説明

呼吸器の状態表示装置

【課題】 各呼吸器の吸気ガスの残量を、接続ケーブル等を用いることなく離れた箇所に集中して表示することができる呼吸器の状態表示装置を提供する。
【解決手段】 変換制御部31は、予め定める時間間隔で、圧力センサ33によって検出された圧力容器内の吸気ガスの圧力の圧力値を取得し、取得した圧力値を変換通信部32によって送信する。操作制御部41は、操作通信部42よって圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を操作表示部43に表示する。また、モニタ制御部51は、モニタ通信部52によって圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を、呼吸器ごと、つまり隊員ごとにモニタ表示部53に表示する。モニタ制御部51は、通信データ60に含まれる送信元ID61によって呼吸器の識別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器の状態表示装置に関し、特に圧力容器内に圧縮充填された空気または酸素などの吸気ガスの残量などの情報を表示するための呼吸器の状態表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器は、有害ガスが存在する場所で作業するために用いられる作業用呼吸器と、火災避難時などに用いられる避難用呼吸器とが存在する。作業用呼吸器は、長時間の作業を可能とするために、大容量の空気を蓄積可能な高圧空気容器を有し、大形でその重量も大きい。また避難用呼吸器は、小形軽量に構成され、作業用呼吸器に比べて使用可能時間が短い。
【0003】
図7は、従来技術による呼吸器100の一例を示す斜視図である。図8は、呼吸器100に装備されるヘッドアップディスプレイ(Head Up Display;以下「HUD」という)90の外観を示す図である。呼吸器100は、消防隊員などが装着する避難用呼吸器の一例である。
【0004】
呼吸器100は、圧力容器であるボンベ101、マスクである面体102、および起動ボタンなどを有する変換部93を含んで構成される。変換部93には、ボンベ101に接続され、ボンベ101に圧縮充填された吸気ガスの圧力を検出する圧力センサ92が設けられる。変換部93は、接続ケーブル95によって表示部94に接続される。変換部93は、圧力センサ92によって検出された圧力の圧力値を取得し、取得した圧力値を表示部94に送る。表示部94は、変換部93から受け取った圧力値を、ボンベ101に圧縮充填された吸気ガスの残量として表示する。
【0005】
呼吸器100は、吸気ガスの圧力値を、接続ケーブル95によって接続される表示部94に送信して残量を表示するが、表示部94が呼吸器100を装着する隊員の手元に設けられるので、接続ケーブル95が隊員の動作の障害になる可能性があるいう問題を有している。
【0006】
この問題を解決するための従来技術として、特許文献1に記載される呼吸器がある。この呼吸器は、圧力容器内に圧縮充填された吸気ガスの圧力を圧力センサによって検出する。送信処理回路は、検出された圧力を含む圧力に関する情報を圧力データとして送信する。面体に設けられる受信処理回路は、送信処理回路から送信された圧力データを受信し、受信した圧力データが表わす圧力値に対応して、緑色および赤色の色表示用発光素子を選択的に点灯駆動し、またその点灯周期を圧力に対応して変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−119606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表示部あるいは色表示用発光素子は、呼吸器を装着する隊員の手元あるいはマスクなどに設けられるものであり、呼吸器を装着している隊員のみが見るものである。したがって、隊長は、各隊員が装着している呼吸器の吸気ガスの残量を知るためには、各隊員と無線通信によって連絡して、各隊員が表示部あるいは色表示用発光素子によって確認した残量を隊長に報告させる必要がある。これは、消火活動を行っている隊員にとっては、大きな負担となり、消火活動の妨げとなることもあり得る。
【0009】
本発明の目的は、各呼吸器の吸気ガスの残量を、接続ケーブル等を用いることなく離れた箇所に集中して表示することができる呼吸器の状態表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、人体に装着するための各呼吸器に設けられる送信部であって、呼吸器の圧力容器内に圧縮充填された吸気ガスの圧力を検出する圧力センサを有し、圧力センサによって検出された圧力値を無線通信によって送信する送信部と、
各呼吸器に設けられる送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を呼吸器ごとに表示する第1の表示部とを含むことを特徴とする呼吸器の状態表示装置である。
【0011】
また本発明は、各呼吸器に設けられ、同じ呼吸器に設けられる前記送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を表示する第2の表示部をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、各呼吸器に設けられる前記送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値を送信する中継部をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記送信部は、各送信部を識別するための識別情報が割り当てられ、圧力値を送信するとき、自送信部に割り当てられている識別情報とともに圧力値を送信し、
前記第1の表示部は、圧力値とともに識別情報を受信し、受信した識別情報が割り当てられている送信部が設けられる呼吸器を識別することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第1の表示部は、振動を検出する感振器、点灯部および電源部を含み、
感振器は、振動を検出すると、電源部からの電力を予め定める時間だけ点灯部に供給し、点灯部を点灯させることによって、吸気ガスの残量を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送信部は、人体に装着するための各呼吸器に設けられ、呼吸器の圧力容器内に圧縮充填された吸気ガスの圧力を検出する圧力センサを有し、圧力センサによって検出された圧力値を無線通信によって送信する。そして、第1の表示部は、各呼吸器に設けられる送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を呼吸器ごとに表示する。したがって、送信部は、各呼吸器の吸気ガスの残量を、接続ケーブル等を用いることなく、離れた箇所にある第1の表示部に集中して表示することができる。
【0016】
また本発明によれば、第2の表示部は、各呼吸器に設けられ、同じ呼吸器に設けられる前記送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を表示する。したがって、隊員が装着する呼吸器に装備される第2の表示部にも、第1の表示部に表示される残量と同じ残量を表示することができる。
【0017】
また本発明によれば、中継部は、各呼吸器に設けられる前記送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値を送信するので、第1の表示部が送信部の通信範囲を超える範囲にある場合でも、圧力値を第1の表示部に送信することができる。
【0018】
また本発明によれば、前記送信部は、各送信部を識別するための識別情報が割り当てられ、圧力値を送信するとき、自送信部に割り当てられている識別情報とともに圧力値を送信し、前記第1の表示部は、圧力値とともに識別情報を受信し、受信した識別情報が割り当てられている送信部が設けられる呼吸器を識別する。したがって、呼吸器ごとの残量を、呼吸器ごとに表示することができる。
【0019】
また本発明によれば、前記第1の表示部は、振動を検出する感振器、点灯部および電源部を含む。そして、感振器は、振動を検出すると、電源部からの電力を予め定める時間だけ点灯部に供給し、点灯部を点灯させることによって、吸気ガスの残量を表示する。したがって、残量を確認する必要があるときのみ、電源を投入することができるので、電源の容量の消耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態である呼吸器の状態表示装置1の外観図である。
【図2】呼吸器の状態表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】操作表示部43に設けられる表示ランプの一例を示す図である。
【図4】モニタ表示部53に設けられる表示ランプの一例を示す図である。
【図5】通信データ60の様式を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態である状態表示装置9の構成を示すブロック図である。
【図7】従来技術による呼吸器100の一例を示す斜視図である。
【図8】呼吸器100に装備されるHUD90の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である呼吸器の状態表示装置1の外観図である。図2は、呼吸器の状態表示装置1の構成を示すブロック図である。呼吸器の状態表示装置1は、少なくとも1つのヘッドアップディスプレイ(Head Up Display;以下「HUD」という)2、および1つの集中モニタ5を含んで構成される。図1(a)は、HUD2の外観図であり、図1(b)は、集中モニタ5の外観図である。以下、「呼吸器の状態表示装置」を単に「状態表示装置」という。
【0022】
消防隊の消火活動は、通常数名の隊員および1名の隊長が1組となって行われる。HUD2は、人体、たとえば隊員が装着するための呼吸器、たとえば図7に示した呼吸器100に装備され、1台の呼吸器100に1つのHUD2が搭載される。集中モニタ5は、隊長が携帯し所持する。図2に示した状態表示装置1には、1つのHUD2しか示していないが、1組の隊員の数と同じ数、たとえば隊員の数が5人であれば5つのHUD2によって構成される。
【0023】
HUD2は、変換器3および表示部4を含んで構成される。送信部である変換器3は、変換制御部31、変換通信部32および圧力センサ33を含んで構成される。変換制御部31は、図示しない中央処理装置(以下「CPU」という)および図示しない記憶装置によって構成される。記憶装置は、たとえば半導体メモリによって構成され、CPUによって実行されるプログラム、およびCPUがプログラムを実行するときに必要となる情報を記憶する。変換制御部31は、記憶装置に記憶されるプログラムを実行することによって、変換通信部32を制御する。
【0024】
変換通信部32は、表示部4および集中モニタ5と、無線通信によって、情報の送受信を行う通信装置である。無線通信は、たとえば2,4GHz帯の電波を用いる通信である。変換通信部32は、たとえば日本電気製のTY24FM無線モジュールによって構成される。変換通信部32は、変換制御部31から受け取る情報を送信し、受信した情報を変換制御部31に送る。
【0025】
圧力センサ33は、呼吸器、たとえば図7に示した呼吸器100の圧力容器であるボンベに、出口の開閉バルブの後で接続され、圧力容器内の吸気ガスの圧力の圧力値を検出し、検出した圧力値を変換制御部31に送る。
【0026】
変換制御部31は、予め定める時間間隔、たとえば10秒の時間間隔で、圧力センサ33から、圧力センサ33によって検出された圧力容器内の吸気ガスの圧力の圧力値を取得し、取得した圧力値を変換通信部32によって送信する。
【0027】
第2の表示部である表示部4は、操作制御部41、操作通信部42および操作表示部43を含んで構成される。操作制御部41は、変換制御部31と同様に、図示しないCPUおよび図示しない記憶装置によって構成される。操作制御部41は、操作制御部41に含まれる記憶装置に記憶されるプログラムを実行することによって、操作通信部42および操作表示部43を制御する。
【0028】
操作通信部42は、変換通信部32と同様に、たとえば日本電気製のTY24FM無線モジュールによって構成され、2,4GHz帯の電波を用いて、変換通信部32と情報の送受信を行う。操作通信部42は、操作制御部41から受け取る情報を送信し、受信した情報を操作制御部41に送る。
【0029】
図3は、操作表示部43に設けられる表示ランプの一例を示す図である。操作表示部43は、5つの表示ランプ431〜435を含んで構成される。表示ランプ431〜435は、たとえば発光ダイオードによって構成される。表示ランプ431,432は、緑色の表示ランプであり、表示ランプ433は、黄色の表示ランプであり、表示ランプ434,435は、赤色の表示ランプである。
【0030】
操作通信部42は、変換通信部32によって送信された圧力値を受信し、受信した圧力値を操作制御部41に送る。操作制御部41は、操作通信部42から受け取った圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を操作表示部43に表示する。具体的には、操作制御部41は、たとえば、操作通信部42によって受信した圧力値が30MPa以上のときは、表示ランプ431を点灯し、他の表示ランプを消灯するように制御する。操作通信部42によって受信した圧力値が30MPa未満21MPa以上のときは、表示ランプ432を点灯し、他の表示ランプを消灯するように制御する。操作通信部42によって受信した圧力値が21MPa未満14MPa以上のときは、表示ランプ433を点灯し、他の表示ランプを消灯するように制御する。操作通信部42によって受信した圧力値が14MPa未満7.5MPa以上のときは、表示ランプ434を点灯し、他の表示ランプを消灯するように制御する。操作通信部42によって受信した圧力値が7.5MPa未満のときは、表示ランプ435を点灯し、他の表示ランプを消灯するように制御する。
【0031】
表示ランプ431〜435は、吸気ガスの圧力値に応じて点灯する表示ランプが決められている。吸気ガスの圧力値と吸気ガスの残量とは、相関関係があるので、点灯するランプによって、吸気ガスの残量が表示される。
【0032】
第1の表示部である集中モニタ5は、各隊員が装着している呼吸器100の圧力容器内に充填された吸気ガスの残量を集中して表示する装置である。集中モニタ5は、消火活動の中でも用いられるので、水がかかっても動作することができるように防水加工されている。たとえば電気接点は、絶縁樹脂など防水性のある材料で被覆されている。
【0033】
集中モニタ5は、モニタ制御部51、モニタ通信部52、モニタ表示部53、感振器54および図示しない電池を含んで構成される。モニタ制御部51は、変換制御部31と同様に、図示しないCPUおよび図示しない記憶装置によって構成される。モニタ制御部51は、モニタ制御部51に含まれる記憶装置に記憶されるプログラムを実行することによって、モニタ通信部52およびモニタ表示部53を制御する。モニタ通信部52の図示しない電池は、電源部である。
【0034】
モニタ通信部52は、変換通信部32と同様に、たとえば日本電気社製のTY24FM無線モジュールによって構成され、2,4GHz帯の電波を用いて、変換通信部32と情報の送受信を行う。モニタ通信部52は、モニタ制御部51から受け取る情報を送信し、受信した情報をモニタ制御部51に送る。
【0035】
図4は、モニタ表示部53に設けられる表示ランプの一例を示す図である。モニタ表示部53は、たとえば27個の表示ランプが設けられ、「1」〜「5」の番号が表記されている。「1」〜「5」の番号は、隊員が装着する呼吸器の番号を表している。番号ごとに、つまり呼吸器ごとに、5つの表示ランプを含む1組の表示ランプ群532が設けられている。各組の表示ランプ群532は、点灯部である。
【0036】
各組の表示ランプ群532に含まれる5つの表示ランプは、図3に示した表示ランプ431〜435に対応する表示ランプであり、図3に示した表示ランプ431〜435と同様に、吸気ガスの残量が表示される。残量に応じた点灯状態は、図3に示した表示ランプ431〜435の点灯状態と同じ点灯状態である。すなわち、各隊員が装着する呼吸器に装備される表示部4の表示ランプ431〜435の点灯状態と、集中モニタ5に表記された番号のうち、その呼吸器の番号の表示ランプ群532に含まれる5つの表示ランプの点灯状態とは、同じになる。
【0037】
表示ランプ533は、黄色の発光ダイオードによって構成される。表示ランプ533は、点灯したとき、図示しない電池の残量が少なくなっていることを示す。表示ランプ533は、緑色の発光ダイオードによって構成される。表示ランプ533は、集中モニタ5の電源が投入されている状態であることを示す。
【0038】
モニタ通信部52は、変換通信部32によって送信された圧力値を受信し、受信した圧力値をモニタ制御部51に送る。モニタ制御部51は、モニタ通信部52から受け取った圧力値に基づいて、吸気ガスの残量をとして、呼吸器ごと、つまり隊員ごとにモニタ表示部53に表示する。呼吸器の識別については後述する。
【0039】
感振器54は、たとえば振動を検出する振動センサによって構成され、集中モニタ5の振動を検出する。感振器54は、集中モニタ5の振動を検出すると、図示しない電池の電力を、予め定める時間、たとえば1分の時間、モニタ制御部51、モニタ通信部52およびモニタ表示部53に供給する状態、つまり電源が投入されている状態とする。感振器54は、振動がなくなってから予め定める時間が経過すると、モニタ制御部51、モニタ通信部52およびモニタ表示部53への電力の供給を停止した状態、つまり電源が切断された状態とする。感振器54には、図示しない電池の電力が常に供給されている。感振器54は、予め定める時間を計数するためのタイマを含む。
【0040】
したがって、隊長は、隊員たちが消火活動を行っている場所から離れた位置で、集中モニタ5を持ち上げる等して、集中モニタ5に振動を与えることによって、集中モニタ5の電源を自動的に投入し、各隊員が装着している呼吸器の圧力容器内に圧縮充填された吸気ガスの残量を、集中モニタ5に設けられた表示ランプの点灯状態によって判断することができる。
【0041】
図5は、通信データ60の様式を示す図である。通信データ60は、送信元識別情報(Identification;以下「ID」という)61、送信先ID62および送信情報63を含んで構成される。
【0042】
複数の変換器3、複数の表示部4および1つの集中モニタ5のいずれであるかを識別するために、各変換器3、各表示部4および集中モニタ5のそれぞれに、識別情報であるIDが予め割り当てられる。各変換制御部31の記憶装置、各操作制御部41の記憶装置、およびモニタ制御部51の記憶装置は、各変換器3、各表示部4および集中モニタ5のそれぞれに割り当てられたIDを記憶する。各変換器3に割り当てられるIDは、呼吸器識別情報である。
【0043】
変換制御部31、操作制御部41およびモニタ制御部51は、自装置のIDを送信元ID61とし、送信先の装置のIDを送信先ID62とし、送信する情報を送信情報63として、通信データ60を生成する。自装置および送信先の装置は、変換器3、表示部4および集中モニタ5のうちのいずれかの装置のことである。
【0044】
たとえば、ある隊員Aが装着する呼吸器に装備される状態表示装置1の変換器3に割り当てられるIDが「0011」であり、同じ隊員Aが装着する呼吸器に装備される状態表示装置1の表示部4に割り当てられるIDが「0012」であり、集中モニタ5に割り当てられるIDが「0050」であるとする。このとき、隊員Aが装着する呼吸器に装備される状態表示装置1の変換制御部31が同じ状態表示装置1の操作制御部41に圧力値を送信する場合に、変換制御部31が生成する通信データ60は、送信元ID61が「0011」であり、送信先ID62が「0012」であり、送信情報63が圧力値である。また、隊員Aが装着する呼吸器に装備される状態表示装置1の変換制御部31が集中モニタ5に圧力値を送信する場合に、変換制御部31が生成する通信データ60は、送信元ID61が「0011」であり、送信先ID62が「0050」であり、送信情報63が圧力値である。
【0045】
このように、通信データ60が送信元ID61および送信先ID62を含むので、どの装置からどの装置に送信される情報であるのかを、いずれの装置も識別することができる。したがって、送信側の装置は、送信先を特定して通信データ60を送信することができ、受信側の装置は、自分宛の通信データ60のみを受信することができる。
【0046】
また、モニタ制御部51は、通信データ60に含まれる送信元ID61によって、通信データ60に含まれる圧力値が、どの変換器3から送信された圧力値、つまりどの呼吸器の圧力値であるかを識別することができるので、モニタ表示部53に表記される番号と対応付けることができ、圧力値に基づく吸気ガスの残量を呼吸器ごとに表示することができる。
【0047】
変換器3は、図示しない圧力スイッチおよび図示しない電池をさらに含む。圧力スイッチは、圧力センサ33が検出した圧力が予め定める圧力、たとえば10MPa以上になると、変換器3に含まれる図示しない電池からの電力を、変換制御部31および変換通信部32に供給するように切り換える。
【0048】
表示部4は、図示しない電池をさらに含む。図示しない電池からの電力は、常時、操作制御部41および操作通信部42に供給している。操作通信部42が変換器3から電源投入の指示を受信し、受信した電源投入の指示を操作制御部41に伝える。操作制御部41は、電源投入の指示を認識すると、図示しない電池から操作表示部43への電力供給を開始させる。
【0049】
図6は、本発明の他の実施形態である状態表示装置9の構成を示すブロック図である。状態表示装置9は、状態表示装置1に中継器7を加えた構成である。中継器7を除く構成要素は、図2に示した状態表示装置1の構成要素と同じであり、重複を避けるために、同じ参照符を付して説明を省略する。中継器7は、予めビルなどに設置される。
【0050】
中継部である中継器7は、受信側通信部71および送信側通信部72とを含んで構成される。受信側通信部71および送信側通信部72は、変換通信部32と同様に、たとえば日本電気社製のTY24FM無線モジュールによって構成され、2,4GHz帯の電波を用いて情報の送受信を行う。受信側通信部71は、送信元にかかわらず、送信される通信データ60を受信し、受信した通信データ60を送信側通信部72に送る。送信側通信部72は、受信側通信部71から受け取った通信データ60を送信する。
【0051】
変換通信部32、操作通信部42およびモニタ通信部52による通信距離は、20m〜30mであり、それ以上の距離になると、通信データ60の送受信を行うことができない。中継器7の通信距離も同じ距離であるが、1つの中継器7を介すことによって、通信距離を2倍にすることができる。同様に2つの中継器7を介すことによって、通信距離を3倍にすることができる。
【0052】
上述した中継器7では、送信元にかかわらず、通信データ60を中継したが、集中モニタ5との間でのみ中継するときは、通信データ60の送信元ID61および送信先ID62のうちのいずれかに、集中モニタ5に割り当てられたIDが含まれているときのみ、中継するようにすればよい。
【0053】
上述した実施形態では、変換器3は、吸気ガスの圧力値を呼吸器から取得し、取得した圧力値を表示部4および集中モニタ5に送信して、吸気ガスの残量を表示したが、表示する情報は吸気ガスの残量に限定されるものではない。変換器3が呼吸器から取得することができる情報であれば、どのような情報であっても、表示部4および集中モニタ5に送信して表示することができる。たとえば、隊員の体温、隊員の脈拍、および隊員が動作しているか否かを検出するための振動センサの出力などの情報を、表示部4および集中モニタ5に送信して表示してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、変換器3から表示部4および集中モニタ5に情報を送信して表示しているが、集中モニタ5から表示部4に情報を送信して表示する構成とすることも可能である。
【0055】
また、従来、呼吸器の圧力容器内に圧縮充填された吸気ガスの残量の点検は、個別に残量測定用の個別のメータを用いてチェックされているが、集中モニタ5を用いることによって、残量測定用の個別のメータを用いることなく、複数の呼吸器について同時に点検することができる。
【0056】
また、集中モニタ5に電波強度を測定する測定手段を設け、各隊員との距離を算出するようにしてもよい。一般に電波強度は距離に依存して減少するので、各隊員に装着される呼吸器100の変換器3からの電波強度を測定手段で測定し、測定した電波強度に基づいて、各変換器3、つまり各隊員との距離を算出することができる。
【0057】
集中モニタ5は、たとえば、図4に示した表示ランプ群532のうち、どの表示ランプを点灯するかによって、算出した距離を表示する。具体的には、集中モニタ5は、算出した距離が30m以上であるとき、左端の緑色の表示ランプを点灯し、算出した距離が30m未満20m以上であるとき、左端から第2番目の緑色の表示ランプを点灯し、算出した距離が20m未満10m以上であるとき、真ん中の黄色の表示ランプを点灯し、算出した距離が10m未満であるとき、右端から第2番目の赤色の表示ランプを点灯する。表示ランプは、集中モニタ5に、吸気ガスの残量を表示するか距離を表示するかを切り換える切り換えスイッチを設けて切り換えるようにしてもよいし、距離を表示するための専用の表示ランプを設けてもよい。
【0058】
このように、状態表示装置1は、電波強度を測定して、隊員との距離を表示ランプに表示することによって、隊員が行方不明になった際に、隊員の所在を捜索するための装置として利用することができる。
【0059】
このように、変換器3は、人体に装着するための各呼吸器に設けられ、呼吸器の圧力容器内に圧縮充填された吸気ガスの圧力を検出する圧力センサ33を有し、圧力センサ33によって検出された圧力値を無線通信によって送信する。そして、集中モニタ5は、各呼吸器に設けられる変換器3から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を呼吸器ごとに表示する。したがって、変換器3は、各呼吸器の吸気ガスの残量を、接続ケーブル等を用いることなく、離れた箇所にある集中モニタ5に集中して表示することができる。
【0060】
さらに、表示部4は、各呼吸器に設けられ、同じ呼吸器に設けられる変換器3から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を表示する。したがって、隊員が装着する呼吸器に装備される表示部4にも、集中モニタ5に表示される残量と同じ残量を表示することができる。
【0061】
さらに、中継器7は、各呼吸器に設けられる変換器3から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値を送信するので、集中モニタ5が変換器3の通信範囲を超える範囲にある場合でも、圧力値を集中モニタ5に送信することができる。
【0062】
さらに、変換器3は、各変換器3を識別するための識別情報が割り当てられ、圧力値を送信するとき、自変換器3に割り当てられている識別情報とともに圧力値を送信し、集中モニタ5は、圧力値とともに識別情報を受信し、受信した識別情報が割り当てられている変換器3が設けられる呼吸器を識別する。したがって、呼吸器ごとの残量を、呼吸器ごとに表示することができる。
【0063】
さらに、集中モニタ5は、振動を検出する感振器54、各組の表示ランプ群532および図示しない電池を含む。そして、感振器54は、振動を検出すると、図示しない電池からの電力を予め定める時間だけ各組の表示ランプ群532に供給し、各組の表示ランプ群532を点灯させることによって、吸気ガスの残量を表示する。したがって、残量を確認する必要があるときのみ、電源を投入することができるので、図示しない電池の容量の消耗を抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,9 状態表示装置
2,90 HUD
3,93 変換部
4,94 表示部
5 集中モニタ部
7 中継器
31 変換制御部
32 変換通信部
33,92 圧力センサ
41 操作制御部
42 操作通信部
43 操作表示部
51 モニタ制御部
52 モニタ通信部
53 モニタ表示部
54 感振器
55 電池
95 接続ケーブル
100 呼吸器
101 ボンベ
102 面体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着するための各呼吸器に設けられる送信部であって、呼吸器の圧力容器内に圧縮充填された吸気ガスの圧力を検出する圧力センサを有し、圧力センサによって検出された圧力値を無線通信によって送信する送信部と、
各呼吸器に設けられる送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を呼吸器ごとに表示する第1の表示部とを含むことを特徴とする呼吸器の状態表示装置。
【請求項2】
各呼吸器に設けられ、同じ呼吸器に設けられる前記送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値に基づいて、吸気ガスの残量を表示する第2の表示部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の呼吸器の状態表示装置。
【請求項3】
各呼吸器に設けられる前記送信部から送信される圧力値を受信し、受信した圧力値を送信する中継部をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の呼吸器の状態表示装置。
【請求項4】
前記送信部は、各送信部を識別するための識別情報が割り当てられ、圧力値を送信するとき、自送信部に割り当てられている識別情報とともに圧力値を送信し、
前記第1の表示部は、圧力値とともに識別情報を受信し、受信した識別情報が割り当てられている送信部が設けられる呼吸器を識別することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の呼吸器の状態表示装置。
【請求項5】
前記第1の表示部は、振動を検出する感振器、点灯部および電源部を含み、
感振器は、振動を検出すると、電源部からの電力を予め定める時間だけ点灯部に供給し、点灯部を点灯させることによって、吸気ガスの残量を表示することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の呼吸器の状態表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate