吸音パネル
【課題】500Hz前後以下の低周波数域の吸音率を高くすることができ、かつ厚みを薄くすることができると共に端面剥離を生じに難くすることができ、しかも必要な箇所を釘・ねじ留めなどにて取り付け固定が可能にできる軽量な吸音パネルの提供を目的とする。
【解決手段】
両面が開口した板状のハニカムコア11の少なくとも片面に非通気性の面材31を配置し、ハニカムコア11の外周を独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材21で囲み、少なくとも片面の非通気性の面材31を枠状部材21に固定すると共にハニカムコア11に対して非固定とし、さらに枠状部材21の少なくとも一部を密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体で構成した。
【解決手段】
両面が開口した板状のハニカムコア11の少なくとも片面に非通気性の面材31を配置し、ハニカムコア11の外周を独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材21で囲み、少なくとも片面の非通気性の面材31を枠状部材21に固定すると共にハニカムコア11に対して非固定とし、さらに枠状部材21の少なくとも一部を密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体で構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面が開口したハニカムコアの少なくとも吸音面に非通気性の面材が積層された吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
隔壁で囲まれたセル(室)の平面形状が三角、四角、六角(ハニカム)、八角、あるいは円形からなるハニカムコアは、軽量で剛性を有することからパネルの構造体として使用されているが、吸音特性(整流効果)を有することも知られている。このハニカムコアの前面に直接多孔質吸音材を配置することで、ハニカムコアのその整流効果と背後空気層効果により、多孔質吸音材の高周波数対応吸音性を中周波数域の範囲まで向上させることが提案されている(特許文献1,2)。しかし、この構造によっては、500Hz以下の低周波数域になると、ハニカムコアの厚みを50mm以上の厚いものにしなければ吸音性の向上効果が得られなくなる問題がある。
【0003】
また、板状体とハニカムコアの接着一体化により吸音パネルにしたものも提案されている(特許文献3,4)。しかし、この構造のものは、吸音パネルとしての性能に劣ることから、主に遮音材として用いられている。
【0004】
また、板状体の周辺に振動減衰部材(制振材)を介して取付け部を枠状に取付け、その枠を剛性の板部材に固定したものも提案されている(特許文献5)。しかし、この構造のものは、500Hz以下の低周波数域で良好な吸音性が得られなかったり、厚みが大になったりする問題がある。
【0005】
さらに、ハニカムコアの表面(開口面)に面材を接着した吸音パネルは、端面剥離(面材の端部での剥離)の問題とパネルの固定壁面への取り付け等を目的とした時の釘・ねじ留めの問題もある。
端面剥離については、ハニカムコアの製造端面(横面)が平滑ではないこと、及びハニカムコアの開口面と面材との接着が線接着となることから、強度保持が不十分になって面材端部の剥離(端面剥離)を生じやすい。
そこで、ハニカムコアの周囲に木枠を設けることで面材の固着を強化して面材を剥離し難くすると共に、パネルにおける横面(木口)を平滑あるいは曲面にしたものがある(特許文献6、7)。しかしながら、木枠は吸水性、吸湿性を有するため、反ったり、捻れたりする問題がある。
【0006】
一方、釘・ねじ留めについては、ハニカムコアが複数のセル(隔壁で囲まれた開口部、室)を有する構造のため、釘・ねじ留めを行う場合、面材に突き刺さった釘・ねじがセル(開口部)の部分で自由状態となり、強固な固定が難しい。そこで、木片の部分に釘・ねじ留めを行っている(特許文献6,7)が、釘・ねじの刺通部分で防水性が損なわれる問題や、木片の使用による重量増加の問題があったり、パーティクルボード片などの材質によっては、釘・ねじ留め部分で強度が不足したりする問題がある。なお、特許文献4では、吸水による変化を生じない不燃材料を用い、かつその不燃材を充填させて釘・ねじ留めを可能にすることも提案されているが、その場合でも釘・ねじの保持力が十分ではなく、しかも不燃材料が高価なため、不燃性が不要な用途については割高になる問題がある。また、特別な釘・ねじ留め金具をハニカムコアの一部に設けることも行われている(特許文献8)。しかし、この場合には製造工程が複雑になると共にハニカムコアに対する釘・ねじ留め金具の保持性に不安がある。そのため、わざわざ、外周に金属枠や金属金具などを挟みこむような形で取り付けているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−247235号公報
【特許文献2】特開2005−17636号公報
【特許文献3】特開平8−151704号公報
【特許文献4】特開2005−254478号公報
【特許文献5】特開2005−134653号公報
【特許文献6】特開平5−124164号公報
【特許文献7】特開平7−68975号公報
【特許文献8】特開2009−6947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、500Hz以下の低周波数域の吸音性が良好で、かつ端面剥離を生じに難くすることができ、さらには、軽量性を損なうことなくパネルの外周に金属枠や金属金具などを取り付けることなく、釘・ねじ留めなどにて取り付けが容易にできる吸音パネルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、両面が開口した板状のハニカムコアの少なくとも片面に非通気性の面材を配置した吸音パネルにおいて、前記ハニカムコアの外周が独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材で囲まれて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、少なくとも前記片面の非通気性の面材は前記ハニカムコアに対して非固定とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ハニカムコアを複層とし、前記ハニカムコア間と少なくとも片側のハニカムコアの外表面とにそれぞれ前記非通気性の面材を配置し、前記各ハニカムコアの外周には前記枠状部材がそれぞれ設けられて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、少なくとも前記片側のハニカムコアの外表面の前記面材は当該ハニカムコアに対して非固定とされていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記枠状部材の少なくとも一部が密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、両面が開口した板状のハニカムコアの少なくとも片面に非通気性の面材を配置した吸音パネルにおいて、前記ハニカムコアの外周が独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材で囲まれて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、少なくとも前記片面の非通気性の面材は前記ハニカムコアに対して非固定とされていることにより、500Hz前後以下の低周波数域において吸音率を高くすることができ、かつ吸音パネルの厚みを薄くすることができる。しかも、ハニカムコアの外周を囲む独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材に面材が固定されているため、端面剥離を防ぐことができる。また、枠状部材を構成する独立気泡構造の発泡体は、木枠と比べると密度が低いため、ハニカムコアの特徴である軽量性を損なうことがない。さらに、枠状部材を構成する独立気泡構造の発泡体は、独立気泡構造によって水分の含浸が防止されるため、枠状部分の吸水に起因する捻れや変形を生じるおそれがない。
【0013】
請求項2の発明によれば、ハニカムコアを複層とし、前記ハニカムコア間と少なくとも片側のハニカムコアの外表面とにそれぞれ前記非通気性の面材を配置し、前記各ハニカムコアの外周には前記枠状部材がそれぞれ設けられて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、少なくとも前記片側のハニカムコアの外表面の前記面材は当該ハニカムコアに対して非固定とされているため、請求項1と同様に500Hz前後以下の低周波数域における吸音率の向上効果、端面剥離防止効果、軽量性効果、枠状部分の吸水に起因する捻れや変形防止効果が得られ、さらには、500Hzより高い高周波数域においても吸音率向上効果を得ることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、枠状部材の少なくとも一部が密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体からなるため、該高密度(0.3〜0.8g/cm3)の独立気泡構造の発泡体で構成された部分では釘・ねじの保持力が高くなり、釘・ねじ留めが可能になる。しかも、前記高密度(0.3〜0.8g/cm3)の独立気泡構造の発泡体は、木枠と比べると密度が低いため、ハニカムコアの特徴である軽量性を損なうことがない。さらに、釘・ねじ留めが可能な高密度(0.3〜0.8g/cm3)の独立気泡構造の発泡体は、独立気泡構造によって水分の含浸が防止されるため、釘・ねじの部分から内部に水分が含浸せず、吸水に起因する捻れや変形を生じるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る吸音パネルの一部を切り欠いて示す平面図である。
【図2】図1の2−2拡大断面図である。
【図3】図1における面材を除去した状態の平面図である。
【図4】枠状部材の例を示す平面図である。
【図5】第2実施形態に係る吸音パネルの一部の断面図である。
【図6】実施例1の吸音パネル作製時における枠状部材の組み立て時を示す図である。
【図7】実施例1〜3及び比較例1〜3の残響室吸音率測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例1,4,5及び比較例4の残響室吸音率測定結果を示すグラフである。
【図9】騒音レベルを測定した工場の見取り図である。
【図10】騒音レベルの測定結果を示すグラフである。
【図11】騒音レベルの低減効果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の吸音パネルについて、図面を用いて説明する。図1から図3に示す第1実施形態の吸音パネル10は、両面が開口した板状のハニカムコア11の少なくとも片面に非通気性の面材31が配置され、前記ハニカムコア11の外周を囲む独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材21に前記面材31が固定されている。図示の例では、ハニカムコア11の両面(両側の開口面)に非通気性の面材31が配置されている。吸音パネル10の一方の面は吸音面(音源側へ向けられる面)であり、反対面は裏面である。前記ハニカムコア11において前記面材の配置が必須とされる片面は、吸音面である。本実施形態において前記ハニカムコア11の両面に設けた非通気性の面材31について吸音面側の面材と裏面側の面材を区別する場合、吸音面側の非通気性面材については310とし、反対の裏面側の非通気性面材については311とする。
【0017】
前記ハニカムコア11は、隔壁13によって区画された複数のセル(室)15を有し、前記セル15が高さ方向(すなわちハニカムコアの厚み方向)の両端で開口している。前記ハニカムコア11は、セルの平面形状が本実施形態のように六角形(ハニカム形状)のものに限られず、例えば、三角形、四角形、五角形、八角形等の多角形や、フルート形(波形状)、円形等をしたものからなる。特にハニカムコアの強度や製造のし易さから、セルの平面形状が六角形(ハニカム)、フルート形、円形のものが好ましい。
【0018】
ハニカムコア11の材質としては、紙、金属、樹脂、セラミック等を挙げることができるが、特に安価でかつ軽量な紙、樹脂が好ましい。なお、不燃性が必要な場合は、セラミックなどによる不燃紙やアルミなどが好適に使用できる。また、ハニカムコア11のセルサイズは、特に限定されないが、小さすぎるとハニカムコアの重量が増大して吸音パネル10が重くなり、一方、大きすぎるとハニカムコアの強度低下や面材31の窪みの原因となるため、5〜50mmの範囲が好ましい。また、ハニカムコア11の高さ(厚み)は、低すぎると嵩の割りに重くなり、高すぎるとハニカムコア11(基材11)の強度低下を生じることから、5〜100mmの範囲が好ましい。前記ハニカムコア11の平面寸法は、後述する吸音面側の面材310における非固定部の好ましい範囲確保の観点から、100mm角以上が好ましい。
【0019】
前記枠状部材21は、独立気泡構造の発泡体で構成され、前記ハニカムコア11の外周全周を囲み、後述する面材31と接着等により固定される。独立気泡構造の発泡体としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン系樹脂などを挙げることができる。前記枠状部材21の厚み(高さ)は、前記ハニカムコア11の厚み(高さ)と同じとされる。また、幅は5〜30mmが好ましい。幅が狭すぎると前記ハニカムコア11及び後述の面材31との接着が不十分になって十分なパネルの強度が得られなくなる。一方、幅が広すぎると、吸音パネル10の重量増につながる。前記枠状部材21は、打ち抜き等によって一連の枠状とされたものに限られず、複数本の独立気泡構造の発泡体を接合して枠状としたものでもよい。本実施形態では、4本の独立気泡構造の発泡体を接着により枠状としている。図4は、複数本の独立気泡構造の発泡体で枠状部材21を構成する場合の他の例である。図4の(A)、(B)は複数の角柱形状の発泡体を接着(融着等の固着を含む)により枠状としたものであり、(C)、(D)は嵌合と接着の併用により枠状としたものである。なお、嵌合のみ(図示せず)によって枠状としたものでもよい。また、前記ハニカムコア11の外周で前記枠状部材21を発泡させて、所定形状・寸法に加工してもよい。さらに、前記枠状部材21は、独立気泡構造の発泡体の表面に撥水塗装加工を施したり、防湿層(非通気性・水蒸気非透過性フィルム)を積層したりしてもよい。
【0020】
前記枠状部材21を構成する独立気泡構造の発泡体の密度は、前記枠状部材21の部分で釘・ねじ留めを行わない場合、0.05〜0.3g/cm3の低密度発泡体が好ましく、より好ましくは0.1〜0.2g/cm3である。密度が低すぎると、柔らかすぎて吸音パネル10の縁が強度の低いものとなり、一方、密度が高すぎると吸音パネル10が重くなる。なお、この場合における独立気泡構造の発泡体の好ましい発泡倍率は、4倍〜25倍であり、また、前記独立気泡構造の発泡体の25%圧縮硬度(JIS K6767)は、前記吸音パネル10の縁の強度の観点から、0.15MPa以上が好ましい。釘・ねじ留めを行わない場合における前記独立気泡構造の発泡体の特に好ましい具体例として、ポリエチレンフォームを挙げることができる。
【0021】
一方、前記枠状部材21の部分で釘・ねじ留めを可能にする場合、前記枠状部材21を構成する独立気泡構造の発泡体は、密度0.3〜0.8g/cm3の高密度発泡体が好ましい。密度が低すぎると釘・ねじなどが留まり難くなり、一方、密度が高すぎると吸音パネル10が重くなる。なお、この場合における独立気泡構造の発泡体の好ましい発泡倍率は、1.3倍〜4倍である。また、釘・ねじ留めを行う場合における前記独立気泡構造の発泡体の特に好ましい具体例として、ポリスチレンフォームを挙げることができる。また、前記枠状部材21における一部のみを釘・ねじ留め可能な部分とする場合には、釘・ねじ留め可能とする部分の独立気泡構造の発泡体を密度0.3〜0.8g/cm3、他の部分の独立気泡構造の発泡体を密度0.05〜0.3g/cm3としてもよい。また、必要に応じ、前記ハニカムコア11を複数分割して、その境界に密度0.3〜0.8g/cm3の高密度発泡体を中間材として設け、面材の中央にて釘・ねじ留めできるようにしてもよい。すなわち、ハニカムコアを面材と平行方向に複数としたハニカムコアで構成すると共に、前記ハニカムコア間に密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体(中間体)を配置してもよい。
【0022】
前記枠状部材21の四隅(軽量ハニカムコアパネルの四隅に相当)は、面取りを行ってもよい。前記枠状部材21の木口(外側横面)41の成形方法としては、真空成型、ポストフォーム、ダイレクト・ポストフォーム、ソフトフォーム、ソフト・ラミネート、エッヂ・バンディング(ストレート、ラウンド)、転写、袋貼り、Jカット、Vカット、打ち込み、ダイレクト印刷、塗装、樹脂盛などが挙げられる。
【0023】
前記面材31は、非通気性のシート材で構成される。非通気性のシート材としては、非多孔質の樹脂、ゴム・エラストマー、金属、無機材料などを挙げることができる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの樹脂シート、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属シート、セラミックスシート、不燃紙などの単独または積層したものでもよい。
【0024】
前記面材31は、前記基材11のハニカムコア及び外周の枠状部材21まで覆うことのできる大きさからなる。前記吸音面側の面材310については、前記ハニカムコア11とは非固定とされ、前記面材310の縁のみが前記枠状部材21の表面に接着等で固定されている。前記吸音面側の面材310においてハニカムコア11と非固定とされる部分は、100mm角(100m×100mmの四角形)以上が好ましく、更に好ましくは150mm角以上である。非固定部分の外周の一辺でも100mmより小さくなると共鳴による吸音効果が十分得られず、吸音域が高周波域にシフトするのみならず、吸音率も幾分低下する。吸音面側の面材310をハニカムコアに固定すると、同じサイズ例えば150mm角でも枠材のみに固定する以上に吸音域が高周波域にシフトするのみならず、吸音率も幾分低下するようになるので、吸音面のハニカムコアには面材を貼り付けない。吸音面側とは反対の裏面側の面材311については、前記枠状部材21のみならず、ハニカムコア11に対しても接着等で固定してもよい。そのように裏面側の面材311をハニカムコア11に固定すれば、吸音パネル10の強度を向上させることができる。
【0025】
また、前記吸音面側の面材310については、面密度(面重量)が低すぎると、吸音率がピークとなるピーク周波数が高周波数側にずれ、しかも吸音率が低くなる。逆に面密度が高すぎると、ピーク周波数が低周波数側にずれるものの、吸音率は低くなる。そのため、前記面材310の好ましい面密度は、0.05〜2.0kg/m2である。なお、面密度とは、単位面積当たりに占める物の重さを表す単位として定義されており、対象物の密度(g/cm3)に厚さ(cm)を掛けたものである。単位は、kg/m2、g/cm2などである。
【0026】
なお、前記枠状部材21の木口41は、前記枠状部材21の発泡体がそのままむき出しとなっていてもよい。その場合、前記枠状部材21の発泡体が前記面材31の縁部と同じ位置であってもよいし、前記枠状部材21の発泡体が、前記面材31の縁からせり出していてもよい。
【0027】
また、前記枠状部材21の木口41は、木口テープを貼着したり、樹脂あるいは金具等の木口部材を取り付けたりしてもよい。前記木口部材としては、断面コの字形状あるいは断面L字形状等、前記枠状部材21の木口41を覆うことのできる形状からなる。前記木口部材を前記枠状部材21の木口41に取り付ける際に、前記面材31の縁を木口部材と枠状部材21との間に挟み込むようにしてもよい。さらに、前記面材表面の非通気性シート材を、裏面もしくは表面の面材と枠状部材の間に折り込んで積層接着させることも可能である。
【0028】
前記ハニカムコア11、前記枠状部材21、前記面材31及び前記木口部材などの固定に用いられる接着剤は、特に限定されるものではない。例えば、酢酸ビニルエマルジョン、水性ビニルウレタンなどの水性エマルジョン系、一般樹脂、合成ゴム、ウレタン樹脂などの溶剤系、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル系などのホットメルト接着剤等の無機溶剤樹脂系が挙げられるが、耐水性向上のためには、前記溶剤系、ホットメルト接着剤等の無溶剤樹脂系のものが好ましい。また、固定には、接着剤による接着の他に、粘着剤、両面接着テープなどの粘着、溶着、融着(熱、高周波又は超音波融着等)、圧着など、公知の接合方法の中から、被接着物の材質に応じて何れかあるいは複数の方法が選択される。
【0029】
なお、本発明の吸音パネルは、前記ハニカムコアが一層(一段)のものに限られず、ハニカムコアを複層(多段)とし、ハニカムコア間と少なくとも片側(吸音側)のハニカムコアの外表面とに非通気性の面材を設け、各ハニカムコアの外周に枠状部材を設けて片側(吸音側)の面材を枠状部材にのみ固定した構成にしてもよい。
【0030】
図5に示す第2実施形態の吸音パネル10Aは、ハニカムコアが2層の例である。この吸音パネル10Aは、ハニカムコア11A、12A間と両側のハニカムコア11A、12Aの外表面とに前記非通気性の面材31A、32A、33Aを配置し、前記各ハニカムコア11A、12Aの外周には前記独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材21A、22Aをそれぞれ設け、前記枠状部材21A、22Aに前記非通気性の面材31A、32A、33Aの縁を固定し、前記片側(吸音側)のハニカムコア11Aの外表面に配置された前記面材31Aについては当該ハニカムコア11Aに対して非固定としたものである。他の面材32A、33Aについては、対応するハニカムコアに対し非固定あるいは固定の何れでもよい。他の面材32A、33Aを対応するハニカムコアに固定(例えば面材32Aについてはハニカムコア11Aとハニカムコア12Aの少なくとも一方に固定、又他の面材33Aについてはハニカムコア12Aに固定)すれば、前記吸音パネル10Aの強度を高めることができ、より好ましい。符号41A、42Aは木口である。なお、ハニカムコアの高さは、全ての層で同一とする必要はなく、各層を異ならせてもよい。
【実施例】
【0031】
・実施例1
図6に示すように、1000×700mmの作業用木板61上で、イノアックコーポレーション社製ポリエチレン発泡体、品名:PEライト・A12(密度0.12g/cm3、25%圧縮硬度0.25MPa)を幅30mm、高さ45mm、長さ910mmとした角柱材62、63と、同ポリエチレン発泡体を同幅及び同高さ、長さ550mmとした角柱材64、65の4本を枠状に接着して縦910mm×横610mm×厚み(高さ)45mmの枠状部材を形成した。次にロールコータにより、溶融したホットメルト接着剤:大日本インキ工業社製湿気反応型ウレタン系ホットメルト接着剤、品名:FH−300を枠状部材の上面に塗布し、木質材シート:ネルソンパイン社製、品名:MDF(1mm厚、0.75g/cm3)、平面寸法910mm×610mmからなる面材を被せて圧着接着させた。冷却後これを裏返して前記接着済みの面材を下面として、枠状部材内にハニカムコア:日本ダイスコア社製ペーパーハニカムコア(セル径12mm)を、縦850mm×横550mm×高さ45mmにして収容した。再度ロールコータにより、前記ホットメルト接着剤を前記枠状部材及びハニカムコアの上面に塗布し、前記面材を被せて圧着接着させた。
【0032】
このようにして得られたパネル中間体を900mm×600mmとなるように面取り切断し、更に片面の面材上に溶融したホットメルト接着剤:大日本インキ工業社製湿気反応型ウレタン系ホットメルト接着剤、品名:FH−300をロールコータで塗布し、塗布面にトッパン社製化粧印刷付きポリプロピレンシート(0.18mm厚)を圧着接着した。冷却後、これを裏返して前記ポリプロピレンシートを下面とし、上面の面材に溶融したホットメルト接着剤:大日本インキ工業社製湿気反応型ウレタン系ホットメルト接着剤、品名:FH−300をロールコータで塗布し、塗布面にトッパン社製化粧印刷付きポリプロピレンシート(0.18mm厚)を圧着接着し、横面を袋貼りした吸音パネルを作製した。この吸音パネルを2枚作製し、それぞれ重量を測定した。測定結果は、2枚平均で2.25kgであり、軽いものであった。また、吸音面はハニカムコアと面材が非固定であるにもかかわらず、外観、強度など、面材を全面固定した裏面と比較して遜色なかった。また、この2枚の吸音パネルを並べて1200mm×900mmとし、面材非固定側の吸音面を上にし、JIS A 1409に基づき残響室吸音率を測定した。但し、残響室容積は36m3のものを使用した。残響室吸音率の測定結果は図7に示すように、周波数250Hzを中心としたシャープな吸音ピークを示した。
【0033】
・実施例2
実施例1において枠状部材を、イノアックコーポレーション社製ポリスチレン発泡体、品名:デュラウッド・PS(密度0.5g/cm3、高さ25mm)とし、ハニカムコアの高さを25mmとした以外は同様にして、吸音パネルを得た。この吸音パネルの重量は平均2.45kgであった。また残響室吸音率の測定結果は図7に示すように、周波数400Hzを中心としたシャープな吸音ピークを示した。
【0034】
・比較例1
実施例2において、パネルの両面とも面材を枠状部材及びハニカムコアに接着した以外は同様にして吸音パネルを得た。この吸音パネルにおける残響室吸音率の測定結果は図7に示すように、吸音率が低く、しかもその中心周波数が高周波側に大きくずれたものであった。
【0035】
・比較例2
実施例2において枠状部材を使用せず、吸音面側における面材とハニカムコアの接着を、ハニカムコアの外周とその内側に設定した3筋(112.5mm間隔で各30mm幅)の部分で行った。この接着は実施例2で用いたホットメルト接着剤を使用した。この吸音パネルにおける残響室吸音率の測定結果は図7に示すように、吸音率の中心周波数が高周波にずれて、吸音率も低いものであった。また、吸音パネルの外周が柔らかく変形し易い問題があった。
【0036】
・実施例3
実施例1において、枠状部材にはイノアックコーポレーション社製、品名:PEライト・A8(密度0.06g/cm3、25%圧縮硬度0.09MPa)、幅30mm高さ18mmの角柱材を用い、ハニカムコアには日本ダイスコア社製ペーパーハニカムコア・フルート形(セル径10mm、高さ18mm)を使用し、面材にはイビデン社製メラミン系化粧シート、品名:IB−7121(0.8mm厚)を用い、枠状部材の横面(木口面)に木口テープ:パテフリ工業社製ABS(0.45mm厚)を貼り付けた以外は実施例1と同様にして、吸音パネルを作製した。この吸音パネルの重量は平均1.55kgであった。この吸音パネルに対して残響室吸音率を測定した結果、図7に示すように周波数500Hz付近を中心としたシャープな吸音ピークを持った。
【0037】
また、実施例3において、同様にして、サイズが300×150mmのものを2個作製し、次のような耐水試験法を行った。それぞれ、(1)24時間浸水後、(2)60℃、24時間放置後に24時間浸水後の各角部および300mm幅の真ん中の計6点につき、ノギスにて面材間の厚みの変化を測定した。試験前後の変化が+1%以上の場合には浸水による膨張とみなされる。測定結果は、6点いずれも膨張率が小さく浸水は認められず耐水性良好であり、(1)平均0.12%、(2)平均0.05%であった。
【0038】
・比較例3
実施例3において枠状部材にパーティクルボード:新秋木工業社製、品名:U−18(密度0.68g/cm3、高さ18mm)を用いた以外は同様にして吸音パネルを作製した。この吸音パネルの重量は2.35kgであり、実施例3に比べて重いものであった。またこの吸音パネルの残響室吸音率測定結果は図7に示すように、実施例3と同等の傾向を示した。また、耐水試験法においては、(1)24時間浸水後:3点浸水が確認された(4.2、3.6、6.3%)。(2)60℃、24時間放置後に24時間浸水後:3点浸水が確認され(7.5%、5.3%、2.9%)、耐水性に問題があった。
【0039】
・実施例4
実施例1において、枠状部材の角柱材及びハニカムコアの高さを15mmとした以外は実施例1と同様にして、910×610mmのパネル中間体を得た。次に、1000×700mmの作業用木板61上に、高さ30mmからなる前記角柱材をパネル中間体の枠状部材と同じ大きさなるように置いて別の枠状部材を形成し、この枠状部材にホットメルト接着剤を塗布した後、前記15mm高のパネル中間体の裏面を貼り付けた。冷却後、裏返して高さ30mmの枠状部材内に高さ30mmのハニカムコアを収容し、ホットメルト接着剤を塗布して、枠状部材及びハニカムコアに面材を貼付け、他は実施例1と同様にして多層構造(吸音面から面材/高さ15mmのハニカムコア//面材/高さ30mmのハニカムコア//面材、//は全面接着、/は枠状部材のみ接着を示す)の吸音パネル(900×600×45mm)を作製した。この吸音パネルの重量は2.73kgであった。また、残響室吸音率を測定した結果、図8に示すように、周波数250Hz付近を中心としたシャープな吸音メインピークとともに、630Hz付近にサブピークを持っている。
【0040】
・実施例5
実施例1において、枠状部材の低密度発泡体、イノアックコーポレーション社製、品名:PEライト・A12の縦910mmの上部及び下部のそれぞれ50mm分につき、高密度発泡体:イノアックコーポレーション社製、品名:デュラウッド・PS(比重0.5g/cm3)
幅30mm、高さ45mmの角柱材に置き換え、また、裏面材には遮音材として15mm厚の木質材シート:品名:ネルソンパイン社製MDF(1mm厚、0.75g/cm3)を貼付けた以外は、実施例1と同様にして、吸音パネルを2枚作製した。残響室に2枚並べて立て吸音率を測定した結果、図8に示すように、実施例1とほぼ同様な吸音ピークとなった。
【0041】
<現場評価結果>
図9の見取り図に示す間取りからなる部屋の一角に設けられた機器設置スペース(2500mm×6100mm)に集塵機、木材破砕機が配置され、集塵機、木材破砕機の稼働時における屋外工場門の測定点での騒音レベルがオールパス61.0dBA、250Hz:55.3dBAである工場において、機器周辺の壁面に以下のように実施例及び比較例の吸音パネルを貼り付けて、騒音レベルを測定した。なお、騒音レベルが高い主因は集塵機であり、特に250Hzにシャープな騒音ピークを発生していることがわかった。騒音レベルの測定方法は、環境庁告示第64号「騒音に係る環境基準について」に基づき、等価騒音レベル(LAeq)にて行った。
【0042】
・比較例A
機器周辺の3方向の壁一面(5段、天井までの高さ約4000mmのうち高さ約3000mmまで)に、イノアックコーポレーション社製ウレタンフォーム、品名:カームフレックスF2、厚み50mm(図8のグラフの比較例4)を両面テープにて貼り付け、また機器設置スペースと他のスペースとの境界(6100mm)には、2mm厚の塩ビカーテンを設置した。しかしながら、騒音レベルの測定結果は、図10のグラフ及び図11の表に示すように、オールパス、250Hzともに対策実施前から変化は認められなかった。
【0043】
・実施例A
比較例Aに対し、機器周辺の3方向の壁一面の2,3段目を、実施例1の吸音パネルに置き換えた。その結果、図10のグラフ及び図11の表に示すように、250Hzで約4dB、オールパスにて約2dBの低減効果があった。
【0044】
・実施例B
比較例Aに対し、機器周辺の3方向の壁一面の2,4段目を、実施例1の吸音パネルに、3段目を実施例4の2層品の吸音パネルに置き換え、更に、機器設置スペースと他のスペースとの境界(6100mm)における2400mm分は塩化ビニル樹脂カーテンに代えて、実施例5の吸音パネルを吸音面が内側となるようにして、それぞれの4端部に木ねじを付けながら固定して壁化した。その結果、図10のグラフ及び図11の表に示すように、250Hzで約6dB、オールパスにて約3dBの低減効果があった。なお、測定点の直線上には吸音パネルを配置できなかったため、測定点における騒音レベルの低減は、吸音パネルの反射音の低減の分と考えられ、その数の多い実施例Bの方が反射音の低減効果が高かったことがわかる。
【0045】
なお、実施例1,4の吸音パネルにおける4端部では木ねじがややぐらぐらするため壁として機能させるための固定が難しかったが、実施例5の吸音パネルでは枠状部材の内面を高比重発泡体としたため強固な木ねじ保持力となり、連結金具で固定しながらがっちりとした壁とすることができた。
【0046】
このように、本発明の吸音パネルは、500Hz前後以下の低周波数領域で高い吸音率を発揮することができ、しかも厚みが薄いものである。なお、必要に応じ、厚み・面材厚みの異なるものを並べたり、多層化したり、前面に多孔質吸音材を付着するなどにより広い周波数対応も可能である。しかも、ハニカムコアの外周を囲む独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材に面材が固定されているため、端面剥離を防ぐことができる。また、枠状部材を構成する独立気泡構造の発泡体は、木枠と比べると密度が低いため、ハニカムコアの特徴である軽量性を損なうことがない。さらに、枠状部材を構成する独立気泡構造の発泡体は、独立気泡構造によって水分の含浸が防止されるため、枠状部分の吸水に起因する捻れや変形を生じるおそれがない。
【0047】
さらに本発明の吸音パネルは、枠状部材の少なくとも一部に密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体を設けることにより、その部分で釘・ねじ留めが可能となる。そのため、外周の金属枠などを取り付けることなくても、直接釘・ねじ留めはできるため、軽量かつ容易かつ安価な取り付けが可能となる。なお、軽量なため、薄厚品や小サイズ品では接着剤、両面テープ、面ファスナー、ビス留めなどでも取り付け固定が可能となる。
【0048】
本発明の吸音パネルは、以上の利点を生かし、不燃紙・アルミ素材などにより不燃・難燃特性も満足するので、例えば、建設機械のファンなどの騒音対策、工場における集塵機、空調機など各種モーター機械騒音対策、電気機器類の騒音対策、鉄道・新幹線などのデッキ、パンタグラフでの騒音対策、建物の壁・天井・床の防音材、オフィス・トイレなどの仕切り壁、道路・空港などの防音壁などとして好適に活用できる。
【符号の説明】
【0049】
10、10A 吸音パネル
11、11A、12A ハニカムコア
21、21A、22A 枠状部材
31、31A、32A、33A 非通気性の面材
41、41A、42A 木口
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面が開口したハニカムコアの少なくとも吸音面に非通気性の面材が積層された吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
隔壁で囲まれたセル(室)の平面形状が三角、四角、六角(ハニカム)、八角、あるいは円形からなるハニカムコアは、軽量で剛性を有することからパネルの構造体として使用されているが、吸音特性(整流効果)を有することも知られている。このハニカムコアの前面に直接多孔質吸音材を配置することで、ハニカムコアのその整流効果と背後空気層効果により、多孔質吸音材の高周波数対応吸音性を中周波数域の範囲まで向上させることが提案されている(特許文献1,2)。しかし、この構造によっては、500Hz以下の低周波数域になると、ハニカムコアの厚みを50mm以上の厚いものにしなければ吸音性の向上効果が得られなくなる問題がある。
【0003】
また、板状体とハニカムコアの接着一体化により吸音パネルにしたものも提案されている(特許文献3,4)。しかし、この構造のものは、吸音パネルとしての性能に劣ることから、主に遮音材として用いられている。
【0004】
また、板状体の周辺に振動減衰部材(制振材)を介して取付け部を枠状に取付け、その枠を剛性の板部材に固定したものも提案されている(特許文献5)。しかし、この構造のものは、500Hz以下の低周波数域で良好な吸音性が得られなかったり、厚みが大になったりする問題がある。
【0005】
さらに、ハニカムコアの表面(開口面)に面材を接着した吸音パネルは、端面剥離(面材の端部での剥離)の問題とパネルの固定壁面への取り付け等を目的とした時の釘・ねじ留めの問題もある。
端面剥離については、ハニカムコアの製造端面(横面)が平滑ではないこと、及びハニカムコアの開口面と面材との接着が線接着となることから、強度保持が不十分になって面材端部の剥離(端面剥離)を生じやすい。
そこで、ハニカムコアの周囲に木枠を設けることで面材の固着を強化して面材を剥離し難くすると共に、パネルにおける横面(木口)を平滑あるいは曲面にしたものがある(特許文献6、7)。しかしながら、木枠は吸水性、吸湿性を有するため、反ったり、捻れたりする問題がある。
【0006】
一方、釘・ねじ留めについては、ハニカムコアが複数のセル(隔壁で囲まれた開口部、室)を有する構造のため、釘・ねじ留めを行う場合、面材に突き刺さった釘・ねじがセル(開口部)の部分で自由状態となり、強固な固定が難しい。そこで、木片の部分に釘・ねじ留めを行っている(特許文献6,7)が、釘・ねじの刺通部分で防水性が損なわれる問題や、木片の使用による重量増加の問題があったり、パーティクルボード片などの材質によっては、釘・ねじ留め部分で強度が不足したりする問題がある。なお、特許文献4では、吸水による変化を生じない不燃材料を用い、かつその不燃材を充填させて釘・ねじ留めを可能にすることも提案されているが、その場合でも釘・ねじの保持力が十分ではなく、しかも不燃材料が高価なため、不燃性が不要な用途については割高になる問題がある。また、特別な釘・ねじ留め金具をハニカムコアの一部に設けることも行われている(特許文献8)。しかし、この場合には製造工程が複雑になると共にハニカムコアに対する釘・ねじ留め金具の保持性に不安がある。そのため、わざわざ、外周に金属枠や金属金具などを挟みこむような形で取り付けているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−247235号公報
【特許文献2】特開2005−17636号公報
【特許文献3】特開平8−151704号公報
【特許文献4】特開2005−254478号公報
【特許文献5】特開2005−134653号公報
【特許文献6】特開平5−124164号公報
【特許文献7】特開平7−68975号公報
【特許文献8】特開2009−6947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、500Hz以下の低周波数域の吸音性が良好で、かつ端面剥離を生じに難くすることができ、さらには、軽量性を損なうことなくパネルの外周に金属枠や金属金具などを取り付けることなく、釘・ねじ留めなどにて取り付けが容易にできる吸音パネルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、両面が開口した板状のハニカムコアの少なくとも片面に非通気性の面材を配置した吸音パネルにおいて、前記ハニカムコアの外周が独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材で囲まれて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、少なくとも前記片面の非通気性の面材は前記ハニカムコアに対して非固定とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ハニカムコアを複層とし、前記ハニカムコア間と少なくとも片側のハニカムコアの外表面とにそれぞれ前記非通気性の面材を配置し、前記各ハニカムコアの外周には前記枠状部材がそれぞれ設けられて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、少なくとも前記片側のハニカムコアの外表面の前記面材は当該ハニカムコアに対して非固定とされていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記枠状部材の少なくとも一部が密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、両面が開口した板状のハニカムコアの少なくとも片面に非通気性の面材を配置した吸音パネルにおいて、前記ハニカムコアの外周が独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材で囲まれて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、少なくとも前記片面の非通気性の面材は前記ハニカムコアに対して非固定とされていることにより、500Hz前後以下の低周波数域において吸音率を高くすることができ、かつ吸音パネルの厚みを薄くすることができる。しかも、ハニカムコアの外周を囲む独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材に面材が固定されているため、端面剥離を防ぐことができる。また、枠状部材を構成する独立気泡構造の発泡体は、木枠と比べると密度が低いため、ハニカムコアの特徴である軽量性を損なうことがない。さらに、枠状部材を構成する独立気泡構造の発泡体は、独立気泡構造によって水分の含浸が防止されるため、枠状部分の吸水に起因する捻れや変形を生じるおそれがない。
【0013】
請求項2の発明によれば、ハニカムコアを複層とし、前記ハニカムコア間と少なくとも片側のハニカムコアの外表面とにそれぞれ前記非通気性の面材を配置し、前記各ハニカムコアの外周には前記枠状部材がそれぞれ設けられて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、少なくとも前記片側のハニカムコアの外表面の前記面材は当該ハニカムコアに対して非固定とされているため、請求項1と同様に500Hz前後以下の低周波数域における吸音率の向上効果、端面剥離防止効果、軽量性効果、枠状部分の吸水に起因する捻れや変形防止効果が得られ、さらには、500Hzより高い高周波数域においても吸音率向上効果を得ることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、枠状部材の少なくとも一部が密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体からなるため、該高密度(0.3〜0.8g/cm3)の独立気泡構造の発泡体で構成された部分では釘・ねじの保持力が高くなり、釘・ねじ留めが可能になる。しかも、前記高密度(0.3〜0.8g/cm3)の独立気泡構造の発泡体は、木枠と比べると密度が低いため、ハニカムコアの特徴である軽量性を損なうことがない。さらに、釘・ねじ留めが可能な高密度(0.3〜0.8g/cm3)の独立気泡構造の発泡体は、独立気泡構造によって水分の含浸が防止されるため、釘・ねじの部分から内部に水分が含浸せず、吸水に起因する捻れや変形を生じるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る吸音パネルの一部を切り欠いて示す平面図である。
【図2】図1の2−2拡大断面図である。
【図3】図1における面材を除去した状態の平面図である。
【図4】枠状部材の例を示す平面図である。
【図5】第2実施形態に係る吸音パネルの一部の断面図である。
【図6】実施例1の吸音パネル作製時における枠状部材の組み立て時を示す図である。
【図7】実施例1〜3及び比較例1〜3の残響室吸音率測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例1,4,5及び比較例4の残響室吸音率測定結果を示すグラフである。
【図9】騒音レベルを測定した工場の見取り図である。
【図10】騒音レベルの測定結果を示すグラフである。
【図11】騒音レベルの低減効果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の吸音パネルについて、図面を用いて説明する。図1から図3に示す第1実施形態の吸音パネル10は、両面が開口した板状のハニカムコア11の少なくとも片面に非通気性の面材31が配置され、前記ハニカムコア11の外周を囲む独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材21に前記面材31が固定されている。図示の例では、ハニカムコア11の両面(両側の開口面)に非通気性の面材31が配置されている。吸音パネル10の一方の面は吸音面(音源側へ向けられる面)であり、反対面は裏面である。前記ハニカムコア11において前記面材の配置が必須とされる片面は、吸音面である。本実施形態において前記ハニカムコア11の両面に設けた非通気性の面材31について吸音面側の面材と裏面側の面材を区別する場合、吸音面側の非通気性面材については310とし、反対の裏面側の非通気性面材については311とする。
【0017】
前記ハニカムコア11は、隔壁13によって区画された複数のセル(室)15を有し、前記セル15が高さ方向(すなわちハニカムコアの厚み方向)の両端で開口している。前記ハニカムコア11は、セルの平面形状が本実施形態のように六角形(ハニカム形状)のものに限られず、例えば、三角形、四角形、五角形、八角形等の多角形や、フルート形(波形状)、円形等をしたものからなる。特にハニカムコアの強度や製造のし易さから、セルの平面形状が六角形(ハニカム)、フルート形、円形のものが好ましい。
【0018】
ハニカムコア11の材質としては、紙、金属、樹脂、セラミック等を挙げることができるが、特に安価でかつ軽量な紙、樹脂が好ましい。なお、不燃性が必要な場合は、セラミックなどによる不燃紙やアルミなどが好適に使用できる。また、ハニカムコア11のセルサイズは、特に限定されないが、小さすぎるとハニカムコアの重量が増大して吸音パネル10が重くなり、一方、大きすぎるとハニカムコアの強度低下や面材31の窪みの原因となるため、5〜50mmの範囲が好ましい。また、ハニカムコア11の高さ(厚み)は、低すぎると嵩の割りに重くなり、高すぎるとハニカムコア11(基材11)の強度低下を生じることから、5〜100mmの範囲が好ましい。前記ハニカムコア11の平面寸法は、後述する吸音面側の面材310における非固定部の好ましい範囲確保の観点から、100mm角以上が好ましい。
【0019】
前記枠状部材21は、独立気泡構造の発泡体で構成され、前記ハニカムコア11の外周全周を囲み、後述する面材31と接着等により固定される。独立気泡構造の発泡体としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン系樹脂などを挙げることができる。前記枠状部材21の厚み(高さ)は、前記ハニカムコア11の厚み(高さ)と同じとされる。また、幅は5〜30mmが好ましい。幅が狭すぎると前記ハニカムコア11及び後述の面材31との接着が不十分になって十分なパネルの強度が得られなくなる。一方、幅が広すぎると、吸音パネル10の重量増につながる。前記枠状部材21は、打ち抜き等によって一連の枠状とされたものに限られず、複数本の独立気泡構造の発泡体を接合して枠状としたものでもよい。本実施形態では、4本の独立気泡構造の発泡体を接着により枠状としている。図4は、複数本の独立気泡構造の発泡体で枠状部材21を構成する場合の他の例である。図4の(A)、(B)は複数の角柱形状の発泡体を接着(融着等の固着を含む)により枠状としたものであり、(C)、(D)は嵌合と接着の併用により枠状としたものである。なお、嵌合のみ(図示せず)によって枠状としたものでもよい。また、前記ハニカムコア11の外周で前記枠状部材21を発泡させて、所定形状・寸法に加工してもよい。さらに、前記枠状部材21は、独立気泡構造の発泡体の表面に撥水塗装加工を施したり、防湿層(非通気性・水蒸気非透過性フィルム)を積層したりしてもよい。
【0020】
前記枠状部材21を構成する独立気泡構造の発泡体の密度は、前記枠状部材21の部分で釘・ねじ留めを行わない場合、0.05〜0.3g/cm3の低密度発泡体が好ましく、より好ましくは0.1〜0.2g/cm3である。密度が低すぎると、柔らかすぎて吸音パネル10の縁が強度の低いものとなり、一方、密度が高すぎると吸音パネル10が重くなる。なお、この場合における独立気泡構造の発泡体の好ましい発泡倍率は、4倍〜25倍であり、また、前記独立気泡構造の発泡体の25%圧縮硬度(JIS K6767)は、前記吸音パネル10の縁の強度の観点から、0.15MPa以上が好ましい。釘・ねじ留めを行わない場合における前記独立気泡構造の発泡体の特に好ましい具体例として、ポリエチレンフォームを挙げることができる。
【0021】
一方、前記枠状部材21の部分で釘・ねじ留めを可能にする場合、前記枠状部材21を構成する独立気泡構造の発泡体は、密度0.3〜0.8g/cm3の高密度発泡体が好ましい。密度が低すぎると釘・ねじなどが留まり難くなり、一方、密度が高すぎると吸音パネル10が重くなる。なお、この場合における独立気泡構造の発泡体の好ましい発泡倍率は、1.3倍〜4倍である。また、釘・ねじ留めを行う場合における前記独立気泡構造の発泡体の特に好ましい具体例として、ポリスチレンフォームを挙げることができる。また、前記枠状部材21における一部のみを釘・ねじ留め可能な部分とする場合には、釘・ねじ留め可能とする部分の独立気泡構造の発泡体を密度0.3〜0.8g/cm3、他の部分の独立気泡構造の発泡体を密度0.05〜0.3g/cm3としてもよい。また、必要に応じ、前記ハニカムコア11を複数分割して、その境界に密度0.3〜0.8g/cm3の高密度発泡体を中間材として設け、面材の中央にて釘・ねじ留めできるようにしてもよい。すなわち、ハニカムコアを面材と平行方向に複数としたハニカムコアで構成すると共に、前記ハニカムコア間に密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体(中間体)を配置してもよい。
【0022】
前記枠状部材21の四隅(軽量ハニカムコアパネルの四隅に相当)は、面取りを行ってもよい。前記枠状部材21の木口(外側横面)41の成形方法としては、真空成型、ポストフォーム、ダイレクト・ポストフォーム、ソフトフォーム、ソフト・ラミネート、エッヂ・バンディング(ストレート、ラウンド)、転写、袋貼り、Jカット、Vカット、打ち込み、ダイレクト印刷、塗装、樹脂盛などが挙げられる。
【0023】
前記面材31は、非通気性のシート材で構成される。非通気性のシート材としては、非多孔質の樹脂、ゴム・エラストマー、金属、無機材料などを挙げることができる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの樹脂シート、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属シート、セラミックスシート、不燃紙などの単独または積層したものでもよい。
【0024】
前記面材31は、前記基材11のハニカムコア及び外周の枠状部材21まで覆うことのできる大きさからなる。前記吸音面側の面材310については、前記ハニカムコア11とは非固定とされ、前記面材310の縁のみが前記枠状部材21の表面に接着等で固定されている。前記吸音面側の面材310においてハニカムコア11と非固定とされる部分は、100mm角(100m×100mmの四角形)以上が好ましく、更に好ましくは150mm角以上である。非固定部分の外周の一辺でも100mmより小さくなると共鳴による吸音効果が十分得られず、吸音域が高周波域にシフトするのみならず、吸音率も幾分低下する。吸音面側の面材310をハニカムコアに固定すると、同じサイズ例えば150mm角でも枠材のみに固定する以上に吸音域が高周波域にシフトするのみならず、吸音率も幾分低下するようになるので、吸音面のハニカムコアには面材を貼り付けない。吸音面側とは反対の裏面側の面材311については、前記枠状部材21のみならず、ハニカムコア11に対しても接着等で固定してもよい。そのように裏面側の面材311をハニカムコア11に固定すれば、吸音パネル10の強度を向上させることができる。
【0025】
また、前記吸音面側の面材310については、面密度(面重量)が低すぎると、吸音率がピークとなるピーク周波数が高周波数側にずれ、しかも吸音率が低くなる。逆に面密度が高すぎると、ピーク周波数が低周波数側にずれるものの、吸音率は低くなる。そのため、前記面材310の好ましい面密度は、0.05〜2.0kg/m2である。なお、面密度とは、単位面積当たりに占める物の重さを表す単位として定義されており、対象物の密度(g/cm3)に厚さ(cm)を掛けたものである。単位は、kg/m2、g/cm2などである。
【0026】
なお、前記枠状部材21の木口41は、前記枠状部材21の発泡体がそのままむき出しとなっていてもよい。その場合、前記枠状部材21の発泡体が前記面材31の縁部と同じ位置であってもよいし、前記枠状部材21の発泡体が、前記面材31の縁からせり出していてもよい。
【0027】
また、前記枠状部材21の木口41は、木口テープを貼着したり、樹脂あるいは金具等の木口部材を取り付けたりしてもよい。前記木口部材としては、断面コの字形状あるいは断面L字形状等、前記枠状部材21の木口41を覆うことのできる形状からなる。前記木口部材を前記枠状部材21の木口41に取り付ける際に、前記面材31の縁を木口部材と枠状部材21との間に挟み込むようにしてもよい。さらに、前記面材表面の非通気性シート材を、裏面もしくは表面の面材と枠状部材の間に折り込んで積層接着させることも可能である。
【0028】
前記ハニカムコア11、前記枠状部材21、前記面材31及び前記木口部材などの固定に用いられる接着剤は、特に限定されるものではない。例えば、酢酸ビニルエマルジョン、水性ビニルウレタンなどの水性エマルジョン系、一般樹脂、合成ゴム、ウレタン樹脂などの溶剤系、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル系などのホットメルト接着剤等の無機溶剤樹脂系が挙げられるが、耐水性向上のためには、前記溶剤系、ホットメルト接着剤等の無溶剤樹脂系のものが好ましい。また、固定には、接着剤による接着の他に、粘着剤、両面接着テープなどの粘着、溶着、融着(熱、高周波又は超音波融着等)、圧着など、公知の接合方法の中から、被接着物の材質に応じて何れかあるいは複数の方法が選択される。
【0029】
なお、本発明の吸音パネルは、前記ハニカムコアが一層(一段)のものに限られず、ハニカムコアを複層(多段)とし、ハニカムコア間と少なくとも片側(吸音側)のハニカムコアの外表面とに非通気性の面材を設け、各ハニカムコアの外周に枠状部材を設けて片側(吸音側)の面材を枠状部材にのみ固定した構成にしてもよい。
【0030】
図5に示す第2実施形態の吸音パネル10Aは、ハニカムコアが2層の例である。この吸音パネル10Aは、ハニカムコア11A、12A間と両側のハニカムコア11A、12Aの外表面とに前記非通気性の面材31A、32A、33Aを配置し、前記各ハニカムコア11A、12Aの外周には前記独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材21A、22Aをそれぞれ設け、前記枠状部材21A、22Aに前記非通気性の面材31A、32A、33Aの縁を固定し、前記片側(吸音側)のハニカムコア11Aの外表面に配置された前記面材31Aについては当該ハニカムコア11Aに対して非固定としたものである。他の面材32A、33Aについては、対応するハニカムコアに対し非固定あるいは固定の何れでもよい。他の面材32A、33Aを対応するハニカムコアに固定(例えば面材32Aについてはハニカムコア11Aとハニカムコア12Aの少なくとも一方に固定、又他の面材33Aについてはハニカムコア12Aに固定)すれば、前記吸音パネル10Aの強度を高めることができ、より好ましい。符号41A、42Aは木口である。なお、ハニカムコアの高さは、全ての層で同一とする必要はなく、各層を異ならせてもよい。
【実施例】
【0031】
・実施例1
図6に示すように、1000×700mmの作業用木板61上で、イノアックコーポレーション社製ポリエチレン発泡体、品名:PEライト・A12(密度0.12g/cm3、25%圧縮硬度0.25MPa)を幅30mm、高さ45mm、長さ910mmとした角柱材62、63と、同ポリエチレン発泡体を同幅及び同高さ、長さ550mmとした角柱材64、65の4本を枠状に接着して縦910mm×横610mm×厚み(高さ)45mmの枠状部材を形成した。次にロールコータにより、溶融したホットメルト接着剤:大日本インキ工業社製湿気反応型ウレタン系ホットメルト接着剤、品名:FH−300を枠状部材の上面に塗布し、木質材シート:ネルソンパイン社製、品名:MDF(1mm厚、0.75g/cm3)、平面寸法910mm×610mmからなる面材を被せて圧着接着させた。冷却後これを裏返して前記接着済みの面材を下面として、枠状部材内にハニカムコア:日本ダイスコア社製ペーパーハニカムコア(セル径12mm)を、縦850mm×横550mm×高さ45mmにして収容した。再度ロールコータにより、前記ホットメルト接着剤を前記枠状部材及びハニカムコアの上面に塗布し、前記面材を被せて圧着接着させた。
【0032】
このようにして得られたパネル中間体を900mm×600mmとなるように面取り切断し、更に片面の面材上に溶融したホットメルト接着剤:大日本インキ工業社製湿気反応型ウレタン系ホットメルト接着剤、品名:FH−300をロールコータで塗布し、塗布面にトッパン社製化粧印刷付きポリプロピレンシート(0.18mm厚)を圧着接着した。冷却後、これを裏返して前記ポリプロピレンシートを下面とし、上面の面材に溶融したホットメルト接着剤:大日本インキ工業社製湿気反応型ウレタン系ホットメルト接着剤、品名:FH−300をロールコータで塗布し、塗布面にトッパン社製化粧印刷付きポリプロピレンシート(0.18mm厚)を圧着接着し、横面を袋貼りした吸音パネルを作製した。この吸音パネルを2枚作製し、それぞれ重量を測定した。測定結果は、2枚平均で2.25kgであり、軽いものであった。また、吸音面はハニカムコアと面材が非固定であるにもかかわらず、外観、強度など、面材を全面固定した裏面と比較して遜色なかった。また、この2枚の吸音パネルを並べて1200mm×900mmとし、面材非固定側の吸音面を上にし、JIS A 1409に基づき残響室吸音率を測定した。但し、残響室容積は36m3のものを使用した。残響室吸音率の測定結果は図7に示すように、周波数250Hzを中心としたシャープな吸音ピークを示した。
【0033】
・実施例2
実施例1において枠状部材を、イノアックコーポレーション社製ポリスチレン発泡体、品名:デュラウッド・PS(密度0.5g/cm3、高さ25mm)とし、ハニカムコアの高さを25mmとした以外は同様にして、吸音パネルを得た。この吸音パネルの重量は平均2.45kgであった。また残響室吸音率の測定結果は図7に示すように、周波数400Hzを中心としたシャープな吸音ピークを示した。
【0034】
・比較例1
実施例2において、パネルの両面とも面材を枠状部材及びハニカムコアに接着した以外は同様にして吸音パネルを得た。この吸音パネルにおける残響室吸音率の測定結果は図7に示すように、吸音率が低く、しかもその中心周波数が高周波側に大きくずれたものであった。
【0035】
・比較例2
実施例2において枠状部材を使用せず、吸音面側における面材とハニカムコアの接着を、ハニカムコアの外周とその内側に設定した3筋(112.5mm間隔で各30mm幅)の部分で行った。この接着は実施例2で用いたホットメルト接着剤を使用した。この吸音パネルにおける残響室吸音率の測定結果は図7に示すように、吸音率の中心周波数が高周波にずれて、吸音率も低いものであった。また、吸音パネルの外周が柔らかく変形し易い問題があった。
【0036】
・実施例3
実施例1において、枠状部材にはイノアックコーポレーション社製、品名:PEライト・A8(密度0.06g/cm3、25%圧縮硬度0.09MPa)、幅30mm高さ18mmの角柱材を用い、ハニカムコアには日本ダイスコア社製ペーパーハニカムコア・フルート形(セル径10mm、高さ18mm)を使用し、面材にはイビデン社製メラミン系化粧シート、品名:IB−7121(0.8mm厚)を用い、枠状部材の横面(木口面)に木口テープ:パテフリ工業社製ABS(0.45mm厚)を貼り付けた以外は実施例1と同様にして、吸音パネルを作製した。この吸音パネルの重量は平均1.55kgであった。この吸音パネルに対して残響室吸音率を測定した結果、図7に示すように周波数500Hz付近を中心としたシャープな吸音ピークを持った。
【0037】
また、実施例3において、同様にして、サイズが300×150mmのものを2個作製し、次のような耐水試験法を行った。それぞれ、(1)24時間浸水後、(2)60℃、24時間放置後に24時間浸水後の各角部および300mm幅の真ん中の計6点につき、ノギスにて面材間の厚みの変化を測定した。試験前後の変化が+1%以上の場合には浸水による膨張とみなされる。測定結果は、6点いずれも膨張率が小さく浸水は認められず耐水性良好であり、(1)平均0.12%、(2)平均0.05%であった。
【0038】
・比較例3
実施例3において枠状部材にパーティクルボード:新秋木工業社製、品名:U−18(密度0.68g/cm3、高さ18mm)を用いた以外は同様にして吸音パネルを作製した。この吸音パネルの重量は2.35kgであり、実施例3に比べて重いものであった。またこの吸音パネルの残響室吸音率測定結果は図7に示すように、実施例3と同等の傾向を示した。また、耐水試験法においては、(1)24時間浸水後:3点浸水が確認された(4.2、3.6、6.3%)。(2)60℃、24時間放置後に24時間浸水後:3点浸水が確認され(7.5%、5.3%、2.9%)、耐水性に問題があった。
【0039】
・実施例4
実施例1において、枠状部材の角柱材及びハニカムコアの高さを15mmとした以外は実施例1と同様にして、910×610mmのパネル中間体を得た。次に、1000×700mmの作業用木板61上に、高さ30mmからなる前記角柱材をパネル中間体の枠状部材と同じ大きさなるように置いて別の枠状部材を形成し、この枠状部材にホットメルト接着剤を塗布した後、前記15mm高のパネル中間体の裏面を貼り付けた。冷却後、裏返して高さ30mmの枠状部材内に高さ30mmのハニカムコアを収容し、ホットメルト接着剤を塗布して、枠状部材及びハニカムコアに面材を貼付け、他は実施例1と同様にして多層構造(吸音面から面材/高さ15mmのハニカムコア//面材/高さ30mmのハニカムコア//面材、//は全面接着、/は枠状部材のみ接着を示す)の吸音パネル(900×600×45mm)を作製した。この吸音パネルの重量は2.73kgであった。また、残響室吸音率を測定した結果、図8に示すように、周波数250Hz付近を中心としたシャープな吸音メインピークとともに、630Hz付近にサブピークを持っている。
【0040】
・実施例5
実施例1において、枠状部材の低密度発泡体、イノアックコーポレーション社製、品名:PEライト・A12の縦910mmの上部及び下部のそれぞれ50mm分につき、高密度発泡体:イノアックコーポレーション社製、品名:デュラウッド・PS(比重0.5g/cm3)
幅30mm、高さ45mmの角柱材に置き換え、また、裏面材には遮音材として15mm厚の木質材シート:品名:ネルソンパイン社製MDF(1mm厚、0.75g/cm3)を貼付けた以外は、実施例1と同様にして、吸音パネルを2枚作製した。残響室に2枚並べて立て吸音率を測定した結果、図8に示すように、実施例1とほぼ同様な吸音ピークとなった。
【0041】
<現場評価結果>
図9の見取り図に示す間取りからなる部屋の一角に設けられた機器設置スペース(2500mm×6100mm)に集塵機、木材破砕機が配置され、集塵機、木材破砕機の稼働時における屋外工場門の測定点での騒音レベルがオールパス61.0dBA、250Hz:55.3dBAである工場において、機器周辺の壁面に以下のように実施例及び比較例の吸音パネルを貼り付けて、騒音レベルを測定した。なお、騒音レベルが高い主因は集塵機であり、特に250Hzにシャープな騒音ピークを発生していることがわかった。騒音レベルの測定方法は、環境庁告示第64号「騒音に係る環境基準について」に基づき、等価騒音レベル(LAeq)にて行った。
【0042】
・比較例A
機器周辺の3方向の壁一面(5段、天井までの高さ約4000mmのうち高さ約3000mmまで)に、イノアックコーポレーション社製ウレタンフォーム、品名:カームフレックスF2、厚み50mm(図8のグラフの比較例4)を両面テープにて貼り付け、また機器設置スペースと他のスペースとの境界(6100mm)には、2mm厚の塩ビカーテンを設置した。しかしながら、騒音レベルの測定結果は、図10のグラフ及び図11の表に示すように、オールパス、250Hzともに対策実施前から変化は認められなかった。
【0043】
・実施例A
比較例Aに対し、機器周辺の3方向の壁一面の2,3段目を、実施例1の吸音パネルに置き換えた。その結果、図10のグラフ及び図11の表に示すように、250Hzで約4dB、オールパスにて約2dBの低減効果があった。
【0044】
・実施例B
比較例Aに対し、機器周辺の3方向の壁一面の2,4段目を、実施例1の吸音パネルに、3段目を実施例4の2層品の吸音パネルに置き換え、更に、機器設置スペースと他のスペースとの境界(6100mm)における2400mm分は塩化ビニル樹脂カーテンに代えて、実施例5の吸音パネルを吸音面が内側となるようにして、それぞれの4端部に木ねじを付けながら固定して壁化した。その結果、図10のグラフ及び図11の表に示すように、250Hzで約6dB、オールパスにて約3dBの低減効果があった。なお、測定点の直線上には吸音パネルを配置できなかったため、測定点における騒音レベルの低減は、吸音パネルの反射音の低減の分と考えられ、その数の多い実施例Bの方が反射音の低減効果が高かったことがわかる。
【0045】
なお、実施例1,4の吸音パネルにおける4端部では木ねじがややぐらぐらするため壁として機能させるための固定が難しかったが、実施例5の吸音パネルでは枠状部材の内面を高比重発泡体としたため強固な木ねじ保持力となり、連結金具で固定しながらがっちりとした壁とすることができた。
【0046】
このように、本発明の吸音パネルは、500Hz前後以下の低周波数領域で高い吸音率を発揮することができ、しかも厚みが薄いものである。なお、必要に応じ、厚み・面材厚みの異なるものを並べたり、多層化したり、前面に多孔質吸音材を付着するなどにより広い周波数対応も可能である。しかも、ハニカムコアの外周を囲む独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材に面材が固定されているため、端面剥離を防ぐことができる。また、枠状部材を構成する独立気泡構造の発泡体は、木枠と比べると密度が低いため、ハニカムコアの特徴である軽量性を損なうことがない。さらに、枠状部材を構成する独立気泡構造の発泡体は、独立気泡構造によって水分の含浸が防止されるため、枠状部分の吸水に起因する捻れや変形を生じるおそれがない。
【0047】
さらに本発明の吸音パネルは、枠状部材の少なくとも一部に密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体を設けることにより、その部分で釘・ねじ留めが可能となる。そのため、外周の金属枠などを取り付けることなくても、直接釘・ねじ留めはできるため、軽量かつ容易かつ安価な取り付けが可能となる。なお、軽量なため、薄厚品や小サイズ品では接着剤、両面テープ、面ファスナー、ビス留めなどでも取り付け固定が可能となる。
【0048】
本発明の吸音パネルは、以上の利点を生かし、不燃紙・アルミ素材などにより不燃・難燃特性も満足するので、例えば、建設機械のファンなどの騒音対策、工場における集塵機、空調機など各種モーター機械騒音対策、電気機器類の騒音対策、鉄道・新幹線などのデッキ、パンタグラフでの騒音対策、建物の壁・天井・床の防音材、オフィス・トイレなどの仕切り壁、道路・空港などの防音壁などとして好適に活用できる。
【符号の説明】
【0049】
10、10A 吸音パネル
11、11A、12A ハニカムコア
21、21A、22A 枠状部材
31、31A、32A、33A 非通気性の面材
41、41A、42A 木口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面が開口した板状のハニカムコアの少なくとも片面に非通気性の面材を配置した吸音パネルにおいて、
前記ハニカムコアの外周が独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材で囲まれて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、
少なくとも前記片面の非通気性の面材は前記ハニカムコアに対して非固定とされていることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
前記ハニカムコアを複層とし、前記ハニカムコア間と少なくとも片側のハニカムコアの外表面とにそれぞれ前記非通気性の面材を配置し、
前記各ハニカムコアの外周には前記枠状部材がそれぞれ設けられて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、
少なくとも前記片側のハニカムコアの外表面の前記面材は当該ハニカムコアに対して非固定とされていることを特徴とする請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記枠状部材の少なくとも一部が密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音パネル。
【請求項1】
両面が開口した板状のハニカムコアの少なくとも片面に非通気性の面材を配置した吸音パネルにおいて、
前記ハニカムコアの外周が独立気泡構造の発泡体からなる枠状部材で囲まれて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、
少なくとも前記片面の非通気性の面材は前記ハニカムコアに対して非固定とされていることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
前記ハニカムコアを複層とし、前記ハニカムコア間と少なくとも片側のハニカムコアの外表面とにそれぞれ前記非通気性の面材を配置し、
前記各ハニカムコアの外周には前記枠状部材がそれぞれ設けられて該枠状部材に前記非通気性の面材が固定され、
少なくとも前記片側のハニカムコアの外表面の前記面材は当該ハニカムコアに対して非固定とされていることを特徴とする請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記枠状部材の少なくとも一部が密度0.3〜0.8g/cm3の独立気泡構造の発泡体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−26815(P2011−26815A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172803(P2009−172803)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]