説明

吹き込みノズル

【課題】 羽口から炉内に粉状原料を吹き込む際の損傷が抑制された吹き込みノズルを提供する。
【解決手段】 吹き込みノズル(100)は、転炉または精製炉に粉状原料を吹き込むための吹き込みノズルであって、粉状原料が供給される第1配管(10)と、第1配管よりも小さい径を有し転炉または精製路に粉状原料を供給するための第2配管(20)と、第1配管と第2配管とを接続し第1配管から第2配管にかけてテーパ状に縮径されるレデューサ部(30)と、を備え、レデューサ部におけるテーパ角度θは、tanθ≦15/100を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉または精製炉に粉状原料を吹き込むための吹き込みノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
銅製錬用の転炉または精製炉においては、羽口から空気および原料が吹き込まれる。この場合、原料によって羽口が損傷するおそれがある。そこで、羽口における損傷を抑制するための技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1においては、吹き込んだ精鉱による羽口パイプの損傷を抑制することを目的として、羽口パイプの耐摩耗性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−41557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、転炉または精製炉に粉状原料を吹き込むための吹き込みノズルの損傷を抑制することはできない。
【0005】
本発明は、転炉または精製炉に粉状原料を吹き込む際の損傷が抑制された吹き込みノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る吹き込みノズルは、転炉または精製炉に粉状原料を吹き込むための吹き込みノズルであって、粉状原料が供給される第1配管と、第1配管よりも小さい径を有し転炉または精製炉に粉状原料を供給するための第2配管と、第1配管と第2配管とを接続し第1配管から第2配管にかけてテーパ状に縮径されるレデューサ部と、を備え、レデューサ部におけるテーパ角度θは、tanθ≦15/100を満たすことを特徴とするものである。本発明に係る吹き込みノズルにおいては、レデューサ部におけるテーパ角度が小さいため、レデューサ部の出口付近における流れの乱れが抑制される。この場合、レデューサ部の損傷が抑制される。それにより、転炉または精製炉に粉状原料を吹き込む際の損傷を抑制することができる。
【0007】
レデューサ部におけるテーパ角度θは、tanθ≦7/110以下であってもよい。この場合、レデューサ部の出口における流れの乱れをより抑制することができる。レデューサ部は、一般構造用圧延鋼材(SS400)あるいはステンレスからなるものであってもよい。この場合、吹き込みノズルのコストを抑制することができる。レデューサ部の肉厚は、第1配管の肉厚よりも大きくてもよい。この場合、吹き込みノズルの寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、転炉または精製炉に粉状原料を吹き込む際の損傷が抑制された吹き込みノズルを提供することができる。特にPS転炉において、原料タンクからの原料の供給をPS転炉羽口から行う際に、その配管部の大きさが相違する管部と管部との調整に好ましく用いることが出来る。管部のライフサイクルが伸びることにより、PS転炉或は精製炉の操業が円滑に行われることにより、稼働率も伸びる。安価な管を提供できること、ライフサイクルが伸びることにより、年間で、1000万円のコストダウンとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る吹き込みノズルの構成を説明するための図である。
【図2】比較例に係る吹き込みノズルの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る吹き込みノズル100の構成を説明するための図である。吹き込みノズル100は、第1配管10と第2配管20とがレデューサ部30によって接続された構造を有する。それにより、第1配管10は、レデューサ部30を介して第2配管と連通している。第2配管20は、第1配管よりも小さい径を有する。レデューサ部30は、第1配管10から第2配管20にかけてテーパ状に縮径された構造を有する。
【0012】
吹き込みノズル100は、銅の製錬行程において炉200(転炉または精製炉)に粉状原料を吹き込むためのノズルである。粉状原料は、第1配管10に供給され、レデューサ部30および第2配管20を介して、炉200内に吹き込まれる。
【0013】
転炉においては、吹き込みノズル100を介して、貴金属あるいはその他有価物含有リサイクル原料等の粉状原料が吹き込まれる。精製炉においては、吹き込みノズル100を介して、転炉に吹き込むよりも銅製錬に対して悪影響を及ぼす元素の含有率が少ない貴金属あるいはその他有価物含有リサイクル原料等の粉状原料が吹き込まれる。
【0014】
この吹き込みノズル100においては、粉状原料の流動によってレデューサ部30の出口付近が摩耗等に起因して損傷するおそれがある。この場合、レデューサ部30に穴あきが発生するおそれがある。そこで、本実施の形態においては、レデューサ部30のテーパ角度θを、tanθ≦15/100を満たす値とする。この場合、レデューサ部30における径の変化が緩やかになる。それにより、レデューサ部30の出口付近における流れの乱れを小さくすることができる。その結果、レデューサ部30の出口付近における摩耗等に起因した損傷を抑制することができる。
【0015】
なお、レデューサ部30のテーパ角度θは、tanθ≦7/110を満たすことが好ましい。この場合、レデューサ部30の出口付近における流れの乱れをより小さくすることができる。その結果、レデューサ部30の出口付近における摩耗等に起因した損傷をより抑制することができる。
【0016】
レデューサ部30の損傷を抑制できることから、レデューサ部30に用いる材料にかかる制約を回避することができる。例えば、レデューサ部30の縮径部の内壁をW溶射等によって補強する必要がなくなる。また、一般構造用圧延鋼材(SS400)あるいはステンレス等の安価な材料を用いることができる。それにより、レデューサ部30のコストを抑制することができる。
【0017】
また、レデューサ部30の肉厚は、第1配管10の肉厚よりも大きいことが好ましい。例えば、図1に示すように、レデューサ部30の外径を第1配管10の外径よりも大きくしてもよい。この場合、吹き込みノズル100の寿命を延ばすことができる。
【実施例】
【0018】
実施例においては、上記実施形態に係る吹き込みノズル100を作製し、粉状原料の流動に起因する損傷について調べた。
【0019】
(実施例)
実施例においては、第1配管10の内径を41.6mmとし、外径を48.6mmとした。第2配管20の内径を27.6mmとし、外径を34.0mmとした。レデューサ部30の内径を41.6mmから27.6mmに徐々に低下させ、テーパ角度θを、tanθ=7/110とした。レデューサ部30の外径を60.0mmとした。第1配管10、第2配管20を圧力配管用炭素鋼鋼管で作製し、レデューサ部30を一般構造用圧延鋼材(SS400)で作製した。
【0020】
(比較例)
比較例においては、図2に示すように、第1配管の内径を41.6mmとし、外径を48.6mmとした。第2配管の内径を27.6mmとし、外径を34.0mmとした。レデューサ部の内径を41.6mmから27.6mmに徐々に低下させ、テーパ角度θを、tanθ=7/30とした。レデューサ部の外径を第1配管から第2配管にかけて徐々に減少させた。第1配管、第2配管を圧力配管用炭素鋼鋼管で作製し、レデューサ部を圧力配管用炭素鋼鋼管で作製し、レデューサ部の内壁にW溶射を施した。
【0021】
(分析)
実施例および比較例に係る吹き込みノズルを介して炉内に粉状原料を所定の流量で吹き込み、ノズル寿命を調べた。表1にその結果を示す。なお、吹き込みノズルに粉状原料を供給する際の流量を3t/hとした。表1に示すように、比較例においては、ノズル寿命が吹き込み重量で3tであった。これに比較して、実施例においては、ノズル寿命が吹き込み重量で10tであった。したがって、レデューサ部30におけるテーパ角度を緩めることによって、粉状原料を吹き込む際の損傷が抑制されることが確認された。また、比較例に比較して実施例の製造コストが大幅に低減された。
【0022】
【表1】

【符号の説明】
【0023】
10 第1配管
20 第2配管
30 レデューサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉または精製炉に粉状原料を吹き込むための吹き込みノズルであって、
粉状原料が供給される第1配管と、
前記第1配管よりも小さい径を有し、前記転炉または前記精製炉に前記粉状原料を供給するための第2配管と、
前記第1配管と前記第2配管とを接続し、前記第1配管から前記第2配管にかけてテーパ状に縮径されるレデューサ部と、を備え、
前記レデューサ部におけるテーパ角度θは、tanθ≦15/100を満たすことを特徴とする吹き込みノズル。
【請求項2】
前記レデューサ部におけるテーパ角度θは、tanθ≦7/110を満たすことを特徴とする請求項1記載の吹き込みノズル。
【請求項3】
前記レデューサ部は、一般構造用圧延鋼材(SS400)あるいはステンレスからなることを特徴とする請求項1または2記載の吹き込みノズル。
【請求項4】
前記レデューサ部の肉厚は、前記第1配管の肉厚よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吹き込みノズル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−181097(P2010−181097A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25579(P2009−25579)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】