説明

品質推定装置、品質推定方法およびプログラム

【課題】フローの品質情報を推定する。
【解決手段】通信ネットワーク50内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を受信するNWインタフェース部105と、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序処理部115と、を備えることを特徴とするゲートウエイ装置100が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク上で通信されるフローからフローの品質を示す品質情報を推定する品質推定装置、品質推定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワーク上で、あるノードから別のノードへと送信されるデータを、トラフィックという。ノードは、例えばサーバやクライアントとして機能するネットワーク上の機器や、P2Pの通信を可能とするネットワーク上の機器でありうる。トラフィックの管理には、例えば、どのようなデータが、どのノードからどのノードへ、どれだけ送信されたかを把握することが含まれる。ネットワーク全体のパフォーマンスを維持するためには、このトラフィックを管理することが重要である。
【0003】
トラフィックを管理するために、従来から通信状態の品質を計測する方法が提案されている(例えば、非特許文献1)。非特許文献1では、ネットワーク内のメディアゲートウエイに設置された装置であって、rtp(real time protocol:RFC3550 http://www.ietf.org/rfc/rfc3500.txt)に定義されるプロトコルのみを対象とし、ユーザ端末間で品質値のレポートのために使われていたrtcp(rtp control protocol)をゲートウエイで生成して送受信する装置が開示されている。rtcpはrtpと同じRFC(Request For Comment)内に定義されており、前記装置は、このrtcpを用いてrtcpに対応していないユーザ端末の代わりに品質値をレポートしたり、メディアゲートウエイ間で品質値を計測したりすることを可能とする。これにより、品質劣化時の障害位置推定に有用な技術を任意のユーザに提供することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】RTCPHR-High Resolution VoIP Metrics Report Blocks draft-ietf-avt-rtcphr-03.txt(http://tools.ietf.org/id/draft-ietf-avt-rtcphr-03.txt)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成の装置は、NGN(Next Generation Network)のようにrtpを用いた音声通信や動画像通信が多いネットワークにおいては、網管理に必要な品質情報が得られやすいが、依然データ通信が主流であるインターネットやクラウドネットワークのような仮想ネットワークにおいてはネットワーク品質の監視のために十分ではないという課題があった。特に、従来、データ通信が主体のIPネットワークにおいてはベストエフォートなプロトコルが多く使われており、品質情報を取得するための共通の仕組みがないため、フローの品質情報とフローの品質情報を用いたネットワーク品質の管理ができないという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ネットワークで使われるいずれのプロトコルにおいても、フローの品質情報を推定可能な、品質推定装置、品質推定方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を受信する受信部と、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序処理部と、を備えることを特徴とする品質推定装置が提供される。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信する受信部と、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序予測処理部と、を備えることを特徴とする品質推定装置が提供される。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信する受信部と、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序処理部と、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序予測処理部と、前記通信プロトコルに関する情報に基づき、前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示する順序判定部と、を備えることを特徴とする品質推定装置が提供される。
【0010】
前記順序判定部は、前記通信プロトコルに関する情報に基づき前記フロー中のパケットの順序が把握できるかを判定し、該判定結果に応じて前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示してもよい。
【0011】
前記順序判定部は、前記通信プロトコルに関する情報に基づき予め定められた振り分け条件に応じて、前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示してもよい。
【0012】
前記推定されるフローの品質情報には、受信パケット数、受信バイト数、パケット長に関する情報、パケットロス数、パケットロス率、ジッタに関する情報の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
【0013】
前記通信ネットワーク内の1又は2以上のリンクを経由するフローを選択するフロー選択部を更に備えてもよい。
【0014】
前記フロー選択部は、他のシステムの監視情報、前記推定された品質情報、又は取得可能なトポロジー情報の少なくともいずれかに基づき前記フローを選択してもよい。
【0015】
前記品質推定装置は、前記通信ネットワークに接続された中継器又は該中継器に接続された監視機器であってもよい。
【0016】
前記推定された品質情報の変化に応じて、前記通信ネットワークの品質状態を他の機器に通知する品質情報管理部を更に備えてもよい。
【0017】
前記フロー選択部は、トモグラフィでマッピングした区間に対して、前記推定されたフローの品質情報と、通信ネットワークを利用するフロー数の変動とに基づき、故障の要因を推定してもよい。
【0018】
前記フロー選択部は、前記フロー数が所定の閾値を下回り、かつ、前記推定されたフローの品質情報が劣化したと判定された場合、サイレント故障であると推定してもよい。
【0019】
前記フロー選択部は、前記フロー数が所定の閾値を下回り、かつ、前記推定されたフローの品質情報が劣化していないと判定された場合、通常の品質劣化であると推定してもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、順序処理部及び順序予測処理部を備える品質推定装置を用いた品質推定方法であって、通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信し、前記通信プロトコルに関する情報に基づき、前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示し、前記順序処理部に前記推定が指示された場合、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定し、前記順序予測処理部に前記推定が指示された場合、前記フロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する、ことを特徴とする品質推定方法が提供される。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、順序処理部及び順序予測処理部を備える品質推定装置にて実行されるプログラムであって、通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信する処理と、前記通信プロトコルに関する情報に基づき、前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示する処理と、前記順序処理部に前記推定が指示された場合、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する処理と、前記順序予測処理部に前記推定が指示された場合、前記フロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、ネットワークで使われるいずれのプロトコルにおいても、フローの品質情報を推定可能な汎用性の高い品質推定装置、品質推定方法およびプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態に係るネットワーク構造を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るゲートウエイ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係るゲートウエイ装置で観測されるパケット通信のタイミングの一例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係るゲートウエイ装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係るゲートウエイ装置の動作の具体例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係るゲートウエイ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態に係るゲートウエイ装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係るゲートウエイ装置の動作時に使われるトポロジーの一例を示した図である。
【図9】第2実施形態に係るゲートウエイ装置の動作の具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
(はじめに)
近年のインターネットの利用形態として、アプリケーションレベルでルーティングすることにより、既存のインターネットとは異なるネットワークを構築する仮想ネットワーク技術や、仮想マシンを用いてアプリケーション機能を分散させるクラウドネットワーク技術といった仮想化技術を用いた利用形態が普及しつつある。
【0026】
図1は、仮想ネットワーク・クラウドネットワーク10を物理ネットワーク20上に構築した通信ネットワーク50の一例である。仮想化技術を用いた通信ネットワークでは、既存のインターネットに不足している機能を仮想化技術によってカバーするという利点がある。よって、通信ネットワーク50に接続された通信機器30、40は、前記仮想化技術を用いてインターネットに依存せず適切な環境を選んで利用することができる。これにより、インターネット側に障害や故障が発生しても、仮想ネットワーク側では適切にその故障に対処できるため、障害や故障が検出しにくくなる恐れがある。このような状態をサイレント故障といい、実際には故障が発生しているにもかかわらず、ネットワーク管理者には通知されず、発生が検出されていない状態を示す。
【0027】
たとえば、音声や動画像の通信では、rtp/rtcpを用いたネットワークの品質監視が可能である。一方、仮想ネットワークやクラウドネットワークのようなデータ通信が主となるネットワークが複数存在する場合において、それぞれのネットワークに接続されたゲートウエイ装置を用いて、観測されるデータ通信から品質情報を推定することはできなかった。データ通信が主体のIPネットワークにおいてはベストエフォートなプロトコルが多く使われており、品質情報を取得するための共通の仕組みがないためである。
【0028】
そこで、以下では、音声通信や動画像通信のトラフィックだけでなくそれ以外の通信のトラフィックをも用いてフローの品質情報を推定可能な、汎用性の高い品質推定装置について、第1実施形態、第2実施形態の順に説明する。
【0029】
第1及び第2実施形態では、品質推定装置として、図3に示したように、通信ネットワーク50内の例えば通信機器30と通信機器40とを接続するリンク60上のゲートウエイ装置100を例に挙げて説明する。
【0030】
第1及び第2実施形態に係るゲートウエイ装置100は、トラフィックに含まれるフローを単位として品質情報を推定する。通信ネットワーク50上のトラフィックのうちの少なくとも一部がリンク60を経由する。例えば、リンク60は、比較的多くのトラフィックが経由する、ネットワーク内の主要なリンクであってもよい。
【0031】
第1及び第2実施形態に係るゲートウエイ装置100は、通信ネットワーク50内のリンク60を経由するフローについて、その品質情報を推定する。品質情報を推定するために必要なフローは、通信プロトコル、送信元および送信先のアドレスやポート番号などの特徴が一致する又は共通するパケットの集合であって、少なくとも複数のパケットが含まれていればよい。例えば、図3では、通信機器30をパケットの送信元とし、通信機器40をパケットの送信先とした場合、ゲートウエイ装置100は、送信元である通信機器30のアドレスおよびポート番号、送信先である通信機器40のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位でフローの品質情報を推定する。図3では、フロー単位は、フローFaのみであってもよく、フローFbのみであってもよく、フローFa及びフローFbの両方であってもよく、上記条件を満たせばこれらの前のフローやこれらに続くフローを含んでもよい。
【0032】
(第1実施形態:ゲートウエイ装置の機能構成)
まず、図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るゲートウエイ装置100についてその機能構成を説明する。ゲートウエイ装置100は、NW(Net Work)インタフェース部105、順序判定部110、順序処理部115、順序予測処理部120及び品質情報管理部125を有している。
【0033】
NWインタフェース部105は、通信ネットワーク50とのインタフェースとして機能する。NWインタフェース部105は、既存のIPネットワークだけでなく、仮想ネットワークやクラウドネットワークにも接続されている。NWインタフェース部105は、リンク60上を流れる入力パケットを受け取って無効なパケットを除き、有効なパケットを順序判定部110に送る。NWインタフェース部105は、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を受信する。また、NWインタフェース部105は、後述する品質情報管理部125により管理された品質情報を通信ネットワーク50に送信する。NWインタフェース部105は、通信ネットワーク50内のリンク60を経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信する受信部に相当する機能を有する。
【0034】
順序判定部110は、通信プロトコルに関する情報に基づき、次に説明する順序処理部115又は順序予測処理部120のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示する。具体的には、順序判定部110は、NWインタフェース部105からパケットを受け取り、TCP(Transmission Control Protocol)やrtpなどのようにパケットの順序番号に関する情報(パケットの順序情報)が得られ、パケットロスの検出が容易な通信プロトコルを用いていると判定した場合、順序処理部115にそのパケットを送る。また、順序判定部110は、IP、UDP(User Datagram Protocol)、HTTP(HyperText Transfer Protocol)などのようにパケットの順序情報を持たず、パケットロスの検出が容易でない通信プロトコルを用いていると判定した場合は、順序予測処理部120にそのパケットを送る。双方が組み合わさった構造の場合、順序判定部110は、予めルール化した振り分け条件に基づきパケットを振り分けることが好ましい。振り分け条件の一例としては、例えばIP/TCP/HTTPのような通信プロトコルの場合、パケットの順序情報を持つTCPの通信プロトコルを用いているとルール化して、順序処理部115にパケットを送ってもよいし、パケットの順序情報を持っていないHTTPの通信プロトコルを用いているとルール化して、順序予測処理部120にパケットを送ってもよい。同様に、IP/UDP/rtpのような通信プロトコルであれば、パケットの順序情報を持つrtpの通信プロトコルを用いているとルール化して順序処理部115にパケットを送ってもよいし、パケットの順序情報を持っていないUDPの通信プロトコルを用いているとルール化して順序予測処理部120にパケットを送ってもよい。振り分け条件は、監視したい対象によって自由に設定できる。
【0035】
順序判定部110にて、順序処理部115と順序予測処理部120とのパケットの振り分けの判定に用いた通信プロトコルは、キーのプロトコルとしてフロー情報に含まれ、フロー情報は、順序処理部115又は順序予測処理部120を経由して品質情報管理部125に送られる。
【0036】
順序処理部115は、送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコル、キーのプロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、フローの品質情報を推定する。具体的には、順序処理部115は、順序がわかるパケットとして順序判定部110から受け取ったパケットをフロー毎に管理し、再送パケットや順序入れ替えパケットに関してパケット生成順序を推定してパケット到着順序を構成しなおして、単純に観測可能なパケットロス以外にも再送パケットであればパケットロスをカウントする。これにより、順序処理部115は、受信パケット数、受信バイト数、パケット長に関する情報(例えば、パケット長の平均、分散、最大値、最小値)、パケットロス数、パケットロス率を計算する。また、順序処理部115は、例えば数ms以内に受信するまとまったパケットをフロー単位として、それらのパケットとそれらのパケットの到着間隔からジッタに関する情報(例えば、ジッタの平均、分散、最大値、最小値)等を推定する。ここで、ジッタはパケット揺らぎの値である。順序処理部115は、TCPのように再送があるものに関しても、受け取ったパケットを順番に整理してこれらの値を計算する。順序処理部115は、上記計算した値を品質情報として品質情報管理部125に送る。
【0037】
順序予測処理部120は、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコル、キーのプロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、フローの品質情報を推定する。具体的には、順序予測処理部120は、順序がわからないパケットとして順序判定部110から送られたパケットをフロー毎に管理し、受信パケット数、受信バイト数、パケット長に関する情報(例えば、パケット長の平均、分散、最大値、最小値)、パケットロス数、パケットロス率、ジッタに関する情報(例えば、ジッタの平均、分散、最大値、最小値)などを計算する。この計算の際、順序予測処理部120は、パケットの順序がわからないため、数ms以内に受信するまとまったパケットをフロー単位として、それらのパケットの到着時間をもとにジッタを推定する。さらに、順序予測処理部120は、数ms以内に受信するまとまったパケットの集合のパケット数とパケットの集合の到着間隔から、パケット集合のパケット数と到着時間を予測し、予測時間までにパケットを受信しなかった場合やパケット数が少なかった場合にパケットロスとしてカウントすることにより、パケットロスを観測してもよい。順序予測処理部120は、上記計算した値を品質情報として品質情報管理部125に送る。
【0038】
なお、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコル、キーのプロトコルが一致するフロー単位とは、2つの機器が同じプロトコル及び同じポート番号を使ってパケットを送受信している場合のパケット群をいう。一方、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコル、キーのプロトコルが共通するフロー単位とは、送信元又は送信先のポート番号が同じポート番号だけでなく、次のポート番号を含む連続したポート番号であっても同じフローとしてもよい。
【0039】
品質情報管理部125は、順序処理部115又は順序予測処理部120から受け取ったフロー情報と、フローの品質情報を収集して管理する。前述したように、フロー情報には、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコル、及びキーとなるプロトコルの情報が含まれる。なお、通信プロトコルとキーとなるプロトコルが同じ場合には、いずれかを省略することができる。
【0040】
また、フローの品質情報には、受信パケット数、受信バイト数、パケット長に関する情報(例えば、パケット長の平均、分散、最大値、最小値)、パケットロス数、パケットロス率、ジッタに関する情報(例えば、ジッタの平均、分散、最大値、最小値)の情報が含まれる。しかしながら、フローの品質情報にはこれらの品質情報のすべてが含まれる必要はなく、これらの品質情報の少なくともいずれかが含まれればよい。
【0041】
また、品質情報管理部125は、フローの品質情報を管理し、必要な品質情報をNWインタフェース部105に送る。NWインタフェース部105は、ゲートウエイ装置100に登録されているOPS(Open Profiling Standard)や連携するゲートウエイ装置に対して、対応する形式(例えば、rtcpやipfix(IP Flow Information eXchange)など)で品質情報を送信する。
【0042】
このようにして、品質情報管理部125は、推定された品質情報の値や品質情報の変化値に応じて、通信ネットワークの品質状態を他の機器に通知することができる。例えば、品質情報管理部125は、ホームゲートウエイや品質管理サーバに品質情報を通知してもよい。これにより、ホームゲートウエイや品質管理サーバは、家庭内機器や品質管理対象機器に接続されたリンクを流れるフローの品質レベルを知ることができる。また、品質情報管理部125は、サービス提供者側の機器に品質情報を通知してもよい。これにより、サービス提供者は、対象ユーザに提供されるサービスの品質が保たれているかを知ることができる。そして、サービス提供者は、品質情報から高いサービスが提供できていることを知ることができれば、品質情報を提示して品質を証明したり、新しいユーザの獲得に向けて広告に用いたりすることができる。また、品質情報の変化により品質レベルが悪化したと判断される場合には、特定のリンクへの攻撃を推定できるため、これに迅速に対応することが可能になる。
【0043】
なお、NWインタフェース部105、順序判定部110、順序処理部115、順序予測処理部120及び品質情報管理部125の機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が図示しない記憶部に格納されたプログラムに従って動作することによって実現されうる。このプログラムは、記憶媒体に格納して提供され、図示しないドライバを介して記憶部に読み込まれるものであってもよく、また、図示しないネットワークからダウンロードされて記憶部に格納されるものであってもよい。また、上記各部の機能を実現するために、CPUに代えてDSP(Digital Signal Processor)が用いられてもよい。記憶部は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどを用いるRAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)として実現されうる。また、ゲートウエイ装置100の各種の機能は、ソフトウエアを用いて実現されてもよく、ハードウエアを用いて実現されてもよく、ソフトウエアとハードウエアの組み合わせにより実現されてもよい。
【0044】
(第1実施形態:ゲートウエイ装置の動作)
次に、第1実施形態に係るゲートウエイ装置100の動作について説明する。図4は、第1実施形態に係るゲートウエイ装置100の動作を示すフローチャートである。
【0045】
まず、NWインタフェース部105は、ネットワークからパケットを受信する(ステップS405)。NWインタフェース部105は、既存のIPネットワークだけでなく、仮想ネットワークやクラウドネットワーク等の外部のネットワークにも接続されている。NWインタフェース部105は、ルーティング処理やゲートウエイ装置としての変換処理等によりパケットを送受信する。NWインタフェース部105は、入力パケットから品質情報を解析させるために、無効なパケットを除いて有効なパケットを順序判定部110に送る。
【0046】
次に、順序判定部110は、NWインタフェース部105から受け取ったパケットを解析し、既存のプロトコル構造を解析する(ステップS410)。順序判定部110は、プロトコルがパケットの順序情報を有するかを判定する(ステップS415)。順序情報を有すると判定された場合、順序判定部110は、順序処理部115にパケットを送る(ステップS420)。一方、順序情報を有さないと判定された場合、順序判定部110は、順序予測処理部120にパケットを送る(ステップS425)。
【0047】
ステップS415の判定処理では、解析したプロトコル構造のうち、ルール化された振り分け条件として予め登録されているプロトコルが存在すれば、そのプロトコルに対応して順序処理部115又は順序予測処理部120のいずれかにパケットを送るように判定してもよい。例えば、複数の通信プロトコルのうち、VPN(Virtual Private Network)を構成しているHTTPS(http over secure socket layer)の通信の品質を把握したい場合には、順序情報を持つTCPではなくHTTPSをキーとなるプロトコルと判定して、順序予測処理部120にパケットを送ってもよい。また、例えば、rtpを含む複数の通信プロトコルであれば、rtpの通信品質をもとに品質を把握したい場合には、順序情報を持たないUDPではなくrtpをキーとなるプロトコルと判定して、順序処理部115にパケットを送ってもよい。
【0048】
このように、順序判定部110は、通信プロトコルに関する情報に基づきフロー中のパケットの順序が把握できるかを判定し、把握できる場合には順序処理部115、把握できない場合には順序予測処理部120にパケットを送り、各部にフローの品質情報を推定するように指示してもよい。また、順序判定部110は、通信プロトコルに関する予め定められた振り分け条件に基づき、順序処理部115又は順序予測処理部120のいずれか一方にパケットを送り、各部にフローの品質情報を推定するように指示してもよい。
【0049】
ステップS420にて順序判定部110からパケットを受け取った順序処理部115は、フローの品質情報を推定する(ステップS430)。具体的には、順序処理部115は、5タプル(5-tuples:送信元のIPアドレスおよびポート番号、送信先のIPアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコル)とキーとして使用したプロトコル(前例でいうと、HTTPSやrtp)毎にフローとして管理し、再送パケットや順序入れ替えパケットに関してパケット生成順序を推定してパケット到着順序を構成しなおして、単純に観測可能なパケットロス以外にも再送パケットであればパケットロスとカウントする。これらの処理の下、受信パケット数、受信バイト数、パケット長に関する情報(例えば、パケット長の平均、分散、最大値、最小値)、パケットロス数、パケットロス率を計算する。また、順序処理部115は、例えば数ms以内に受信するまとまったパケットをフロー単位として、それらのパケットとそれらのパケットの到着間隔からジッタに関する情報(例えば、ジッタの平均、分散、最大値、最小値)等を推定する。計算した結果は、品質情報管理部125に送られる。
【0050】
ステップS425にて順序判定部110からパケットを受け取った順序予測処理部120は、フローの品質情報を推定する(ステップS435)。具体的には、順序予測処理部120は、順序処理部115の場合と同様にして、5タプル(5-tuples:送信元のIPアドレスおよびポート番号、送信先のIPアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコル)とキーとして使用したプロトコル(前例でいうと、HTTPSやrtp)毎にフローとして管理する。しかし、この場合、順序予測処理部120は、パケットの順序情報を有しないため、受信したタイミングを元にパケット到着間隔を計測し、数ms以内に受信するまとまったパケットとそれらのパケットの到着間隔に基づき、ジッタ(パケット揺らぎの値)を推定する。さらに、順序予測処理部120は、数ms以内に受信するまとまったパケットの集合のパケット数とパケットの集合の到着間隔から、パケット集合のパケット数と到着時間を予測し、予測時間までにパケットを受信しなかった場合やパケット数が少なかった場合にパケットロスとしてカウントすることにより、パケットロスを観測してもよい。計算した結果は、品質情報管理部125に送られる。
【0051】
品質情報管理部125は、順序処理部115又は順序予測処理部120により計算されたフローの品質情報をフロー情報とともに収集して管理する(ステップS440)。前述したように、フロー情報には、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコル、及びキーとなる通信プロトコルの情報が含まれる。また、フローの品質情報には、受信パケット数、受信バイト数、パケット長に関する情報(例えば、パケット長の平均、分散、最大値、最小値)、パケットロス数、パケットロス率、ジッタに関する情報(例えば、ジッタの平均、分散、最大値、最小値)等、順序処理部115又は順序予測処理部120で計算された値が含まれる。
【0052】
品質情報管理部125は、フローの品質情報をNWインタフェース部105に送る。NWインタフェース部105は、ゲートウエイ装置100に登録されているOPS(Open Profiling
Standard)や連携するゲートウエイ装置に対して、対応する形式(例えば、rtcpやipfix(IP Flow Information eXchange)など)でフローの品質情報を送信する(ステップS445)。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態に係るゲートウエイ装置100によれば、音声通信や動画像通信のトラフィックだけでなく、それ以外の通信(例えばデータ通信)のトラフィックにおいても、フローの品質情報を推定することができ、既存のインターネットにおいて、どのネットワークセグメントにおいて品質が劣化しているかの要因を収集し、必要な機器にその品質情報を提供することができる。また、フローの品質情報を取得する解析対象をプロトコル等により変更することにより、ゲートウエイ装置100が仮想ネットワークに属している場合には、仮想ネットワーク内においても、仮想ネットワーク内が要因となって通信の品質が劣化しているのか、又は物理ネットワークが要因となって通信の品質が劣化しているのかを推定することができる。
【0054】
特に、従来、データ通信が主体のIPネットワークにおいてはベストエフォートなプロトコルが多く使われており、品質情報を取得するための共通の仕組みがないため、フローの品質情報とフローの品質情報を用いたネットワーク品質の管理ができないという課題があった。
【0055】
これに対して、上記実施形態に係るゲートウエイ装置100によれば、順序判定部110において、複数レイヤからなるパケットのどのプロトコルをキーとして品質情報を監視するかを振り分ける。そして、順序処理部115は、パケットの順序処理と平行して、パケットロスのカウントや到着間隔をもとにしたジッタ等の品質情報を計算する。さらに、順序予測処理部120は、パケットが到着した順に到着間隔を計測してジッタを計測し、パケット到着時間を予測して予測時間にパケットが到着しなければ、パケットロスとする等してフローの品質情報を計算する。
【0056】
これにより、ベストエフォートとしてデータ通信をするネットワークにおいても、フローの品質情報を知ることができる。このようにして、rtp以外のプロトコルにおけるフローの品質情報をゲートウエイ装置100により計算することにより、NGNにおけるrtpを用いた通信の際に品質情報として得られるrtcpと同様な品質監視が可能となる。この結果、ネットワークで使われるいずれのプロトコルにおいても、フローの品質情報を推定可能な、汎用性の高いゲートウエイ装置100を構築できる。
【0057】
(品質情報の抽出の具体例)
本実施形態に係るゲートウエイ装置100では、パケットの順序情報がないプロトコルの通信のフローにおいても、つまり、非リアルタイム系のフロー(音声通信及び動画像通信に用いられるrtp以外のフロー)においても以下の方法を用いて品質情報を抽出することができる。
【0058】
従来、rtcpのようなプロトコルにおける品質情報は、サーバやクライアントの機器で相互に通信をした結果を用いていた。一方、パケットの順序情報がないプロトコルの通信のフローでは、パケット送受信に関する順序や送信レート等の情報が利用できない。そこで、本実施形態に係るゲートウエイ装置100では、ゲートウエイ装置100を通過する際に利用可能な情報のみを用いて品質情報を推定する必要がある。例えば、図3には、一般的な通信機器同士のデータ送受信のシーケンス図が示されている。図3の上図に示したように、通信機器30が一度に送信したいデータを持っているとき、通信機器30は、複数のIPパケットに分割して送信する。そのときのIPパケットの送信間隔は、図3の下図に示したように、一定間隔毎にいくつかのIPパケットを送出する場合が多い。ゲートウエイ装置100で観測されるパケット受信タイミングの例として、図3では、同時に送信されたIPパケット群は、α毎に観測される。また、β時間経過後に次のデータ集団であるIPパケット群が観測される。到着間隔αは、到着間隔βに比べて十分に小さい。ここで、βより十分に小さい間隔で観測されるαを順にα1、α2、・・・、αiとすると、パケット到着間隔の平均値αaveは式(1)で計算される。
【数1】

【0059】
同様にβ時間後の到着時間αの平均値も計算する。この到着間隔αaveの値をもとに、以下の式(2)ように推定ジッタ値J(i)を推定する。
【数2】

【0060】
次に、パケットロスの推定について説明する。安定通信時は定期的にデータの送受信が発生すると仮定する。このとき、定期的なパケット転送が発生するのでパケット到着間隔βは、一定の範囲内の値で収まる。よって、βの平均値を予測値と設定して予測時間を越えて到着しなければ推定されたパケットロスとする。βは以下の式(3)で計算される。
【数3】

【0061】
このβaveを予測値として、図5のフローチャートを参照しながら、順序処理部115又は順序予測処理部120にて実行されるパケットロスの推定処理について説明する。ここでは、順序判定部110から順序処理部115にパケットが振り分けられたものとする。よって、以下の処理は、順序処理部115によって実行される。
【0062】
まず、順序処理部115は、パケット群の間の到着間隔βを測定する(ステップS505)。ここでは、図3の下図のように、到着間隔βaveの周期でデータが送信されていることが予測可能である。次に、順序処理部115は、観測したβがβaveより十分に大きいかを判定する。例えば、βがβaveの1.5倍や2倍の値であればデータが欠落したと考え、閾値を1.5や2としてもよい。このようにして、順序処理部115は、β/βaveが閾値より大きいかを判定する(ステップS510)。β/βaveが閾値より大きいと判定された場合、順序処理部115は、パケットロスが発生したと判定する(ステップS515)。一方、β/βaveが閾値以下と判定された場合、順序処理部115は、パケットロスではなく、通常の揺らぎの範囲であると判定する(ステップS520)。
【0063】
このようにして、本実施形態に係るゲートウエイ装置100によれば、パケットの到着順序(またはその予測)と数ms以内に受け取るまとまったパケットとそれらのパケット到着時間に基づき、ジッタを推定する。さらに、数ms以内に受信するまとまったパケットの集合のパケット数とパケットの集合の到着間隔から、パケット集合のパケット数と到着時間を予測し、予測時間までにパケットを受け取れなかった場合やパケット数が少なかった場合に、パケットロスとしてカウントすることで、パケットロスを観測する。こうして得られたジッタの推定、パケットロスの推定、パケット数やパケット量等のフローの品質情報により、いずれのネットワークにおいても、rtcpと同様な品質の監視が可能となる。
【0064】
(第2実施形態:ゲートウエイ装置の機能構成)
次に、本発明の第2実施形態に係るゲートウエイ装置100について説明する。図6に示したように、第2実施形態に係るゲートウエイ装置100は、フロー選択部130が加えられている点で、フロー選択部130がない第1実施形態に係るゲートウエイ装置100と機能構成が異なる。よって、以下では主にフロー選択部130の機能構成について説明し、その他の構成については、ここでは細かい説明を省略する。
【0065】
NWインタフェース部105は、リンク60上を流れる入力パケットを受け取り、そのうち有効なパケットをフロー選択部130に送る。
【0066】
フロー選択部130は、通信ネットワーク内の1又は2以上のリンクを経由するフローを選択する。具体的には、フロー選択部130は、他のシステムの監視情報、前記推定された品質情報、又は取得可能なトポロジー情報の少なくともいずれかに基づきフローを選択する。例えば、フロー選択部130は、他システム(Ingress Routerやトレースバックシステム)等でマークされているフローを選択してもよい。また、フロー選択部130は、NWインタフェース部105から送られたトラフィックの中から安定性の高いフローを優先的に選択してもよい。さらに、フロー選択部130は、既知のトポロジー情報に基づき、満遍なくフロー情報を収集できるようにフローを選択してもよい。また、フロー選択部130は、このような選択方法の組合せを用いてフローを選択してもよい。選択されたフローは順序判定部115に送られる。
【0067】
(第2実施形態:ゲートウエイ装置の動作)
次に、第2実施形態に係るゲートウエイ装置100の動作について説明する。図7は、第2実施形態に係るゲートウエイ装置100の動作を示すフローチャートである。
【0068】
まず、NWインタフェース部105は、ネットワークからパケットを受信する(ステップS405)。NWインタフェース部105は、受信したパケットのうち有効なパケットをフロー選択部130に送る。
【0069】
次に、フロー選択部130は、他のシステムの監視情報、前記推定された品質情報、又は取得可能なトポロジー情報の少なくともいずれかに基づきフローを選択する(ステップS705)。
【0070】
次に、順序判定部110は、フロー選択部130から受け取った、選択されたフローのパケットを解析し、既存のプロトコル構造を解析する(ステップS410)。ステップS410〜ステップS445の処理は第1実施形態に係るステップS415〜ステップS445と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態に係るゲートウエイ装置100によれば、監視が必要な監視対象のフローのみを処理すればよいため、処理するフローが少なくなりスケーラビリティを高くすることができる。また、例えば、NWインタフェース部105から送られたトラフィックの中から安定性の高いフローを優先的に選択することにより、通信の品質情報を得る際に信頼性の高いフローだけを処理すればよいため、得られた品質情報に信頼性が得られ、スケーラビリティをより高くすることができる。また、既知のトポロジー情報をもとに満遍なくフロー情報を収集できるようにフローを選択することにより、ネットワークトモグラフィ等で障害箇所の検知をしやすいような網羅的な品質情報の取得を可能とし、スケーラビリティを高くすることができる。
【0072】
(フロー選択の具体例)
例えば、図8の上図には、単純化したトモグラフィの一例が示されている。L1、L2、L3はそれぞれのリンクを示し、P1はL1+L3の経路、P2はL2+L3の経路を示している。このとき、障害が発生したリンク(L1、L2、L3)によって、障害が検出される経路(P1、P2)が変わってくるため、障害箇所が推定可能である。
【0073】
このトモグラフィを拡張したものが図8の下図の経路変更を考慮したトモグラフィである。図中では、同様に、リンクLa,Lbとそれらを経由する経路Paと、リンクLx,Lyとそれらを経由する経路Pxが示されている。このとき、PaとPxの経路毎の仮想ネットワーク通信の数をカウントする。仮想ネットワーク上では物理ネットワークの状態によって動的に経路を変更することが考えられる。このため、サイレント故障が発生した経路は、動的に利用されないようになっていくと考えられる。前述したように、サイレント故障とは、実際には故障が発生しているにもかかわらず、ネットワーク管理者には通知されず、発生が検出されていない状態をいう。
【0074】
図9に、サイレント故障の要因を推定するためのフローチャートを示す。図9のフローチャートは、フロー選択部130により実行される。まず、ステップS905にて、フロー選択部130は、仮想ネットワークを利用するフロー数に大きな減少があったかを判定する。例えば、仮想ネットワークの利用するフロー数は時間変動があるものであるが、フロー数が閾値を下回った場合、物理ネットワークにおいて障害が発生した可能性がある。
【0075】
よって、仮想ネットワークのフロー数が閾値より下回っていない場合には、フロー選択部130は、通常の経路変更であると判定する(ステップS910)。一方、フロー数が予め定められた閾値より下回った場合には、仮想ネットワークのフロー数に大きな減少があった可能性があるとして、更に、フロー選択部130は、品質情報の劣化が観測されたかを判定する(ステップS915)。
【0076】
品質情報によっては劣化が観測されない場合、フロー選択部130は、通常の品質劣化であると判定する(ステップS920)。一方、観測している仮想ネットワークのフローで品質劣化が観測された場合、フロー選択部130は、サイレント故障の可能性があると判定する(ステップS925)。
【0077】
このようにして、トモグラフィでマッピングした区間に対して、仮想ネットワークのフロー品質情報と、ネットワークを利用するフロー数の変動を観測することにより、サイレント故障の要因を推定することができ、スケーラビリティをより高くすることができる。この結果に基づき、フロー選択部130は、通信ネットワーク内の1又は2以上のリンクを経由するフローを選択することができる。例えば、フロー選択部130は、サイレント故障の要因が推定される経路を考慮してトラフィックの中から安定性の高いフローを優先的に選択することができる。
【0078】
(補足)
上記各実施形態において、各部の動作は互いに関連しており、互いの関連を考慮しながら、一連の動作及び一連の処理として置き換えることができる。これにより、品質推定装置の実施形態を、品質推定方法の実施形態及び品質推定装置が有する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの実施形態とすることができる。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
たとえば、本発明は、IPネットワークや仮想ネットワーク等の通信ネットワークに接続され、通信ネットワークのリンク上を送受信されるさまざまなフローから品質情報を推定する装置に適用可能である。例えば、上記実施形態ではゲートウエイ装置を例に挙げて本発明に係る品質推定装置の構成及び動作を説明したが、本発明に係る品質推定装置はこれに限らず、例えば、通信ネットワークに接続され、トラフィックを中継及び監視できる場所に取り付けられた中継器又はその中継器に接続された監視機器であってもよい。
【0081】
また、本発明は、必ずしも順序判定部110、順序処理部115、順序予測処理部120をすべて備えていなくてもよい。例えば、パケットの順序情報があるフローのみを扱うことが前提の場合には、順序判定部110及び順序予測処理部120は存在しなくてもよく、NWインタフェース部105が取り込んだフロー内のパケットは直接、順序処理部115に送られ、順序処理部115にて品質情報が推定されるようにしてもよい。また、例えば、パケットの順序情報がないフローのみを扱うことが前提の場合には、順序判定部110及び順序処理部115は存在しなくてもよく、NWインタフェース部105が取り込んだフロー内のパケットは直接、順序予測処理部120に送られ、順序予測処理部120にて品質情報が推定されるようにしてもよい。
【0082】
更に、例えば、パケットの順序情報があるフローのみを扱うことが前提の場合には、順序判定部110及び順序予測処理部120は存在しなくてもよく、NWインタフェース部105が取り込んだフロー内のパケットは直接、フロー選択部130に送られ、フロー選択部130にてフローを選択後、順序処理部115に送られ、順序処理部115にて品質情報が推定されるようにしてもよい。また、例えば、パケットの順序情報がないフローのみを扱うことが前提の場合には、順序判定部110及び順序処理部115は存在しなくてもよく、NWインタフェース部105が取り込んだフロー内のパケットは直接、フロー選択部130に送られ、フロー選択部130にてフローを選択後、順序予測処理部120に送られ、順序予測処理部120にて品質情報が推定されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 仮想ネットワーク・クラウドネットワーク
20 物理ネットワーク
30 通信機器
40 通信機器
50 通信ネットワーク
100 ゲートウエイ装置
105 NWインタフェース部
110 順序判定部
115 順序処理部
120 順序予測処理部
125 品質情報管理部
130 フロー選択部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を受信する受信部と、
前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序処理部と、
を備えることを特徴とする品質推定装置。
【請求項2】
通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信する受信部と、
前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序予測処理部と、
を備えることを特徴とする品質推定装置。
【請求項3】
通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信する受信部と、
前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序処理部と、
前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する順序予測処理部と、
前記通信プロトコルに関する情報に基づき、前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示する順序判定部と、
を備えることを特徴とする品質推定装置。
【請求項4】
前記順序判定部は、前記通信プロトコルに関する情報に基づき前記フロー中のパケットの順序が把握できるかを判定し、該判定結果に応じて前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示することを特徴とする請求項3に記載の品質推定装置。
【請求項5】
前記順序判定部は、前記通信プロトコルに関する情報に基づき予め定められた振り分け条件に応じて、前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示することを特徴とする請求項3に記載の品質推定装置。
【請求項6】
前記推定されるフローの品質情報には、受信パケット数、受信バイト数、パケット長に関する情報、パケットロス数、パケットロス率、ジッタに関する情報の少なくともいずれかが含まれることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の品質推定装置。
【請求項7】
前記通信ネットワーク内の1又は2以上のリンクを経由するフローを選択するフロー選択部を更に備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の品質推定装置。
【請求項8】
前記フロー選択部は、他のシステムの監視情報、前記推定された品質情報、又は取得可能なトポロジー情報の少なくともいずれかに基づき前記フローを選択することを特徴とする請求項7に記載の品質推定装置。
【請求項9】
前記品質推定装置は、前記通信ネットワークに接続された中継器又は該中継器に接続された監視機器であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の品質推定装置。
【請求項10】
前記推定された品質情報の変化に応じて、前記通信ネットワークの品質状態を他の機器に通知する品質情報管理部を更に備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の品質推定装置。
【請求項11】
前記フロー選択部は、トモグラフィでマッピングした区間に対して、前記推定されたフローの品質情報と、通信ネットワークを利用するフロー数の変動とに基づき、故障の要因を推定することを特徴とする請求項7又は8に記載の品質推定装置。
【請求項12】
前記フロー選択部は、前記フロー数が所定の閾値を下回り、かつ、前記推定されたフローの品質情報が劣化したと判定された場合、サイレント故障であると推定することを特徴とする請求項11に記載の品質推定装置。
【請求項13】
前記フロー選択部は、前記フロー数が所定の閾値を下回り、かつ、前記推定されたフローの品質情報が劣化していないと判定された場合、通常の品質劣化であると推定することを特徴とする請求項11又は12に記載の品質推定装置。
【請求項14】
順序処理部及び順序予測処理部を備える品質推定装置を用いた品質推定方法であって、
通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信し、
前記通信プロトコルに関する情報に基づき、前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示し、
前記順序処理部に前記推定が指示された場合、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定し、
前記順序予測処理部に前記推定が指示された場合、前記フロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する、
ことを特徴とする品質推定方法。
【請求項15】
順序処理部及び順序予測処理部を備える品質推定装置にて実行されるプログラムであって、
通信ネットワーク内のリンクを経由するフローについて、送信元のアドレスおよびポート番号、送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルに関する情報を含むフロー情報を前記通信ネットワーク経由で受信する処理と、
前記通信プロトコルに関する情報に基づき、前記順序処理部又は前記順序予測処理部のいずれか一方に前記フローの品質情報の推定を指示する処理と、
前記順序処理部に前記推定が指示された場合、前記送信元のアドレスおよびポート番号、前記送信先のアドレスおよびポート番号、ならびに通信プロトコルが一致又は共通するフロー単位で、該フロー中のパケットの順序情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する処理と、
前記順序予測処理部に前記推定が指示された場合、前記フロー単位で、該フロー中のパケットの到着間隔に関する情報に基づき、前記フローの品質情報を推定する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−175216(P2012−175216A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32893(P2011−32893)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/次世代ネットワーク(NGN)基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】