説明

呼気中の窒素酸化物を測定する装置および方法

本発明は、呼気中の一酸化窒素(NO)を測定するセンサー装置(100)を開示する。センサー装置(100)の実施態様において、センサー装置(100)は、注入口(102)、前処理素子(104)及びセンサー電極(106)を有する。注入口(102)は呼気を受け入れるように構成されている。前処理素子(104)は注入口(102)から呼気を受け入れ、呼気の化学性状を調節する。センサー電極(106)はセンサー装置(100)内の室に連結されている。当該室は前処理素子から前処理された呼気を受け入れるように構成されている。センサー電極(106)は、呼気中の窒素酸化物(NO)成分を検知するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2006年4月14日出願の米国仮特許No.60/792,308号の優先権を主張し、その内容のすべてを参照により本発明に引用する。
【背景技術】
【0002】
喘息が民間人の間で流行している。近年、米国において喘息の罹患率が増加しており、米国人の患者は1500万人にのぼり、500万人が子供である。毎年、緊急治療室に200万人が受診し、約50万人が入院し、4500人が亡くなっている。
【0003】
喘息のような炎症性疾患は、しばしば、呼気中の一酸化窒素(NO)のレベルが増加することを引起す。同様に、喘息治療の有効性は、しばしば、呼気中のNOの増加および減少をモニタリングすることにより評価できる。それゆえ、NOは、しばしば、喘息や他の炎症性疾患患者を評価する指標として使用される。
【0004】
人間の呼気中のNOを検知するのに使用できる公知の技術としては、スウェーデンのAerocrine社から入手できるNIOX及びNIOXMINOの装置がある。これらの公知の装置は、化学反応から生じる熱を伴わない発光である化学発光を使用して人間の呼気中のNOを検知する。これらの公知の装置は、人間の呼気中の少量のNOを検知できるものの、その作動操作についてはある制限がある。例えば、これらの装置では、呼気で放出されるNO(eNO)の一貫した検知解読ができるように維持するためのキャリブレーションが頻繁に要求される。特に、いくつかの公知の装置において、このキャリブレーションを2週間毎に作成しなければいけない。呼気中のNOを検知するために化学発光を使用する装置は、このように頻繁にキャリブレーションを作成し直すのが通常である。
【0005】
更に、この種の装置に伴う価格と応答時間の間の得失評価も重要である。ある種の装置において、比較的速い応答時間で作動するものの、価格的に個人で購入するには高価すぎるものである。それゆえ、化学発光を使用した最も正確な装置は、通常、定期診断における症状の進行をモニタリングする医療用機械レベルでしか入手が困難である。この種の装置のコストの問題が、最も正確な化学発光技術による装置の普及を拒む要因である。一方、他の種の装置は価格的にも手頃に入手できる。しかしながら、そのような手頃な装置は応答時間が極めて遅い。
【0006】
更に、これらの公知の装置は、測定の際に非常に多くの呼気を比較的長い間吹き込む必要があるため、小さな子供や老人への使用は向かないという問題もある。例えば、ある装置では、NOを測定するために3秒間安定状態で呼気を吹き込む必要がある。そのような安定状態を維持するために、患者は5〜8秒、場合によっては10秒に至るまで一定の呼気を吹き込む必要がある。小さな子供や老人がこのような長時間の呼気の吹き込みを行うことは困難であるため、公知の装置は全ての患者に使用が薦められるというものではない。更に、喘息患者のような炎症性疾患を有する患者は持続した息を保つのはしばしば困難であり、化学発光を使用した従来の装置を使用して正確に矛盾なく測定するだけの呼気は得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、呼気中の一酸化窒素を測定する装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の装置の実施態様について概説する。本発明の装置は、呼気中の窒素酸化物(NO)を測定するセンサー装置である。本発明の装置は、注入口と前処理素子とセンサー電極とから成る。注入口は、呼気を受入れ注入するように構成される。前処理素子は、注入口より導入された呼気を受入れ、呼気の化学性状を調節する。センサー電極はセンサー装置内の室に連結されている。室は前処理素子から前処理された呼気を受入れ、前処理された呼気中の窒素酸化物(NO)成分を検知するように構成されている。本発明の装置の他の実施態様についても後述する。
【0009】
本発明の方法について概説する。本発明の方法は、呼気中の一酸化窒素(NO)の測定方法である。本発明の方法は、呼気を受け入れる工程と、受け入れた呼気の化学的性状を前処理する工程と、前処理した呼気をセンサー電極に誘導する工程と、呼気中の窒素酸化物(NO)成分を検知する工程とから成る。本発明の方法の他の実施態様についても後述する。
【0010】
本発明の他の実施態様および技術効果については、図面を使用し、種々の実施態様および原理を例示することによって以下に詳述する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の装置は、上記従来装置の問題点を解決し、呼気中の一酸化窒素を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記で要約された本発明および添付図面に例示された実施形態は、本発明を容易に理解するため、種々の異なる構成に配置、設計変更できることは容易に理解できる。それゆえ、以下の図面に例示された特定の実施形態は本発明の範囲を限定するものではなく、種々の実施態様の単なる例示である。本発明の種々の要旨は図面に記載されているが、図面内の実施態様は、とくに断わりのない限り大きさを特定する必要はない。
【0013】
本発明の要旨または構成要素の性状から逸脱しない範囲内において、種々の他の実施態様も取り得る。記載された実施態様は単なる例示と考えられるべきで、本発明はこれらに限定されない。本発明は以下の記載よりも、むしろ特許請求の範囲によって示されるものである。特許請求の範囲と同等の手段および範囲内での全ての変更も、本発明の範囲内とする。
【0014】
本明細書を通じて、その要旨、技術効果または同様の文言は、本発明を実施する際の種々の実施態様のすべての要旨および技術効果を暗示するものではない。要旨および技術効果を参照する用語は、実施態様に係わる特定の要旨、技術効果、特性が本発明の少なくとも1つの実施態様に包含されることを意味するとして理解されるべきである。それゆえ、要旨および技術効果の議論ならびに本明細書を通じた同様の用語は、必ずしも必要とされないが、同じ実施態様を参照するものである。
【0015】
更に、1つ以上の実施態様において記載された本発明の要旨、技術効果および性質は、種々の適切な方法により組合せてもよい。当業者ならば、特定の実施態様の1つ以上の要旨または技術効果を用いずに本発明を実施できると理解するであろう。他の例示、追加され得る要旨および技術効果は、本発明のすべてに記載される実施態様に無いある実施態様において理解されるであろう。
【0016】
本明細書を通じて「ある実施態様」、「1実施態様」または同様の用語は、その実施態様に係わる特定の要旨、構造または性質を、本発明の少なくとも1つの実施態様において含むことを意味する。それゆえ、本明細書を通じて「ある実施態様」、「一実施態様」または同様の用語が記載された場合、必ずしも必要とされないが、同じ実施態様を参照するものである。
【0017】
以下の記載において、ハウジング、隔壁、室などの多数の特定の構成要素は、本発明を理解する上で付与されるものである。当業者ならば、これらの1つ以上の構成要素無しで、または他の方法、構成要素、材料、その他色々のものを使用することにより本発明を実施できることが理解できるであろう。その他の例、公知の構造、材料または真空源などの操作は、本発明の要旨を曖昧にすることを避けるため、詳細について記載または図示を行っていない。
【0018】
図1は、本発明のセンサー装置100の一実施態様のブロック略図を示す。記載されているセンサー装置100は、注入口102と、触媒104と、センサー電極106と、排出口108を含む。センサー装置100は、更に、電気回路110とディスプレイ装置112を含む。もし呼気が一酸化窒素(NO)成分をある量含有すれば、呼気が注入口102、触媒104、センサー電極106及び排出口108を介することにより、センサー装置100は検知測定することができる。ある実施態様において、センサー装置100は10ppbのNOレベルを検知測定することが出来る。センサー装置100の他の実施態様として、1ppbのNOレベルを検知測定することが出来る。この方法では、センサー装置100は、喘息患者を含む患者によって呼吸状態の変化を定期的にモニタリングすることに使用されてもよい。
【0019】
更に、センサー装置100の物理的大きさや重量は、その実施形態によって種々取り得る。ある実施態様において、センサー装置100は一人で持ち運びが可能なほど小さく軽い。例えば、センサー装置100は10ポンドよりも軽い。他の実施態様において、センサー装置100は2ポンドよりも軽い。大きさについては、ある実施態様において、センサー装置100は300cm未満である。また、ある実施態様において、センサー装置100は50cm未満である。更にある実施態様において、センサー装置100は20cm未満である。そして、更にある実施態様において、センサー装置100は5cm未満、更に2cm未満である。センサー装置100の大きさや重量は個人使用を比較的容易にするが、1人以上の患者のための医師によるセンサー装置100の使用についても勿論除外されない。
【0020】
ある実施態様において、触媒104は呼気の化学性状を調節する。換言すれば、触媒104はセンサー電極106に呼気を送る前に呼気の前処理を行う。触媒104としては、種々の種類および触媒104の組合せが実施可能である。例えば、触媒104は、交差感受性を最小とするために、呼気の組成を変える。それゆえ、触媒104は、一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO)に酸化および炭化水素をCOと水蒸気(HO)に酸化することが容易であり、二酸化硫黄(SO)を吸収し、アンモニア(NH)を窒素(N)と水蒸気(HO)に酸化することを容易にする。記載を簡単にするため、触媒反応プロセスのこれらの形態を、転換、酸化、吸収、平衡の4つに分類することにする。しかしながら、触媒104の実施態様はこれらの1つ以上の組合せであってもよく、これらの触媒反応プロセスの全てを必要としなくてもよい。
【0021】
ある実施態様において、触媒104は、白金、酸化ルテニウム(IV)(RuO)、酸化コバルト(Co)等のCOをCOに酸化する酸化触媒である。この種の触媒としては、米国特許出願第11/137693号明細書(出願日2005年5月25日)、米国仮特許出願第60/574622号明細書(出願日2004年5月26日)に記載されており、その内容の全部を参照により本発明に引用する。他の実施態様において、触媒104はセンサー電極106に呼気を接触させる前に、予め呼気中の望ましくない成分を取り除くのに使用される。例えば、前処理素子104は、炭化水素やCO、反応生成物であるN、O、NO、CO、HO(すなわち水)等を受容する。ある特定の実施態様において、前処理素子104は、アルミナ(Al)布を含んでいてもよい。ある実施態様において、前処理素子104は、前処理素子104によって呼気の流れが著しく妨げられないような多孔性触媒であってもよい。この場合、センサー装置100は、短時間で少量の呼気を効果的に測定できるように構成される。
【0022】
触媒104または他の前処理素子によって呼気が前処理された後、呼気はセンサー電極106で処理される。ある実施態様において、センサー電極106は、呼気中のNOの非常に低いレベルも検知できる(例えば10ppb未満)高感度素子である。また、センサー電極106は、二酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NO)を検知できてもよい。
【0023】
センサー装置100の実施態様の種類によって、種々のセンサー電極106が使用できる。ある実施態様において、センサー電極106は混成電位技術を使用したものである。また、ある実施態様において、センサー電極106は排気ガスセンサーに類似したものであってもよい。また、他の実施態様において、センサー装置100は、酸素センサー、NOセンサー、他の種のセンサー等の複数のセンサー電極106を有していてもよい。センサー電極106の種々の例示は、米国特許第6764591号明細書(2004年7月20日特許発行)および米国特許第6843900号明細書(2005年1月18日特許発行)に詳細が記載されており、その全内容を参照により本発明に引用する。
【0024】
センサー電極106を作動させると、対応するNOx成分や他のガス成分を検知した応答として電極信号(例えば電位差信号)を発生する。また、もし2以上のセンサー電極106を作動させる場合は、それぞれのセンサー電極106が個別の電極信号を発生してもよい。例えば、NOセンサー電極と酸素センサー電極とを作動させるようなセンサー装置100の実施態様において、1つがNOセンサー電極106から発生し、もう1つが酸素センサー電極106から発生する2つの電極信号を使用してもよい。電極信号が発生し、呼気は排出口108を介してセンサー装置から排出される。
【0025】
センサー電極106で発生する電極信号は、引き続き電気回路110に送信され、呼気中のNOレベルが決定される。ある実施態様において、電気回路110は、NOを測定して得た電極信号をディスプレイ112上に表示することが出来る。また、電気回路110は、他の種類の表示、尺度、メッセージ等をディスプレイ112に供給して、使用者に伝達してもよい。例えば、ディスプレイ112は、NO測定値のような量的表示を行ってもよい。また、他の実施態様において、ディスプレイ112は喘息の存在および/またはその重度(例えば、NOレベルが低いか高いか)等の質的表示を行ってもよい。更に、薬物の服用、投薬の表示、処方せんの表示、治療の指示、医師の診察の指示や緊急治療の指示などをディスプレイ112上に表示してもよい。
【0026】
それゆえ、センサー装置100の実施態様として、使用者は呼気を持続させる必要なく、通常の呼吸によって、呼気の成分を測定および/または表示することが出来る。換言すれば、センサー装置100は、室またはその他の装置内に呼気を供給維持する必要なく、少量の呼気によって呼気組成の表示または測定を行うことが出来る。従って、センサー装置100は、NO測定する際に、余計な力を入れて長時間呼吸することなく患者の自然な状態の呼吸パターンを使用できる。
【0027】
図2に、図1に示すセンサー装置100のより詳しいブロック略図を示す。上記の構成に加えて、図2に示すセンサー装置100は、室114、電極ヒーター116、触媒ヒーター118及び電子記憶装置122を有する。
【0028】
図2は、図1に示す特定の触媒104と比較して、より一般的な前処理素子104を示している。前処理素子104は触媒であってもよく、触媒でない他の種の前処理素子104で実施されてもよい。それゆえ、この記載における触媒104の符号は前処理素子104の例示を示しており、本発明はこれに限定されるものではないと理解すべきである。
【0029】
室114は、呼気を特定時間保持する室である必要は無い。むしろ、室114は保持室であっても保持室でなくてもよい。ある実施態様において、室114は、例えば、センサー電極106が対応する電極信号を発生している間の、前処理素子104から排出口108に呼気が通ずるための単なる配管または通路である。ある実施態様において、室114の容積が300cc程度であり、また、ある実施態様において、室114の容積が50cc未満であり、更に、ある実施態様において、室114の容積が20cc未満であり、また、ある実施態様において、室114の容積が5cc未満であり、更に、ある実施態様において、室114の容積が2cc未満である。その容積は全センサー装置100に適合可能である。
【0030】
ある実施態様において、電極ヒーター116は、センサー装置100の作動に先だって、センサー電極106を所定温度に予備加熱する。所定温度および作動温度の範囲は、使用するセンサー電極106の種類による。例えば、電極ヒーター116は、呼気中のNOを検知するように構成されたセンサー電極106を約450〜550℃の作動温度範囲に予備加熱する。他の例では、電極ヒーター116は、呼気中の酸素を検知するように構成されたセンサー電極106を約700〜800℃の作動温度範囲に予備加熱する。また、他の例では、電極ヒーター116は、他の種類のセンサー電極106を約300〜1000℃の作動温度範囲に予備加熱する。他の温度および温度範囲を使用する場合は、センサー電極の種類にもよるが、上記のセンサー電極が記載された文献に説明されている。ある実施態様において、複数の電極ヒーター116を対応する複数のセンサー電極116に備えてもよい。センサー電極106を予備加熱するのに割り当てられるまたは使われる時間は、センサー電極106の種類、電極ヒーター116の種類、さらにセンサー装置100の構造による。同様に、触媒ヒーター118は、前処理素子104の効率を高めるために、触媒などの前処理素子104を所定温度に予備加熱する。
【0031】
ある実施態様において、電気回路110は、記憶装置などの種々の電気部品を含んでいる。電気回路110の異なる実施態様として、読み出し専用メモリー(ROM)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、フラッシュメモリー、着脱可能メモリー媒体などの異なる種類の記憶データまたはデータ貯蔵技術を有する記憶装置122を含んでいてもよい。特に詳述しないが、電気回路110は、中に他の電気部材が含まれていてもよい。例えば、電気回路110のある実施態様において、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(エーシック、ASIC)等のプロセッサを電気回路110の中に含んでいてもよい。電子記憶装置122を含む電気回路110はその形状構成、配置、技術分野など特に限定されない。
【0032】
ある実施態様において、電子記憶装置122は種々のデータを貯蔵できるように構成されている。例えば、電子記憶装置122は、履歴124、ユーザー選択126、参照テーブル(ルックアップテーブル)128を記憶している。他の実施態様において、追加データや他のデータを記憶できる。ある実施態様において、履歴124は、特定の使用者のNOレベルの記録の記載を含む。他の実施態様において、ユーザー選択126はセンサー装置100の設定をデフォルト及び/又はユーザー特別設定にする機能を有する。例えば、使用者のNOレベルの量的または質的あるいはその両方のメッセージを受けるのが好ましいかを使用者が選択して表示できる。
【0033】
ある実施態様において、参照テーブル128は、電極信号に関連しNO値に対応するデジタル信号を解釈するためにデータを蓄える。例えば、センサー電極106は、電極信号としてアナログ電位信号を発生し、デジタル−アナログ変換器(DAC,図示せず)は電極信号をデジタル信号に変換する。電気回路110は、参照テーブル128にインデックスを付して使用し、NOレベルを電極信号に対応させて決定してもよい。
【0034】
参照テーブル128は、1又は2以上のセンサー電極106から発生する電極信号の種類によって実施されるべきである。例えば、NOセンサー電極106が実施される場合、参照テーブル128の実施態様として、アナログNO電極信号に対応するデジタル信号に基づくNO測定レベルを出力する。他の実施態様として、NO及び酸素センサー電極106の両方が実施されている場合、参照テーブル128の実施態様として、NO及び酸素のアナログ電極信号に対応するデジタル信号の組合せ(例えば比率)に基づくNO測定レベルを出力する。なお、そのような複数の信号の組合せ(例えばNO電極信号と酸素電極信号)は、アナログ領域で行われてもデジタル領域で行われてもよい。
【0035】
更に、参照テーブル128の実施態様はNOレベルを直接出力するのに使用されるが、他の実施態様において、量的な表示よりもむしろ質的な表示の出力に使用されてもよい。また、電気回路110の他の実施態様として、電子記憶装置122に蓄えられた参照テーブル128に代えて他の技術手段を使用してもよい。
【0036】
センサー装置100の幾つかの部材について図1及び2を参照しながら上記に示し、解説したが、センサー装置100はより少ない又はより多く部材を有していてもよい。例えば、ある実施態様において、装置の1部または全部の部材に電力を供給する電力供給源のような回路を有していてもよく、また、センサー装置100を他の電子装置と接合させるようなインターフェイス基板を有していてもよい。インターフェイス基板は、有線または無線のための回路を有していてもよく、例えば、規格化された又は所有者専用の連絡プロトコル等の種類のホストコンピューターを伴っていてもよい。センサー装置100の他の実施態様として、音としてフィードバックされる回路(例えば、スピーカー)、視覚的な表示器(例えば、発光ダイオード(LED))、触知ボタン、英数字キーパッド等のインターフェイス部材を付加してもよい。
【0037】
図3は、図1に示すセンサー装置100の他の実施態様のブロック略図を示す。図示されるセンサー装置100は、ハウジング132、ディスプレイ112、注入口102及び排出口108を有する。上述のように、注入口102は、加工処理される呼気を受け(入ってくる矢印で示す)、センサー装置100を呼気が通過して、排出口108から呼気を排出する(出て行く矢印で示す)。ある実施態様において、注入口102は、注入口102の回りが実質的にシールされ、センサー装置100に供給する呼気の量を最小限にできるよう、使用者の口および/または鼻に直接接触するのを容易にするように構成されていてもよい。他の実施態様において、注入口102は、使用者の口および/または鼻に直接接触することなく呼気を受け入れるように構成されていてもよい。直接接触しないためにいくらかの呼気は注入口102に入る前に逃げてしまうが、センサー装置100は、比較的少量の呼気を使用しても正確に作動するのに十分な感度を有する。
【0038】
図4は、図1に示すセンサー装置100において、受器134と、呼気を注入口102に導入するための通路136とを有する他の実施態様のブロック略図を示す。上記の注入口102で説明したように、受器134は使用者の口に直接接触するのを容易にするように構成されている。また、受器134は、使用者の鼻または使用者の口および鼻に直接接触するのを容易にするように構成されていてもよい。ある実施態様において、受器134は、使用者の口または鼻に直接接触することなく呼気を受け入れるように構成されていてもよい。更に、受器134は、受器134が使用される呼気の形態により種々の形状を取り得る。ある実施態様において、受器134の形状は使用者の通常の呼吸を容易に受け入れるような形状である。また、ある実施態様において、受器134の形状は、使用者の通常の呼吸に対して比較的活動中の呼吸を容易に受け入れるような形状である。
【0039】
受器134で受け入れられた呼気は、通路136を介してセンサー装置100の注入口102に供給される。ある実施態様において、通路136はNOを吸収しないかほとんどわずかにしか吸収しないチューブである。例えば、通路136は、呼気中のNOの実質的全量を供給するために、テフロン(登録商標)またはシリコンのような内部表面部材で形成されているものであってもよい。また、通路136は内部表面が別の材料から出来ていてもよい。更に、通路136は、通路136の全体が耐NO材料で形成されていてもよく、また、通路136の内部表面に耐NO材料がコーティングされていてもよい。
【0040】
図5は、前処理された呼気中のNOを検知することによって呼気中のNOのレベルを決定する本発明の方法140の一実施態様のブロック略図を示す。本発明の方法140のある実施態様において、上記のセンサー装置100を使用して実施される。しかしながら、本発明の方法140は、他の種のセンサー装置を使用して実施されてもよい。
【0041】
図示されている本発明の方法140において、上述のセンサー装置100は患者からある量の呼気を受ける(工程142)。ある実施態様において、呼気は注入口102を介して受け入れられる。更に、別の実施態様において、呼気は受器134及び通路136を介して最初に受け入れられる。そして、前処理素子104において、例えば上述した前処理触媒を用いて呼気を前処理する(工程144)。ある実施態様において、前処理素子104は多孔質であり、呼気は前処理素子104を介してセンサー電極106に流れる。
【0042】
ある実施態様において、前処理された呼気は、室114で処理される。センサー電極106は室114と連結しており、前処理された呼気中のNOを検知する(工程146)。呼気中のNOの検知において、センサー電極106は、検知されたNOに基づいて電極信号を発生する(工程148)。ある実施態様においてセンサー電極106は電極信号を電気回路110に送信し、電極信号をNOレベルに変換する(工程150)。そして、センサー装置100は、呼気中のNO量に関するメッセージを表示する(工程152)。上述のように、表示されるメッセージは量的表示であっても、質的表示であっても、あるいは両者の組合せであってもよい。本発明の方法140は以上の工程で終了する。
【0043】
図6は、前処理された呼気中の二酸化窒素(NO)を検知することによって呼気中のNOのレベルを決定する本発明の方法160の一実施態様のブロック略図を示す。図5に示す本発明の方法140と異なる点は、本発明の方法160は、呼気中のNOレベルを決定するのにNOを検知するよりもむしろNOを検知し、検知されたNOの結果を使用する。本発明の方法160のある実施態様において、上記のセンサー装置100を使用して実施される。しかしながら、本発明の方法160は、他の種のセンサー装置を使用して実施されてもよい。
【0044】
患者からある量の呼気を受ける工程142、呼気を前処理する工程144及び使用者にメッセージを表示する工程152は実質的に図5の本発明の方法140に示す工程と同じである。それゆえ、これらの工程については、更なる説明はない。しかしながら、呼気中のNOを検知する工程の代りに、呼気中のNOを検知する(工程162)。ある実施態様において、センサー電極106は、NOに対するよりもNOに対しての方がより感度が高い。それゆえ、前処理工程144は、呼気中のNOを実質的にNOに変換し、NOを測定することにより呼気中のNOの量を間接的に測定する。この方法は、センサー装置100のある実施態様において正確さを増すことが出来る。
【0045】
呼気中のNOの検知において、センサー電極106は検知されたNOに基づく電極信号を発生する(工程164)。ある実施態様において、センサー電極106は、電極信号を電気回路110に送信し、電極信号をNOレベルに変換する(工程166)。本発明の方法160の残りの工程は、上述の図5に示した本発明の方法140に記載したものと同様である。
【0046】
図7は、前処理された呼気中のNOと酸素とを検知することによって呼気中のNOのレベルを決定する本発明の方法170の一実施態様のブロック略図を示す。本発明の方法140及び160と異なる点は、NOと酸素の両方を検知し、呼気中のNOレベルを決定するのにNO又はNOだけを検知するよりも、むしろ検知されたNO及び酸素の結果を使用する。本発明の方法170のある実施態様において、上記のセンサー装置100を使用して実施される。しかしながら、本発明の方法170は、他の種のセンサー装置を使用して実施されてもよい。
【0047】
患者からある量の呼気を受ける工程142、呼気を前処理する工程144及び使用者にメッセージを表示する工程152は実質的に図5の本発明の方法140に示す工程と同じである。それゆえ、これらの工程については、更なる説明はない。しかしながら、呼気中のNOのみを検知する工程の代りに、呼気中のNO及び酸素を検知する(工程172)。ある実施態様において、センサー装置100は、呼気中のNO及び酸素成分の両方を個別に検知できるセンサー電極106を有する。呼気中のNO及び酸素成分の検知において、センサー電極106は検知されたNO及び酸素成分に基づく電極信号を発生する(工程174)。ある実施態様において、センサー電極106は、電極信号を電気回路110に送信し、電極信号をNOレベルに変換する(工程176)。本発明の方法170の残りの工程は、上述の図5に示した本発明の方法140に記載したものと同様である。
【0048】
図8は、図1に示すセンサー装置100の一実施態様と使用者との関係に関する方法180の一実施態様のフローチャート概略図を示す。本発明の方法180のある実施態様において、上記のセンサー装置100を使用して実施される。しかしながら、本発明の方法180は、他の種のセンサー装置を使用して実施されてもよい。
【0049】
図示された本発明の方法180は、電極ヒーター116のスイッチを入れて(工程182)センサー電極100を作動させる。この工程は、上述のように電極ヒーター116を予備加熱する。使用者はディスプレイのセットを行い(工程184)または、センサー装置100の初期化における使用者選択を行う。使用者はセンサー電極106が電極ヒーター116によって作動温度範囲まで予備加熱されるのを待つ(工程186)。ある実施態様において、電極ヒーター116がセンサー電極106を予備加熱するのに数分しかかからない。一旦、センサー電極106が作動温度範囲に入っているかを確認し(工程188)、使用者はセンサー装置100から準備が出来た表示を受ける(工程190)。例えば、センサー装置100は、ディスプレイ112上に準備が出来た表示を表示したり、LEDによる準備表示や、音による準備合図、または他の準備の指示を行う。
【0050】
センサー装置の準備が整い、センサー電極が予備加熱された後、使用者はセンサー装置に息を吹き込む(工程192)。ある実施態様において、使用者は注入口102又は受器134に直接息を吹き込む。センサー装置100は上述のように作動し、使用者はディスプレイ112上にメッセージを見る(工程194)。ある実施態様において、そのメッセージは呼気中のNOのレベルを表示する量的な表示である。また、そのメッセージは、使用者の呼気中のNOレベルを質的に評価した質的な表示である。本発明の方法180は、以上で終了する。
【0051】
本発明の工程について順番に示し、説明したが、それぞれの方法における工程の順序は変更可能であり、幾つかの工程は逆の順番で行うことができ、また、幾つかの工程は、少なくともその1部を他の工程と並行して行うことも出来る。他の実施態様において、指示や明確な工程の副次工程については、断続的に及び/又は交互的に実施できる。
【0052】
以上、本発明の特定の実施態様を説明し、図示したが、本発明は、上記の説明および図示した特定の形態や構成要素の配置に限定されるわけではない。本発明の範囲は、添付請求の範囲によって決定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明のセンサー装置の一実施態様のブロック略図を示す。
【図2】図2は、図1に示すセンサー装置の一実施態様のより詳しいブロック略図を示す。
【図3】図3は、図1に示すセンサー装置の他の実施態様のブロック略図を示す。
【図4】図4は、図1に示すセンサー装置において、受器と、呼気を注入口に導入するための通路とを有する他の実施態様のブロック略図を示す。
【図5】図5は、前処理された呼気中のNOを検知することによって呼気中のNOのレベルを決定する本発明の方法の一実施態様のブロック略図を示す。
【図6】図6は、前処理された呼気中の二酸化窒素(NO)を検知することによって呼気中のNOのレベルを決定する本発明の方法の一実施態様のブロック略図を示す。
【図7】図7は、前処理された呼気中のNOと酸素とを検知することによって呼気中のNOのレベルを決定する本発明の方法の一実施態様のブロック略図を示す。
【図8】図8は、図1に示すセンサー装置の一実施態様と使用者との関係に関する方法の一実施態様のフローチャート概略図を示す。
【符号の説明】
【0054】
100:本発明のセンサー装置:
102:注入口:
104:触媒:
106:センサー電極:
108:排出口:
110:電気回路:
112:ディスプレイ装置:
114:室
116:電極ヒーター
118:触媒ヒーター
122:電子記憶装置
124:履歴
126:ユーザー選択
128:参照テーブル
132:ハウジング
134:受器
136:通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気を注入するための注入口と、当該注入口より導入された呼気の化学性状を調節する前処理素子と、センサー装置内の室に連結されているセンサー電極とから成り、当該室は前処理素子から前処理された呼気を受け入れ、当該センサー電極は前処理された呼気中の窒素酸化物(NO)成分を検知することを特徴とする呼気中の一酸化窒素(NO)を測定するセンサー装置。
【請求項2】
上記センサー電極が呼気中のNOを検知できるように構成されている請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項3】
更に、呼気中の酸素成分を検知できる他のセンサー電極が上記室に連結されている請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項4】
前処理素子が、呼気中の炭化水素を酸化する酸化触媒を有する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項5】
前処理素子が、呼気中のアンモニアを窒素と水に酸化する触媒を有する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項6】
更に、呼気源に近接した際に呼気を受け入れる受器と、当該受器と注入口とを連結する通路と、呼気中のNOの検知の後にセンサー装置から呼気を排出するための排出口とを有し、当該通路は実質的に全ての呼気中のNOの分別できるような構成を有する内部表面部材から成る請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項7】
更に、センサー電極と熱的に連結している電極ヒーターを有し、当該電極ヒーターはセンサー電極を作動温度範囲内である450〜550℃に予備加熱する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項8】
更に、センサー電極と連結している電気回路を有し、当該電気回路はセンサー電極からの電気信号を受け、センサー電極からの電気信号に従って呼気中のNOのレベルを決定する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項9】
センサー電極が、前処理素子から送達される二酸化窒素(NO)を検知し、検知されたNOのレベルの電極信号指標として示すことが出来、上記電気回路は、更に、検知されたNOのレベルの電極信号を呼気中のNOのレベルの電気信号指標に変換するように構成されている請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項10】
更に、上記電気回路が、検査表を記憶できる電子記憶装置を有し、当該検査表は複数の電極信号値と対応する複数のNO値とから成っている請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項11】
更に、上記電気回路に連結しているディスプレイ装置を有し、当該ディスプレイは、呼気中のNOのレベルに関するメッセージを使用者に表示する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項12】
上記メッセージが、呼気中のNOのレベルに関連した量的表示または質的表示である請求項11に記載のセンサー装置。
【請求項13】
上記室が300cm未満の容積を有する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項14】
上記室が50cm未満の容積を有する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項15】
上記室が20cm未満の容積を有する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項16】
上記室が5cm未満の容積を有する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項17】
上記室が2cm未満の容積を有する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項18】
センサー装置の体積が300cm未満である請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項19】
センサー装置の体積が50cm未満である請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項20】
センサー装置の体積が20cm未満である請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項21】
センサー装置の体積が5cm未満である請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項22】
センサー装置の体積が2cm未満である請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項23】
呼気中の一酸化窒素(NO)の測定方法であって、呼気を受け入れる工程と、受け入れた呼気の化学的性状を前処理する工程と、前処理した呼気をセンサー電極に誘導する工程と、呼気中の窒素酸化物(NO)成分を検知する工程とから成ることを特徴とする呼気中の一酸化窒素(NO)の測定方法。
【請求項24】
更に、呼気中のNOの検知によって、呼気中の窒素酸化物(NO)成分を検知する工程を含む請求項23に記載の測定方法。
【請求項25】
更に、呼気の成分の酸化によって呼気の性状を前処理する工程を含む請求項23に記載の測定方法。
【請求項26】
更に、センサー電極を作動温度範囲内である450〜550℃に予備加熱する高低を含む請求項23に記載の測定方法。
【請求項27】
更に、センサー電極において電極信号を発生させる工程と、当該電極信号に基づいて呼気中のNOのレベルを決定する工程と、呼気中のNOのレベルの指標を使用者に連絡する工程とを有する請求項23に記載の測定方法。
【請求項28】
呼気中の一酸化窒素(NO)を評価するセンサー装置であって、センサー装置内の室の中に呼気を誘導する手段と、呼気中の窒素酸化物(NO)の成分の検知に応えて電極信号を発生させる手段と、当該電極信号に基づいて呼気中のNOのレベルの指標を決定する手段とから成ることを特徴とする呼気中の一酸化窒素(NO)を評価するセンサー装置。
【請求項29】
更に、呼気中のNOのレベルの指標の量的表示の情報を使用者に伝達する手段を有する請求項28に記載のセンサー装置測定。
【請求項30】
更に、呼気中のNOのレベルの指標の質的表示の情報を使用者に伝達する手段を有する請求項28に記載のセンサー装置測定。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−533682(P2009−533682A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505482(P2009−505482)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/009053
【国際公開番号】WO2007/120780
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508011511)セラマテック・インク (29)
【出願人】(508305797)
【出願人】(508305775)
【Fターム(参考)】