呼気情報収集用アダプタおよび生体情報処理システム
【課題】鼻呼気および口呼気による二酸化炭素の測定と、エアフロープレッシャの測定を同時に小型の構成で行うことができ、被検者の負担を大きくしない。
【解決手段】二酸化炭素センサ13に接続され、二酸化炭素センサ13が二酸化炭素を検出可能とする室を備えたエアウェイケース11と、両鼻孔81に挿入され、この両鼻孔81からの呼気をエアウェイケース11へ導くネーザルチューブ12と、エアウェイケース11に接続され、口82からの呼気を受ける位置へ配置され、この口82からの呼気をエアウェイケース11へ導くマウスガイド15と、ネーザルチューブ12に結合し、両鼻孔81からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブ31を備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧カニューラ14とを具備する。
【解決手段】二酸化炭素センサ13に接続され、二酸化炭素センサ13が二酸化炭素を検出可能とする室を備えたエアウェイケース11と、両鼻孔81に挿入され、この両鼻孔81からの呼気をエアウェイケース11へ導くネーザルチューブ12と、エアウェイケース11に接続され、口82からの呼気を受ける位置へ配置され、この口82からの呼気をエアウェイケース11へ導くマウスガイド15と、ネーザルチューブ12に結合し、両鼻孔81からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブ31を備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧カニューラ14とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一人の被検者について同時に、鼻孔呼気と口呼気とから二酸化炭素濃度を測定すると共に、鼻孔呼気からエアフロープレッシャを測定可能とするための呼気情報収集用アダプタと、この呼気情報収集用アダプタを用いて構成した生体情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種交通機関における安全性の観点から、運転者の健康、特に睡眠に関する診断がなされるようになってきた。すなわち、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断が行われることも多い。睡眠時無呼吸症候群の診断のためには、いろいろなパラメータと一緒に鼻カニューラを用いてエアフロープレッシャ(airflow pressure)を測定して呼吸を検出することが基本であるが、近年、呼気の二酸化炭素濃度を測定して、呼吸の検出だけでなく、呼吸中枢の働きや二酸化炭素の体内への蓄積の程度を調べるようになってきた。
【0003】
そこで、従来においては、呼気の二酸化炭素濃度測定において、両方の鼻腔に挿入される鼻腔チューブと口腔からの呼気を収集するチューブとを結合させて、この結合点からサイドストリーム方式の呼気炭酸ガスモニタにより呼気吸気のガスをサンプリングするように構成されたものが特許文献1に記載されている。また、小型二酸化炭素センサを鼻下に設け、両方の鼻孔からの呼気と口からの呼気を上記センサへ導く構成の装置が特許文献2に開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法では呼気の二酸化炭素濃度の測定は可能であるが、エアフロープレッシャの測定を同時に行うことは不可能である。また、鼻呼吸あるいは口呼吸の呼気の二酸化炭素濃度測定が可能であるが、鼻または口のどちらかの呼吸であるかを識別することができない。
【0005】
上記以外には、エアフロープレッシャと二酸化炭素の双方を測定するものが特許文献3に開示されている。この装置は、ネーザルカニューラを隔壁により左右に分離し、一方で二酸化炭素を測定し、他方でエアフロープレッシャを測定するものである。しかしながら、この特許文献3の装置にあっては、左右の鼻孔から呼気を取り出して別々に使用するものであるから、一方の鼻が詰まった場合には、一方の情報のみが得られる状態となり、必ずしも目的とする測定が行えないものである。
【0006】
上記以外に、鼻呼気を収集するチューブを二酸化炭素収集用チューブとは別に用意して左右の鼻孔に挿入する手法も考えられるが、特に子供などの被検者にとって2種類のチューブを挿入することは負担が大きく、この点からの改善が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−267223号公報
【特許文献2】特開2004−321721号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0284484号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような現状に鑑みてなされたもので、その目的は、鼻呼気および口呼気による二酸化炭素の測定と、エアフロープレッシャの測定を同時に小型の構成で行うことができ、被検者の負担を大きくすることのない呼気情報収集用アダプタを提供することである。また、患者が鼻呼吸しているか口呼吸しているかを識別可能とすることである。また、この呼気情報収集用アダプタを用いて構成した生体情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタは、二酸化炭素センサに接続され、二酸化炭素センサが二酸化炭素を検出可能とする室を備えたエアウェイケースと、両鼻孔に挿入され、この両鼻孔からの呼気を前記エアウェイケースへ導くネーザルチューブと、口からの呼気を受ける位置へ配置され、この口からの呼気を前記エアウェイケースへ導くマウスガイドと、前記ネーザルチューブに結合し、両鼻孔からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブを備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧取出部とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、前記圧取出部が、ネーザルチューブの基部において、各ネーザルチューブの穴方向と交差する方向から結合する分岐チューブと、鼻呼気を前記分岐チューブ方向とエアウェイケース方向とに分岐させる壁部とにより構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタは、前記圧取出部が前記ネーザルチューブに結合する位置において、前記ネーザルチューブ内には鼻呼気による圧力を分岐チューブ側へ導く流方向制御部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、前記分岐チューブは、二本であり、それぞれが対応する鼻孔に挿入されるネーザルチューブに結合していることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、前記分岐チューブは、一本であり、両鼻孔に挿入されるネーザルチューブが一本とされた位置またはその位置より下流側に結合していることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る生体情報処理システムは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の呼気情報収集用アダプタと、呼気情報収集用アダプタに接続された二酸化炭素センサと、前記圧取出部に接続された圧力センサと、前記二酸化炭素センサおよび前記圧力センサに接続され、これらのセンサが取り出した信号に基づき被検者の呼気に関する二酸化炭素濃度情報と、被検者のエアフロープレッシャ情報とを得て出力する処理手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタは、両鼻孔からの呼気を上記エアウェイケースへ導くネーザルチューブに結合し、両鼻孔からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブを備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧取出部を具備するので、分岐チューブと圧取出部の構成が増えるだけであり、鼻呼気および口呼気による二酸化炭素の測定と、エアフロープレッシャの測定を同時に小型の構成で行うことができる。また、両鼻孔には、ネーザルチューブのみが挿入されるだけで済み、被検者の負担が大きくなることはない。
【0016】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、圧取出部が、ネーザルチューブの基部において、各ネーザルチューブの穴方向と交差する方向から結合する分岐チューブと、鼻呼気を前記分岐チューブ方向とエアウェイケース方向とに分岐させる壁部とにより構成されているので、ネーザルチューブ内の鼻呼気による圧力が分岐チューブへ到るようになり、鼻呼気および口呼気による二酸化炭素の測定と、エアフロープレッシャの測定を同時に小型の構成で行うことが可能である。また、分岐チューブが各ネーザルチューブに結合しているので、一方の鼻、一方のネーザルチューブまたは一本の分岐チューブが詰まったとしてもエアフロープレッシャを適切に測定することができる。
【0017】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、ネーザルチューブ内には鼻呼気により発生する圧力を分岐チューブ側へ導く流方向制御部材が設けられているので、ネーザルチューブ内の鼻呼気が分岐チューブ側へ導かれて、エアフロープレッシャを適切に測定可能となる。
【0018】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、分岐チューブは、二本であり、それぞれが対応する鼻孔に挿入されるネーザルチューブに結合しているので、一方の鼻、一方のネーザルチューブまたは一本の分岐チューブが詰まったとしてもエアフロープレッシャを適切に測定することができる。
【0019】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、分岐チューブは、一本であり、両鼻孔に挿入されるネーザルチューブが一本とされた位置またはその位置より下流側に結合しているので、一方の鼻または一方のネーザルチューブが詰まったとしてもエアフロープレッシャを適切に測定することができる。
【0020】
本発明に係る生体情報処理システムは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の呼気情報収集用アダプタと、呼気情報収集用アダプタに接続された二酸化炭素センサと、前記圧取出部に接続された圧力センサと、前記二酸化炭素センサおよび前記圧力センサに接続され、これらのセンサが取り出した信号に基づき被検者の呼気に関する二酸化炭素濃度情報と、被検者のエアフロープレッシャ情報とを得て出力する処理手段とを具備するので、呼気の二酸化炭素濃度情報とエアフロープレッシャ情報とを同時に適切に測定可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下添付図面を参照して、本発明に係る呼気情報収集用アダプタおよびそれを用いた生体情報処理システムの実施例を説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
<実施例1>
図1、図2には第1の実施例に係る呼気情報収集用アダプタが示されている。この呼気情報収集用アダプタは、ほぼ立方体状のエアウェイケース11に、ネーザルチューブ12と、発光素子13aと受光素子13bとから構成される二酸化炭素センサ13と、圧取出部を構成する圧カニューラ14と、マウスガイド15とを主要な構成要素としている。
【0023】
エアウェイケース11は、使用状態における天井部の前方部分には、口からの呼気21を逃がす貫通孔16が穿設されている。また、エアウェイケース11における貫通孔16の後方には、ネーザルチューブ12の基部17が嵌合され、鼻孔81からの呼気22はエアウェイケース11の室18へ導入される。ネーザルチューブ12は、シリコーンゴムなどの柔軟性樹脂により構成され、基部17は硬質の樹脂により構成されている。ネーザルチューブ12は、二本であり両鼻孔81に挿入される。この二本のネーザルチューブ12は、基部17において一体化されている。
【0024】
エアウェイケース11の一方の側部には発光素子13aが結合され、他方の側部には受光素子13bが結合されている。発光素子13aの光射出面および受光素子13bの受光面である測定窓19は、エアウェイケース11の室18を挟んで対向配置されている。発光素子13aと受光素子13bにはリード線23a、23bが接続され、測定装置までのびている。
【0025】
エアウェイケース11の使用状態における底面部の前方部分からマウスガイド15が垂下されている。エアウェイケース11の使用状態における底面部において、マウスガイド15の取り付け位置よりも口82側は、開口部24であり、口82からの呼気21は開口部24を介してエアウェイケース11の室18へ導入され、貫通孔16へ抜ける。マウスガイド15は、塩化ビニルなどの柔軟性樹脂により構成されており、周縁部27は内側へカールされており、口82からの呼気21を逃し難く構成されている。
【0026】
ネーザルチューブ12、12には、二本の分岐チューブ31が結合されており、両鼻孔81からの呼気の一部を分岐させている。分岐チューブ31、31は圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧カニューラ14に結合されている。圧カニューラ14の両サイドには、例えば塩化ビニル製のチューブ34が取り付けられ、圧力センサへ呼気による圧力を導くように構成されている。
【0027】
分岐チューブ31の先端33は、図2に示されるようにネーザルチューブ12の内部へ鼻孔81に向けて突出しており、先端33に開口を有し、分岐呼気による圧力28を分岐チューブ31側へ導く流方向制御部材として機能する。
【0028】
以上の通りに構成され、二酸化炭素センサ13が結合された呼気情報収集用アダプタについて、図1および図2に示されるように、被検者の両鼻孔81へネーザルチューブ12を挿入し、また、マウスガイド15を口82へ位置付け、必要に応じて粘着テープなどで所要箇所を顔面に固定する。この状態では、口82からの呼気21は、図2に示すように、開口部24を介してエアウェイケース11の室18へ導入され、貫通孔16へ抜ける。また、鼻孔81からの呼気22はネーザルチューブ12からエアウェイケース11の室18へ導入され、開口部24或いは貫通孔16から抜ける。
【0029】
上記の呼気21、22に含まれる二酸化炭素が、発光素子13aから発せられた赤外線を受光素子13bにより受光する赤外線の光強度を変化させ、二酸化炭素濃度に応じた信号が取り出され、リード線23bを介して測定装置へ至る。
【0030】
また、鼻孔81からの呼気22の一部はネーザルチューブ12内に突出した分岐チューブ31の先端33により流方向制御されて分岐チューブ31を伝達する分岐呼気による圧力28となり、圧カニューラ14からチューブ34、34を介して圧力センサへ伝わる。
【0031】
このように本実施例に係る呼気情報収集用アダプタを用いることによって、鼻孔81からの呼気22と口82からの呼気21により二酸化炭素濃度が測定可能であると共に、分岐チューブ31と圧カニューラ14による経路を伝達される圧力(分岐呼気による圧力28)によりエアフロープレッシャを測定して両鼻孔81を介した呼吸を捕らえることができる。口呼吸の場合は分岐チューブ31の先端33が流れ方向に対して反対の方向に開口しているため、口呼吸時にはエアフロープレッシャを捕らえない。このため、従来識別が困難であった鼻呼吸あるいは口呼吸の識別を行うことができ、睡眠時無呼吸症候群などの診断を正確に行うことが可能となる。
【0032】
<実施例2>
図3、図4には、第2の実施例に係る呼気情報収集用アダプタが示されている。この呼気情報収集用アダプタは、圧チューブ60が圧取出部を構成し、圧チューブ60の先端側が分岐チューブ61(圧チューブ60と同一でよい)となっている。分岐チューブ61の先端はネーザルチューブ12が一本とされた基部17より下流側(呼気流の流れの下流側)において結合しており、結合部分におけるネーザルチューブ12の内部には、ほぼ管中央からL字状に折り曲げられた流方向制御部材71が設けられ、流方向制御部材71の一端側が分岐チューブ61の内壁と貼着している。圧チューブ60により呼気による圧力を圧力センサへ導くように構成されている。
【0033】
上記以外の構成は第1の実施例と同じ構成である。これにより図4に示されるように、鼻孔81からの呼気22の一部により発生する圧力はネーザルチューブ12内に突出した流方向制御部材71により流方向制御されて分岐チューブ61を伝達する圧力28となり、圧チューブ60から圧力センサへ至る。本実施例に係る呼気情報収集用アダプタを用いることによっても、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0034】
<変形例>
図5には、変形例に係る呼気情報収集用アダプタが示されている。この呼気情報収集用アダプタは、第2の実施例に係る呼気情報収集用アダプタにおいて、マウスガイド15Aの形状を、舌片状にしたものであり、口82の中央部から呼気を採取するもので、口82全体を覆うよりも患者が息苦しさを感じる場合などを考慮して用いることができる。第1の実施例に係る呼気情報収集用アダプタについても同様な構成を採用することができる。
【0035】
図6に、上記呼気情報収集用アダプタを用いて構成した生体情報処理システムの構成図を示す。このシステムは、被検者90の口および鼻部分に、二酸化炭素センサ13が組み込まれた呼気情報収集用アダプタ10を取り付ける。圧力センサ40には、チューブ34、34(60)を介して分岐呼気による圧力28が伝達される。圧力センサ40の検出信号および二酸化炭素センサ13の検出信号は、処理手段を構成する処理装置100へ送られる。
【0036】
処理装置100は、圧力センサ40の検出信号および二酸化炭素センサ13の検出信号に基づき、エアフロープレッシャ情報と二酸化炭素濃度情報を例えばディジタル化および数値化して、時系列にグラフとして出力する。この出力により、被検者90のエアフロープレッシャと二酸化炭素濃度の変化が一目瞭然であり、従来識別が困難であった鼻呼吸あるいは口呼吸の識別を行うことができ、睡眠時無呼吸症候群の診断を正確に行うことが可能となる。
【0037】
<実施例3>
図7、図8には、第3の実施例に係る呼気情報収集用アダプタが示されている。この呼気情報収集用アダプタも図6に示した生体情報処理システムに適用できるものである。この実施例では、ネーザルチューブ12の基部17Aにおいて、ネーザルチューブ12にほぼ直交し、使用状態の左右側へ突出する円筒状のスリーブ75が形成されている。このスリーブ75は、両鼻孔81からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブを構成する。スリーブ75には、チューブ34が嵌合され、チューブ34は圧力センサに接続されている。
【0038】
ネーザルチューブ12を介して鼻孔から排出される鼻呼気が進む正面は、壁部78となっている。この壁部78は、分岐チューブを構成するスリーブ75の内壁の一部に連続しており、ネーザルチューブ12を介して鼻孔から排出される鼻呼気が突き当る位置に配置されている。該壁部78は、分岐チューブを構成するスリーブ75方向とエアウェイケース11方向とに鼻呼気を分岐させ、分岐された呼気による圧力をスリーブ75方向へ導く機能を有している。この実施例における分岐チューブを構成するスリーブ75と、壁部78とは、圧取出部を構成している。即ち、圧取出部は、ネーザルチューブ12に結合し、両鼻孔81からの呼気の一部を分岐させ、分岐された呼気による圧力を導く分岐チューブを備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力28が伝達されている。図7における左右のスリーブ75の中間に位置する流路77はエアウェイケース11の室18と連絡している。エアウェイケース11に貫通孔16が穿設されている構成及びその他の構成は、第1、第2の実施例と同様である。
【0039】
以上の通りに構成された呼気情報収集用アダプタにおいては、ネーザルチューブ12を介して鼻孔81から排出される鼻呼気22は壁部78に当ってスリーブ75方向とエアウェイケース11方向とに分岐させられる。鼻孔81からの呼気22による圧力の一部は、スリーブ75側へ分岐されてチューブ34を通って圧力センサへ到る圧力28となる。本実施例に係る呼気情報収集用アダプタによっても、第1の実施例及び第2の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0040】
なお、上記本実施例の呼気情報収集用アダプタにおいては、スリーブ75は、ネーザルチューブ12にほぼ直交し、使用状態の左右側へ突出するものであったが、これに限定されない。即ち、両鼻孔81に挿入された各ネーザルチューブ12の穴方向に交差する方向からスリーブ75、75が結合すれば良く、チューブ34を結合した場合に、顔面側にチューブ34が延びたり、チューブ34の引き回しが困難になったりしなければ、本実施例を構成することができる。また、本呼気情報収集用アダプタについても、図5に示した変形例と同様な構成を採用することができる。
【0041】
<変形例>
図9、図10には、第3の実施例に係る呼気情報収集用アダプタの変形例が示されている。この呼気情報収集用アダプタも、図6に示した生体情報処理システムに適用できるものである。この呼気情報収集用アダプタは、図7、図8に示した第3の実施例に係る呼気情報収集用アダプタと基本的に同一の構成を有する。
【0042】
即ち、ネーザルチューブ12を介して鼻孔81から排出される鼻呼気が進む正面は、壁部78となっており、この壁部78が、分岐チューブを構成するスリーブ75の内壁の一部に連続しており、ネーザルチューブ12を介して鼻孔81から排出される鼻呼気が突き当る位置に配置されている。このため、鼻呼気は鼻孔81から排出されて壁部78に突き当り、分岐チューブを構成するスリーブ75の方向とエアウェイケース11の方向とに分岐する。この分岐により、鼻呼気による圧力はスリーブ75の方向へ伝達してゆく。
【0043】
上記構成に加えて、壁部78にはネーザルチューブ12の穴中央位置12cへ向かって延びる流方向制御部材76が形成されている。その他の構成は、第3の実施例と同様である。この呼気情報収集用アダプタにおいては、鼻孔81から排出される呼気22は、壁部78に突き当ったときに流方向制御部材76により流方向制御され、確実にスリーブ75側へ分岐されて、チューブ34を通って圧力センサへ到る圧力28を得ることができる。本呼気情報収集用アダプタによっても、第1の実施例及び第2の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、流方向制御部材76は、各ネーザルチューブ12における穴内へ延びていても良く、また、各ネーザルチューブ12における穴の終端部付近内から壁部78側へ延びるように設けられていても良い。流方向制御部材76の位置及び大きさや高さは所望する分岐呼気による圧力28の分岐量に応じて適宜決定される。また、本呼気情報収集用アダプタについても、図5に示した変形例と同様な構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの第1の実施例を被検者に取り付けた状態を示す斜視図。
【図2】図1に示した呼気情報収集用アダプタの第1の実施例を被検者の鼻筋に沿って断面にした断面図。
【図3】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの第2の実施例を被検者に取り付けた状態を示す斜視図。
【図4】図3に示した呼気情報収集用アダプタの第2の実施例を被検者の鼻筋に沿って断面にした断面図。
【図5】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの変形例を被検者に取り付けた状態を示す斜視図。
【図6】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの実施例を用いて構成した生体情報処理システムの構成図。
【図7】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの第3の実施例を被検者に取り付けた状態を示す一部断面図。
【図8】図7に示した呼気情報収集用アダプタの第3の実施例を被検者の鼻筋に沿って断面にした断面図。
【図9】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの第3の実施例の変形例を被検者に取り付けた状態を示す一部断面図。
【図10】図9に示した呼気情報収集用アダプタの第3の実施例の変形例を被検者の鼻筋に沿って断面にした断面図。
【符号の説明】
【0046】
10 呼気情報収集用アダプタ
11 エアウェイケース
12 ネーザルチューブ
13 二酸化炭素センサ
14 圧カニューラ
15、15A マウスガイド
16 貫通孔
17、17A 基部
18 室
19 測定窓
40 圧力センサ
31、61 分岐チューブ
60 圧チューブ
71、76 流方向制御部材
75 スリーブ
77 流路
78 壁部
81 鼻孔
82 口
90 被検者
100 処理装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、一人の被検者について同時に、鼻孔呼気と口呼気とから二酸化炭素濃度を測定すると共に、鼻孔呼気からエアフロープレッシャを測定可能とするための呼気情報収集用アダプタと、この呼気情報収集用アダプタを用いて構成した生体情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種交通機関における安全性の観点から、運転者の健康、特に睡眠に関する診断がなされるようになってきた。すなわち、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断が行われることも多い。睡眠時無呼吸症候群の診断のためには、いろいろなパラメータと一緒に鼻カニューラを用いてエアフロープレッシャ(airflow pressure)を測定して呼吸を検出することが基本であるが、近年、呼気の二酸化炭素濃度を測定して、呼吸の検出だけでなく、呼吸中枢の働きや二酸化炭素の体内への蓄積の程度を調べるようになってきた。
【0003】
そこで、従来においては、呼気の二酸化炭素濃度測定において、両方の鼻腔に挿入される鼻腔チューブと口腔からの呼気を収集するチューブとを結合させて、この結合点からサイドストリーム方式の呼気炭酸ガスモニタにより呼気吸気のガスをサンプリングするように構成されたものが特許文献1に記載されている。また、小型二酸化炭素センサを鼻下に設け、両方の鼻孔からの呼気と口からの呼気を上記センサへ導く構成の装置が特許文献2に開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの方法では呼気の二酸化炭素濃度の測定は可能であるが、エアフロープレッシャの測定を同時に行うことは不可能である。また、鼻呼吸あるいは口呼吸の呼気の二酸化炭素濃度測定が可能であるが、鼻または口のどちらかの呼吸であるかを識別することができない。
【0005】
上記以外には、エアフロープレッシャと二酸化炭素の双方を測定するものが特許文献3に開示されている。この装置は、ネーザルカニューラを隔壁により左右に分離し、一方で二酸化炭素を測定し、他方でエアフロープレッシャを測定するものである。しかしながら、この特許文献3の装置にあっては、左右の鼻孔から呼気を取り出して別々に使用するものであるから、一方の鼻が詰まった場合には、一方の情報のみが得られる状態となり、必ずしも目的とする測定が行えないものである。
【0006】
上記以外に、鼻呼気を収集するチューブを二酸化炭素収集用チューブとは別に用意して左右の鼻孔に挿入する手法も考えられるが、特に子供などの被検者にとって2種類のチューブを挿入することは負担が大きく、この点からの改善が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−267223号公報
【特許文献2】特開2004−321721号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0284484号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような現状に鑑みてなされたもので、その目的は、鼻呼気および口呼気による二酸化炭素の測定と、エアフロープレッシャの測定を同時に小型の構成で行うことができ、被検者の負担を大きくすることのない呼気情報収集用アダプタを提供することである。また、患者が鼻呼吸しているか口呼吸しているかを識別可能とすることである。また、この呼気情報収集用アダプタを用いて構成した生体情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタは、二酸化炭素センサに接続され、二酸化炭素センサが二酸化炭素を検出可能とする室を備えたエアウェイケースと、両鼻孔に挿入され、この両鼻孔からの呼気を前記エアウェイケースへ導くネーザルチューブと、口からの呼気を受ける位置へ配置され、この口からの呼気を前記エアウェイケースへ導くマウスガイドと、前記ネーザルチューブに結合し、両鼻孔からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブを備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧取出部とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、前記圧取出部が、ネーザルチューブの基部において、各ネーザルチューブの穴方向と交差する方向から結合する分岐チューブと、鼻呼気を前記分岐チューブ方向とエアウェイケース方向とに分岐させる壁部とにより構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタは、前記圧取出部が前記ネーザルチューブに結合する位置において、前記ネーザルチューブ内には鼻呼気による圧力を分岐チューブ側へ導く流方向制御部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、前記分岐チューブは、二本であり、それぞれが対応する鼻孔に挿入されるネーザルチューブに結合していることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、前記分岐チューブは、一本であり、両鼻孔に挿入されるネーザルチューブが一本とされた位置またはその位置より下流側に結合していることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る生体情報処理システムは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の呼気情報収集用アダプタと、呼気情報収集用アダプタに接続された二酸化炭素センサと、前記圧取出部に接続された圧力センサと、前記二酸化炭素センサおよび前記圧力センサに接続され、これらのセンサが取り出した信号に基づき被検者の呼気に関する二酸化炭素濃度情報と、被検者のエアフロープレッシャ情報とを得て出力する処理手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタは、両鼻孔からの呼気を上記エアウェイケースへ導くネーザルチューブに結合し、両鼻孔からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブを備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧取出部を具備するので、分岐チューブと圧取出部の構成が増えるだけであり、鼻呼気および口呼気による二酸化炭素の測定と、エアフロープレッシャの測定を同時に小型の構成で行うことができる。また、両鼻孔には、ネーザルチューブのみが挿入されるだけで済み、被検者の負担が大きくなることはない。
【0016】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、圧取出部が、ネーザルチューブの基部において、各ネーザルチューブの穴方向と交差する方向から結合する分岐チューブと、鼻呼気を前記分岐チューブ方向とエアウェイケース方向とに分岐させる壁部とにより構成されているので、ネーザルチューブ内の鼻呼気による圧力が分岐チューブへ到るようになり、鼻呼気および口呼気による二酸化炭素の測定と、エアフロープレッシャの測定を同時に小型の構成で行うことが可能である。また、分岐チューブが各ネーザルチューブに結合しているので、一方の鼻、一方のネーザルチューブまたは一本の分岐チューブが詰まったとしてもエアフロープレッシャを適切に測定することができる。
【0017】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、ネーザルチューブ内には鼻呼気により発生する圧力を分岐チューブ側へ導く流方向制御部材が設けられているので、ネーザルチューブ内の鼻呼気が分岐チューブ側へ導かれて、エアフロープレッシャを適切に測定可能となる。
【0018】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、分岐チューブは、二本であり、それぞれが対応する鼻孔に挿入されるネーザルチューブに結合しているので、一方の鼻、一方のネーザルチューブまたは一本の分岐チューブが詰まったとしてもエアフロープレッシャを適切に測定することができる。
【0019】
本発明に係る呼気情報収集用アダプタでは、分岐チューブは、一本であり、両鼻孔に挿入されるネーザルチューブが一本とされた位置またはその位置より下流側に結合しているので、一方の鼻または一方のネーザルチューブが詰まったとしてもエアフロープレッシャを適切に測定することができる。
【0020】
本発明に係る生体情報処理システムは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の呼気情報収集用アダプタと、呼気情報収集用アダプタに接続された二酸化炭素センサと、前記圧取出部に接続された圧力センサと、前記二酸化炭素センサおよび前記圧力センサに接続され、これらのセンサが取り出した信号に基づき被検者の呼気に関する二酸化炭素濃度情報と、被検者のエアフロープレッシャ情報とを得て出力する処理手段とを具備するので、呼気の二酸化炭素濃度情報とエアフロープレッシャ情報とを同時に適切に測定可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下添付図面を参照して、本発明に係る呼気情報収集用アダプタおよびそれを用いた生体情報処理システムの実施例を説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
<実施例1>
図1、図2には第1の実施例に係る呼気情報収集用アダプタが示されている。この呼気情報収集用アダプタは、ほぼ立方体状のエアウェイケース11に、ネーザルチューブ12と、発光素子13aと受光素子13bとから構成される二酸化炭素センサ13と、圧取出部を構成する圧カニューラ14と、マウスガイド15とを主要な構成要素としている。
【0023】
エアウェイケース11は、使用状態における天井部の前方部分には、口からの呼気21を逃がす貫通孔16が穿設されている。また、エアウェイケース11における貫通孔16の後方には、ネーザルチューブ12の基部17が嵌合され、鼻孔81からの呼気22はエアウェイケース11の室18へ導入される。ネーザルチューブ12は、シリコーンゴムなどの柔軟性樹脂により構成され、基部17は硬質の樹脂により構成されている。ネーザルチューブ12は、二本であり両鼻孔81に挿入される。この二本のネーザルチューブ12は、基部17において一体化されている。
【0024】
エアウェイケース11の一方の側部には発光素子13aが結合され、他方の側部には受光素子13bが結合されている。発光素子13aの光射出面および受光素子13bの受光面である測定窓19は、エアウェイケース11の室18を挟んで対向配置されている。発光素子13aと受光素子13bにはリード線23a、23bが接続され、測定装置までのびている。
【0025】
エアウェイケース11の使用状態における底面部の前方部分からマウスガイド15が垂下されている。エアウェイケース11の使用状態における底面部において、マウスガイド15の取り付け位置よりも口82側は、開口部24であり、口82からの呼気21は開口部24を介してエアウェイケース11の室18へ導入され、貫通孔16へ抜ける。マウスガイド15は、塩化ビニルなどの柔軟性樹脂により構成されており、周縁部27は内側へカールされており、口82からの呼気21を逃し難く構成されている。
【0026】
ネーザルチューブ12、12には、二本の分岐チューブ31が結合されており、両鼻孔81からの呼気の一部を分岐させている。分岐チューブ31、31は圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧カニューラ14に結合されている。圧カニューラ14の両サイドには、例えば塩化ビニル製のチューブ34が取り付けられ、圧力センサへ呼気による圧力を導くように構成されている。
【0027】
分岐チューブ31の先端33は、図2に示されるようにネーザルチューブ12の内部へ鼻孔81に向けて突出しており、先端33に開口を有し、分岐呼気による圧力28を分岐チューブ31側へ導く流方向制御部材として機能する。
【0028】
以上の通りに構成され、二酸化炭素センサ13が結合された呼気情報収集用アダプタについて、図1および図2に示されるように、被検者の両鼻孔81へネーザルチューブ12を挿入し、また、マウスガイド15を口82へ位置付け、必要に応じて粘着テープなどで所要箇所を顔面に固定する。この状態では、口82からの呼気21は、図2に示すように、開口部24を介してエアウェイケース11の室18へ導入され、貫通孔16へ抜ける。また、鼻孔81からの呼気22はネーザルチューブ12からエアウェイケース11の室18へ導入され、開口部24或いは貫通孔16から抜ける。
【0029】
上記の呼気21、22に含まれる二酸化炭素が、発光素子13aから発せられた赤外線を受光素子13bにより受光する赤外線の光強度を変化させ、二酸化炭素濃度に応じた信号が取り出され、リード線23bを介して測定装置へ至る。
【0030】
また、鼻孔81からの呼気22の一部はネーザルチューブ12内に突出した分岐チューブ31の先端33により流方向制御されて分岐チューブ31を伝達する分岐呼気による圧力28となり、圧カニューラ14からチューブ34、34を介して圧力センサへ伝わる。
【0031】
このように本実施例に係る呼気情報収集用アダプタを用いることによって、鼻孔81からの呼気22と口82からの呼気21により二酸化炭素濃度が測定可能であると共に、分岐チューブ31と圧カニューラ14による経路を伝達される圧力(分岐呼気による圧力28)によりエアフロープレッシャを測定して両鼻孔81を介した呼吸を捕らえることができる。口呼吸の場合は分岐チューブ31の先端33が流れ方向に対して反対の方向に開口しているため、口呼吸時にはエアフロープレッシャを捕らえない。このため、従来識別が困難であった鼻呼吸あるいは口呼吸の識別を行うことができ、睡眠時無呼吸症候群などの診断を正確に行うことが可能となる。
【0032】
<実施例2>
図3、図4には、第2の実施例に係る呼気情報収集用アダプタが示されている。この呼気情報収集用アダプタは、圧チューブ60が圧取出部を構成し、圧チューブ60の先端側が分岐チューブ61(圧チューブ60と同一でよい)となっている。分岐チューブ61の先端はネーザルチューブ12が一本とされた基部17より下流側(呼気流の流れの下流側)において結合しており、結合部分におけるネーザルチューブ12の内部には、ほぼ管中央からL字状に折り曲げられた流方向制御部材71が設けられ、流方向制御部材71の一端側が分岐チューブ61の内壁と貼着している。圧チューブ60により呼気による圧力を圧力センサへ導くように構成されている。
【0033】
上記以外の構成は第1の実施例と同じ構成である。これにより図4に示されるように、鼻孔81からの呼気22の一部により発生する圧力はネーザルチューブ12内に突出した流方向制御部材71により流方向制御されて分岐チューブ61を伝達する圧力28となり、圧チューブ60から圧力センサへ至る。本実施例に係る呼気情報収集用アダプタを用いることによっても、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0034】
<変形例>
図5には、変形例に係る呼気情報収集用アダプタが示されている。この呼気情報収集用アダプタは、第2の実施例に係る呼気情報収集用アダプタにおいて、マウスガイド15Aの形状を、舌片状にしたものであり、口82の中央部から呼気を採取するもので、口82全体を覆うよりも患者が息苦しさを感じる場合などを考慮して用いることができる。第1の実施例に係る呼気情報収集用アダプタについても同様な構成を採用することができる。
【0035】
図6に、上記呼気情報収集用アダプタを用いて構成した生体情報処理システムの構成図を示す。このシステムは、被検者90の口および鼻部分に、二酸化炭素センサ13が組み込まれた呼気情報収集用アダプタ10を取り付ける。圧力センサ40には、チューブ34、34(60)を介して分岐呼気による圧力28が伝達される。圧力センサ40の検出信号および二酸化炭素センサ13の検出信号は、処理手段を構成する処理装置100へ送られる。
【0036】
処理装置100は、圧力センサ40の検出信号および二酸化炭素センサ13の検出信号に基づき、エアフロープレッシャ情報と二酸化炭素濃度情報を例えばディジタル化および数値化して、時系列にグラフとして出力する。この出力により、被検者90のエアフロープレッシャと二酸化炭素濃度の変化が一目瞭然であり、従来識別が困難であった鼻呼吸あるいは口呼吸の識別を行うことができ、睡眠時無呼吸症候群の診断を正確に行うことが可能となる。
【0037】
<実施例3>
図7、図8には、第3の実施例に係る呼気情報収集用アダプタが示されている。この呼気情報収集用アダプタも図6に示した生体情報処理システムに適用できるものである。この実施例では、ネーザルチューブ12の基部17Aにおいて、ネーザルチューブ12にほぼ直交し、使用状態の左右側へ突出する円筒状のスリーブ75が形成されている。このスリーブ75は、両鼻孔81からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブを構成する。スリーブ75には、チューブ34が嵌合され、チューブ34は圧力センサに接続されている。
【0038】
ネーザルチューブ12を介して鼻孔から排出される鼻呼気が進む正面は、壁部78となっている。この壁部78は、分岐チューブを構成するスリーブ75の内壁の一部に連続しており、ネーザルチューブ12を介して鼻孔から排出される鼻呼気が突き当る位置に配置されている。該壁部78は、分岐チューブを構成するスリーブ75方向とエアウェイケース11方向とに鼻呼気を分岐させ、分岐された呼気による圧力をスリーブ75方向へ導く機能を有している。この実施例における分岐チューブを構成するスリーブ75と、壁部78とは、圧取出部を構成している。即ち、圧取出部は、ネーザルチューブ12に結合し、両鼻孔81からの呼気の一部を分岐させ、分岐された呼気による圧力を導く分岐チューブを備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力28が伝達されている。図7における左右のスリーブ75の中間に位置する流路77はエアウェイケース11の室18と連絡している。エアウェイケース11に貫通孔16が穿設されている構成及びその他の構成は、第1、第2の実施例と同様である。
【0039】
以上の通りに構成された呼気情報収集用アダプタにおいては、ネーザルチューブ12を介して鼻孔81から排出される鼻呼気22は壁部78に当ってスリーブ75方向とエアウェイケース11方向とに分岐させられる。鼻孔81からの呼気22による圧力の一部は、スリーブ75側へ分岐されてチューブ34を通って圧力センサへ到る圧力28となる。本実施例に係る呼気情報収集用アダプタによっても、第1の実施例及び第2の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0040】
なお、上記本実施例の呼気情報収集用アダプタにおいては、スリーブ75は、ネーザルチューブ12にほぼ直交し、使用状態の左右側へ突出するものであったが、これに限定されない。即ち、両鼻孔81に挿入された各ネーザルチューブ12の穴方向に交差する方向からスリーブ75、75が結合すれば良く、チューブ34を結合した場合に、顔面側にチューブ34が延びたり、チューブ34の引き回しが困難になったりしなければ、本実施例を構成することができる。また、本呼気情報収集用アダプタについても、図5に示した変形例と同様な構成を採用することができる。
【0041】
<変形例>
図9、図10には、第3の実施例に係る呼気情報収集用アダプタの変形例が示されている。この呼気情報収集用アダプタも、図6に示した生体情報処理システムに適用できるものである。この呼気情報収集用アダプタは、図7、図8に示した第3の実施例に係る呼気情報収集用アダプタと基本的に同一の構成を有する。
【0042】
即ち、ネーザルチューブ12を介して鼻孔81から排出される鼻呼気が進む正面は、壁部78となっており、この壁部78が、分岐チューブを構成するスリーブ75の内壁の一部に連続しており、ネーザルチューブ12を介して鼻孔81から排出される鼻呼気が突き当る位置に配置されている。このため、鼻呼気は鼻孔81から排出されて壁部78に突き当り、分岐チューブを構成するスリーブ75の方向とエアウェイケース11の方向とに分岐する。この分岐により、鼻呼気による圧力はスリーブ75の方向へ伝達してゆく。
【0043】
上記構成に加えて、壁部78にはネーザルチューブ12の穴中央位置12cへ向かって延びる流方向制御部材76が形成されている。その他の構成は、第3の実施例と同様である。この呼気情報収集用アダプタにおいては、鼻孔81から排出される呼気22は、壁部78に突き当ったときに流方向制御部材76により流方向制御され、確実にスリーブ75側へ分岐されて、チューブ34を通って圧力センサへ到る圧力28を得ることができる。本呼気情報収集用アダプタによっても、第1の実施例及び第2の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、流方向制御部材76は、各ネーザルチューブ12における穴内へ延びていても良く、また、各ネーザルチューブ12における穴の終端部付近内から壁部78側へ延びるように設けられていても良い。流方向制御部材76の位置及び大きさや高さは所望する分岐呼気による圧力28の分岐量に応じて適宜決定される。また、本呼気情報収集用アダプタについても、図5に示した変形例と同様な構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの第1の実施例を被検者に取り付けた状態を示す斜視図。
【図2】図1に示した呼気情報収集用アダプタの第1の実施例を被検者の鼻筋に沿って断面にした断面図。
【図3】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの第2の実施例を被検者に取り付けた状態を示す斜視図。
【図4】図3に示した呼気情報収集用アダプタの第2の実施例を被検者の鼻筋に沿って断面にした断面図。
【図5】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの変形例を被検者に取り付けた状態を示す斜視図。
【図6】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの実施例を用いて構成した生体情報処理システムの構成図。
【図7】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの第3の実施例を被検者に取り付けた状態を示す一部断面図。
【図8】図7に示した呼気情報収集用アダプタの第3の実施例を被検者の鼻筋に沿って断面にした断面図。
【図9】本発明に係る呼気情報収集用アダプタの第3の実施例の変形例を被検者に取り付けた状態を示す一部断面図。
【図10】図9に示した呼気情報収集用アダプタの第3の実施例の変形例を被検者の鼻筋に沿って断面にした断面図。
【符号の説明】
【0046】
10 呼気情報収集用アダプタ
11 エアウェイケース
12 ネーザルチューブ
13 二酸化炭素センサ
14 圧カニューラ
15、15A マウスガイド
16 貫通孔
17、17A 基部
18 室
19 測定窓
40 圧力センサ
31、61 分岐チューブ
60 圧チューブ
71、76 流方向制御部材
75 スリーブ
77 流路
78 壁部
81 鼻孔
82 口
90 被検者
100 処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素センサに接続され、二酸化炭素センサが二酸化炭素を検出可能とする室を備えたエアウェイケースと、
両鼻孔に挿入され、この両鼻孔からの呼気を前記エアウェイケースへ導くネーザルチューブと、
口からの呼気を受ける位置へ配置され、この口からの呼気を前記エアウェイケースへ導くマウスガイドと、
前記ネーザルチューブに結合し、両鼻孔からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブを備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧取出部と
を具備することを特徴とする呼気情報収集用アダプタ。
【請求項2】
前記圧取出部は、
ネーザルチューブの基部において、各ネーザルチューブの穴方向と交差する方向から結合する分岐チューブと、
鼻呼気を前記分岐チューブ方向とエアウェイケース方向とに分岐させる壁部と
により構成されることを特徴とする請求項1に記載の呼気情報収集用アダプタ。
【請求項3】
前記圧取出部が前記ネーザルチューブに結合する位置において、前記ネーザルチューブ内には鼻呼気による圧力を分岐チューブ側へ導く流方向制御部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の呼気情報収集用アダプタ。
【請求項4】
前記分岐チューブは、二本であり、それぞれが対応する鼻孔に挿入されるネーザルチューブに結合していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の呼気情報収集用アダプタ。
【請求項5】
前記分岐チューブは、一本であり、両鼻孔に挿入されるネーザルチューブが一本とされた位置またはその位置より下流側に結合していることを特徴とする請求項1または3に記載の呼気情報収集用アダプタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の呼気情報収集用アダプタと、
呼気情報収集用アダプタに接続された二酸化炭素センサと、
前記圧取出部に接続された圧力センサと、
前記二酸化炭素センサおよび前記圧力センサに接続され、これらのセンサが取り出した信号に基づき被検者の呼気に関する二酸化炭素濃度情報と、被検者のエアフロープレッシャ情報とを得て出力する処理手段と
を具備することを特徴とする生体情報処理システム。
【請求項1】
二酸化炭素センサに接続され、二酸化炭素センサが二酸化炭素を検出可能とする室を備えたエアウェイケースと、
両鼻孔に挿入され、この両鼻孔からの呼気を前記エアウェイケースへ導くネーザルチューブと、
口からの呼気を受ける位置へ配置され、この口からの呼気を前記エアウェイケースへ導くマウスガイドと、
前記ネーザルチューブに結合し、両鼻孔からの呼気の一部を分岐させる分岐チューブを備え、圧力センサへ上記分岐した呼気による圧力を導く圧取出部と
を具備することを特徴とする呼気情報収集用アダプタ。
【請求項2】
前記圧取出部は、
ネーザルチューブの基部において、各ネーザルチューブの穴方向と交差する方向から結合する分岐チューブと、
鼻呼気を前記分岐チューブ方向とエアウェイケース方向とに分岐させる壁部と
により構成されることを特徴とする請求項1に記載の呼気情報収集用アダプタ。
【請求項3】
前記圧取出部が前記ネーザルチューブに結合する位置において、前記ネーザルチューブ内には鼻呼気による圧力を分岐チューブ側へ導く流方向制御部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の呼気情報収集用アダプタ。
【請求項4】
前記分岐チューブは、二本であり、それぞれが対応する鼻孔に挿入されるネーザルチューブに結合していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の呼気情報収集用アダプタ。
【請求項5】
前記分岐チューブは、一本であり、両鼻孔に挿入されるネーザルチューブが一本とされた位置またはその位置より下流側に結合していることを特徴とする請求項1または3に記載の呼気情報収集用アダプタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の呼気情報収集用アダプタと、
呼気情報収集用アダプタに接続された二酸化炭素センサと、
前記圧取出部に接続された圧力センサと、
前記二酸化炭素センサおよび前記圧力センサに接続され、これらのセンサが取り出した信号に基づき被検者の呼気に関する二酸化炭素濃度情報と、被検者のエアフロープレッシャ情報とを得て出力する処理手段と
を具備することを特徴とする生体情報処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−172347(P2009−172347A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57742(P2008−57742)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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