説明

命令実行回路

【課題】命令実行回路の消費電力を低減させる。
【解決手段】複数の命令により構成されるプログラムの一部分を記憶する第1記憶素子、及び前記プログラムの他の部分を記憶し前記第1記憶素子よりも消費電力が少ない第2記憶素子を有する記憶回路と、命令のアドレスを前記記憶回路に対して出力し前記アドレスに記憶されている命令を取得して実行するプロセッサと、前記アドレスに記憶されている命令を出力させるためのイネーブル信号を、前記命令を記憶している前記第1記憶素子及び前記第2記憶素子のうちのいずれか一つに対して出力するアドレスデコーダと、を備え、前記プログラムの前記他の部分は前記プロセッサに特定の命令を繰り返し実行させるループ処理が記述された部分であり、前記プログラムの前記一部分は前記ループ処理以外の処理が記述された部分であることを特徴とする命令実行回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、命令実行回路に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、プロセッサがメモリ等の記憶回路に記憶されているプログラムの命令を読み出して実行する命令実行回路を組み込んだ電子機器が様々な分野で利用されている。
【0003】
例えばオーディオの分野でも、デジタルデータ化された音声に対する圧縮、加工、再生等の処理を、プロセッサがプログラムを実行することにより行う電子機器が広く普及している。
【0004】
音声をデジタルデータとして取り扱う場合には、一般的に、データ量を削減するために、デジタルデータを所定の規格に従って符号化(以下、エンコードとも記す)し、再生時に復号化(以下、デコードとも記す)することが一般的である。符号化や復号化の規格としては、MP3やWMA、AACなどが知られている。
【0005】
この場合、プロセッサは、記憶回路から、符号化や復号化を行うためのプログラムの命令を順次読み出して実行することにより、符号化や復号化の処理を行う。またこのような符号化や復号化を行う際の技術として、様々なものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−230773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4から図6に示す命令実行回路1010を参照しながら、プロセッサ100が復号化を行う場合の処理の流れを説明する。
【0008】
メモリ200には、復号化を行うためのプログラムを構成する複数の命令が記憶されている。またプロセッサ100は、メモリ200に記憶されている各命令を実行することにより復号化の処理を行う。プロセッサ100及びメモリ200は、クロック生成回路500から出力されるクロック信号に同期して動作する。
【0009】
一般的に、音声のデジタルデータを符号化して生成された符号化データを復号化する処理は、フレームと呼ばれるデータの単位毎に行われる。そしてプロセッサ100は、1フレーム分の符号化データを復号化した後は、続けて次のフレームの符号化データの復号化を開始するのではなく、先に復号化したデジタルデータの再生が完了するのを待ってから次のフレームの符号化データの復号化を開始する。従ってプロセッサ100は、図6に示す復号化のプログラムを1フレーム毎に繰り返し実行する。
【0010】
プロセッサ100は、このプログラムを構成する命令の実行順に、命令が記憶されているアドレスの値をアドレスバスに出力する。アドレスの値は、プロセッサ100が備える図示しないプログラムカウンタにより算出される。プロセッサ100から出力されたアドレスは、メモリ200及びアドレスデコーダ410に入力される。
アドレスデコーダ410は、アドレスが入力されると、メモリ200に対してイネーブル信号(CE。反転記号は省略する。以下同様。)を出力する。
メモリ200は、イネーブル信号が入力されている間に入力されたアドレスに記憶されている命令をデータバスに出力する。
そしてプロセッサ100は、データバスに出力された命令を取得し、その命令を実行する。
以上の処理を、プロセッサ100がプログラムを構成する各命令について順次実行することにより、1フレームの符号化データに対する復号化が行われる。
【0011】
ここで図6に示すように、復号化を行うためのプログラムは「START:」と記されたラベルで示される「LD R1」命令から始まり、「JUMP WAIT」命令で終わる。ただし「JUMP WAIT」命令の飛び先は、「WAIT:」と記されたラベルで示される「NOP」命令である。
【0012】
そのためプロセッサ100は、1フレーム分の符号化データの復号化を終了した後は、「NOP」命令と「JUMP WAIT」命令とを繰り返し読み出して実行することにより、そのフレームのデジタルデータの再生が完了するのを待っている。
【0013】
そのフレームのデジタルデータの再生が完了すると、図5に示すように、プロセッサ100には、割り込み信号が入力される。そしてプロセッサ100は、再び「START:」と記されたラベルで示される「LD R1」命令から順次各命令の実行を開始することにより、次のフレームの符号化データの復号化を開始する。
【0014】
ところで、1フレーム内の符号化データのデータ量は、音声のデジタルデータを符号化する際に指定されるビットレートやサンプリング周波数によって異なるため、1フレーム内の符号化データを復号化するのに要する時間は、ビットレートやサンプリング周波数によって異なる。そのため、先に復号化したデジタルデータの再生が完了するまでの待ち時間は、ビットレートやサンプリング周波数によって異なることになる。
【0015】
1フレーム内のデータ量が多い場合と少ない場合とを比較すると、図4に示すように、1フレーム内のデータ量が多い場合(ケースA)には、復号化にそれだけ長時間を要するため待ち時間は少なくなるが、1フレーム内のデータ量が少ない場合(ケースB)には、復号化に短時間しか要しないため待ち時間は長くなることになる。
【0016】
上述したように、復号化したデジタルデータの再生が完了するまでの間は、プロセッサ100は「NOP」命令と「JUMP WAIT」命令とを繰り返し読み出して実行している。従って、待ち時間の間も図5に示す命令実行回路1010は、電力を消費していることになる。
【0017】
ところで、このようなデジタルデータとして音声を取り扱うことが可能な電子機器は、例えば、携帯電話機や携帯音楽プレーヤ、ICレコーダ、車載音楽プレーヤなどとして普及している。これらの電子機器はバッテリからの電力により動作するものが多く、消費電力を抑制することが強く要望されている。
またオーディオ用の電子機器に限らず、プロセッサと記憶回路とを備えた命令実行回路を組み込んだ電子機器に対する省電力化の要望は強い。
【0018】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたもので、プログラムを記憶する記憶回路とプログラムを実行するプロセッサとを備えた命令実行回路の消費電力を低減させることを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための手段の一つは、複数の命令により構成されるプログラムの一部分を記憶する第1記憶素子、及び前記プログラムの他の部分を記憶し、前記第1記憶素子よりも消費電力が少ない第2記憶素子を有する記憶回路と、前記プログラムを構成する命令の実行順に、命令のアドレスを前記記憶回路に対して出力し、前記アドレスに記憶されている命令を前記記憶回路から取得して実行するプロセッサと、前記プロセッサから前記アドレスが出力された際に、前記アドレスに記憶されている命令を出力させるためのイネーブル信号を、前記命令を記憶している前記第1記憶素子及び前記第2記憶素子のうちのいずれか一つに対して出力するアドレスデコーダと、を備え、前記第2記憶素子に記憶される前記プログラムの前記他の部分は、前記プロセッサに特定の命令を繰り返し実行させるループ処理が記述された部分であり、前記第1記憶素子に記憶される前記プログラムの前記一部分は、前記ループ処理以外の処理が記述された部分であることを特徴とする命令実行回路である。
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄の記載、及び図面の記載等により明らかにされる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、プログラムを記憶する記憶回路とプログラムを実行するプロセッサとを備えた命令実行回路の消費電力を低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る命令実行回路の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係るメモリマップの例を示す図である。
【図3】本実施形態に係るプログラムの例を示す図である。
【図4】本実施形態に係るデコード処理の一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る比較対象の命令実行回路の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る比較対象のプログラムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図4を参照しつつ、本実施の形態の命令実行回路1000の構成例について説明する。
【0023】
図1に示すように、命令実行回路1000は、プロセッサ100と、メモリ(第1記憶素子)200と、レジスタ(第2記憶素子)300と、アドレスデコーダ400と、を備えて構成される。またメモリ200とレジスタ300と合わせて記憶回路とも記す。
【0024】
クロック生成回路500は、命令実行回路1000の構成要素であってもよいし、構成要素でなくても良いが、プロセッサ100、メモリ200、レジスタ300はクロック生成回路500により生成されるクロックに同期して動作する。
【0025】
プロセッサ100は、記憶回路(メモリ200及びレジスタ300)に記憶されているプログラムを構成する命令を、命令の実行順に記憶回路から読み出して実行する。
【0026】
プロセッサ100は、図示しないプログラムカウンタを備えており、このプログラムカウンタの値を、命令が記憶されているアドレスとして、アドレスバスに出力する。そして記憶回路からデータバスに出力された命令を取得して実行する。プログラムカウンタの値は、プロセッサ100が命令を一つ実行する毎に、プロセッサ100が次に実行すべき命令のアドレスを示すように更新される。これによりプロセッサ100は、命令の実行順に記憶回路から命令を順次取得し、実行することができる。
【0027】
メモリ200及びレジスタ300には、プロセッサ100により実行されるプログラムの各命令が記憶される。メモリ200には、プログラムの一部分が記憶され、レジスタ300にはプログラムの他の部分が記憶される。
またメモリ200は、RAMやROM、フラッシュメモリ等により構成される。レジスタ300は、例えば複数のフリップフロップにより構成される。
【0028】
メモリ200及びレジスタ300には、一例として図2に示すメモリマップのように、アドレスが割り当てられている。つまり、メモリ200のうちROMにより構成される領域には、0000Hから2FFFHまでのアドレスが割り当てられており、メモリ200のうちRAMにより構成される領域には、3000Hから3FFFHまでのアドレスが割り当てられており、レジスタ300により構成される領域には、4000Hから4010Hまでのアドレスが割り当てられている。
【0029】
アドレスデコーダ400は、プロセッサ100からアドレスバスに出力されるアドレスに応じて、図2に示すメモリマップに従って特定されるメモリ200及びレジスタ300のうちのいずれか一つに対して、イネーブル信号(CE)を出力する。イネーブル信号は、メモリ200及びレジスタ300に対し、記憶している命令を出力させるための信号である。
【0030】
つまり、メモリ200及びレジスタ300は、イネーブル信号が入力されている間にアドレスバスに出力されたアドレスに記憶されている命令をデータバスに出力する。
【0031】
なお、メモリ200及びレジスタ300には、図示されていない電源回路から電力が供給されており、所定の電力を消費している。そしてメモリ200及びレジスタ300は、イネーブル信号が入力されている間は、イネーブル信号が入力されていない間と比較して、消費電力が上昇する。
【0032】
また、メモリ200の消費電力とレジスタ300の消費電力とを比較すると、メモリ200の方がレジスタ300よりも回路規模が大きいため、メモリ200の方が消費電力は大きい。
【0033】
メモリ200及びレジスタ300には、図3に示すようにプログラムが記憶されている。プロセッサ100は、プログラムの先頭の命令から順にプログラムを構成する各命令を読み出して実行する。先頭の命令は、図3では一例として「START:」と記されたラベルが付された「LD R1」命令である。プロセッサ100は、メモリ200に記憶されている「JUMP WAIT」命令を読み出して実行すると、次の命令読み出しのタイミングで、「WAIT:」と記されたラベルが付された、レジスタ200に記憶されている「NOP」命令を読み出して実行する。そしてさらに次の命令読み出しのタイミングでは、プロセッサ100は、レジスタ300に記憶されている「JUMP WAIT」命令を読み出して実行する。
【0034】
そうするとプロセッサ100は、さらに次の命令読み出しのタイミングで、再び「WAIT:」と記されたラベルが付された、レジスタ200に記憶されている「NOP」命令を読み出して実行する。以下、プロセッサ100は、レジスタ300に記憶されている「NOP」命令と、「JUMP WAIT」命令とを繰り返して実行する。
【0035】
プロセッサ100が、レジスタ300に記憶されている「NOP」命令と「JUMP WAIT」命令とを繰り返して実行している間は、アドレスデコーダ400からは、レジスタ300に対してのみイネーブル信号が出力され、メモリ200にはイネーブル信号は出力されない。
【0036】
この間メモリ200にはイネーブル信号が入力されないため、メモリ200の消費電力は低下する。一方で、レジスタ300にはイネーブル信号が続けて入力されるため、レジスタ300の消費電力は上昇する。
【0037】
しかしながら、メモリ200は、例えば数キロバイト〜数ギガバイト程度の大量のデータを記憶する回路であることから、高々数バイトないしは数十バイト程度のデータしか記憶しないレジスタ300に比べて回路規模が巨大であり、データ読み出し時の消費電力はレジスタ300に比べて圧倒的に大きい。
【0038】
従って、プロセッサ100が、レジスタ300に記憶されている「NOP」命令と「JUMP WAIT」命令とを繰り返して実行している間、メモリ200へのイネーブル信号が出力されず、メモリ200に対する命令の読み出しは行われないので、命令実行回路1000全体としての消費電力を低減させることが可能となる。
【0039】
また本実施形態の命令実行回路1000によれば、例えば、クロックの生成を停止させなくても消費電力を低減させることができる。クロックを停止させないで済むということは、例えば、クロック停止時に必要となる様々なデータの退避処理や、クロック再開時に必要となるデータの復帰処理等の複雑な処理が不要であり、またクロックを停止、再開させるための特別の回路やプログラムも不要にできる。
【0040】
さらに、クロックを停止させるための処理に要する時間やクロックを再開させるための処理に要する時間も不要となるため、プロセッサ100による情報処理の性能を落とさずに消費電力を低減することが可能となる。
【0041】
このように、プログラムを構成する複数の命令のうち、プロセッサ100に特定の命令を繰り返し実行させるループ処理のアルゴリズムを記述した部分をレジスタ300に記憶し、それ以外の部分をメモリ200に記憶しておくようにすることにより、命令実行回路1000の消費電力を低減することが可能となる。
【0042】
レジスタ300に記憶しておくループ処理のアルゴリズムを記述した特定の命令は、所定回数繰り返し実行されるとループ処理を終了するもの(有限ループ)であってもよいし、回数の制限なく繰り返し実行されるもの(無限ループ)であってもよい。
また、レジスタ300には、1つのループ処理だけでなく、複数のループ処理を実行する命令を記憶するようにしても良い。
【0043】
また図3に示したプログラムは、先頭の命令を含む第1の部分と、第1の部分が終了した後に実行される第2の部分から構成され、第1の部分がメモリ200に記憶され、第2の部分がレジスタ300に構成されている。そして、プロセッサ100は、先頭の命令から順にメモリ200に記憶されている第1の部分の各命令を実行してから、レジスタ300に記憶されている第2の部分のループ処理の命令を実行する。
しかしながら、プログラムの構成はこのようなものに限定されない。
【0044】
例えば、プログラムが先頭の命令を含む第1の部分と、第1の部分の実行が終了した後に実行される第2の部分と、第2の部分の実行が終了した後に実行される第3の部分とから構成されている場合に、第1の部分と第3の部分がメモリ200に記憶され、第2の部分がレジスタ300に記憶されるようにしても良い。
【0045】
この場合、プロセッサ100が第2の部分の命令を実行している際に、所定の割り込み信号がプロセッサ100に入力された場合には、プロセッサ100は第2の部分の命令を終了し、第3の部分の命令の実行を開始するようにしても良い。または、第2の部分には、予めプロセッサ100が所定回数繰り返し実行すると第3の部分の実行を開始するように、命令を記述しておくようにしても良い。
【0046】
また例えば、プログラムが先頭の命令を含む第1の部分と、第1の部分の実行が終了した後に実行される第2の部分とから構成されている場合に、第1の部分がレジスタ300に記憶され、第2の部分がメモリ200に記憶されるようにしても良い。
【0047】
本実施形態に係る命令実行回路1000は、ループ処理を含むプログラムを実行することにより情報処理を行うものであれば、どのような用途であっても適用することができるが、一例として、音声のデジタルデータを符号化して生成される符号化データを、復号化する場合の処理を例に説明する。
今日、符号化や復号化の規格としてMP3やWMA、AACなどが知られている。
【0048】
この場合、図3に示した記憶回路(メモリ200及びレジスタ300)に記憶されるプログラムは、符号化データを復号化するためのプログラムである。またプロセッサ100は、記憶回路から復号化を行うためのプログラムの命令を順次読み出して実行することにより復号化の処理を行う。
【0049】
記憶回路には、復号化を行うためのプログラムを構成する命令が記憶されている。またプロセッサ100は、記憶回路に記憶されているプログラムを実行することにより復号化を行う。プロセッサ100及び記憶回路は、クロック生成回路500から出力されるクロック信号に同期して動作する。
【0050】
一般的に、音声のデジタルデータを符号化して生成された符号化データを復号化する処理は、フレームと呼ばれるデータの単位毎に行われる。そしてプロセッサ100は、1フレーム分の符号化データを復号化した後は、続けて次のフレームの符号化データの復号化を開始するのではなく、先に復号化したデジタルデータの再生が完了するのを待ってから次のフレームの符号化データの復号化を開始する。従ってプロセッサ100は、各フレームについて図3に示す復号化のプログラムを繰り返し実行する。
【0051】
プロセッサ100は、このプログラムを構成する命令の実行順に、命令が記憶されているアドレスの値をアドレスバスに出力する。アドレスの値は、プロセッサ100が備える図示しないプログラムカウンタにより算出される。プロセッサ100から出力されたアドレスは、メモリ200及びアドレスデコーダ400に入力される。
アドレスデコーダ400は、アドレスが入力されると、メモリ200あるいはレジスタ300に対してイネーブル信号(CE)を出力する。
メモリ200あるいはレジスタ300は、イネーブル信号が入力されている間に入力されたアドレスに記憶されている命令をデータバスに出力する。
そしてプロセッサ100は、データバスに出力された命令を取得し、その命令を実行する。
以上の処理を、プロセッサ100がプログラムを構成する各命令について順次実行することにより、1フレームの符号化データに対する復号化が行われる。
【0052】
ここで図3に示すように、レジスタ300には、「WAIT:」と記されたラベルが付された「NOP」命令と、「JUMP WAIT」命令とで構成されるループ処理のアルゴリズムが記述された命令が記憶されている。またメモリ200には、フレーム内の符号化データを復号化するための命令が記憶されている。
【0053】
プロセッサ100は、メモリ200内の命令を先頭の命令から順に実行することにより符号化データの符号化処理を行い、メモリ200内の「JUMP WAIT」命令を実行すると、次の命令読み出しタイミングで、レジスタ300の「WAIT:」と記されたラベルが付された「NOP」命令を読み出して実行する。
【0054】
それ以降プロセッサ100は、レジスタ300内の「NOP」命令と、「JUMP WAIT」命令とを繰り返し実行する。このようにしてプロセッサ100は、復号化が完了したデジタルデータの再生が終了するまで時間調整を行っている。
【0055】
そのフレームのデジタルデータの再生が完了すると、図1に示すように、プロセッサ100には割り込み信号が入力される。そしてプロセッサ100は、次のフレームの符号化データの復号化を開始すべく、再びプログラムの先頭の命令から実行を開始する。
【0056】
上述したように、1フレーム内の符号化データのデータ量は、音声のデジタルデータを符号化する際に指定されるビットレートやサンプリング周波数によって異なるため、1フレーム内の符号化データを復号化するのに要する時間は、ビットレートやサンプリング周波数によって異なる。そのため、先に復号化したデジタルデータの再生が完了するまでの待ち時間は、ビットレートやサンプリング周波数によって異なることになる。
【0057】
図4に示すように、1フレーム内のデータ量が多い場合と少ない場合とを比較すると、1フレーム内のデータ量が多い場合(ケースA)には復号化にそれだけ長時間を要するため、待ち時間は少なくなるが、1フレーム内のデータ量が少ない場合(ケースB)には復号化に短時間しか要しないため待ち時間は長くなることになる。
【0058】
本実施形態に係る命令実行回路1000では、復号化したデジタルデータの再生が完了するまでの間プロセッサ100により繰り返し実行される「NOP」命令と「JUMP WAIT」命令とは、レジスタ300に記憶されている。
【0059】
そしてその間、消費電力の大きなメモリ200に対する命令の読み出しは行われない。従って、本実施形態に係る命令実行回路1000では、復号化したデジタルデータの再生が完了するまで時間調整の間、レジスタ300から命令を読み出すだけの最小限の消費電力で処理を実行することが可能となる。
【0060】
復号化の処理時間と上記待ち時間とを含めた1フレームあたりの全体の処理時間に対する上記待ち時間の割合は、おおよそビットレートやサンプリング周波数が低くなるほど大きくなり、50%程度になる場合もある。そして、音声のデジタルデータを符号化、復号する際の電力消費の大部分は記憶回路への命令やデータのアクセス(読み出しや書き込み)に起因している。従って、上記待ち時間の間、消費電力の大きなメモリ200からの命令読み出しを抑制し、メモリ200の消費電力を低減させることにより、命令実行回路1000全体の消費電力を大幅に低減させることが可能となる。
【0061】
特に、このようなデジタルデータとして音声を取り扱うことが可能な電子機器は、例えば、携帯電話機や携帯音楽プレーヤ、ICレコーダ、車載音楽プレーヤなどのように、バッテリからの電力により動作するものが多いため、消費電力抑制の効果は大きい。
【0062】
本実施の形態では、音声データを復号化する場合について説明したが、もちろん符号化する場合についても同様に適用できる。さらに、音声データだけでなく画像データや動画データの符号化、復号化を行う場合にも適用できる。
【0063】
また本実施の形態は、圧縮音声処理の集積回路にマイコンやDSP(Digital Signal Processor)が搭載されている場合に好適であるが、それ以外の様々な場合にも適用可能である。
【0064】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲を本実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
100 プロセッサ
200 メモリ
300 レジスタ
400 アドレスデコーダ
410 アドレスデコーダ
500 クロック生成回路
1000 命令実行回路
1010 命令実行回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の命令により構成されるプログラムの一部分を記憶する第1記憶素子、及び前記プログラムの他の部分を記憶し、前記第1記憶素子よりも消費電力が少ない第2記憶素子を有する記憶回路と、
前記プログラムを構成する命令の実行順に、命令のアドレスを前記記憶回路に対して出力し、前記アドレスに記憶されている命令を前記記憶回路から取得して実行するプロセッサと、
前記プロセッサから前記アドレスが出力された際に、前記アドレスに記憶されている命令を出力させるためのイネーブル信号を、前記命令を記憶している前記第1記憶素子及び前記第2記憶素子のうちのいずれか一つに対して出力するアドレスデコーダと、
を備え、
前記第2記憶素子に記憶される前記プログラムの前記他の部分は、前記プロセッサに特定の命令を繰り返し実行させるループ処理が記述された部分であり、前記第1記憶素子に記憶される前記プログラムの前記一部分は、前記ループ処理以外の処理が記述された部分である
ことを特徴とする命令実行回路。
【請求項2】
請求項1に記載の命令実行回路であって、
前記プログラムは、音声のデジタルデータを所定の規格に従って符号化して生成された符号化データを、前記規格に従って前記デジタルデータに復号化する処理を実行するプログラムである
ことを特徴とする命令実行回路。
【請求項3】
請求項2に記載の命令実行回路であって、
前記第1記憶素子には、前記プロセッサに、前記復号化の処理を実行させるための命令が記憶され、前記第2記憶素子には、前記プロセッサに、前記復号化の処理が終了した後の時間調整の処理を実行させるための命令が記憶される
ことを特徴とする命令実行回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の命令実行回路であって、
前記プロセッサは、前記第2記憶素子に記憶されている前記ループ処理内の命令を実行している際に、所定の割り込み信号が入力された場合には、前記ループ処理内の前記命令の実行を終了し、前記第1記憶素子に記憶されている命令の実行を開始する
ことを特徴とする命令実行回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の命令実行回路であって、
前記第1記憶素子は、ROM及びRAMのうちの少なくともいずれかにより構成され、
前記第2記憶素子は、レジスタにより構成される
ことを特徴とする命令実行回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate