説明

咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品

【課題】咀嚼嚥下機能低下者用の食事として軟飯等の加水量の多い米飯とあわせて用いることで、咀嚼や嚥下が容易である上に漬物特有の食味を充分に味わうことができる前記食事が得られる咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を提供する。
【解決手段】漬物の截断物100部と、増粘多糖類を含む調味液20〜100部との混合物であり、該混合物の全体の付着性が500〜1000J/mであることを特徴とする咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟飯等の加水量の多い米飯とあわせて用いることで咀嚼嚥下機能低下者に好適な食事が得られる漬物加工品に関し、更に詳しくは、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる前記食事が得られる漬物加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼(食物をよくかみくだすこと)や嚥下(食物を飲み込むこと)機能が低下した高齢者や、何らかの疾病から回復し、経管栄養摂取から経口栄養摂取へのリハビリが必要な人にとって、通常の食事をするのは困難である。そのような場合の食事としては、やわらかくて飲み込みやすい食事、詳しくは、口腔内に入れた時に、滑らかで、適度な流動性を有する食事であることが望まれる。例えば、米飯食としては、通常の炊飯米ではなく、水分を多めにして軟らかく炊きあげた軟飯等が利用される。
【0003】
ところで、漬物は、米飯食の食卓に欠かせない食品の一つであり、塩漬け、ぬか漬け、醤油漬け、麹漬け、粕漬け等のような多様な風味の漬物が特に高齢者に好まれて摂食されている。上述した咀嚼嚥下機能低下者用の食事においても、通常の食事と同様に食べる喜びが味わえるような美味しい食事であることが重要である点からは、このような漬物を咀嚼嚥下機能低下者用の食事として積極的に利用することが望まれる。
【0004】
しかしながら、漬物は、硬くて咀嚼や嚥下が困難であることから、そのままでは、咀嚼嚥下機能低下者用の食事に利用できない。このため、従来より、漬物を細かくきざんでこれを上述した軟飯等とともに提供することが行われているが、このようにすると、提供する際にきざんだ漬物が加水量が多くて水っぽい軟飯等と混ざり合ってしまい、漬物の味がぼやけて漬物特有の食味を味わうことができないという問題があった。
【0005】
咀嚼嚥下機能低下者用の食事に用いる漬物に関しては、例えば、特開2004−305194号公報(特許文献1)や特開2006−314262号公報(特許文献2)に、漬物に熱処理を施すことにより食感を柔らかく改質する技術が提案されている。これらの改質された漬物は、軟飯とともに提供しても軟飯と混ざり合うこともなく漬物の風味を味わうことができるものであるが、ある程度、咀嚼や嚥下力を有することが前提となり、このような食事は充分に咀嚼や嚥下がしやすいとは言い難いものである。
【0006】
【特許文献1】特開2004−305194号公報
【特許文献2】特開2006−314262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、軟飯等の加水量の多い米飯とあわせて用いることで、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる食事が得られる咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、漬物を截断し、この漬物截断物を、糊状の調味液で互いに適度に付着させて全体として団塊状とするならば、漬物截断物の団塊状物全体として口腔内で漬物特有の食味を生じさせることができるのではないかと着想した。そして、更に、鋭意研究を重ねた結果、漬物截断物と、特定の増粘材を含む特定量の調味液との混合物であり、全体の付着性を特定範囲に調整した漬物加工品は、意外にも軟飯等の加水量の多い米飯とあわせて用いても漬物の味がぼやけることなく漬物特有の食味を充分に味わうことができること、更に、このように調製した食事は咀嚼や嚥下も容易であることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
(1) 漬物の截断物100部と、増粘多糖類を含む調味液20〜100部との混合物であり、該混合物の全体の付着性が500〜1000J/mであることを特徴とする咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品、
(2) 前記漬物の截断物の大きさを1〜100mmとしてある(1)記載の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品、
(3) 前記増粘多糖類がキサンタンガム及び/又はグアーガムである(1)又は(2)記載の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の漬物加工品を軟飯等の加水量の多い米飯とあわせて用いることで、咀嚼や嚥下が容易であるだけでなく、例えば、塩漬け、ぬか漬け、醤油漬け、麹漬け、粕漬け、酢漬け等のような多様な漬物それぞれの食味を充分に味わうことができる咀嚼嚥下機能低下者に好適な美味しい食事が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
本発明で用いる漬物とは、野菜を塩漬け、ぬか漬け、みそ漬け、醤油漬け、麹漬け、粕漬け、酢漬け等をして熟成させた食品をいう。前記野菜としては、特に制限はないが、具体的には、例えば、大根、かぶ、人参、ごぼう、しょうが、れんこん等の根菜類や、きゅうり、まくわうり、しろうり、かぼちゃ等の瓜類、白菜、高菜、野沢菜等の葉菜類、なす類等、らっきょう等が挙げられる。
【0013】
本発明においては、前記漬物を截断して用いる。截断物の大きさとしては、咀嚼や嚥下がしやすい大きさとすればよいが、あまり小さくしすぎても、漬物の食味を充分に味わうことができず、一方、大きすぎても咀嚼や嚥下がし難いだけでなく、漬物截断物が互いに付着した団塊状の構造が弱くなるためか軟飯とあわせて提供する際に截断した漬物と軟飯が混ざり合ってしまい、漬物の味がぼやけて漬物特有の食味を味わうことができない場合がある。したがって、漬物の截断物の大きさは、好ましくは1〜100mm、より好ましくは3〜75mmである。
【0014】
また、本発明においては、前記漬物の截断物に加えて、増粘多糖類を含む調味液を用いる。ここで、前記増粘多糖類としては、食用に適していればその種類は特に問わないが、具体的には、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、タラガム、サイリュームシードガム等が挙げられる。これら増粘多糖類は一種又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これら増粘多糖類の中でも、本発明においては、付着性が高い性質を有し後述する製品の付着性を調整し易い点や、食味がよい点から、キサンタンガム及び/又はグアーガムを用いることが好ましい。
【0015】
前記調味液に用いる調味料としては特に制限はなく、用いる漬物にあった調味料を用いればよい。具体的には、例えば、食塩、醤油、みそ、みりん、酢、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、ぬか等が挙げられる。また、前記調味液には、pH調整剤や酸化防止剤等の種々の品質改良剤を配合してもよい。
【0016】
本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品は、まず、前記漬け物の截断物100部と、前記増粘多糖類を含む調味液20〜100部との混合物であることに特徴を有する。なお、本発明においては、前記配合比率となるように混合する限り、混合の順序や方法に特に制限は無く、例えば、まず、調味液配合中の清水の一部を用いて増粘多糖類を含む濃縮調味液を調製し、この濃縮調味液と漬物截断物とを混合した後、配合中の残りの清水を加えて更に混合してもよい。
【0017】
本発明においては、後述する製品の付着性を特定範囲とする必要はあるが、このように特定の増粘材を含む調味液と、特定量の漬物截断物とを混合して団塊状物、より具体的には高粘度で流動性のある団塊状物、あるいは流動性のない固体状の団塊状物とすることにより、咀嚼嚥下機能低下者用の食事として軟飯等とあわせて用いるのに好適な漬物加工品とすることができる。より詳しくは、軟飯等の加水量の多い米飯とあわせて用いることで、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる食事が得られる漬物加工品とすることができる。
【0018】
これに対して、後述の比較例に示すように、前記調味液として澱粉を用いた調味液を用いた場合や、調味液を混合せずに漬物の截断物のみを用いた場合は、軟飯とあわせて提供する際に截断した漬物と軟飯が混ざり合ってしまい、漬物の味がぼやけて漬物特有の食味を味わうことができない。同様に、前記調味液の配合量が前記範囲より少ない場合や、調味液の配合量が前記範囲より多い場合においても提供する際に截断した漬物と軟飯が混ざり合ってしまい、漬物の味がぼやけて漬物特有の食味を味わうことができない。
【0019】
次に、本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品は、全体の付着性が500〜1000J/m、好ましくは500〜900J/mとしてあることに特徴を有する。ここで、付着性とはクリープメーター((株)山電社製、RE−3305)を用いて測定した値である。具体的には、製品を直径40mm×深さ15mmのステンレスシャーレにすり切りいっぱいまで入れ、これを測定テーブルに置き、直径20mm円柱プランジャーを使用し、テーブル移動速度10mm/secの条件で製品を10mm移動した際の付着性を測定した値である。
【0020】
増粘多糖類は、調味液に対する配合量が増えるにしたがって当該調味液の付着性を増大させる性質を有することから、前記付着性は、調味液の増粘多糖類の配合量を増減させることにより調整することができる。具体的には、用いる増粘多糖類の種類や調味液の塩分濃度等にもよるが、例えば、キサンタンガムやグアーガムを用いる場合には、付着性を前記範囲とするには、これらの合計配合量を調味液に対して好ましくは1〜4%、より好ましくは1〜3%となるようにすればよい。
【0021】
本発明においては、上述したように漬物截断物と、増粘多糖類を含む特定量の調味液との混合物であることに加えて、このように全体の付着性を特定範囲として、漬物截断物同士が適度に付着した団塊状物とすることにより、咀嚼嚥下機能低下者用の食事として軟飯等とあわせて用いるのに好適な漬物加工品とすることができる。より詳しくは、軟飯等の加水量の多い米飯とあわせて用いることで、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる食事が得られる漬物加工品とすることができる。
【0022】
これに対して、後述の比較例に示すように、付着性の値が前記範囲より低い場合は、漬物截断物同士の付着力が弱く、軟飯とあわせて提供する際に漬物截断物と軟飯が混ざり合ってしまい、漬物の味がぼやけて漬物特有の食味を味わうことができない。一方、付着性の値が前記範囲より高い場合は、漬物截断物同士が互いに硬く付着してしまい、咀嚼や嚥下がし難くなる。
【0023】
以上のように、本発明の漬物加工品は、漬物截断物と、特定の増粘材を含む特定量の調味液との混合物であり、前記混合物全体の付着性を特定範囲に調整してあるものであるが、このような本発明の漬物加工品は、咀嚼嚥下機能低下者用の食事として通常の米飯ではなく加水量を多くして軟らかく炊きあげた軟飯とあわせて用いることが好ましい。具体的には、本発明の漬物加工品を軟飯の上に載せて、あるいは、軟飯と混ぜて咀嚼嚥下機能低下者用の食事として提供することで、当該食事を咀嚼や嚥下が容易である上に漬物特有の食味を充分に味わうことができる食事とすることができる。なお、前記軟飯とは、具体的には、炊飯条件にもよるが、精白米又は無洗米1部に対して好ましくは清水5〜9部を加えて炊飯したものである。
【0024】
また、本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品は、その製造方法に特に制限は無く、例えば、以下のように製造することができる。まず、増粘多糖類、調味料及び品質改良剤等をミキサー等で混合して増粘多糖類を含む調味液を製造する。この際、増粘多糖類の配合量は、製品の付着性が前記特定範囲となるように調整する。また、これとは別に、漬物をダイサー等で截断して漬物の截断物を製造する。なお、前記漬物の截断物が塩漬品である場合等は、これを水さらしして脱塩した後に用いてもよい。続いて、調味液と漬物の截断物を攪拌混合機等に投入し、漬物の截断物が調味液中に略均一に分散するように混合することにより、本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を製造することができる。得られた本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品は必要に応じて耐熱性パウチ等に充填密封した後、70〜90℃で殺菌し容器詰めの製品とすることができる。
【0025】
以上のようにして得られた本発明の漬物加工品は、軟飯等の加水量の多い米飯とあわせて用いても漬物の味がぼやけることなく漬物特有の食味を充分に味わうことができる。しかも、このように調製した食事は咀嚼嚥下機能低下者に好適な咀嚼や嚥下がし易い食事となる。このような効果が得られる理由としては、本発明の漬物加工品が、漬物截断物が適度に付着した特有の団塊状物としてあることにより、食器、スプーン、あるいは、口腔内等において軟飯等と混ざりあい難く団塊状の状態が保持され、この団塊状物が口腔内で漬物の食味を生じさせるためであると推察される。更に、付着力を特定範囲としてあるので、咀嚼や嚥下もし易いと推察される。
【0026】
以下、本発明の実施例、比較例及び試験例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
常法により塩分濃度20%のきゅうり塩漬けを得た。次に、得られたきゅうり塩漬けを水にさらして脱塩した後、ダイサーで2mm×2mm×2mmの大きさ(8mm)に截断して漬物の截断物を得た。これとは別に、下記配合により原料を混合して調味液を得た。つまり、清水、醤油、砂糖、グアーガム、キサンタンガム、みりん、グルタミン酸ナトリウム及び食塩をミキサーに投入して混合して調味液を得た。続いて、攪拌混合機に、前記漬物截断物と調味液を漬物截断物100部に対して調味液30部の割合で投入して漬物の截断物が調味液中に略均一に分散するように混合した後、耐熱性パウチに充填密封して80℃で加熱殺菌することにより、本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を得た。なお、得られた本発明の漬物加工品は、高粘度の流動性のある団塊状物であり、付着性は649J/mであった。
【0028】
<調味液配合>
清水 61.9部
醤油 32.0部
砂糖 2.0部
グアーガム 1.0部
キサンタンガム 1.0部
みりん 1.0部
グルタミン酸ナトリウム 1.0部
食塩 0.1部
――――――――――――――――――――
100部
【0029】
また、得られた本発明の漬物加工品10gを軟飯(常法により無洗米1部に対して清水7部を加えて炊飯したもの)100gにのせた後、スプーンで軽く混ぜて咀嚼嚥下機能低下者用の食事とした。当該食事は、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる大変好ましいものであった。
【0030】
[実施例2]
実施例1において、調味液の増粘材としてグアーガムを配合せずにキサンタンガム2部を配合した他は、実施例1と同様の方法で本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を得た。なお、得られた本発明の漬物加工品は、高粘度の流動性のある団塊状物であり、付着性は649J/mであった。
【0031】
また、得られた本発明の漬物加工品を用い、実施例1と同様にして咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製したところ、当該食事は、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる大変好ましいものであった。
【0032】
[実施例3]
実施例1において、調味液の増粘材としてキサンタンガムを配合せずにグアーガム2部を配合した他は、実施例1と同様の方法で本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を得た。なお、得られた本発明の漬物加工品は、高粘度の流動性のある団塊状物であり、付着性は717J/mであった。
【0033】
また、得られた本発明の漬物加工品を用い、実施例1と同様にして咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製したところ、当該食事は、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる大変好ましいものであった。
【0034】
[比較例1]
実施例1において、調味液の増粘材としてキサンタンガム及びグアーガムを配合せずに水膨潤性澱粉16部を配合し、その増加分は、清水の配合量を減らして補正した他は、実施例1と同様の方法で漬物加工品を得た。なお、得られた漬物加工品は、流動性のない固体状の団塊状物であった。
【0035】
得られた漬物加工品を用い、実施例1と同様にして咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製したところ、当該食事は、軟飯に前記漬物加工品が混ざり合ってしまい漬物特有の食味を味わうことができなかった。
【0036】
[比較例2]
実施例1において、きゅうり塩漬けの截断物を5mm×5mm×5mmの大きさ(125mm)になるように截断した他は、実施例1と同様の方法で容器詰め漬物加工品を得た。なお、得られた漬物加工品は、流動性のない固体状の団塊状物であった。
【0037】
得られた漬物加工品を用い、実施例1と同様にして咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製したところ、当該食事は、咀嚼や嚥下がし難い上に、実施例1に比べて軟飯に漬物加工品がやや混ざり合い易い傾向があり漬物特有の食味がやや弱かった。
【0038】
[比較例3]
実施例1で得た漬物截断物を調味液と混合することなくそのまま用いて、実施例1と同様にして、咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製した。つまり、漬物截断物10gを軟飯100gにのせた後、スプーンで軽く混ぜて咀嚼嚥下機能低下者用の食事としたところ、当該食事は、軟飯に漬物加工品が混ざり合って漬物特有の食味を味わうことができないものであった。
【0039】
[試験例1]
実施例1において、調味液のキサンタンガムとグアーガムの配合比率を1:1に保ったまま、これら増粘多糖類の合計配合量を表1に示す配合量に変え、その減少分あるいは増加分は清水の配合量で補正した以外は、同様な方法で5種類の漬物加工品を得た。得られた5種類の漬物加工品について、付着性を測定した後、実施例1と同様に軟飯とあわせて咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製し、それぞれ食味と食べ易さを評価した。また、得られた5種類の漬物加工品について、それぞれ軟飯等の加水量の多い食事とあわせた際の混ざり易さを評価するために、以下の水分散性試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[水分散性試験の方法]
200mlのビーカーに回転子(40mm×6mm)及び清水200ml(水温20℃)を入れ、120rpmで攪拌させながら、漬物加工品の団塊状物10gを添加し、水流により漬物加工品が水中に分散して漬物加工品の団塊状物の大きさが10mm以下になった時の経過時間を評価した。この試験においては、経過時間が長い程、水中に分散し難い性質が強いことを示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表中の評価記号
<軟飯とあわせた食事の食味>
A:漬物特有の食味を大変強く味わえる。
B:漬物特有の食味を強く味わえる。
C:漬物特有の食味がやや弱い。
D:漬物特有の食味が弱い。
【0043】
<軟飯とあわせた食事の食べ易さ>
A:非常に咀嚼と嚥下がしやすい。
B:咀嚼と嚥下がしやすい。
C:咀嚼と嚥下がややし難い。
D:咀嚼と嚥下がし難い。
【0044】
表1より、増粘多糖類の配合量が多くなるほど、漬物加工品の付着性が強くなること、さらに、付着性が強くなるにつれて、水に分散し難い性質となることがわかる。また、漬物加工品の付着性が500J/m以上であると、加水量の多い軟飯とあわせて用いても、漬物特有の食味を大変強く味わえることがわかる。一方、漬物加工品の付着性が強すぎると咀嚼と嚥下がし難くなる。以上より、本発明においては、漬物加工品の付着性を500〜1000J/mとすることにより、咀嚼嚥下機能低下者用の食事として軟飯等とあわせて用いるのに好適な漬物加工品となることがわかる。更に、付着性が500〜900J/mであると、非常に咀嚼と嚥下がしやすいためより好ましかった。これに対して、付着性が前記範囲より低い場合は、水分散性の値が低いことからも理解できるように、軟飯に漬物加工品が混ざり合ってしまい漬物特有の風味を味わうことができず、付着性が前記範囲より高い場合は、付着性が強すぎるため咀嚼や嚥下がし難いものとなった。
【0045】
[試験例2]
実施例1において、漬物截断物100部に対する調味液の配合量を表2に示す配合量に変えた他は、実施例1と同様の方法で4種類の漬物加工品を得た。得られた4種類の漬物加工品について、実施例1と同様に軟飯とあわせて咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製し、それぞれ食味と食べ易さを評価した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

※食味・食べ易さの評価の記号は試験例1と同じ
【0047】
表2より、漬物截断物100部に対して調味液を20〜100部配合した場合において、咀嚼嚥下機能低下者が非常に嚥下しやすく、漬物特有の風味を大変強く味わえるものとなり、咀嚼嚥下機能低下者用の食事として軟飯等とあわせて用いるのに好適な漬物加工品となることがわかる。これに対して、調味液の配合量が前記範囲より少ない場合と多い場合のいずれにおいても、截断した漬物と軟飯が混ざり合ってしまい、漬物の味がぼやけて漬物特有の食味を味わうことができなかった。
【0048】
[実施例5]
常法により塩分濃度20%のきゅうりの塩漬けを得た。次に、得られたきゅうりの塩漬けを水にさらして脱塩した後、ダイサーで2mm×2mm×1mmの大きさ(4mm)に截断して漬物の截断物を得た。これとは別に、下記配合により原料を混合して調味液を得た。つまり、清水、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、食塩、梅酢、醤油、グアーガム及びキサンタンガムをミキサーに投入して混合して調味液を得た。続いて、攪拌混合機に、前記漬物截断物と調味液を漬物截断物100部に対して調味液80部の割合で投入して漬物の截断物が調味液中に略均一に分散するように混合した後、耐熱性パウチに充填密封して80℃で加熱殺菌することにより、本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を得た。なお、得られた本発明の漬物加工品は、高粘度の流動性のある団塊状物であり、付着性は769J/mであった。
【0049】
<調味液配合>
清水 69.5部
砂糖 7.0部
グルタミン酸ナトリウム 7.0部
食塩 6.0部
梅酢 5.0部
醤油 4.0部
グアーガム 0.75部
キサンタンガム 0.75部
――――――――――――――――――――
100部
【0050】
また、得られた本発明の漬物加工品を開封し、実施例1と同様にして咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製したところ、当該食事は、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる大変好ましいものであった。
【0051】
[実施例6]
常法により塩分濃度20%の大根塩漬けを得た。次に、得られた大根塩漬けを水にさらして脱塩した後、ダイサーで3mm×3mm×3mmの大きさ(27mm)に截断して漬物の截断物を得た。これとは別に、下記配合により原料を混合して調味液を得た。つまり、清水、砂糖、食塩、醸造酢、グアーガム及びキサンタンガムをミキサーに投入して混合して調味液を得た。続いて、攪拌混合機に、前記漬物截断物と調味液を漬物截断物100部に対して調味液40部の割合で投入して漬物の截断物が調味液中に略均一に分散するように混合した後、耐熱性パウチに充填密封して80℃で加熱殺菌することにより、本発明の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品を得た。なお、得られた本発明の漬物加工品は、高粘度の流動性のある団塊状物であり、付着性は684J/mであった。
【0052】
<調味液配合>
清水 48.0部
砂糖 25.0部
食塩 15.0部
醸造酢 10.0部
グアーガム 1.0部
キサンタンガム 1.0部
――――――――――――――――――――
100部
【0053】
また、得られた本発明の漬物加工品を用い、実施例1と同様にして咀嚼嚥下機能低下者用の食事を調製したところ、当該食事は、咀嚼や嚥下が容易である上に、漬物特有の食味を充分に味わうことができる大変好ましいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漬物の截断物100部と、増粘多糖類を含む調味液20〜100部との混合物であり、該混合物の全体の付着性が500〜1000J/mであることを特徴とする咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品。
【請求項2】
前記漬物の截断物の大きさを1〜100mmとしてある請求項1記載の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品。
【請求項3】
前記増粘多糖類がキサンタンガム及び/又はグアーガムである請求項1又は2記載の咀嚼嚥下機能低下者用の漬物加工品。

【公開番号】特開2008−263849(P2008−263849A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110873(P2007−110873)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【出願人】(500566796)株式会社菜華 (1)
【Fターム(参考)】