説明

吸音抵抗パネル及びその製造方法

本発明は吸音パネル及びその製造方法に関し、その吸音パネルの製造に有益な組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音パネル及びその製造方法、並びに前述の吸音パネルの製造に有益な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性バインダーの組成物は、複合構造物を形成するために益々他の材料と組み合わせて使用されている。これらの構造物は、異なる厚みの層からなる水硬性バインダーの組成物と多種の繊維状材料とを典型的に含む。繊維状材料がシート状材料に成形されて水硬性バインダー組成物の外側表面に置かれる場合、それはフェイサーと呼ばれる。繊維状材料が水硬性バインダー組成物を覆う場合、内側要素はコアと呼ばれる。
【0003】
パネル(又はボード)は、とりわけ石膏プラスターである水硬性バインダーに基づくコアを覆う、紙のような、一般的にかなりの引張強度を有する2枚のフェイサー材料のシートから形成される。所定形状の品物にモールドされる音響絶縁への使用では、他のタイプのパネルはフェイサーを必要としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2005/0219938
【特許文献2】US4,565,647
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】X.Olny,R.Panneton,及びTran-van,多孔質材料の固有パラメータを決定するための間接的音響方法、InPoromechanics II,Actes de la 2nde conference de BIOT,2002
【非特許文献2】J.Acoust.Soc.Am.22(2),pp.263-269,1950.
【非特許文献3】L.L.Beranek LL.Noise Reduction. NewYork:McGraw-Hill;1971(チャプター13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
両方のケースにおいて、コアを形成するために使用されるスラリーへ例えば空気を導入することによりコアを軽量化することは望ましい。コア中に導入された空気は泡の形状にて現れる。浸出するまで空気を導入するにより、ボードの吸音性が向上することが知られているが、物理的耐性を低下させることも知られている。従って、吸音性及び物理的満足性を共に有するボードを産出することは困難である。
【0007】
結果として、音響及び物理的な観点から満足のいく性質を有するボード、特に石膏ボード、及びそのようなボードの生産方法が要求される。このように、吸音性及び圧縮耐性を有する石膏プラスターに基づくボードが依然要求される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記組成を有するパネル及びスラリーをも提供する。
【0009】
本発明の第1の目的は、
少なくとも水硬性バインダー及び発泡剤を含有し、
空隙率≧0.55;
10000〜200000N.s.m−4の流れ抵抗;
1.2〜3.4の迷路度;
10μm〜60μmの粘性特性長;
60μm〜1000μmの熱的特性長を有し、
修正されたASTM C472による測定にて、少なくとも0.30MPaの圧縮強度を有する組成物を提供することにある。
【0010】
本発明は、少なくとも水硬性バインダー及びグリコシド化合物を含有するコアを有する吸音パネルにも関する。
【0011】
本発明は、
a)水硬性バインダーと水とを前混合する工程、
b)グリコシド化合物を添加する工程、
c)工程b)にて得られたスラリーに空気を注入して混合する工程、
d)通気されたスラリーを流し込む工程、
e)流し込まれたスラリーを固める工程、を有する吸音パネルの製造方法にも関する。
【0012】
そして最後に、本発明は、少なくとも本発明に係るパネル、コーティング、及び固定システムを有するアセンブリに関する。
【0013】
本発明は、上述の不都合を解消することを可能とする。特に本発明は水硬性バインダーに基づく、吸音性及び圧縮耐性を有するボードを提供する。
【0014】
実施形態によれば本発明はまた次の利点を有する。
【0015】
再利用可能な原材料(例えばコーン又はポテトスターチから得られるグルコシド、及び、例えばココナッツ又はパーム核油から得られる自然の脂肪アルコール)から得られる発泡剤が使用される。
【0016】
本発明の対象物の良好な吸音性能により、音響面への適用が有益になる。
【0017】
それに加え、改良された取り扱いに結果的に見いだされる、本発明に係るパネルのコアの圧縮強度である。圧縮強度は、移動段階及び取り付け段階において重要でもある。パネルのコアを覆うフェイサーは、コアがつぶれない限り大半の曲げ強度を提供する。本発明の音響コアの高い圧縮強度により、運送中での改善された剛性及び標準のスクリューで支持された場合の更なる耐性を有するパネルが得られる。
【0018】
驚くべきことに、本発明の組成は、接種後の表面でのかびを成長させない。このように、本発明は、しばしば高価であると共に健康についての関心事である防かび剤の添加を実質的に避ける。
【0019】
本発明に係るパネルのコアの圧縮強度は、結果として表面欠陥に対する改善された耐性をもたらす。特に、吸音天井へ適用されると低角度光により頻繁に照らされる。化粧パネルにおける跡は、建築家及びインテリアデザイン専門家にとって満足できない天井の見苦しい影を引き起こす。このような欠陥は本発明によって低減されるだろう。
【0020】
“吸音パネル”なる表現は、音響学的に吸収性の多孔質のパネルと理解される。それはパネルの多孔質構造の内側で音のエネルギーを消散させることができるパネルを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、以下の記述によって限定されることなく詳細に説明される。第1の実施形態では、本発明は、
少なくとも水硬性バインダー及び発泡剤を含有し、
空隙率≧0.55;
10000〜200000N.s.m−4の流れ抵抗;
1.2〜3.4の迷路度;
10μm〜60μmの粘性特性長;
60μm〜1000μmの熱的特性長を有し、
修正されたASTM C472による測定にて、少なくとも0.30MPaの圧縮強度を有する組成物である。
【0022】
第2の実施形態では、本発明は、上記の組成物を有するスラリーである。
【0023】
〈本発明で使用される原材料〉
本発明に係る組成物又はスラリーは、水硬性バインダーを含有する。水硬性バインダーは水にて固まる材料である。好ましくはプラスター、スタッコ、硫酸カルシウムヘミ水和物、又は硫酸カルシウムセミ水和物(又は無水石膏)とされる水和可能な焼き石膏である。当業者に公知の方法で焼成される前のプラスターの原料は、自然物又は合成物であり、合成物が好ましい。
【0024】
水和可能な焼き石膏の材料は、一般的には5〜100μmの平均粒径の微粒子パウダーである。発明の詳細形態は、特に即硬性の水硬性バインダーを意図しており、それは30分以内、好ましくは20分以内、より好ましくは10分以内の硬化時間を有する。本発明組成物において最も好ましく使用される水硬性バインダーは、水和可能な排煙脱硫プラスター(FGD)である。
【0025】
FGD石膏プラスターの利点は、中でも、より高純度で、より均一且つ微細な粒径で、明るい色彩且つ研磨粒子を有しないことである。より高純度であることは、単位重量あたりの水硬性バインダーが自然の低純度の石膏プラスターよりも一般的に改善された強度を有することに結果として現れる。均一で微細な粒径により、硬化時間の間、均一且つ完全に焼成される。明るい色彩により、審美的な満足性が得られる。石膏プラスター中に研磨粒子を有しないことは、運搬要素及び混合部品の摩耗を抑制する。
【0026】
本発明に係るスラリーは水を含有する。硬化前のスラリー中の最終段階の水/プラスター(W/P)比は、好ましくは0.3〜0.9であり、より好ましくは0.45〜0.75であり、最も好ましくは0.55〜0.65である。
【0027】
本発明に係る組成物又はスラリーは発泡剤を含有する。本発明に係る発泡剤により、水硬性バインダーを含有する組成物を発泡させることができる適切な化合物又は界面活性剤が理解される。
【0028】
本発明における適切な発泡剤は、親水性/脂溶性バランス、即ちHLBが5〜18、好ましくは7〜15、より好ましくは9〜13である非イオン性発泡剤である。
【0029】
本発明における適切な発泡剤は好ましくはアルキルポリサッカリドである。本発明に適切な発泡剤であるアルカリポリサッカリドは、8〜22炭素原子、好ましくは約10〜約16の炭素原子、最も好ましくは12〜14の炭素原子を有する疎水基を有し、ポリサッカリド親水性基は1〜10のサッカリド単位(即ち、ガラクトシド、グルコシド、フルクトシド、グルコシル、フルクトシル、及び/又はガラクトシルユニット)を有する。
【0030】
好ましくは、本発明における適切な発泡剤としてのアルキルポリサッカリドは、4〜22、好ましくは4〜16、より好ましくは8〜12の炭素原子を有するアルキルポリグルコシドである。
【0031】
本発明の組成物又はスラリーは、発泡剤と述べたが、グリコシド化合物(これは複数のグリコシド化合物の混合物を充足することを意図する)を含有する。
【0032】
本発明においてグリコシド化合物という言葉は、非糖部分(アグリコン)に結合する糖部分(グリコン)を含有する全ての化学化合物を意味する。グリコンは1つ又は複数の糖部分を有する。1つ以上のユニットが平均して存在するなら、グリコシド化合物はポリグリコシドとされる。グリコシド化合物は、(ポリ)フルクトシド化合物(グリコンがフルクトースに基づく場合)、(ポリ)ガラクトシド化合物(グリコンがガラクトースに基づく場合)、(ポリ)グルコロニド化合物(グリコンがグルコロニック酸に基づく場合)等である。好ましくはグリコシド化合物はグルコシド又はポリグルコシド、即ちグルコースに基づくグリコシドである。
【0033】
グリコシド化合物は、US4,565,647の欄1の1.36−55に定義されている一般式RO(RO)を有するアルキルポリサッカリドでもあり、また特に一般式RO(C2nO)(Z)を有する化合物としてUS4,565,647の欄2の1.25−欄3の1.57に記載されているアルキルポリサッカリドである。
【0034】
本発明の一つの実施形態によれば、発泡剤の一般式はR−O−(C10−OHであり、ここでRは4〜22の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜3好ましくは1〜2の整数である。好ましくは、Rは8〜12の炭素原子を有するアルキル基である。
【0035】
本発明の一つの実施形態によれば、発泡剤は下記の式を有する。ここで、nは1〜3の整数であり、好ましくは1〜2である。
【0036】
【化1】

【0037】
グルコポンファミリーにおいてコグニス社製の分子は特に適切であり、とりわけグルコポン600CSUP又はグルコポン215CSUPが適切である。本発明に有益な発泡剤の具体例は、アルキルポリグルコシド、ベタイン、アミン酸化物、アルキルポリサッカリド、アルキルエーテル硫酸塩、アルコールエトキシレート、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩である。
【0038】
アルキルエーテル硫酸塩のような、Huntsmanによって販売された発泡剤、特にMillifoam、とりわけMillifoam Cもまた特に適切である。本発明の組成物又はスラリーは、好ましくは0.1〜2.0wt%(水硬性バインダーの重量に対する重量)のアルキルエーテル硫酸塩(複数のアルキルエーテル硫酸塩化合物の混合物を充足することを意図する)、特に0.25〜0.8wt%のアルキルエーテル硫酸塩、更に特に0.30〜0.60wt%のアルキルエーテル硫酸塩、そして好ましくは0.35〜0.50wt%のアルキルエーテル硫酸塩(水硬性バインダーの重量に対する重量)を含有する。
【0039】
有利なことに、上述したグリコシド化合物は、本発明における組成物又はスラリーに使用される唯一の発泡剤又は界面活性剤である。換言すれば、組成物又はスラリーは、好ましくは実質的に他の発泡剤及び界面活性剤を含有しない。一つの実施形態において、グリコシド化合物は界面活性剤化合物の重量で90%以上、有利には95%以上を示す。一つの実施形態において、界面活性剤も発泡剤も他に含まれない。他の発泡剤及び界面活性剤の不存在とは、組成物における他の発泡剤及び界面活性剤の0.01wt%未満(好ましくは0.001wt%未満)の場合を充足する。
【0040】
本発明の組成物又はスラリーは、好ましくは0.1〜2.0wt%(水硬性バインダーの重量に対する重量)のグリコシド化合物(これは複数のグリコシド化合物の混合物を充足することを意図する)、特に0.25〜0.8wt%のグリコシド化合物、更に特に0.30〜0.60wt%のグリコシド化合物、そして好ましくは0.35〜0.50wt%のグリコシド化合物(水硬性バインダーの重量に対する重量)を含有する。
【0041】
本発明の組成物又はスラリーは、凝集体及び/又は充填物及び/又はその他の無機材料をも含有する。充填物の具体例は、ヒュームド・シリカ、飛散灰、高炉スラグ、ミクロシリカ、及び微粉石灰岩である。適切な凝集体の具体例は、軽量バーミキュライト、シリカ、石灰岩砂、真珠岩、ミクロスフェア、及び膨張頁岩である。
【0042】
遅延剤/促進剤対のような組成物又はスラリーの性質に影響を与える添加剤は、本発明において有利に使用される。遅延剤/促進剤対の具体例は、標準的なタンパク質プラスター遅延剤/ボールミル促進剤(BMA)である。
【0043】
当技術分野で伝統的に使用される全ての添加剤、特にこれらに限定されるわけではないが、増粘剤又は粘度調整剤又は流動化剤のような添加剤が、本組成物又はスラリーにて使用されうる。添加剤の範囲は、当業者によって予想される広範なものである。
【0044】
機械的及び/又は審美的性質を向上させるため、当技術分野にて公知の樹脂が本発明の組成物又はスラリーに添加される。単独又は組み合わせて有益な樹脂の具体例は、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、フッ素ポリマー及びこれらの混合物である。これらの樹脂は、スチレンブタジエン共重合体、スチレンアクリル酸共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体及びアクリル酸共重合体のように、共重合体又は他の結合により組み合わせられる。
【0045】
本発明の組成物又はスラリーは、増粘剤(安定剤とも言われる)をも含有する。増粘剤は、マトリクス中の水の粘度の増加又は発泡剤によって形成される泡の安定化に効果的である。ポリビニルアルコールは適切な泡安定化剤であると当業者に評価される。
【0046】
本発明の組成物又はスラリーは、例えば水溶性粘度調整剤のような粘度調整剤をも含有する。具体例は、高分子(セルロース誘導体、ポリアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリル酸、その共重合体及び三元重合体)、粘度(改良物/自然物)、ヒュームド・シリカ、疎水性が修正された又は表面改質された添加剤である。
【0047】
本発明の組成物又はスラリーは、水/焼き石膏比を最小限にするために石膏プラスターに有益に導入される流動化剤をも含有する。流動化剤(減水剤又は可塑剤とも呼ばれる)は、スラリーの流量を増加させるため、水溶性の石膏プラスターに添加(ポンプ経由にて)される。このような流動化剤の具体例としては、ポリカルボキシレートエーテルのようなカルボン酸塩がある。好ましい添加剤はポリカルボキシレートエーテル又は同種のものである。
【0048】
本発明の組成物又はスラリーは、水硬性バインダーが水により固まることを停止させるために好ましくはスラリー中に導入されるブロッキング試薬を含有する。ブロッキング試薬は、カルシウム封鎖試薬とも言われ、スラリーの流量を増加させるため水溶性石膏プラスター中の減水剤として機能する。カルシウム封鎖機能を有する適切な生成物が使用される。ブロッキング試薬は、非ブロッキング試薬と対で典型的に使用される。典型的なブロッキング試薬/非ブロッキング試薬対は、ポリアクリル酸ナトリウム/硫酸アルミニウム及びホスホン酸ナトリウム/硫酸亜鉛である。
【0049】
本発明はファイバーの不存在下にて実施される。ファイバーが不存在であるとは、重量にて0.01%未満(水硬性バインダーの重量に対する重量)、好ましくは0.001%未満(予期せぬ不純物のみ)、好ましくは全くファイバーを含有しないことを意味する。ファイバーは当技術分野で典型的に使用される全てのファイバーである。“ファイバーの不存在”とは、セルロース系材料の存在、特に本技術分野において典型的に使用される再生材料由来のセルロース系材料を除外しない。有利なことに、特定の実施形態では、本発明の組成物又はスラリーはファイバーを含有しない。
【0050】
本発明の組成物は、音を吸収するために組成物中に導入された空気の細孔を有する。空気の細孔の量は2つの源に由来し、それらは、水が組成物から乾燥されることで形成される水の細孔と、空気がスラリー中に注入されることで形成される空気の細孔である。
【0051】
水の細孔は空気の細孔よりも小さく、より高い周波数及びより高い水/プラスター比において、音響吸収に対して僅かに貢献する。空気の細孔は水の細孔よりも大きく、相互に連結することで組成物を吸音性にさせる。
【0052】
本発明によれば、《空隙率》なる文言は、空気の細孔の存在にて誘導された空隙率と、水(水の空隙)の蒸発から結果として生じた空隙率との合計を意味する。結果として空隙率の値は、空気の細孔及び水の細孔を考慮に入れることになる。
【0053】
従って、本発明の他の側面によれば、本発明の組成物は、
空隙率≧0.55;
10000〜200000N.s.m−4の流れ抵抗;
1.2〜3.4の迷路度;
10μm〜60μmの粘性特性長;
60μm〜1000μmの熱的特性長を有する。
【0054】
好ましくは、本発明の組成物によれば、
空隙率≧0.70;
50000〜180000N.s.m−4の流れ抵抗;
1.3〜2.5の迷路度;
15μm〜50μmの粘性特性長;
70μm〜500μmの熱的特性長を有する。
【0055】
より好ましくは、本発明の組成物によれば、
空隙率≧0.76;
10000〜160000N.s.m−4の流れ抵抗;
1.4〜2.3の迷路度;
15μm〜40μmの粘性特性長;
80μm〜300μmの熱的特性長を有する。
【0056】
これらの5つのパラメータは、J.F.Allard,多孔質媒体における音の伝播,エルゼビアアプライドサイエンス,1993に記載されているBiot JohnsonAllardのモデルに詳述されている。
【0057】
空隙率は上記のように定義され、空隙率はピクノメトリーによって簡単に測定される。
【0058】
流れ抵抗は、一定期間所定の面積を通過して流れる材料量である空気体積変位の速度を意味する。空気の流れに対する抵抗は、一定の層流が横切る多孔質試料の両側で測定される圧力損失に等しい。このように流れ抵抗は、流速に対する空気圧力の比に試料面積を掛けて試料厚さで割ったものに等しい。
【0059】
迷路度は、材質の内側構造の複雑さを意味する。
【0060】
熱的特性長は、空気と剛体フレームとの熱交換を特徴づける。これは熱交換に伴う空隙の有効的サイズの測定である。石膏コアでは、これは泡サイズに直接的に関連する。
【0061】
粘性特性長は、空気と堅いフレームとの粘性相互作用を特徴づける。これは粘性相互作用に伴う空隙の有効的サイズの測定である。石膏コアでは、これは空気の細孔間の相互結合のサイズに直接的に関連する。
【0062】
特性長さ及び迷路度の測定にはいくつかの方法がある。最も正確な測定は音響モデルの分析反転にある。これらのモデルを記載している科学文献は、X.Olny,R.Panneton,及びTran-van,多孔質材料の固有パラメータを決定するための間接的音響方法、InPoromechanics II,Actes de la 2nde conference de BIOT,2002である。
【0063】
本発明の他の側面によれば、本発明に係る組成物は250〜450kg/m、特に320〜420kg/m、更に特に340〜380kg/m、好ましくは350〜360kg/mの密度であり、更に360kg/mに等価である。
【0064】
本発明に係る組成物は吸音的性質を有する。他の実施形態では、本発明は、本発明の組成物を含有するスラリーである。
【0065】
本発明の組成物又はスラリーは、吸音パネル、特に石膏ボードのコアを製造するために使用される。このように本発明は、本発明に係る組成物を含有するコアを有するパネルを提供する。このパネルは、修正されたASTM E1050−98(下記実施例3に記載)による測定にて、平均吸音(Sound Absorption Average:SAA)が少なくとも0.3、好ましくは少なくとも0.5、最も好ましくは少なくとも0.6の吸音パネルである。特に、本パネルは、修正されたASTM C472による測定にて少なくとも0.30MPaの圧縮強度を有する。更に特に、本パネルは、少なくとも0.40MPa、好ましくは少なくとも0.50MPa、更に好ましくは少なくとも0.60MPaの圧縮強度を有する。
【0066】
本発明の実施形態3は、少なくとも水硬性バインダー及びグリコシド化合物を含有するコアを有する吸音パネルを提供する。
【0067】
本発明は、少なくとも水硬性バインダー及びグリコシド化合物を含有するコアを有する吸音パネル又はボードの改良を提供する。
【0068】
好ましくは、本発明の吸音パネルの水硬性バインダーは、石膏プラスターである。より好ましくは、本発明の吸音パネルの石膏プラスターは、排煙脱硫プラスター(FGD)である。
【0069】
上述した組成物及びスラリーでは、吸音パネルは、グリコシド化合物、特にアルキルポリグリコシド又はアルキルポリグルコシドを含有する。
【0070】
好ましい実施形態では、吸音パネルは、C4〜C16のアルキルポリグリコシド又はC4〜C16のアルキルポリグルコシドを含有する。
【0071】
好ましくは、吸音パネルは、0.1〜2.0wt%のグリコシド化合物、特に0.25〜0.8wt%のグリコシド化合物、更に特に0.30〜0.60wt%のグリコシド化合物、そして好ましくは0.35〜0.50wt%のグリコシド化合物(水硬性バインダーの重量に対する重量)を含有する。
【0072】
上述したように本発明の実施形態に係る吸音パネルでは、修正されたASTM E1050−98(下記実施例3に記載)による測定にて、平均吸音(SAA)が少なくとも0.3、好ましくは少なくとも0.5、最も好ましくは少なくとも0.6である。
【0073】
特に、本発明の吸音パネルは、修正されたASTM C472による測定にて少なくとも0.30MPaの圧縮強度を有する。更に特に、本発明の吸音パネルは、少なくとも0.35MPa、好ましくは少なくとも0.40MPa、更に好ましくは少なくとも0.50MPaの圧縮強度を有する。
【0074】
特定の実施形態では、本発明の吸音パネルは、修正されたASTM C472による測定にて少なくとも0.30MPaの圧縮強度を有し、修正されたASTM E1050−98による測定にて、少なくとも0.65の平均吸音を有する。
【0075】
特定の実施形態では、本発明の吸音パネルは、修正されたASTM C472による測定にて少なくとも0.40MPaの圧縮強度を有し、修正されたASTM E1050−98による測定にて、少なくとも0.65の平均吸音を有する。
【0076】
特定の実施形態では、本発明の吸音パネルは、修正されたASTM C472による測定にて少なくとも0.50MPaの圧縮強度を有し、修正されたASTM E1050−98による測定にて少なくとも0.65の平均吸音を有する。
【0077】
本発明の組成物は吸音パネルのコアを製造するために使用される。このように吸音パネルのコアは、本発明の組成物にて形成されるか、又は、部分的に本発明の組成物にて形成され、残りが従来からあるプラスターコア組成物にて形成される。
【0078】
他の実施形態では、本発明の組成物を含有する吸音パネルは、紙、補強ジョイント、又は隣接ジョイントを有する。紙は、パネルの表面又は背面を形成するために使用される。
【0079】
本発明の他の対象物は、少なくとも本発明に係る組成物を有する音響絶縁システムである。このシステムの利点は、空洞内側に吸収材を使用すること無しに絶縁システムを改善させることである。
【0080】
本発明において“システム”なる言葉は、少なくとも一つのパネル、少なくとも一つのフレーム、及び少なくとも一つの固定部材を有するアセンブリとして理解される。
【0081】
音響絶縁システムは、本発明に係る組成物を含有するパネルを有する。
【0082】
第1の実施形態において、本発明の音響絶縁システムは、少なくとも一つのフレーム、少なくとも一つの公知の石膏ボード、及び本発明の組成物を含有する少なくとも一つのパネルを有するパーティションである。
【0083】
第1実施形態に係るこのシステムは、RW+Cで示される少なくとも5dBの改善を提供する。RW+Cは、音絶縁性についての壁又は他のビル構造物の能力を示す透過損失である。
【0084】
W+Cは、EN ISO 140 part 3−ビルのパーティション及び部材の空気伝播音伝送損失の試験測定のための標準試験手法に従って音響試験室にて測定され、そしてENISO 717 part 1−ビル及びビルの部材における音響絶縁の評価に従って音響試験室にて計算される。
【0085】
図2は、本発明に係る音響絶縁システムの一実施形態を規定する。ここで、Cはスタッドを示し、Aは公知の石膏ボードを示し、Bは本発明に係る組成物を含むパネルを示す。
【0086】
第2の実施形態では、本発明の音響絶縁システムは、少なくとも一つのフレーム、及び、少なくとも一つのボードを有するパーティションである。そのボードは、本発明の組成物を含有する少なくとも一つの層を有する。
【0087】
第3の実施形態では、本発明の音響絶縁システムは、少なくとも一つのスタッド、及び、少なくとも一つのボードを有するパーティションである。そのボードは、本発明の組成物を含有する少なくとも一つの層を有し、且つ、片面が気密性である。
【0088】
本発明における適切な気密性を有するボードは、上面コートを有する。上面コートは、ボード表面の空隙率を低下させ、表面レンダリングを仕上げる。前述の上面コートは、例えば300gr/mの標準的なレディミックス化合物、例えばラファージュのP852、にて形成される。
【0089】
“気密性”なる文言は、本発明においては、200001N.s.m−4より高い流れ抵抗を有することと理解される。
【0090】
本発明の音響絶縁システムにとって適切なフレームは、パーティションに利用できる全てのフレーム又はスタッドである。
【0091】
本発明の音響絶縁システムにとって適切な公知の石膏ボードは、パーティションに利用できる全ての公知の石膏ボードである。
【0092】
本発明の他の対象物は、本発明に係るパネル、コーティング、及び固定システムを有するアセンブリである。
【0093】
〈組成物及びパネルの製造方法〉
本発明に係る吸音パネルの製造方法は、下記の工程を有する。
a)水硬性バインダーと水とを前混合する工程
b)グリコシド化合物を添加する工程
c)工程b)にて得られたスラリーに空気を注入して混合する工程
d)通気されたスラリーを流し込む工程
e)流し込まれたスラリーを固める工程
【0094】
本発明の製造方法によれば、水硬性バインダーは石膏プラスターである。
【0095】
工程b)において添加されるグリコシド化合物は、アルキルポリグリコシド又はアルキルポリグルコシドであり、特に、C4〜C16のアルキルポリグリコシド又はC4〜C16のアルキルポリグルコシドである。
【0096】
本発明の製造方法は、更なる工程を有することが可能である。特に、工程a)は、水硬性バインダーと水及びブロッキング試薬との前混合の工程を有する。本発明の製造方法は、非ブロッキング試薬を通気されたスラリーに導入する工程を更に有することが可能である。また、工程a)は、石膏プラスターと水及び遅延試薬との前混合を含有することが可能である。そしてまた、本発明の製造方法の工程d)(通気されたスラリーを流し込む)は、通気されたスラリーをフェイサー上に堆積させる工程を有することが可能であり、その工程は、
他のフェイサーで堆積されたスラリーを覆い、
堆積されたスラリーからリボンを成形し、
リボンをパネルへカットすることを有する。
【0097】
特に、本発明の製造方法は、通気されたスラリーをモールドへ堆積する工程を有しても良い。
【0098】
本発明においては、どのような手段であれ流し込みにより形状を得る。
【0099】
本発明は、組成物及びボードの製造方法につき2つの実施形態を有するが、これらに限定されるわけではない。
【0100】
セミバッチ形態と言われる後述の実施形態では、本発明のパネルは、第1ミキサーにおいて、石膏プラスター、水、流動化剤、促進剤、及びブロッキング試薬(好ましくは、計量水中に部分的に又は全て分散している)を一緒に混合させることにより製造される。ブロックされ且つ非発泡の石膏スラリーが得られる。そのスラリーは継続的に第2ミキサーにポンプにて注入される。第2ミキサーに入れる前に、発泡剤(グリコシド化合物溶液)が継続的にスラリー中に注入される。第2ミキサー即ちエアミキサー(即ち、回転振動攪拌機)により、スラリーの通気化及び発泡化がなされる。産生された空気泡のサイズは、第2ミキサーの攪拌速度により調整される。第2ミキサーの後に、発泡スラリーは第3ミキサーに移動され、そこで非ブロッキング試薬が注入口に添加される。第4ミキサーはスラリーと非ブロッキング試薬との混合を行い、このようにして発泡スラリーは非ブロック状態(固化に関して)となる。第3ミキサーは例えば一つ又は複数の静的ミキサーであり、ゆっくりとした回転運動を有していることも可能である。次に、発泡及び非ブロック状態のスラリーが、第1フェイサー上に堆積される。第2フェイサーがスラリーの露出表面に当てられ、そのエッジが第1フェイサーに接合される。ボードの断面がプレート形成により調整され、スラリーが固まる前にコンベアーベルトにより移送される。次に間断ないボードが切断され、加熱状態で乾燥され、石膏壁板の技術分野で公知のエア壁板ドライヤーにてさらされて最終ボードが得られる。
【0101】
また、連続的実施形態と言われる後の実施形態では、パネルは、第1ミキサーにおいて、石膏プラスター、水、流動化剤、プラスターの固化を遅延させるための遅延試薬及び促進剤を一緒に混合させることにより製造される。第1ミキサーは連続ミキサーである。このようにして次に製造されたスラリーはタンク中に注ぎ込まれ、そこから第2ミキサーにポンプにて注入される。スラリーがタンク中に存在する時間は、短いことが好ましい。発泡剤(グリコシド化合物溶液)が、第2ミキサー中に注入される前にスラリー中に注入される。第2ミキサーは、上述のセミバッチ実施形態と関連して述べたのと同様の、スラリーの通気化及び発泡化を行うエアミキサーである。次に発泡スラリーは、第3ミキサー及び非ブロッキング試薬を必要とすることなく、直接にフェイサーの上に堆積される。本方法の他は、セミバッチ工程に関して上述したものである。
【0102】
好ましくは、空気化工程の間に注入される空気量は、乾燥パネルで約310kg/mの密度を得ることを認める量である。
【0103】
本発明の2つの方法のいずれかにおいて、参照文献としてその内容が導入されているUS2005/0219938に開示されているように、直接的なエア注入がなされる。パネルを製造するために使用される、内張り又はペーパーと名付けられるフェイサー材が、本技術分野における標準手法にて使用される。また、フェイサー材は、不織布マット、好ましくはガラスマット、又は他の繊維(即ち、合成繊維、又はセルロースファイバーと合成繊維との混合)にて形成されたマットである。セメント質スラリーは、フェイサー中を部分的に浸透する、又はセメント質コア中にさえ流し込まれる。
【0104】
次の工程は、当該技術分野における通常使用されるものであり、当業者により簡単に識別され実施される。即ち、第2フェイサーにてスラリーを覆い、予備成型を行い(標準的な壁板形成プレートの下を通過する)、石膏スラリーを固め(コンベアーベルトの上で支持した状態で)、固化した材料の間断ないリボンからボードを裁断し、ボードの下側を曝すためにボードを反転させ、壁板ドライヤーにてボードを乾燥させ、選択的に強化バインダーにてコーティングする。
【0105】
また、音響タイル製造の技術分野にて通常実施されるように、発泡スラリーがタイル中にモールドされる。
【0106】
本発明は、本発明に係る方法により得られた生産物にも関する。
【0107】
図1は、本発明に係る組成物の図であり、石膏コアのミクロ構造である(SEM写真)。図2は、本発明に係る音響絶縁システムの実施形態を示す。以下の実施例により限定されることなく本発明が説明される。
【実施例】
【0108】
〈実施例1−方法の第1実施形態によるパネルの製造〉
攪拌タンク(第1ミキサー)中にて、以下の材料にてスラリーが作成された。
50%石膏、40%スターチ、10%リグノスルホン酸カルシウムを含む15gのボールミル促進剤(BMA、カルパントラ工場、フランス)。BMAは共研磨により作成され、粒径サイズ分布はD10=3+/−1μm、D50=15+/−3μm、及びD90=60+/−5μmである。
9.45kgの水
24gのCoatexTP169(ポリアクリル酸塩ブロッキング試薬、Coatex製)
石膏、スターチ、及びリグノスルホン酸塩を含む15gのボールミル促進剤(BMA、オットマルシェイム工場、フランス)
35.7gのOptima100(スルホン酸塩流動化剤、Chryso社製)
363gのVinnapasCEF52W(酢酸ビニル樹脂、Wacker社製)
【0109】
このようにして得られた初期スラリーは、チューブ中の流速1L/分にてポンプにて注入された。コグニス社製のグルコポン215CSUP溶液(64重量%のアルキルポリグリコシド界面活性剤を含有する)が、61.1gのグルコポンを水にて希釈(400gのグルコポン及び600gの水)することにて得られ、それが継続的に注入ポンプにより初期スラリーの循環チューブへ注入(流速:10g/分)された。スラリー中の活性材の平均濃度は0.11%であった。
【0110】
初期スラリーは、その後、450rpmにて回転するモンドミックス(登録商標)エアミキサー(マシンタイプ:ミニモンド H1776、Haasモンドミックス(二次ミキサー)での分散では容量5〜50kg/時間)に入れられ、そこで空気が流速1.5L/分〜2.5L/分にて導入されて発泡が行われた。
【0111】
次に発泡スラリーは第3ミキサーに移動され、そこで硫酸アルミニウム溶液(非ブロッキング試薬)が添加され、継続的に発泡スラリーと混合された。硫酸アルミニウム溶液は、150g/kgの活性容量にて、85gの硫酸アルミニウム粉末にて調製された。注入速度は27g/分であった。第3ミキサーは、ケニクス社の直径20mmで垂直高さ30cmの静的ミキサーであった。ミキサーの排出口にて、スラリーが直接的にライナーの上に堆積され、二次ライナーがスラリーの上に置かれて、硬化が行われた。第3ミキサーとライナーとの距離は10cmであった。
【0112】
使用されたライナーは、ジョン・マンビル社製のFF 0.55/6であった。このライナーは、アクリルポリマー及びポリビニルアルコールポリマーの20g/mのブレンドが接着した8μmの不織ガラスマットであった。アクリル樹脂バインダーの15〜30g/mのコーティングが、乾燥後のボードに行われた。
【0113】
〈実施例2−方法の第2実施形態によるパネルの製造〉
第1ミキサー中に、粉状の前混合物が継続的に流速1kg/分にて導入された。粉状の前混合物は以下の組成からなる。
水/プラスター比が0.58である、オットマルシェイム工場(フランス)製の石膏ヘミ水和物
石膏ヘミ水和物の1kgあたり1gのボールミル促進剤(BMA)
【0114】
下記の液体内容物もまたミキサー中に導入された。
410g/分の水
57g/分のポリアクリル酸ナトリウム溶液(Coatex TP1431EXP:Coatex社製の流動化剤)。その溶液は市販の溶液の1/10倍に希釈され、活物質の重量濃度は石膏ヘミ水和物に対して相対的に0.3%であった。
市販の溶液の1kgあたり6gを含む、50g/分のタンパク質を有する天然産物溶液のブレンド(Plastretard L:Sicit Vincenza Chiampo イタリア製の遅延剤)
活物質1kgあたり100gを含む、50g/分のリーデルデ ハーン製のKSO溶液。KSOは最終的硬化及び硬質化のために用いられる。
【0115】
W/P比は0.58であった。必要な場合は強度補強溶液が添加される。スランプ試験(50mm高さ及び60mm幅リング)が行われ、スランプの直径は205〜240mmの間であった。固化時間(ナイフテストに基づく)は6.5〜7.5分の間であり、それはPlastretardの量を変更することにより調整される。ギルモア試験により9分よりも短い固化時間が示されるならば、KSOが調整される。
【0116】
このように調製されたスラリーは第1ミキサーから排出され、20mm直径及び200mm高さを有する円筒状タンクの頂上に継続的に移された。その後、チューブ中の流速1L/分にてスラリーは継続的にタンクの底へポンプにて注入され、タンク中における材料の量は一定に維持された。タンク中の平均通過時間は5秒未満であり、染色濃度進化技術による測定では、滞留時間分布は狭かった(タンクに導入されてから10秒以内でスラリーの95%がタンクを通り過ぎた)。
【0117】
コグニス社製のグルコポン215CSUP溶液(64重量%のアルキルポリグリコシド界面活性剤を含有する)が、400gのグルコポン及び600gの水にて得られ、それが継続的に注入ポンプにより初期スラリーの循環チューブへ注入(流速:13g/分)された。活物質の重量濃度は、石膏ヘミ水和物に対して相対的に0.3%であった。
【0118】
初期スラリーは、その後、300〜500rpm(好ましくは400〜450rpm)にて回転するモンドミックス(登録商標)エアミキサーに入れられ、そこで空気が流速2.5L/分にて導入されて発泡が行われた。エアミキサーの終了後、発泡スラリーがライナーの上に堆積され、第2のライナーが上に置かれた後に硬化が行われた。エアミキサーとライナーとの距離は10cm未満であり、体積の方向は水平方向であった。
【0119】
使用されたライナーは、ジョン・マンビル社製のFF 0.55/6であった。このライナーは、アクリルポリマー及びポリビニルアルコールポリマーの20g/mのブレンドが接着した8μmの不織ガラスマットであった
【0120】
〈実施例3−分析試験〉
実施例1及び2にて産出された発泡スラリーの試料が最終ミキサーの出口にて摘出された(即ち、連続工程における第2ミキサー及びセミバッチ工程における第3ミキサー)。
【0121】
所定のサンプルが20mm高さで75mm幅のカップに載置され、そこで硬化が行われた。これらの試料は機械的性能(圧縮試験)の分析のために使用されたが、ボード上の直接的な分析を行うことも可能である。荷重変位線図がプロットされ、破断前強度が測定されてそれに対応する圧力がMPaにて変換された。
【0122】
別のサンプルが100mm高さで45mm幅のカップに載置され、そこで硬化が行われた。続いて2cm高さで45mm幅のスライスが抜き取られ、石膏コアの音響特性の分析のために使用された。音響特性は、試料を垂直に横切る入射波の周波数を変化させるクントチューブ測定により評価された。そして、クントチューブにて行われる通常の入射測定が、ASTM C−423にて定義される平均吸音(SAA)評価に変換された。これは、a)材料と天井との200mmプレナムの効果が考慮に入れられて、b)計算により、通常の入射結果の変化から材料の実際の拡散場性質が予想される。この予想の補正を行う実用的手段は、例えば、ロンドン、音響インピーダンス測定による残響音吸収係数の決定、J.Acoust.Soc.Am.22(2),pp.263-269,1950.又は、L.L.Beranek LL.NoiseReduction. ニューヨーク:McGraw-Hill;1971(チャプター13)に記載されている。本発明方法はこのようにASTM E1050−98に近接しており、そのため本出願においては“修正されたASTM E1050−98”と定義される。
【0123】
SAA評価は、少量の材料のみが準備できる場合、少量の試料にて行われる。仮に大量の材料が産生される場合は、SAAは直接的に音響部屋(残響部屋とも命名される)にて評価される。より正確には、200mmのプレナムにわたって支持された金属フレームを有する3600mm×3000mmの床面が、600mmごとに支持された19.5mm厚さの本発明のパネルにて覆われた。結合部は50mm幅のプラスチックテープによりテーピングされた。全方向性の拡声器が残響部屋の所定位置に載置され、興味深い周波数帯域の継続的スペクトルを送信した。音の発生が停止したとき、音源が回転マイクロフォンにより記録される間、音の減衰が8つの異なる位置にて測定された。等価吸収域の計算は国際標準ISO354から計算され、Sabine式:A=X(V/T)を用いて定義される。ここでXは空気温度及び湿度係数(標準状態では0.16)であり、Vは立方メートルでの部屋の体積であり、Tは秒での残響時間である。吸収域の測定はA1では行われず、場所A2にて試料採取される。平方メートルでの部屋の吸収域はA1−A2である。各々の周波数帯にて、試験試料の吸音係数が計算された。α=(A1−A2)/S+αであり、ここでαはライナー単独の場合である。音響部屋では、本発明のパネルは必ずライナー又はフェイサーにて覆われるが、小さい試料は覆われない。パネルのコア及びライナーの双方の個々の特性評価により、パネルの音響性質は十分に計算できる。従って、ライナーの音響特性が公知の場合、室内で測定されたSAAと、コア及びライナーに適用された“修正されたASTM E1050−98”によるSAAの評価とは、非常に近接した結果を与える。そのため、SAAはいずれかの手法により評価された。
【0124】
機械的及び音響的結果は下記の表1に示される。各々の試料は、実施例2の連続工程に従い“C”と分類された。注入された空気量及び産物の最終密度は、連続工程における一定空気流量でのエアミキサー速度、及び、セミバッチ工程における一定エアミキサー速度での空気流量にて調整された。
【0125】
試料の圧縮強度は、修正されたASTM C472により測定された。75mmの丸い試料が脱モールドされ、重量が測定され、厚さ及び直径が測定された。厚さは少なくとも20mmであり、3回の直径測定の平均が計算された。試料は、一定重量になるまで45℃の通気オーブンにて乾燥され、ついでデシケーターにて25℃に冷却された。試料がデシケーターから取り除かれ、圧縮強度プレスプレートの中央に載置された。ロードセルが試料を検出してロードセルがゼロになるまで、クロスヘッドが試料の上まで低下させられた。弾性破損並びに可塑破損及び応力降下を通して、応力は、初期ローディングから1分間あたり4mmのクロスヘッド速度にて加えられた。応力及びクロスヘッド変位は、試料の可塑破損に至るまで0.01秒ごとに記録された。応力及びクロスヘッド変位は、弾性破損応力を決定するためにプロットされた。個々の試料に対して、グラフの直線状の可塑領域の最下点に対応する応力が、弾性破損応力とされた。ニュートンでの弾性破損応力は、平方ミリメートルでの試料面積にて割られ、MPaでの圧縮強度として記録された。
【0126】
空隙率、流れ抵抗、迷路度、熱的特性長、及び粘性特性長は下記の方法に従って測定された。X.Olny,R.Panneton,and J.Tran-van,空隙材料の固有パラメータの決定のための間接的音響手法In Poromechanics II, Actes de la 2nde conference de BIOT, 2002.
本発明は良好な機械的及び音響学的結果を同時に達成したことが結果として実証された。
【0127】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水硬性バインダー及び発泡剤を含有し、
空隙率≧0.55;
10000〜200000N.s.m−4の流れ抵抗;
1.2〜3.4の迷路度;
10μm〜60μmの粘性特性長;
60μm〜1000μmの熱的特性長を有し、
修正されたASTM C472による測定にて、少なくとも0.30MPaの圧縮強度を有する組成物。
【請求項2】
前記水硬性バインダーは、石膏プラスターである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記発泡剤は、グリコシド化合物であり、好ましくはアルキルポリグリコシド又はアルキルポリグルコシドである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記グリコシド化合物は、C4〜C16のアルキルポリグリコシド又はC4〜C16のアルキルポリグルコシドである請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、0.1〜2.0wt%のグリコシド化合物を含有する請求項3記載の組成物。
【請求項6】
前記グリコシド化合物は、唯一の発泡剤である請求項3記載の組成物。
【請求項7】
空隙率≧0.70;
50000〜180000N.s.m−4の流れ抵抗;
1.3〜2.5の迷路度;
15μm〜50μmの粘性特性長;
70μm〜500μmの熱的特性長を有する請求項1記載の組成物。
【請求項8】
空隙率≧0.76;
10000〜160000N.s.m−4の流れ抵抗;
1.4〜2.3の迷路度;
15μm〜40μmの粘性特性長;
80μm〜300μmの熱的特性長を有する請求項1記載の組成物。
【請求項9】
コアを有するパネルであって、前記コアは請求項1乃至8の何れかに記載されている組成物を含むパネル。
【請求項10】
前記パネルは吸音パネルである請求項9記載のパネル。
【請求項11】
コアを有する吸音パネルであって、前記コアは少なくとも水硬性バインダー及びグリコシド化合物を含有する吸音パネル。
【請求項12】
前記水硬性バインダーは石膏プラスターである請求項11記載の吸音パネル。
【請求項13】
前記石膏プラスターは、排煙脱硫石膏プラスターである請求項12記載の吸音パネル。
【請求項14】
前記グリコシド化合物は、アルキルポリグリコシド又はアルキルポリグルコシドである請求項11乃至13の何れか1項に記載の吸音パネル。
【請求項15】
前記グリコシド化合物は、グルコポン600CSUP又はグルコポン215CSUPである請求項14に記載の吸音パネル。
【請求項16】
前記コアは、0.1〜2.0wt%のグリコシド化合物を含有する請求項11乃至15の何れか1項に記載の吸音パネル。
【請求項17】
修正されたASTM C472による測定にて、少なくとも0.30MPaの圧縮強度を有し、かつ、修正されたASTM E1050−98による測定にて、少なくとも0.65の平均吸音率を有する請求項11乃至16の何れか1項に記載の吸音パネル。
【請求項18】
a)水硬性バインダーと水とを前混合する工程、
b)グリコシド化合物を添加する工程、
c)工程b)にて得られたスラリーに空気を注入して混合する工程、
d)通気されたスラリーを流し込む工程、
e)流し込まれたスラリーを固める工程、を有する吸音パネルの製造方法。
【請求項19】
前記水硬性バインダーは、石膏プラスターである請求項18記載の吸音パネルの製造方法。
【請求項20】
前記グリコシド化合物は、アルキルポリグリコシド又はアルキルポリグルコシドである請求項18又は19に記載の吸音パネルの製造方法。
【請求項21】
前記グリコシド化合物は、C4〜C16のアルキルポリグリコシド又はC4〜C16のアルキルポリグルコシドである請求項20記載の吸音パネルの製造方法。
【請求項22】
前記工程a)は、前記石膏プラスターと水及びブロッキング試薬との前混合を含有することを特徴とする請求項18乃至21の何れか1項に記載の吸音パネルの製造方法。
【請求項23】
非ブロッキング試薬を前記通気されたスラリーに導入する工程を包含する請求項18乃至22の何れか1項に記載の吸音パネルの製造方法。
【請求項24】
前記工程a)は、前記石膏プラスターと水及び遅延試薬との前混合を含有することを特徴とする請求項18に記載の吸音パネルの製造方法。
【請求項25】
前記通気されたスラリーの流し込みは、前記通気されたスラリーをフェイサー上に堆積させることを含み、更に、
他のフェイサーで前記堆積されたスラリーを覆い、
前記堆積されたスラリーからリボンを成形し、
前記リボンをパネルへカットすることを特徴とする請求項18乃至24の何れか1項に記載の吸音パネルの製造方法。
【請求項26】
前記通気されたスラリーをモールドへ堆積する工程を含む請求項18乃至25の何れか1項に記載の吸音パネルの製造方法。
【請求項27】
少なくとも請求項9乃至17の何れか1項に記載のパネル、コーティング、及び固定システムを有するアセンブリ。
【請求項28】
少なくとも一つのフレーム、少なくとも一つの公知の石膏ボード、及び請求項1乃至8の何れか1項に記載の組成物を含む少なくとも一つのパネルを有するパーティション。
【請求項29】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の少なくとも一つの組成物を含む音響絶縁システム。

【公表番号】特表2011−506250(P2011−506250A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537539(P2010−537539)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003757
【国際公開番号】WO2009/074875
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(303026637)
【Fターム(参考)】