および性能が増強され得る(J. Weldon, G. B. Haldipur, D. A. Lewandowski, K. J. Smith, "Advanced coal gasification and desulfurization with calcium-based sorbent", KR W Energy Systems Inc., Madison, PA 15663)。
【0068】
[0068] 本発明のさらなる目的は、重金属排出を制御する人工燃料供給原料を提供することである。
【0069】
[0069] 本発明のさらなる目的は、腐食防止または最小化を提供する人工燃料供給原料を提供することである。
【0070】
[0070] 本発明のさらなる目的は、例えば灰スラグ化の低減および/または特に低温での石炭についての燃料変換の改善によって操作性能を改善する人工燃料供給原料を提供することである。
【0071】
[0071] 本発明のさらなる目的は、排出を制御するための手段として、石炭等の他の燃料と共発火(co-firing)させるための人工燃料供給原料を提供することである。この制御は、ますます厳しくなる大気排出基準、例えばEPAの新たな輸送規則のために必要とされる(Proposed Transport Rule 75 FR 45210)。米国における石炭火力発電所の大半は、これらの規則によって、重大な決定事項、すなわち、コンプライアンスを満たすよう排出制御システムを改造するために数百万ドルを費やすこと、または経費を回避するために発電所を単純に操業停止することのいずれかを強要されることになる。本発明の人工燃料供給原料の使用は、上記の改造費用を回避するだけでなく、プラントにその運転寿命を延長させ、それにより、排出制御のための高価な改造整備を回避し、新たなEPA輸送規則等の厳しい排出制御規制を通常は順守しない既存の発電所の有用寿命を延長することにもなるであろう。
【0072】
[0072] 本発明のさらなる目的は、排出および腐食両方の制御のために、高密度化または疎性RDF等の他の廃棄物燃料と共発火するための人工燃料供給原料を提供することである。
【0073】
[0073] 本発明のさらなる目的は、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅、石灰石、石灰、鉄屑、Fe、FeO、Fe、Fe、CaCO、Ca(OH)、CaCO・MgO、ソーダ、トロナ、シリカ、アルミナ、陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト(emathlite)、アタパルジャイト、石炭灰、消石灰、ドロマイト、卵殻およびCa−モンモリロナイトからなる群から選択される1つまたは複数の吸着剤とを含む人工燃料供給原料を提供することである。
【0074】
[0074] 本発明のさらなる目的は、下記の式:吸着剤中のカルシウムの総モルと吸着剤中のナトリウムの総モルとの合計を存在する硫黄の総モルおよび存在する塩素の総モルで割ることに従って組み合わせられる、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分、カルシウム系吸着剤、およびナトリウム系吸着剤含む人工燃料供給原料を提供することである。
【0075】
[0075] 本発明のさらなる目的は、上記比率が10を下回る、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、上記比率が5を下回る、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、上記比率が約3である、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、上記比率が約2である、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、上記比率が約1.3である、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、別の燃料の硫黄含有量を軽減するように計算された量の少なくとも1つの吸着剤とを含む、人工燃料供給原料を提供することである。
【0076】
[0076] 本発明のさらなる目的は、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、腐食を低減するように計算された量の少なくとも1つの吸着剤とを含む、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、腐食が硫黄によって引き起こされる場合に、該腐食を軽減する、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、腐食が塩素によって引き起こされる場合に、該腐食を軽減する、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、腐食が硫黄化合物によってまたは塩素化合物によって引き起こされる場合に、該腐食を軽減する、人工燃料供給原料を提供することである。
【0077】
[0077] 本発明の目的は、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、少なくとも1つの吸着剤とを含む、人工燃料供給原料を提供することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料の硫黄排出の既知レベルと比較して低い硫黄排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料の塩素排出の既知レベルと比較して低い塩素排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料の重金属排出の既知レベルと比較して低い重金属排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出される粒子状物質の既知レベルと比較して低い粒子状物質排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出されるNOxの既知レベルと比較して低いNOxの排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出されるCOの既知レベルと比較して低いCOの排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出されるCOの既知レベルと比較して低いCOの排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出される揮発性有機化合物(VOC)の既知レベルと比較して低いVOCの排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出されるハロゲンガスの既知レベルと比較して低いハロゲンガスの排出を生成することである。本発明のさらなる目的は、変換される際の人工燃料供給原料が、変換される際に石炭から排出されるGHGの既知レベルと比較して低いGHG排出を生成することである。
【0078】
[0078] 本発明の目的は、人工燃料供給原料を、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分および少なくとも1つの吸着剤とともに炉内で使用する工程を含む、エネルギーを産出する方法である。本発明のさらなる目的において、該エネルギーは電気である。本発明のさらなる目的において、該エネルギーは蒸気である。本発明のさらなる目的において、該炉は燃焼モードで操作される。本発明のさらなる目的において、該炉はガス化モードで操作される。本発明のさらなる目的において、他の燃料が該人工燃料供給原料と組み合わせて使用される。本発明のさらなる目的において、該他の燃料は、処理済みのMSW廃棄物流の少なくとも1つの成分と、少なくとも1つの吸着剤とを含む第二の人工燃料供給原料である。本発明のさらなる目的において、第一の人工燃料供給原料は塩素排出を処理し、第二の人工燃料供給原料は硫黄排出を処理する。本発明のさらなる目的において、該他の燃料は、油、石炭、バイオマス、疎性RDFおよび高密度化RDFからなる群から選択される。本発明のさらなる目的において、該人工燃料供給原料はすべての排出を制御する。本発明のさらなる目的において、該人工燃料供給原料は腐食を制御する。本発明のさらなる目的において、該人工燃料供給原料は、排出を政府の規制要件未満に維持する。本発明のさらなる目的において、該人工燃料供給原料は、プロセス性能を改善する。本発明のさらなる目的において、該プロセス性能の改善は、灰スラグ化の低減である。本発明のさらなる目的において、該プロセス性能の改善は、より高い効率である。本発明のさらなる目的において、該プロセス性能の改善は、燃料変換の増大である。本発明のさらなる目的において、該プロセス性能の改善は、動作温度の低減である。本発明のさらなる目的において、該改善は、炉の寿命を延長することである。本発明のさらなる目的において、該改善は、改造費用を回避することである。本発明のさらなる目的において、該改善は、運転費用の低減である。本発明のさらなる目的において、該改善は、維持費用の低減である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】[0079]ガス化試験システムの概略流れ図を開示する図である。
【図2】[0080]吸着剤なしおよび吸着剤ありの供給原料からの合成ガス組成を開示する図である。
【図3】[0081]実施例2および3の結果のグラフ比較を示し、供給原料中の吸着剤含有量と合成ガス中の硫化水素との間の反比例関係を実証する図である。
【図4】[0082]石炭および吸着剤で処理した供給原料の共ガス化中に計測された、正規化硫化水素濃度のグラフを示す図である。
【図5】[0083]種々の吸着剤についての温度範囲および硫化水素に対するそれらの反応性のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
[0084] 再利用可能な材料の回収不能部分である再利用残留物等のMSWに由来する少なくとも1つの廃棄物流成分と、吸着剤とを含む新規人工燃料供給原料が提供され、該供給原料は、所定の化学分子特性を有するように人工的に作られる。これらの供給原料は、例えば木およびスイッチグラス等のバイオマス燃料の化学分子特性を保有し得、有害性の硫黄排出等、石炭の負の属性なしに、例えば石炭等の高BTU含有燃料の正の特性を有することもできる。例えば、バイオマス、石炭または石油燃料等の天然燃料においては観察されない化学分子特性を含む新規人工燃料供給原料についても記述されている。これらの新規燃料は、例えば、公知の燃料と比較して優れた燃焼またはガス化プロフィールを提供するような、独特の比率の炭素、水素および灰を含有する。これらの新規供給原料は、優れた燃焼またはガス化プロフィールを有するため、天然燃料の均一性により適切に機能するが、天然燃料の最適化されているとはいえない化学分子特性により最適には機能しない、多くの異なる種類の燃焼装置およびガス化装置のための新規燃料を提供する。熱エネルギー、動力、バイオ燃料、石油および化学物質の生成に有用なもの等の人工燃料供給原料は、人工的に作ることおよび合成することができ、燃焼またはガス化時に、有害な量の硫黄汚染物質も塩素汚染物質も生成しない。
【0081】
[0085] 本明細書において記述される人工燃料供給原料は、ゴム、カーペットおよびある特定のプラスチック、例えば、有意な量の硫黄および塩素含有汚染物質の生成により、そうでなければ回避されるPVC等の廃棄物からのより広範囲の燃料源を使用するための効率的な手法を提供する。
【0082】
[0086] 下記の明細書は、本発明についてさらに詳細に記述する。
【0083】
定義
[0087] 用語「空気当量比」(ER)は、ガス化装置に供給される空気の量を、完全な燃料燃焼に必要とされる空気の量で割った比率を意味する。空気当量比「ER」は、下記の方程式によって表すことができる:
【0084】
【数1】

【0085】
[0088] 用語「英熱単位」(BTU)は、1ポンドの水の温度をカ氏1度だけ上昇させるのに必要な熱エネルギーの量を意味する。
【0086】
[0089] 用語「炭素限界」は、完全なガス化、または炭素変換を達成するためにちょうど足りるだけの酸素が添加された際に取得される温度を意味する。この温度を超えると、固体炭素が存在しなくなる。
【0087】
[0090] 用語「炭素含有量」は、供給原料中の固定炭素(以下の定義を参照)およびすべての揮発性物質に含有される、すべての炭素を意味する。
【0088】
[0091] 用語「炭素変換」は、大部分のガス化操作において、燃料供給原料中の固体炭素を、CO、CO2およびCH4等の炭素含有ガスに変換することを意味する。
【0089】
[0092] 用語「商業廃棄物」は、店舗、オフィス、レストラン、倉庫、および他の非製造、非加工活動によって産出された固形廃棄物を意味する。商業廃棄物は、家庭廃棄物、加工廃棄物、産業廃棄物または特別廃棄物を含まない。
【0090】
[0093] 用語「建設および解体廃材」(C&D)は、公共施設、構造物および道路の建設、改築、修理および解体によって得られる汚染されていない固形廃棄物;ならびに整地によって得られる汚染されていない固形廃棄物を意味する。そのような廃棄物は、れんが、コンクリートおよび他の石工材料、土、岩石、木(塗装、処理および被覆された木および木製品を含む)、整地がれき、壁装材、漆喰、乾式壁、衛生器具、非アスベスト絶縁体、屋根板葺および他の屋根装材、アスファルト舗装、ガラス、他の廃棄物を隠す様式で密封されないプラスチック、サイズが10ガロン以下でかつ底面に残った1インチを超える残留物を有さない空桶、危険な液体を含有しない電気配線および機器、ならびに上記のいずれかに付帯するパイプおよび金属を含むがこれらに限定されない。C&D廃材ではない固形廃棄物は(公共施設、構造物および道路の建設、改築、修理および解体、ならびに整地によって得られたものであっても)、アスベスト廃棄物、生ごみ、段ボール箱用板紙、蛍光灯安定器または変圧器等の危険な液体を含有する電気設備、蛍光灯、敷物類、家具、家庭用電化製品、タイヤ、ドラム缶、サイズが10ガロンより大きい容器、底面に残った1インチを超える残留物を有する任意の容器、および燃料タンクを含むがこれらに限定されない。特に、微粉砕または細断等、個々の廃棄物成分を認識不可能にする任意の処理技術によって得られる固形廃棄物(そうでなければ建設および解体廃材となるであろうものを含む)は、建設および解体廃材の定義から除外される。
【0091】
[0094] 用語「揮発分除去」は、人工燃料供給原料中の揮発性材料を除去し、従って人工燃料供給原料中の炭素の相対量を増大させるプロセスを意味する。
【0092】
[0095] 用語「固定炭素」は、水分、灰、揮発性物質が近似分析によって決定された後の材料バランスである。
【0093】
[0096] 用語「生ごみ」は、食品の取扱い、貯蔵、販売、準備、調理または給仕によって得られる動物および野菜廃棄物を含む腐敗しやすい固形廃棄物を意味する。生ごみは主に、家庭の台所、店舗、市場、レストラン、および食品が貯蔵、準備または給仕される他の場所で発生する。
【0094】
[0097] 用語「ガス化」は、非燃焼熱プロセスを使用して、例えば電気、液体燃料およびディーゼル蒸留物を産出する目的で、固形廃棄物をクリーンな燃焼燃料に変換するための技術を意味する。非燃焼は、熱プロセスにおいて空気も酸素も使用しないこと、または半化学量論量の酸素を使用することを意味する。
【0095】
[0098] 用語「危険廃棄物」は、危険廃棄物の4つの特性(反応性、腐食性、着火性および/または毒性)の1つを呈する、または、特に40 CFR part 262において特定されているような、EPAによって指定される固形廃棄物を意味する。
【0096】
[0099] 用語「発熱量」は、定常流プロセスにおいて燃料が完全に燃やされ、生成物が反応物質の状態に戻る際に放出されるエネルギーの量として定義される。発熱量は、燃焼生成物中の水の相によって決まる。HOが液体形態であれば、発熱量はHHV(高位発熱量)と呼ばれる。HOが水蒸気形態である場合、発熱量はLHV(低位発熱量)と呼ばれる。
【0097】
[0100] 用語「高位発熱量」(HHV)は、生成物の水が液体状態である場合に完全な燃料燃焼で放出されるカロリー値を意味する。水分を含有しないことに基づくと、任意の燃料のHHVは、下記の方程式を使用して計算され得る:
HHVFuel=146.58C+568.78H+29.4S−6.58A−51.53(O+N)
式中、C、H、S、A、OおよびNは、それぞれ炭素含有量、水素含有量、硫黄含有量、灰含有量、酸素含有量および窒素含有量であり、すべて重量パーセントである。
【0098】
[0101] 用語「都市固形廃棄物」(MSW)は、住居、商業または工業施設および機関において産出される固形廃棄物を意味し、処理可能である建設および解体廃材のすべての成分とともにすべての処理可能な廃棄物を含むが、危険廃棄物、自動車スクラップおよび他の自動車廃棄物、感染性廃棄物、アスベスト廃棄物、汚染土壌および他の吸収性媒体、ならびに家庭用ストーブからの灰以外の灰は除外する。中古タイヤは、MSWの定義から除外される。都市固形廃棄物の成分は、プラスチック、繊維、紙、庭廃棄物、ゴム、皮、木、また、都市固形廃棄物から選別された複数の成分で都市固形廃棄物を処理した後に残る、再利用可能な材料の回収不能部分を含有する残留成分である、再利用残留物を含むがこれらに限定されない。
【0099】
[0102] 用語「処理不能廃棄物」(不燃性廃棄物としても公知である)は、ガス化システムにおいて容易にガス化せず、ガス化中に産出される合成ガスへの炭素または水素の任意の有意義な寄与を与えない廃棄物を意味する。処理不能廃棄物は、乾電池、水銀電池および自動車用電池等の電池;冷蔵庫;ストーブ;冷凍庫;洗濯機;乾燥機;ベッドスプリング;車両フレーム部品;クランクケース;トランスミッション;エンジン;芝刈り機;除雪機;自転車;書類棚;空調装置;温水ヒーター;貯水タンク;水軟化装置;炉;油貯蔵タンク;金属製家具;プロパンボンベ;ならびに庭廃棄物を含むがこれらに限定されない。
【0100】
[0103] 用語「処理済みのMSW廃棄物流」は、例えば材料回収施設において、MSW成分の種類によって選別されることにより、MSWが処理されたことを意味する。MSW成分の種類は、プラスチック、繊維、紙、庭廃棄物、ゴム、皮、木、また、都市固形廃棄物から選別された複数の成分で都市固形廃棄物を処理した後に残る、再利用可能な材料の回収不能部分を含有する残留成分である、再利用残留物を含むがこれらに限定されない。処理済みのMSWは、ガラス、金属、砂塵または不燃物を実質的に含有しない。砂塵は、埃、粉塵、コーヒーの出し殻等の顆粒状廃棄物、および砂を含み、そのため、処理済みのMSWはコーヒーの出し殻を実質的に含有しない。
【0101】
[0104] 用語「処理可能廃棄物」は、ガス化システムにおいて容易にガス化し、ガス化中に産出される合成ガスへの、炭素または水素の有意義な寄与を与える廃棄物を意味する。処理可能廃棄物は、住居、商業および機関発生源のみからの、新聞紙、不要郵便物、段ボール紙、事務用紙、雑誌、書籍、板紙、他の紙、ゴム、織物および皮;木、食品廃棄物、ならびにMSW流の他の可燃性部分を含むがこれらに限定されない。
【0102】
[0105] 用語「熱分解」は、酸素欠乏または無酸素環境において印加された熱を使用して、固形廃棄物を化学分解するためのプロセスを意味する。
【0103】
[0106] 用語「再利用残留物」は、再利用施設が受入廃棄物からの再利用可能物を処理した後に残る、再利用の観点からは経済的価値をもはや含有しない残留物を意味する。
【0104】
[0107] 用語「スラッジ」は、都市、商業もしくは産業廃水処理プラントもしくはプロセス、給水処理プラント、大気汚染制御施設から産出される任意の固形、半固形もしくは液体、または同様の特性および効果を有する任意の他のそのような廃棄物を意味する。
【0105】
[0108] 用語「固形廃棄物」は、くず、生ごみ、スクラップ材料、がらくた、廃物、不活性充填材および造園廃物を含むがこれらに限定されない、自由流動する液体含有量が不十分である望ましくないまたは廃棄された固形材料を意味するが、危険廃棄物、生物医学廃棄物、浄化槽スラッジまたは農業廃棄物を含まず、土壌肥沃化に使用される動物肥料および吸収性床(absorbent bedding)、または工業廃棄物における固形もしくは溶解材料を含まない。固形廃棄物または該廃棄物の成分が、価値を有し、有益に使用され、他の用途を有し、または販売もしくは交換され得るという事実により、この定義から除外されることはない。
【0106】
[0109] 用語「吸着剤」は、伝統的な吸着剤として作用し、化学物質もしくは元素副生成物を吸着するか、または化学物質もしくは元素副生成物と反応する、あるいは、他の場合においては、灰の溶融温度等の燃料供給原料特性を変更する添加物として単に、人工燃料供給原料に添加される材料を意味する。
【0107】
[0110] 用語「蒸気/炭素比」(S/C)は、ガス化装置/燃焼装置に注入された蒸気の総モルを炭素供給原料の総モルで割った比率を意味する。蒸気/炭素比「S/C」は、下記の方程式によって表すことができる:
【0108】
【数2】

【0109】
[0111] 用語「熱効率」(冷ガス効率としても公知である)は、得られた生成ガスに含有される総HHVを、燃料入力に含有していた総HHVで割った比率を意味する。熱効力「Eff」は、下記の方程式によって表すことができる:
【0110】
【数3】

【0111】
[0112] 用語「揮発性物質」(揮発性有機化合物としても公知である)は、通常の条件下で有意に気化して大気中に進入するのに十分高い蒸気圧を有する有機化学化合物を意味する。揮発性材料の非限定的な例は、アルデヒド、ケトン、メタン、および他の軽質炭化水素を含む。
【0112】
[0113] 本明細書において記述されるのは、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、吸着剤とを含む新規人工燃料供給原料であって、炭素含有量、水素含有量、酸素含有量、窒素含有量、灰含有量、水分含有量およびHHV含有量を含むがこれらに限定されない多数の所望の化学分子特性のいずれかを有する供給原料である。この供給原料は、単独でまたは他の燃料と一緒に使用される様々な化学変換プロセスに有用である。人工燃料供給原料を生成するためのプロセスおよびそれを作製する方法についても記述される。
【0113】
[0114] 人工燃料供給原料の1つの豊富な資源は、MSWである。MSWは、住居、商業または工業施設および機関において産出される固形廃棄物であり、処理可能である建設および解体廃材のすべての成分とともにすべての処理可能廃棄物を含むが、危険廃棄物、自動車スクラップおよび他の自動車廃棄物、感染性廃棄物、アスベスト廃棄物、汚染土壌および他の吸収性媒体、ならびに家庭用ストーブからの灰以外の灰は除外する。MSWは、生ごみ、廃物、ならびに住居、商業、工業および地域社会活動から得られる他の廃棄材料を含む。MSWの組成は、収集の時間、収集の季節、MSWが任意の所与の日に収集される顧客の種類等に応じて広く変動する。MSWは、極めて多種多様な廃棄物または廃棄材料を含有し得る。例えば、廃棄物は、生分解性廃棄物、非生分解性廃棄物、鉄材料、非鉄金属、多種多様な形態の紙またはボール紙、広範なプラスチック(それらのうちいくつかは、触媒、安定剤または他の添加物として使用される微量の毒性金属を含有し得る)、塗料、ニスおよび溶剤、布地、木製品、ガラス、薬品および殺虫剤等を含む化学物質、種々の種類の固形廃棄物、ならびに広範な他の材料を含み得る。廃棄物は、家庭廃棄物および産業廃棄物を含む。本明細書において使用するように企図されている産業廃棄物は、毒性または危険な材料が少ない。しかしながら、MSWは、本明細書において記述される人工燃料供給原料を人工的に作る前に、処理不能成分を除去するために処理される。
【0114】
[0115] 処理済みのMSWは、MSW成分の種類によって選別または目録化されている。MSW成分の種類は、プラスチック、繊維、紙、庭廃棄物、ゴム、皮、木、また、都市固形廃棄物から選別された複数の成分で都市固形廃棄物を処理した後に残る、再利用可能な材料の回収不能部分を含有する残留成分である、再利用残留物を含むがこれらに限定されない。処理済みのMSWは、ガラス、金属、砂塵または不燃物を実質的に含有しない。砂塵は、埃、粉塵、コーヒーの出し殻等の顆粒状廃棄物、および砂を含み、そのため、処理済みのMSWはコーヒーの出し殻を実質的に含有しない。用語「実質的にない」は、本明細書において使用される場合、0.01%を超える材料がMSW成分中に存在しないことを意味する。
【0115】
[0116] 人工燃料供給原料において使用するための別の燃料源は、FOGである。FOGは、肉、ソース、肉汁、ドレッシング、油で揚げた食品、焼いた食品、チーズ、バター等のものにおいてよく見られる。飲食店、仕出し屋、病院、養護施設、デイケアセンター、学校および食料品店を含む多くの異なるビジネスが、食品を加工または給仕することによってFOG廃棄物を産出する。FOGは、市政機関にとって主要な問題となってきた。研究により、FOGは、下水収集システムからの衛生下水システムオーバーフロー(SSO)をもたらす衛生下水遮断の主な原因の1つであると結論付けられた。これらのSSOは、いくつかの市政機関において、保守用の穴(マンホール)から出た下水道のオーバーフローが雨水管へ入ることを含む多数の問題を引き起こしてきた。雨水管内の水は、水路へ、最終的には海洋へ流れ込む。SSOは、公衆衛生に脅威を与え、水生生物に悪影響を及ぼし、浄化するのに多額の費用がかかる。SSOの最も普遍的な原因は、食品サービス施設を扱っている小〜中規模の下水道におけるFOGの蓄積である。従って、燃料としての使用は、廃水中へのFOGの流出が原因で生じるSSOが蔓延することなく、FOGの廃棄手段を提供するであろう。
【0116】
[0117] FOGを廃棄する本方法は、下水システムへの直接的なものの他に、埋立てを含む。これらの種類の廃棄物は概して厄介なものとみなされるが、高い炭素含有量および水素含有量を含有しており、質の高い燃料源に変換され得る灰、硫黄および塩素を本質的に含有しない。
【0117】
[0118] 本発明において有用な他の種類の油および獣脂は、石油廃棄生成物である。石油廃棄生成物の非限定的な例は、廃棄エンジンオイルを含む。
【0118】
[0119] 人工燃料供給原料の生成において有用なさらに別の種類の廃棄物は、生物起源廃棄物としても知られるバイオマス廃棄物である。バイオマスは、燃料として、または工業生産のために使用され得る、生存しているおよび最近死滅した生物学的材料を指す。最も一般的には、バイオマスは、バイオ燃料として使用するために成長させた植物性物質を指すが、繊維、化学物質または熱の生成のために使用される植物性または動物性物質も含む。バイオマスは、燃料として燃やすことができる生分解性廃棄物も含み得る。地質学的プロセスによって石炭または石油等の物質に変換された有機材料は除外する。非限定的な種類のバイオマス廃棄物には、木、庭廃棄物;茅、スイッチグラス、大麻、トウモロコシ、ポプラ、ヤナギ、サトウキビおよび油ヤシ(ヤシ油)を含む植物;ココナツ殻、ならびにナッツ殻が含まれる。
【0119】
[0120] バイオマスの顕著な特徴は、すべての生物において広く存在する炭素−14を含有することである。炭素−14は、有機体が死滅すると、ゆっくりかつ次第に崩壊する。50,000年後には、すべての炭素−14が崩壊している。したがって、石炭、天然ガスおよび油のような化石燃料は、炭素−14を有さない。炭素−14を試験することにより、所与の燃料またはMSWのどの画分が生物起源であるかを示すことができる。この情報は、プラント運転員が、炉内で点火される再生可能バイオマスに由来する材料の量を説明することを可能にするため、重要である。その上、バイオマスに起因する炭素の量および化石燃料源からの炭素の量を監視官が直接計測することを可能にする。それらのカーボンオフセットを販売または交換できるように、エネルギーの産出において使用される再生可能燃料の量を運転員が直接計算することも可能にする。本発明において開示される人工燃料供給原料は、生物起源炭素の所望の目標を達成するためにバイオマスの画分を調整する能力を有し、これは、人工燃料供給原料の使用者が任意の再生可能エネルギークレジットを主張する際に該使用者に定量的尺度を提供する。
【0120】
[0121] 人工燃料供給原料の生成において有用なさらに別の種類の廃棄物は、スラッジである。スラッジは、処理プロセスの種々の段階で廃水から除去される固形廃棄物および細菌の混合物である。スラッジは、「一次スラッジ」および「二次スラッジ」に類別され得る。一次スラッジは、約4%の固形および96%の水である。一次スラッジは、細菌による消化が起こる前に一次沈降タンク中の廃水から沈降する材料からなる。二次または活性スラッジは、はるかに液体に近く、約1%の固形および99%の水である。二次スラッジは、細菌および該細菌が摂食する有機材料からなる。生成された二次スラッジの約30%は、曝気タンクに戻されて、下水処理の生物学的プロセスを補助する。残りの70%は処分されなくてはならない。
【0121】
[0122] 本発明における使用が企図されているスラッジは、都市スラッジ、別名バイオソリッドである。都市スラッジは、製紙工場のスラッジも他の工業/農業スラッジも含まない。スラッジのカロリーまたはBTU値の主な決定要因は、湿重量ベースの全固形物またはTSとして(または逆に水分含有量として)表現されるその乾燥度、およびその揮発性固形物含有量(乾燥重量ベースで表現される全揮発性固形物またはTVS)である。2つの別個の種類のスラッジ、1)生スラッジ(一次および二次好気性浄化器のみで処理されたスラッジ)および2)消化スラッジ(1番に嫌気性消化を添加したもの)がある。嫌気性スラッジは典型的には60%のTVSであり、生スラッジは典型的には75〜80%のTVSである。スラッジケーキ(脱水スラッジ)のTSは、スラッジを脱水するために処理プラントによって使用される方法に応じて変動し、10%〜97+%の範囲である。揮発性固形物1ポンドは約10,000〜12,000BTUを有しており、例えば、水1 lbを蒸気として追い出すには、約1,200BTUを必要とする。
【0122】
[0123] 本明細書において記述される人工供給原料の生成において有用な他の種類の材料は、肥料等の動物排泄物、動物バイオマス(肉および骨組織)、家禽敷料;石炭、石炭副生成物、石油コークス、黒液およびカーボンブラック等の化石燃料である。
【0123】
[0124] 有害性ガスを吸着する任意の種類の吸着剤が本発明において使用され得る。ナトリウム系吸着剤およびカルシウム系吸着剤の両方が有用である。ナトリウム系吸着剤の非限定的な例は、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む。カルシウム系吸着剤の非限定的な例は、炭酸カルシウム(CaCO)、石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)およびドロマイト(CaCO・MgO)を含む。これらの吸着剤は、卵殻等の再生可能資源から取得することができ、または鉱山のような非再生可能資源から取得することもできる。
【0124】
[0125] 本発明において有用な吸着剤のさらなる例は、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、石灰石、石灰、Fe、FeO、Fe、Fe、鉄屑、CaCO、Ca(OH)、CaCO・MgO、シリカ、アルミナ、陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト、アタパルジャイト、石炭灰、卵殻およびCa−モンモリロナイトを含むがこれらに限定されない。
【0125】
[0126] 本発明において有用な吸着剤の量は、人工供給原料中の硫黄含有燃料または塩素含有燃料の量、ならびに別の燃料との共ガス化または共発火の場合においては、人工供給原料および他の燃料両方中の硫黄含有燃料または塩素含有燃料の総量に基づいて決定される。例えば、硫黄または塩素の量が1%(w/w)を下回る場合、燃焼またはガス化中に生成される硫黄汚染物質または塩素汚染物質が0.1%を超えないようにするには、4.5%(w/w)の吸着剤が必要とされる。
【0126】
作製方法
[0127] 本明細書において記述される人工燃料供給原料は、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と吸着剤とを含み、当業者に公知である任意のプロセスによって作製され得る。特に、その内容の全体が本明細書で援用される米国特許出願第12/492,096号において記述されているプロセスを使用して、吸着剤を含有しない、様々な燃料供給原料を作製することができる。米国特許出願第12/492,096号は、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分から構成される燃料供給原料であって、2%未満の硫黄および1%未満の塩素をそれぞれ有する供給原料について記述している。本発明において、人工燃料供給原料中の硫黄および塩素の量は、燃焼またはガス化プロセス中における硫黄および塩素汚染物質の生成に拮抗する吸着剤の存在が原因で、米国特許出願第12/492,096号において記述されているものよりも高くなり得る。標的燃料供給原料についての異なる特性が米国特許出願第12/492,096号において記述されており、その中で記述されている通りのプロセスに従うことによって達成できる。例えば、異なる量のC、H、O、HHV、硫黄、塩素、ならびに灰含有量および水分含有量を有する人工燃料供給原料が記述されている。最終燃料供給原料の異なるサイズの圧縮形態、およびガス化または燃焼のためのその最適寸法をどのように計算するかについても記述されている。
【0127】
[0128] 本発明において有用な吸着剤の量は、人工供給原料中の硫黄および/または塩素含有燃料の量、ならびに別の燃料との共ガス化または共発火の場合においては、人工供給原料および他の燃料両方中の硫黄含有燃料または塩素含有燃料の総量に基づいて決定される。例えば、硫黄の量が2%を下回る場合、熱変換中に生成される硫黄汚染物質または塩素汚染物質が0.4%を超えないようにするには、8%(w/w)の吸着剤が必要とされる。施設のSO排出限界が0F.5 lbs/MMBtuに定められている場合、例えば、供給原料は0.25%未満の硫黄含有量を有するなら、この限界を満たすことができる。本明細書において記述される供給原料は、ある特定の状況で、高価なSO制御デバイスを設置する必要性を回避するのを助けるであろう。
【0128】
[0129] MSWは、プラスチック、繊維、織物、そのすべての形態の紙、ボール紙、ゴム、庭廃棄物、食品廃棄物および皮等の材料の種類による成分部分の識別および分離を可能にする任意の方法によって処理され得る。その開示の全体が本明細書で援用される、米国特許第7,431,156号、ならびに米国特許出願公開第2006/0254957号、同第2008/0290006号および同第2008/0237093号において開示されているもの等の分離方法が、廃棄物の成分を分離するために使用され得る。
【0129】
[0130] MSWは、化学特性による成分部分の識別および分離を可能にする任意の方法によって処理することもでき、概して2、3、4または5つのクラスに選別され、貯蔵され得る。その開示の全体が本明細書で援用される、米国特許出願公開第2010/0018113号において開示されているもの等の分離方法が、廃棄物の成分を分離するために使用され得る。
【0130】
[0131] 本明細書において記述される通りの人工燃料供給原料を人工的に作るのに使用するための、MSWの個々の成分の回収を可能にする上記で開示した分離方法は変更し得ることが理解される。
【0131】
[0132] いくつかの実施形態において、人工供給原料の成分が混合される。実施形態のいくつかにおいて、混合された成分は、細断、研磨、破砕等の公知の技術を使用して、サイズが縮小される。MSW成分のサイズ縮小のための方法は周知であり、例えば、参照によりその開示の全体が援用される米国特許第5,888,256号において記述されている。他の実施形態において、他の成分と混合する前に、個々の成分のサイズがまず縮小される。いくつかの実施形態において、人工燃料供給原料の混合された成分は、例えば、参照によりその開示の全体が援用される米国特許第5,916,826号において記述されているもの等、公知の高密度化方法を使用して高密度化される。いくつかの実施形態において、高密度化は、最大40,000ポンド力をかけることができるPasadena社製手動プレス等のペレタイザーの使用によって、ペレットを形成する。いくつかの他の実施形態において、高密度化は、ブリケット、立方体、長方形形状、円柱形状、球形状、ハニカムを含む他の形態であってよく、または異なる厚さのシートにスライスされてよい。当業者であれば、この一覧は例証目的であって、他の高密度化形状が可能であり、かつ本発明の範囲内に企図されていることを認識するであろう。
【0132】
[0133] いくつかの実施形態において、FOGS成分は、混合タンクに直接添加される。他の実施形態において、FOGS成分は、混合後、廃棄物をペレット化ダイスに入れる直前に添加される。
【0133】
[0134] 適切な条件下でペレタイザーを使用することにより、様々な寸法を有するペレットが生成される。ペレットは、少なくとも約0.25インチ、特に約0.25インチ〜約1.5インチの範囲内の直径を有するべきである。ペレットは、少なくとも約0.5インチ、特に約0.5インチ〜約6インチの範囲内の長さを有するべきである。
【0134】
[0135] ペレタイザーとともに使用するための適切なダイスを選択することにより、ペレットの被包表面に刻み目が付けられる。この刻み目付けは、識別マークとして作用し得る。刻み目付けは、揮発分除去プロセスにも影響を及ぼすことがあり、そのため、刻み目を付けたペレットは、刻み目を付けられていないペレットよりも効率的な速度で揮発する。
【0135】
[0136] いくつかの実施形態において、本明細書において記述される人工燃料供給原料は、生物学的に、化学的にかつ毒物学的に不活性である。生物学的に不活性、化学的に不活性および毒物学的に不活性という用語は、本明細書において記述される人工燃料供給原料が、該人工燃料供給原料内に含有される生物学的、化学的および毒物学的作用物質に対する許容される限界について、EPAの限界を超過しないことを意味する。これらの用語は、人工燃料供給原料が、生成後にも長期貯蔵時にも毒性生成物を放出しないという意味も含む。人工燃料供給原料は、例えば、病原体も有機体も含有せず、また、生成後または長期貯蔵時に生物の成長を促進するであろう条件も含有しない。例えば、本明細書において記述される任意の形態の人工燃料供給原料は、生物の成長を促進するのには十分でないような水分含有量を有するように設計され得る。人工燃料供給原料は、抗吸収性となるように設計されてよく、これは、生成後および長期貯蔵時に水を大量には吸収しないことを意味する。人工燃料供給原料は空気安定性でもあり、これは、空気の存在下で分解して大量の揮発性有機化合物を発しないことを意味する。本明細書において記述される人工燃料供給原料は、不活性の定義について許可された限界をそれらが満たしているかどうかを決定するために、公知の方法に従って試験され得る。例えば、Title 40−Protection of the Environmentとして公布された40 CFR Part 239〜259は、固形廃棄物に対する規制を管理するEPAの規制のすべてを含有している。Test Methods for Evaluating Solid Waste,Physical/Chemical Methodsと題されたEPA公報SW−846は、固形廃棄物に関して、参照によりその全体について本明細書で援用する40 CFR Part 239〜259を順守して評価され使用を許可された、分析および試料採取法のOSW公定書である。
【0136】
燃料の特性は供給原料組成に影響を及ぼし得る
[0137] 多くの場合、燃料中に存在する複数の汚染物質を制御する必要があり、汚染物質の中でも、反応性においてかなりの違いがあり得るため、1つの一般的な吸着剤では対処できないことが多い。これらの場合においては、多重吸着剤(multi-sorbents)が理想的である。
【0137】
[0138] 石炭ガス化および燃焼では、硫黄が最も支配的な構成要素(0.5〜5重量%)であるのに対し、塩素含有量ははるかに少ない(約0.1重量%)。硫黄を有効に除去することができるが、いくらかの塩素を除去することもできる一般的な吸着剤が好ましい。この種の吸着剤の1つの群は、硫黄(主に、ガス化においてはHS、燃焼においてはSO)および塩素(主にHCl)の両方を捕捉するために使用され得るカルシウム系吸着剤、例えば、炭酸カルシウム(CaCO)、石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH))、ドロマイト(CaCO・MgO)を含む。
【0138】
[0139] バイオマスガス化および燃焼では、硫黄が概して低く(すなわち、典型的には0.2〜0.5重量%)、かつ塩素が高い(すなわち、典型的には>0.5重量%)ため、カルシウム系またはナトリウム系吸着剤が使用され得る。ガス化条件においては、CaOが吸着剤として使用される場合、HSと反応してCaSを、HClと反応してCaClを生成することになるが、CaSがHClと反応しHSを再生成する(CaS+2HCl⇔CaCl+HS)こともある。したがって、好ましい実施形態においては、ナトリウム系吸着剤(例えば、ナーコライト:NaHCO、ソーダ/トロナ:NaHCO・NaCO)が使用される(また、生成物NaClは、CaClの772℃に対して高い融解温度801℃を有する)。しかしながら、CaSは2,525℃の融解温度を有するため、いくらかのHSがカルシウム系吸着剤によってCaSに、HClがナトリウム系吸着剤によってNaClに変換されるように、適切な割合でカルシウム系およびナトリウム系吸着剤の両方を使用することが有益となり得、結果として、生成された灰は、増大した融解温度を有することになるため、灰スラグ化または凝集が低減されるであろう。
【0139】
[0140] バイオマス燃料についても、高濃度のアルカリ金属(例えば、カリウム(K))が、吸着剤によって軽減されなくてはならない追加の汚染物質負荷を加える。アルカリ金属および微量金属のいくつかを保持するために有効な吸着剤として、シリカ、アルミナ、ならびに陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト、アタパルジャイト、Ca−モンモリロナイト、酸化鉄、酸化カルシウムおよび石灰石等のケイ酸アルミニウムは、いずれもアルカリおよび他の微量金属を保持することができると報告されている。シリカおよびアルミナに富む石炭灰も、この場合における添加物として有用である。これらの反応は、最も腐食性の高いアルカリ塩化物塩(AlkCl)を保持するが、以下に示す通りHClを遊離する:
AlkCl+HO+Al.xSiO(s)⇔2AlkAlO.xSiO(s)+2HCl
AlkCl+HO+Fe(s)⇔AlkFe(s)+2HCl
【0140】
[0141] 生成された塩はより高い融解温度を有し、従って、熱伝達面の塩化物塩腐食を防止する。
【0141】
[0142] ハロゲン、最も重要なことには塩素の存在は、本発明の供給原料を設計する際に考慮すべき極めて重要な要因である。上記で論じた通り、廃棄物材料は多くの場合、燃料として使用され、存在する塩素の量は、かなりの割合の微量元素と反応して、それらの金属元素または酸化形態よりも揮発性の高い塩化物を形成するのに十分な量である。しかし、燃料中の有意な量の硫黄の同時存在は、塩素によってもたらされる問題を低減し得る。硫酸アンモニウムまたは重硫酸アンモニウム(米国特許第6,817,181号)、二酸化硫黄(日本国特許第6180104号)、高硫黄含有燃料(日本特許第2006064251号)等の硫黄含有材料を導入することは、塩素によってもたらされる腐食課題を軽減する(2AlkCl+SO+HO+=AlkSO+2HCl[式中、Alkはアルカリ金属である]の硫酸化反応による)のに有効であるようにも思われる。
【0142】
[0143] したがって、HClを(初めは気相中にあり、上記反応により遊離される)有効に保持することができる第二の吸着剤、およびいくつかの場合においては硫黄捕捉のための第三の吸着剤を人工供給原料に添加して、硫黄、塩素およびアルカリ(または微量)金属を同時に保持するべきである。
【0143】
[0144] 2つの別個の燃料を共発火または共ガス化することにより、時として、個々の燃料の、そうしなければ不利点となるものを、組み合わせて利点に変えることができる。例えば、より高硫黄/低塩素の石炭を共発火させることは、少なくとも下記の有益性を有するバイオマス燃料の、通常は低硫黄/高塩素/アルカリ金属を平衡させる:
a.石炭中の硫黄は、最も積極的な高温腐食を引き起こすアルカリ塩形成および腐食性沈着を低減するのを助ける。モル比がS/Cl>4かつS/(Na+K+Cl)>5となるように共発火比を選択することにより、塩素およびアルカリ塩化物による腐食を有効に防止する。
b.バイオマス灰中に豊富な卑金属元素は、硫黄および塩素を保持するのを助ける。加えて、Na、K、Fe、塩化鉄等は、石炭蒸気ガス化のための触媒であり、システムの低温運転を可能にする。他方で、シリカおよびアルミナに富む石炭灰は、高温において有害微量金属を保持するのを助けることができ、例えば、
2PbO+SiO→PbSiO(s)
CdO+SiO→CdSiO(s)
CdO+Al→CdAl(s)
PbCl+Al・2SiO+HO→PbO・Al・2SiO(s)+2HCl(g)
である。
c.バイオマスは通常、石炭(1.5%)よりも低い燃料窒素(0.1〜0.5%)を含有し、従ってNOx生成の可能性は低くなる。また、バイオマスは、HCNよりも最後にはNHとなる可能性が高い、より揮発性の高い窒素を含有する(石炭がより多くの炭化窒素を含有する)ため、GHGであるNOの形成が低減される。
d.バイオマス中の塩素は、Hgを酸化させてHgCl(Hg2+)を形成し、元素状Hgよりも揮発性の低い粒子状Hgの形成を促進し、従って、下流のバグハウス設備および他の集塵設備内に捕捉され得る。
e.バイオマスを共発火させることにより、石炭単独よりも増大した混合燃料中の揮発性物質が原因で、炭素燃焼効率を増大させることができる。
石炭および廃棄生成物の共燃焼は、塩素が酸化されて元素状塩素(Cl)となる前に有効に保持されるため、特に燃料中の硫黄の存在下で、ダイオキシンの排出を法定限界値未満に低減するのを助けることができる。
【0144】
動作条件は供給原料組成に影響を及ぼし得る
[0145] いくつかの汚染物質は、より揮発性が高いか、または酸化性雰囲気下とは対照的に、還元性雰囲気において1つの任意の吸着剤と反応性である。これらの相違は、多くの場合、異なるプロセス特性および吸着剤利用性能をもたらす。いくつかの吸着剤について、焼結が高温で生じると予期されている場合、焼結のリスクは、還元性環境において防止または最小化され得る。
【0145】
[0146] より低い動作温度は、塩素腐食および灰スラグ形成を低減するのを助ける。しかしながら、プロセス特性に応じて、炭素変換の低減、吸着剤利用の低減およびタール生成の増大等、他の課題につながることもある。燃料変換の低下およびシステム性能の低下にもつながり得る。したがって、所望の動作条件下で有効に作動することができる1つまたは複数の吸着剤を選択することが不可欠である。いくつかの実施形態において、約800〜850℃の動作温度が最適なようである。この温度範囲は、特にバイオマス燃料については真である。この温度下では、アルカリ金属は気化しないため、アルカリに富む灰は融合しない。ナトリウム系吸着剤は有効に作動し、炭素変換は十分に高く、タール形成は最小である。また、硫黄または塩素を捕捉するための吸着剤は、ガス化または燃焼を低減温度で生じさせる触媒能も有し得る。この効果は、化石燃料には特に重要である。
【0146】
吸着剤の反応性および副生成物の特性は供給原料組成に影響を及ぼす
[0147] 選択された吸着剤の反応性または効果は、確かに考慮すべき重要な要因であり、反応性が反応条件に応じて変動すると理解することも重要である。例えば、石灰および消石灰は酸化条件において石灰石よりも反応性であり、これは、後者が低孔硫酸カルシウムの形成により、活性石灰石コア周囲において重度の細孔閉塞を被っている(すなわち、モル体積が石灰石の36.9cm/モルからCaSOの46.0cm3/モルまで増大する)ためである。しかしながら、還元環境下において、副生成物CaSは石灰石よりも多孔性である(すなわち、モル体積が石灰石の36.9cm3/モルからCaSの27.9cm3/モルまで低減される)。加えて、CaSは、CaSOの1,460℃と比較して、2,525℃の融解温度を有する。還元条件において、カルシウム系吸着剤、特に石灰石によって硫黄を除去することはいくつかの実施形態において有利であることが明瞭である。しかし、反応炉温度が低ければカルシウム系吸着剤の反応性は限定されるため、より反応性の高いナトリウム系吸着剤または他の吸着剤のほうが好都合となる。
【0147】
[0148] ナトリウム系吸着剤は、多くの場合、カルシウム系吸着剤、特に硫黄および塩素と反応性が高い。しかし、副生成物(例えば、NaS、NaSO)は、NaCl(801℃)がCaCl(772℃)よりわずかに高いものの、概して低い融解温度を有する。したがって、アルカリ金属、微量金属、硫黄または塩素を同時に捕捉し、灰融解温度を増大させるために第二の吸着剤を添加するならば、より反応性の高いナトリウム系吸着剤がこれらの実施形態において使用され得る。
【0148】
[0149] 鉄は、硫黄および塩素と反応性であることが証明されている。鉄は、ボイラー加熱管を製造するために広く使用され、結果として、塩素および硫黄腐食を起こしやすい。十分に確立された鉄腐食機構を活用することにより、鉄屑は、塩素ガス、HCl、およびアルカリ塩化物を有効に制御するための人為的な腐食受容体として利用され、それにより、実際のボイラー管の高温腐食およびダイオキシン形成を防止することができる。その上、鉄屑中の主な化合物である酸化鉄は、硫黄および塩素と反応する広範な温度を有する(Westmoreland, P.R.ら"Evaluation of candidate solids for high temperature desulfurization of low-BTU gases" Env. Sci. Technol. 10(7)659-661, 1976を参照)。最後に、図5において見られる通り(Westmoreland, 1976を参照)、硫黄は、多くの異なる金属との広い反応性プロフィールを有し、異なる温度でこの反応性を使用して、吸着剤を持つ供給原料を設計することができ、該供給原料は、所与の温度で有効となり、設備を汚損し得る融解を形成しない。
【0149】
[0150] したがって、鉄屑の使用は多くの利点を有する。酸化鉄は、塩化鉄および硫化鉄化合物がより高い融点を有し、ボイラーの汚損を起こしにくいため、ナトリウム系吸着剤とは異なり、沈着の問題を有さない。鋳造所からの鉄屑は、多くの場合、費用をかけて、都市の埋立地において廃棄物として処分される。したがって、鉄屑は無料であり、利益を挙げつつ取得することができる、すなわち、鋳造所がそれらの除去のために代金を払うことになるため、費用がかさまない。
【0150】
[0151] 鋳造所から生まれた鉄屑は、Fe、FeO、FeまたはFe等の異なる形態の鉄を含有し得、それらはそれぞれ、直接使用または前処理され得る。鉄廃棄物を単独でまたはいくつかの他の吸着剤と混合して使用して、性能の1つまたは複数の態様を増強し、改善することができる。そのような吸着剤は、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、石灰石、石灰、鉄屑、Fe、FeO、Fe、Fe、CaCO、Ca(OH)、CaCO・MgO、シリカ、アルミナ、陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト、アタパルジャイト、石炭灰、卵殻およびCa−モンモリロナイトを含み得るがこれらに限定されない。
【0151】
[0152] 鉄屑を用いた本発明者らの分析に基づくと、主に酸化鉄(II、III)の化学形態において、約70%の鉄含有量がある。永久磁性を呈し、フェリ磁性であるFe(時として、FeO.Feとして表現される)。HSまたはHCLと反応すると、下記の化学反応が起こると想定される(反応率または反応速度論についてはここでは考慮しない)。
Fe+4HS=Fe+4H
Fe+8HCl=FeCl+2FeCl+4H
したがって、理論的には、1単位重量のH2SおよびHClと反応するためにはそれぞれ1.70および0.79単位重量のFe3O4を必要とする(モル比では、Fe/Sはであり、Fe/Clは3/8である)。以下では主にFe3O4の鉄屑を試験したが、鉄およびFeO、Fe、Fe(OH)、Fe(OH)等のその他の酸化物も、HSおよびHClを除去するのに有用である。
【0152】
[0153] 本発明の一部である多くの公知の高温硫黄吸着剤もある。例えば、下記の化合物は、高温で硫黄と反応することが公知である:亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅、石灰石および石灰。
【0153】
本発明の例示的な利点
[0154] 以下は、本明細書において記述される発明のいくつかの代表的な利点についての記述である。これらの任意の利点は以下であるが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の他の利点が本発明から生じることが当業者には明らかであろう。
【0154】
1.排出制御−他の燃料と共使用することを可能にする効率的で費用効果の高い排出制御、および燃料柔軟性
[0155] 吸着剤と人工燃料供給原料との統合は、熱変換プロセスからの危険大気汚染物質(HAP)排出を制御するための有力な手法である。燃料内に均一に分布した吸着剤により、密接な接触および十分な保持時間が容易に達成することができ、したがって、高い吸着剤利用効率およびHAP制御効率につながる。
【0155】
[0156] 吸着剤含有人工供給原料は、該人工燃料だけで使用される場合、変換後ガス処理デバイスなしに、大気排出目標を満たすように設計され得る。化石またはバイオマス燃料(石炭、木、くず材燃料(hog fuel)、動物排泄物等)が使用されている既存の施設では、人工燃料は、既存の燃料の一部を置換し、人工燃料および置換燃料両方からの大気排出を制御する能力を有するように設計され得る。明らかに、だんだんと厳しくなる環境規制要件を満たそうとし得る人工燃料と他の燃料との併用は、費用効果が高く、それらが目標を満たせるようにするが燃焼後排出制御プロセスを設置するために大規模な資本投資をしない、さらに効率的な改造アプローチである。
【0156】
[0157] 人工燃料供給原料中の吸着剤により、PVC、ブタ燃料、動物排泄物および低品位炭等、環境または運転上の問題を引き起こすというそれらの固有の性質により、そうでなければ回避されたであろう材料の有益な使用が可能になるであろう。高価かつ専用の選別および分離プロセスが整備されたとしても、これらの環境および/または運転上、有害ではあるが依然として燃料として価値のある材料が、廃棄物流から徹底的に除去され得ると想定することは非実用的である、すなわち、燃料供給原料中におけるそのような材料の含有が現実となり得る。したがって、人工燃料において吸着剤を使用することは、これらの含有が環境および/または運転上の問題を引き起こさないことを確実にするだけでなく、これらの材料の有益な使用も可能にし、したがって、高価な事前選別および分離を回避することができる。
【0157】
[0158] 硫黄および塩素に加えて、好適な吸着剤を人工燃料供給原料と統合して、燃焼後制御アプローチにより極めて高価な金属排出を制御することができる。
【0158】
2.腐食防止/最小化
[0159] バイオマス系燃料の性質、すなわち、高い塩素およびアルカリ金属含有量により、設備腐食(すなわち、過熱器管、節炭器、空気加熱器等)は、バイオマス系燃料ボイラーおよび発電所を運転する上での主要な難題となってきた。バイオマスおよび廃棄物発火ボイラーにおける高温塩素腐食は、蒸気管の修理および交換のための頻繁かつ長期にわたるプラントダウンタイムを引き起こしてきており、これは高価な労働力および材料を必要とするだけでなく、電力収入の喪失によってもたらされる付帯費用および埋め立てるための廃棄物バイパスにおける費用ももたらす。
【0159】
[0160] 吸着剤を人工燃料とを組み合わせることにより、灰中の腐食性成分を捕捉および保持し、したがって、それらがガス流中に進入するのを防止し、下流の設備と相互作用するのを回避するであろう。設備腐食が防止または最小化されると、プラントの利用性は増大されることになり、これが、運転および維持費用の低減ならびに電力収入の増大等の有意な経済的利益を導く。
【0160】
3.プロセス操作の改善
[0161] 高いアルカリ金属含有量により、バイオマスおよび廃棄物燃料は、ガス化装置または燃焼装置において燃料として使用される場合、スラグ化、凝集または沈着の形成を起こしやすい。これらの問題は、運転上の困難を増大させ、システムダウンタイムにつながるだけでなく、熱伝達面上における沈着およびスケールの形成が原因で、熱伝達率も低減させる。
【0161】
[0162] これらの運転上の課題は、溶融温度等の燃料灰特性を変化させ、調整しまたは改善するための添加物を有する人工燃料供給原料により、大幅に最小化され得る。MgOおよび/またはケイ酸アルミニウム様材料、さらには石炭灰等の好適な添加物を添加することにより、高い溶融温度を有し、動作温度においてスラグ化を引き起こさないと期待される石炭様灰に、バイオマス灰を変換することができるであろう。
【0162】
4.プロセス性能の改善
[0163] 典型的には30〜40%の電気効率を有する典型的な石炭火力発電所と比較して、バイオマスおよび廃棄物に由来する燃料火力発電所は、約20%の効率で電気を生成するに過ぎない。この相違に寄与する最も大きな限定要因の1つは、バイオマスおよび廃棄物に由来する燃料が、高い塩素およびアルカリ金属含有量を有し、これにより、比較的低い蒸気温度および圧力(典型的には、750°Fおよび650〜800psig)でボイラーが動作するように限定して、高温腐食を制御および最小化する(煙道ガス温度がおよそ2,000°Fよりも高い場合、指数関数的に増大する)ことである。これらは、石炭火力発電所のおよそ1000°Fおよび3,500psigに匹敵する。
【0163】
5.石炭発電所寿命の延長
[0164] ますます厳しくなり続ける大気排出基準、例えばEPAの新たな輸送規則により、米国における石炭火力発電所の大半は、重大な決定を下す必要が出てくる、すなわち、コンプライアンスを満たすよう排出制御システムを改造するために数百万ドルを費やすか、または経費を回避するために発電所を単純に操業停止するかのいずれかである(Proposed Transport Rule 75 FR 45210を参照)。典型的な500MWの石炭火力発電所では、規制を順守するために排煙脱硫システムを設置するための改造費用は、推定7500万ドルと、追加で運転および保守に年間およそ680万ドルがかかるであろう(エネルギー情報局(EIA)の平均排煙脱硫(FGD)費用データに基づく)。明瞭に、本発明の人工燃料供給原料の使用は、上記の改造費用を回避するだけでなく、プラントがその運転寿命を延長することも可能にするであろう。
【0164】
[0165] 防食吸着剤および添加物を含有する人工燃料供給原料により、高温腐食を防止または最小化することができ、結果として、バイオマスおよび廃棄物に由来する燃料火力発電所が、上昇した蒸気温度および圧力で動作することを可能にし、従って、発電効率を増大させる。
【実施例】
【0165】
[0166] ここで、そのいくつかは本発明を例証するものである具体例を参照する。実施例は、好ましい実施形態を例証するために提供されること、およびそれによって本発明の範囲に対する限定は意図されていないことを理解されたい。
【0166】
一般的手順
[0167] 以下でこれらの試験において使用される供給原料は、米国特許出願第12/492,096号において記述されている手順を使用し、紙、ボール紙、雑誌およびプラスチックを含むMSW成分から作製した。調製された供給原料の完全な特徴を以下に提供する:
【0167】
【表1】


この供給原料はベースライン供給原料と称され、汚染物質制御吸着剤は添加されていない。以下の実験においては、汚染物質排出を制御するために、可変量の吸着剤が添加される。
【0168】
[0168] 800〜850℃の温度のガス化(または還元)条件下では、硫黄および塩素の大半がHS(少量のCOSを伴う)およびHCl(典型的には、燃料中約10〜50%のClがHClに変換される。S.V.B. van Paasen, M.K. CieplikおよびN.P. Phokawat, "Gasification of Non-woody Biomass Economic and Technical Perspectives of Chlorine and Sulphur Removal from Product Gas(Non-confidential version)," ECN-C-06-032を参照)に変換されることになるため、吸着剤の量は、HSおよびHClと調査されている特定の吸着剤との化学反応に基づいて決定される。例えば、トロナが吸着剤として使用される場合、下記の化学反応が生じる。
NaCO・NaHCO・2HO+3/2HS=3/2NaS+4HO+2CO
NaCO・NaHCO・2HO+3HCl=3NaCl+4HO+2CO
化学量論によれば、1単位重量のHSおよびHClの除去は、重量でトロナの4.42および2.07倍を必要とするであろう(または、1モルの硫黄はトロナ中に含有される2.0モルのナトリウムを必要とし、1モルのClはトロナ中に含有される1モルのナトリウムを必要とする)。同様に、石灰が使用される場合、下記の化学反応が生じる。
S+CaO=CaS+H
2HCl+CaO=CaCl+H
ここでも、この反応によれば、1単位重量のHSおよびHClの除去は、重量で酸化カルシウムの1.65および0.77倍を必要とするであろう(または、1モルの硫黄は石灰中に含有される1モルのカルシウムを必要とし、1モルのClは石灰中に含有される0.5モルのカルシウムを必要とする)。
【0169】
[0169] 人工供給原料用の成分を上記で論じた通りに選択した後、低速シュレッダーで細断し、次いで機械的に混合する。次いで、吸着剤を本発明に従って混合物に添加する。その後、ペレタイザーを使用して混合物を高密度化する。水分含有量を増大させる必要があれば、混合工程中またはペレット化プロセス中に水を添加する。供給原料の小試料を採取し、温度制御および通気したオーブン内で乾燥させて、水分含有量を確認する。次いで、混合した人工供給原料を、上述した通りのガス化に供する。
【0170】
[0170] ガス化試験は、実験室規模の層状下降気流ガス化装置で実施した。ガス化装置は、4インチの内径および穴あき火格子の上24インチの高さを有する。火格子の上1”、7”、19”、および火格子の下4”に、4つのK型熱電対がガス化装置に沿って設置されている。実時間温度を、データロガーおよびソフトウェア(Pico Technology Inc., Cambridgeshire, UK)によって記録した。合成ガス試料を採取するために、2つのウォータースクラバーと真空ポンプとからなる合成ガス試料採取トレインを使用し、オンラインローズマウントガス分析器(Model MLT2, Emerson Process Management, Germany)によって分析して、H、N、CO、COおよびCHならびにOの容積分率を取得した。HSおよびHCl濃度を計測するために、異なるスケールのドレーガー管(Draeger Medical Inc. Telford, PA)を選択した。再現性を確実にするために、HSおよびHClを毎回複数回計測し、定常運転の間に3〜4回繰り返した。乾式ガス試験メーターを空気入口内に設置して、吸気速度を計測した。実験配置の略図を図1に示す。
【0171】
燃料供給原料のガス化時における硫黄および塩素汚染物質の生成に対する種々の量の吸着剤の効果
(実施例2)
[0171] 第一シリーズの試験は、ベースライン供給原料、ならびに異なる量のトロナおよび石灰吸着剤を添加した供給原料を用いて行った。結果を表2および図2にまとめる。吸着剤対供給原料の比率を下記の通りに計算した。
【0172】
[0172] 1単位重量の供給原料について、硫黄および塩素の量をそれらの組成に基づき計算する(すなわち、表1に収載されている通りの重量パーセント)。次いで、硫黄および塩素の重量を、硫黄(すなわち32.07グラム/モル)および塩素(すなわち35.45グラム/モル)の分子量で割って、硫黄および塩素のモルを取得する。同様に、添加された吸着剤の重量を分子量(すなわち、トロナについては226.03、CaOについては56.08、消石灰については74.09グラム/モル)で割って、吸着剤のモルを取得する。トロナの場合において、トロナ1モルはナトリウム3モルを含有し、消石灰の場合において、消石灰1モルはカルシウム1モルを含有する。従って、CaおよびNaの総量を計算することができる。CaおよびNaの総モルをSおよびClの総モルで割ることにより、(Ca+Na)/(S+Cl)の比率を出し、これを表2に収載する。
【0173】
[0173] いくつかの場合において、化学量論を使用する。この場合では、吸着剤の化学量論的要件(CaまたはNa等のモルで)を、上記で挙げたもの等の関与する特定の化学反応に基づき計算する。次いで、好ましい化学量論比に基づき、吸着剤の化学量論的要件に好ましい化学量論比を乗ずることによって、吸着剤の必要総モル数を計算する。次いで、吸着剤分子量を使用することにより、結果を吸着剤の重量に変換することができる。供給原料の総重量および総吸着剤重量を知ることで、吸着剤含有供給原料中の吸着剤の重量パーセント(または重量%)を容易に計算することができる。
【0174】
【表2】

【0175】
[0174] 実施例1は、同じベースライン供給原料を用いると、H、CO、COおよびCHの合成ガス組成は全く同一であるが、供給原料中に予め混和された追加量の吸着剤を用いると、合成ガス中のHS濃度は供給原料中の吸着剤の量に反比例することを実証している。およそ3の(Ca+Na)/(S+Cl)モル比では、未処理の供給原料と比較して、95〜98%超のHSが合成ガスから除去され得る。
【0176】
(実施例2)
[0175] 第二シリーズの実験は、実施例1と同じ供給原料を用いて行った。実施例1からの結果を、実施例2のものと比較し、図3にまとめる。図3は、両方の実施例において、供給原料中の吸着剤のモル量を増大させることにより、合成ガス中のHSの量が低減することを実証している。実験結果に基づき、人工供給原料と統合された吸着剤は、ガス化プロセスからの硫黄排出を劇的に低減することができる。
【0177】
(実施例3)
[0176] 先の実施例において、合成ガスを硫化水素について分析したことに加えて、ガスのHCLについても計測した。生成された合成ガス中に、検出可能なHClは存在しないことが分かった。さらに、合成ガス試料冷却器によって生成される、気液分離器から収集された凝縮物を、pHメーターおよび総塩素メーターで計測した。計測されたpHは、凝縮物が酸性であることを示唆する1〜3であり、総塩素は、凝縮物中に塩素がほとんどないことを示唆する0〜4ppmと計測され、そのいずれも、合成ガス中にHClがほとんど存在しないことを指示するものであった。
【0178】
(実施例4)
[0177] ガス化中に生成された合成ガス中における硫黄および塩素の含有量を計測することは重要であるが、それが本発明の吸着剤処理の効果を計測する唯一の手段というわけではない。実施例4においては、可変量の吸着剤が統合された供給原料からの灰の試料を、硫黄および塩素含有量について分析した。
【0179】
【表3】


表3において見られる通り、吸着剤の量が増大すると、灰中の硫黄および塩素の量も増大する。この結果は、吸着剤が、非処理供給原料中よりも灰中でのほうが多量の硫黄および塩素を捕捉していることを実証している。
【0180】
[0178] これらの結果は、カルシウム系吸着剤が硫黄を保持する上でより有効である(灰中の硫黄含有量は、吸着剤なしで1.96%から消石灰を加えて3.30%に増大し、次いでトロナを添加して4.11%に増大した)ことも示している。ナトリウム系吸着剤は、塩素を保持する上でより有効である(灰中の塩素含有量は、トロナなしで1.13%からトロナを加えて7.54%に増大した)。
【0181】
[0179] 従来の炉吸着剤注入(燃焼条件下)においては、約3のモル比で、約60%のSO還元効率しか達成できない("Design and Test Furnace Sorbent Injection for SO2 Removal in a Tangentially Fired Boiler" Wei Zhou, Pete Maly, Joy Brooks, Santosh Nareddy, Larry Swanson, David Moyeda. Environmental Engineering Science. April 2010, 27(4): 337-345; Optimization of Trona/Limestone Injection for SO2 Control in Coal-Fired Boilers, Western Research Institute, 2005)。上記の実施例において立証されたのと同等の脱硫性能を達成するために、典型的には5〜6の比率が必要である。
【0182】
[0180] 追加の実験は、下記の吸着剤組合せを適切なモル比で使用し、上述した実施例に従って実施する:トロナおよびMgO;トロナおよびカオリナイト;またはトロナおよびケイ酸塩。これらの組合せのそれぞれは、生成された合成ガス中の硫黄および塩素含有量の、同様の比例低減を有する。
【0183】
共ガス化
[0181] 本発明の吸着剤を統合した人工供給原料は、石炭等の伝統的な燃料と共ガス化することができ、統合された吸着剤は、人工燃料および石炭の両方からの硫黄排出を有効に除去し得ることも企図されている。例えば、第一の供給原料(A)は、石炭と同等のベースライン燃料として作成した。上記の表1において見られる通り、(A)は高い硫黄含有量を有する。第二の供給原料(B)は、MSW流からの典型的な供給原料を表すように調製されたものであり、表4に示す下記の特性を有することが期待されるであろう。
【0184】
【表4】


また、供給原料CおよびDは、9%のトロナおよび27%のトロナをそれぞれ添加したことを除き、供給原料Bから調製した。
【0185】
【表5】

【0186】
[0182] 表5において見られる通り、5つの異なる実験を実施した。最初に、高硫黄供給原料(A)をガス化してその材料のベースラインを得、その後、供給原料Bについて同じことをした。次いで、50%のAおよび50%のBを十分に混合し、ガス化装置に装填し、合成ガスを分析する共ガス化試験を行った。合成ガス中の計測されたHSは、平均して約1,350ppmvであり、これは、供給原料Aのみを用いるガス化と比較して硫黄含有量が59%低減している。この結果は、低硫黄燃料と高硫黄燃料との共ガス化または共発火が、硫黄排出を自然に有効に低減し得ることを実証している。
【0187】
[0183] 次に、1つの実験において50%の供給原料Aを50%の供給原料Cと混合し、別の実験において50%の供給原料Aを50%の供給原料Dと混合した。実験的に計測された合成ガス中のH2Sは、それぞれ1,260ppmvおよび550ppmvであり、これは、ベースライン供給原料Aと比較してHS生成における約62%および83%の低減、または吸着剤のない共ガス化と比較して7%および59%の低減(すなわち、50%の供給原料A+50%の供給原料B)を表す。図4は、各実験における硫黄の量の相対的低減を、図表によって表示している。
【0188】
[0184] これらの結果に基づき、吸着剤が予め統合された人工供給原料と、石炭、油または天然ガス等の他の燃料との共ガス化または共発火により、人工燃料および石炭両方からの硫黄排出を有効に除去できると結論付けることができる。人工供給原料に添加される吸着剤の適切な量および特徴は、特定の吸着剤に対する基本的な化学反応および両方の燃料の特性(すなわち、硫黄および塩素含有量)に基づいて決定され得る。
【0189】
追加の実施例
[0185] 追加シリーズの試験は、人工供給原料から硫黄および塩素を除去する際の鉄屑の効果を分析して実施した。以下の実施例においては、表1に記述したものと同じ材料を使用した。このベースライン供給原料に、鉄屑を下記のパラメーターに従って添加した:1単位重量のHSおよびHClとそれぞれ反応させるための、1.70および0.79単位重量のFe(モル比では、Fe/Sは3/4であり、Fe/Clは3/8である)。これらの反応機構および鉄屑の純度に基づき、この実験において人工燃料供給原料に添加する鉄屑の総量を決定した。結果を表6において後述する。
【0190】
【表6】

【0191】
[0186] 表6において見られる通り、鉄屑の量を増加させると、合成ガス流中の硫化水素および塩化水素のレベルにも比例低減が起こる。したがって、鉄屑は硫黄および塩素の両方に有効な吸着剤として作用していることが顕著である。
【0192】
[0187] 本明細書において記述される任意の実施形態について例示し記述してきたが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の他の変更および修正が為され得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲内であるそのような変更および修正をすべて、添付の特許請求の範囲に包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分を含む人工燃料供給原料であって、
約30%〜約80%の炭素含有量と、
約3%〜約10%の水素含有量と、
約10%未満の灰含有量と、
吸着剤と
を含み、ガラス、金属、砂塵、および不燃物を実質的に含有しない、人工燃料供給原料。
【請求項2】
約30%未満の水分含有量をさらに含む、請求項1に記載の供給原料。
【請求項3】
前記水分含有量が約5%〜約30%である、請求項2に記載の供給原料。
【請求項4】
前記水分含有量が約10%〜20%である、請求項3に記載の供給原料。
【請求項5】
約3,000BTU/lb〜約15,000BTU/lbのHHVを有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項6】
約40%〜約80%の揮発性物質含有量を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項7】
約40%〜約50%の炭素含有量を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項8】
約60%〜約70%の炭素含有量を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項9】
約75%の炭素含有量を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項10】
約6%〜約7%の水素含有量を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項11】
約15%の水分含有量を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項12】
約5%未満の灰含有量を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項13】
約7,000BTU/lb〜約11,000BTU/lbのHHVを有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項14】
約0.09〜約0.14のH/C比を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項15】
約0.3〜約0.6のO/C比を有する、請求項1に記載の供給原料。
【請求項16】
前記吸着剤が、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、石灰石、石灰、Fe、FeO、Fe、Fe、鉄屑、CaCO、Ca(OH)、CaCO・MgO、シリカ、アルミナ、陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト、アタパルジャイト、石炭灰、卵殻、およびCa−モンモリロナイトからなる群から選択される、請求項1に記載の供給原料。
【請求項17】
前記吸着剤がセスキ炭酸ナトリウム(トロナ)である、請求項1に記載の供給原料。
【請求項18】
トロナが約3%(w/w)〜約15%(w/w)の量である、請求項17に記載の供給原料。
【請求項19】
トロナが約5%(w/w)〜約10%(w/w)の量である、請求項18に記載の供給原料。
【請求項20】
処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、石灰石、石灰、Fe、FeO、Fe、Fe、鉄屑、CaCO、Ca(OH)、CaCO・MgO、シリカ、アルミナ、陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト、アタパルジャイト、石炭灰、卵殻およびCa−モンモリロナイトからなる群から選択される1つまたは複数の吸着剤とを含む、人工燃料供給原料。
【請求項21】
次式:吸着剤中のカルシウムの総モル+吸着剤中のナトリウムの総モルを、存在する硫黄の総モルおよび存在する塩素の総モルで割ることに従って組み合わせられる、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分、カルシウム系吸着剤、およびナトリウム系吸着剤を含む、人工燃料供給原料。
【請求項22】
前記比率が10を下回る、請求項21に記載の供給原料。
【請求項23】
前記比率が5を下回る、請求項22に記載の供給原料。
【請求項24】
前記比率が約3である、請求項23に記載の供給原料。
【請求項25】
前記比率が約2である、請求項24に記載の供給原料。
【請求項26】
前記比率が約1.3である、請求項24に記載の供給原料。
【請求項27】
処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、別の燃料の硫黄含有量を軽減するように計算された量の少なくとも1つの吸着剤とを含む、人工燃料供給原料。
【請求項28】
前記吸着剤が、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、石灰石、石灰、Fe、FeO、Fe、Fe、鉄屑、CaCO、Ca(OH)、CaCO・MgO、シリカ、アルミナ、陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト、アタパルジャイト、石炭灰、卵殻、およびCa−モンモリロナイトからなる群から選択される、請求項27に記載の供給原料。
【請求項29】
処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、腐食を低減するように計算された量の少なくとも1つの吸着剤とを含む、人工燃料供給原料。
【請求項30】
前記吸着剤が、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、石灰石、石灰、Fe、FeO、Fe、Fe、鉄屑、CaCO、Ca(OH)、CaCO・MgO、シリカ、アルミナ、陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト、アタパルジャイト、石炭灰、卵殻、およびCa−モンモリロナイトからなる群から選択される、請求項29に記載の供給原料。
【請求項31】
前記腐食が硫黄によって引き起こされる、請求項29に記載の供給原料。
【請求項32】
前記腐食が塩素によって引き起こされる、請求項29に記載の供給原料。
【請求項33】
前記腐食が硫黄化合物によって引き起こされる、請求項29に記載の供給原料。
【請求項34】
前記腐食が塩素化合物によって引き起こされる、請求項29に記載の供給原料。
【請求項35】
処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、少なくとも1つの吸着剤とを含む、人工燃料供給原料。
【請求項36】
前記吸着剤が、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜鉛フェライト、亜鉛銅フェライト、チタン酸亜鉛、アルミン酸銅フェライト、アルミン酸銅、酸化銅マンガン、アルミナ担持ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、石灰石、石灰、Fe、FeO、Fe、Fe、鉄屑、CaCO、Ca(OH)、CaCO・MgO、シリカ、アルミナ、陶土、カオリナイト、ボーキサイト、エマスライト、アタパルジャイト、石炭灰、卵殻およびCa−モンモリロナイトからなる群から選択される、請求項35に記載の供給原料。
【請求項37】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料の硫黄排出の既知レベルと比較して低い硫黄排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項38】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料の塩素排出の既知レベルと比較して低い塩素排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項39】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料の重金属排出の既知レベルと比較して低い重金属排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項40】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出される粒子状物質の既知レベルと比較して低い粒子状物質の排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項41】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出されるNOxの既知レベルと比較して低いNOxの排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項42】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出されるCOの既知レベルと比較して低いCOの排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項43】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出されるCOの既知レベルと比較して低いCOの排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項44】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出される揮発性有機化合物(VOC)の既知レベルと比較して低いVOCの排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項45】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際の少なくとも1つの他の燃料によって排出されるハロゲンガスの既知レベルと比較して低いハロゲンガスの排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項46】
変換される際の前記人工燃料供給原料が、変換される際に石炭から排出されるGHGの既知レベルと比較して低いGHG排出を生成する、請求項35に記載の供給原料。
【請求項47】
処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分および少なくとも1つの吸着剤とともに人工燃料供給原料を、反応炉内で使用する工程を含む、エネルギーを産出する方法。
【請求項48】
前記エネルギーが電気である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記エネルギーが蒸気である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記炉が燃焼モードで操作される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記炉がガス化モードで操作される、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
他の燃料が前記人工燃料供給原料と組み合わせて使用される、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記他の燃料が、処理済みのMSW廃棄物流に由来する少なくとも1つの成分と、少なくとも1つの吸着剤とを含む第二の人工燃料供給原料である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
第一の人工燃料供給原料が塩素排出を処理し、前記第二の人工燃料供給原料が硫黄排出を処理する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記他の燃料が、油、石炭、バイオマス、疎性RDF、および高密度化RDFからなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記人工燃料供給原料がすべての排出を制御する、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
前記人工燃料供給原料が腐食を制御する、請求項44に記載の方法。
【請求項58】
前記人工燃料供給原料が、排出を政府の規制要件未満に維持する、請求項47に記載の方法。
【請求項59】
前記人工燃料供給原料が、プロセス性能を改善する、請求項47に記載の方法。
【請求項60】
前記プロセス性能の改善が、灰スラグ化の低減である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記プロセス性能の改善が、より高い効率である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記プロセス性能の改善が、燃料変換の増大である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記プロセス性能の改善が、動作温度の低減である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記改善が、前記炉の寿命を延長することである、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記改善が、改造費用を回避することである、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記改善が、運転費用の低減である、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記改善が、維持費用の低減である、請求項59に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−515136(P2013−515136A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545958(P2012−545958)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057351
【国際公開番号】WO2011/078928
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512165248)リ コミュニティー エナジー,エルエルシー. (1)
【Fターム(参考)】