吸着素子の製造方法、吸着素子、水熱合成装置
【課題】 基材からの金属イオンの溶出を確実に防ぐことのできる吸着素子の製造方法、吸着素子、水熱合成装置を提供すること。
【解決手段】 金属からなる基材110表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤121を配置してなる吸着素子100の製造方法であって、吸着剤121の前駆体溶液122中に基材110を浸漬し、水熱合成することによって基材110表面に吸着剤121を形成する形成工程を備え、形成工程において、基材110に電子供給体130を電気的に接続した状態で、水熱合成を実施するようにした。
【解決手段】 金属からなる基材110表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤121を配置してなる吸着素子100の製造方法であって、吸着剤121の前駆体溶液122中に基材110を浸漬し、水熱合成することによって基材110表面に吸着剤121を形成する形成工程を備え、形成工程において、基材110に電子供給体130を電気的に接続した状態で、水熱合成を実施するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属からなる基材表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤を配置してなる吸着素子の製造方法、この製造方法によって製造される吸着素子、及び製造方法に適用する水熱合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属からなる基材表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤を配置してなる吸着素子として、例えば特許文献1が開示されている。
【0003】
特許文献1に示される吸着素子は、外表面に耐食性皮膜の形成された熱交換器を吸着剤前駆体溶液中に浸漬し、水熱合成することで、熱交換器の表面に吸着剤の結晶からなる吸着層を直接形成してなるものである。これによると、バインダーを用いることなく熱交換器の表面に吸着剤が形成されているので、吸着質との接触面積が増加し、吸着性能を向上することができる。
【特許文献1】特開2005−111425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示される構成の場合、強アルカリ性を示す吸着剤前駆体溶液による熱交換器の腐食を防ぐために、熱交換器の表面を耐食性皮膜で保護している。
【0005】
しかしながら、耐食性皮膜に欠陥がある場合、欠陥部位から熱交換器を構成する金属がイオンとして溶出する。また、耐食性皮膜自身も一部金属イオンとして溶出することが考えられる。これら溶出した金属イオンは、吸着剤形成部位及びその近傍からも生じるため、溶出した金属イオンによって生じる不純物が吸着層に含まれることとなる。すなわち、吸着性能が低下する恐れがある。
【0006】
また、熱交換器を構成するフィンの板厚、チューブの肉厚が薄いので、上記欠陥部位を介し、熱交換器に孔が生じる恐れもある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、基材からの金属イオンの溶出を確実に防ぐことのできる吸着素子の製造方法、吸着素子、水熱合成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1〜13に記載の発明は、金属からなる基材表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤を配置してなる吸着素子の製造方法に関するものである。まず請求項1に記載の発明は、吸着剤の前駆体溶液中に基材を浸漬し、水熱合成することによって基材表面に吸着剤を形成する形成工程を備え、形成工程において、基材に電子供給体を電気的に接続した状態で、水熱合成を実施することを特徴とする。
【0009】
このように本発明によると、基材から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないように、基材に接続された電子供給体から基材に電子が供給される。言い換えれば、基材の電位をその平衡電位より卑(カソード的)にしつつ、水熱合成を実施することができる。従って、従来のように耐食性皮膜を形成しなくとも、基材からの金属イオンの溶出を確実に防ぐことができる。すなわち、基材から溶出するイオンによって生じる不純物を無くすことができるので、吸着性能を向上することができる。また、基材の腐食を防止することができる。また、耐食性皮膜のように欠陥部(ピンホール等)を生じる恐れがあるが、その心配がない。
【0010】
尚、基材と電子供給体の電気的な接続形態としては、電子供給体と基材とを直接接触させても良いし、他の導電部材を介して接続しても良い。また、電子供給体を基材に一体的に構成することも可能である。ただし、吸着剤形成部位と電子供給体が近いと、電子供給体から生じる金属イオンの影響により、吸着剤形成部位に吸着剤以外の不純物が多少なりとも形成されることも考えられる。そこで請求項2に記載のように、電子供給体を、基材の吸着剤形成部位を除く部位に電気的に接続することが好ましい。
【0011】
電子供給体としては、例えば請求項3に記載のように、基材よりも卑な金属からなる犠牲部材を採用することができる。この場合、卑な金属(所謂イオン化傾向の高い金属、熱力学的に腐食性の大きい金属)である犠牲部材から金属イオンが溶出(アノード反応)し、犠牲部材よりも貴な金属(所謂イオン化傾向の低い金属、熱力学的に耐食性の大きい金属)からなる基材からは、金属イオンが溶出しない。
【0012】
その際、請求項4に記載のように、犠牲部材を吸着剤に含まれる金属元素から構成すると良い。このように、犠牲部材から溶出する金属イオンと前駆体溶液中の金属イオンとが同一であれば、少なくとも異なる金属イオンが溶出する場合に比べて、吸着剤合成に与える影響を低減(例えば不純物生成量を低減)することができる。
【0013】
また、例えば請求項5に記載のように、電子供給体として外部直流電源を採用し、形成工程において、基材をカソードとし、基材を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなる部材をアノードとして外部直流電源に接続した状態で、前駆体溶液中にカソード及びアノードを浸漬し、水熱合成を実施するようにしても良い。この場合も、基材から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないように、基材の電位をその平衡電位より卑(カソード的)にしつつ、水熱合成を実施することができる。
【0014】
具体的には、請求項6に記載のように、形成工程において、外部直流電源により印加する電圧を、前駆体溶液中に浸漬した状態におけるカソードとアノードの電位差以上とすると良い。尚、請求項7に記載のように、アノードとして、前駆体溶液に対して不溶性を示す材料からなるものを採用すると、安定して水熱合成を実施することができる。また、繰り返し使用が可能となる。
【0015】
吸着剤が配置される基材表面が平滑であると、基材表面から吸着剤が剥離しやすい。
そこで、請求項8に記載のように、形成工程の前に、基材の、少なくとも吸着剤形成部位を凹凸化する凹凸化工程を備えることが好ましい。水熱合成をする前に、吸着剤形成部位を凹凸化しておけば、水熱合成によって形成された吸着剤と基材との接触面積が増し、吸着剤を基材に担持することができる。すなわち、基材に対する吸着剤の機械的強度が増すことができる。凹部に吸着剤の一部が配置される場合には、所謂アンカー効果も期待できる。
【0016】
具体的には、請求項9に記載のように、凹凸化工程において基材表面を粗化処理しても良いし、請求項10に記載のように、金属からなる多孔部を形成しても良い。いずれの場合も、平滑な表面に対して吸着剤を積層する構成と比べて、吸着剤から基材(又は基材から吸着剤)に熱を伝えやすい。
【0017】
多孔部の形成方法としては、請求項11に記載のように、基材表面に配置された金属粉末を焼結して形成する方法や、請求項12に記載のように、溶融した金属を発泡させて、形成する方法を適用することができる。
【0018】
さらに、請求項13に記載のように、凹凸化工程後、基材の凹凸化された部位に吸着剤の種結晶を担持させる工程を備え、担持させた状態で形成工程を実施すると、吸着剤の形成を早めることができる。すなわち、製造時間を短縮することができる。凹凸化された部位の凹部(多孔部の孔部)は、種結晶を担持させるのに好適である。
【0019】
次に、請求項14〜25に記載の発明は、上記した吸着素子の製造方法を適用して構成される吸着素子に関するものである。先ず請求項14に記載のように、金属からなる基材と、この基材上に形成され、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤からなる吸着層とを備える吸着素子であって、吸着層は、基材に電子供給体を電気的に接続した状態で、水熱合成により基材の表面に直接形成されていることを特徴とする。
【0020】
このように本発明によると、耐食性皮膜を有しない構成でありながら、水熱合成によって基材表面に直接吸着剤を形成し、吸着層としている。これは、基材に電子供給体を電気的に接続した状態(すなわち、基材から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないようにした状態)で水熱合成を実施することによる。すなわち、水熱合成時に基材から金属イオンが溶出せず、吸着層はこの金属イオンに基づく不純物を含んでいない。従って、従来よりも吸着性能が向上されている。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項2に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0022】
基材と電子供給体の電気的な接続形態としては、少なくとも水熱合成時において確保されれば良く、電子供給体と基材とを直接接触させても良いし、他の導電部材を介して接続しても良い。また、請求項16に記載のように、電子供給体を基材に接触固定した構成、請求項17に記載のように、電子供給体を基材に一体的に設けた構成のように、電子供給体を基材に一体的に構成しても良い。この場合、電気的な接続状態を確保するための別の導電部材を不要とできる。
【0023】
請求項18〜20に記載の発明は、請求項3〜5に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。また、請求項21,22に記載の発明は、それぞれ請求項8,10に記載の発明と同様であるので、その記載を省略する。
【0024】
尚、請求項14〜22いずれかに記載の発明は、請求項23に記載のように、基材が板状体を含み、板状体の厚さが1mm以下であるもの、請求項24に記載のように、基材が筒状体を含み、筒状体の肉厚が1mm以下であるものを採用することができる。厚さが1mm以下の場合であっても、基材に孔を生じることは無い。すなわち、請求項25に記載のように、吸着式ヒートポンプの吸着コアに好適である。
【0025】
次に、請求項26〜31に記載の発明は、上記した吸着素子の製造方法に適用される水熱合成装置に関するものである。先ず請求項26に記載の発明は、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤の前駆体溶液が充填される容器を有し、前駆体溶液に金属からなる基材を浸漬配置した状態で、前駆体溶液を加熱・加圧し、吸着剤を基材表面に形成する水熱合成装置であって、浸漬配置した状態で基材と接触する容器内の部位に、基材よりも卑な金属からなる電子供給体を設けたことを特徴とする。
【0026】
このように本発明によると、前駆体溶液に金属からなる基材を浸漬配置した状態で、基材が容器内に設けられた電子供給体と接触し、基材と電子供給体との間に電気的な接続状態が確保される。従って、水熱合成時に、基材からの金属イオンの溶出を防ぐことができる。また、基材と電子供給体との電気的な接続状態を確保するための別の導電部材が不要であり、予め電子供給体を基材に接続しなくて良いので、電気的な接続形態を簡素化することができる。
【0027】
具体的には、請求項27に記載のように、電子供給体を、容器の少なくとも一部として容器の内面に露出した構成とすると良い。尚、請求項28に記載の発明は、請求項4に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0028】
また、請求項29にように、前駆体溶液と接触する容器内の部位に、基材をカソードとする外部直流電源に接続されるアノードを設けても良い。この場合も、水熱合成時に、基材からの金属イオンの溶出を防ぐことができる。具体的には、請求項30に記載のように、アノードを、容器の少なくとも一部として容器の内面に露出した構成とすると良い。尚、請求項31に記載の発明の作用効果は、請求項7に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る吸着素子の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、吸着素子100は、金属からなる基材110と、基材110表面に直接形成された吸着層120から構成される。
【0030】
基材110の構成材料としては、後述する電子供給体としての犠牲部材の構成材料よりも貴な金属を適用することができる。言い換えれば、基材110の構成材料は特に限定されるものではなく、犠牲部材の構成材料として基材110よりも卑な金属を選択すれば良い。例えば銅、アルミニウム、鉄等に純金属や、ステンレス、銅合金、アルミ合金等の合金を適用することができる。
【0031】
本実施形態においては、銅からなる板状の基材110の表面に、基材110の一部として金属からなる多孔部111が形成されており、この多孔部111に吸着層が形成されている。多孔部111を、基材110と異なる金属にて構成しても良いが、基材110と吸着剤120と間ですばやく熱交換がなされるように、熱伝導率の高いものが好ましい。本実施形態においては基材110と同じく銅により構成している。
【0032】
吸着層120は、基材110に犠牲部材を電気的に接続した状態で、水熱合成により基材110の表面に吸着剤121を直接形成してなるものである。また吸着剤121は、冷却状態において吸着質(例えば水蒸気やアルコール水溶液等)を高能力で吸着し、また、吸着質の吸着に伴い吸着能力が次第に低下するが、加熱状態とされることにより、吸着していた吸着質を脱離して吸着能力が再生される性質を有している。このような吸着剤121としては、例えばゼオライトがある。本実施形態においては、吸着剤121として、鉄アルミノリン酸塩系のゼオライトを採用している。
【0033】
このように本実施形態に係る吸着素子100は、耐食性皮膜を有しない構成でありながら、水熱合成によって基材110表面に直接吸着剤121を形成し、吸着層120としている。
【0034】
次に、このように構成される吸着素子100の製造方法について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、吸着素子100を製造する方法を示す概略断面図であり、(a)は多孔化工程、(b)は接続工程、(c)は種結晶担持工程である。図3は、図1(c)に続くものであり、形成工程を示す概略断面図である。
【0035】
先ず、図2(a)に示すように、基材110に対して、吸着層形成部位に多孔部111を形成する多孔化工程を実施する。本実施形態おいては、銅からなる基材110の吸着層形成面上に銅粉末を配置し、焼結して多孔部111を形成している。尚、多孔部111の形成方法としては、上記例に限定されるものではない。それ以外にも、溶融状態の金属を発泡させて固化し、多孔部111を形成しても良い。
【0036】
多孔部111形成後、図2(b)に示すように、基材110に対して電子供給体となる犠牲部材130を電気的に接続する接続工程を実施する。犠牲部材130の構成材料としては、基材110よりも卑な金属を採用することができる。尚、卑な金属とは、基材110を構成する金属に対して、所謂イオン化傾向の高い金属、熱力学的に腐食性の大きい金属である。本実施形態においては、吸着剤121に含まれる金属元素と同じ(吸着剤121の骨格成分の)鉄から構成されている。
【0037】
また、本実施形態においては、導電部材131を介して、基材110の吸着層形成面とは異なる面に、犠牲部材130を接続した。このように吸着層形成部位と離間して犠牲部材130を配置することが好ましい。これにより、後述する形成工程において、犠牲部材130から溶出する金属イオンによって生成される不純物が、吸着層120に含まれるのを極力防ぐことができる。すなわち、吸着剤121が吸着層120の表面に露出するので、吸着性能を向上することができる。
【0038】
次に、図2(c)に示すように、多孔部111に対して吸着剤121の種結晶121aを担持させる種結晶担持工程を実施する。このように、吸着層形成部位に予め種結晶を担持させた状態で水熱合成を実施すると、結晶として基材110表面に析出する吸着剤121の析出時間(すなわち製造時間)を短縮することができる。尚、本実施形態においては、多孔部111の孔内に種結晶121aを担持させるので、種結晶121aを所望の位置に保持できる。すなわち、所望の位置(選択的)に吸着層120を形成することができる。
【0039】
次に、図3に示すように、基材110の表面に吸着層120を形成する形成工程を実施する。先ず吸着剤121の前駆体溶液を調整する。この前駆体溶液は、酸またはアルカリ性の水溶液(本実施形態においては酸性)である。この前駆体溶液122を、図3に示すように、水熱合成装置200の容器201内に充填し、基材110を犠牲部材130とともに前駆体溶液122に浸漬させる。そして、蓋202をして容器201を密封する。その際、基材110よりも卑な金属(所謂イオン化傾向の高い金属、熱力学的に腐食性の大きい金属)からなる犠牲部材130から金属イオンが溶出(アノード反応)し、犠牲部材130よりも貴な金属(所謂イオン化傾向の低い金属、熱力学的に耐食性の大きい金属)からなる基材110からは、金属イオンが溶出しない。尚、図3において、符号201aは容器201の一部であり、前駆体溶液に対する耐薬性を有する材料からなる内部容器である。
【0040】
この状態で前駆体溶液122を加熱・加圧(容器201内の圧力も加熱により上昇)すると反応が進行し、基材110の種結晶121a配置部位の周囲に吸着剤121の結晶が析出する。さらに加熱を続けると、結晶が成長し、吸着剤121からなる吸着層120が、基材110の表面に形成される。そして、容器201から取り出されて犠牲部材130が外され、図1に示す吸着素子100となる。
【0041】
このように本実施形態に係る吸着素子100の製造方法によると、基材110から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないように、基材110に接続された電子供給体130から基材に電子が供給される。言い換えれば、基材110の電位をその平衡電位より卑(カソード的)にしつつ、水熱合成を実施することができる。従って、従来のように耐食性皮膜を形成しなくとも、基材110からの金属イオンの溶出を確実に防ぐことができる。すなわち、基材110から溶出するイオンによって生じる不純物を無くすことができるので、形成された吸着素子100において、吸着性能を向上することができる。また、基材110の腐食を防止することができる。耐食性皮膜の場合、欠陥部(ピンホール等)を生じる恐れがあるが、本実施形態に示す方法によるとその心配がない。尚、本発明者が確認したところ、本実施形態に示す製造方法によれば、不純物なし(吸着剤121のみ)で吸着層120を形成することができた。
【0042】
また、本実施形態においては、犠牲部材130を吸着剤121に含まれる金属元素から構成している。従って、前駆体溶液122中の金属イオンと異なる金属イオンが溶出する場合に比べて、吸着層形成に与える影響を低減(例えば不純物生成量を低減)することができる。すなわち、吸着性能を向上することができる。尚、本実施形態においては、吸着剤121が鉄アルミノリン酸塩系のゼオライトであるため、犠牲部材130を基材110よりも卑な鉄から構成した。しかしながら、鉄以外の骨格成分であるアルミニウムから構成しても良い。
【0043】
また、本実施形態においては、基材110の吸着層形成面(形成部位)に多孔部111を形成する例を示した。このように多孔部111を形成すると、吸着剤121と多孔部111を含む基材110との接触面積が増し、種結晶121aだけでなく吸着剤121も基材110に担持することができる。従って、基材110に対する吸着層120の機械的強度を増すことができる。また、平滑な基材表面に吸着剤121を形成・積層する構成と比べて、吸着剤121から基材110(又は基材110から吸着剤121)に熱を伝えやすい。
【0044】
尚、このような、機械的強度を増す形態としては、多孔部111に限定されるものではない。基材110の少なくとも吸着層形成部位を、形成工程の前に凹凸化すれば良い。例えば基材表面を粗化処理しても良い。凹部に吸着剤121の一部が配置される場合には、所謂アンカー効果も期待できる。
【0045】
また、本実施形態に係る吸着素子100の製造方法として、多孔化工程、接続工程、種結晶担持工程、及び形成工程の順に実施する例を示した。しかしながら、多孔化後に種結晶121aを担持させてから接続工程を実施しても良い。また、接続工程実施後に、多孔化し、種結晶121aを担持させても良い。また、製造工程としても、少なくとも接続工程と形成工程を備えれば良いので、多孔化(凹凸化)工程を実施しない構成としても良い。また、種結晶担持工程を実施しない構成としても良い。
【0046】
また、本実施形態においては、基材110と犠牲部材130とを導電部材131を介して電気的に接続する例を示した。しかしながら、基材110と犠牲部材130とを接触配置することで、両者を電気的に接続しても良い。この場合、形成工程において、接触するように容器201内に基材110及び犠牲部材130を配置すれば良いので、接続工程を不要とすることができる。
【0047】
また、本実施形態においては、基材110の一面上に吸着層120を形成する例を示した。しかしながら、吸着層形成部位は上記例に限定されるものではない。導電部材131を介して犠牲部材130を基材110に接続する構成の場合、犠牲部材130を基材110に対して離間して配置することができるので、基材110の表面全体(導電部材131との接続部位除く)に吸着剤121からなる吸着層120を形成することも可能である。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を、図4に基づいて説明する。図4は、本実施形態における吸着素子100の概略構成を示す断面図である。
【0049】
第2の実施形態における吸着素子100及びその製造方法は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0050】
基材110と電子供給体である犠牲部材130の電気的な接続形態としては、少なくとも水熱合成時(前駆体溶液に浸漬中)において確保されれば良い。第1の実施形態においては、犠牲部材130が導電部材131を介して基材110に電気的に接続される例を示した。それに対し、本実施形態においては、犠牲部材130を基材110に一体化させた構成としている。
【0051】
具体的には、図4に示すように、基材110の吸着層形成面の裏面に、犠牲部材130が露出するように、基材110に設けた溝部内に犠牲部材130を嵌め込んで、嵌合、導電部材による接着等により固定した構成となっている。このような構成としても、第1の実施形態に示した形成工程において、犠牲部材130から溶出する金属イオンによって生成される不純物が、吸着層120に含まれるのを極力防ぐことができる。すなわち、吸着剤121が吸着層120の表面に露出するので、吸着性能を向上することができる。この場合、吸着素子100が犠牲部材130を有するので、侵害発見が容易である。
【0052】
また、第1の実施形態に示した接続工程を不要とすることができる。尚、それ以外の製造工程は、第1の実施形態同様である。
【0053】
尚、図4においては、吸着素子100として、基材110の一面上に吸着層120を形成した構成を示した。しかしながら、吸着層形成部位は上記例に限定されるものではない。例えば、図5に示すように、基材110の両表面に吸着層120を形成する場合には、吸着層120の形成されない基材110の端部に、犠牲部材130を一体的に設ければ良い。図5は、本実施形態の変形例を示す断面図である。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を、図6及び図7に基づいて説明する。図6は、本実施形態における接続工程を示す概略構成図である。図7は、本実施形態における形成工程を示す概略構成図である。
【0055】
第3の実施形態における吸着素子100及びその製造方法は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0056】
本実施形態においては、電子供給体として外部直流電源を採用し、図6に示す接続工程(第1の実施形態に示す接続工程に対応)において、基材110をカソードとし、基材110を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなる部材をアノード141として、外部直流電源140に接続する。尚、図6において、符号142,143は、それぞれアノード141と外部直流電源140、外部直流電源140と基材110とを電気的に接続する導電部材である。
【0057】
そして、この接続状態で、図7に示すように、容器201内に充填された前駆体溶液122中にカソードとしての基材110及びアノード141を浸漬し、水熱合成(形成工程)を実施する。このとき、基材110から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないように、基材110の電位をその平衡電位より卑(カソード的)にしつつ、水熱合成を実施する。具体的には、外部直流電源140により印加する電圧を、前駆体溶液122に浸漬した状態における基材110とアノード141の電位差以上とする。
【0058】
従って、基材110からの金属イオンの溶出を防ぎつつ、基材110の表面に吸着剤121からなる吸着層120を形成することができる。なお、形成された吸着素子100は、第1の実施形態に示した構成と同様(図1参照)である。第1の実施形態においては、電子供給体(犠牲部材130)の構成材料が、基材110よりも卑である金属に限定される物であった。それに対し、本実施形態に係る製造方法によれば、基材110とともに前駆体溶液122中に浸漬されるアノード141に構成材料は特に限定されるものではないが、アノード141が基材110よりも卑な金属からなる場合には、第1の実施形態に示した構成のほうが簡素であるので、特に、基材110と同じ金属かそれよりも貴な導電材料からなる構成においての適用が好ましい。
【0059】
尚、アノード141としては、前駆体溶液122に対して不溶性を示す材料からなるものを採用すると、安定して水熱合成を実施することができる。また、繰り返し使用が可能となる。例えば、黒鉛、シリコン鋳鉄、マグネタイト、白金メッキ電極、金メッキ電極等を採用することができる。本実施形態においては、黒鉛を採用している。
【0060】
(第4の実施形態)
本実施形態においては、第1〜第3の実施形態に示した吸着素子100の製造において適用される水熱合成装置200に係る発明について説明する。図8は電子供給体として犠牲部材130を適用する際の水熱合成装置200を示す概略断面図である。図9は電子供給体として外部直流電源140を適用する際の水熱合成装置200を示す概略構成図である。
【0061】
第4の実施形態における水熱合成装置200は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0062】
図8に示すように、本実施形態に係る水熱合成装置200は、前駆体溶液122が容器201内に充填された状態で、前駆体溶液122に晒されるように、犠牲部材130が容器201に一体的に設けられている。すなわち、犠牲部材130が水熱合成装置200の一部として構成されている。具体的には、容器201を構成する内部容器201aが耐薬性を有する樹脂からなり、容器内部に露出するように、内部容器201aに犠牲部材130がインサート成形されている。
【0063】
このように構成される水熱合成装置200を吸着素子100の形成に適用した場合、前駆体溶液122に金属からなる基材110を浸漬配置した状態で、基材110が容器201内に設けられた犠牲部材130と接触し、基材110と犠牲部材130との間に電気的な接続状態が確保される。従って、形成工程において、基材110からの金属イオンの溶出を防ぐことができる。また、第1の実施形態に示した接続工程が不要(導電部材131が不要)であるので、電気的な接続形態を簡素化することができる。
【0064】
また、図9に示すように、前駆体溶液122が容器201内に充填された状態で、前駆体溶液122に晒されるように、第3の実施形態に示したアノード141を容器201に一体的に設けた構成としても良い。すなわち、アノード141を水熱合成装置200の一部として構成しても良い。具体的には、容器201を構成する内部容器201aが耐薬性を有する樹脂からなり、容器内部に露出するように、内部容器201aにアノード141がインサート成形されている。尚、図示されないが、アノード141は、導電部材142を介して容器201外の外部直流電源140に接続されている。
【0065】
このように構成される水熱合成装置200においても、基材110からの金属イオンの溶出を防ぐことができる。
【0066】
尚、上記例においては、犠牲部材130及びアノード141を、それぞれ容器201の内面に露出するように容器201に一体化させた構成を示した。しかしながら、水熱合成装置200に一体化された構成であれば、上記例に限定されるものではない。例えば、容器201(201a)と接触しないように、冶具によって支持された構成としても良い。
【0067】
(第5の実施形態)
本実施形態においては、第1〜第4の実施形態に示した吸着素子100、吸着素子10の製造方法、及び水熱合成装置200の好ましい適用例の一例を示す。図10は、吸着式ヒートポンプの概略構成を示す図である。図11は、吸着コアの斜視図である。図12は、基材110としてのチューブへの吸着剤の形成を示す概略構成図、図13は、基材110としてのフィンへの吸着剤の形成を示す概略構成図である。
【0068】
図10に示すように、吸着式ヒートポンプ300は、第1の吸着コア301及び第2吸着コア302を備えている。これら吸着コア301、302は、それぞれ密閉容器303及び304内に収容されており、密閉容器303及び304には、気体吸着質(本実施形態においては水蒸気)の出入口部305、306が備えられている。
【0069】
これら出入口部305、306には、三方切換弁307、308が接続されており、この三方切換弁307、308の間には、吸着質を液化する凝縮器309、吸着質の気液分離及び液体吸着質の一時貯留を行うレシーバ310、液体吸着質を送るポンプ311、及び液体吸着質を気化させて外気との熱交換を行う蒸発器312が直列に接続され、もって吸着質回路313が構成されている。この吸着質回路313内には、所要量の吸着質、本実施形態の場合、例えば水が封入されている。
【0070】
このような構成において、第1、第2吸着コア301、302は、図示しないマイコン等の制御装置によって制御されることにより、一方が気体吸着質(水蒸気)を脱離させる脱離側となるとき、他方が蒸発器312からの気体吸着質を吸着する吸着側となるよう、交互に切換え可能に構成されている。
【0071】
具体的には、図10において、第1吸着コア301を脱離側とし、第2吸着コア302を吸着側として使用する場合には、三方切替弁307、308が図10中の実線位置とされる。これにより、吸着コア301側の密閉容器303の出入口部305と凝縮器309とが連通状態とされ、吸着コア302側の密閉容器304の出入口部306と蒸発器312とが連通状態とされる。また、吸着コア301側に加熱流体、吸着コア302側に冷却流体が供給される。
【0072】
第1吸着コア301を吸着側とし、第2吸着コア302を脱離側として使用する場合には、三方切替弁307、308が図10中の点線位置とされる。これにより、吸着コア301側の密閉容器303の出入口部305と蒸発器312とが連通状態とされ、かつ、吸着コア302側の密閉容器304の出入口部306と凝縮器309とが連通状態とされる。また、吸着コア301側に冷却流体、吸着コア302側に加熱流体が供給される。
【0073】
次に、吸着コア301、302の構造について、図11を用いて説明する。吸着コア301、302は、熱交換器(熱交換部材)400と、この熱交換器400の表面に形成された多数の粒子状の吸着剤121とから構成されている。
【0074】
熱交換器400は、両端にヘッダタンク401、402を備え、このヘッダタンク401、402の間には、熱交換流体が流れる複数のチューブ403が並列的に所定距離を隔てて配置されている。チューブ403の間には、コルゲート状のフィン(伝熱フィン)404がろう付け、溶接、或いは接着により固定されている。尚、ヘッダタンク401、402は成形性に優れた材料、例えば樹脂、アルミニウム、銅等からなり、チューブ403及びフィン404は、熱伝導に優れた材料、例えばアルミニウムや銅からなる。
【0075】
そして、入口側のヘッダタンク401、チューブ403、出口側のヘッダタンク402の順に、冷却流体(例えば室外熱交換器からの比較的低温な流体)または加熱流体(例えばエンジン冷却水)が流れるようになっている。
【0076】
吸着剤121は、上記したように、冷却状態において吸着質(例えば水蒸気やアルコール水溶液等)を高能力で吸着し、また、吸着質の吸着に伴い吸着能力が次第に低下するが、加熱状態とされることにより、吸着していた吸着質を脱離して吸着能力が再生されるという性質を有している。従って、吸着剤121は、チューブ403及びフィン404を介した熱伝導により、チューブ403を流れる流体と熱交換を行い、冷却されることで気体吸着質を吸着し、加熱されることで気体吸着質を脱離することができるようになっている。
【0077】
すなわち、本実施形態において、熱交換器400(チューブ403及びフィン404)が基材110に相当し、吸着コア301、302が吸着素子100に相当する。このように構成される吸着コア301、302において、基材110に相当する筒状態であるチューブ403の肉厚は1mm以下であり、板状体であるフィン404の板厚も1mm以下である。このように薄肉であると、前駆体溶液122に熱交換器400を浸漬し、チューブ403及びフィン404の表面に吸着剤121を形成する際に、腐食により穴が生じやすいので注意が必要である。穴が生じると、穴を介して熱交換流体が漏れたり、熱交換性能が低下する。
【0078】
これに対し、上記構成において、熱交換器400の表面に吸着剤121を水熱合成により形成する際に、第1〜第4の実施形態の少なくとも1つに示した吸着素子100、吸着素子10の製造方法、及び水熱合成装置200を、水熱合成による吸着剤121の形成に適用すれば、チューブ403及びフィン404から金属イオンが溶出するのを確実に防ぎ、図12、13に示すように、チューブ403及びフィン404の表面に、それぞれ吸着剤121からなる吸着層120を形成することができる。
【0079】
このように、腐食により、チューブ403及びフィン404に穴が生じるのを防ぐことができるので、薄肉の基材110に対しても好適である。また、吸着コア301、302の性能が向上し、吸着式ヒートポンプ300の体格を小型化することができる。
【0080】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、種々変更して実施することができる。
【0081】
本発明を吸着式ヒートポンプ300の吸着コア301,302に適用する例を示した。しかしながら、適用範囲は上記例に限定されるものではない。水熱合成によって、金属からなる基材110上に、吸着剤121からなる吸着層120を形成してなるものであれば適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る吸着素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】吸着素子を製造する方法を示す概略断面図であり、(a)は多孔化工程、(b)は接続工程、(c)は種結晶担持工程である。
【図3】形成工程を示す概略断面図である。
【図4】第2の実施形態における吸着素子の概略構成を示す断面図である。
【図5】変形例を示す概略断面図である。
【図6】第3の実施形態における接続工程を示す概略構成図である。
【図7】形成工程を示す概略構成図である。
【図8】第4の実施形態に係る水熱合成装置を示す概略断面図である。
【図9】変形例を示す概略構成図である。
【図10】第5の実施形態に係り、吸着式ヒートポンプの概略構成を示す図である。
【図11】吸着コアの斜視図である。
【図12】チューブへの吸着剤の形成を示す概略構成図である。
【図13】フィンへの吸着剤の形成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0083】
100・・・吸着素子
110・・・基材
111・・・多孔部
120・・・吸着層
121・・・吸着剤
121a・・・種結晶
130・・・犠牲部材(電子供給体)
140・・・外部直流電源(電子供給体)
141・・・アノード
200・・・水熱合成装置
300・・・吸着式ヒートポンプ
301,302・・・吸着コア
403・・・チューブ(基材110に相当)
404・・・フィン(基材110に相当)
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属からなる基材表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤を配置してなる吸着素子の製造方法、この製造方法によって製造される吸着素子、及び製造方法に適用する水熱合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属からなる基材表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤を配置してなる吸着素子として、例えば特許文献1が開示されている。
【0003】
特許文献1に示される吸着素子は、外表面に耐食性皮膜の形成された熱交換器を吸着剤前駆体溶液中に浸漬し、水熱合成することで、熱交換器の表面に吸着剤の結晶からなる吸着層を直接形成してなるものである。これによると、バインダーを用いることなく熱交換器の表面に吸着剤が形成されているので、吸着質との接触面積が増加し、吸着性能を向上することができる。
【特許文献1】特開2005−111425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示される構成の場合、強アルカリ性を示す吸着剤前駆体溶液による熱交換器の腐食を防ぐために、熱交換器の表面を耐食性皮膜で保護している。
【0005】
しかしながら、耐食性皮膜に欠陥がある場合、欠陥部位から熱交換器を構成する金属がイオンとして溶出する。また、耐食性皮膜自身も一部金属イオンとして溶出することが考えられる。これら溶出した金属イオンは、吸着剤形成部位及びその近傍からも生じるため、溶出した金属イオンによって生じる不純物が吸着層に含まれることとなる。すなわち、吸着性能が低下する恐れがある。
【0006】
また、熱交換器を構成するフィンの板厚、チューブの肉厚が薄いので、上記欠陥部位を介し、熱交換器に孔が生じる恐れもある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、基材からの金属イオンの溶出を確実に防ぐことのできる吸着素子の製造方法、吸着素子、水熱合成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1〜13に記載の発明は、金属からなる基材表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤を配置してなる吸着素子の製造方法に関するものである。まず請求項1に記載の発明は、吸着剤の前駆体溶液中に基材を浸漬し、水熱合成することによって基材表面に吸着剤を形成する形成工程を備え、形成工程において、基材に電子供給体を電気的に接続した状態で、水熱合成を実施することを特徴とする。
【0009】
このように本発明によると、基材から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないように、基材に接続された電子供給体から基材に電子が供給される。言い換えれば、基材の電位をその平衡電位より卑(カソード的)にしつつ、水熱合成を実施することができる。従って、従来のように耐食性皮膜を形成しなくとも、基材からの金属イオンの溶出を確実に防ぐことができる。すなわち、基材から溶出するイオンによって生じる不純物を無くすことができるので、吸着性能を向上することができる。また、基材の腐食を防止することができる。また、耐食性皮膜のように欠陥部(ピンホール等)を生じる恐れがあるが、その心配がない。
【0010】
尚、基材と電子供給体の電気的な接続形態としては、電子供給体と基材とを直接接触させても良いし、他の導電部材を介して接続しても良い。また、電子供給体を基材に一体的に構成することも可能である。ただし、吸着剤形成部位と電子供給体が近いと、電子供給体から生じる金属イオンの影響により、吸着剤形成部位に吸着剤以外の不純物が多少なりとも形成されることも考えられる。そこで請求項2に記載のように、電子供給体を、基材の吸着剤形成部位を除く部位に電気的に接続することが好ましい。
【0011】
電子供給体としては、例えば請求項3に記載のように、基材よりも卑な金属からなる犠牲部材を採用することができる。この場合、卑な金属(所謂イオン化傾向の高い金属、熱力学的に腐食性の大きい金属)である犠牲部材から金属イオンが溶出(アノード反応)し、犠牲部材よりも貴な金属(所謂イオン化傾向の低い金属、熱力学的に耐食性の大きい金属)からなる基材からは、金属イオンが溶出しない。
【0012】
その際、請求項4に記載のように、犠牲部材を吸着剤に含まれる金属元素から構成すると良い。このように、犠牲部材から溶出する金属イオンと前駆体溶液中の金属イオンとが同一であれば、少なくとも異なる金属イオンが溶出する場合に比べて、吸着剤合成に与える影響を低減(例えば不純物生成量を低減)することができる。
【0013】
また、例えば請求項5に記載のように、電子供給体として外部直流電源を採用し、形成工程において、基材をカソードとし、基材を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなる部材をアノードとして外部直流電源に接続した状態で、前駆体溶液中にカソード及びアノードを浸漬し、水熱合成を実施するようにしても良い。この場合も、基材から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないように、基材の電位をその平衡電位より卑(カソード的)にしつつ、水熱合成を実施することができる。
【0014】
具体的には、請求項6に記載のように、形成工程において、外部直流電源により印加する電圧を、前駆体溶液中に浸漬した状態におけるカソードとアノードの電位差以上とすると良い。尚、請求項7に記載のように、アノードとして、前駆体溶液に対して不溶性を示す材料からなるものを採用すると、安定して水熱合成を実施することができる。また、繰り返し使用が可能となる。
【0015】
吸着剤が配置される基材表面が平滑であると、基材表面から吸着剤が剥離しやすい。
そこで、請求項8に記載のように、形成工程の前に、基材の、少なくとも吸着剤形成部位を凹凸化する凹凸化工程を備えることが好ましい。水熱合成をする前に、吸着剤形成部位を凹凸化しておけば、水熱合成によって形成された吸着剤と基材との接触面積が増し、吸着剤を基材に担持することができる。すなわち、基材に対する吸着剤の機械的強度が増すことができる。凹部に吸着剤の一部が配置される場合には、所謂アンカー効果も期待できる。
【0016】
具体的には、請求項9に記載のように、凹凸化工程において基材表面を粗化処理しても良いし、請求項10に記載のように、金属からなる多孔部を形成しても良い。いずれの場合も、平滑な表面に対して吸着剤を積層する構成と比べて、吸着剤から基材(又は基材から吸着剤)に熱を伝えやすい。
【0017】
多孔部の形成方法としては、請求項11に記載のように、基材表面に配置された金属粉末を焼結して形成する方法や、請求項12に記載のように、溶融した金属を発泡させて、形成する方法を適用することができる。
【0018】
さらに、請求項13に記載のように、凹凸化工程後、基材の凹凸化された部位に吸着剤の種結晶を担持させる工程を備え、担持させた状態で形成工程を実施すると、吸着剤の形成を早めることができる。すなわち、製造時間を短縮することができる。凹凸化された部位の凹部(多孔部の孔部)は、種結晶を担持させるのに好適である。
【0019】
次に、請求項14〜25に記載の発明は、上記した吸着素子の製造方法を適用して構成される吸着素子に関するものである。先ず請求項14に記載のように、金属からなる基材と、この基材上に形成され、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤からなる吸着層とを備える吸着素子であって、吸着層は、基材に電子供給体を電気的に接続した状態で、水熱合成により基材の表面に直接形成されていることを特徴とする。
【0020】
このように本発明によると、耐食性皮膜を有しない構成でありながら、水熱合成によって基材表面に直接吸着剤を形成し、吸着層としている。これは、基材に電子供給体を電気的に接続した状態(すなわち、基材から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないようにした状態)で水熱合成を実施することによる。すなわち、水熱合成時に基材から金属イオンが溶出せず、吸着層はこの金属イオンに基づく不純物を含んでいない。従って、従来よりも吸着性能が向上されている。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項2に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0022】
基材と電子供給体の電気的な接続形態としては、少なくとも水熱合成時において確保されれば良く、電子供給体と基材とを直接接触させても良いし、他の導電部材を介して接続しても良い。また、請求項16に記載のように、電子供給体を基材に接触固定した構成、請求項17に記載のように、電子供給体を基材に一体的に設けた構成のように、電子供給体を基材に一体的に構成しても良い。この場合、電気的な接続状態を確保するための別の導電部材を不要とできる。
【0023】
請求項18〜20に記載の発明は、請求項3〜5に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。また、請求項21,22に記載の発明は、それぞれ請求項8,10に記載の発明と同様であるので、その記載を省略する。
【0024】
尚、請求項14〜22いずれかに記載の発明は、請求項23に記載のように、基材が板状体を含み、板状体の厚さが1mm以下であるもの、請求項24に記載のように、基材が筒状体を含み、筒状体の肉厚が1mm以下であるものを採用することができる。厚さが1mm以下の場合であっても、基材に孔を生じることは無い。すなわち、請求項25に記載のように、吸着式ヒートポンプの吸着コアに好適である。
【0025】
次に、請求項26〜31に記載の発明は、上記した吸着素子の製造方法に適用される水熱合成装置に関するものである。先ず請求項26に記載の発明は、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤の前駆体溶液が充填される容器を有し、前駆体溶液に金属からなる基材を浸漬配置した状態で、前駆体溶液を加熱・加圧し、吸着剤を基材表面に形成する水熱合成装置であって、浸漬配置した状態で基材と接触する容器内の部位に、基材よりも卑な金属からなる電子供給体を設けたことを特徴とする。
【0026】
このように本発明によると、前駆体溶液に金属からなる基材を浸漬配置した状態で、基材が容器内に設けられた電子供給体と接触し、基材と電子供給体との間に電気的な接続状態が確保される。従って、水熱合成時に、基材からの金属イオンの溶出を防ぐことができる。また、基材と電子供給体との電気的な接続状態を確保するための別の導電部材が不要であり、予め電子供給体を基材に接続しなくて良いので、電気的な接続形態を簡素化することができる。
【0027】
具体的には、請求項27に記載のように、電子供給体を、容器の少なくとも一部として容器の内面に露出した構成とすると良い。尚、請求項28に記載の発明は、請求項4に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0028】
また、請求項29にように、前駆体溶液と接触する容器内の部位に、基材をカソードとする外部直流電源に接続されるアノードを設けても良い。この場合も、水熱合成時に、基材からの金属イオンの溶出を防ぐことができる。具体的には、請求項30に記載のように、アノードを、容器の少なくとも一部として容器の内面に露出した構成とすると良い。尚、請求項31に記載の発明の作用効果は、請求項7に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る吸着素子の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、吸着素子100は、金属からなる基材110と、基材110表面に直接形成された吸着層120から構成される。
【0030】
基材110の構成材料としては、後述する電子供給体としての犠牲部材の構成材料よりも貴な金属を適用することができる。言い換えれば、基材110の構成材料は特に限定されるものではなく、犠牲部材の構成材料として基材110よりも卑な金属を選択すれば良い。例えば銅、アルミニウム、鉄等に純金属や、ステンレス、銅合金、アルミ合金等の合金を適用することができる。
【0031】
本実施形態においては、銅からなる板状の基材110の表面に、基材110の一部として金属からなる多孔部111が形成されており、この多孔部111に吸着層が形成されている。多孔部111を、基材110と異なる金属にて構成しても良いが、基材110と吸着剤120と間ですばやく熱交換がなされるように、熱伝導率の高いものが好ましい。本実施形態においては基材110と同じく銅により構成している。
【0032】
吸着層120は、基材110に犠牲部材を電気的に接続した状態で、水熱合成により基材110の表面に吸着剤121を直接形成してなるものである。また吸着剤121は、冷却状態において吸着質(例えば水蒸気やアルコール水溶液等)を高能力で吸着し、また、吸着質の吸着に伴い吸着能力が次第に低下するが、加熱状態とされることにより、吸着していた吸着質を脱離して吸着能力が再生される性質を有している。このような吸着剤121としては、例えばゼオライトがある。本実施形態においては、吸着剤121として、鉄アルミノリン酸塩系のゼオライトを採用している。
【0033】
このように本実施形態に係る吸着素子100は、耐食性皮膜を有しない構成でありながら、水熱合成によって基材110表面に直接吸着剤121を形成し、吸着層120としている。
【0034】
次に、このように構成される吸着素子100の製造方法について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、吸着素子100を製造する方法を示す概略断面図であり、(a)は多孔化工程、(b)は接続工程、(c)は種結晶担持工程である。図3は、図1(c)に続くものであり、形成工程を示す概略断面図である。
【0035】
先ず、図2(a)に示すように、基材110に対して、吸着層形成部位に多孔部111を形成する多孔化工程を実施する。本実施形態おいては、銅からなる基材110の吸着層形成面上に銅粉末を配置し、焼結して多孔部111を形成している。尚、多孔部111の形成方法としては、上記例に限定されるものではない。それ以外にも、溶融状態の金属を発泡させて固化し、多孔部111を形成しても良い。
【0036】
多孔部111形成後、図2(b)に示すように、基材110に対して電子供給体となる犠牲部材130を電気的に接続する接続工程を実施する。犠牲部材130の構成材料としては、基材110よりも卑な金属を採用することができる。尚、卑な金属とは、基材110を構成する金属に対して、所謂イオン化傾向の高い金属、熱力学的に腐食性の大きい金属である。本実施形態においては、吸着剤121に含まれる金属元素と同じ(吸着剤121の骨格成分の)鉄から構成されている。
【0037】
また、本実施形態においては、導電部材131を介して、基材110の吸着層形成面とは異なる面に、犠牲部材130を接続した。このように吸着層形成部位と離間して犠牲部材130を配置することが好ましい。これにより、後述する形成工程において、犠牲部材130から溶出する金属イオンによって生成される不純物が、吸着層120に含まれるのを極力防ぐことができる。すなわち、吸着剤121が吸着層120の表面に露出するので、吸着性能を向上することができる。
【0038】
次に、図2(c)に示すように、多孔部111に対して吸着剤121の種結晶121aを担持させる種結晶担持工程を実施する。このように、吸着層形成部位に予め種結晶を担持させた状態で水熱合成を実施すると、結晶として基材110表面に析出する吸着剤121の析出時間(すなわち製造時間)を短縮することができる。尚、本実施形態においては、多孔部111の孔内に種結晶121aを担持させるので、種結晶121aを所望の位置に保持できる。すなわち、所望の位置(選択的)に吸着層120を形成することができる。
【0039】
次に、図3に示すように、基材110の表面に吸着層120を形成する形成工程を実施する。先ず吸着剤121の前駆体溶液を調整する。この前駆体溶液は、酸またはアルカリ性の水溶液(本実施形態においては酸性)である。この前駆体溶液122を、図3に示すように、水熱合成装置200の容器201内に充填し、基材110を犠牲部材130とともに前駆体溶液122に浸漬させる。そして、蓋202をして容器201を密封する。その際、基材110よりも卑な金属(所謂イオン化傾向の高い金属、熱力学的に腐食性の大きい金属)からなる犠牲部材130から金属イオンが溶出(アノード反応)し、犠牲部材130よりも貴な金属(所謂イオン化傾向の低い金属、熱力学的に耐食性の大きい金属)からなる基材110からは、金属イオンが溶出しない。尚、図3において、符号201aは容器201の一部であり、前駆体溶液に対する耐薬性を有する材料からなる内部容器である。
【0040】
この状態で前駆体溶液122を加熱・加圧(容器201内の圧力も加熱により上昇)すると反応が進行し、基材110の種結晶121a配置部位の周囲に吸着剤121の結晶が析出する。さらに加熱を続けると、結晶が成長し、吸着剤121からなる吸着層120が、基材110の表面に形成される。そして、容器201から取り出されて犠牲部材130が外され、図1に示す吸着素子100となる。
【0041】
このように本実施形態に係る吸着素子100の製造方法によると、基材110から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないように、基材110に接続された電子供給体130から基材に電子が供給される。言い換えれば、基材110の電位をその平衡電位より卑(カソード的)にしつつ、水熱合成を実施することができる。従って、従来のように耐食性皮膜を形成しなくとも、基材110からの金属イオンの溶出を確実に防ぐことができる。すなわち、基材110から溶出するイオンによって生じる不純物を無くすことができるので、形成された吸着素子100において、吸着性能を向上することができる。また、基材110の腐食を防止することができる。耐食性皮膜の場合、欠陥部(ピンホール等)を生じる恐れがあるが、本実施形態に示す方法によるとその心配がない。尚、本発明者が確認したところ、本実施形態に示す製造方法によれば、不純物なし(吸着剤121のみ)で吸着層120を形成することができた。
【0042】
また、本実施形態においては、犠牲部材130を吸着剤121に含まれる金属元素から構成している。従って、前駆体溶液122中の金属イオンと異なる金属イオンが溶出する場合に比べて、吸着層形成に与える影響を低減(例えば不純物生成量を低減)することができる。すなわち、吸着性能を向上することができる。尚、本実施形態においては、吸着剤121が鉄アルミノリン酸塩系のゼオライトであるため、犠牲部材130を基材110よりも卑な鉄から構成した。しかしながら、鉄以外の骨格成分であるアルミニウムから構成しても良い。
【0043】
また、本実施形態においては、基材110の吸着層形成面(形成部位)に多孔部111を形成する例を示した。このように多孔部111を形成すると、吸着剤121と多孔部111を含む基材110との接触面積が増し、種結晶121aだけでなく吸着剤121も基材110に担持することができる。従って、基材110に対する吸着層120の機械的強度を増すことができる。また、平滑な基材表面に吸着剤121を形成・積層する構成と比べて、吸着剤121から基材110(又は基材110から吸着剤121)に熱を伝えやすい。
【0044】
尚、このような、機械的強度を増す形態としては、多孔部111に限定されるものではない。基材110の少なくとも吸着層形成部位を、形成工程の前に凹凸化すれば良い。例えば基材表面を粗化処理しても良い。凹部に吸着剤121の一部が配置される場合には、所謂アンカー効果も期待できる。
【0045】
また、本実施形態に係る吸着素子100の製造方法として、多孔化工程、接続工程、種結晶担持工程、及び形成工程の順に実施する例を示した。しかしながら、多孔化後に種結晶121aを担持させてから接続工程を実施しても良い。また、接続工程実施後に、多孔化し、種結晶121aを担持させても良い。また、製造工程としても、少なくとも接続工程と形成工程を備えれば良いので、多孔化(凹凸化)工程を実施しない構成としても良い。また、種結晶担持工程を実施しない構成としても良い。
【0046】
また、本実施形態においては、基材110と犠牲部材130とを導電部材131を介して電気的に接続する例を示した。しかしながら、基材110と犠牲部材130とを接触配置することで、両者を電気的に接続しても良い。この場合、形成工程において、接触するように容器201内に基材110及び犠牲部材130を配置すれば良いので、接続工程を不要とすることができる。
【0047】
また、本実施形態においては、基材110の一面上に吸着層120を形成する例を示した。しかしながら、吸着層形成部位は上記例に限定されるものではない。導電部材131を介して犠牲部材130を基材110に接続する構成の場合、犠牲部材130を基材110に対して離間して配置することができるので、基材110の表面全体(導電部材131との接続部位除く)に吸着剤121からなる吸着層120を形成することも可能である。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を、図4に基づいて説明する。図4は、本実施形態における吸着素子100の概略構成を示す断面図である。
【0049】
第2の実施形態における吸着素子100及びその製造方法は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0050】
基材110と電子供給体である犠牲部材130の電気的な接続形態としては、少なくとも水熱合成時(前駆体溶液に浸漬中)において確保されれば良い。第1の実施形態においては、犠牲部材130が導電部材131を介して基材110に電気的に接続される例を示した。それに対し、本実施形態においては、犠牲部材130を基材110に一体化させた構成としている。
【0051】
具体的には、図4に示すように、基材110の吸着層形成面の裏面に、犠牲部材130が露出するように、基材110に設けた溝部内に犠牲部材130を嵌め込んで、嵌合、導電部材による接着等により固定した構成となっている。このような構成としても、第1の実施形態に示した形成工程において、犠牲部材130から溶出する金属イオンによって生成される不純物が、吸着層120に含まれるのを極力防ぐことができる。すなわち、吸着剤121が吸着層120の表面に露出するので、吸着性能を向上することができる。この場合、吸着素子100が犠牲部材130を有するので、侵害発見が容易である。
【0052】
また、第1の実施形態に示した接続工程を不要とすることができる。尚、それ以外の製造工程は、第1の実施形態同様である。
【0053】
尚、図4においては、吸着素子100として、基材110の一面上に吸着層120を形成した構成を示した。しかしながら、吸着層形成部位は上記例に限定されるものではない。例えば、図5に示すように、基材110の両表面に吸着層120を形成する場合には、吸着層120の形成されない基材110の端部に、犠牲部材130を一体的に設ければ良い。図5は、本実施形態の変形例を示す断面図である。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を、図6及び図7に基づいて説明する。図6は、本実施形態における接続工程を示す概略構成図である。図7は、本実施形態における形成工程を示す概略構成図である。
【0055】
第3の実施形態における吸着素子100及びその製造方法は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0056】
本実施形態においては、電子供給体として外部直流電源を採用し、図6に示す接続工程(第1の実施形態に示す接続工程に対応)において、基材110をカソードとし、基材110を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなる部材をアノード141として、外部直流電源140に接続する。尚、図6において、符号142,143は、それぞれアノード141と外部直流電源140、外部直流電源140と基材110とを電気的に接続する導電部材である。
【0057】
そして、この接続状態で、図7に示すように、容器201内に充填された前駆体溶液122中にカソードとしての基材110及びアノード141を浸漬し、水熱合成(形成工程)を実施する。このとき、基材110から金属イオンが溶出する酸化反応が生じないように、基材110の電位をその平衡電位より卑(カソード的)にしつつ、水熱合成を実施する。具体的には、外部直流電源140により印加する電圧を、前駆体溶液122に浸漬した状態における基材110とアノード141の電位差以上とする。
【0058】
従って、基材110からの金属イオンの溶出を防ぎつつ、基材110の表面に吸着剤121からなる吸着層120を形成することができる。なお、形成された吸着素子100は、第1の実施形態に示した構成と同様(図1参照)である。第1の実施形態においては、電子供給体(犠牲部材130)の構成材料が、基材110よりも卑である金属に限定される物であった。それに対し、本実施形態に係る製造方法によれば、基材110とともに前駆体溶液122中に浸漬されるアノード141に構成材料は特に限定されるものではないが、アノード141が基材110よりも卑な金属からなる場合には、第1の実施形態に示した構成のほうが簡素であるので、特に、基材110と同じ金属かそれよりも貴な導電材料からなる構成においての適用が好ましい。
【0059】
尚、アノード141としては、前駆体溶液122に対して不溶性を示す材料からなるものを採用すると、安定して水熱合成を実施することができる。また、繰り返し使用が可能となる。例えば、黒鉛、シリコン鋳鉄、マグネタイト、白金メッキ電極、金メッキ電極等を採用することができる。本実施形態においては、黒鉛を採用している。
【0060】
(第4の実施形態)
本実施形態においては、第1〜第3の実施形態に示した吸着素子100の製造において適用される水熱合成装置200に係る発明について説明する。図8は電子供給体として犠牲部材130を適用する際の水熱合成装置200を示す概略断面図である。図9は電子供給体として外部直流電源140を適用する際の水熱合成装置200を示す概略構成図である。
【0061】
第4の実施形態における水熱合成装置200は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0062】
図8に示すように、本実施形態に係る水熱合成装置200は、前駆体溶液122が容器201内に充填された状態で、前駆体溶液122に晒されるように、犠牲部材130が容器201に一体的に設けられている。すなわち、犠牲部材130が水熱合成装置200の一部として構成されている。具体的には、容器201を構成する内部容器201aが耐薬性を有する樹脂からなり、容器内部に露出するように、内部容器201aに犠牲部材130がインサート成形されている。
【0063】
このように構成される水熱合成装置200を吸着素子100の形成に適用した場合、前駆体溶液122に金属からなる基材110を浸漬配置した状態で、基材110が容器201内に設けられた犠牲部材130と接触し、基材110と犠牲部材130との間に電気的な接続状態が確保される。従って、形成工程において、基材110からの金属イオンの溶出を防ぐことができる。また、第1の実施形態に示した接続工程が不要(導電部材131が不要)であるので、電気的な接続形態を簡素化することができる。
【0064】
また、図9に示すように、前駆体溶液122が容器201内に充填された状態で、前駆体溶液122に晒されるように、第3の実施形態に示したアノード141を容器201に一体的に設けた構成としても良い。すなわち、アノード141を水熱合成装置200の一部として構成しても良い。具体的には、容器201を構成する内部容器201aが耐薬性を有する樹脂からなり、容器内部に露出するように、内部容器201aにアノード141がインサート成形されている。尚、図示されないが、アノード141は、導電部材142を介して容器201外の外部直流電源140に接続されている。
【0065】
このように構成される水熱合成装置200においても、基材110からの金属イオンの溶出を防ぐことができる。
【0066】
尚、上記例においては、犠牲部材130及びアノード141を、それぞれ容器201の内面に露出するように容器201に一体化させた構成を示した。しかしながら、水熱合成装置200に一体化された構成であれば、上記例に限定されるものではない。例えば、容器201(201a)と接触しないように、冶具によって支持された構成としても良い。
【0067】
(第5の実施形態)
本実施形態においては、第1〜第4の実施形態に示した吸着素子100、吸着素子10の製造方法、及び水熱合成装置200の好ましい適用例の一例を示す。図10は、吸着式ヒートポンプの概略構成を示す図である。図11は、吸着コアの斜視図である。図12は、基材110としてのチューブへの吸着剤の形成を示す概略構成図、図13は、基材110としてのフィンへの吸着剤の形成を示す概略構成図である。
【0068】
図10に示すように、吸着式ヒートポンプ300は、第1の吸着コア301及び第2吸着コア302を備えている。これら吸着コア301、302は、それぞれ密閉容器303及び304内に収容されており、密閉容器303及び304には、気体吸着質(本実施形態においては水蒸気)の出入口部305、306が備えられている。
【0069】
これら出入口部305、306には、三方切換弁307、308が接続されており、この三方切換弁307、308の間には、吸着質を液化する凝縮器309、吸着質の気液分離及び液体吸着質の一時貯留を行うレシーバ310、液体吸着質を送るポンプ311、及び液体吸着質を気化させて外気との熱交換を行う蒸発器312が直列に接続され、もって吸着質回路313が構成されている。この吸着質回路313内には、所要量の吸着質、本実施形態の場合、例えば水が封入されている。
【0070】
このような構成において、第1、第2吸着コア301、302は、図示しないマイコン等の制御装置によって制御されることにより、一方が気体吸着質(水蒸気)を脱離させる脱離側となるとき、他方が蒸発器312からの気体吸着質を吸着する吸着側となるよう、交互に切換え可能に構成されている。
【0071】
具体的には、図10において、第1吸着コア301を脱離側とし、第2吸着コア302を吸着側として使用する場合には、三方切替弁307、308が図10中の実線位置とされる。これにより、吸着コア301側の密閉容器303の出入口部305と凝縮器309とが連通状態とされ、吸着コア302側の密閉容器304の出入口部306と蒸発器312とが連通状態とされる。また、吸着コア301側に加熱流体、吸着コア302側に冷却流体が供給される。
【0072】
第1吸着コア301を吸着側とし、第2吸着コア302を脱離側として使用する場合には、三方切替弁307、308が図10中の点線位置とされる。これにより、吸着コア301側の密閉容器303の出入口部305と蒸発器312とが連通状態とされ、かつ、吸着コア302側の密閉容器304の出入口部306と凝縮器309とが連通状態とされる。また、吸着コア301側に冷却流体、吸着コア302側に加熱流体が供給される。
【0073】
次に、吸着コア301、302の構造について、図11を用いて説明する。吸着コア301、302は、熱交換器(熱交換部材)400と、この熱交換器400の表面に形成された多数の粒子状の吸着剤121とから構成されている。
【0074】
熱交換器400は、両端にヘッダタンク401、402を備え、このヘッダタンク401、402の間には、熱交換流体が流れる複数のチューブ403が並列的に所定距離を隔てて配置されている。チューブ403の間には、コルゲート状のフィン(伝熱フィン)404がろう付け、溶接、或いは接着により固定されている。尚、ヘッダタンク401、402は成形性に優れた材料、例えば樹脂、アルミニウム、銅等からなり、チューブ403及びフィン404は、熱伝導に優れた材料、例えばアルミニウムや銅からなる。
【0075】
そして、入口側のヘッダタンク401、チューブ403、出口側のヘッダタンク402の順に、冷却流体(例えば室外熱交換器からの比較的低温な流体)または加熱流体(例えばエンジン冷却水)が流れるようになっている。
【0076】
吸着剤121は、上記したように、冷却状態において吸着質(例えば水蒸気やアルコール水溶液等)を高能力で吸着し、また、吸着質の吸着に伴い吸着能力が次第に低下するが、加熱状態とされることにより、吸着していた吸着質を脱離して吸着能力が再生されるという性質を有している。従って、吸着剤121は、チューブ403及びフィン404を介した熱伝導により、チューブ403を流れる流体と熱交換を行い、冷却されることで気体吸着質を吸着し、加熱されることで気体吸着質を脱離することができるようになっている。
【0077】
すなわち、本実施形態において、熱交換器400(チューブ403及びフィン404)が基材110に相当し、吸着コア301、302が吸着素子100に相当する。このように構成される吸着コア301、302において、基材110に相当する筒状態であるチューブ403の肉厚は1mm以下であり、板状体であるフィン404の板厚も1mm以下である。このように薄肉であると、前駆体溶液122に熱交換器400を浸漬し、チューブ403及びフィン404の表面に吸着剤121を形成する際に、腐食により穴が生じやすいので注意が必要である。穴が生じると、穴を介して熱交換流体が漏れたり、熱交換性能が低下する。
【0078】
これに対し、上記構成において、熱交換器400の表面に吸着剤121を水熱合成により形成する際に、第1〜第4の実施形態の少なくとも1つに示した吸着素子100、吸着素子10の製造方法、及び水熱合成装置200を、水熱合成による吸着剤121の形成に適用すれば、チューブ403及びフィン404から金属イオンが溶出するのを確実に防ぎ、図12、13に示すように、チューブ403及びフィン404の表面に、それぞれ吸着剤121からなる吸着層120を形成することができる。
【0079】
このように、腐食により、チューブ403及びフィン404に穴が生じるのを防ぐことができるので、薄肉の基材110に対しても好適である。また、吸着コア301、302の性能が向上し、吸着式ヒートポンプ300の体格を小型化することができる。
【0080】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、種々変更して実施することができる。
【0081】
本発明を吸着式ヒートポンプ300の吸着コア301,302に適用する例を示した。しかしながら、適用範囲は上記例に限定されるものではない。水熱合成によって、金属からなる基材110上に、吸着剤121からなる吸着層120を形成してなるものであれば適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る吸着素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】吸着素子を製造する方法を示す概略断面図であり、(a)は多孔化工程、(b)は接続工程、(c)は種結晶担持工程である。
【図3】形成工程を示す概略断面図である。
【図4】第2の実施形態における吸着素子の概略構成を示す断面図である。
【図5】変形例を示す概略断面図である。
【図6】第3の実施形態における接続工程を示す概略構成図である。
【図7】形成工程を示す概略構成図である。
【図8】第4の実施形態に係る水熱合成装置を示す概略断面図である。
【図9】変形例を示す概略構成図である。
【図10】第5の実施形態に係り、吸着式ヒートポンプの概略構成を示す図である。
【図11】吸着コアの斜視図である。
【図12】チューブへの吸着剤の形成を示す概略構成図である。
【図13】フィンへの吸着剤の形成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0083】
100・・・吸着素子
110・・・基材
111・・・多孔部
120・・・吸着層
121・・・吸着剤
121a・・・種結晶
130・・・犠牲部材(電子供給体)
140・・・外部直流電源(電子供給体)
141・・・アノード
200・・・水熱合成装置
300・・・吸着式ヒートポンプ
301,302・・・吸着コア
403・・・チューブ(基材110に相当)
404・・・フィン(基材110に相当)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる基材表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤を配置してなる吸着素子の製造方法であって、
前記吸着剤の前駆体溶液中に前記基材を浸漬し、水熱合成することによって前記基材表面に前記吸着剤を形成する形成工程を備え、
前記形成工程において、前記基材に電子供給体を電気的に接続した状態で、水熱合成を実施することを特徴とする吸着素子の製造方法。
【請求項2】
前記電子供給体を、前記基材の吸着剤形成部位を除く部位に電気的に接続することを特徴とする請求項2に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項3】
前記電子供給体は、前記基材よりも卑な金属からなる犠牲部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項4】
前記犠牲部材は、前記吸着剤に含まれる金属元素からなることを特徴とする請求項3に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項5】
前記電子供給体は外部直流電源であり、
前記形成工程において、前記基材をカソードとし、前記基材を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなる部材をアノードとして前記外部直流電源に接続した状態で、前記前駆体溶液中に前記カソード及び前記アノードを浸漬し、水熱合成を実施することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項6】
前記形成工程において、前記外部直流電源により印加する電圧を、前記前駆体溶液中に浸漬した状態における前記カソードと前記アノードの電位差以上とすることを特徴とする請求項5に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項7】
前記アノードは、不溶性材料からなることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項8】
前記形成工程の前に、前記基材の、少なくとも吸着剤形成部位を凹凸化する凹凸化工程を備えることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項9】
前記凹凸化工程において、前記基材の表面を粗化処理することを特徴とする請求項8に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項10】
前記凹凸化工程において、金属からなる多孔部を形成することを特徴とする請求項8に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項11】
前記多孔部は、前記基材表面に配置された金属粉末を焼結して形成されることを特徴とする請求項10に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項12】
前記多孔部は、溶融した金属を発泡させて形成されることを特徴とする請求項10に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項13】
前記凹凸化工程後、前記基材の凹凸化された部位に前記吸着剤の種結晶を担持させる工程を備え、
担持させた状態で、前記形成工程を実施することを特徴とする請求項8〜12いずれか1項に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項14】
金属からなる基材と、
この基材上に形成され、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤からなる吸着層とを備える吸着素子であって、
前記吸着層は、前記基材に電子供給体を電気的に接続した状態で、水熱合成により前記基材の表面に直接形成されていることを特徴とする吸着素子。
【請求項15】
前記電子供給体は、前記基材の吸着層形成部位を除く部位に電気的に接続されていることを特徴とする請求項14に記載の吸着素子。
【請求項16】
前記電子供給体は、前記基材に接触固定されていることを特徴とする請求項15に記載の吸着素子。
【請求項17】
前記電子供給体は、前記基材に一体的に設けられていることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の吸着素子。
【請求項18】
前記電子供給体は、前記基材よりも卑な金属からなる犠牲部材であることを特徴とする請求項14〜17いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項19】
前記犠牲部材は、前記吸着剤に含まれる金属元素からなることを特徴とする請求項18に記載の吸着素子。
【請求項20】
前記電子供給体は、前記基材をカソードとし、前記基材を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなる部材をアノードとする外部直流電源であることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の吸着素子。
【請求項21】
前記基材は、少なくとも吸着層形成部位が凹凸化されており、凹部に前記吸着剤が担持されていることを特徴とする請求項14〜20いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項22】
前記基材は、前記凹凸化された部位として多孔部を有することを特徴とする請求項21に記載の吸着素子。
【請求項23】
前記基材は板状体を含み、前記板状体の厚さが1mm以下であることを特徴とする請求項14〜22いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項24】
前記基材は筒状体を含み、前記筒状体の肉厚が1mm以下であることを特徴とする請求項14〜23いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項25】
吸着式ヒートポンプの吸着コアに適用することを特徴とする請求項14〜24いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項26】
冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤の前駆体溶液が充填される容器を有し、
前記前駆体溶液に金属からなる基材を浸漬配置した状態で、前記前駆体溶液を加熱・加圧し、前記吸着剤を前記基材表面に形成する水熱合成装置であって、
浸漬配置した状態で前記基材と接触する前記容器内の部位に、前記基材よりも卑な金属からなる電子供給体が設けられていることを特徴とする水熱合成装置。
【請求項27】
前記電子供給体は、前記容器の少なくとも一部として、前記容器の内面に露出していることを特徴とする請求項26に記載の水熱合成装置。
【請求項28】
前記電子供給体は、前記吸着剤に含まれる金属元素からなることを特徴とする請求項26又は請求項27に記載の水熱合成装置。
【請求項29】
冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤の前駆体溶液が充填される容器を有し、
前記前駆体溶液に金属からなる基材を浸漬配置した状態で、前記前駆体溶液を加熱・加圧し、前記吸着剤を前記基材表面に形成する水熱合成装置であって、
前記前駆体溶液と接触する前記容器内の部位に、前記基材をカソードとする外部直流電源に接続され、前記基材を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなるアノードが設けられていることを特徴とする水熱合成装置。
【請求項30】
前記アノードは、前記容器の少なくとも一部として、前記容器の内面に露出していることを特徴とする請求項29に記載の水熱合成装置。
【請求項31】
前記アノードは不溶性材料からなることを特徴とする請求項29又は請求項30に記載の水熱合成装置。
【請求項1】
金属からなる基材表面に、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤を配置してなる吸着素子の製造方法であって、
前記吸着剤の前駆体溶液中に前記基材を浸漬し、水熱合成することによって前記基材表面に前記吸着剤を形成する形成工程を備え、
前記形成工程において、前記基材に電子供給体を電気的に接続した状態で、水熱合成を実施することを特徴とする吸着素子の製造方法。
【請求項2】
前記電子供給体を、前記基材の吸着剤形成部位を除く部位に電気的に接続することを特徴とする請求項2に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項3】
前記電子供給体は、前記基材よりも卑な金属からなる犠牲部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項4】
前記犠牲部材は、前記吸着剤に含まれる金属元素からなることを特徴とする請求項3に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項5】
前記電子供給体は外部直流電源であり、
前記形成工程において、前記基材をカソードとし、前記基材を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなる部材をアノードとして前記外部直流電源に接続した状態で、前記前駆体溶液中に前記カソード及び前記アノードを浸漬し、水熱合成を実施することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項6】
前記形成工程において、前記外部直流電源により印加する電圧を、前記前駆体溶液中に浸漬した状態における前記カソードと前記アノードの電位差以上とすることを特徴とする請求項5に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項7】
前記アノードは、不溶性材料からなることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項8】
前記形成工程の前に、前記基材の、少なくとも吸着剤形成部位を凹凸化する凹凸化工程を備えることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項9】
前記凹凸化工程において、前記基材の表面を粗化処理することを特徴とする請求項8に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項10】
前記凹凸化工程において、金属からなる多孔部を形成することを特徴とする請求項8に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項11】
前記多孔部は、前記基材表面に配置された金属粉末を焼結して形成されることを特徴とする請求項10に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項12】
前記多孔部は、溶融した金属を発泡させて形成されることを特徴とする請求項10に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項13】
前記凹凸化工程後、前記基材の凹凸化された部位に前記吸着剤の種結晶を担持させる工程を備え、
担持させた状態で、前記形成工程を実施することを特徴とする請求項8〜12いずれか1項に記載の吸着素子の製造方法。
【請求項14】
金属からなる基材と、
この基材上に形成され、冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤からなる吸着層とを備える吸着素子であって、
前記吸着層は、前記基材に電子供給体を電気的に接続した状態で、水熱合成により前記基材の表面に直接形成されていることを特徴とする吸着素子。
【請求項15】
前記電子供給体は、前記基材の吸着層形成部位を除く部位に電気的に接続されていることを特徴とする請求項14に記載の吸着素子。
【請求項16】
前記電子供給体は、前記基材に接触固定されていることを特徴とする請求項15に記載の吸着素子。
【請求項17】
前記電子供給体は、前記基材に一体的に設けられていることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の吸着素子。
【請求項18】
前記電子供給体は、前記基材よりも卑な金属からなる犠牲部材であることを特徴とする請求項14〜17いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項19】
前記犠牲部材は、前記吸着剤に含まれる金属元素からなることを特徴とする請求項18に記載の吸着素子。
【請求項20】
前記電子供給体は、前記基材をカソードとし、前記基材を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなる部材をアノードとする外部直流電源であることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の吸着素子。
【請求項21】
前記基材は、少なくとも吸着層形成部位が凹凸化されており、凹部に前記吸着剤が担持されていることを特徴とする請求項14〜20いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項22】
前記基材は、前記凹凸化された部位として多孔部を有することを特徴とする請求項21に記載の吸着素子。
【請求項23】
前記基材は板状体を含み、前記板状体の厚さが1mm以下であることを特徴とする請求項14〜22いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項24】
前記基材は筒状体を含み、前記筒状体の肉厚が1mm以下であることを特徴とする請求項14〜23いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項25】
吸着式ヒートポンプの吸着コアに適用することを特徴とする請求項14〜24いずれか1項に記載の吸着素子。
【請求項26】
冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤の前駆体溶液が充填される容器を有し、
前記前駆体溶液に金属からなる基材を浸漬配置した状態で、前記前駆体溶液を加熱・加圧し、前記吸着剤を前記基材表面に形成する水熱合成装置であって、
浸漬配置した状態で前記基材と接触する前記容器内の部位に、前記基材よりも卑な金属からなる電子供給体が設けられていることを特徴とする水熱合成装置。
【請求項27】
前記電子供給体は、前記容器の少なくとも一部として、前記容器の内面に露出していることを特徴とする請求項26に記載の水熱合成装置。
【請求項28】
前記電子供給体は、前記吸着剤に含まれる金属元素からなることを特徴とする請求項26又は請求項27に記載の水熱合成装置。
【請求項29】
冷却及び加熱によって吸着質を吸着及び脱着することができる吸着剤の前駆体溶液が充填される容器を有し、
前記前駆体溶液に金属からなる基材を浸漬配置した状態で、前記前駆体溶液を加熱・加圧し、前記吸着剤を前記基材表面に形成する水熱合成装置であって、
前記前駆体溶液と接触する前記容器内の部位に、前記基材をカソードとする外部直流電源に接続され、前記基材を構成する金属と同じかそれよりも貴な導電性材料からなるアノードが設けられていることを特徴とする水熱合成装置。
【請求項30】
前記アノードは、前記容器の少なくとも一部として、前記容器の内面に露出していることを特徴とする請求項29に記載の水熱合成装置。
【請求項31】
前記アノードは不溶性材料からなることを特徴とする請求項29又は請求項30に記載の水熱合成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−70128(P2007−70128A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255382(P2005−255382)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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