説明

咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物

【課題】
未利用資源のセンダン葉をのど飴原料として利用して、更に、咽頭炎の鎮痛作用を高め、且つ、インフルエンザ予防・治療にも薬効がある経口投与組成物を提供する。
【解決手段】
センダン葉エキス末、霊芝エキス末、霊芝黒焼粉末を有効成分として含有し、基材として水飴、黒糖、グラニュー糖を含有し、香料として、シナモン、羅漢果、テアニン、甘草、桔梗から選択される咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用ののど飴等の経口投与組成物の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、咽頭炎用ののど飴として、南天実のエキスを含んだ咽頭炎用や咳止めののど飴は、例えば、特許文献1等として提供されている。
また、センダン(栴檀)Melia azedarachは、ムクロジ目・センダン科の植物の一種で、西日本を含むアジア各地の熱帯・亜熱帯域に自生する落葉高木で、日本での別名としてアミノキ、オウチ(楝)などがあるが、このセンダンの実と樹皮は、国内で医薬品に指定されている。実は生薬の苦楝子(くれんし)として、ひび、あかぎれ、しもやけに外用薬として用いられ、整腸、鎮痛薬として煎液を内服薬として用いられ、樹皮は漢方の生薬の苦楝皮(くれんぴ)として、駆虫剤として煎液を内服薬として用いられている。
ところで、前記苦楝子は収斂作用を持つ生薬として知られている。この収斂作用を持つ物質には止血、鎮痛、殺菌、防腐などの効果があり、化粧品や医薬品として用いられている。また、炎症を鎮める目的で粘膜、皮膚の炎症に用いて、特に、口内炎の消炎剤や炎症を起こした腸粘膜の刺激を和らげるため、整腸剤として利用されている。
しかしながら、センダンの実、樹皮は薬用部位であるが、葉は利用されておらず、食用エサにも未利用である。なお、このセンダンの葉の抽出物が、特許文献2等にインフルエンザ予防・治療効能があることも開示されている。
また、本発明者らによって、特許文献3等に、霊芝炭が粘膜等の毛細血管の改善に役立つことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−269513号公報
【特許文献2】特開2007−254319号公報
【特許文献3】特開2001−131019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、未利用資源のセンダン葉をのど飴原料として利用して、更に、咽頭炎の鎮痛作用を高め、且つ、インフルエンザ予防・治療にも薬効がある経口投与組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物であって、センダン葉エキス末、霊芝エキス末、霊芝黒焼粉末を有効成分として含有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物において、基材として水飴、黒糖、グラニュー糖を含有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物において、香料として、シナモン、羅漢果、テアニン、甘草、桔梗から選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物によれば、センダンの葉のエキスは、ポリフェノール、タンニン(tannin)、トリテルペン、nimbolin A、B、geduninなど有効成分を含有し、消炎、鎮痛、収斂、殺菌、免疫改善、として作用し、咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用としての効果がある。
さらに、普段に使われていないセンダン葉を利用することによって環境保全にも役に立つ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の経口投与組成物として実施例はのど飴であるが、有効主成分としてセンダン葉エキス、霊芝エキス、霊芝黒焼末を含み、必要に応じて、黒米色素、カシス色素、ブルーベリーエキス、羅漢果エキス、セサミン、水飴、黒糖、グラニュー糖、蜂蜜、ビタミンC、ペパーミントなどが配合され、咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の効果をえるものである。
上記の組成のうち、センダン葉エキスについては、消炎、鎮痛、収斂、殺菌、免疫改善、特に、前記特許文献2に開示されているように、インフルエンザ予防・治療作用がある。霊芝エキス及び霊芝黒焼粉末については、皮膚、粘膜の微小循環血流改善、消炎、鎮静、微量元素の供給などの作用があり、特に、霊芝黒焼粉末については粘膜の保護作用がある。
【0008】
また、必要に応じて、黒米色素、カシス色素、ブルーベリーエキス等を添加するが、これらの色素は複数種類のアントシアニンの抗酸化による粘膜保護などと天然着色剤としての作用があり、羅漢果エキスについては、咳止め、消炎、解熱などと甘味料(超低カロリー)としての作用があり、水飴、黒糖、グラニュー糖、蜂蜜、ビタミンC、ペパーミント等はのど飴に良く使われている基本素材である。
また、香料、ハーブ類として、シナモン、羅漢果、テアニン、甘草、桔梗、桂皮オイル等を適宜選択して使用すればよい。
【実施例1】
【0009】
[実施例1]の組成
総量200Kg、その内、
(1)基材として、
水飴:38.22重量%、黒糖:25.47重量%、グラニュー糖:31.85重量%
蜂蜜:2.23重量%、ビタミンC:0.03重量%、
(2)香料として
シナモン:0.29重量%
(3)主成分として、
センダン葉エキス末・・・0.19重量%
霊芝エキス末 ・・・1.43重量%
霊芝黒焼粉末 ・・・0.29重量%
【0010】
なお、センダン葉エキス末は加圧熱水抽出法によりセンダン葉1kgに対して約100g(10%)の粉末を得るもので、センダン葉を加圧熱水抽出して、そのエキスの抽出液を乾燥して粉末を得ている。同様に、霊芝エキス末も加圧熱水抽出法により霊芝1kgに対して約50g(約5%)の粉末を得るもので、霊芝を加圧熱水抽出して、そのエキス抽出液を乾燥してエキス粉末を得ている。また、霊芝黒焼粉末は、霊芝を蒸し焼きしたものである。
ところで、センダンの葉のエキス末は0.15重量%以上でないと効果が得られず、2.50重量%以上となると他の主成分を少なくしなければならず、好ましくは、2.0重量%近傍である。また、霊芝エキス末は、1.40重量%以上でないと効果が得られず、1.57重量%以上となると他の主成分を少なくしなければならず、好ましくは、1.5重量%近傍である。また、霊芝黒焼粉末は、0.25重量%以上でないと効果が得られず、0.4重量%以上となると他の主成分を少なくしなければならず、好ましくは、0.3重量%近傍である。
上記のど飴の製造方法は(1)基材を混合したものに、(2)香料・ハーブ類を配合し、これに(3)主成分を練り合わせ、4g/粒を製造した。
【0011】
[比較例1]の組成
市販のA社ののど飴の1粒
南天実乾燥エキス 500mg/9粒
添加物:黒砂糖、白糖、水飴、l-メントール、アラビアゴム、サラシミツロウ、タルク、カルナウバオウ、赤色3号、青色1号、黄色5号、香料。
【0012】
[咽喉炎に対する比較実験]
上記の実施例1ののど飴と比較例1の市販ののど飴とで、咽喉炎に対する作用効果を比較実験を行った。
急・慢性咽喉炎、急・慢性扁桃腺炎、口内炎、歯周病など口腔疾病は多発性的な病気であり、子供から高齢者に至る年齢層に発病する。本実験はセンダン葉のど飴の患者投与前後自覚症状及び病原菌の薬物に対する反応を観察し、南天のど飴と比較、センダン葉のど飴の咽喉炎の治癒の作用効果を確認するものである。
【0013】
(1)材料と方法
(1)−1.患者の選定:「新耳鼻咽喉学」(切替 一郎原作 野村 恭也 編著 南山堂、2004)の診断基準によって132名の患者を選定した。
無作為に実施例1のセンダン葉のど飴の組(以下センダン組と称する)と比較例1の市販の南天実ののど飴対照組(以下対照組と称する)にわける。センダン組102名、男性37名、女性65名、年齢20〜60才(90名、88.2%)。対照組30名男性14名、女性16名、年齢20〜60(25名、83.3%)
【0014】
(1)−2.疾病の種類:
実施例1のセンダン組は:急性咽頭炎41名、慢性咽頭炎57名、慢性扁桃腺炎2名、急性扁桃腺炎2名であった。
比較例1の対照組は:急性咽頭炎15名、慢性咽頭炎14名、急性扁桃腺炎1名であった。
【0015】
(1)−3.投与及び観察方法
投与及び観察方法は以下のようなものである。
(a)投与物:実施例1(センダン葉のど飴):本発明の実施例製品、4g/粒。
比較例1(南天実のど飴):A社の市販製品
実施例1(センダン組):1粒/3時間、4粒/日、3日間連続服用。
比較例1(対照組):3錠/回、3回/日、3日連続服用。

(b)観察方法:
患者の自覚症状をアンケート調査した。その際のランク付け以下のとおりである。
[A:顕著]:自覚症状(のどの痛み、乾燥感、異物感、咳など)は殆ど治まり、局部の充血と腫れは消え、粘膜潰瘍は治癒、血液検査の白血球計数は正常になる。
[B:有効]:自覚症状は改善、局部の充血と腫れは軽減、粘膜潰瘍は縮小、血液検査の白血球計数は大分正常になる。
[C:無効]:自覚症状、徴候は3日前と同じ程度。
【0016】
(2)実験結果
前記の観察方法による実験結果を実施例1の[表1]、比較例2の[表2]に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
上記の[表1](実施例1)、[表2](比較例1)に示されるように、実施例1のセンダン葉組(102名)患者の自覚症状及び徴候は対照組(30名)より明らかに好転したことが判る。
すなわち、実施例1使用の場合の急性咽頭炎の有効率90.2%に対して、比較例1使用の有効率は40%であり、実施例1使用の場合の慢性咽頭炎の有効率92.7%に対して、比較例1使用の有効率は28.6%であり、これらの合計でも実施例1使用の場合の有効率94.1%に対して、比較例1使用の有効率は36.6%であり、この二組の比較した結果、顕著な差があった(P<0.01)。実施例1のセンダン葉のど飴の治療効果は圧倒的に優勢である。服用中、実施例1及び比較例1の実施品の二組共に副作用は見られなかった。
【0020】
(3)結論
前記実験に使われている実施例1(センダン葉のど飴)は、センダン葉エキス末、霊芝エキス末、霊芝黒焼末(霊芝炭)など抽出物を混合し、其々の消炎、鎮痛、収斂、殺菌、免疫改善、咳止め、解熱などの作用を有し、急、慢性咽頭炎患者に3日に連続投与したところ、顕著な治療効果が現われ、総有効率は94.1%である。
前記実験結果から、実施例1(センダン葉のど飴)は一般的に3〜5日に使用することによって、自覚症状の改善、消炎鎮痛、咳止めなどの作用が見出されることを確認した。実施例1ののど飴は、消炎鎮痛効果が速く、副作用も無く、手軽く使えるなどの特徴で、急、慢性咽頭炎の口内錠である。また、実験結果から急、慢性扁桃腺炎、口内炎などに効果が伺える。
【0021】
[インフルエンザウィルス不活性化試験]
本実施例のインフルエンザ予防・治療に対する効果を調べるために、実施例1のインフルエンザウィルス不活性試験を財団法人日本食品分析センターに依頼して以下の要領で行った(財団法人日本食品分析センター第209040684-001号)。
【0022】
(1)検体:実施例1ののど飴を、精製水に溶かし、液状にしたもの。
(2)試験概要:
検体(実施例1の液状物)にインフルエンザウィルスのウィルス浮遊液を添加、混合し、作用液とした。室温で作用させ、30分及び60分後に作用液のウィルス感染価を測定した。
(3)試験方法:
3-1.試験ウィルス:インフルエンザウィルスA型(H1N1)
3-2.使用細胞:MDCK(NBL-2)細胞 ATCC-34株(大日本製薬株式会社)
3-3.使用培地
(a)細胞増殖培地:イーグルMEM培地「ニッスイ」(日本製薬株式会社)に牛胎児仔血清を10%を加えたものを使用した。
(b)細胞維持培地:以下の培地を使用した。
イーグルMEM培地「ニッスイ」・・・1,000 ml
10%NaHCO3 ・・・ 14 ml
L−グルタミン(30 g/l) ・・・ 9.8 ml
100×MEMビタミン液 ・・・ 30 ml
10%アルブミン ・・・ 20 ml
0.25% トリプシン ・・・ 20 ml
【0023】
3-4.ウィルス浮遊液の調製
(a)細胞の培養:細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用フラスコ内に単層培養した。
(b)ウィルスの接種:単層培養後にフラスコ内から細胞増殖培地を除き、試験ウィルスを接種し、次に、細胞維持培地を加えて37℃±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度:5%)内で1〜5日間培養した。
(c)ウィルス浮遊液の調製:培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変成効果)が起こっていることを確認した。次に、培養液を遠心分離(3,000 r/min,10分間)し、得られた上澄み液をウィルス浮遊液とした。
3-5.試験操作:検体1 mlに、ウィルス浮遊液0.1 mlを添加・混合して作用液とし、室温で作用させ、30分及び60分後に細胞維持培地を用いて1,000倍に希釈した。また、精製水を対照として同様に試験し、開始時についても測定を行った。
3-6.ウィルス感染価の測定:細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1 mlずつ加えた。次に、作用液の希釈液0.1 mlを4穴ずつに接種し、37℃±1℃の炭酸ガスインキュー(CO2濃度:5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞に形態変化(細胞変成効果)の有無を観察し、Reed-Muench法により50%細胞培養感染量(TCID50)を算出して作用液1ml当たりのウィルス感染価に換算した。
【0024】
(4)試験結果:
前記の試験方法により行った試験結果を[表3]に示す。なお、細胞維持培地で作用液を1,000倍に希釈することにより、検体の影響を受けずにウィルス感染価が測定できることが予備試験により確認した。
【0025】
【表3】

【0026】
(5)結論
[表3]から明らかなように、開始時に実施例1の検体と精製水の対照との感染量のTCID50の対数値は7.3であったが、
すなわち、logTCID50/ml7.3は、試験開始時にはウィルス数は、
107.3=19952623.1 である。
これが、実施例1での30分後にはTCID50の対数値は5.5であり、ウィルス数は、105.5=316227.766 であり、
不活性化率は、105.5 ÷107.3=0.0158
100−0.0158≒98.42%であり、激減している。
また、60分後には、TCID50の対数値は4.3であり、
ウィルス数は、104.3=19952.6231 であり、
不活性化率は、104.3÷107.3=0.001
100−0.001≒99.9%であり、激減している。
したがって、実施例1ののど飴のインフルエンザウィルス(H1N1)の不活性率は非常に高いことが判る。これに対して、対照の精製水のTCID50の対数値の7.3に変化がなく、試験開始時にはウィルス数である 107.3=19952623.1 のままである。
以上の試験結果から、本発明の実施例1ののど飴は、インフルエンザ予防・治療用に効果があるものと判断される。
【0027】
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の実施例ののど飴に限定されるものでないことは勿論であり、うがい液や、歯磨き、抗ウィルスオーデコロンスプレーイとしてをティッシュやガーゼに吹きかけマスクに挿入するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の実施例ののど飴ではインフルエンザウィルスが激減することから、石鹸や衣服等に吹きかけるスプレーにも使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センダン葉エキス末、霊芝エキス末、霊芝黒焼粉末を有効成分として含有することを特徴とする咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物。
【請求項2】
基材として水飴、黒糖、グラニュー糖を含有することを特徴とする請求項1に記載の咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物。
【請求項3】
香料として、シナモン、羅漢果、テアニン、甘草、桔梗から選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の咽頭炎用及びインフルエンザ予防・治療用の経口投与組成物。

【公開番号】特開2011−1321(P2011−1321A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147034(P2009−147034)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(390011062)株式会社和漢生薬研究所 (2)
【Fターム(参考)】