説明

吸音材利用による高精度探傷方法

【課題】 被検査材から反射した反射波を吸音材を用いて吸収させることで、被検査材の内部に存在する疵を見出す超音波による検査方法を提供する。
【解決手段】 超音波探触子8から丸棒鋼7に発信する縦波の超音波の進行方向の両側部で、一定の長さの下面13aと超音波探触子8の中心方向に一定の角度で傾斜した内面14とを有する専用治具13を、超音波探触子8から発信する縦波の超音波Pの進行方向10の両側の超音波探触子8両端部8aに取り付け、この両端部8aの専用治具13の内端の向かい合う内面14に、専用冶具13の内端形状をした鋭角な凹凸面からなる表面加工部の凹凸15を有する吸音材18を貼り付け、丸棒鋼7の表面から戻ってくる反射波9を貼り付けた吸音材18で吸収または減少させて超音波探触子8が受信するゴーストエコーの擬似信号を抑制して丸棒鋼7の内部の疵を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査材、例えば鋼材の内部に存在する疵を超音波探傷により検査する際に、吸音材を利用して高精度で検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探傷における探触子は、様々な形状の被検査材の内部に存在する疵の検査に使用される。この超音波探傷では、超音波探傷装置から超音波を被検査材に放射し、その反射波を超音波探傷装置で受けて読みとることで、被検査材の内部に存在する疵を検査する。
【0003】
一般に超音波探触子8は、図3を用いて説明すると、圧電素子からなる振動子1から被検査材Wの方向へ発生する超音波の進行方向とは逆側に超音波吸収体2を有しており、他方に音響マッチング層3を備え、振動子1に電極4、4が設けられている。したがって、電極4、4に電圧を印加することにより、振動子1に逆圧電効果によるひずみが生じて縦波の超音波が発生する。音響マッチング層3が被検査材Wの表面の凹凸に接触して傷付くことを防止するために、超音波探触子8の音響マッチング層3の被検査材Wの側の表面には保護膜5が取付けてある。保護膜5と被検査材Wの間には、超音波が伝搬しやすいように、接触媒質6が満たされており、この接触媒質6を介して振動子1から放射された縦波の超音波が被検査材Wに入射する。
【0004】
一般に工場内の製造工程の中で、製造した丸棒鋼7について連続的に超音波探傷により疵を検査する場合は、丸棒鋼7の周囲に上記の超音波探触子8の振動子1の複数個を、被検査体である丸棒鋼7の径の大きさに合わせて湾曲状に並べて配列し、複数個の振動子1に電圧を一斉に印加して縦波の超音波を進行方向10の方向に発生させる。また、最近の技術では、複数個を並べて配列してある圧電素子からなる振動子1に対して、電圧を個別に印加していくことで、超音波探触子8から接触媒質内6に角度を持った縦波の超音波を発生させることができる。
【0005】
従来、断面円形の丸棒鋼7を超音波探傷する場合、次のような問題があり、これについて、図4に基づいて説明する。断面円形の丸棒鋼(以下、「丸棒鋼」という。)7に超音波探触子8から縦波の超音波を発信した際、接触媒質6を伝搬して丸棒鋼7の表面に縦波の超音波が入射する。しかし丸棒鋼7と接触媒質6の音響インピーダンスの違いおよび丸棒鋼7の表面の凹凸により、超音波探触子8から発信した縦波の超音波の全てが丸棒鋼7に入射せず、その一部の超音波が丸棒鋼7の表面で反射し、反射波9となって接触媒質6の中を伝搬し、その伝播した反射波9が、超音波探触子8から発信される縦波の進行方向10の両側に位置する超音波探触子8の両端11、11から一定の長さ内側に入り込んだ超音波探触子8の両側の内端11a、11aの部分で、再び反射され、反射波12となって接触媒質6を伝搬し、この反射波12が超音波探触子8で受信されることにより、ゴーストエコーと呼ばれる擬似信号が得られ、丸棒鋼7の内部欠陥と誤って信号処理される。このゴーストエコーの疑似信号により、内部の品質に問題がない丸棒鋼7であっても、内部の品質に問題がある丸棒鋼7として処理されてしまうことにより、丸棒鋼7の見掛けの不良率が増加し、超音波探傷の信頼性が低下することになる。
【0006】
そこで、上記のゴーストエコーによって、丸棒鋼7の内部の品質に問題があると誤って処理される事態を抑制するため、従来は、次のような対策を行っていた。これを図5の(a)に基づいて説明すると、超音波探触子8からの縦波の進行方向10の両側に位置する超音波探触子8の両端11、11から一定の長さ内側に入り込んだ超音波探触子8の両側の内端11a、11aにプラスチックなどの樹脂からできた専用冶具13、13を取り付ける。この専用冶具13、13は、丸棒鋼7に発信する縦波の超音波の進行方向10、10の側において、超音波探触子8の両端11、11から両側の内端11a、11aまでの一定の長さの部分に配設されており、さらに、これらの専用冶具13、13の向かい合う内面14、14は、超音波探触子8の中心方向に一定の角度傾いて設けられている。さらに、この専用冶具13、13の向かい合う内面14の表面には、図5の(b)に示すように、超音波探触子8から丸棒鋼7に発信する縦波の超音波の進行方向10の側に、鋭角な凹凸15、15、・・が一定間隔で加工してあり、丸棒鋼7から反射した反射波9が専用冶具13の表面の鋭角な凹凸15、15、・・に当たり、その反射波12の方向が散乱することで、ゴーストエコーの発生を抑制する対策を行っていた。
【0007】
しかしながら、上記のゴーストエコーの発生を抑制する対策では、専用冶具13の表面に加工してある鋭角な凹凸15で反射波9が散乱し、散乱して生じた反射波12が多方向に進んで接触媒質6を伝搬するため、超音波探触子8で受信されなくできるとは言い切れない問題があった。
【0008】
さらに、従来から公知文献により「超音波探触子」が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この公知文献の技術は、超音波探触子の音響マッチング層として、外面に耐摩耗性導電層が形成されたアルミナ層を用い、アルミナの絶縁抵抗が高いことから、圧電振動子と音響マッチング層側の電極を信号用電極として使用することもでき、超音波吸収体として絶縁抵抗の低い材料を用いた場合でも、超音波吸収体に接する側の電極を共通アースとして用いることにより、個別に圧電振動子を駆動することができ、擬似信号の発生を抑えることができるというものである。
【0009】
また、耐磨耗性導電層は、超音波探触子を保護するとともに、電磁シールド層の役割をも果たし、アルミナ層の側に信号用の電極を配置しても、超音波探触子から発生する電磁波を外部に漏らすことなく、また外部から侵入するノイズをも遮断することができるというものである。内部から発生する擬似信号および電磁波の抑制としては、有効な方法である。しかし、外部の被検査体で発生した反射波よって生じるゴーストエコーについては何らの記載もなく、したがって、この特許文献1の方法をゴーストエコーを抑制する方法として適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭60−69548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上記した従来の方法のように、超音波探傷において、超音波探触子8の下面で、超音波探触子8の両端11から内側に入り込んだ部分に取り付けた専用冶具13の表面に加工してある鋭角な凹凸15の部分で、外部の被検査材Wすなわち丸棒鋼(以下、「被検査材Wすなわち」を省略して「丸棒鋼」という。)7から反射した超音波の反射波9を散乱させることなく、丸棒鋼7から反射した反射波9を吸音材18を用いて吸収させることで、丸棒鋼7の内部に存在する疵を見出す検査方法を提供することである。
【0012】
この課題について、図4に基づいて詳述する。超音波探触子8の内部に湾曲して配列した図示しない複数の振動子1(なお、「振動子1」は図3に示されている。)から発信される縦波の超音波は、一般的には、ある一定の高い周波数として用いられ、波の性質を持って伝搬する。この周波数が高ければ、縦波の超音波の一波長の長さに見合った丸棒鋼7の内部の小さな欠陥の検出も可能である。しかし、超音波はその周波数の高い分だけ小さな物質によって散乱してしまうため、超音波探触子8の内部に湾曲して配列している複数の振動子1から発信される縦波の超音波を丸棒鋼7の表面に対して垂直に入射させたとしても、ミクロ的に見ると丸棒鋼7の表面には微細な凹凸が存在するので、超音波探触子8から発信された全ての縦波の超音波は丸棒鋼7の表面に対して垂直に当たらない。このため縦波の超音波の一部は丸棒鋼7の内部へ入射されず、丸棒鋼7の表面で散乱して反射する。また、接触媒質6と丸棒鋼7のように、材質が異なれば、その音響インピーダンスも異なり、接触媒質6と丸棒鋼7の境界面Fでは、境界面Fを透過する縦波の超音波の透過量に制限が生じ、透過できなかった縦波の超音波の一部は熱に変換されることとなる。
【0013】
また、上記のように丸棒鋼7の表面で反射して散乱した反射波9(なお、超音波のモード変換により縦波の超音波が一度でも反射および屈折すると、縦波の超音波でなく横波の超音波にもなるが、接触媒質6が液体である場合、液体の中では横波の超音波は発生しない。)の一部は、丸棒鋼7の表面から超音波探触子8の方向へ接触媒質6を伝搬して戻って、超音波探触子8の両側に位置する内端11a、11aに到達する。ミクロ的に見ると超音波探触子8の両側の内端11a、11aの表面にも微細な凹凸があるので、丸棒鋼7の表面と同様に、さらに一部は反射して散乱する。超音波探触子8の両側の内端11a、11aで反射することなく超音波探触子1の内部に超音波が入射しても、内部で拡散するなどのため影響はないが、超音波探触子8の両側の内端11a、11aで反射した一部の超音波は超音波探触子8で受信され、ゴーストエコーと呼ばれる擬似信号となってしまう。したがって、超音波探触子8の両側の内端11a、11aから反射し、超音波探触子8に受信される擬似信号を抑制するためには、超音波探触子8の両側の内端11a、11aからの反射波12を無くすか、あるいは減少させる必要があり、超音波探触子8の両側の内端11a、11aからの反射波12が無くならないことには、擬似信号が超音波探触子8で受信される可能性が残り、高精度な探傷ができないことになる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、超音波探傷法において、超音波探触子8から発信された超音波が外部の丸棒鋼7から反射した反射波9を吸音材18で吸収または減少させるように、超音波探触子8の両側の内端11a、11aに取付けた表面に鋭角な凹凸15を加工した専用冶具13を吸音材18で作成することにより、ゴーストエコーの疑似信号の発生を抑制する。ところで、超音波は波の性質を持っているので、図1のように、音響インピーダンスZ1の媒質と音響インピーダンスZ2の媒質ように、異なる音響インピーダンスの媒質の境界面Fでは、音響インピーダンスZ1の媒質を伝搬してきた超音波Pが、境界面Fを透過する透過波Ptと境界面Fで反射する反射波Prになる。このように音響インピーダンスは、媒質の密度と、媒質の内部を伝搬する超音波の速度により決定されるので、音響インピーダンス媒質によっては一義的に決定される。しかし、現実的に接触媒質6と同等の音響インピーダンスを有する媒質が存在しないため、スポンジなどの吸音材18を接触媒質6に用いることによって、音響インピーダンスが異なる境界面Fであっても超音波Pがある程度スポンジなどの吸音材18で吸収され、境界面Fにおける反射波Prが少なくなる。
【0015】
そこで、上課題を解決するための本発明の手段は、第1の手段では、超音波探触子8から被検査材Wの丸棒鋼7に発信する縦波の超音波の進行方向の両側部で、一定の長さの下面13aと、超音波探触子8の中心方向に一定の角度で傾斜した内面14とを有する専用治具13、13を、超音波探触子8から発信する縦波の超音波の進行方向10の両側の超音波探触子8、8の両端部8a、8aに取り付け、この両端部8a、8aの専用治具13、13の内端である互いに向かい合う内面14、14に、専用冶具13の内端形状と同形状の鋭角な凹凸面からなる表面加工部の凹凸15を一定間隔で有する吸音材18を貼り付け、丸棒鋼7の表面から戻ってくる反射波9、9を貼り付けた吸音材18で吸収または減少させて、超音波探触子8が受信するゴーストエコーの擬似信号を抑制して丸棒鋼7の内部の疵を検査する、吸音材18を利用した高精度探傷方法である。
【0016】
すなわち、この方法は、縦波の超音波が、例えば図2に示す超音波探触子8の縦波の超音波の進行方向の両側の内端11a、11aである専用治具13の内端11a、11aの部分から反射しなくするためまたは減少するために、専用冶具13と同じ形状からなる鋭角な凹凸15を加工して表面に有する構造とした吸音材18で作成し、これを専用冶具13の向い合う内面14、14に取り付け、図4に示すように、丸棒鋼7の表面から超音波探触子8の縦波の進行方向の両側にある内端11a、11aの部分に戻ってくる反射波9、9を吸収または減少させて、超音波探触子8が受信するゴーストエコーの擬似信号を抑制して丸棒鋼7の内部の疵を検査する、吸音材18を利用した高精度探傷方法である。
【0017】
さらに、第2の手段は、超音波探触子8の縦波の超音波の進行方向の両側の内端11a、11a以外の縦波の超音波が反射する可能性がある湾曲部16、16に対して、スポンジなどの吸音材18の表面を、これらの湾曲部16に副って並行するように、加工して貼リ付け、超音波探触子8の縦波の超音波を送受信する部分17以外は、これらの吸音材18で隙間なく埋め、超音波探触子8の湾曲部16、16に、丸棒鋼7の表面から戻ってくる反射波9、9を吸音材18により吸収または減少させて、超音波探触子8が受信するゴーストエコーの擬似信号を抑制して丸棒鋼の内部の疵を検査する、吸音材を利用した高精度探傷方法である。
【0018】
すなわち、スポンジなどの吸音材18であれば、超音波探触子8の縦波の超音波の進行方向の両側の内端11a、11aが複雑な形状をしていても、加工が容易であり、超音波探触子8の両側の内端11a、11aに対して接着剤などで貼リ付けることが可能である。したがって、図2のように超音波探触子8の両側の内端11a、11a以外の湾曲部16の縦波の超音波が反射する可能性がある部分に対して、吸音材18の表面を湾曲部16に沿う形状に加工して湾曲部16に並行に貼リ付け、超音波探触子8の縦波の超音波を送受信する部分17以外の湾曲部16を吸音材18で隙間なく埋めることで、超音波探触子8の湾曲部16に、丸棒鋼7の表面から反射されて直接戻ってくる反射波9を吸収または減少させて、超音波探触子8が受信するゴーストエコーの擬似信号を抑制して、吸音材を利用した高精度探傷方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記の手段の方法であるため、超音波探触子から被検査材である丸棒鋼に対して発信された縦波の超音波が接触媒質を伝播して被検査材の丸棒鋼の内部に入射する際、被検査材の丸棒鋼の表面で反射した一部の反射波が、接触媒質を伝搬して超音波探触子の両端へ到達した際に、反射波を吸音材で吸収または減少させることができるため、超音波探触子の両側の内端の部分からは、ごく僅かしか反射波が発生しなくなるので、超音波探触子の両側の内端から反射し、誤って超音波探触子で受信されるゴーストエコーと呼ばれる擬似信号がなくなる。
【0020】
さらに、第2の手段の方法からなるため、超音波探触子の縦波の超音波を送受信する部分以外を吸音材で隙間なく埋めることにより、超音波探触子の両側の内端以外の湾曲した部分から反射されて超音波探触子に受信されるゴーストエコーと呼ばれる擬似信号がなくなる。したがって、被検査材である丸棒鋼の内部に問題があるという誤った判断がされなくなり、結果として不良率の低減および超音波探傷の精度の向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】音響インピーダンスの異なる媒質の境界面における超音波の伝搬に関する説明図である。
【図2】本発明の方法により超音波探触子の湾曲部に吸音材を貼リ付けた説明図である。
【図3】超音波探触子の構造と被検査体の関係を示す図である。
【図4】ゴーストエコーの発生原因の説明図である。
【図5】(a)従来のゴーストエコーの発生を抑制するために行った対策の説明図で、(b)はそのための専用治具を拡大して示す斜視図で、本願発明の説明にも使用する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図5の(a)および(b)は、従来のゴーストエコーの発生を抑制するために行った対策の説明図であるが、この図5を借りて、これと図1ないし図4により本発明について説明する。図5の(a)と同様に、本発明を用いた超音波探触子8から外部の丸棒鋼7に発信する縦波の超音波の進行方向10の両側部にある、音波探触子8の両側の内端11a、11aに、図5(b)と同様に、表面に約35〜40度の鋭角からなる凹凸15を加工した専用冶具13の向かい合う内面14、14を、超音波探触子8の超音波の進行方向10の側の内端11a、11aの形状に合うように、スポンジなどから加工した吸音材18を取り付け、図4に示すように、超音波探触子8の縦波の進行方向10の両側にある内端11a、11aに、外部の丸棒鋼7の表面から接触媒質6を介して戻ってくる反射波9、9を吸収または減少させることで、超音波探触子8が受信するゴーストエコーと呼ばれる擬似信号をなくして高精度で超音波探傷する方法である。
【0023】
この場合、スポンジからなる吸音材18であれば、超音波探触子8の両側の内端11a、11aが複雑な形状をしていても加工が容易であり、超音波探触子8の両側の内端11a、11aに対して接着剤などで貼リ付けることが可能であり、図2のように超音波探触子8の両側の内端11a、11a以外の湾曲部16、16の縦波の超音波が反射する可能性がある部分に対して、吸音材18の表面が湾曲部16に副うように加工して湾曲部16に並行に貼り付ける。このようにして超音波探触子8の縦波の超音波を送受信する部分17以外の部分は、吸音材18で隙間なく埋め、超音波探触子の湾曲した部分に、丸棒鋼の表面から戻ってくる反射波を吸収または減少させる方法により、超音波探触子8が受信する擬似信号をなくして高精度で探傷する。
【実施例1】
【0024】
この実施例では、超音波探触子8と丸棒鋼7との間に超音波が伝搬しやすいように満たされた接触媒質6は水からなっており、したがって超音波探傷を水中で実施する。超音波探触子8から丸棒鋼7に発信する縦波の超音波の進行方向5の両側にある超音波探触子8の内端11a、11aを、図5(b)に示すように、表面に約35〜40度の凹凸15を加工して有する専用冶具13とし、さらに、この超音波探触子8の両側の内端11a、11aの形状に合うようにした吸音材18を作成して、専用治具13の向い合う内面14に貼り付ける。この場合、吸音材18は水分を含まないよう樹脂製の軟質ゴムでスポンジ状に形成する。この様に超音波探触子8の縦波の進行方向の両側にある両端11a、11aに吸音材18を貼り付けたことで、丸棒鋼7の表面から乱反射して戻ってくる反射波を上記の両端11a、11aで吸収または減少してゴーストエコーの疑似信号をなくすことができ、高精度で超音波探傷することができた。
【実施例2】
【0025】
さらに、この実施例では、同じく超音波探触子8と丸棒鋼7との間に超音波が伝搬しやすいように満たされた接触媒質6は水からなるものとする。超音波探触子8の両側の内端11a、11a以外の部分である超音波探触子8の湾曲部16の縦波の超音波が反射する可能性がある部分に吸音材18を貼り付ける。この場合も、実施例1と同様に、水分を含まないよう樹脂製の軟質ゴムでスポンジ状に形成する。このスポンジ状の吸音材18を超音波探触子の表面の湾曲部16に副うように加工して、湾曲部16に並行に貼り付ける。この様に超音波探触子8の縦波の超音波を送受信する部分17以外の部分は、スポンジ状の樹脂製の軟質ゴムである吸音材18を隙間なく埋めることによって、丸棒鋼7の表面から乱反射して戻ってくる反射波を、超音波探触子8の湾曲部16で吸収または減少してゴーストエコーの疑似信号をなくすことができ、高精度で超音波探傷することができた。
【符号の説明】
【0026】
1 振動子
2 超音波吸収体
3 音響マッチング層
4 電極
5 保護膜
6 接触媒質
7 丸棒鋼
8 超音波探触子
9 丸棒鋼からの反射波
10 縦波の超音波の進行方向
11 超音波探触子の両端
11a 内端
12 超音波探触子の両端の内端からの反射波
13 専用冶具
13a 下面
14 専用治具の向かい合う内面
15 表面加工部の凹凸
16 超音波探触子の湾曲部
17 超音波探触子の縦波を送受信する部分
18 吸音材
W 被検査材
F 境界面
P Z1を伝搬してきた超音波
Pt 境界面を透過した超音波
Pr 境界面で反射した超音波
1 音響インピーダンス(Z1≠Z2
2 音響インピーダンス(Z2≠Z1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子から被検査材に発信する縦波の超音波の進行方向の両側部で、一定の長さの下面と、超音波探触子の中心方向に一定の角度で傾斜した内面とを有する専用治具を、超音波探触子から発信する縦波の超音波の進行方向の両側の超音波探触子の両端部に取り付け、この両端部の専用治具の内端の互いに向かい合う内面に、専用冶具の内端形状と同形状からなる鋭角な凹凸面からなる表面加工部を一定間隔で有する吸音材を貼り付け、被検査材の表面から戻ってくる反射波を吸音材により吸収または減少させ、超音波探触子が受信するゴーストエコーの擬似信号を抑制して検査することを特徴とする吸音材の利用による高精度探傷方法。
【請求項2】
超音波探触子の縦波の超音波の進行方向の両側の内端以外の縦波の超音波が反射する可能性がある湾曲部に対して、吸音材の表面を超音波探触子の湾曲部に副って並行するように加工して貼リ付け、超音波探触子の縦波の超音波を送受信する部分以外は貼り付けた吸音材で隙間なく埋め、超音波探触子の湾曲部に被検査材の表面から戻ってくる反射波を吸音材により吸収または減少させ、超音波探触子が受信するゴーストエコーの擬似信号を抑制して被検査材の内部の疵を検査することを特徴とする吸音材の利用による高精度探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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