吸音構造体
【課題】約500Hz〜約10000Hzの中周波域〜高周波域において、厚みの増大を抑えながら良好な吸音率を得ることができ、建設機械のファンなどの騒音対策、工場における集塵機、空調機など各種モーター機械騒音対策、電気機器類の騒音対策、鉄道・新幹線などのデッキ、パンタグラフでの騒音対策に好適な吸音構造体の提供を目的とする。
【解決手段】非通気性の基材11の表面に複数の膜振動吸音材21を、隣り合う膜振動吸音材21の間隔を空けて配置固定し、通気性のカバー材41で複数の膜振動吸音材21の全てを覆い、カバー材41の縁を膜振動吸音材21の外側で基材11に固定し、膜振動吸音材21間の隙間を通気性のカバー材41で覆った。
【解決手段】非通気性の基材11の表面に複数の膜振動吸音材21を、隣り合う膜振動吸音材21の間隔を空けて配置固定し、通気性のカバー材41で複数の膜振動吸音材21の全てを覆い、カバー材41の縁を膜振動吸音材21の外側で基材11に固定し、膜振動吸音材21間の隙間を通気性のカバー材41で覆った。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中周波域及び高周波域において吸音率が高い吸音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸音材として、ウレタンフォーム、グラスウール、不織布、フェルトなど多孔質吸音材が使用されている。多孔質吸音材は、高周波域中心の騒音に対しては吸音性が高いが、中周波域中心の騒音に対しては50mm厚以上のような肉厚にしないと吸音性が良好にならないため、通常の厚みでは吸音効果が低い問題がある。
【0003】
そこで、中周波域の吸音性を向上させるため、複数の略筒状の空間部(吸音セル)の開口を多孔質材等の吸音材で覆った吸音構造体が提案されている(特許文献1)。また、通気性を制御した不織布などで構成した吸音材(特許文献2)、通気性を制御した不織布などを空気層を介して基材の表面に積層した吸音板(特許文献3)などが提案されている。しかしながら、これらの吸音材においても、中周波域の吸音率を高めるには吸音材の厚みを大にする必要があるため、吸音材の設置空間に制約がある場所などにおいては、騒音対策が難しい問題がある。
【0004】
また、約400Hzから約10000Hzの中周波域と高周波域の領域内で、全体として従来の共振アブソーバよりも吸音性が高い空気音吸収部材として、中空室を有するプラスチック製の共振アブソーバに、中空室から離して多孔質層を設けたものが提案されている(特許文献4)。しかし、前記空気音吸収部材は、前記プラスチック製共振アブソーバ(膜振動吸音材)の吸音率が低く、またカバーする多孔質層が吸音材の膜振動体と接触していないので、該空気音吸収部材の厚さが厚くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−17636号公報
【特許文献2】特開2004−19062号公報
【特許文献3】特開2001−222286号公報
【特許文献4】特表2007−515340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、約500Hz〜約10000Hzの中周波域から高周波域において、高い吸音率が得られ、しかも厚みの増大を抑えることができる吸音構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、基材と、前記基材の表面に複数配置固定された膜振動吸音材と、前記複数の膜振動吸音材を覆うようにして設けられたカバー材とよりなり、前記基材は、非通気性を有し、前記膜振動吸音材は、非通気性のシートからなる膜振動材の片側に空気層を有するものからなると共に、前記空気層が前記基材側へ向けられ、かつ前記膜振動吸音材間に隙間を設けて前記基材の表面に配置固定され、前記カバー材は、通気性のシートからなると共に、前記膜振動吸音材間の隙間を覆うようにして前記複数の膜振動吸音材における膜振動材の表面に配置され、当該カバー材の周縁が前記基材に固定されていることを特徴とする吸音構造体に係る。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記カバー材の通気度が1〜100cc/cm2/sであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記カバー材が前記膜振動吸音材における前記膜振動材の表面に固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記膜振動吸音材は、屈曲により形成された凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気性のシート成形体と、前記複数のセルの開口側を覆うように前記シート成形体に積層された前記膜振動材とよりなって、前記膜振動材が前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に固定されてないものからなり、前記セルの部分が前記空気層であり、前記シート成形体が前記基材の表面に固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記膜振動吸音材が、複数のセルを有するハニカム材の片面に前記膜振動材が積層され、前記膜振動材が前記ハニカム材の周縁で固定されると共に前記ハニカム材の内側では前記ハニカム材に固定されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膜振動吸音材によって吸音構造体の厚みの増大を抑えながら中周波域で高い吸音率が得られ、また、膜振動吸音材間の隙間が通気性のカバー材で覆われた空間の存在によって高周波域で良好な吸音率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る吸音構造体の平面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】図2の一部を示す拡大断面図である。
【図4】膜振動吸音材の第1実施形態に係る斜視図である。
【図5】膜振動吸音材の第1実施形態における分解斜視図である。
【図6】図4の6−6断面図である。
【図7】膜振動吸音材の第2実施形態に係る平面図である。
【図8】図7の8−8断面図である。
【図9】膜振動吸音材を2層にした吸音構造体の断面図である。
【図10】残響室吸音率測定結果1のグラフである。
【図11】残響室吸音率測定結果2のグラフである。
【図12】残響室吸音率測定結果3のグラフである。
【図13】残響室吸音率測定結果4のグラフである。
【図14】残響室吸音率測定結果5のグラフである。
【図15】残響室吸音率測定結果6のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る吸音構造体について、図面を用いて説明する。図1ないし図3に示す第1実施形態の吸音構造体10は、基材11と、膜振動吸音材21と、カバー材41とよりなる。
【0015】
基材11は、プラスチック、金属あるいは木などの非通気性のシートからなり、騒音対策すべき機器のカバー、仕切り板、遮音材、壁などに相当する。前記基材11は、複数の膜振動吸音材21を所定間隔で片側の表面に配置固定可能なサイズからなり、前記基材11の表面に配置固定される膜振動吸音材21のサイズ、個数、間隔に応じて最適なサイズに決定される。なお、図1における符号L1、L2は四角形からなる基材11の直交する辺の寸法を示す。
【0016】
膜振動吸音材21は、膜振動によって中周波域の特定周波数を中心に吸音する吸音材であり、非通気性のシートからなる膜振動材31の片側に空気層を有し、該空気層は壁部によりセル状に仕切られている。
第1実施形態の膜振動吸音材21は、主に図4から図6に示すように、非通気性のシート成形体22と、前記シート成形体22に積層された前記膜振動材31とよりなる。
【0017】
前記シート成形体22は、一枚の非通気性のシートを複数箇所で屈曲させて形成した凹部からなるセル(室)23を、片面側に複数有する。非通気性のシートとしては、樹脂、紙、セラミックなどの不燃紙、アルミなどの金属等が挙げられるが、特に安価で成形性に優れる点で樹脂が好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテルなどである。また、前記シート成形体22用としては、厚みが2mm程度までのシート(フイルムや板と称されるものを含む)を使用できるが、薄すぎると前記シート成形体22の強度低下を生じるばかりでなく、シート成形体22自体の膜振動が膜振動材31の膜振動よりも優先(有効に効力を発揮)されるようになるので、1mm程度の厚みにしてシート成形体22の膜振動を抑え、前記膜振動材31の膜振動を優先(有効に効力を発揮)させて中周波域での吸音率を向上させるのが好ましい。
【0018】
前記セル23は、膜振動吸音材21において膜振動材31の片側の空気層に相当する。前記セル23の開口形状は、図示の例では、平面形状が四角からなるが、これに限られるものではなく、三角、六角、八角などの多角形からなるものや、円形などからなるものなどが挙げられる。特に、前記セル23は、強度や成形のし易さの点から、平面形状が四角形、六角形のものが好ましい。前記セル23の平面サイズは、小さすぎても大きすぎても吸音率が低下する傾向があるため、一辺あるいは径が5〜75mmの大きさが好ましい。また、前記セル23の高さは、低すぎると吸音率が低下し、高すぎると前記シート成形体22の強度低下を生じ、かつ吸音構造体10の厚みが増大することから、5〜50mmの範囲が好ましく、より好ましい範囲は10〜30mmである。さらに、前記セル23の配置は、図示の例は、複数のセル23が列と行を構成するように縦横に配置されているが、これに限るものではない。図5における符号29は、セル23間の壁部である。なお、前記セル23は、複数並べられていることにより、中周波領域において高吸音率を達成できる。
【0019】
さらに、本実施形態のシート成形体22は、セル23の開口側24におけるシート成形体22の外周部26の縁から前記セルの開口側24とは反対側へ屈曲して形成された外周側面27を有し、前記外周側面27の端部(開口側24とは反対側端部)から外方へ屈曲したフランジ部28を有している。前記外周側面27は、前記シート成形体22の側部外周を包囲するスカート状となっている。前記外周側面27の存在により前記シート成形体22の膜振動をより効果的に抑えることができ、前記膜振動材31の膜振動による吸音率の向上を図ることができる。また、前記フランジ部28は前記膜振動吸音材21の固定部として用いることができ、前記膜振動吸音材21を基材11の表面に固定する際に、前記シート成形体22のセル23の底部外面に接着剤や両面接着テープ、粘着剤を設けて固定する他に、前記フランジ部28を接着剤、両面接着テープ、面ファスナー、タッカー、ねじ、釘、ピン、ビス、リベット等で前記基材11に固定することもできる。
【0020】
前記シート成形体22の成形は、例えば、樹脂製の一枚のシートから真空成形、プレス成形、圧空成形などにより容易に行うことができる。特に、成形作業性及び成形品質の点から真空成形によるのが最も好ましい。
【0021】
前記膜振動材31は、前記シート成形体22における複数のセル23に蓋をすることが可能な大きさの非通気性のシート(フィルムや板状を含む)からなる。非通気性のシートの材質は、多孔質でない一般樹脂、ゴム・エラストマー、金属、無機材料などによる面状板材(シート)、フイルムなどからなる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテルなどからなる面状板材(シート)、フイルムなどを挙げることができる。
【0022】
前記膜振動材31は、面密度(面重量)が低すぎると、吸音率がピークとなるピーク周波数が高周波数側にずれ、しかも吸音率が低くなる。逆に面密度が高すぎると、ピーク周波数が低周波数側にずれるものの、膜振動がし難くなって吸音率が低くなる。そのため、好ましい面密度は、0.05〜2.0kg/m2である。なお、前記膜振動材31の膜振動を、前記シート成形体22の膜振動より優先(有効に効力を発揮)させるためには、前記シート成形体22を構成するシートの厚みと同等あるいは薄めのシートで前記膜振動材31を構成するのが好ましい。
【0023】
本実施形態の膜振動材31は、ポリプロピレンなどの樹脂製シートを真空成形したものからなり、当該膜振動材31の縁から前記シート成形体22の側へ屈曲した外周側面33を有し、更に外周側面33の端部から外方へ屈曲したフランジ部34を有し、前記シート成形体22にセル23の開口側から被さる蓋形状となっている。前記膜振動材31の外周側面33は、前記シート成形体22の外周側面27に接着、融着などで固定され、また前記膜振動材31のフランジ部34は前記シート成形体22のフランジ部28に接着、融着などで固定され、あるいは前記シート成形体22の外周側面27などに設けた係合部(図示せず)に前記膜振動材31の外周側面33等を係合させることにより、前記膜振動材31と前記シート成形体22間が閉鎖空間とされる。なお、外周側面33及びフランジ部34を設けない平滑な膜振動材31とし、その外周部をシート成形体22の外周部26と接着、融着などで固定させても良い。前記膜振動材31と前記シート成形体22間には、固定されていない部分が100mm角以上存在するのが中周波域のメインピーク周波数を保持したまま吸音率を向上させる上で好ましい。図示の例においては、前記膜振動材31と前記シート成形体22とは、前記複数のセル23における隣り合うセル間の部分、すなわち前記セル間の壁部29でシート成形体22と膜振動材31が非固定となっている。なお、前記シート成形体22のセル間の壁部29の高さをシート成形体22の外周部26の高さよりも低くして、前記膜振動材31を前記セル間の壁部29から、例えば1〜2mm程度離すようにしてもよい。
【0024】
前記基材11の表面に配置固定される前記膜振動吸音材21の個数は、前記基材11及び膜振動吸音材21のサイズ等によって適宜決定される。図1の例では、前記基材11の表面に、12個の膜振動吸音材21が隣り合う膜振動吸音材との間に隙間S1,S2を設けて配置固定されている。また、前記膜振動吸音材21の間隔(すなわち隣り合う膜振動吸音材21、21の隙間S1,S2の距離)a、b及び前記基材11の縁と膜振動吸音材21との間隔cは適宜決定される。
【0025】
なお、本発明における膜振動吸音材は、前記のように非通気性のシートを屈曲させてセルを形成したシート成形体22と膜振動材31からなる膜振動吸音材21に限られず、図7及び図8に示す膜振動吸音材210のように、四角形、六角形、円形などのセル221が形成されたハニカム材220に非通気性のシートからなる膜振動材310が積層されたものであってもよい。なお、ペーパーや金属のハニカムなどは端部が揃っていないので、外周に樹脂、木材、発泡体などにて外枠を設けて更に木口を付けても良い。さらに、本発明における吸音構造体は、図1〜図3の吸音構造体10のように膜振動吸音材21が1層のものに限られず、厚み増大が許容される範囲において、図9の吸音構造体100のように前記膜振動吸音材21を2層に積み上げたものや、さらに多層に積み上げたものであってもよい。
【0026】
前記カバー材41は、通気性のシートからなり、前記基材11の表面に配置固定された複数の膜振動吸音材21の全てを覆うことが可能な大きさを有する。前記カバー材41は、前記膜振動吸音材21間の隙間S1、S2を覆うようにして前記複数の膜振動吸音材21における膜振動材31の表面に積層され、当該カバー材41の周縁42が前記基材11の縁に両面接着テープ、接着剤、粘着剤材、リベット、ねじ・釘、あるいはそれらの併用により固定されており、その結果実質的に閉鎖空間となっている。なお、本固定は、配置する膜振動吸音材21の最外部に合わせて固定しても良い。さらに、前記カバー材41は周縁を基材11に固定するのに加えて、前記膜振動吸音材21における膜振動材31の表面に接着剤や両面接着テープ等で固定すれば、前記吸音構造体10における中周波域の吸音率を、低周波域にややシフトさせることができるようになる。
【0027】
前記カバー材41を構成する通気性のシートとしては、長繊維、短繊維による通気性のある編み物、不織布、または穴あきシート、発泡体、穴あき焼結体などを挙げることができ、繊維系あるいは、穴あきシートなど、柔軟性を有するものがより好ましい。繊維素材としては、一般のポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン(PP)、アクリルなどの有機系繊維、炭素繊維、ガラスファイバー、ロックウール、金属繊維などの無機繊維などが挙げられる。穴あきシートとしては、各種フイルム、シートなどに一定間隔またはランダムに微細な穴のあるものが挙げられる。前記カバー材41は、膜振動吸音材の保護層ともなり、防水性のポリプロピレン繊維不織布や無機繊維を使用するのが好ましく、また耐候性、防水、防炎などの表面処理や樹脂内に各種配合しても良い。
【0028】
前記カバー材41の厚みは、前記吸音構造体10の厚み増大を抑えるために2mm以下が好ましく、その観点から、前記カバー材41の材質としては、長繊維スパンボンド不織布や織物が好ましい。前記カバー材41のより好ましい厚みは1mm以下、更には0.6mm以下である。また、前記カバー材41の厚みは、カバー材41の材質にもよるが、薄すぎると強度が弱くなるので、0.1mm厚以上が好ましい。
【0029】
前記カバー材41の通気度(JIS L1096A法、フラジール形法)は、1〜100cc/cm2/sが好ましい。より好ましくは、3〜60cc/cm2/sである。前記カバー材41の通気度が低い方が高周波域の吸音性が向上する傾向にあるが、低すぎても高周波域の吸音性が低下するため、前記範囲の通気度が好ましい。
【0030】
本発明の吸音構造体10は、前記膜振動吸音材21によって中周波域で吸音率が向上し、また、前記膜振動吸音材21間の隙間を通気性のカバー材41で覆った空間の存在により、高周波域での吸音率が向上する。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
・実施例1
厚み1.0mmのポリプロピレンシートを真空成形し、図5のシート成形体22と同様のシート成形体を形成した。シート成形体の寸法は、220×220×15mmである。シート成形体におけるセル23は、開口の形状が一辺44mmの正方形、セルの高さが14mm、個数が4×4の16個である。隣り合うセル間の部分(図5の29の部分)の幅及びシート成形体のセルの開口側表面における外周部(図5の26の部分)の幅は、いずれも6mmであり、外周側面(図5の27の部分)には、四隅に係合部として凸部を形成した。一方、厚み1mmのポリプロピレンシートを真空成形して、図5の膜振動材31と同様の膜振動材を形成した。膜振動材は、外周側面(図5の33の部分)がシート成形体の外周側面(図5の27の部分)に接するように形成され、さらに外周側面(図5の33の部分)の先端にはフランジ部(図5の34の部分)が形成され、前記外周側面(図5の33の部分)の四隅には、シート成形体の外周側面(図5の27の部分)に設けた係合部の凸部と係合する凹部が膜振動材の係合部として形成されている。このように形成したシート成形体に膜振動材を被せ、膜振動材の外周側面(図5の33の部分)に設けた係合部を、シート成形体の外周面(図5の27の部分)に設けた係合部と係合させることにより、シート成形体の外周部で膜振動材を固定して膜振動吸音材を形成した。シート成形体及び膜振動材に用いた厚み1mmのポリプロピレンシートは、面密度0.91kg/m2である。
【0032】
このように形成した膜振動吸音材12個を、フランジ部28の裏側に両面接着テープを貼り、図1のa、bの間隔をそれぞれ10mmとして、図1のL2が1000mm、L1が800mm、厚み1.0mmのポリプロピレンシートからなる基材の表面に接着固定した。図1における基材の縁と膜振動吸音材との間隔cは60mm、dは45mmである。ポリプロピレンスパンボンド不織布(品名:SP1100E−UVB、前田工繊製、目付100g/m2、厚み0.52mm、通気度42cc/cm2/s)からなるカバー材を、12個の膜振動吸音材を覆うようにして被せ、カバー材の最外周を15mm幅の両面接着テープにより基材の周縁に固定し、実施例1の吸音構造体を形成した。なお、12個の膜振動吸音材を覆って基材の周縁に固定されたカバー材は、12個の膜振動吸音材における膜振動材の表面に弛みなく積層され、図2のように膜振動材と接触して膜振動吸音材間では隙間を覆っている。
【0033】
・比較例1
実施例1のカバー材の裏面全体に両面接着テープを貼り付けてカバー材を非通気性とした以外は、実施例1と同様にしてカバー材非通気の比較例1の吸音構造体を形成した。
・比較例2
実施例1のカバー材を省き、膜振動吸音材間の隙間を開放した以外は実施例1と同様にしてカバー材の無い比較例2の吸音構造体を形成した。
【0034】
・実施例2
図1における膜振動吸音材の間隔aを50mm、bの間隔を30mm、基材の縁と膜振動吸音材との間隔cを20mm、dを15mmとした以外は実施例1と同様にして実施例2の吸音構造体を形成した。
・比較例3
図1における膜振動吸音材の間隔aを50mm、bの間隔を30mm、基材の縁と膜振動吸音材との間隔cを20mm、dを15mmとした以外は比較例2と同様にしてカバー材の無い比較例3の吸音構造体を形成した。
【0035】
・実施例3
カバー材を膜振動吸音材の膜振動材の表面に両面接着テープで接着した以外は実施例1と同様にして実施例3の吸音構造体を形成した。
【0036】
・実施例4
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は実施例1と同様にして実施例4の吸音構造体を形成した。なお、シート成形体については変更無くシートの厚みは1.0mmである。
・実施例5
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は実施例2と同様にして実施例5の吸音構造体を形成した。なお、シート成形体については変更無くシートの厚みは1.0mmである。
【0037】
・比較例4
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は比較例1と同様にしてカバー材非通気の比較例4の吸音構造体を形成した。
・比較例5
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は比較例2と同様にしてカバー材の無い比較例5の吸音構造体を形成した。なお、シート成形体については変更無くシートの厚みは1.0mmである。
・比較例6
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は比較例3と同様にしてカバー材の無い比較例6の吸音構造体を形成した。なお、シート成形体については変更無くシートの厚みは1.0mmである。
【0038】
・実施例6、7、8
膜振動吸音材を2層にした以外は実施例1、実施例2、実施例3と同様にして実施例6(実施例1→実施例6)、実施例7(実施例2→実施例7)、実施例8(実施例3→実施例8)の吸音構造体を形成した。
・比較例7、8
膜振動吸音材を2層にした以外は比較例2、比較例3と同様にして比較例7(比較例2→比較例7)、比較例8(比較例3→比較例8)の吸音構造体を形成した。
【0039】
・実施例9
シート成形体及び膜振動材の材質を塩化ビニル樹脂(PVC)、厚み0.7mm、面密度0.91kg/m2とし、カバー材の材質をポリプロピレンスパンボンド不織布(品名:SP1100E−B、前田工繊製、難燃付与、目付100g/m2、厚み0.52mm、通気度54cc/cm2/s)とした以外は、実施例2と同様にして実施例9の吸音構造体を形成した。
・実施例10
カバー材の材質をポリエチレンテレフタレート(PET)スパンボンド不織布(ユニチカ製、目付100g/m2、厚み0.16mm、通気度5cc/cm2/s)とした以外は実施例2と同様にして実施例10の吸音構造体を形成した。
【0040】
・実施例11
カバー材の材質をガラスクロス(品名:WLA180M107、日東紡製、平織り、目付205g/m2、厚み0.18mm、通気度20cc/cm2/s)とした以外は実施例2と同様にして実施例11の吸音構造体を形成した。
・比較例9
カバー材の材質をウレタンフィルム(厚み0.15mm、通気度00cc/cm2/s)とした以外は実施例2と同様にしてカバー材非通気の比較例9の吸音構造体を形成した。
【0041】
・実施例12
射出成形にて得られた250mm角のポリエチレン製四角状格子、セル数8×8、高さ17mm、外枠及び格子部の厚み1.0mmの格子構造体を用い、上部及び下部には1mm厚、250mm角のポリプロピレンフイルムを被せて外周部をビニルテープにて該格子構造体の外周側面とで固定し、膜振動吸音材を形成した。このように形成した膜振動吸音材6個を、裏側全面に両面接着テープを貼り、図1のa、bの間隔をそれぞれ260mm、105mmとし、基材の縁と膜振動吸音材との間隔cが20mm、dが20mmである以外は、実施例1と同様にして1000mm×800mmのポリプロピレンシートに接着固定し、カバー材を被せて固定し、実施例12の吸音構造体を形成した。
【0042】
・比較例10
実施例12のカバー材を省き、膜振動吸音材間の隙間を開放した以外は実施例12と同様にして、カバー材の無い比較例10の吸音構造体を形成した。
【0043】
表1に各実施例及び各比較例の構成を示す。
【表1】
【0044】
各実施例及び各比較例の吸音構造体をそれぞれ残響室の床面上に配置して、JIS A 1409に基づき残響室法吸音率を測定した。なお、本吸音率は、基材のポリプロピレンシート1000mm×800mmの面積当りに換算した1/3オクターブ周波数の吸音率(吸音力)を示したものであり、各吸音材の実面積当りの吸音率を示すものではない。残響室容積は36m3である。測定結果を図10〜図15に示す。
【0045】
図10は、実施例1、比較例1及び比較例2の残響室法吸音率の測定結果である。実施例1は500Hz中心の吸音特性を示すが、カバー材(不織布)のない比較例2に対し、全周波数に渡って吸音率が数%高くなるとともに、1kHz以上の高周波域が十数%吸音率が高くなっている。また、カバー材非通気性の比較例1は、実施例1に比してメインピークが400Hz付近にシフトしたが、1.6kHz以上の高周波域の吸音率が低くなった。
【0046】
図11は、実施例2、実施例3及び比較例3の残響室法吸音率の測定結果である。実施例2は、実施例1よりも膜振動吸音構造体間の隙間(空間)が大であるため、高周波域の吸音率が大きく向上した。実施例3は、メインピークが500Hzから400Hzにシフトした以外は、実施例2と同様の結果であった。一方、比較例3は比較例2と同様にカバー材が無いため、比較例2と同様に高周波域の吸音率が低かった。
【0047】
図12は、実施例4、実施例5、比較例4、比較例5及び比較例6の残響室法吸音率の測定結果である。実施例4及び実施例5、比較例4、比較例5及び比較例6は、膜振動材の厚み(面密度)を実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3よりも小としたことにより、中周波域におけるメインピークが高周波域側へシフトしている。
【0048】
図13は、実施例6、実施例7、実施例8、比較例7及び比較例8の残響室法吸音率の測定結果である。膜振動構造体を2層としたことにより、カバー材なし(比較例7,8)でも高周波域の吸音率が高いが、カバー材により更に高周波域の吸音率が向上しており(実施例6、実施例7)、膜振動構造体とカバー材を接着固定した実施例8では、実施例3と同様に、中周波域のメインピークが低周波側にシフトしている。
【0049】
図14は、実施例9、実施例10、実施例11及び比較例9の残響室法吸音率の測定結果であり、比較のために実施例2及び比較例3の残響室法吸音率の測定結果と共に示す。
実施例10はカバー材の通気度が低いため、実施例2、9、11と比べて高周波域側で吸音率が向上している。比較例9は、カバー材が非通気性であるため、カバー材の無い比較例3と同様に高周波域側で吸音率が低い結果となった。
【0050】
図15は、実施例12、比較例10の残響室法吸音率の測定結果である。実施例12と比較例10は、実施例1と比較例2と同様の関係にあり、カバー材のない比較例10に対し、実施例12は、全周波数に渡って吸音率が数%高くなるとともに、1kHz以上の高周波域が、数十%吸音率が高くなっている。
【0051】
以上のように、本発明の複数の配置固定された膜振動吸音材の表面をカバー材で密着させて覆った吸音構造体は、厚みの増大を抑えながら、高周波域の吸音率を大きく向上できることに加え、中周波全域の吸音率も向上することができる。さらにカバー材を膜振動吸音材の表面に固定することで、中周波域のメインピークが低周波側にシフトできる。
【0052】
本発明の吸音構造体は、以上の利点を生かし、例えば、建設機械のファンなどの騒音対策、工場における集塵機、空調機など各種モーター機械騒音対策、電気機器類の騒音対策、鉄道・新幹線などのデッキ、パンタグラフでの騒音対策などとして好適に活用できる。
【符号の説明】
【0053】
10,100 吸音構造体
11,11 基材
21 膜振動吸音材
31 膜振動材
41 カバー材
【技術分野】
【0001】
本発明は、中周波域及び高周波域において吸音率が高い吸音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸音材として、ウレタンフォーム、グラスウール、不織布、フェルトなど多孔質吸音材が使用されている。多孔質吸音材は、高周波域中心の騒音に対しては吸音性が高いが、中周波域中心の騒音に対しては50mm厚以上のような肉厚にしないと吸音性が良好にならないため、通常の厚みでは吸音効果が低い問題がある。
【0003】
そこで、中周波域の吸音性を向上させるため、複数の略筒状の空間部(吸音セル)の開口を多孔質材等の吸音材で覆った吸音構造体が提案されている(特許文献1)。また、通気性を制御した不織布などで構成した吸音材(特許文献2)、通気性を制御した不織布などを空気層を介して基材の表面に積層した吸音板(特許文献3)などが提案されている。しかしながら、これらの吸音材においても、中周波域の吸音率を高めるには吸音材の厚みを大にする必要があるため、吸音材の設置空間に制約がある場所などにおいては、騒音対策が難しい問題がある。
【0004】
また、約400Hzから約10000Hzの中周波域と高周波域の領域内で、全体として従来の共振アブソーバよりも吸音性が高い空気音吸収部材として、中空室を有するプラスチック製の共振アブソーバに、中空室から離して多孔質層を設けたものが提案されている(特許文献4)。しかし、前記空気音吸収部材は、前記プラスチック製共振アブソーバ(膜振動吸音材)の吸音率が低く、またカバーする多孔質層が吸音材の膜振動体と接触していないので、該空気音吸収部材の厚さが厚くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−17636号公報
【特許文献2】特開2004−19062号公報
【特許文献3】特開2001−222286号公報
【特許文献4】特表2007−515340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、約500Hz〜約10000Hzの中周波域から高周波域において、高い吸音率が得られ、しかも厚みの増大を抑えることができる吸音構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、基材と、前記基材の表面に複数配置固定された膜振動吸音材と、前記複数の膜振動吸音材を覆うようにして設けられたカバー材とよりなり、前記基材は、非通気性を有し、前記膜振動吸音材は、非通気性のシートからなる膜振動材の片側に空気層を有するものからなると共に、前記空気層が前記基材側へ向けられ、かつ前記膜振動吸音材間に隙間を設けて前記基材の表面に配置固定され、前記カバー材は、通気性のシートからなると共に、前記膜振動吸音材間の隙間を覆うようにして前記複数の膜振動吸音材における膜振動材の表面に配置され、当該カバー材の周縁が前記基材に固定されていることを特徴とする吸音構造体に係る。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記カバー材の通気度が1〜100cc/cm2/sであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記カバー材が前記膜振動吸音材における前記膜振動材の表面に固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記膜振動吸音材は、屈曲により形成された凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気性のシート成形体と、前記複数のセルの開口側を覆うように前記シート成形体に積層された前記膜振動材とよりなって、前記膜振動材が前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に固定されてないものからなり、前記セルの部分が前記空気層であり、前記シート成形体が前記基材の表面に固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記膜振動吸音材が、複数のセルを有するハニカム材の片面に前記膜振動材が積層され、前記膜振動材が前記ハニカム材の周縁で固定されると共に前記ハニカム材の内側では前記ハニカム材に固定されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膜振動吸音材によって吸音構造体の厚みの増大を抑えながら中周波域で高い吸音率が得られ、また、膜振動吸音材間の隙間が通気性のカバー材で覆われた空間の存在によって高周波域で良好な吸音率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る吸音構造体の平面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】図2の一部を示す拡大断面図である。
【図4】膜振動吸音材の第1実施形態に係る斜視図である。
【図5】膜振動吸音材の第1実施形態における分解斜視図である。
【図6】図4の6−6断面図である。
【図7】膜振動吸音材の第2実施形態に係る平面図である。
【図8】図7の8−8断面図である。
【図9】膜振動吸音材を2層にした吸音構造体の断面図である。
【図10】残響室吸音率測定結果1のグラフである。
【図11】残響室吸音率測定結果2のグラフである。
【図12】残響室吸音率測定結果3のグラフである。
【図13】残響室吸音率測定結果4のグラフである。
【図14】残響室吸音率測定結果5のグラフである。
【図15】残響室吸音率測定結果6のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る吸音構造体について、図面を用いて説明する。図1ないし図3に示す第1実施形態の吸音構造体10は、基材11と、膜振動吸音材21と、カバー材41とよりなる。
【0015】
基材11は、プラスチック、金属あるいは木などの非通気性のシートからなり、騒音対策すべき機器のカバー、仕切り板、遮音材、壁などに相当する。前記基材11は、複数の膜振動吸音材21を所定間隔で片側の表面に配置固定可能なサイズからなり、前記基材11の表面に配置固定される膜振動吸音材21のサイズ、個数、間隔に応じて最適なサイズに決定される。なお、図1における符号L1、L2は四角形からなる基材11の直交する辺の寸法を示す。
【0016】
膜振動吸音材21は、膜振動によって中周波域の特定周波数を中心に吸音する吸音材であり、非通気性のシートからなる膜振動材31の片側に空気層を有し、該空気層は壁部によりセル状に仕切られている。
第1実施形態の膜振動吸音材21は、主に図4から図6に示すように、非通気性のシート成形体22と、前記シート成形体22に積層された前記膜振動材31とよりなる。
【0017】
前記シート成形体22は、一枚の非通気性のシートを複数箇所で屈曲させて形成した凹部からなるセル(室)23を、片面側に複数有する。非通気性のシートとしては、樹脂、紙、セラミックなどの不燃紙、アルミなどの金属等が挙げられるが、特に安価で成形性に優れる点で樹脂が好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテルなどである。また、前記シート成形体22用としては、厚みが2mm程度までのシート(フイルムや板と称されるものを含む)を使用できるが、薄すぎると前記シート成形体22の強度低下を生じるばかりでなく、シート成形体22自体の膜振動が膜振動材31の膜振動よりも優先(有効に効力を発揮)されるようになるので、1mm程度の厚みにしてシート成形体22の膜振動を抑え、前記膜振動材31の膜振動を優先(有効に効力を発揮)させて中周波域での吸音率を向上させるのが好ましい。
【0018】
前記セル23は、膜振動吸音材21において膜振動材31の片側の空気層に相当する。前記セル23の開口形状は、図示の例では、平面形状が四角からなるが、これに限られるものではなく、三角、六角、八角などの多角形からなるものや、円形などからなるものなどが挙げられる。特に、前記セル23は、強度や成形のし易さの点から、平面形状が四角形、六角形のものが好ましい。前記セル23の平面サイズは、小さすぎても大きすぎても吸音率が低下する傾向があるため、一辺あるいは径が5〜75mmの大きさが好ましい。また、前記セル23の高さは、低すぎると吸音率が低下し、高すぎると前記シート成形体22の強度低下を生じ、かつ吸音構造体10の厚みが増大することから、5〜50mmの範囲が好ましく、より好ましい範囲は10〜30mmである。さらに、前記セル23の配置は、図示の例は、複数のセル23が列と行を構成するように縦横に配置されているが、これに限るものではない。図5における符号29は、セル23間の壁部である。なお、前記セル23は、複数並べられていることにより、中周波領域において高吸音率を達成できる。
【0019】
さらに、本実施形態のシート成形体22は、セル23の開口側24におけるシート成形体22の外周部26の縁から前記セルの開口側24とは反対側へ屈曲して形成された外周側面27を有し、前記外周側面27の端部(開口側24とは反対側端部)から外方へ屈曲したフランジ部28を有している。前記外周側面27は、前記シート成形体22の側部外周を包囲するスカート状となっている。前記外周側面27の存在により前記シート成形体22の膜振動をより効果的に抑えることができ、前記膜振動材31の膜振動による吸音率の向上を図ることができる。また、前記フランジ部28は前記膜振動吸音材21の固定部として用いることができ、前記膜振動吸音材21を基材11の表面に固定する際に、前記シート成形体22のセル23の底部外面に接着剤や両面接着テープ、粘着剤を設けて固定する他に、前記フランジ部28を接着剤、両面接着テープ、面ファスナー、タッカー、ねじ、釘、ピン、ビス、リベット等で前記基材11に固定することもできる。
【0020】
前記シート成形体22の成形は、例えば、樹脂製の一枚のシートから真空成形、プレス成形、圧空成形などにより容易に行うことができる。特に、成形作業性及び成形品質の点から真空成形によるのが最も好ましい。
【0021】
前記膜振動材31は、前記シート成形体22における複数のセル23に蓋をすることが可能な大きさの非通気性のシート(フィルムや板状を含む)からなる。非通気性のシートの材質は、多孔質でない一般樹脂、ゴム・エラストマー、金属、無機材料などによる面状板材(シート)、フイルムなどからなる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテルなどからなる面状板材(シート)、フイルムなどを挙げることができる。
【0022】
前記膜振動材31は、面密度(面重量)が低すぎると、吸音率がピークとなるピーク周波数が高周波数側にずれ、しかも吸音率が低くなる。逆に面密度が高すぎると、ピーク周波数が低周波数側にずれるものの、膜振動がし難くなって吸音率が低くなる。そのため、好ましい面密度は、0.05〜2.0kg/m2である。なお、前記膜振動材31の膜振動を、前記シート成形体22の膜振動より優先(有効に効力を発揮)させるためには、前記シート成形体22を構成するシートの厚みと同等あるいは薄めのシートで前記膜振動材31を構成するのが好ましい。
【0023】
本実施形態の膜振動材31は、ポリプロピレンなどの樹脂製シートを真空成形したものからなり、当該膜振動材31の縁から前記シート成形体22の側へ屈曲した外周側面33を有し、更に外周側面33の端部から外方へ屈曲したフランジ部34を有し、前記シート成形体22にセル23の開口側から被さる蓋形状となっている。前記膜振動材31の外周側面33は、前記シート成形体22の外周側面27に接着、融着などで固定され、また前記膜振動材31のフランジ部34は前記シート成形体22のフランジ部28に接着、融着などで固定され、あるいは前記シート成形体22の外周側面27などに設けた係合部(図示せず)に前記膜振動材31の外周側面33等を係合させることにより、前記膜振動材31と前記シート成形体22間が閉鎖空間とされる。なお、外周側面33及びフランジ部34を設けない平滑な膜振動材31とし、その外周部をシート成形体22の外周部26と接着、融着などで固定させても良い。前記膜振動材31と前記シート成形体22間には、固定されていない部分が100mm角以上存在するのが中周波域のメインピーク周波数を保持したまま吸音率を向上させる上で好ましい。図示の例においては、前記膜振動材31と前記シート成形体22とは、前記複数のセル23における隣り合うセル間の部分、すなわち前記セル間の壁部29でシート成形体22と膜振動材31が非固定となっている。なお、前記シート成形体22のセル間の壁部29の高さをシート成形体22の外周部26の高さよりも低くして、前記膜振動材31を前記セル間の壁部29から、例えば1〜2mm程度離すようにしてもよい。
【0024】
前記基材11の表面に配置固定される前記膜振動吸音材21の個数は、前記基材11及び膜振動吸音材21のサイズ等によって適宜決定される。図1の例では、前記基材11の表面に、12個の膜振動吸音材21が隣り合う膜振動吸音材との間に隙間S1,S2を設けて配置固定されている。また、前記膜振動吸音材21の間隔(すなわち隣り合う膜振動吸音材21、21の隙間S1,S2の距離)a、b及び前記基材11の縁と膜振動吸音材21との間隔cは適宜決定される。
【0025】
なお、本発明における膜振動吸音材は、前記のように非通気性のシートを屈曲させてセルを形成したシート成形体22と膜振動材31からなる膜振動吸音材21に限られず、図7及び図8に示す膜振動吸音材210のように、四角形、六角形、円形などのセル221が形成されたハニカム材220に非通気性のシートからなる膜振動材310が積層されたものであってもよい。なお、ペーパーや金属のハニカムなどは端部が揃っていないので、外周に樹脂、木材、発泡体などにて外枠を設けて更に木口を付けても良い。さらに、本発明における吸音構造体は、図1〜図3の吸音構造体10のように膜振動吸音材21が1層のものに限られず、厚み増大が許容される範囲において、図9の吸音構造体100のように前記膜振動吸音材21を2層に積み上げたものや、さらに多層に積み上げたものであってもよい。
【0026】
前記カバー材41は、通気性のシートからなり、前記基材11の表面に配置固定された複数の膜振動吸音材21の全てを覆うことが可能な大きさを有する。前記カバー材41は、前記膜振動吸音材21間の隙間S1、S2を覆うようにして前記複数の膜振動吸音材21における膜振動材31の表面に積層され、当該カバー材41の周縁42が前記基材11の縁に両面接着テープ、接着剤、粘着剤材、リベット、ねじ・釘、あるいはそれらの併用により固定されており、その結果実質的に閉鎖空間となっている。なお、本固定は、配置する膜振動吸音材21の最外部に合わせて固定しても良い。さらに、前記カバー材41は周縁を基材11に固定するのに加えて、前記膜振動吸音材21における膜振動材31の表面に接着剤や両面接着テープ等で固定すれば、前記吸音構造体10における中周波域の吸音率を、低周波域にややシフトさせることができるようになる。
【0027】
前記カバー材41を構成する通気性のシートとしては、長繊維、短繊維による通気性のある編み物、不織布、または穴あきシート、発泡体、穴あき焼結体などを挙げることができ、繊維系あるいは、穴あきシートなど、柔軟性を有するものがより好ましい。繊維素材としては、一般のポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン(PP)、アクリルなどの有機系繊維、炭素繊維、ガラスファイバー、ロックウール、金属繊維などの無機繊維などが挙げられる。穴あきシートとしては、各種フイルム、シートなどに一定間隔またはランダムに微細な穴のあるものが挙げられる。前記カバー材41は、膜振動吸音材の保護層ともなり、防水性のポリプロピレン繊維不織布や無機繊維を使用するのが好ましく、また耐候性、防水、防炎などの表面処理や樹脂内に各種配合しても良い。
【0028】
前記カバー材41の厚みは、前記吸音構造体10の厚み増大を抑えるために2mm以下が好ましく、その観点から、前記カバー材41の材質としては、長繊維スパンボンド不織布や織物が好ましい。前記カバー材41のより好ましい厚みは1mm以下、更には0.6mm以下である。また、前記カバー材41の厚みは、カバー材41の材質にもよるが、薄すぎると強度が弱くなるので、0.1mm厚以上が好ましい。
【0029】
前記カバー材41の通気度(JIS L1096A法、フラジール形法)は、1〜100cc/cm2/sが好ましい。より好ましくは、3〜60cc/cm2/sである。前記カバー材41の通気度が低い方が高周波域の吸音性が向上する傾向にあるが、低すぎても高周波域の吸音性が低下するため、前記範囲の通気度が好ましい。
【0030】
本発明の吸音構造体10は、前記膜振動吸音材21によって中周波域で吸音率が向上し、また、前記膜振動吸音材21間の隙間を通気性のカバー材41で覆った空間の存在により、高周波域での吸音率が向上する。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
・実施例1
厚み1.0mmのポリプロピレンシートを真空成形し、図5のシート成形体22と同様のシート成形体を形成した。シート成形体の寸法は、220×220×15mmである。シート成形体におけるセル23は、開口の形状が一辺44mmの正方形、セルの高さが14mm、個数が4×4の16個である。隣り合うセル間の部分(図5の29の部分)の幅及びシート成形体のセルの開口側表面における外周部(図5の26の部分)の幅は、いずれも6mmであり、外周側面(図5の27の部分)には、四隅に係合部として凸部を形成した。一方、厚み1mmのポリプロピレンシートを真空成形して、図5の膜振動材31と同様の膜振動材を形成した。膜振動材は、外周側面(図5の33の部分)がシート成形体の外周側面(図5の27の部分)に接するように形成され、さらに外周側面(図5の33の部分)の先端にはフランジ部(図5の34の部分)が形成され、前記外周側面(図5の33の部分)の四隅には、シート成形体の外周側面(図5の27の部分)に設けた係合部の凸部と係合する凹部が膜振動材の係合部として形成されている。このように形成したシート成形体に膜振動材を被せ、膜振動材の外周側面(図5の33の部分)に設けた係合部を、シート成形体の外周面(図5の27の部分)に設けた係合部と係合させることにより、シート成形体の外周部で膜振動材を固定して膜振動吸音材を形成した。シート成形体及び膜振動材に用いた厚み1mmのポリプロピレンシートは、面密度0.91kg/m2である。
【0032】
このように形成した膜振動吸音材12個を、フランジ部28の裏側に両面接着テープを貼り、図1のa、bの間隔をそれぞれ10mmとして、図1のL2が1000mm、L1が800mm、厚み1.0mmのポリプロピレンシートからなる基材の表面に接着固定した。図1における基材の縁と膜振動吸音材との間隔cは60mm、dは45mmである。ポリプロピレンスパンボンド不織布(品名:SP1100E−UVB、前田工繊製、目付100g/m2、厚み0.52mm、通気度42cc/cm2/s)からなるカバー材を、12個の膜振動吸音材を覆うようにして被せ、カバー材の最外周を15mm幅の両面接着テープにより基材の周縁に固定し、実施例1の吸音構造体を形成した。なお、12個の膜振動吸音材を覆って基材の周縁に固定されたカバー材は、12個の膜振動吸音材における膜振動材の表面に弛みなく積層され、図2のように膜振動材と接触して膜振動吸音材間では隙間を覆っている。
【0033】
・比較例1
実施例1のカバー材の裏面全体に両面接着テープを貼り付けてカバー材を非通気性とした以外は、実施例1と同様にしてカバー材非通気の比較例1の吸音構造体を形成した。
・比較例2
実施例1のカバー材を省き、膜振動吸音材間の隙間を開放した以外は実施例1と同様にしてカバー材の無い比較例2の吸音構造体を形成した。
【0034】
・実施例2
図1における膜振動吸音材の間隔aを50mm、bの間隔を30mm、基材の縁と膜振動吸音材との間隔cを20mm、dを15mmとした以外は実施例1と同様にして実施例2の吸音構造体を形成した。
・比較例3
図1における膜振動吸音材の間隔aを50mm、bの間隔を30mm、基材の縁と膜振動吸音材との間隔cを20mm、dを15mmとした以外は比較例2と同様にしてカバー材の無い比較例3の吸音構造体を形成した。
【0035】
・実施例3
カバー材を膜振動吸音材の膜振動材の表面に両面接着テープで接着した以外は実施例1と同様にして実施例3の吸音構造体を形成した。
【0036】
・実施例4
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は実施例1と同様にして実施例4の吸音構造体を形成した。なお、シート成形体については変更無くシートの厚みは1.0mmである。
・実施例5
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は実施例2と同様にして実施例5の吸音構造体を形成した。なお、シート成形体については変更無くシートの厚みは1.0mmである。
【0037】
・比較例4
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は比較例1と同様にしてカバー材非通気の比較例4の吸音構造体を形成した。
・比較例5
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は比較例2と同様にしてカバー材の無い比較例5の吸音構造体を形成した。なお、シート成形体については変更無くシートの厚みは1.0mmである。
・比較例6
膜振動材の厚みを0.6mm(面密度0.55kg/m2)とした以外は比較例3と同様にしてカバー材の無い比較例6の吸音構造体を形成した。なお、シート成形体については変更無くシートの厚みは1.0mmである。
【0038】
・実施例6、7、8
膜振動吸音材を2層にした以外は実施例1、実施例2、実施例3と同様にして実施例6(実施例1→実施例6)、実施例7(実施例2→実施例7)、実施例8(実施例3→実施例8)の吸音構造体を形成した。
・比較例7、8
膜振動吸音材を2層にした以外は比較例2、比較例3と同様にして比較例7(比較例2→比較例7)、比較例8(比較例3→比較例8)の吸音構造体を形成した。
【0039】
・実施例9
シート成形体及び膜振動材の材質を塩化ビニル樹脂(PVC)、厚み0.7mm、面密度0.91kg/m2とし、カバー材の材質をポリプロピレンスパンボンド不織布(品名:SP1100E−B、前田工繊製、難燃付与、目付100g/m2、厚み0.52mm、通気度54cc/cm2/s)とした以外は、実施例2と同様にして実施例9の吸音構造体を形成した。
・実施例10
カバー材の材質をポリエチレンテレフタレート(PET)スパンボンド不織布(ユニチカ製、目付100g/m2、厚み0.16mm、通気度5cc/cm2/s)とした以外は実施例2と同様にして実施例10の吸音構造体を形成した。
【0040】
・実施例11
カバー材の材質をガラスクロス(品名:WLA180M107、日東紡製、平織り、目付205g/m2、厚み0.18mm、通気度20cc/cm2/s)とした以外は実施例2と同様にして実施例11の吸音構造体を形成した。
・比較例9
カバー材の材質をウレタンフィルム(厚み0.15mm、通気度00cc/cm2/s)とした以外は実施例2と同様にしてカバー材非通気の比較例9の吸音構造体を形成した。
【0041】
・実施例12
射出成形にて得られた250mm角のポリエチレン製四角状格子、セル数8×8、高さ17mm、外枠及び格子部の厚み1.0mmの格子構造体を用い、上部及び下部には1mm厚、250mm角のポリプロピレンフイルムを被せて外周部をビニルテープにて該格子構造体の外周側面とで固定し、膜振動吸音材を形成した。このように形成した膜振動吸音材6個を、裏側全面に両面接着テープを貼り、図1のa、bの間隔をそれぞれ260mm、105mmとし、基材の縁と膜振動吸音材との間隔cが20mm、dが20mmである以外は、実施例1と同様にして1000mm×800mmのポリプロピレンシートに接着固定し、カバー材を被せて固定し、実施例12の吸音構造体を形成した。
【0042】
・比較例10
実施例12のカバー材を省き、膜振動吸音材間の隙間を開放した以外は実施例12と同様にして、カバー材の無い比較例10の吸音構造体を形成した。
【0043】
表1に各実施例及び各比較例の構成を示す。
【表1】
【0044】
各実施例及び各比較例の吸音構造体をそれぞれ残響室の床面上に配置して、JIS A 1409に基づき残響室法吸音率を測定した。なお、本吸音率は、基材のポリプロピレンシート1000mm×800mmの面積当りに換算した1/3オクターブ周波数の吸音率(吸音力)を示したものであり、各吸音材の実面積当りの吸音率を示すものではない。残響室容積は36m3である。測定結果を図10〜図15に示す。
【0045】
図10は、実施例1、比較例1及び比較例2の残響室法吸音率の測定結果である。実施例1は500Hz中心の吸音特性を示すが、カバー材(不織布)のない比較例2に対し、全周波数に渡って吸音率が数%高くなるとともに、1kHz以上の高周波域が十数%吸音率が高くなっている。また、カバー材非通気性の比較例1は、実施例1に比してメインピークが400Hz付近にシフトしたが、1.6kHz以上の高周波域の吸音率が低くなった。
【0046】
図11は、実施例2、実施例3及び比較例3の残響室法吸音率の測定結果である。実施例2は、実施例1よりも膜振動吸音構造体間の隙間(空間)が大であるため、高周波域の吸音率が大きく向上した。実施例3は、メインピークが500Hzから400Hzにシフトした以外は、実施例2と同様の結果であった。一方、比較例3は比較例2と同様にカバー材が無いため、比較例2と同様に高周波域の吸音率が低かった。
【0047】
図12は、実施例4、実施例5、比較例4、比較例5及び比較例6の残響室法吸音率の測定結果である。実施例4及び実施例5、比較例4、比較例5及び比較例6は、膜振動材の厚み(面密度)を実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3よりも小としたことにより、中周波域におけるメインピークが高周波域側へシフトしている。
【0048】
図13は、実施例6、実施例7、実施例8、比較例7及び比較例8の残響室法吸音率の測定結果である。膜振動構造体を2層としたことにより、カバー材なし(比較例7,8)でも高周波域の吸音率が高いが、カバー材により更に高周波域の吸音率が向上しており(実施例6、実施例7)、膜振動構造体とカバー材を接着固定した実施例8では、実施例3と同様に、中周波域のメインピークが低周波側にシフトしている。
【0049】
図14は、実施例9、実施例10、実施例11及び比較例9の残響室法吸音率の測定結果であり、比較のために実施例2及び比較例3の残響室法吸音率の測定結果と共に示す。
実施例10はカバー材の通気度が低いため、実施例2、9、11と比べて高周波域側で吸音率が向上している。比較例9は、カバー材が非通気性であるため、カバー材の無い比較例3と同様に高周波域側で吸音率が低い結果となった。
【0050】
図15は、実施例12、比較例10の残響室法吸音率の測定結果である。実施例12と比較例10は、実施例1と比較例2と同様の関係にあり、カバー材のない比較例10に対し、実施例12は、全周波数に渡って吸音率が数%高くなるとともに、1kHz以上の高周波域が、数十%吸音率が高くなっている。
【0051】
以上のように、本発明の複数の配置固定された膜振動吸音材の表面をカバー材で密着させて覆った吸音構造体は、厚みの増大を抑えながら、高周波域の吸音率を大きく向上できることに加え、中周波全域の吸音率も向上することができる。さらにカバー材を膜振動吸音材の表面に固定することで、中周波域のメインピークが低周波側にシフトできる。
【0052】
本発明の吸音構造体は、以上の利点を生かし、例えば、建設機械のファンなどの騒音対策、工場における集塵機、空調機など各種モーター機械騒音対策、電気機器類の騒音対策、鉄道・新幹線などのデッキ、パンタグラフでの騒音対策などとして好適に活用できる。
【符号の説明】
【0053】
10,100 吸音構造体
11,11 基材
21 膜振動吸音材
31 膜振動材
41 カバー材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に複数配置固定された膜振動吸音材と、前記複数の膜振動吸音材を覆うようにして設けられたカバー材とよりなり、
前記基材は、非通気性を有し、
前記膜振動吸音材は、非通気性のシートからなる膜振動材の片側に空気層を有するものからなると共に、前記空気層が前記基材側へ向けられ、かつ前記膜振動吸音材間に隙間を設けて前記基材の表面に配置固定され、
前記カバー材は、通気性のシートからなると共に、前記膜振動吸音材間の隙間を覆うようにして前記複数の膜振動吸音材における膜振動材の表面に配置され、当該カバー材の周縁が前記基材に固定されていることを特徴とする吸音構造体。
【請求項2】
前記カバー材の通気度が1〜100cc/cm2/sであることを特徴とする請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項3】
前記カバー材が前記膜振動吸音材における前記膜振動材の表面に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音構造体。
【請求項4】
前記膜振動吸音材は、屈曲により形成された凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気性のシート成形体と、前記複数のセルの開口側を覆うように前記シート成形体に積層された前記膜振動材とよりなって、前記膜振動材が前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に固定されてないものからなり、
前記セルの部分が前記空気層であり、前記シート成形体が前記基材の表面に固定されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の吸音構造体。
【請求項5】
前記膜振動吸音材が、複数のセルを有するハニカム材の片面に前記膜振動材が積層され、前記膜振動材が前記ハニカム材の周縁で固定されると共に前記ハニカム材の内側では前記ハニカム材に固定されていないことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の吸音構造体。
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に複数配置固定された膜振動吸音材と、前記複数の膜振動吸音材を覆うようにして設けられたカバー材とよりなり、
前記基材は、非通気性を有し、
前記膜振動吸音材は、非通気性のシートからなる膜振動材の片側に空気層を有するものからなると共に、前記空気層が前記基材側へ向けられ、かつ前記膜振動吸音材間に隙間を設けて前記基材の表面に配置固定され、
前記カバー材は、通気性のシートからなると共に、前記膜振動吸音材間の隙間を覆うようにして前記複数の膜振動吸音材における膜振動材の表面に配置され、当該カバー材の周縁が前記基材に固定されていることを特徴とする吸音構造体。
【請求項2】
前記カバー材の通気度が1〜100cc/cm2/sであることを特徴とする請求項1に記載の吸音構造体。
【請求項3】
前記カバー材が前記膜振動吸音材における前記膜振動材の表面に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音構造体。
【請求項4】
前記膜振動吸音材は、屈曲により形成された凹部からなるセルを片面側に複数有する非通気性のシート成形体と、前記複数のセルの開口側を覆うように前記シート成形体に積層された前記膜振動材とよりなって、前記膜振動材が前記シート成形体の外周部で固定され、隣り合うセル間の部分では前記シート成形体に固定されてないものからなり、
前記セルの部分が前記空気層であり、前記シート成形体が前記基材の表面に固定されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の吸音構造体。
【請求項5】
前記膜振動吸音材が、複数のセルを有するハニカム材の片面に前記膜振動材が積層され、前記膜振動材が前記ハニカム材の周縁で固定されると共に前記ハニカム材の内側では前記ハニカム材に固定されていないことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の吸音構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−3170(P2012−3170A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140185(P2010−140185)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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