説明

哺乳動物のサイトカイン;関連する試薬の使用

【課題】哺乳動物サイトカインのアゴニストまたはアンタゴニストを使用して、樹状細胞活性を調節する方法を提供すること。免疫障害を処置する方法を提供すること。
【解決手段】具体的には、本発明は、T細胞の抗原提示細胞(APC)刺激を調節する方法を提供し、この方法は、以下の工程:該APCと、a)TSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストもしくはTSLP/IL−50レセプター(TSLP/IL−50R)(配列番号2、3)のアゴニスト;またはb)TSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニストとを接触させる工程、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、哺乳動物のサイトカインの使用に関する。より詳細には、本発明は、医学的状態(例えば、アレルギーおよび炎症)に影響する哺乳動物のサイトカインおよびそのインヒビターの同定に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
時に、哺乳動物の免疫応答は、一連の複雑な細胞性相互作用(「免疫ネットワーク」といわれる)に基づくことが知られている。近年の研究により、このネットワークの内部の作用への新規な洞察が提供された。実際に、多くの応答が、リンパ球、マクロファージ、顆粒球、および他の細胞のネットワーク様相互作用の周辺で周期的に起こることは明らかなままであるが、ここで、免疫学者は、一般的に、サイトカインとして知られる可溶性タンパク質は、これらの細胞性相互作用を制御する際に重要な役割を果たしているという意見を持っている。従って、細胞調節因子の単離、特性、および機構にかなりの関心が集まっており、これを理解することで、多くの医学的異常(例えば、免疫系障害)の診断および治療におけるかなりの進歩がもたらされる。これらの因子のうちのいくつかは、造血性増殖因子および/または分化因子(例えば、幹細胞因子(SCF)およびIL−7)である。例えば、Mire−SluisおよびThorpe(1998)Cytokines.Academic Press,San Diego,CA;Thomson(編1998)The Cytokine Handbook,第3版.,Academic Press,San Diego,CA;MetcalfおよびNicola(1995)The Hematopoietic Colony Stimulating Factors.Cambridge Univ.Press;ならびにAggarwalおよびGutterman(1991)Human Cytokines.Blackwell Publishing,Malden,MAを参照こと。
【0003】
サイトカインは、多くの方法で細胞活性を媒介する。サイトカインは、多能性造血幹細胞から膨大な数の前駆体(複雑な免疫系を構成する分岐細胞系統を含む)への増殖、成長、および分化を支持する。細胞構成要素間の適切かつ均衡の取れた相互作用は、健常な免疫応答に必要である。異なる細胞系統は、しばしば、サイトカインが他の因子と組み合わせて投与される場合に、異なる様式で応答する。
【0004】
サイトカインは、免疫系の細胞(例えば、抗原提示細胞(APC)およびTリンパ球)間の連絡を媒介する。樹状細胞(DC)は、最も強力な抗原提示細胞である。例えば、Paul(編)(1993)Fundamental Immunology.第3版.,Raven Press,NYを参照のこと。抗原提示は、タンパク質様抗原が取り込まれ、抗原提示細胞(APC)によって処理されて、次いで、認識されて免疫応答を開始する細胞事象をいう。最も活性な抗原提示細胞は、マクロファージ(これは、単球から直接発達する産物である)、樹状細胞、および特定のB細胞として特徴付けられている。DCは、炎症性刺激(例えば、細菌性リポ多糖類(LPS))、およびサイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα))に非常に応答性である。サイトカインまたは刺激(例えば、LPS)は、一連の表現型および成熟として集合的に称される、DCにおける機能的変化を誘導し得る。例えば、BanchereauおよびSchmitt(編)(1995)Dendritic Cells in Fundamental and Clinical Immunology.Plenum Press,NYを参照のこと。
【0005】
樹状細胞は、例えば、以下のように分類され得る:心臓、腎臓、腸、および肺の間質性樹状細胞;皮膚および粘膜におけるランゲルハンス細胞;胸腺髄質および二次的リンパ組織における指状突起(interdigitating)樹状細胞;ならびに血液およびリンパ樹状細胞。これらの構成要素の各々における樹状細胞は、骨髄から明らかに生じるCD45白血球であるが、それらは、成熟状態および微小環境に関連する差異を呈し得る。DCにおける成熟変化としては、例えば、エンドサイトーシスによる抗原取り込みのサイレンシング、T細胞活性化に関連する表面分子のアップレギュレーション、および多くのサイトカイン(TNFαおよびIL−12を含む)の活性産生が挙げられる。TNFαが局所集積すると、DCは、二次的リンパ器官のT細胞領域に移動し、抗原特異的T細胞を活性化する。
【0006】
サイトカインおよび免疫細胞は、特定の生理学的機構または経路(例えば、種々の炎症性障害を導く経路)を媒介する。西洋の国々の人工の約20%は、炎症性障害(例えば、アレルギー性疾患(これには、ぜん息、鼻炎、アトピー性皮膚炎、および食物アレルギーが挙げられる)(例えば、A.B.Kay(2001)N.Engl.J.Med.344:30−37を参照のこと))に罹患している。アレルギー性炎症は、複雑な免疫学的カスケードの結果であり、これにより、T細胞は、制御されないTH−2由来サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5およびIL−13)を産生し、ここで、これらのサイトカインは、気管支過反応、IgE産生、好酸球増加、ならびに粘液生成を誘発する(例えば、BusseおよびLemanske,Jr.(2001)N.Engl.J.Med.344:350−62;Holgate(2000)Br.Med.J.320:231−234);ならびにRenauld(2001)J.Clin.Pathol.54:577−589を参照のこと)。
【0007】
炎症および免疫再構成は、例えば、APCとT細胞との間の相互作用を調節することによって、リンパ球活性または増殖を調節するために、医薬的介入または治療的介入を使用することが望まれる2つの状況である。APC−T細胞相互作用に依存する炎症性状態としては、例えば、乾癬、アレルギー、および気管支過反応性が挙げられる。免疫再構成(免疫系の補充)は、ウイルス感染(例えば、HIV/AIDS)の処置ならびに細胞切除(cytoablation)を受けた患者を処置する際に有用であり、ここで、細胞切除は、例えば、放射線治療または化学療法により実施される。
【0008】
皮膚の炎症性疾患である乾癬は、西洋の国々において4%を越える有病率を有する(Granstein(1996)J.Clin.Inv.98:1695−1696;Christophers(2001)Clin.Exp.Dermatol.26:314−320)。この疾患は、頻繁に再発し、場合によっては、生命を脅かすものであり、そして頻繁にぜん息(すなわち、乾癬ぜん息)に関連する。T細胞およびケラチノサイトは、乾癬の発生および存続に必要である(GreavesおよびWeinstein(1995)New Engl.J.Med.332:581−588;RobertおよびKupper(1999)New Engl.J.Med.341:1817−1828;FearonおよびVeale(2001 Clin.Exp.Dermatol.26:333−337))。樹状細胞および肥満細胞はまた、例えば、乾癬炎症の一因となる(Mrowietzら(2001)Exp.Dermatol.10:238−245;Ackermannら(1999)Br.J.Dermatol.140:624−633)。
【0009】
気管支過反応は、肺炎症性疾患(ぜん息、慢性閉塞性肺疾患(COPD;慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、好酸球増加気管支炎、ならびにウイルス性気管支炎(Riffo−VasquezおよびSpina(2002)Pharmacol.Therapeutics 94:185−211)が挙げられる)の発現である。
【0010】
ぜん息は、増大した気管支応答ならびに気道閉塞および炎症によって特徴付けられる慢性疾患である。この疾患は、例えば、小児急患の15%にのぼる(Crainら(1995)Arch.Pediatr.Adolesc.Med.149:893−901)。APC、T細胞、B細胞、好酸球、肥満細胞、および好塩基球は、ぜん息の機構に寄与する。APCは、T細胞に抗原を提示し、次いで、B細胞を誘発してIgEを産生する。好酸球、好塩基球、および肥満細胞は、IL−4を放出し、次いで、抗原刺激後に、TH2細胞(IL−4、IL−5、IL−10、およびIL−13を分泌する)へのT細胞の分化を促進する。TH2細胞および他の細胞によって分泌されるIL−4およびIL−13は、B細胞の活性化を促進する(Marone(1998)Immunol Today
19:5−9)。B細胞は刺激されて、2つの型のシグナル(IL−4またはIL−13)によってIgEを産生し、そしてT細胞からの直接接触を生成する(BarnesおよびLemanske(2001)New Ensl.J.Med.344:350−362)。放出されたIgEは、肥満細胞を活性化し、次いで、気道の狭窄を引き起こす。好酸球は、気道を直接損傷する主要な塩基性タンパク質を産生する。IL−5は、好酸球の発達、生存、および補充において中心的な役割を果たす(BarnesおよびLemanske(前出))。
【0011】
COPD(これは、リンパ球による気管支の浸潤に関与する)は、北アメリカにおける死因で4番目である(Barnes(2000)New Engl.J.Med.343:269−280)。この疾患は、気道平滑筋の薄化および気道の炎症(すなわち、肺における単球、マクロファージ、CD4T細胞、CD8T細胞、ならびに好中球による浸潤を含む)によって特徴付けられる(Barnes(2000)Chest 117:10S−14S;Jeffery(1998)Thorax 53:129−136)。
【0012】
免疫再構成は、リンパ球増殖の調節が望まれる状態である。免疫再構成は、例えば、骨髄移植によって達成される。T細胞増殖の増強または刺激は、化学療法後の骨髄移植および免疫不全疾患(例えば、AIDS)(Panteleoら(1993)New Engl.J.Med.328:327−335;Kovacsら(1995)New Ensl.J.Med.332:567−575)ならびに治療的T細胞(遺伝的に変更されたT細胞を含む)の使用(TerandoおよびChang(2002)Surg.Oncol.Clin.N.Am.11:621−643;Gottschalkら(2002)Adv.Cancer Res.84:175−201)において望まれる。骨髄移植または幹細胞移植を使用する免疫再構成は、骨髄腫切除(myeloabaltive)療法および免疫抑制療法後に使用される(Paloczi(2000)Immunol.Lett.74:177−181;Ren−HeidenreichおよびLum(2001)Curr.GeneTher.1:253−255)。
【0013】
幹細胞移植のレシピエントは、完全に機能的リンパ球の取得において遅延を経験し、ここで、これらの遅延は、移植から1年を超え得る。非刺激細胞は、発達の間、能力のある胸腺を必要とする。従って、CD4T細胞数は、骨髄移植において正常以下であり得、すなわち、この胸腺は、放射線治療によって損傷している(NovitzkyおよびDavison(2001)Cytotherapv 3:211−220)。従って、リンパ球増殖の刺激は、骨髄移植後のT細胞増殖、ならびに胸腺が損傷している移植物における遅延に起因して望ましい目的である。
【0014】
細胞切除に続く骨髄移植または幹細胞治療は、多くの自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性狼瘡エリテマトーデス、クローン病、および多発性硬化症)の処置(Breedveld(2000)Arthritis Res.2:268−269;McCollら(1999)Ann.Intern.Med.131:507−509;Laar(2000)Arthritis Res.2:270−275)、ならびに、癌(例えば、非ホジキンスリンパ腫および白血病)の処置(Kayら(2002)Hematology(Am.Soc.Hematol.Educ.Program)193−213;Hagemeister(2002)Cancer Chemother.Pharmocol.49 Suppl.1:S13−20)において使用される。従って、細胞切除後のT細胞増殖を刺激する必要性が増加している。
【0015】
対宿主性移植片病(GVHD)は、骨髄移植に伴う問題である。GVHDは、アレルギー性移植物の結果であり、GVHDは、移植片におけるT細胞のエキソビボでの除去によって予防され得る(Andre−Schmutzら(2002)Lancet 360:130−137;Aversaら(1998)New Engl.J.Med.339:1186−1193)。例えば、サイトカインまたは核酸による処置、その後の被験体への導入によるリンパ球のエキソビボでの処置が記載される。例えば、Ernerudhら(2002)Curr.Med.Chem.9:1497−1505;Cavazzana−Calvoら(2002)Semin.Hematol.39:32−40;GunzerおよびGrabbe(2001)Crit.Rev.Immuol.21:133−145;Gokmenら(2001)J.Hematother.Stem Cell
Res.10:53−66を参照のこと。しかし、上記のT細胞のエキソビボでの除去は、T細胞不全を悪化させる。従って、T細胞増殖を刺激して、免疫再構成を促進するための必要性(ここで、T細胞は、移植片より前にエキソビボで除去される)が増加している。
【0016】
現在、造血性増殖因子およびサイトカインを使用して、骨髄移植後にT細胞増殖を刺激することに関心が寄せられている(Symannら(1989)Cancer Treat.Rev.16 Suppl.A:15−19;Lenarsky(1993)Am.J.Pediatr.Hematol.Oncol.15:49−55)。現在の方法に伴う問題は、オリゴクローン性に対するT細胞レパートリーを歪ませることである(Marktelら(2002)Blood,October 3,2002,epub ahead of print)。従って、ポリクローン性を維持する方法によってT細胞増殖を刺激する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、APC/T細胞相互作用に依存性の炎症性状態の処置のための樹状細胞(DC)を調節するための方法、および免疫再構成を実施するための方法を提供する。樹状細胞(プロフェッショナル抗原提示細胞)は、T細胞の活性化および増殖の刺激において役割を果たす。DC(プロフェッショナル抗原提示細胞)は、アレルギー性疾患の病原において重要な役割を果たす。例えば、BanchereauおよびSteinman(1998)Nature 392:245−252;Stumbles(1999)Immunol.Cell Biol.77:428−433;Lambrecht(2001)Clin.Exp.Allergv 31,206−218;Semperら(1995)Adv.Exp.Med.Biol.378:135−138を参照のこと。しかし、DCをプライムして、アレルギー促進TH2サイトカインを産生するT細胞を誘導する初期シグナルは、知られていない(例えば、D.von Bubnoffら(2001)J.Allergy Clin.Immunol.108:329−339)。皮膚のケラチノサイトおよび粘膜上皮細胞は、活性化後に炎症促進性サイトカイン(例えば、IL−1、IL−6、IL−8、GM−CSFおよびTNFα)を産生することが示されたが(S.Nozakiら(1992)Adv.Dermatol.7:83−100;ならびにdiscussion 101;T.S.Kupper(1990)J.Invest.Dermatol.94:146S−150S;P.F.Piguet(1992)Springer Semin.Immunopathol.13:345−354;ならびに1.R.WilliamsおよびT.S.Kupper(1996)Life Sci.58:1485−1507)、これらのサイトカインのどれ1つとして、アレルギー性炎症の誘導の基礎となる機構を説明し得ない(例えば、D.von Bubnoff(前出)を参照のこと)。
【0018】
胸腺間質リンホポエチン(hTSLP/IL−50)(配列番号1)は、マウス胸腺間質細胞株からクローニングされた、新規なIL−7様サイトカインである(例えば、J.E.Simsら,(2000)J Exp.Med.192:671−680;および米国特許出願番号09/963,347(2001年9月24日出願を参照のこと))。ヒトTSLPの成熟コード領域は、アミノ酸29−159である(Recheら(2001)J Immunol.167:336−343)。TLSP/IL−50レセプターは、ヘテロダイマーであり、IL−7R−α鎖(配列番号2)と、一般的γ様レセプター鎖(TSLPレセプター;TSLPR)(配列番号3)とからなる(例えば、Tonozukaら(2001)Cytogenet.Cell Genet.93:23−25;Pandeyら(2000)Nat.Immunol.1:59−64;L.S.Parkら,(2000)J.Exp.Med.192:659−670;およびRecheら(上記)を参照のこと)。マウスTSLP/IL−50(配列番号1)は、マウスの初期B細胞発生およびT細胞発生を支持する(例えば、Levinら(1999)J.Immunol.162:677−683;Rayら(1996)Eur.J.Immunol.26:10−16)。hTSLP/IL−50(配列番号1)は、CD11c DCを活性化するが、B細胞、T細胞、NK細胞、好中球に対しても、マスト細胞に対しても、全く直接的な生物学的効果を有さない(例えば、Reche(上記)を参照のこと)。これは、hTSLP/IL−50レセプターΔ2サブユニットのmRNAと、IL−7R−α鎖のmRNAとが、CD11c DCにおいて共発現するが、他の細胞型では共発現しないことに従う。
【0019】
炎症(特に、アレルギー性炎症)の機構および病因は、完全には理解されておらず、従って、いくつかの治療が、今のところ未知である。本発明は、hTSLP/IL−50(配列番号1)が、免疫細胞の特定の部分集合(特に、樹状細胞)に対するその作用によって、種々の炎症障害を媒介し得る証拠を提供する。
【0020】
(発明の要旨)
本発明は、部分的には、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞(DC))活性(特に、炎症(例えば、乾癬またはアレルギー性炎症)をもたらすT細胞のDC刺激)に対するhTSLP/IL−50(配列番号1)の効果の発見に基づく。
【0021】
本発明は、T細胞の抗原提示細胞(APC)刺激を調節する方法を提供し、この方法は、そのAPCを、TSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストもしくはTSLP/IL−50レセプター(TSLP/IL−50R)(配列番号2、3)のアゴニスト;またはTSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニストと接触させる工程を包含する。そのT細胞が未刺激CD4 T細胞、中心記憶T細胞、もしくはエフェクター記憶T細胞である、上記の方法もまた、提供される;そのAPCが、CD11c樹状細胞(DC)である、上記の方法もまた、提供される;その刺激が、そのT細胞の増殖を刺激する、上記の方法もまた、提供される;その増殖がポリクローン性である、上記方法もまた、提供される;または、そのAPCとそのT細胞との間の相互作用が、自己由来もしくは同種異系である、上記方法もまた、提供される;またはその相互作用が、自己由来であり、かつ中心記憶T細胞表現型を生じる、上記方法もまた、提供される。
【0022】
さらに、そのアゴニストまたはアンタゴニストが、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント;または抗体のペプチド模倣物を含む、上記方法が提供される;あるいは、そのアゴニストが、TSLP/IL−50(配列番号1)またはその抗原性フラグメントである、上記方法が提供される。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、免疫障害に罹患している被検体を処置する方法を包含し、その方法は、有効量のTSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストもしくはTSLP/IL−50レセプター(TSLP/IL−50R)(配列番号2、3)のアゴニスト;またはTSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニストで処置する工程を包含する。また、その免疫障害が炎症状態であり、かつその投与が、有効量のTSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニストを含む、上記方法が包含される;その免疫障害が、乾癬、乾癬性関節炎、もしくは肺炎症応答である、上記方法が包含される;またはその肺炎症疾患が、喘息または慢性閉塞性肺障害(COPD)である、上記方法が包含される。さらに、その免疫障害が免疫欠損であり、その投与が有効量のTSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストを含む、上記方法が提供される;その免疫不全が、免疫抑制を引き起こす細胞除去もしくはウイルス感染の結果である、上記方法が提供される;その投与が、自己由来抗原提示細胞(APC)もしくは同種異系抗原提示細胞(APC)のエキソビボ処置を含む、上記方法が提供される;またはその投与が、有効量のTSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストでのAPCのエキソビボ処置を含む、上記方法が提供される。本発明はまた、そのアゴニストまたはアンタゴニストが、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント;または抗体のペプチド模倣物を含む、上記方法を企図する;あるいは、本発明はまた、そのアゴニストが、TSLP/IL−50(配列番号1)またはその抗原性フラグメントである、上記方法を企図する。
【0024】
IL−4、IL−5、およびIL−13の生成をT細胞により誘導する方法が、さらに企図され、その方法は、APCを、TSLP/IL−50のアゴニストもしくはTSLP/IL−50レセプターのアゴニストと接触させる工程、およびそのT細胞をそのAPCで刺激する工程を包含する。
【0025】
本発明はまた、被検体においてTH2応答を調節する方法を包含し、その方法は、TSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストもしくはTSLP/IL−50レセプター(TSLP/IL−50R)(配列番号2、3)のアゴニスト;またはTSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニストを投与する工程を包含する。
上記に加えて、本発明は、以下の手段を提供する:
(項目1)
T細胞の抗原提示細胞(APC)刺激を調節する方法であって、該方法は、以下の工程:
該APCと、
a)TSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストもしくはTSLP/IL−50レセプター(TSLP/IL−50R)(配列番号2、3)のアゴニスト;または
b)TSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニスト、
とを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記T細胞は、非刺激CD4+T細胞、中心的記憶T細胞、またはエフェクター記憶T細胞である、方法。
(項目3)
項目1に記載の方法,前記APCは、CD11c樹状細胞(DC)である、方法。
(項目4)
項目1に記載の方法であって、前記刺激は、前記T細胞の増殖を刺激する、方法。
(項目5)
項目4に記載の方法であって、前記増殖は、ポリクローン性である、方法。
(項目6)
項目1に記載の方法であって、前記APCと前記T細胞との間の前記相互作用は、自己由来であるかまたは同種異系である、方法。
(項目7)
項目6に記載の方法であって、前記相互作用は、自己由来であり、中心的記憶T細胞表現型を生じる、方法。
(項目8)
項目1に記載の方法であって、前記アゴニストまたはアンタゴニストは、以下:
a)ヒト化抗体;
b)モノクローナル抗体;
c)ポリクローナル抗体;
d)Fabフラグメント;
e)F(ab’)フラグメント;または
f)抗体のペプチド模倣物
を含む、方法。
(項目9)
項目1に記載の方法であって、前記アゴニストは、TSLP/IL−50(配列番号1)またはその抗原性フラグメントを含む、方法。
(項目10)
免疫障害に罹患している被験体を処置する方法であって、該方法は、有効量の、以下の(a)または(b):
a)TSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアゴニスト;または
b)TSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニスト
で処置する工程、あるいは該(a)もしくは(b)を投与する工程、
を包含する、方法。
(項目11)
項目10に記載の方法であって、前記免疫障害は、炎症状態であり、前記投与は、有効量のTSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストをまたはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニストを含む、方法。
(項目12)
項目11に記載の方法であって、前記免疫障害は、乾癬、乾癬性関節炎、または肺の炎症応答である、方法。
(項目13)
項目12に記載の方法であって、前記肺の炎症疾患は、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、方法。
(項目14)
項目10に記載の方法であって、前記免疫障害は、免疫不全であり、前記投与は、有効量のTSLP/IL50(配列番号1)のアゴニストを含む、方法。
(項目15)
項目14に記載の方法であって、前記免疫不全は、免疫抑制を引き起こす細胞除去またはウイルス感染の結果である、方法。
(項目16)
項目10に記載の方法であって、前記投与は、自己由来または同種異系の抗原提示細胞(APC)のエキソビボ処置を含む、方法。
(項目17)
項目16に記載の方法であって、前記投与は、有効量のTSLP/IL50(配列番号1)のアゴニストでのAPCのエキソビボ処置を含む、方法。
(項目18)
項目10に記載の方法であって、前記アゴニストまたはアンタゴニストは、以下:
a)ヒト化抗体;
b)モノクローナル抗体;
c)ポリクローナル抗体;
d)Fabフラグメント;
e)F(ab’)フラグメント;または
f)抗体のペプチド模倣物
を含む、方法。
(項目19)
項目10に記載の方法であって、前記アゴニストは、TSLP/IL−50(配列番号1)またはその抗原性フラグメントを含む、方法。
(項目20)
T細胞によるIL−4、IL−5、およびIL−13の生成を誘導する方法であって、該方法は、以下の工程:
a)APCと、TSLP/IL−50のアゴニストまたはTSLP/IL−50レセプターのアゴニストとを接触させる工程、および
b)該T細胞を該APCで刺激する工程、
を包含する、方法。
(項目21)
被験体におけるTH2応答を調節する方法であって、該方法は、以下の(a)、または(b):
a)TSLP/IL−50(配列番号1)のアゴニストもしくはTSLP/IL−50レセプター(TSLP/IL−50R)(配列番号2、3)のアゴニスト:または
b)TSLP/IL−50(配列番号1)のアンタゴニストもしくはTSLP/IL−50R(配列番号2、3)のアンタゴニスト
の投与を包含する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書(添付の特許請求の範囲を含む)中で使用される場合、単数形の語(例えば、「a」、「an」および「the」は、文脈が明示的に他のように示さない限り、対応する複数言及物を包含する。
【0027】
本明細書中で引用されるすべての参考文献は、各々の個別の刊行物または特許出願が詳細かつ個別に参考として援用されると示されたのと同じ程度に、本明細書中に参考として援用される。
【0028】
(I.定義)
「活性化」、「刺激」、および「処置」とは、それが細胞またはレセプターに適用される場合には、文脈によってかまたは明示的に他のように示されない限り、同じ意味(例えば、リガンドによる樹状細胞(DC)の活性化、刺激、または処置)を有し得る。
【0029】
「投与」および「処置」は、それがヒト被検体または動物の処置に適用される場合、その被検体または動物への製剤、治療剤、もしくは診断剤、または薬学的組成物、治療組成物、もしくは診断組成物の接触を指す。「投与」および「処置」はまた、例えば、細胞、組織、または器官へのエキソビボ処置、およびその後の、その被検体または動物へのその細胞、組織、または器官の接触を意味し、これは、その薬剤または組成物が、そのエキソビボ処置の間に代謝、変化、または分解された場合さえも意味する。
【0030】
「同種異系」とは、それが細胞に適用される場合または細胞間の反応に適用される場合に、例えば、第1の細胞の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)が第2の細胞によって異種であると認識される相互作用を指す。「自己(由来)」とは、それが細胞に適用される場合または細胞間の反応に適用される場合に、例えば、第1の細胞のMHCが第2の細胞により自己として認識される相互作用を指す(Abbasら(2000)Cellular and Molecular Immunology,第4版,W.B.Saunders Co.,Philadelphia)。
【0031】
「有効量」とは、医学的状態の症状または徴候を改善するために十分である量を意味する。
【0032】
「ポリクローン性」拡大または「ポリクローン性」増殖とは、細胞の増殖がその表現型の維持を含むことを意味し、一方「オリゴクローン性」拡大または「オリゴクローン性」増殖とは、その表現型が変化することを意味する(Duarteら(2002)Gene
Therapy 9 :1359−1368)。
【0033】
「感受性」(例えば、T細胞レセプター(TCR)の感受性)とは、TCRへのリガンドの結合が、そのTCRの検出可能な変化、またはそのTCRと特に関係する事象もしくは分子の検出可能な変化(例えば、TCRコンフォメーション変化またはリン酸化)、そのTCRと関係するタンパク質の変化、またはTCR関連遺伝子発現の変化を生じることを意味する。
【0034】
(II.一般)
hTSLP/IL−50(配列番号1)(胸腺間質リンホポエチン(TSLP)としても公知である)は、元来マウスにおいて発見された。そしてこれは、初期B細胞および初期T細胞の発生を支持することにおいてそのホモログであるIL−7と同様の役割を果すことが、見出された(例えば、Sims(上記);Levinら(上記);およびRayら(上記)を参照のこと)。マウスTSLP/IL−50(配列番号1)は、脾臓から単離されたかまたは単球もしくは骨髄から生成された、マウスDCを活性化しなかった。本発明は、ヒトTSLP/IL−50(配列番号1)が、新規なDCアクチベーターであることを示す。hTSLP/IL−50(配列番号1)は、他のDC活性化因子(例えば、CD40−リガンド、LPS、またはIL−7)と比較した場合、いくつかの独特な特徴を提示する。例えば、これは、DC上に最高レベルのCD40およびCD80を誘導する;これは、DCを活性化して、最も強力な未刺激(naive)CD4 T細胞の増殖および拡大を誘導する;これは、公知の炎症促進性サイトカインのうちのいくつかを生成するようにDCを誘導するようではない。そうではなくむしろ、これは、TH2誘引ケモカインであるTARCおよびMDCの生成を誘導する;そしてこれは、DCに未刺激CD4 T細胞を刺激させて、TH2サイトカインであるIL−4、IL−5、IL−13およびTNFαを高レベル生成する。興味深いことに、抗炎症性サイトカインIL−10およびTH1サイトカインIFN−γの生成は、阻害される。これらの特徴は、hTSLP/IL−50(配列番号1)が、制御されていない炎症(特に、アレルギー性炎症)において重要なメディエーターを示すことを、強力に示唆する。
【0035】
DCの活性化は、TH2媒介性アレルギー炎症(例えば、喘息)の病因における重要な工程であるようである。Th2細胞にアレルゲンを提示する樹状細胞は、Th2細胞を活性化して、サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、およびIL−13)を放出し、これらのサイトカインは、種々の様式で、喘息の病因に寄与する。IL−4は、気道内皮細胞接着分子およびケモカイン産生を増加し、IL−5は、好酸球産生を誘発し、一方で、IL−13は、平滑筋過剰反応性を促進する(Lewis(2002)Curr.Opinion Immunol.14:644−651)。IL−4刺激した細胞接着分子は、炎症細胞のレセプターとして作用する(Strizら(1999)Am J.Physiol.277:L58−L64)。IL−4およびIL−13は、B細胞を活性化し、B細胞増殖およびIgE合成をもたらす(BusseおよびLemanske(2001 New Engl.J.Med.344:350−362)。IL−4は、アレルギー性喘息の気道において過剰発現され、一方、IL−13は、アレルギー性喘息および非アレルギー性喘息の両方において、気道にて過剰発現される(Wills−Karpら(1998)Science 282:2258−2260)。IL−4は、一次アレルゲン感作において、より重要であるようであり、一方、IL−13は、アレルゲンへの二次曝露の間において、より重要であるようである(Kips(2001)Eur.Resp.J.Suppl.34:24s−33s)。
【0036】
アレルギー性個体由来のDCは、アレルゲンによる刺激によってTH2型応答を優先的に誘導する(例えば、Hammadら(2001)Blood 98,1135−41を参照のこと)か、またはアレルゲンによる刺激によらずにTH2型応答を優先的に誘導する(例えば、P.A.Stumbles(上記);McWilliamら(1996)J.Exp.Med.184:2429−32;N.Novakら(1999)Allergy 54:792−803;Tunon−De−Laraら(1996)Clin.Exp.Allergy 26:648−655;およびHolt(1997)Adv.Exp.Med.Biol.417:301−306)が、TH2アレルギー疾患を誘導するためのDCのシグナル伝達の基礎となる分子機構は、明らかには理解されていない。hTSLP/IL−50(配列番号1)がアトピー性皮膚炎のケラチノサイトにより高度に発現され、そしてhTSLP/IL−50(配列番号1)活性化DCが未刺激CD4 T細胞を強力に刺激してIL−4、IL−5、IL−13およびTNFαを生成するというこの発見は、hTSLP/IL−50(配列番号1)が、アレルギー疾患の病因を理解することにおいて欠けている重要な因子を示すことを示唆する。
【0037】
上皮細胞または抗原侵入部位にある他の間質細胞により生成されるhTSLP/IL−50(配列番号1)は、DCを活性化しそしてDCを刺激して、TH2誘因性ケモカイン(例えば、TARCおよびMDC)を生成する。hTSLP/IL−50(配列番号1)活性化DCは、排出リンパ節中に遊走して、アレルゲン特異的T細胞増殖およびTH2細胞への分化を誘導する。これらのアレルゲン特異的TH2 T細胞は、元の炎症部位にあるTARCおよびMDCに戻ってアレルギー性炎症を誘発し得、それにより、上皮細胞と、DCと、T細胞媒介性免疫応答との間の直接的機能的関係を確立し得る。
【0038】
IL−4、IL−5、IL−10およびIL−13を産生する古典的なTH2細胞と違って、hTSLP/IL−50刺激−DCによって活性化されるヒトCD4T細胞は、IL−4、IL−5、およびIL−13を産生するが、IL−10は産生しない。IL−10が、TH2サイトカインとして歴史的に含まれるが(例えば、Abbasら(1996)Nature 383:787−793を参照のこと)、TH2媒介性アレルギー炎症に対する寄与は、異論が多かった。いくつかの研究は、肺、腸および皮膚におけるIL−10mRNAレベルが、アレルギー喘息またはアトピー性皮膚炎に罹患する患者において上昇することが示され(例えば、Robinsonら(1996)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.14:113−117を参照のこと)、その一方で、ELISA(酵素結合イムノソルベント検定法)によるIL−10タンパク質の直接測定が、正常なコントロール被験体と比べると、アトピー患者由来の、気管支肺胞洗浄または活性化末梢血単核細胞の培養上清において著しくより低いIL−10レベルを示した(例えば、Borishら(1996)J.Allergy Clin.Immunol.97:1288−96を参照のこと)。マウスモデルにおける研究は、気道炎症およびサイトカイン産生の抑制におけるIL−10の役割を確認する(例えば、Akbariら(2001)Nat.Immunol.2:725−731;およびZuany−Amorimら(1995)J.Clin.Invest.95:2644−2651を参照のこと)。従って、hTSLP/IL−50刺激−DC活性化T細胞によって産生される、高レベルのIl−4、IL−5、IL−13およびTNFα、ならびに低下したレベルのIL−10およびIFN−γは、アトピー性皮膚炎または喘息の病態生理学の基礎をなす実際のアレルギー炎症性サイトカインを代表し得る。IL−10は、抗炎症性サイトカインであるが、プロアレルギー性TH2サイトカインではない。
【0039】
皮膚上皮細胞および粘膜上皮細胞は、TSLP/IL−50(配列番号1)を産生することによって、アレルギー性炎症の間、DCと直接相互作用するという第1の証拠がさらに記載される。hTSLP/IL−50(配列番号1)は、潜在的にDCを活性化するだけでなく、非刺激T細胞を極性化し、プロアレルギー性TH2サイトカインを産生する能力を有するDCを支持する。hTSLP/IL−50(配列番号1)は、炎症性疾患およびアレルギー性疾患をブロックする新規の標的を代表する。
【0040】
本発明は、TSLP/IL−50(配列番号1)の活性をアゴナイズすることによってTH2媒介性応答を増大する、方法および試薬を提供する。この応答の増大は、免疫系の抑制に起因する障害(例えば、HIV)の処置において有用である。樹状細胞活性の増強は、ウイルス感染、細菌感染、または真菌感染の処置において有用である。TSLP/IL−50(配列番号1)および/またはそのアゴニストはまた、ワクチンアジュバントとして有用である。
【0041】
DC応答の抑制は、いくつかの免疫障害および状態(例えば、アレルギー性炎症、気管支過反応性、喘息、鼻炎、食物アレルギー、移植拒絶、対宿主性移植片病、自己免疫疾患、免疫抑制を引き起こすウイルス感染、乾癬、およびアトピー性皮膚炎)の処置について有用である。
【0042】
(III.アンタゴニストおよびアゴニスト)
hTSLP/IL−50(配列番号1)の活性の遮断は、サイトカインのアンタゴニスト(例えば、リガンドに対する抗体、レセプターに対する抗体など)によって達成され得る。リガンド−レセプター相互作用との干渉は、アンタゴニストの開発に対する有効な戦略であることが示された。
【0043】
リガンドによって媒介される活性をアンタゴナイズするための種々の手段が存在する。2つの明白な手段は、抗体を用いてリガンドをブロックすること;第2の手段は、抗体を用いてレセプターをブロックすることである。種々のエピトープは、各々の上に存在し、これらの相互作用をブロックし、例えば、立体障害ブロッキング相互作用を引き起こす。シグナル伝達をブロックする能力の相関は、リガンドまたはレセプターのいずれかに対する結合親和性と相関することが必ずしも予想されない。別の手段は、レセプター結合活性を保持するが、レセプターシグナル伝達活性を誘導しない、リガンドムテインを使用することである。ムテインは、シグナル伝達リガンドの競合インヒビターであり得る。
【0044】
あるいは、低分子ライブラリーは、同定されたリガンド−レセプター対合によって媒介される相互作用またはシグナル伝達をブロックし得る化合物についてスクリーニングされ得る。
【0045】
本発明は、特定のサイトカインリガンド(好ましくは、哺乳動物(例えば、霊長類、ヒト、ネコ、イヌ、ラット、またはマウス)のサイトカインリガンド)に特異的に結合する抗体または結合組成物の使用を提供する。抗体は、これらの天然に存在する(全長)形態またはこれらの組換え形態の両方において、種々のサイトカインタンパク質(個々の改変体、多型改変体、対立遺伝子改変体、株改変体、または種改変体、およびこれらのフラグメントを含む)に対して惹起される。さらに、抗体は、これらの天然(または活性)形態またはこれらの不活性(例えば、変性)形態の両方のレセプタータンパク質に対して惹起され得る。抗イディオタイプ抗体がまた、使用され得る。
【0046】
多くの免疫原は、リガンドまたはレセプタータンパク質と特異的に反応性である抗体を産生するように選択され得る。組換えタンパク質は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の産生のための好ましい免疫原である。適切な供給源(例えば、霊長類、齧歯類など)由来の天然に存在するタンパク質はまた、純粋形態または非純粋形態のいずれかで使用され得る。適切なタンパク質配列を使用して作製される合成ペプチドはまた、抗体の産生のための免疫原として使用され得る。組換えタンパク質は、例えば、Coliganら(編)(1995および定期補遺)Current Protocols in Protein Science,John Wiley and Sons,New York,NY;およびAusubelら(編)(1987および定期補遺)Current Protocols in Molecular Biology,Greene/Wiley,New York,NYに記載されるように真核生物細胞または原核生物細胞において発現され、精製され得る。天然に折りたたまれた材料および変性された材料は、適切な場合、抗体を産生するために使用され得る。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかは、例えば、続いての免疫アッセイにおける使用のために生成され、タンパク質を測定され得るか、または免疫精製法のために生成され得る。
【0047】
ポリクローナル抗体を産生するための方法は、当業者に周知である。代表的に、免疫原(好ましくは、精製タンパク質)は、アジュバントと混合され、動物は、この混合物を用いて免疫される。免疫原調製物に対する動物の免疫応答は、試験採血によってモニターされ、そして目的のタンパク質に対する反応性の力価を決定する。例えば、抗体の免疫原に対する適切に高い力価が得られる場合、通常、繰り返し免疫の後、血液が、動物から回収され、抗血清が調製される。タンパク質に対して反応性の抗体を富化のための抗血清のさらなる分画は、所望される場合、実施され得る。例えば、HarlowおよびLane;またはColiganを参照のこと。免疫はまた、他の方法(例えば、DNAベクター免疫)によって実施され得る。例えば、Wangら(1997)Virology 228:278−284を参照のこと。
【0048】
モノクローナル抗体は、当業者になじみの種々の技術によって得られ得る。代表的には、所望の抗原で免疫された動物由来の脾臓細胞は、通常、骨髄腫細胞と融合することによって不死化される。KohlerおよびMilstein(1976)Eur.J.Immunol.6:511−519を参照のこと。不死化の代替的方法としては、エプスタイン−バーウイルス、オンコジーン、またはレトロウイルスでの形質転換、あるいは当該分野で公知の他の方法が挙げられる。例えば、Doyleら(編)(1994および定期補遺)Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures,John Wiley and Sons,New York,NYを参照のこと。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対する所望の特異性および親和性の抗体の産生についてスクリーンされ、このような細胞によって産生されたモノクローナル抗体の収率は、種々の技術(脊椎動物宿主の腹膜腔への注射を含む)によって増強され得る。あるいは、例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281によって概略される一般的プロトコルに従って、モノクローナル抗体またはその結合フラグメントをコードするDNA配列を、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、単離し得る。
【0049】
リガンドまたはレセプタータンパク質の所定のフラグメントに対する抗体または結合組成物(結合フラグメント、単鎖抗体、抗体のFvフラグメント、Fabフラグメント、またはF(ab’)フラグメントが挙げられる)は、リガンドまたはレセプタータンパク質のフラグメントのキャリアタンパク質との結合体で動物を免疫することによって惹起され得る。モノクローナル抗体は、所望の抗体を分泌する細胞から調製される。これらの抗体は、正常タンパク質または欠損タンパク質に対する結合についてスクリーニングされ得る。これらのモノクローナル抗体は、通常は少なくとも約1mMのKで、より通常は少なくとも約300μMのKで、代表的には少なくとも約10μMのKで、より代表的には少なくとも約30μMのKで、好ましくは少なくとも約10μMのKで、そしてより好ましくは少なくとも約3μM以上のKで結合する。
【0050】
いくつかの例において、種々の哺乳動物宿主(例えば、マウス、齧歯類、霊長類、ヒトなど)からモノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。このようなモノクローナル抗体を調製するための技術の記載は、例えば、Stitesら(編)Basic
and Clinical Immunology,第4版、Lange Medical Publications,Los Altos,CA,およびその中に引用される参考文献;HarlowおよびLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual CSH Press;Goding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,第2版、Academic Press,New York,NY;ならびに特に、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497(これは、モノクローナル抗体を生成する1つの方法を議論する)に見出され得る。簡単に要約すると、この方法は、免疫原を動物に注射する工程を包含する。次いで、動物が屠殺され、細胞が、その脾臓から採取され、次いで、これは、骨髄腫細胞と融合される。結果は、インビトロで再生産し得る、ハイブリッド細胞または「ハイブリドーマ」である。次いで、ハイブリドーマの集団は、スクリーンされ、個々のクローンを単離し、これらの各々は、免疫原に対する単一の抗体種を分泌する。この様式において、得られた個々の抗体種は、免疫原性物質上で認識される特定の部位に応じて生成される免疫動物由来の不死化クローン化単一B細胞の産物である。
【0051】
他の適切な技術は、ファージまたは類似のベクター中の抗体のライブラリーの選択を包含する。例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281;およびWardら(1989)Nature 341:544−546を参照のこと。本発明のポリペプチドおよび抗体は、改変(キメラ抗体またはヒト化抗体を含む)を有してかまたは有さずに使用され得る。頻繁に、ポリペプチドおよび抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を、共有結合または非共有結合のいずれかによって標識される。広く種々の標識技術および結合体化技術が、公知であり、そして、科学文献および特許文献の両方において広く報告される。適切な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、インヒビター、蛍光部分、化学発光部分、磁気粒子などが挙げられる。このような標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号;および同第4,366,241号が挙げられる。また、組換え免疫グロブリンが産生され得(Cabilly、米国特許第4,816,567号;およびQueenら(1989)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033を参照のこと);またはこれは、トランスジェニックマウス中で作製される(Mendezら(1997)Nature Genetics 15:146−156を参照のこと;またAbgenix技術およびMedarex技術を参照のこと)。
【0052】
抗体は、特定の結合組成物のほんの1つの形態である。しばしば同様の医用を有する他の結合組成物は、例えば、結合パートナー−結合パートナー様式、抗体−抗原相互作用、または天然に生理学的に関連するタンパク質−タンパク質相互作用において、共有結合または非共有結合のいずれかで、リガンドまたはレセプターに対して特異性を有して結合する分子(例えば、所望のタンパク質と特異的に会合するタンパク質)を含む。分子は、ポリマーであっても化学試薬であってもよい。機能的アナログは、構造的改変を有するタンパク質であり得るか、または構造的に関連しない分子であり得、例えば、これは、適切な結合決定因子と相互作用する分子形態を有する。本発明の抗体結合化合物(結合フラグメントを含む)は、有意な診断的価値または治療的価値を有し得る。これらは、非中和結合化合物としても有用であり得、そして毒素または放射性核種と結合され得、その結果、結合化合物が、抗原に結合する場合、それを例えば、その表面上に発現する細胞が殺傷される。さらに、これらの結合化合物は、リンカーによって直接的または間接的のいずれかで、薬物または他の治療剤に結合体化され得、薬物標的化を実施し得る。
【0053】
TSLP/IL−50(配列番号1)に対する抗体が、入手可能である(Soumelisら、上述)。ヒトTSLP/IL−50−B50(配列番号1)における増大した抗原性の領域としては、KAAYL(アミノ酸40−44);KD(49−50);KS(59−60);PHC(73−75);ASLAK(91−95);TKAAL(102−106);KKRRKRKV(125−132);およびPLLKQ(154−158)が挙げられる。IL−7Rα(配列番号2)に対する抗体が、入手可能である(Pandeyら、上述)。抗−TSLPR抗体が、入手可能である(R & D Systems,Minneapolis,MN,cat.no.MAB981;DNAX Research,Inc.,Palo Alto,CA)。抗体はまた、例えば、Vector
NTI(登録商標)スイートのWellingプロット(Informax,Inc,Bethesda,MD)によって決定される増加した抗原性の領域での免疫によって、TSLPR(配列番号3)に対して調製される。ヒトTSLPRにおける増加した抗原性の領域は、配列番号3由来のHYR(アミノ酸残基59−61);YYLKP(115−119);KHV(123−125);WHQDAV(129−134);KPKLSK(226−231);およびAHLHKM(294−299)を含み、ここで、N−末端領域は、細胞質性であり、ヒトTSLPRの膜貫通領域は、残基約203−207に生じることが予測される(Blagoevら(2002)Gene 284:161−168;Parkら、上述)。
【0054】
アゴニストとしては、TSLP/IL−50(配列番号1)サイトカインタンパク質それ自体が挙げられ、これは、レセプターシグナル伝達を誘導するために使用され得る。
【0055】
(IV.診断的使用、治療組成物、方法)
本発明は、種々の炎症関連障害(例えば、アレルギー性炎症)を扱うための手段を提供する。病因(etiology)および病因(pathogenesis)は、しばしば、良好に理解されるが、これらは、患者において有意な不快感または病的状態を引き起こす。以下に記載されるように、TSLP/IL−50(配列番号1)のCD11cDCへの投与は、非刺激CD4T細胞のプライミングを生じ、IL−4、IL−5、IL−13、およびTNFαを産生し、それによって、アゴニストまたはアンタゴニストは、免疫系を増強するかまたは抑制するための治療様式を提供し得る。
【0056】
診断方法は、予後の予測;特定の診断経過に対して応答するかまたは応答しない患者のサブセットの定義;骨関連障害もしくは免疫関連障害の診断またはこれらの障害のサブタイプ;あるいは、治療に対する応答を評価するような局面を含む。本発明は、検出可能な標識(例えば、蛍光標識、エピトープ標識、酵素活性標識、または放射能標識)を含む抗体またはその結合フラグメントを企図する。
【0057】
TSLP/IL−50(配列番号1)に対するアンタゴニスト活性またはアゴニスト活性は、有意な治療効果(例えば、症状の発生を減少するかまたは防止すること)を示唆する様式に関与し得る。本発明のアンタゴニストおよび/またはアゴニストは、単独でか、または同じ経路または伴行(accompanying)経路の別のインヒビターまたはアゴニスト;あるいは症状の処置のために使用される他の化合物(例えば、アンタゴニスト、またはステロイド(例えば、グルココルチコイド))と組み合わせて投与され得る。
【0058】
これは、アゴニストもしくはアンタゴニストの直接投与によって、またはおそらく遺伝子治療戦略を使用して、実施され得る。拮抗作用は、例えば、アンチセンス処理、抗体、またはTSLP/IL−50(配列番号1)効果の他の抑制によって実施され得る。
【0059】
薬学的組成物または滅菌組成物(抗体、その結合組成物、サイトカインアゴニスト、または低分子アンタゴニストが挙げられる)を調製するために、この実体は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と混合され、これは、好ましくは不活性である。これらの薬学的組成物の調製は、当該分野で公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照のこと。
【0060】
抗体、結合組成物、またはサイトカインは、通常、非経口的に、好ましくは、静脈的に投与される。これらのタンパク質またはペプチドが、免疫原性であり得るので、これらは、好ましくは、例えば、Tomasiら、米国特許第4,732,863号によって教示されるように、従来のi.v.投与セットによってまたは皮下貯留からのいずれかで、ゆっくりと投与される。免疫学的反応を最小化するための手段が、適用され得る。低分子実体は、経口的に活性であり得る。
【0061】
経口的に投与される場合、生物製剤は、薬学的に受容可能な非経口ビヒクルと共に、注射可能単回投薬形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)で処方される。このようなビヒクルは、代表的には、本質的に非毒性であり、非治療的である。治療剤は、水性ビヒクル(例えば、水、生理食塩水、または種々の添加剤および/もしくは希釈剤を含むかもしくは含まない緩衝化ビヒクル)中で投与され得る。あるいは、懸濁液(例えば、亜鉛懸濁物)は、ペプチドを含むように調製され得る。このような懸濁液は、皮下(SQ)注射または筋内(IM)注射のために有用であり得る。生物製剤と添加剤との比は、両者が、有効な量で存在する限り広い範囲にわたって変化され得る。抗体は、好ましくは、凝集物、他のタンパク質、外毒素などを実質的に含まない精製形態中に、約5〜30mg/ml、好ましくは10〜20mg/mlの濃度で処方される。好ましくは、外毒素レベルは、2.5EU/ml未満である。例えば、Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications.第2版、Dekker,NY;Liebermanら(編、1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets 第2版、Dekker,NY;Liebermanら(編、1990)Pharmaceutical Dosage
Forms:Disperse Systems,Dekker,NY)を参照のこと。
【0062】
治療剤に対する投与レジメンの選択は、いくつかの因子に依存し、これらの因子としては、実体の血清代謝回転速度または組織代謝回転速度、症状のレベル、実体の免疫原性、および標的細胞の接近可能性、投与のタイミングなどが挙げられる。好ましくは、投与レジメンは、受容可能な副作用のレベルに支障のない患者に送達される治療剤の量を最大にする。従って、送達される生物製剤の量は、特定の実体および処置される状態の重篤度に、一部依存する。適切な抗体用量を選択する指針は、例えば、Bachら、第22章,Ferroneら(編)(1985)Handbook of Monoclonal Antibodies,Noges Publications,Park Ridge,NJ;およびHaberら(編)(1977)Antibodies in Human
Diagnosis and Therapy,Raven Press,New York,NY(Russell、303−357頁、およびSmithら、365〜389頁)に見出される。あるいは、サイトカインまたは低分子の用量は、標準的な方法論を使用して決定される。
【0063】
適切な用量の決定は、臨床医によって、例えば、処置を実施することが当該分野で公知または推測されるか、または処置を実施すると推測されるパラメーターまたは因子を使用して、作製される。一般的に、用量は、最適用量よりいくらか下の量で開始され、その後、任意の負の副作用に比べて、所望の効果または最適効果が、達成されるまで、これは、低い増分で増加される。重要な診断指標としては、例えば、炎症の症状または産生される炎症性サイトカインのレベルが挙げられる。好ましくは、使用される生物製剤は、処置のために標的化される動物と同じ種に由来し、それによって試薬に対する体液性応答を最適化する。
【0064】
リガンドまたはレセプターに特異的に結合する、抗体またはそのフラグメントについての総週間用量範囲は、体重1kg当たり、一般的には約10μgから、より一般的には約100μgから、代表的には約500μgから、より代表的には約1000μgから、好ましくは約5mgから、そしてより好ましくは約10mgからの範囲にわたる。一般的に、この範囲は、体重1kg当たり、100mg未満であり、好ましくは50mg未満であり、そしてより好ましくは25mg未満である。アゴニストまたは低分子治療剤は、類似のモル濃度で使用され得る。
【0065】
サイトカインレセプター媒介性シグナル伝達のアンタゴニスト(例えば、抗体または結合フラグメント)に対する週間用量範囲は、体重1kg当たり、約1μgからであり、好ましくは少なくとも約5μgからであり、そしてより好ましくは少なくとも約10μgからである。一般的に、この範囲は、体重1kg当たり、約1000μg未満であり、好ましくは約500μg未満であり、そしてより好ましくは約100μg未満である。用量は、所望の処置を実施するスケジュールに対してであり、そしてより短い期間またはより長い期間にわたって周期的であり得る。一般的に、範囲としては、体重1kg当たり、少なくとも約10μg〜約50mgであり、好ましくは約100μg〜約10mgである。サイトカインアゴニストまたは低分子治療剤は、代表的に、類似のモル量で使用される。しかし、これらは、おそらく低い分子量を有するので、より低い重量用量を有する。
【0066】
本発明はまた、公知の治療剤(例えば、ステロイド(特に、グルココルチコイド)(これは、症状(例えば、炎症に関連する症状)を緩和する)、または抗生物質もしくは抗感染剤)との組み合わせでの生物製剤の投与のために提供される。グルココルチコイドに対する1日用量は、1日当たり、少なくとも約1mgからであり、一般的には少なくとも約2mgからであり、そして好ましくは少なくとも約5mgからである。一般的に、用量は、1日当たり、約100mg未満であり、代表的には約50mg未満であり、好ましくは約20mg未満であり、そしてより好ましくは約10mg未満である。一般的には、この範囲は、1日当たり、少なくとも約1mg〜約100mgであり、好ましくは約2mg〜約50mgである。抗生物質、抗感染剤、または抗炎症性剤と組み合わせての適切な用量はまた、公知である。
【0067】
代表的な哺乳動物宿主としては、マウス、ラット、ネコ、イヌ、および霊長類(ヒトを含む)が挙げられる。特定の患者に対する有効量は、処置される状態、患者の全体的な健康状態、投与方法、投与経路および投与の量、ならびに副作用の重篤度のような因子に依存して変化し得る。組み合わせの場合、有効量は、成分の組み合わせに対する比であり、効果は、個々の成分単独に限定されない。
【0068】
有効量の治療剤は、症状を、代表的に少なくとも約10%;通常少なくとも約20%;好ましくは少なくとも約30%;またはより好ましくは少なくとも約50%減少する。本発明は、上記される徴候に関連する障害を処置するための一般的記述において、本明細書の他の場所で記載されるように、治療適用における用途が見出される試薬を提供する。Berkow(編)The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,Merck & Co.,Rahway,N.J.;Braunwaldら(編)(2001)Harrison’s Principles of Internal Medicine,McGraw−Hill,NY;Gilmanら(編)(1990)GoodmanおよびGilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics,第8版、Pergamon
Press;Remington’s Pharmaceutical Sciences.第17版(1990),Mack Publishing Co.,Easton,Penn;Langer(1990)Science 249:1527−1533;Merck Index,Merck & Co.,Rahway,New Jersey;ならびにPhysician’s Desk Reference(PDR);Cotranら(編)上述;ならびにDale and Federman(編)(2000)Scientific American Medicine,Healtheon/WebMD,New York,NY。
【実施例】
【0069】
(1.一般の方法)
標準的な方法のいくつかは、例えば、Maniatisら(1982)Molecular Cloning,A laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor NY;Sambrookら(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)、1〜3巻、CSH Press NY;Ausubelら、Biology、Greene Publishing Associates、Brooklyn、NY;またはAusubelら(1987および増補) Current Protocols in Molecular Biology、Greene/Wiley、New Yorkに記載または参照されている。タンパク質精製方法は、例えばアンモニウム硫酸沈殿、カラムクロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、結晶化などのような方法を含む。例えば、Ausubelら(1987および定期的な増補);Deutscher(1990)Meth.Enzymol.182巻の「Guide
to Protein Purification」およびこのシリーズの他の巻;およびタンパク質精製用製造物の使用に関する製造業者の文献、例えばPharmacia、Piscataway、N.J.、またはBio−Rad、Richmond、CAを参照のこと。組換え技術との併用により、適切な断片(例えば、FLAG配列または、プロテアーゼ除去配列により融合され得る等価物)への融合を可能にする。例えば、Hochuli(1990)「Purification of Recombinant Proteins with Metal Chelate Absorbent」in Setlow(編)Genetic Engineering,Principle and Methods 12:87〜98、Plenum Press、N.Y.;およびCroweら(1992)QIAexpress:The High LevelExpression & Protein Purification System QIAGEN,Inc.、Chatsworth、CAを参照のこと。
【0070】
例えば、抗原性断片、シグナルおよびリーダー配列、タンパク質の折りたたみおよび機能ドメインを決定するためのソフトウェアパッケージが利用できる。例えば、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc.、Bethesda、MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.、San Diego、CA)、およびDeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.、Crystal Bay、Navada);Menneら(2000)Bioinformatics16:741〜742を参照のこと。公共の配列データベースも使用した(例えばGenBankおよび他から)。
【0071】
(II TSLP/IL−50(配列番号1)によるCD11cDCの活性化)
CD11cDCは、フィコール遠心分離および磁性ビーズを用いたCD3、CD14、CD19、CD56およびグリコフォリンAを発現する細胞のネガティブ除去により、PBMCを分離した後、健康な血液提供志願者(Stanford Medical School Blood Center、Stanford、CA)の成人の血液バフィーコートから精製した。除去した細胞は、抗CD4−TC(Catag、Burlingame、CA)、抗CD11c−PEおよび抗CD3,CD14、CD16−FITC(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)を用いてさらに染色した。CD11cCD4T細胞は、Vantage FACsorter(登録商標)(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)を用いて99%より高い純度になるように単離した。
【0072】
CD11cDCを、10%FCS、1%ピルビン酸、1%HEPESおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMIで選別後、すぐに培養した。細胞を、TSLP/IL−50(配列番号1)(15ng/ml)、IL−7(50ng/ml)、LPS(1mg/ml)、CD40のリガンドをトランスフェクトしたL−繊維芽細胞(2.5×10/ウェル)または培養培地のみの存在下で、平底の96ウェルプレートに0.5×10/mlの濃度で播種した。24時間の培養後、DCを回収し、クラスタを分離するために、EDTAを含む培地に再懸濁した。トリパンブルーによる死んだ細胞を除去することにより、最初に生き残ったDCを計数した。
【0073】
残った細胞を抗HLA−DR(Becton Dickinson、Franklin
Lakes、NJ)、抗CD40、CD80、およびCD86(全てPharmingen、San Diego、Ca)またはIgG1アイソタイプコントロール(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)を含む様々なマウスの抗ヒトFITC結合型モノクローナル抗体(mAb)を用いて染色し、FACScan(登録商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)を用いて分析した。死んだ細胞を側方散乱および前方散乱する性質に基づいて除去した。アポトーシスの検出には、細胞を5〜10分間、アネキシン V−FITC(Promega、Madison、WI)を用いて染色し、死んだ細胞を除去せずに、FACScan(登録商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)により分析した。TSLP/IL−50(配列番号1)、IL−7、CD40−リガンドおよびLPSは全て、培地のみの場合と比較して、DC上の表面HLA−DR、CD40、CD80、CD86およびCD83をアップレギュレートした。hTSLP/IL−50(配列番号1)はIL−7の能力の少なくとも2倍これらのマーカーをアップレギュレートした。興味深いことに、TSLP/IL−50(配列番号1)がDC上でのCD40およびCD80の発現を最も高く誘導するのに対して、CD40のリガンドはHLA−DRおよびCD83のレベルをより高く誘導した。TSLP/IL−50(配列番号1)のHLA−DRおよび共刺激分子をアップレギュレートする能力は、ヒトTSLP/IL−50(配列番号1)に特異的な中和モノクローナル抗体により阻害された。このことは、観察されたTSLP/IL−50(配列番号1)のCD11cDCに対する効果が特異的であることを示している。CD40Lと同じように、TSLP/IL−50(配列番号1)はDCを活性化するだけではなく、アネクシンV染色および細胞数により示されるように、24時間培養におけるDCの生存も維持した。形態的には、TSLP/IL−50が刺激するDCおよびCD40L−DCは、培地−DCまたはIL−7−DCと比較したとき、長い樹状突起を示し、HLA−DRおよび樹状細胞−リソソーム結合膜糖タンパク質(DC−LAMP)を発現する。
【0074】
DC−LAMPはDC活性化マーカーである。DC−LAMPはTNFα、LPS、CD40Lにより急速に誘導され、抗原の存在を示すのに用い得る(Saint−Visら(1998)Immunity 9:325〜336)。
【0075】
(III.非刺激CD4 T細胞の刺激)
CD11cDCは様々な条件で24時間培養した後に回収し、サイトカインを完全に取り除くために2回洗浄し、5×10の新しく精製した非刺激同種異系の非刺激CD4Tと共に丸底の96ウェル培養プレートで共培養した。共培養は、漸増のDC/T細胞比で三連で行った。DCおよびT細胞単独のものをコントロールとして用いた。5日後、細胞を1mCiH−チミジン(Amersham Biosciences Corp.、Piscataway、NJ)に16時間曝し、その後回収し、放射能を測定した。
【0076】
最も注目すべきは、TSLP/IL−50に刺激されたDCは、CD40L−DC、LPS−DCまたはIL−7DCと比較して、同種異系の混合したリンパ球反応中に、最も強い非刺激CD4T細胞の増殖を誘導した。150個のT細胞あたり1個のDCの割合では、TSLP/IL−50(配列番号1)により活性化されたDCが、まだ非常に強い同種異系の非刺激CD4T細胞の増殖を誘導した。それはCD40L−DCに誘導されるものに比較すると、約10倍強かった。培養6日後、TSLP/IL−50が刺激するDCは全T細胞数の2.5〜10倍の増加を誘導した。それは、CD40L−DC、LPS−DCまたはIL−7−DCにより誘導されるものより多かった。そのため、ヒトのTSLP/IL−50(配列番号1)は、最も有力なDC活性化因子の1つを代表し、TSLP/IL−50が刺激するDCは、最も強く同種異系の非刺激CD4T細胞の増殖および拡大を誘導する。
【0077】
(IV.DCにより刺激された非刺激T細胞のサイトカインおよびケモカインの発現)
T細胞は共培養6日目に回収し、2回洗浄し、1×10/mlの濃度で、96ウェルまたは48ウェルの平底のプレート中、PMAおよびイオノマイシンで再度刺激した。2.5時間後、ブレフェルディンA(Brefeldin A)を10mg/mlの濃度で添加した。5時間後、細胞を回収し、2%ホルムアルデヒドで固定し、10%のサポニンで透過性にし、IL−4、IL−5,IL−10、IL−13に対してはPE結合型mAbsで、IFN−γに対してはTNFαおよびFITCが結合したmAbで染色した(全てPharmingen、San Diego、CA)。染色した細胞はFACScan(登録商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)により分析した。
【0078】
以前の研究で、ほぼ全てのDC活性化シグナル(例えば、CD40LおよびLPS)がDCを誘導して、炎症促進性のサイトカイン(IL−1α/β、IL−6およびIL−12)を生成し、非刺激CD4 T細胞のTH1への分化を刺激することが示されている(Guermonprezら(2002)Annu.Rev.Immunol.20巻:621〜667;Banchereauら(2000)Annu.Rev.Immunol.18巻:767〜811)。TSLP/IL−50(配列番号1)のDCサイトカインの発現に対する効果を調べるために、まず、11の異なるサイトカイン(IL−1α、IL−1β、IL−4、IL−6、IL−10,IL−12p35IL−12p40、IL−13、IL−18、IL−23p19およびTNFα)および12の異なるケモカイン(TARC,DCCK1、MDC、MCP1、MCP2、MCP3α、MCP4、エオタクシン、MIP3、MIG、ランテスおよびIL−8)の全定量mRNAスクリーニングを行った。驚くべきことに、CD40L−DCと異なり、TSLP/IL−50処理したDCは、試験した全ての炎症促進性サイトカインのmRNAを生産しなかったが、高レベルのケモカインTARCおよびMDCに対するmRNAを生成した。ELISA分析により、タンパク質レベルを確かめた。その結果、TLSPに活性化されたDCは、検出できる量の炎症促進性サイトカインIL−1β、IL−6、IL−12p70およびTNFαを生産しないが、高レベルのケモカインTARCおよびMDCを生成した(Recheら(2001)J.Immunol.167:336〜343)。TARCおよびMDCは、CCR4発現TH2細胞を優先的に誘引する。
【0079】
次に、hTSLP/IL−50に刺激されたDCが、非刺激CD4 T細胞を偏らせる(polarize)能力を、培地、IL−7、CD40またはLPSでそれぞれ培養したDCと比較した。成人の末梢血から精製した非刺激ヒトCD4CD45RAT細胞を、1/5比のDCとともに、6日間共培養し、サイトカインを完全に除去するために洗浄し、抗CD3および抗CD28で24時間再刺激した。その後、培地上清中のサイトカインの生成量を、ELISAにより測定した。顕著なことには、TSLP/IL−50に刺激されたDCは、非刺激CD4T細胞を誘導して、炎症促進性のサイトカインTNFαとともに、TH2サイトカインIL−4、IL−5およびIL−13の最も高いレベルを生じる。TSLP/IL−50に刺激されたDCは、培地のみまたは他の活性化因子とともに培養したDCと比較して、抗炎症サイトカインIL−10およびTH1サイトカインIFN−γの最低のレベルを生じる。TSLP/IL−50に刺激されたDCが、非刺激CD4T細胞を誘導して、高いIL−4、IL−13およびTNFα、ならびに低いIFN−γおよびIL−10を生成する能力を、細胞内サイトカイン染色により確認した。その結果、TSLP/IL−50(配列番号1)−DCは非刺激CD4T細胞を誘導して、TH1プロフィール(IFN−γ)または典型的なTH2プロフィール(IL−4、IL−5およびIL−10)とは異なる、非常に独特のセットのサイトカインを生成した。TSLP/IL−50に刺激されたDCに活性化されたCD4 T細胞は、培地−DC、IL−7−DC、CD40L−DCまたはLPS−DCによってそれぞれで活性化されたCD4T細胞と比較して、最も強力な炎症促進サイトカインの1つである、TNFαの最高のレベルを生じた。反対に、TSLP/IL−50に刺激されたDCは、CD4+T細胞を阻害して、強力な抗炎症サイトカインであるIL−10(例えば、Mooreら(2001)Annu Rev Immunol 19:683〜765)、およびTH2応答を交差して阻害し得るTH1サイトカインであるIFN−γ(Abbasら(1996)Nature 383:787〜793)を生成するようである。従って、TSLP/IL−50に刺激されたDCは、強い炎症促進性サイトカインTNFαの存在下、および2つの生理的なTh2炎症の阻害剤、IL−10およびIFN−γの非存在下で、非刺激CD4T細胞を促進して、IL−4、IL−5およびIL−13を生成させることにより、強いTH2アレルギー性の炎症を誘導する。それに加えて、TSLP/IL−50に刺激されたDCは、ケモカイン(例えばTARCおよびMDC)を生成することにより、TH2が介在する炎症をさらに強め、このケモカインは元の炎症の生じた組織にTH2細胞を選択的に補充する(例えばImaiら(1999)Int.Immunol.11:81〜88;Andrewら(1998)J.Immunol.161:5027〜5038;Andrewら(2001)J.Immunol.166:103〜111;Vestergaadら(2000)J.Invest.Dermatol.115:640〜646;およびVestergaadら(1999)J.Clin.Invest.104:1097〜1105参照)。
【0080】
(V.TSLP/IL−50の発現)
(A.間質細胞)
TSLP/IL−50(配列番号1)の生物学および病態生理学をさらに理解するために、TSLP/IL−50(配列番号1)mRNAの発現を、様々な初代細胞または細胞株からのcDNAライブラリーのパネルおよびFACSで分類した初代細胞のパネル(細胞の純度は99%より高い)でリアルタイム定量PCR(Taqman(登録商標))することにより分析した。TSLP/IL−50(配列番号1)の発現は、B細胞、T細胞、NK細胞、顆粒球、マクロファージ、単球サブセット、およびDCサブセットを含むほとんどのタイプの造血性細胞で見られなかった。興味深いことに、IgEレセプターと高い親和力で架橋するモノクローナル抗体に活性化される肥満細胞は、hTSLP/IL−50(配列番号1)を非常に高レベルで発現する。hTSLP/IL−50(配列番号1)は、培養したヒト初代間質細胞(例えば、皮膚ケラチノサイト、上皮細胞、平滑筋細胞、および肺線維芽細胞)で多量に発現することがわかった。IL−4、IL−13およびTNFα、またはTNFαおよびIL−1β、それぞれにより活性化される気管支平滑筋細胞および皮膚ケラチノサイトは、培地のみコントロールと比較して、hTSLP/IL−50(配列番号1)を多く発現するようである。TSLP/IL−50(配列番号1)の発現は、内皮細胞において見いだされなかった。従って、TSLP/IL−50(配列番号1)mRNAは主に、ほとんどのタイプの間質細胞および肥満細胞で発現するが、ほとんどのタイプの造血細胞および内皮細胞では発現しない。
【0081】
気管支平滑筋細胞(BSMC)、健康なヒトの肺線維芽細胞(NHLF)、健康なヒトの表皮ケラチノサイト(NHEK)および肺線維芽細胞株(MRC5)からなる初代細胞を、6ウェルの組織培養プレートに0.5×10細胞の濃度で播種した。サイトカインまたはサイトカインの組み合わせを、示した濃度で添加し、37℃で8時間培養した。
【0082】
ヒト気管支平滑筋細胞(BSMC)を様々なサイトカインにさらすことによるTSLP/IL−50mRNAの発現を、(Soumelisら(2002)Nature Immunol 3巻673〜680;Recheら(2001)J.Immunol.167:336〜343に記載されるように)様々なサイトカインで細胞を処理した後、Taqman(登録商標)およびELISAにより評価した。mRNAの発現レベルは、18sRNAの発現に対する単位として合わせた。細胞は培地のみ、IL−1α、IL−1β、TNFα、またはIL−1βおよびTNFαの組み合わせで、別個のインキュベーション混合物中で、0、0.001、0.01、0.1、1.0または10ng/mlで処理した。ELISAの結果は、IL−1βおよびTNFαの組み合わせが、BSMCからTSLP/IL−50の発現を最も高く誘発した、同様のパターンを示した。TaqmanおよびELISAの結果を、表1にまとめる。
【0083】
間質細胞からのIL−8の生成を、コントロールとして用いた(表1)。試験した4つの細胞株の比較により、TSLP−IL−50の発現およびIL−8の発現における傾向の違いが明らかになった。このことはTSLP/IL−50およびIL−8の発現につながるメカニズムが同一ではないことを示している。
【0084】
【表1A】

【0085】
【表1B】


別々の試験により、IL−13(25ng/ml;8時間)処理により、健康なヒトの肺線維芽細胞(NHLF)および健康なヒトの皮膚の線維芽細胞が刺激されて、TSLP/IL−50が発現されたことが示された。それに対して、IL−17(25ng/ml;8時間)による処理は、BSMC細胞および健康な皮膚線維芽細胞を誘導して、TSLP/IL−50を発現させることが示された。IL−13またはIL−17に応答しての発現は、例えば、健康なヒトの表皮ケラチノサイトからは検出されなかった。
【0086】
(B.炎症を生じた扁桃腺)
例えば扁桃腺のような、ヒトの炎症を起こした組織が、hTSLP/IL−50(配列番号1)タンパク質を発現するかどうか調べるために、免疫組織学的に調べた。試料は、mAb 6NE0112F3(hTSLP/IL−50を特異的に認識する)を用いて染色した。ヒトの扁桃腺は、陰窩上皮(この上皮は、陰窩に並び、しばしばウイルスおよびバクテリアを保有し、抗原の侵入および構成的な炎症の部位を示す)扁平上皮(これは扁桃の表面に並ぶ)を含む。5つの異なった扁桃腺のサンプル全ての内、hTSLP/IL−50(配列番号1)は、陰窩上皮細胞によって構成的に発現していることがわかった。この陰窩上皮細胞は、DC−LAMP陽性のリンパ球と密着していて、樹状突起細胞を活性化する。興味深いことに、全ての扁桃腺サンプルで、扁平上皮の先端部分内で、hTSLP/IL−50(配列番号1)のきわめて少ない小さな病変が見いだされた。TSLP/IL−50(配列番号1)の発現は、DC−LAMP陽性の活性化されたDCの浸潤、および同時に起こる、扁平上皮内のランゲリン(langerin)陽性ランゲルハンス細胞の喪失と関係していた。hTSLP/IL−50(配列番号1)は、陰窩上皮内での構成的な炎症および扁平上皮内の散在する炎症に寄与している。
【0087】
(C.アトピー性皮膚炎におけるケラチノサイト)
hTSLP/IL−50(配列番号1)の発現が、インビボでTh2タイプのアレルギー性炎症と関係しているかどうか調べるために、hTSLP/IL−50タンパク質の発現を、アトピー性皮膚炎(TH2が介在するアレルギー性疾患)、ニッケル誘導性接触性皮膚炎(IFN−γ産生CD8T細胞が介在するアレルギー性疾患)および播種性紅斑性狼瘡(TH1が介在する疾患)を含む皮膚の病変で分析した。hTSLP/IL−50は、健康な皮膚およびアトピー性皮膚炎の病変のない皮膚では検出されなかったが、hTSLP/IL−50の高い発現が、急性(4名の患者)および慢性のアトピー性皮膚炎(6名の患者)のケラチノサイトで見いだされた。TSLP/IL−50の発現は、小さな病巣から、急性および慢性のアトピー性皮膚炎の両方における先端の領域全体にいたる、主に上皮の先端層のケラチノサイトで観察された。hTSLP/IL−50は、ニッケル遊動性接触性アレルギー皮膚炎および播種性紅斑性狼瘡の皮膚の病変では見いだされなかった。
【0088】
(VI.ランゲルハンス細胞の移動および活性化)
hTSLP/IL−50(配列番号1)のアトピー性皮膚炎での発現が、DCの活性化に関係しているかどうか調べるために、hTSLP/IL−50を、ランゲリン(langerin)(ランゲルハンス細胞のマーカー)、またはDC−LAMP(DC活性マーカー)のどちらかで一緒に二重免疫組織学的に染色した。健康な皮膚では、またはアトピー性皮膚炎の病変のない皮膚では、多くのランゲリン(langerin)陽性ランゲルハンス細胞が表皮内のみで見いだされるが、真皮では見つからず、DC−LAMPDCは、表皮または真皮のどちらにおいても見つからなかった。アトピー性皮膚炎におけるhTSLP/IL−50の強い発現は、表皮中のランゲリン(langerin)陽性ランゲルハンス細胞の消失および同時に起こる真皮中のDC−LAMPDCの出現と関係していた。真皮中の多量のDC−LAMPDCは、ランゲリン(langerin)を発現する。このことは表皮のランゲルハンス細胞が活性化され、真皮に移動することを示している。従って、アトピー性皮膚炎のケラチノサイトによるhTSLP/IL−50の発現は、ランゲルハンス細胞の活性化に直接寄与し、このランゲルハンス細胞は、流出するリンパ節に移動し、アレルゲン特異的なTH2応答を刺激する。
【0089】
(VII.ヒト細胞でのTSLP/IL−50の発現)
TSLP/IL−50の発現を、前述のようにして、Taqman(登録商標)により決定した。示した細胞におけるTSLP/IL−50の相対的な発現は:培養した肺線維芽細胞(++++);培養した気管支平滑筋(++++);前立腺間質細胞(++);乳房間質細胞(+);乳房上皮細胞(+);肝臓線維芽細胞(+);皮膚ケラチノサイト(+)であった。
【0090】
TSLP/IL−50の発現もまた、組織学的方法で決定した。胸腺の上皮細胞を、Soumelisら(前出)の記載のように、タグ化抗TSLP/IL−50抗体で染色した。TSLP/IL−50は、健康な皮膚およびアトピー性皮膚炎の病変のない皮膚の切片からのケラチノサイトでは検出しなかった一方、急性および慢性のアトピー性皮膚炎のケラチノサイトでは高いレベルで発現していた。健康な皮膚では、汗腺、エクリン腺、および毛包では発現が見られなかった。TSLP/IL−50の発現はまた、組織学的に決定されるように、胸腺の上皮細胞(ハッサル小体)で発現していた。
【0091】
(VIII.同種異系および自己のhTSLP/IL−50処理したDCは、両方とも非刺激CD4+T細胞の増殖を誘導する)
非刺激CD4+T細胞を、5つの異なる試験条件下で準備した調製した同種異系の樹状突起細胞にさらし、その後、T細胞の増殖を評価した。その5つの条件を、表2に示す。増殖を、3H−チミジン取り込みアッセイにより決定した。同種異系の反応では、TSLP/IL−50(配列番号1)で処理したDCは、T細胞の増殖の最も大きな増大を誘導した一方で、他の薬剤で処理したDCは、T細胞の増殖がより少ないまたは非常に少なかった。
【0092】
自己の細胞の相互作用(そこでは、CD11c+樹状突起細胞およびCD4+T細胞は、同じヒトドナー由来である)を、試験した(表2)。再度、TSLP/IL−50(配列番号1)で処理したDCの使用により、T細胞増殖において最も大きな増大を生じた一方で、DCの他の調製物は、T細胞増殖のレベルがより少なかった。
【0093】
【表2】


(IX.TSLP/IL−50(配列番号1)処理したDCは、非刺激CD4+T細胞の増殖を刺激する)
TSLP/IL−50により活性化されたDCを、自己の非刺激CD4T細胞と混合し、その後、拡大し、増殖しているT細胞のプールにおけるT細胞レセプターの亜種のプロフィールを評価した。アッセイに用いたT細胞レセプターの亜種は、TCRVβ1、TCRVβ2、TCRVβ3、TCRVβ5、TCRVβ8、TCRVβ14、TCRVβ17、TCRVβ22およびTCRVβ23であった。3つのタイプのコントロールのインキュベーションを用いた:(1)未処理T細胞;(2)IL−7で処理したT細胞;および(3)StreptococcusのエンドトキシンBで活性化されたDCで処理したT細胞。T細胞の未処理のコントロール集団を、以下に示されるT細胞レセプターのサブセットを含んでいた:TCRVβ1(約3%)、TCRVβ2(約8%)、TCRVβ3(約6%)、TCRVβ5(約2%)、TCRVβ8(約4%)、TCRVβ14(約2.5%)、TCRVβ17(約7%)、TCRVβ22(約2.5%)、TCRVβ23(約0.2%)。非刺激CD4+T細胞を、TSLP/IL−50(配列番号1)により活性化されたDC(実験的)で処理し、その後、T細胞を増殖させるためにインキュベーションしたところ、培養していないT細胞で見出されたレセプターと非常に類似したT細胞レセプター亜種のプロフィールを示した。培養していないT細胞およびTSLP/IL−50で活性化されたDCで処理したT細胞で見出された類似のプロフィールは、T細胞の多クローン性の増殖が起こしたことを示した。IL−7とのコントロール培養(DCなし)もまた、T細胞の多クローン性の増殖を生じた一方で、エンドトキシン処理DCとのコントロール培養は、TCRVβ3およぼTCRVβ17を持つT細胞の選択的な増殖を生じた。
【0094】
(X.TSLP/IL−50が介在するT細胞の増殖は長期間継続する)
TSLP/IL−50処理したDCを、自己の非刺激CD4T細胞とともにインキュベートした後、t=0、6、9、12、15、18、21日で細胞数を評価した。TSLP/IL−50(配列番号1)により活性化されたDCにさらすことで、T細胞数は15日目で10倍に増加し、その後の時点では細胞数は減少した。コントロールインキュベーションは、IL−7に活性化されたDC、LPSに活性化されたDC、polyI:Cに活性化されたDC、CD40Lに活性化されたDCおよび培地処理したDCに曝した非刺激CD4+T細胞を用いた。本質的に全てのコントロール培養は、T細胞の数を少ししか増加しない、または全く増加しなかったが、LPSで活性化したDCでは、6日目に、T細胞の数が3倍に増加したことが見出された。
【0095】
(XI.T細胞の表現形の変化)
TSLP/IL−50(配列番号1)により活性化されたDCを処理した前後で、非刺激CD4+T細胞の表現型を決定した。表現型は、T細胞上の次のマーカー:CD45RA;CD45RO;CD25;CD62L;およびCCR7を測定することにより評価した。
【0096】
非刺激T細胞は、表現型CD45RA、CD45RO、CD25−、CD62LおよびCCR7を有し;中心記憶T細胞は、表現型CD45RA−、CD45RO+、CD25+/−、CD62LおよびCCR7を有し;エフェクター記憶T細胞は、表現型CD45RA−、CD45RO+、CD25+/−、CD62L+/−およびCCR7を有する。TSLP/IL−50(配列番号1)処理したDCにより活性化されたCD4T細胞は、中心記憶T細胞の表現型を持っていた。
【0097】
コントロールインキュベーションにより、非刺激CD4T細胞をIL−7で処理(DCなし)すると、表現型は変化を生じないことが明らかになった。非刺激CD4T細胞をDC+IL−2で処理すると、表現型CD45RA、CD45RO、CD25、CD62LおよびCCR7+/−のT細胞が見られた。
【0098】
非刺激CD4T細胞を、自己のTSLP/IL−50(配列番号1)で活性化されたDCにさらすと、T細胞が拡大した。拡大したT細胞の数を、次のサイトカイン:IL−2、IFN−γ、IL−10、IL−4、IL−5およびIL−13の分泌について試験した。その結果、IL−2は多量に分泌され、IL−5およびIL−13は少量分泌され、IFN−γ、IL−10およびIL−4はほとんど、または全く分泌されなかった。拡大したCD4+T細胞は、即時のエフェクターの機能を欠いていた。
【0099】
非刺激CD4T細胞を、同種異系のTSLP/IL−50(配列番号1)で活性化されたDCにさらした後、T細胞の拡大および上記サイトカインの分泌を評価した。その結果、IL−2、IL−4、IL−5およびIL−13は多量に分泌され、IFN−γは、少量分泌された。このことは同種異系の拡大したCD4T細胞が、Th2タイプのサイトカインプロフィールを有していたことを示した。上で同定したサイトカインの発現を、自己もしくは同種異系の反応、またはTSLP/IL−50に活性化されたAPCが関与する病理学的状態の検出に用い得る。
【0100】
同種異系の反応ではなく、自己の反応により拡大したT細胞の使用は、即時のエフェクター応答(例えば、炎症反応)が要求されない治療には好ましい。
【0101】
自己のTSLP/IL−50(配列番号1)で活性化されたDCにさらした非刺激CD4T細胞を、抗IL−4+IL−12(TH1プロフィールを促進することが公知の薬剤)と一緒に、抗CD3+抗CD28で処理する。その結果は、多量のIFN−γを分泌するが、IL−2、IL−4、IL−10およびIL−13は低レベルであるT細胞、すなわちTH1プロフィールを有するエフェクター細胞である。
【0102】
従って、自己のTSLP/IL−50により活性化されたDCにさらした非刺激CD4T細胞は、即時の効果機能を欠如しうるが、二次的な刺激によりエフェクター細胞へ分化するように刺激され得る。これらの結果は、自己のTSLP/IL−50に活性化されたDCが、例えば、病原体に応答して、インビボの抗原依存的な応答を高め得ることを示す。
【0103】
非刺激CD4T細胞を、7日間、自己のTSLP/IL−50で活性化されたDCで処理した後、細胞を洗浄した。その後、TCRシグナル伝達を引き起こすために、細胞を、一定レベルの抗CD28とともに抗CD3で力価測定した。コントロールとして、非刺激CD4T細胞もまた、一定レベルの抗CD28とともに、抗CD3で力価測定した。別個のインキュベーション混合物に、0.0001、0.0003、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1.0、3.0または10.0μg/mlの抗CD3を含める一方で、全てのインキュベーションに、1.0μg/mlの一定レベルで、抗CD28濃度を含めた。T細胞の増殖を、3H−チミジンの取り込みにより、測定した。この結果により、非刺激CD4T細胞は、約3.0μg/mlの濃度のCD28で増殖するように、最大で刺激されが、低レベルの抗CD−28では、ほとんどまたは全く刺激されなかったことを示した。対照的に、自己のTSLP/IL−50で活性化されたDCで処理した非刺激CD4T細胞は、はるかに低レベルの抗CD28で(すなわち約0.1μg/mlで)増殖するように、最大に刺激された。従って、自己のTSLP/IL−50で活性化されたDCで拡大したCD4T細胞は、活性化の閾値が減少した。
【0104】
(XII.TSLP/IL−50(配列番号1)で活性化されたDCは、様々なCD4細胞の増殖を誘導する)
TSLP/IL−50(配列番号1)で活性化されたDCを、自己の:(1)非刺激CD4T細胞;(2)中心記憶4T細胞;または(3)自己のエフェクター記憶CD4T細胞とともにインキュベートした;T細胞の増殖を3Hチミジンの取り込みにより評価した。1:1;1:2;1:4;1:8;1:16;1:32;1:64の比のDC/T細胞で、インキュベーションを別々に行った。コントロールのインキュベーションに、T細胞のみおよび培地のみを含めた。増殖の評価により、T細胞の3つの集団のそれぞれの最大増殖は、1:1の比のDC/T細胞で起こることがわかった。非刺激T細胞の増殖は、一般に、中心記憶T細胞の増殖より1.2〜1.8倍大きい一方で、中心記憶T細胞の増殖は、一般に、エフェクターT細胞の増殖より約2倍大きかった。
【0105】
3つのタイプのT細胞のそれぞれを用いてインキュベートしたコントロールは、T細胞増殖の誘導を、ほとんどまたは全く生じなかった。
【0106】
(XIII.乾癬およびTSLP/IL−50の発現)
異なる10人の被験体それぞれからの、健常なヒトの皮膚および乾癬性の皮膚のサンプルを、組織学的方法により分析した。染色を、抗TSLP/IL−50抗体またはコントロールIgG2a抗体(カタログNo.M68178;Pharmingen Inc.,San Diego、CA)(両方ともペルオキシダーゼAEC(Vector Laboratories、Inc.,Burlingame、CA)でタグ化した)で行った。2つの異なるクローンに由来する抗TSLP/IL−50抗体を用いた。ここで、両方の供給源の抗TSLP/IL−50からの結果は、互いに一致した。染色を、ケラチノサイト、毛包、およびエクリン腺で評価した。10人全ての正常な被験体のケラチノサイトの染色は、陰性であった。10人の正常被験体の毛包およびエクリン腺の染色は、陰性であるかまたは低い範囲であった。10人の乾癬被験体のケラチノサイトの染色は高く、毛包およびエクリン腺の染色は、比較的低かった。結果により、TSLP/IL−50の発現と乾癬との間の有意な関係が示された。
【0107】
(配列の識別)
配列番号1はヒト胸腺の間質細胞である(hTSLP/IL−50)。
配列番号2はIL−7R−α鎖である。
配列番号3はTSLP受容体(TSLPR)である。
【0108】
本明細書中の全ての引用は、各個々の刊行物、特許出願、または特許が、具体的かつ個々に、全ての図および表を含め、参考として援用されることが示されるのと同程度に、本明細書中に参考として援用される。
【0109】
本発明の多くの改変およびバリエーションは、当業者に明らかなように、本発明の目的、趣旨および発明の範囲を保護するように、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスの工程に適合するように行われ得る。全てのそのような改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に添付した請求の範囲の範囲内にあることが意図される。本明細書中に記載される特定の実施形態は、例示によってのみ提供され、本発明は、添付の請求の範囲によって権利が与えられる等価物の完全な範囲とともに、請求の範囲の用語によって限定されるべきである;および本発明は、例示によって本明細書中に示された特定の実施形態に限定されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2012−184259(P2012−184259A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138672(P2012−138672)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【分割の表示】特願2009−60287(P2009−60287)の分割
【原出願日】平成15年1月30日(2003.1.30)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】