説明

周波数調整用マスク装置および当該周波数調整用マスク装置を用いた圧電振動子の周波数調整方法

【課題】 周波数調整時のばらつきを極力抑制する周波数調整用マスク装置を提供するとともに、特性ばらつきのない圧電振動子の周波数調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
周波数調整マスク装置は、ワーク5を搭載するパレット1と、パレット1の上面に取着される押え板2と、パレット1の下面に取着される熱遮断板3とからなる。熱遮断板の熱容量は押え板の熱容量より大きく設定しており、パレット1を熱遮断板3に取着した状態でワーク5を凹部11に搭載する。この状態でイオンミーリング装置で金属膜を除去する方法により周波数調整を行う。イオンミーリングはマトリクス状に配されたワーク5に対し順次調整動作を行うが、ワーク毎に前述の検査プローブPを介して周波数カウンタCにより周波数調整進行状況をモニタリングし、調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はATカット水晶振動子や音叉型水晶振動子等の圧電振動子の周波数調整用マスク装置および当該周波数調整用マスク装置を用いた圧電振動子の周波数調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子の例として表面実装型の音叉型水晶振動子を例にとり背景技術を説明する。音叉型水晶振動子は例えば水晶ウェハからフォトリソグラフィー技術により多数個の音叉型水晶振動片の形成と励振電極の形成を一括製造し、ここで得られた励振電極形成された音叉型水晶振動片をセラミックパッケージに搭載し、パッケージに形成された端子と電気的機械的接合を行った後、リッドにてパッケージを気密封止する。一般的にはこれら製造工程中に各種電気的調整を行うステージが数箇所設けられ、例えば周波数調整もこの調整ステージの中で複数回実施される。
【0003】
例えば音叉型水晶振動片がパッケージに格納された後に微調整を行うが、従来この調整は、多数個のパッケージを周波数調整用のマスク装置に対してマトリクス状に格納し、各パッケージの音叉型水晶振動片の調整領域に対応した調整用開口から調整動作を実施する。調整動作は調整対象の音叉型水晶振動片の特性をモニタリングしながら実施する。よく用いられる周波数調整方法は、音叉型水晶振動片に形成された電極に対して、金属材料を付加するパーシャル蒸着法や予め形成された電極(金属)材料を除去するイオンミーリング法をあげることができる。しかしながらこれらいずれの調整方法も調整時には一部の蒸着材料がマスクに付着したり、一部のイオンがマスクに照射されることにより、マスク装置の温度が徐々に上昇するという問題があった。特許文献1はイオンガスにより電極材料を除去する製造方法が開示されているが、このような場合においてもイオンガスがマスクにも照射され、マスクの温度が上昇するという問題があった。
【0004】
ところで圧電振動子は周波数温度特性を有しており、測定する温度条件によってその周波数が変動することがある。例えば音叉型水晶振動子は図7に示すように、その温度特性は常温付近を頂点とする2次曲線となるように設定されるが、上述の多数個の音叉型水晶振動片を格納したマスクを用いた場合、どうしても調整動作に起因してマスクが熱せられ、音叉型水晶振動片の周囲温度は最初の周波数測定時点と最後の周波数測定時点とで大きく異なる。従ってこのような変動する温度環境で周波数調整された音叉型水晶振動片は、最終的に大きな周波数ばらつきを有するものとなり、周波数調整における歩留まりが低下するという問題点を有していた。
【特許文献1】特開2002-299982号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、周波数調整時のばらつきを極力抑制する周波数調整用マスク装置を提供するとともに、特性ばらつきのない圧電振動子の周波数調整方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は調整動作時の雰囲気温度の変動を抑制することを目指したもので、次の各構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
すなわち請求項1に示すように、表面に励振電極が形成された圧電振動板、または表面に励振電極が形成された圧電振動板を保持したパッケージ(以下これらをワークと称する)を複数個格納する周波数調整用マスク装置であって、前記圧電振動板の調整領域の少なくとも一部に対応して調整用開口が設けられているとともに、当該開口領域は他のマスク装置領域に比して熱容量が大きいことを特徴としている。
【0008】
周波数調整はワークの圧電振動板の励振電極に対してパーシャル蒸着法による金属材料を付加することにより行ったり、予め圧電振動板に形成された金属膜領域にイオンミーリングを照射し、金属材料を除去することにより行う。
【0009】
請求項1によれば、周波数調整動作を行う調整用開口部分の熱容量を他のマスク装置領域に比して熱容量を大きくしたので、当該調整用開口部分から他の領域への熱拡散が抑制できる。従って、複数個の周波数調整を連続して行う場合でも、最初のワーク調整時の雰囲気温度と最後のワーク調整時の雰囲気温度との変動を抑制することができる。
【0010】
また請求項2に示すように、ワーク(表面に励振電極が形成された圧電振動板、または表面に励振電極が形成された圧電振動板を保持したパッケージ)を複数個格納する周波数調整用マスク装置であって、当該マスク装置はワークを保持するスペースを有するとともに、前記圧電振動板の調整領域に対応した調整用開口が形成されたパレットと、当該パレットの上部にあって圧電振動板またはパッケージの少なくとも一部を被覆する押え板と、当該パレットの下部にあって、前記調整用開口に対応した開口が形成された熱遮断板とからなり、前記熱遮断板とパレットの合計熱容量は前記押え板の熱容量より大であることを特徴とする構成であってもよい。
【0011】
パレットにはワークが格納される。ワークは前述のとおり、表面に励振電極が形成された圧電振動板、または表面に励振電極が形成された圧電振動板を保持したパッケージを示しているが、圧電振動板の場合は、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて形成された枠体の中に多数個の圧電振動板がマトリクス状に形成された構成であってもよい。
【0012】
パレットは量産性を考慮するとマトリクス状にワークが多数個配置される構成であることが好ましい。またパレットには調整用開口が設けられているが、この開口はワークの前記圧電振動板の調整領域に対応した位置に形成される。圧電振動板の調整領域は、圧電振動板の振動モードや特性に応じて励振電極自体に設定したり、あるいは別途金属膜を形成した調整領域にしてもよい。パレットはワークが収納される凹部が形成されていると好ましく、これにより搭載時の位置決めが容易となる。
【0013】
上記構成においてはパレットと熱遮断板の合計熱容量が押え板の熱容量よりも大となる構成としている。従って、必ずしも熱遮断板の熱容量を押え板の熱容量より大きくする必要はないが、押え板より熱遮断板の熱容量を大きくすることによりパレットと熱遮断板の合計熱容量の調整が容易となり、またパレットへの熱伝導を抑制するので、ワークに対する温度制御の面から好ましい。
【0014】
また熱遮断板は前記調整用開口に対応した開口が形成された構成であり、熱容量が大きい構成とすることにより、調整用開口部分に調整動作により熱が加わったとしても、上部にあるパレットに熱伝導しにくい構成となっている。
【0015】
熱遮断板の熱容量を大きくする例としては、熱遮断板を複数枚重ねて用いる、あるいは熱容量は構成材料の比熱と質量の積により定まるので、比熱の大きい材料を用いること等をあげることができる。
【0016】
また熱遮断板は熱容量を大きくする観点からその厚さは厚いほうが好ましいが、パーシャル蒸着あるいはイオンミーリング等の調整動作時の調整距離(調整源からワークまでの距離)が長くなると調整レートを低下させ、また調整における指向性も低下するので厚くしすぎると好ましくない。パレットの調整用開口部分についても同様であり、厚くしすぎると調整レートを低下させるおそれがあるので、ワークに対する温度の影響等を考慮して設計する必要がある。
【0017】
またパレットと熱遮断板との間にスペーサを介在させ、両者間に空隙層を形成してもよいし、あるいは熱遮断板を複数用いる場合はこれら両者間に空隙層を形成してもよい。空隙層を設けることにより熱遮断作用が顕著となり、調整動作により熱が加わったとしても、より効果的に上部にあるパレットへの熱伝導を遮断することができる。
【0018】
請求項2によれば、周波数調整用マスク装置が、パレットと押え板と熱遮断板の3枚構成からなっているため、圧電振動板やパッケージ等のワークの搭載が容易となり、また洗浄等のメンテナンスも容易となる。またパレットと熱遮断板の合計熱容量が前記押え板の熱容量より大である構成により、調整用開口部に加わった熱がパレット内部のワーク保持スペースへの熱伝導することを抑制し、ワークに加わる熱変化を最小限に抑制することができる。従って、複数個の周波数調整を連続して行う場合でも、最初のワーク調整時の雰囲気温度と最後のワーク調整時の雰囲気温度との変動を抑制することができる。
【0019】
請求項3は上述の周波数調整用マスク装置において、前記パレットと前記熱遮断板が一体的に形成されており、前記押え板より熱容量が大である構成について開示している。例えばパレットをSUS材等のステンレスで構成している場合、熱遮断板も同材料で構成しこれを一体化してもよい。このような構成により、パレットと熱遮断板との位置決めを不要とし、また隣接するワーク収納領域への熱伝導を抑制することができる。
【0020】
さらに請求項4に示すように、請求項1乃至3のいずれかに示す周波数調整用マスク装置において、少なくとも前記パレットか押え板か熱遮断板のいずれかに放熱機構が設けられている構成としてもよい。放熱機構は例えば熱遮断板の上面または下面に凹凸を形成したり、放熱フィンを形成する等、表面積を増加させる構成をあげることができる。
【0021】
請求項4によれば、調整動作時等にマスク装置に加わった熱を外部に放熱させることができ、マスク装置への蓄熱を抑制することができる。
【0022】
本発明は上述の周波数調整用のマスク装置を用いた圧電振動子の周波数調整方法についても提案している。請求項5は請求項1乃至4のいずれかに記載の周波数調整用マスク装置にワークを収納し、調整対象圧電振動板毎に特性をモニタリングしながら、前記調整用開口を介して前記圧電振動板の調整領域に対してイオンミーリングまたはパーシャル蒸着により周波数調整動作を行うことを特徴とする圧電振動子の周波数調整方法である。
【0023】
請求項5によれば、調整動作時にマスク装置の調整用開口近傍に加わった熱が他のマスク装置領域に熱拡散しにくいため、圧電振動板あるいはパッケージ等のワークの雰囲気温度の変動が小さく、また調整対象圧電振動板毎に特性をモニタリングしながら周波数調整を進めるので、周波数調整時のばらつきを極力抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、調整動作時にマスク装置の調整用開口近傍に加わった熱が他のマスク装置領域に熱拡散しにくく、圧電振動板あるいはパッケージ等のワークの雰囲気温度の変動を抑制することができる。よって、周波数調整時のばらつきを極力抑制することにより、良好な特性の圧電振動子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明に用いる周波数調整マスク装置の分解斜視図であり、図2は音叉型水晶振動板をセラミックパッケージに搭載したワークを示す平面図、図3は周波数調整マスク装置の一部断面図である。
【0026】
周波数調整マスク装置は、ワーク5を搭載するパレット1と、パレット1の上面に取着される押え板2と、パレット1の下面に取着される熱遮断板3とからなる。ワーク5は図2に示すように、一面が開口したセラミックパッケージ51に圧電振動板である音叉型水晶振動板52を搭載している。セラミックパッケージ51には外部端子と電気的に接続された電極パッド511,512が形成され、ここに導電接合材Sにより音叉型水晶振動板52が接合されている。また音叉型水晶振動板52には励振電極が形成されているが、この表示は割愛する。音叉型水晶振動板52の両振動腕521,522の先端部分には調整用の金属膜521a,522aが形成されている。
【0027】
パレット1には複数のワーク搭載用の凹部11,11, ...がマトリクス状に形成されている。また各凹部の底面には表裏貫通した調整用開口11a,11aが設けられている。当該調整用開口11a,11a,...はワークの被調整領域の構成によって、その形状、数が決定されるが、本実施の形態においては1つの凹部に2つの調整用開口が形成されている。これは前述の音叉型水晶振動板の調整用の金属膜521a,522aに対応して、調整用開口が各々設けられているためである。なお、当該調整用開口は前記調整用の金属膜521a,522aの両者に対応させた一つの開口であってもよい。
【0028】
押え板2はその外形がパレット1と同サイズでSUS304等のステンレス材からなり、前記凹部に対応して、それぞれ2つの検査用開口21,21が形成されている。当該検査用開口21,21は前記ワークの外部端子5a,5bに対応して設けられており、図3に示すように周波数調整動作実行時には当該検査用開口を介して外部端子5a,5bに検査プローブPを当接して、その特性を周波数カウンタCによりモニタリングする。なお、本実施の形態では押え板にSUS304等のステンレスを用いているが、これに限らず、例えば放熱作用の大きい材料、例えばアルミニウム、銅あるいはこれらの合金等の金属材料をあげることができる。また放熱作用を高めるために表面積を増加させたり、薄板構成にする等の工夫をしてもよい。
【0029】
熱遮断板3もその外形はパレット1と同サイズでSUS304等のステンレス材からなり、パレット1に形成された調整用開口11a,11a、・・・に対応した開口31,31、・・・が形成されている。またスタッド(金属柱)3a,3b,3c,3dが4角に一体的に形成されており、この各スタッドにパレット1の4角に形成された貫通孔1a,1b,1c,1d、および押え板2に形成された貫通孔2a,2b,2c,2dを貫通させて一体化する。
【0030】
なお、押え板2と熱遮断板3は同じ材料を用いているが、熱遮断板の厚さt3は押え板の厚さt1よりも厚い構成としており、これにより熱遮断板の熱容量を大きくしている。基本的にはパレット1の調整用開口11aと熱遮断板3の合計熱容量が押え板の熱容量より大きい構成であればよく、また熱遮断板とパレットの凹部底部厚さt2領域の合計熱容量が押え板の熱容量より大きい構成とすればよいが、熱遮断板3の厚さを厚くすることにより、パレットへの熱伝導を抑制するので好ましい。
【0031】
ところで、パレットの凹部底部の厚さt2は厚いほうが好ましいが、厚くしすぎると、周波数調整効率を低下させることがあるので、厚くしすぎると好ましくない。この熱遮断板は比熱の高い材料を選択することによっても、熱容量を大きくすることができるが、同じ材料のものを複数枚重ねて用いることにより、熱容量をさらに大きくすることができる。例えば図4に示すようにパレット1と熱遮断板3の間にもう一枚熱遮断板4を設けてもよい。これら熱遮断版3の厚さt3と熱遮断版4の厚さt4の合計厚さは、押え板の厚さt1よりも厚く設定している。なお、複数枚の熱遮断板を重ねる場合は両者間に熱歪を生じさせないように、同じ材料を用いると好ましい。
【0032】
以上のような上記周波数調整用マスク装置を用いた圧電振動板の周波数調整方法について説明する。図1に示すようにパレット1を熱遮断板3に取着した状態でワーク5を凹部11に搭載する。この搭載はワークのパッケージ開口部および音叉型水晶振動板52の調整用金属膜521a,522aが下方の調整用開口11に対向するよう実施される。各凹部にワーク5を搭載した後、イオンミーリング装置で金属膜を除去する方法により周波数調整を行う。イオンミーリングはマトリクス状に配されたワーク5に対し順次調整動作を行うが、ワーク毎に前述の検査プローブPを介して周波数カウンタCにより周波数調整進行状況をモニタリングする。所定の周波数まで調整を行った時点でイオンミーリングのイオン照射を遮断し、次のワークの調整に進む。この動作を各ワーク毎に順次繰り返し、すべての調査完了後不良品を除去して、必要な安定化処理、洗浄等を行った後、シーム溶接またはビーム溶接等によりパッケージ開口を図示しないリッドにて気密封止する。
【0033】
次に上記開示した構成において、従来品との比較検証例について説明する。検証に用いたワークは上記実施の形態に示したように音叉型水晶振動板をセラミックパッケージに搭載した構成である。比較に用いた周波数調整用マスク装置は全部で3つであり、本発明品1は、上記実施の形態に示したパレット、押え板、熱遮断板1枚を用いた構成(図3関連品)である。本発明品2は本発明品1に付加して熱遮断板を1枚追加した2枚組構成(図4関連品)であり、この熱遮断板の2枚組構成は本発明品1の熱遮断板に比べて2倍の厚さとなっている。また従来品は熱遮断板を用いない構成である。
【0034】
検証に用いたワークの外形は3mm×1mmサイズの音叉型水晶振動子であり、当該ワークを120個周波数調整用マスク装置に搭載して、上記製造方法に従って周波数モニタリングを行いながら調整用開口からイオンミーリングにより周波数調整を行った。周波数調整直後のばらつきと20分放置後の周波数変動量のばらつきをプロットしたグラフを図8、図9、図10に示す。図8は本発明品1によるデータ、図9は本発明品2によるデータ、図10は従来品によるデータである。これら各データから明らかなとおり、従来品においては周波数調整が後半のワークほど周波数のシフト(変動)量が大きくなっており、調整動作による熱の影響が現れているが、本発明品の2つについてはそのシフトが抑制されていることが理解できる。特に本発明品2においてはシフトばらつきがより良好な状態で抑制されており、熱遮断板を複数用いる等熱容量を大とすることにより、周波数調整時の歩留まりを大幅に向上させうることが理解できる。
【0035】
本発明による周波数調整マスク装置の他の実施の形態を図面とともに説明する。基本的な構成は上述の実施の形態で説明した周波数調整マスク装置と同一であるので、同じ構成部分は同番号を用いて説明する。図5は押え板表面に凹凸加工を施した放熱部22(放熱機構)を形成するとともに、パレットと熱遮断板を一体化した厚肉パレット6構成である点が図3,図4で示した構成と相違している。パレットの底部厚さt5は押え板2の厚さよりも厚く熱容量が大きな構成となっている。またここで使用しているワークはATカット水晶振動板をパッケージに搭載した構成であり、調整動作は励振電極の中央部分に対して行うために調整用開口61の位置は凹部の中央部分に設けられている。なお調整動作は前述のイオンミーリング以外にパーシャル蒸着により行ってもよい。なお本実施の形態においては各マスク装置構成要素がボルトBと締め具Nにより一体化された構成となっている。また本実施の形態においては、厚肉パレットを採用しているので、パレットと熱遮断板を一体化する際の位置ずれの問題を無くすことができるという利点を有している。さらに押え板に放熱部を有する構成であるので、パレット等に伝熱しても当該放熱部により効率的に放熱でき、ワーク周囲の温度上昇を避けることができる。
【0036】
また図6は他の周波数調整用マスク装置を示している。この実施の形態においては、パレット7、押え板2、熱遮断板3からなる構成であるが、押え板2と熱遮断板3のそれぞれに凹凸構成の放熱部22,32(放熱機構)が形成されているとともに、パレット7の熱遮断板側にはスペーサ72が形成され、パレットと熱遮断板間に空隙層73が形成されている。本実施の形態によれば、押え板、熱遮断板の両方に放熱部を有する構成であるので、パレット等に伝熱しても当該放熱フィンにより効率的に放熱でき、またスペーサによる空隙層73の形成によりパレットへの熱遮断が効率的に行われ、ワーク周囲の温度上昇を避けることができる。
【0037】
上記各実施の形態では、音叉型水晶振動子やATカット水晶振動子を例示したが他の振動モードの圧電振動子であってもよく、またパッケージの中に圧電振動板に追加して他の電子素子を格納した構成についても適用することができる。
【0038】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形
で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎ
ず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであ
って、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属す
る変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
圧電振動子の量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施形態による周波数調整用マスク装置の分解斜視図。
【図2】ワークの平面図。
【図3】第1図に示す周波数調整用マスク装置の一部断面図。
【図4】周波数調整用マスク装置の他の例を示す一部断面図。
【図5】周波数調整用マスク装置の他の例を示す一部断面図。
【図6】周波数調整用マスク装置の他の例を示す一部断面図。
【図7】音叉型水晶振動子の温度特性を示す図。
【図8】周波数調整におけるばらつきを示す図。
【図9】周波数調整におけるばらつきを示す図。
【図10】周波数調整におけるばらつきを示す図。
【符号の説明】
【0041】
1、6、7 パレット
2 押え板
3、4 熱遮断板
5 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に励振電極が形成された圧電振動板、または表面に励振電極が形成された圧電振動板を保持したパッケージを複数個格納する周波数調整用マスク装置であって、前記圧電振動板の調整領域の少なくとも一部に対応して調整用開口が設けられているとともに、当該開口領域は他のマスク装置領域に比して熱容量が大きいことを特徴とする周波数調整用マスク装置。
【請求項2】
表面に励振電極が形成された圧電振動板、または表面に励振電極が形成された圧電振動板を保持したパッケージを複数個格納する周波数調整用マスク装置であって、当該マスク装置は圧電振動板またはパッケージを保持するスペースを有するとともに、前記圧電振動板の調整領域に対応した調整用開口が形成されたパレットと、当該パレットの上部にあって圧電振動板またはパッケージの少なくとも一部を被覆する押え板と、当該パレットの下部にあって、前記調整用開口に対応した開口が形成された熱遮断板とからなり、前記熱遮断板とパレットの合計熱容量は前記押え板の熱容量より大であることを特徴とする周波数調整用マスク装置。
【請求項3】
前記パレットと前記熱遮断板が一体的に形成されており、前記押え板より熱容量が大であることを特徴とする請求項2記載の周波数調整用マスク装置。
【請求項4】
少なくとも前記パレットか押え板か熱遮断版のいずれかに放熱機構が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の周波数調整用マスク装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の周波数調整用マスクに、表面に励振電極が形成された圧電振動板、または表面に励振電極が形成された圧電振動板を保持したパッケージを収納し、調整対象圧電振動板毎に特性をモニタリングしながら、前記調整用開口を介して前記圧電振動板の調整領域に対してイオンミーリングまたはパーシャル蒸着により周波数調整動作を行うことを特徴とする圧電振動子の周波数調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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