哺乳動物の身体との制御された熱伝達
哺乳動物の身体部分へと、および/または、哺乳動物の身体部分から熱を伝達するための方法、コンピュータプログラミング、および装置を提供する。1つのアプローチは、身体部分において血管収縮または血管拡張の状態を直接判定する段階、血管収縮と判定されたときにその身体部分に熱を供給する段階、および、血管拡張と判定されたときにその身体部分から熱を除去する段階を含む。身体部分は、好ましくは、特定の熱交換血管系を含む。別のアプローチにおいては、血管拡張状態から血管収縮状態への身体部分の移行が判定され、次に、その身体部分が血管拡張状態に能動的に維持され、その間、その身体部分から熱が除去される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の分野は、概して哺乳動物の体温調節状態に関し、より具体的には、哺乳動物の身体との熱伝達の制御および管理に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
普通、哺乳動物の体温は体内の自律調節系によって制御されており、本明細書においてはこの系を体温調節系とよぶ。この系において重要な効果器の1つは、多毛でない皮膚表面(すなわち、手掌、足底、頬/鼻の部位)に存在する、身体の特定の皮膚領域への血流によって制御されている。これら領域の皮下には静脈叢とよばれる独特の解剖学的血管構造が存在する。これらの構造は、皮膚表面付近に大量の血液を送達する役割を果たす。この血液送達により、内臓を機能可能な温度域に維持するための大量の熱伝達が可能となる。血液は、静脈叢の動脈入力側をゲーティングまたは制御する動静脈吻合(AVA)により、静脈叢「ラジエータ」構造の通過を許される。このように、AVAは熱伝達系の必須部分として機能し、体温調節を可能にする。AVAと静脈叢はともに身体の適切な熱交換血管系を構成する。
【0003】
普通、体温および/または環境温度が高いときは、特定の血管の拡張が前述の熱交換表面への血流増加を促し、これにより、環境への熱損失が増加し身体深部の核心体温が低下する。環境温度および/または体温が低下すると、血管収縮によりこれら表面への血流が減少し、環境への熱損失が最小限となる。
【0004】
しかし、核心体温を低下および/または上昇させるため、皮膚表面を横切る熱伝達を操作することが望ましい状況も存在する。そうした核心体温の低下または上昇は、治療的処置レジメン、および、運動または産業上の能力を向上させる要素としてなど、多数の用途に有用であると考えられる。
【0005】
本発明はこれらの目標をより良好に実現することを目的としている。本発明はこれを種々の方法で行うが、(意図された手順の実施中に)意図しない血管収縮が熱伝達表面の領域内の血流に悪影響を及ぼして十分な熱伝達が阻害されることがないよう、自然な血管収縮傾向を特に考慮に入れる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
哺乳動物の体温調節状態を操作および制御するための方法および装置を提供する。そのような方法を実施することおよび対象のハードウェアを稼動することを目的としたソフトウェアまたはプログラミングも本発明の一部をなす。
【0007】
本発明の1つの局面において、方法は、哺乳動物の身体部分へと、および/または、哺乳動物の身体部分から熱を伝達する段階を含む。本方法は、身体の部分において血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階、血管収縮と判定されたときにその身体の部分に熱を供給する段階、および、血管拡張と判定されたときにその身体の部分から熱を除去する段階を含む。血管収縮または血管拡張を判定する段階は、関心対象部位(すなわち、熱伝達を生じさせるべき場所)において、血管収縮または血管拡張の状態と関連する身体の特性(例えば、その身体部分への血流量)を検出する段階を含む。
【0008】
本発明の別の局面においては、血管拡張状態から血管収縮状態への身体部分の移行が惹起され、次に、その身体部分が血管拡張状態に維持され、その間、その身体部分から熱が除去される。例示的な方法は、身体部分から熱を除去することにより、血管拡張状態から血管収縮状態へのその身体部分の移行を惹起する段階を含む。次に、血管拡張から血管収縮への移行に関連する移行温度の判定が行われる。本方法は次に、その身体部分において血管拡張を再度確立し、移行温度と等しいかまたはそれ以上の温度のその身体部分から熱を除去する。別の実施例においては、最初に身体部分が血管収縮状態にあるならば、血管拡張から血管収縮への移行を惹起する前に、その身体部分に血管拡張が生じるまで熱が供給される。
【0009】
本発明は、添付の図面および特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明を検討することにより、よりよく理解される。
【0010】
詳細な説明
本発明の詳細な説明に入る前に、本発明は本明細書に記載された特定のバリエーションに限定されるわけではなく、無論さまざまに異なり得ることが理解されるべきである。哺乳動物の体温調節状態を操作するための方法および装置を提供する。以下の説明は、いかなる当業者にも本発明を作成および利用することができるよう示されるものである。具体的な手法および用途の説明は実施例としてのみ提供される。本明細書に説明される実施例に対する種々の改変は当業者に容易に理解されるものと思われ、本明細書に規定される一般的な原理は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の実施例および用途に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に説明および図示される実施例に限定されると意図されるものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と矛盾しない、最も広い範囲に一致する。
【0011】
本明細書に列挙する方法は、列挙された各事象を論理的に可能な任意の順序で実施してもよく、明示または暗示されている各事象を列挙順に実施してもよい。さらに、値の範囲が示される場合、その範囲の上限と下限との間の各中間値、および、その提示された範囲内の他の任意の提示された値または中間値は、本発明に含まれるものと理解される。さらに、本明細書に記載された本発明の各バリエーションの、任意の選択的な特徴が、本明細書に記載の1つまたは複数の任意の特徴と独立にまたはこれとの組合せにより、記載および主張され得ることも予期される。
【0012】
本明細書で言及する既存のすべての対象事項(例えば、刊行物、特許、特許出願、およびハードウェア)は、その対象事項が本発明の対象事項と対立し得る場合(その場合は本明細書の提示内容が優先される)を除いて、参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。参照される項目は、本発明の提出日より前に開示されているという理由のみにより提供される。本明細書に記載の事項のいずれも、先行発明によるそのような事項に先行する権利を本発明が有さないことの承認として解釈されるべきでない。
【0013】
単数形の項目への参照は、その項目が複数存在する可能性も含む。より具体的には、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる名詞の単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(said)」および「その(the)」は、複数形でないことを文脈が明確に示しているのでない限り、複数形への参照も含む。さらに注意点として、特許請求の範囲は、任意の選択的な要素を除外するように起草されている可能性がある。したがって本言明は、特許請求の範囲の要素の詳説に関連して「もっぱら(solely)」および「〜のみ/〜だけ(only)」などの排他的な用語を用いること、または、「否定的な(negative)」限定を用いることの前提的根拠として作用することを目的としている。本明細書中で特に断りがない限り、本明細書中の技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を持つ。
【0014】
方法
熱交換血管系を含む哺乳動物の皮膚領域から外部環境への熱伝達は、一般的に、これら身体部分の領域の環境温度が皮膚の温度より低いときに生じる。この温度差は、哺乳動物身体の循環血液から外部環境へと熱エネルギーを動かす温度勾配を生じさせ、これにより、循環血液を介して哺乳動物の身体核心部を冷却する。しかし、これら身体部分の皮膚表面を横切る温度勾配が大きすぎる場合は、身体の自然な体温調節系がこれら領域の血管を収縮させ、その結果、これら領域への血流および血液循環が減少する。血流および血液循環の減少は、AVAを含む身体部分を介した、身体核心部から外部環境への熱伝達を減少させる。
【0015】
熱交換血管系を含む身体部分と接触している環境温度が徐々に低下し、しかし血管収縮が生じる温度より高い場合、身体からの熱伝達は、血管収縮温度になるまで増加する。血管収縮温度に達すると、血管が収縮し、その身体部分への血流が減少する。一般的に、身体からの熱伝達は、温度が低下し例えば血管収縮を惹起すると大幅且つ急激に減少する。したがって、温度勾配に対する熱伝達または血流をプロットすると、階段形状の関数が得られる。
【0016】
逆向きに、熱交換血管系を含む身体部分と接触している環境温度が徐々に上昇する場合は、血管収縮温度より高い温度になると身体のその領域の血流および身体からの熱伝達が大幅且つ急激に増加する。しかし、重要な点として、環境温度が低下して血管収縮を惹起し、次に上昇して血管拡張を惹起する場合、血管拡張への移行は血管収縮への移行より高い温度で起こるのが一般的であり、血管収縮と血管拡張との間の移行の可逆性はまったく同じというわけではない。したがって、血管収縮から血管拡張への移行が生じる温度域と、血管拡張から血管収縮への移行が生じる温度域とは、初期状態によって異なり、この効果を一般的に「ヒステリシス」という。
【0017】
熱交換血管系を含む身体部分と環境との間で比較的大量の熱伝達を起こすには、身体部分と接触する環境の温度が、身体部分の血管収縮温度よりわずかに高い温度または温度域であること、すなわち、血管拡張から血管収縮への移行に関連する温度であることが望ましい。これは、身体部分と環境との間の温度勾配が最も大きくなり、且つ血管収縮が存在しない温度であり、したがって身体核心部からの熱伝達を大きくすることができる。このような教示は、米国特許出願第09/839,590号「Methods and Devices for Extracting Thermal Energy from the Body Core of a Mammal」に示されている。しかし同出願には、特定の温度の熱媒を適用すること以外に、所望の結果を実現するための手段が教示されていない。
【0018】
対照的に、本発明の1つの方法においては、制御された温度操作を実現するため、哺乳動物の身体の熱伝達表面と接触する環境の最適な熱伝達温度または温度域を判定する目的で、その身体部分の血管収縮が生じる温度が実際に判定される。血管収縮温度は、環境温度を、血管収縮温度より高い温度から血管収縮温度より低い温度まで下げることによって判定できる。血管収縮温度は、例えば、環境温度を低下させながら皮膚表面またはその付近で直接的または間接的に血管収縮を検出し、血管収縮がどの温度(または温度域)で生じるかを記録することによって判定してもよい。血管拡張温度は一般的に血管収縮温度より高いため、はじめに環境温度が血管収縮温度より低い場合は、ヒステリシス効果を考慮に入れるため、環境温度を血管拡張温度より高い温度まで上昇させてから血管収縮温度より低い温度まで低下させることが望ましい。最適なまたは最大の熱伝達が生じる環境温度または温度域は、血管収縮温度よりわずかに高い温度域、または、血管収縮への移行が始まる温度になると思われる。
【0019】
最適熱伝達温度または温度域が判定されたら、熱交換血管系を含む身体部分と接触している環境温度を最適熱伝達温度またはその付近に設定して、身体から環境への熱伝達を増加させることができ、これにより、最適温度設定を予想したものの反映にすぎない、より高いまたは低い温度と比較して、より迅速に身体核心部を冷却することができる。
【0020】
哺乳動物の身体核心部を冷却するため最適熱伝達温度を判定および利用するための方法および装置を、以下に詳しく説明する。本方法においては、熱交換血管系を含む身体部分の領域における血管収縮の有無に少なくとも部分的に基づいて、最適熱伝達温度が判定される。次に、その身体部分を最適熱伝達温度の環境に置くことにより、哺乳動物の核心体温を低下させてもよい。さらに、身体核心部の冷却速度を増大させるため、さまざまな身体部分を加温するかまたは他の手段により、血管収縮が生じる温度および最適熱伝達温度を低下させてもよい。例えば、静脈叢を拡張させて熱伝達に利用できる血液量を増大させるため、熱交換血管系を含む身体部分の領域周囲に陰圧を用いることにより、身体核心部の冷却速度を増大させてもよい。
【0021】
身体部分の血管収縮または血管拡張に関連する特性を判定するには、種々の方法および装置が利用できる。身体部分が血管収縮状態にあるか血管拡張状態にあるかを判定するための1つの例示的な方法においては、特定の身体部分の血流を測定することによって身体部分をモニターする。通常、体温および/または環境温度が高い場合は、特定の血管の拡張がこれら表面への血流増加に有利に働き、体温および/または環境温度が低下すると、血管収縮によってこれら表面への血流が減少し、環境への熱損失が最少になる。したがって、身体部分の血流量を測定すると、身体部分が血管収縮状態にあるか血管拡張状態にあるかの評価基準が得られる。
【0022】
血管収縮または血管拡張を測定するための1つの例示的な方法において、身体部分の血流は、レーザードップラー血流計測法によってモニターされる。身体部分の血流をレーザードップラー測定することにより、血流量の変化が測定されるため、身体部分が血管収縮状態にあるか血管拡張状態にあるかの評価基準が得られる。1つの実施例においては、熱交換装置に組み込まれ、且つ、手掌、手指、または他の身体部分に向けられたレーザードップラー画像装置を用いて、身体部分の血流量の変化を測定する。
【0023】
または、身体部分の体積を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。血管拡張時は身体部分の中の血液量が増加するため、血管拡張に伴って、身体部分の体積が血管収縮時に観察されるより大きくなることが一般的に理解されている。したがって、身体部分の体積の物理的変化を、血管拡張または血管収縮の状態と相関させることができる。身体部分の体積を測定するための1つの実施例として考えられるのは、身体部分を流動媒体に浸漬することである。身体部分の体積の変化は、身体部分により押しのけられる流動媒体の体積の変化によって記録される。または、インピーダンスタイプのセンサによって身体部分の体積の変化を測定してもよい。
【0024】
または、身体部分の熱伝達を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。例えば、手指とそれに対応する前腕との間などで温度差を測定したときの温度勾配の有無を測定することによって、身体部分の熱伝達を検査する。温度勾配がないこと(手指への熱伝達があることを示す)は手指の血管拡張状態と相関し、一方、前腕の温度が手指より高いこと(手指への熱伝達がないことを示す)は血管収縮状態と相関する。
【0025】
または、皮膚表面の熱流束を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。例えば、皮膚表面とその皮膚の表面に接触する冷却物体との間に温度感知装置を置くことによって、皮膚表面の熱流束を検査する。この感知装置の温度が血管収縮または血管拡張の指標となる。温度が冷却物体より高い場合は血管拡張の指標となり、一方、温度が冷却物体に近い場合は、皮膚表面の温度がより低いため、血管収縮の指標となる。
【0026】
または、身体部分の光吸収を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。例えば、プレチスモグラフィの手法を用いることによって、または、赤外線パルスオキシメーターを用いて、光吸収を検出することができる。
【0027】
または、哺乳動物の体温を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。任意の便利な温度感知手段を用いてよく、好適な手段としては、熱電対、熱抵抗器、マイクロ波温度センサなどがあるが、それに限定されるわけではない。温度感知装置の位置および性質は、一般的に、検査する身体部分によって異なる。
【0028】
温度測定は、哺乳動物の核心体温のモニタリングを含んでいてもよい。身体核心部とは、哺乳動物の表面に対して、哺乳動物の身体内部の領域または部分を意味する。対象となる具体的な身体核心部領域は、頭部の身体核心部領域(例えば脳深部領域)、および、哺乳動物の体幹の身体核心部領域(例えば哺乳動物の胸部/腹部領域)である。頭部の身体核心部領域の温度を検出するためには、対象となるセンサ位置は以下を含む:耳道(鼓膜)、口腔、および、マイクロ波検出の場合には、下層の温度を測定するための、頭部表面の任意の位置。胸部/腹部の核心体温を検出するためには、センサ位置は以下を含む:食道、直腸、膀胱、膣、および、マイクロ波検出の場合には、下層の温度を測定するための、身体表面の任意の位置。
【0029】
または、哺乳動物の皮膚温度を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。哺乳動物の皮膚温度を測定するには、手を保持して温かさまたは冷たさを検査するという単純で経験的な看護法を用いてもよい。この皮膚温度測定方法の実施において、手が温かいことは一般的に血管拡張と関連性があり、手が冷たいことは血管収縮と関連性がある。皮膚の温度はまた、熱電対、熱抵抗器、マイクロ波温度センサ、温度感受性液晶、および他の温度測定装置などのセンサを用いて検出してもよい。皮膚表面への温度センサの配置は、熱伝達部位もしくは他の位置であってもよく、または、位置の組合せであってもよい。1つの実施例において、皮膚表面温度の変化、または、熱交換血管構造の上の局所皮膚表面領域を横切る、身体からの熱流の変化を測定することによって、血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。
【0030】
温度観察により血管収縮または血管拡張をモニターするこれらの手段については、熱伝達の位置で温度を検出するだけで局所血管収縮を直接測定できるという点に注意されたい。モニタリングをどのように実施するかにかかわらず(例えば、前述のアプローチのうち任意の2つ以上の組合せを用いた場合でも)、哺乳動物の身体部分の血管収縮または血管拡張を制御することにより、血管収縮温度および熱伝達温度を低下させて、熱交換血管系を含む身体の領域と環境との間の温度勾配を増大させることができ、したがって、熱伝達を増大させ且つ身体核心部の冷却を促進することができる。
【0031】
本発明の1つの局面において、血管収縮または血管拡張は、体温調節感覚操作または「脳のサーモスタットをだますこと」によって制御される。そのような操作の特定の局面は、Grahnらの米国特許第6,602,277号「Methods and Devices for Manipulating the Themoregulatory Status of a Mammal」に提供されており、他の局面は、当業者に理解されるであろうとおり、本明細書において改良される。そのようなすべての局面は、本発明の各局面により提供される改善点に基づいて利用できる可能性がある。
【0032】
いずれの場合も、哺乳動物の脳、特に視索前視床下部前部(POAH)が哺乳動物の身体部分の温度調節に重要な役割を果たしており、本質的に「サーモスタット」の役割を果たしていることが、一般的に了解されている。例示的方法の実施においては、脳への血流の温度を操作することまたは身体(頭、胴、顔、および首を含む)の皮膚温度を変化させることによって、身体部分からの熱伝達が実現され、その目的はPOAHを操作する(すなわち「だます」)ことであり、これは、身体部分の血管収縮または血管拡張を惹起するようPOAHを誘導することによって行われ、その結果、その部分からの制御された熱伝達を得ることが可能となる。さらに、身体部分に、湿度刺激などの他の刺激を、単独でまたは皮膚温度の変化とともに印加してもよいことが理解されている。
【0033】
脳への血流の温度の操作は、例えば、首または顔の周囲の温度ラップ(thermal wrap)によって実現してもよい。そのようなラップにより誘導される熱および/または湿度は、血管拡張が惹起され且つ腕または脚などの身体部分からの熱伝達が生じるよう、POAHに影響を与える1つの方法である。または、そのようなラップを介して、湿度を、単独でまたは皮膚温度の変化とともに印加してもよい
【0034】
または、この方法の実施において、脳への血流の温度の操作は、身体の各部分を覆い、且つ、加温および冷却用の構成部品ならびに/または湿度制御用の構成部品を有する、スーツを使用することによって実現してもよい。例示的な感覚操作装置の詳細は後述する(例えば図4a〜4hを参照されたい)。
【0035】
または、表面処置剤の適用によって血管収縮または血管拡張を制御してもよい。例えば、カプサイシン(トウガラシから得られる)、ウルシ、BEN-GAY、種々のリニメント剤、局所用刺激剤、または他の好適な化学的および/もしくは生物学的物質を局所塗布することによって、身体部分に血管収縮を誘発してもよい。
【0036】
または、あらかじめ選択された1つまたは複数の視覚刺激を提供することによって血管収縮または血管拡張を制御してもよい。この方法の実施において、例えば、哺乳動物に視覚刺激を与えて「戦闘または逃亡」反応を惹起することにより、血管収縮を誘発してもよい。
【0037】
または、血管収縮または血管拡張を誘発する薬剤を送達することによって血管収縮または血管拡張を制御してもよい。例えば、注射、吸入、局所投与、経口投与、鼻腔を介した経路などによって薬剤を送達してもよい。
【0038】
別の局面において、身体部分の血管収縮温度を低下させることおよび/または血管拡張を増大させることを目的に身体部分に陰圧条件を適用することによって、身体部分からの熱伝達を促進してもよい。例示的方法の実施において、陰圧条件は、任意の便利なプロトコルを用いて提供してもよい。多くの態様においては、密封式封入容器の中に哺乳動物の身体部分を封入し、次に、封入容器内の圧力を低下させて、標的とする熱交換表面を含む所望の陰圧を提供することによって、陰圧条件が提供される。本方法およびシステムの多くの実施例において、密封される身体部分は、腕もしくは脚、または、少なくともその一部(例えば手もしくは足)を含む。封入容器の性質は、封入対象となる付属器の性質によって異なると考えられ、代表的な封入容器としては、手袋、靴/ブーツ、またはスリーブなどがある(例えば図2および図3を参照されたい)。
【0039】
陰圧には、本方法が適用される特定の条件下の周囲圧力(例えば海水面で1 ATM)より圧力が低い条件が含まれる。陰圧条件下における周囲圧力からの圧力減少の程度は、1つの実施例において少なくとも約20 mmHg、好ましくは少なくとも30 mmHg、より好ましくは少なくとも約35 mmHgであり、減少の程度は85 mmHgまたはそれ以上であってもよいが、好ましくは約60 mmHgを上回らず、より好ましくは約50 mmHgを上回らない。本方法を海水面またはその付近で実施する場合、陰圧条件下の圧力は一般的に約740〜675 mmHgであってもよく、好ましくは約730〜700 mmHg、より好ましくは約725〜710 mmHgである。
【0040】
例示的方法の実施において、対象物の皮膚と接触している間の陰圧条件は、静的/一定であってもよく、または変動してもよい。したがって、特定の実施例において、表面と低温の媒体とが接触している間、陰圧を一定値に維持してもよい。また別の実施例においては、接触中に陰圧値を変動させる(例えば振動させる)。陰圧を変動または振動させる場合、与えられた期間内の圧力変化は異なっていてもよく、その範囲は約85〜40 mmHgであってもよく、好ましくは約40〜0 mmHgであり、振動の周期の範囲は約.25秒〜10分であってもよく、好ましくは約1秒〜10秒である。
【0041】
好適な真空/陰圧アプローチに関するさらなる説明は、前述の米国特許第6,602,277号の他、Grahnの米国特許第5,683,438号、ならびに、GrahnらのPCT特許出願第PCT/US02/09772号、米国特許出願第09/839,590号、および同第09/877,407号に記載されており、これらのすべては参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。本発明の実施をもたらすための他の任意の詳細事項は、これら4つの情報源のうち1つまたは複数から導出してもよく、または、当業者の才能を適用することによって提供してもよい。
【0042】
態様
図1は、本明細書に説明する方法のための例示的なシステム構成の図である。この例示的なシステムは、システムコントローラ4、圧力源5、熱交換エンジン6、体温調節感覚操作装置のコントローラ7、感覚操作装置8、コンダクタ1を含む手の封入容器2および12、足の封入容器13、配管接続および/または電気接続3、インターフェース特異的センサ10、ならびに体温センサ11を含んでいてもよい。
【0043】
システムコントローラ4は、本明細書記載のさまざまな方法に従って哺乳動物9の身体の少なくとも一部からの制御された熱伝達を実現するため、さまざまなシステム構成要素に信号を送受信する。システムコントローラ4は、さまざまな加温および冷却用のプロトコルおよびスケジュールのためのアルゴリズムまたはプログラム論理を含む、好適にプログラムされたマイクロプロセッサなどを有するユニットを含んでいてもよい。そのようなアルゴリズムまたはプログラム論理の詳細は後述する。アルゴリズムは、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組合せにより実行してもよい。プログラミングは、コンピュータ読み出し可能な媒体(例えば、コンピュータにより直接読み出しおよびアクセスできる任意の媒体)に記録されていてもよい。そのような媒体としては、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、および磁気テープなどの磁気記憶媒体;CD-ROMなどの光学記憶媒体;RAM、ROM、またはEPROMなどの電気記憶媒体;ならびに、磁気/光学記憶媒体などこれらカテゴリーのハイブリッドなどがあるが、それに限定されるわけではない。本方法に従って作動するよう(完全にまたは部分的に)プログラミングされたそのような任意の媒体(または他の媒体)も、本発明の1つの局面を構成する。
【0044】
システムコントローラ4は、密封式封入容器2の中に位置するコンダクタ1と連絡する熱交換媒体(図には示していない)を加温または冷却できる熱交換エンジン6と連絡する。提供される熱交換媒体は、哺乳動物9の少なくとも一部およびコンダクタ1の少なくとも一部と熱的に連絡していてもよい。特定の実施例において、熱交換媒体は水および油などの流体で構成される。他の実施例において、熱交換媒体はガスまたは空気を含んでいてもよい。さらなる実施例において、熱交換媒体は、固体状態の加温または電気的な直接加温を含んでいてもよい。加えて、システムコントローラは、熱交換媒体の供給分を収容するためのリザーバ(図には示していない)と連絡する。
【0045】
システムコントローラ4はさらに、密封式封入容器2の中に陰圧条件を生成できる圧力源5と連絡する。熱交換エンジン6および圧力源5は、熱交換媒体と圧力とを別々にまたは組合せて伝導できる配管接続および/または電気接続3を介して、それぞれコンダクタ1および密封式封入容器2と連絡する。コンダクタ1は、哺乳動物9の身体部分を加温または冷却するため、哺乳動物9の身体部分と熱交換媒体との間のインターフェースを提供する。コンダクタ1は、熱を伝達するのに好適な材料を任意の数だけ含んでいてよい。そのような材料の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、またはチタンなどがあるが、それに限定されるわけではない。1つの実施例において、コンダクタ1は、既に詳述したように身体部分がその中で陰圧条件下に維持される、密封式封入容器2の中に配置される。
【0046】
コンダクタ1と密封式封入容器2とは、ともに、手インターフェース12または足インターフェース13のいずれかを構成する。本システムの1つの実施例において、手インターフェース12は哺乳動物9の腕または手を封入する。本システムの別の実施例において、足インターフェース13は哺乳動物9の脚または足を封入する。本システムのさらに別の実施例において、封入される身体部分は、哺乳動物9の両腕もしくは両手、両脚もしくは両足、または前述の身体部分の任意の組合せを含む。手インターフェース12および足インターフェース13については、詳細を後述し、且つ、それぞれ図2および図3に示す。
【0047】
図1に開示するシステムコントローラ4はさらに体温調節感覚操作装置のコントローラ7と連絡し、体温調節感覚操作装置のコントローラ7はさらに体温調節感覚操作装置8と連絡する。体温調節感覚操作装置8は、脳の(または身体の)サーモスタットの感知機構を操作することにより、例えば哺乳動物9の体温調節反応を制御するための軽度の低体温などを誘発することができる。好適な体温調節感覚操作装置としては、身体部分の以下の組合せ(その一部を図4a〜hに示す)に対して温度刺激および/または湿度刺激を送達するよう設計されたインターフェースなどがあるが、それに限定されるわけではない:全身の皮膚表面(図4a);頭、肩、胸、背、胴、および腕(図4b);頭、肩、胸、背、および腕(図4c);頭、肩、胸、および背(図4d);肩、胸、背、および腕(図4e);肩、胸、背、および胴(図4f);胸 背 胴、および脚(図4g);胴および脚(図4h);頭および肩;頭および首;頭;顔全体;鼻;口;鼻および口;鼻および副鼻腔;ならびに耳。認識されるべき点として、図に示していない他のさまざまな感覚操作装置を前述の方法に基づいて用いてもよい。
【0048】
図1に開示するシステムコントローラ4はさらに、後述し且つ図2に詳しく示すようにコンダクタ1の中にまたはこれと接続して配置された、いくつかの直接的またはインターフェース特異的センサ10のうち任意のものと連絡する。インターフェース特異的センサ10は、システムコントローラ4にフィードバック(例えば、封入された身体部分の血管収縮または血管拡張と関連する特性[血管収縮または血管拡張の指標となる血流の相対的状態など])を提供する。インターフェース特異的センサ10は以下のものを含みうるが、それに限定されるわけではない:レーザードップラー血流感知;生体インピーダンス血流感知;熱流束感知;インターフェース温度感知;皮膚温度感知;圧力感知;身体部分体積感知;エネルギー伝達感知;EKG/ECG;または上記に開示した任意の方法。哺乳動物の身体からの制御された熱伝達を実現するために血管拡張を維持または実現する目的でインターフェース特異的センサ10からのフィードバックを解釈および利用する例示的な方法については後述する。
【0049】
システムコントローラ4はさらに、哺乳動物9の身体上または身体内に適切に配置された、いくつかの全身体温測定センサ11のうち任意のものと接続していてもよい。全身体温センサ11は、哺乳動物9の核心体温に関するフィードバックをシステムコントローラ4に提供する。このフィードバックは、システムコントローラ4が、後述する例示的な方法の選択的な部分を実行するのに望ましい。全身体温センサ11は以下を含み得るが、それに限定されるわけではない:鼓膜温度センサ;食道温度センサ;および上記に開示した方法を非限定的に含む核心体温センサ。
【0050】
図2に、図1のシステム構成とともに使用してもよい例示的な手インターフェース2-8の詳細を示した線図を示す。手インターフェース2-8の目的には、陰圧条件下において、哺乳動物2-9の手とコンダクタ2-1との間に物理的な熱交換表面を提供することが含まれる。手インターフェース2-8は、哺乳動物2-9の手に温度刺激および/または湿度刺激を提供するように設計される。加えて、手インターフェース2-8は、システムコントローラと連絡しているさまざまなセンサを介して血管収縮または血管拡張をモニターおよび/または操作することを可能にする(図1)。手インターフェース2-8は、システムコントローラの誘導のもと、哺乳動物2-9の身体からの制御された熱伝達を促進する。使用してもよい別の例示的な手インターフェースまたはモジュールは米国特許出願第09/878,129号「Methods and Devices for Manipulating Thermoregulatory Status of a Mammal」に説明されている。同特許出願は、本明細書に完全に記述されているが如く、参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。
【0051】
手インターフェース2-8は、密封式封入容器2-2の中に配置され、且つ、哺乳動物2-9の手掌および/または手指とコンダクタ2-1との間の接触を助けるような構成を有する、熱交換インターフェースとして機能するコンダクタ2-1を含む。密封式封入容器は、封入容器2-8内の陰圧条件の維持およびモニタリングを可能にする、密封カフ2-4および圧力センサ2-3を含む。しかし、認識されるべき点として、例示的な手インターフェース2-8は、陰圧を維持できる封入容器を必ずしも含んでいなくてもよい。例えば、手インターフェース2-8は、手が接触するための、封入容器を伴わない熱交換インターフェースまたはコンダクタ2-1のみを含んでいてもよい。
【0052】
手インターフェース2-8は、いくつかの感知構成部品のうち任意のものを収容してもよい。例えば、図2に示すように、熱流束およびインターフェース温度センサ2-10を、哺乳動物2-9の手とコンダクタ2-1との間に配置してもよい。加えて、動物2-9の手の血流を測定するため、レーザードップラー式または光吸収式の血流センサ2-5を、コンダクタ2-1の中または近傍に配置してもよい。加えて、哺乳動物2-9の手とコンダクタ2-1との間の熱エネルギーの伝達を測定するため、熱エネルギー伝達センサ2-6をコンダクタ2-1の中に配置してもよい。手インターフェース2-8はまた、哺乳動物2-9の部分間の温度差(例えば、前腕から手指の先までの温度変化)を測定するよう適合された皮膚温度プローブ、および、動物2-9の手の血流を測定するための前述のような生体インピーダンスセンサ2-7を収容していてもよい。
【0053】
図3に、哺乳動物3-9の足のための例示的な足インターフェース3-8の詳細を示した線図を示す。足インターフェース3-8は、前述の手インターフェースと同様、陰圧条件下において、哺乳動物3-9の足とコンダクタ3-1との間に物理的な熱交換表面を提供する。足インターフェースは、哺乳動物の足に温度刺激および/または湿度刺激を提供するように設計される。加えて、足インターフェースは、手インターフェースの場合と同様、システムコントローラと連絡しているさまざまなセンサを介して血管収縮または血管拡張をモニターおよび/または操作することを可能にする(図1を参照)。足インターフェースは、システムコントローラの誘導のもと、哺乳動物3-9の身体からの制御された熱伝達を促進する。
【0054】
足インターフェース3-8は、密封式封入容器3-2の中に配置され、且つ、哺乳動物3-9の足底および/または足指とコンダクタ3-1との間の接触を助けるような構成を有する、熱交換インターフェースとして機能するコンダクタ3-1を含む。密封式封入容器は、上述のように陰圧条件の維持および/またはモニタリングを可能にする、密封カフ3-4および圧力センサ3-3を含む。手インターフェースと同様、認識されるべき点として、例示的な足インターフェース3-8は、陰圧を維持できる封入容器を必ずしも含んでいなくてもよい。
【0055】
足インターフェース3-8は、いくつかの感知構成部品のうち任意のものを収容してもよい。例えば、図3に示すように、熱流束およびインターフェース温度センサ3-10を、哺乳動物3-9の足とコンダクタ3-1との間に配置してもよい。加えて、動物の足の血流を測定するため、レーザードップラー式または光吸収式の血流センサ3-5を、コンダクタ3-1の中または近傍に配置してもよい。加えて、哺乳動物3-9の足とコンダクタ3-1との間の熱エネルギーの伝達を測定するため、熱エネルギー伝達センサ3-6をコンダクタの中に配置してもよい。足インターフェース3-8はまた、哺乳動物3-9の部分間の温度差(例えば、脚から足指の先までの温度変化)を測定するよう適合された皮膚温度プローブ、および、前述のように哺乳動物3-9の足の血流を測定するための生体インピーダンスセンサ3-7を収容していてもよい。
【0056】
哺乳動物の身体からの制御された熱伝達を実施するための1つの例示的な方法において、駆動力は、哺乳動物の身体の一部(例えば、参照される熱交換血管系の上の皮膚表面)と熱インターフェースまたはコンダクタとの間の熱伝達を含む(上記の説明および図1〜3)。図6〜11に、本明細書に説明する例示的な方法およびシステムが、身体核心部から環境への最適な熱伝達をどのように実現するかを、より明らかに示す。そして図5に、本システム構成により哺乳動物からの熱伝達の増大を実現するための1つの例示的な方法を示す。図6は、哺乳動物の身体核心部の温度(T核心部)[℃]とインターフェース温度(Tインターフェース)[℃]との間の温度差を表す温度勾配を示したグラフを含む。Y軸は温度勾配(T核心部 - Tインターフェース)[℃]を漸増方向に表し、X軸はTインターフェース[℃]を漸増方向に表す。図6に示すように、T核心部とTインターフェースとの差がゼロに達すると(すなわち、両者が等しくなると)、温度勾配が存在しなくなり、熱伝達が生じない(T核心部を指し示す矢印を参照)。逆に、TインターフェースがT核心部より低くなるほど温度勾配が増大する。
【0057】
個々の各哺乳動物について、測定可能な特定の温度域以下では身体部分内の血流の血管収縮が生じ、その温度域以上のある点では血管拡張が生じる。この原理を図7に示す。この図は、Y軸で表した身体部分の血流の増加と、X軸で表したTインターフェースの温度上昇との関係を示したものである。図7が示しているように、血流が比較的少ないことまたは血管収縮(X軸の下にバーVCとして示す)は、Tインターフェースが低い温度域にあることと相関している。この低い温度域のTインターフェースは、移行ゾーンまで伸び、そして、血管拡張(X軸の下にバーVDとして示す)に対応する、血流が比較的多い温度域に達する。
【0058】
本明細書に説明する例示的な方法およびシステムの1つの利点は、これら方法およびシステムが、図6および図7に示した前述の両方の概念に関連しているということを含む。すなわち、これら方法およびシステムは、血管拡張を維持することができる最低のTインターフェースを判定することにより、哺乳動物の身体からの熱伝達を、増大した熱伝達(T最大熱伝達)にすることを可能にする。図8に示すように、熱伝達は、温度勾配×血流の関数として見ることができる。Tインターフェースの値が大きいことは温度勾配の減少およびそれに伴う冷却効果の低減と相関するため、T最大熱伝達は、血管拡張を支持する最低のTインターフェースで生じる。図8のグラフは、このことをより明らかに示すために、図6および図7の2つのグラフを重ね合わせたものである。
【0059】
例示的な方法およびシステムのさらなる利点は、これら方法およびシステムが、血管収縮から血管拡張へおよび血管拡張から血管収縮へという逆向きの移行の間で一般的に見られる、ヒステリシス現象を考慮しているということを含む。図9に、血流およびTインターフェースと関連するヒステリシス現象の例示的な図示を開示する。図9は、血流をY軸上に漸増方向に表し、TインターフェースをX軸上に漸増方向に表しており、血管収縮と血管拡張との間の移行が、Tインターフェースの値に関して、まったく同様に可逆的ではないことを示している。初期条件(すなわち、最初に血管収縮かまたは血管拡張か)によって、移行が生じる温度域は異なる。特に、血管収縮から血管拡張への移行(上向き矢印で示された図9のプロット)は、血管拡張から血管収縮への移行(下向き矢印で示された図9のプロット)の場合より高いTインターフェース域で生じる。
【0060】
以上、本発明に関連するいくつかの利点および原理を確立する基礎として前述の内容を示したので、次に、熱伝達およびシステム制御のための例示的な方法をより詳しく述べる。図5に、哺乳動物の身体からの制御された除熱を実施する目的でシステムコントローラ(前述および図1)を誘導する例示的方法を示したフローチャートを開示する。システム(例えば、適切にプログラミングされたアルゴリズムまたはプログラム論理などを有するシステム)は、Tインターフェースの開始値(前述)に等しい開始値(T設定値)で始まる。アルゴリズムは、血管収縮および/または血管拡張に関連する特性に焦点を当てた第一の構成要素または機能(例えば、血流のモニタリングおよび操作)と、核心体温のモニタリングおよび操作に焦点を当てた第二の構成要素または機能という、2つの主要な構成要素または機能をさらに含んでいてもよい。
【0061】
本方法の第一の部分は、T最大熱伝達(前述および図8を参照)を確立および維持することを目的に、血管収縮または血管拡張を(例えば血流の測定により)感知すること、および、熱インターフェースまたはコンダクタ(例えば、前述および図1〜3を参照)を介して哺乳動物の身体部分の血管収縮または血管拡張を操作することに対応する。したがって、図5に大きく5-1として示すように、本方法のこの局面は、哺乳動物の血管収縮または血管拡張の状態に関するデータを分析し、そしてこの分析に基づいて、T設定値の値を徐々に増加または減少させること(例えば、T設定値 + X0; T設定値 - X0)により血管収縮もしくは血管拡張または血流を操作するための信号を発する。
【0062】
具体的には、ブロック5-10において、インターフェース温度が設定温度T設定値で開始される。T設定値は、用途、身体部分、および哺乳動物の種類など、さまざまな要因によって異なり得る。ブロック5-12において、身体部分の血管収縮または血管拡張に関連する、血流または他の特性の測定値が感知される。次に、ブロック5-14において、身体部分が血管収縮状態にあるか血管拡張状態にあるかの判定が行われる。血管拡張か血管収縮かの最初の判定は、単純に皮膚(例えば手の皮膚)の色を見ることによって行ってもよく、または、血管収縮または血管拡張を測定するための任意の好適な方法を用いた、血管拡張または血管収縮の以前の測定結果によって行ってもよい。
【0063】
身体部分が血管収縮状態にあると判定された場合は、血管拡張が感知されるまで、ブロック5-16においてインターフェース温度を上昇させる。次に、ブロック5-18において、ブロック5-10における当初の設定温度T設定値より高い温度(例えばX℃だけ高い温度)まで、インターフェース温度Tインターフェースを低下させる。温度差は用途および検査に応じて異なる可能性がある。次に、ブロック5-12において、血管収縮または血管拡張に関連する特性が再度感知され、ブロック5-14において、血管収縮か血管拡張かの判定が行われる。
【0064】
身体部分が血管拡張状態にあると判定された場合、本方法は、ブロック5-20において血管収縮が既に感知されているか否かを判定する。感知されていない場合は、ブロック5-10における当初の設定温度より低い温度までインターフェース温度T設定値を低下させ、そして、ブロック5-12において血流または他の特性を再度感知してもよい。血管収縮が既に感知されている場合、本方法は、最後に検出された血管収縮温度より高い温度までインターフェース温度T設定値を低下させる。
【0065】
本アルゴリズムの、選択的な第二の機能は、制御された身体核心部の除熱治療の過程をモニターおよび管理することを目的として、哺乳動物の核心体温を感知すること(体温センサ11に関して前述および図1に示した)を含んでいてもよい。本方法のこの機能は、好ましくは、核心体温を正常より低い温度まで下げることが望ましい状況で用いられ、一般的に核心体温がより注意深くモニターされる。図5に5-2として示すように、アルゴリズムのこの機能は、身体部分からの熱伝達の作用を継続的にモニターおよび管理し、これにより身体核心部の除熱を制御するように機能する。特に、例示的な方法のこの局面は、哺乳動物の核心体温に関するデータを取得し、その値をT最大熱伝達と比較する。核心体温が、その哺乳動物についてあらかじめ確立されたT最大熱伝達と同じかそれ以上である場合、本方法は、現在のTインターフェース(前述)の値で治療を続行させる。核心体温がT最大熱伝達より低いと算出された場合、本方法は、Tインターフェースを増加させる信号を発し、核心体温が再度T最大熱伝達に達するまで核心体温のデータを継続的にモニターする。制御された身体核心部の除熱治療をある期間にわたって行うという目標を実現するため、この処理をサイクル式に繰り返してもよい。
【0066】
具体的には、図5において、例示的な方法は、任意の好適な方法により核心体温を検出するというブロック5-26に進む。ブロック5-28において核心体温が所望の温度より低い場合は、ブロック5-30においてインターフェース温度を上昇させる。次に、核心体温を再度判定してもよく、必要ならばインターフェース温度を上昇させてもよい。
【0067】
図5に示す方法は、好適なアルゴリズムおよびプログラム論理などを有するコントローラによって実行してもよい。または、例えば医師または患者などの人によって、例示的な方法を実行してもよい。さらに、本方法は、特定の順序で発生する特定の事象または演算を示している。別の実施において、特定の事象または演算の順序を変化、修正、または除外してもよい。さらに、説明した方法に動作を追加し、且つ説明した実施に適合することも可能である。さらに、本明細書に説明した演算は逐次的に生じてもよく、または、特定の演算が並列に生じてもよい。
【0068】
例示的な方法およびシステムの1つの利点は、前述および図9に示した生理学的なヒステリシス現象を考慮に入れることにより、血管収縮または血管拡張という開始点からの除熱治療を可能にする、ということを含む。例えば、図10は、哺乳動物の身体部分で最初に血管拡張が検出された場合の図5の方法をグラフに表したものである。この場合、本方法は、血管拡張という開始点から、最初に血管拡張条件が検出された後にT最大熱伝達を確立および維持するように機能する。例示的な方法またはサブルーチン(例えば5-1)は、血管収縮と血管拡張との間の移行に付随するヒステリシス現象および初期条件を考慮に入れている。図9のヒステリシス現象に基づくと、T最大熱伝達の値は、T設定値について選択された任意の値より低い。具体的には、身体部分の血流が血管拡張状態を示しているという図10の点(A)から開始して、Tインターフェースの値は、T設定値と等しくなるよう任意に設定される。次にシステムコントローラは、点(B)に示すように、血管収縮と血管拡張との間の移行温度域を過ぎて血管収縮に達するまで、Tインターフェースの値を徐々に減少させてT設定値の初期値より低い値(例えばT設定値 - X0)にする。次にシステムコントローラは、点(C)に示すように、血管収縮と血管拡張との間の移行温度域に達するまで、Tインターフェースを徐々に増加させてT設定値の初期値より高い値(例えばT設定値 + X0)にしてもよい。最後にシステムコントローラは、点(D)に示すように、Tインターフェースの値をT最大熱伝達の点まで徐々に減少させる。まとめると、このサブルーチンは、T最大熱伝達の値を確立する目的で血管収縮を誘発し、続いて、Tインターフェースの値をT最大熱伝達より高いある点まで増加させることによって血管拡張を再確立し、最後に、TインターフェースをT最大熱伝達の点まで減少させて、哺乳動物の身体部分の温度を操作するように機能する各段階を提供する。
【0069】
図11は、哺乳動物の身体部分で最初に血管収縮が検出された場合の図5の方法をグラフに表したものである。図11に開示するように、アルゴリズムの本サブルーチンは、本方法に付随するヒステリシス現象(前述および図9)を考慮に入れながらT最大熱伝達を確立および維持するように機能する。具体的には、身体部分の血流が血管収縮状態を示しているという図11の点(A)から開始して、Tインターフェースの値は、T設定値と等しくなるよう任意に設定される。次にシステムコントローラは、点(B)に示すように、血管収縮と血管拡張との間の移行温度域に達するまで、Tインターフェースの値を徐々に増加させてT設定値の初期値より高い値(例えばT設定値 + X0)にする。Tインターフェースの値が、点(C)に示すように移行温度域より高くなると、血管拡張が得られる。血管収縮温度を判定するため、システムコントローラは、点(D)に示すように血管収縮が生じるまで、Tインターフェースの値を徐々に減少させる。次に、図9に示すヒステリシス現象を考慮に入れるため、点(E)に示すように血管収縮が再度現れるまで、Tインターフェースを増加させる。次に、点(F)に示すように、Tインターフェースの値をTの点まで減少させる。認識されるべき点として、(前述および図11に示すように)T設定値について選択された値が最初に血管収縮と対応する場合、T最大熱伝達の値は、T設定値について選択された任意の値より大きくなる。したがって、まとめると、例示的な方法は、Tインターフェースの値をT最大熱伝達より高いある点まで増加させることによって血管拡張を誘発し、Tインターフェースを血管収縮温度より低いある点まで減少させ、再度TインターフェースをT最大熱伝達より高いある点まで増加させ、そしてTインターフェースをT最大熱伝達の点まで減少させることによって、哺乳動物の身体部分の温度を操作するように機能する。
【0070】
有用性
前述のように、例示的な方法およびシステムにより、哺乳動物の身体核心部から熱エネルギーまたは熱を取り除くことが可能である。したがって、本方法は、種々の異なる用途に用いるのに好適であり、代表的な用途としては、身体核心部の熱を取り除くことが望ましい、正常および異常な生理学的状態(例えば疾患)の治療がある。本方法が有用である代表的な用途としては、運動または作業誘発性の低体温の治療、脳卒中の治療、嚢胞性線維症の症状の治療、および多発性硬化症の症状の治療などがある。本明細書において治療とは、例えば不快感の軽減、症状の改善または除去など、治療対象の状態に関連する症状のうち1つまたは複数を少なくとも緩和することを意味する。
【0071】
多くの実施例において、本方法は、物理的な手順またはタスクを行う哺乳動物の能力を補強するために用いられる。したがって本方法は、種々の異なる物理的作業が行われる種々の異なる用途に用いるのに好適である。例示のみを目的として後述の代表的な用途を提供する。しかし、注意されるべき点として、本方法は、後述にない他の多数の物理的手順を行うための哺乳動物の物理的能力の補強に用いるのにも好適である。
【0072】
本方法の実施により補強されうる1つの種類の物理的能力は運動能力である。換言すると、本方法は、運動的手順を行うための哺乳動物の能力を向上させるのに用いてもよい。向上または補強の性質は、その哺乳動物が行う運動的手順の性質によって大きく異なり得る。代表的な補強としては以下のものがあるが、それに限定されるわけではない:強度(例えば、特定の重量を持ち上げる能力によって測定されるものなど)の増加;スタミナ(例えば、休息せずにタスクを行うまたはスポーツをする能力として測定されるものなど)の増加;物理的タスクの反復(例えば、ウェイトリフティング、懸垂など)を行うための哺乳動物の能力の向上;能力を制限する苦痛(例えば痙攣など)の減少など。
【0073】
本方法の実施により補強されうる別の種類の物理的能力は物理的作業能力である。換言すると、本方法は、物理的手順に関連する特定の作業を行うための哺乳動物の能力を向上させるのに用いてもよい。物理的手順に関連する作業の例としては以下のものがあるが、それに限定されるわけではない:装置の物理的な建設およびメンテナンス(特に高温環境において);住居およびオフィスの建設および建造など;土木構造物の建設およびメンテナンスなど;発電所または他の産業環境での作業;(特に高温環境におけるまたは重装備を伴う)軍隊環境での作業;重装備が必要な環境での作業。補強は多くの形態を取る可能性があり、形態には以下のものなどがあるが、それに限定されるわけではない:行われ得る反復動作の回数の増加;休息または冷却なしで特定の仕事を行い得る時間の長さの延長;特定の仕事におけるエラーの減少など。
【0074】
多くの態様において、例示的な方法は、回復時間を短縮する以上の結果をもたらして、例えば物理的能力の増強、作業能力の増大など、上記に例示したような他の増強または向上を提供する。前述したように、物理的作業に関連する上記の運動および作業は、本方法を用いて増強されうる手順の代表例にすぎない。
【0075】
特許請求の範囲
以上、種々の特徴を任意で組み込みながら複数の実施例に関して本発明を説明したが、本発明は、本発明の各態様またはバリエーションに関して予期されるものとして説明または提示されたものに限定されることはない。当業者には、本発明の範囲内で多数の修正およびバリエーションが可能であることが理解されるものと思われる。したがって、本発明の幅は、本明細書に提供される説明ではなく、添付の特許請求の範囲の文字どおりのまたは正当な範囲によってのみ限定される。以上を述べたうえで、本発明者らは、添付の特許請求の範囲を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
添付の各図面は本発明の各局面を図示によって示すものである。
【図1】哺乳動物の身体との制御された熱伝達を行うための例示的なシステム構成である。
【図2】熱伝達用の例示的な手インターフェースである。
【図3】熱伝達用の例示的な足インターフェースである。
【図4】体温調節感覚操作装置の種々の例示的な構成である。
【図5】熱伝達のための例示的な制御方法である。
【図6】インターフェース温度と温度勾配との関係を示した例示的なグラフである。
【図7】インターフェース温度と血流との関係を示した例示的なグラフである。
【図8】インターフェース温度と血流との関係を示した例示的なグラフである。
【図9】インターフェース温度と、血管収縮と血管拡張との間の移行を含む血流との関係を示した例示的なグラフである。
【図10】インターフェース温度と、血管収縮と血管拡張との間の移行を含む血流との関係を示した例示的なグラフである。
【図11】インターフェース温度と、血管収縮と血管拡張との間の移行を含む血流との関係を示した例示的なグラフである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の分野は、概して哺乳動物の体温調節状態に関し、より具体的には、哺乳動物の身体との熱伝達の制御および管理に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
普通、哺乳動物の体温は体内の自律調節系によって制御されており、本明細書においてはこの系を体温調節系とよぶ。この系において重要な効果器の1つは、多毛でない皮膚表面(すなわち、手掌、足底、頬/鼻の部位)に存在する、身体の特定の皮膚領域への血流によって制御されている。これら領域の皮下には静脈叢とよばれる独特の解剖学的血管構造が存在する。これらの構造は、皮膚表面付近に大量の血液を送達する役割を果たす。この血液送達により、内臓を機能可能な温度域に維持するための大量の熱伝達が可能となる。血液は、静脈叢の動脈入力側をゲーティングまたは制御する動静脈吻合(AVA)により、静脈叢「ラジエータ」構造の通過を許される。このように、AVAは熱伝達系の必須部分として機能し、体温調節を可能にする。AVAと静脈叢はともに身体の適切な熱交換血管系を構成する。
【0003】
普通、体温および/または環境温度が高いときは、特定の血管の拡張が前述の熱交換表面への血流増加を促し、これにより、環境への熱損失が増加し身体深部の核心体温が低下する。環境温度および/または体温が低下すると、血管収縮によりこれら表面への血流が減少し、環境への熱損失が最小限となる。
【0004】
しかし、核心体温を低下および/または上昇させるため、皮膚表面を横切る熱伝達を操作することが望ましい状況も存在する。そうした核心体温の低下または上昇は、治療的処置レジメン、および、運動または産業上の能力を向上させる要素としてなど、多数の用途に有用であると考えられる。
【0005】
本発明はこれらの目標をより良好に実現することを目的としている。本発明はこれを種々の方法で行うが、(意図された手順の実施中に)意図しない血管収縮が熱伝達表面の領域内の血流に悪影響を及ぼして十分な熱伝達が阻害されることがないよう、自然な血管収縮傾向を特に考慮に入れる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
哺乳動物の体温調節状態を操作および制御するための方法および装置を提供する。そのような方法を実施することおよび対象のハードウェアを稼動することを目的としたソフトウェアまたはプログラミングも本発明の一部をなす。
【0007】
本発明の1つの局面において、方法は、哺乳動物の身体部分へと、および/または、哺乳動物の身体部分から熱を伝達する段階を含む。本方法は、身体の部分において血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階、血管収縮と判定されたときにその身体の部分に熱を供給する段階、および、血管拡張と判定されたときにその身体の部分から熱を除去する段階を含む。血管収縮または血管拡張を判定する段階は、関心対象部位(すなわち、熱伝達を生じさせるべき場所)において、血管収縮または血管拡張の状態と関連する身体の特性(例えば、その身体部分への血流量)を検出する段階を含む。
【0008】
本発明の別の局面においては、血管拡張状態から血管収縮状態への身体部分の移行が惹起され、次に、その身体部分が血管拡張状態に維持され、その間、その身体部分から熱が除去される。例示的な方法は、身体部分から熱を除去することにより、血管拡張状態から血管収縮状態へのその身体部分の移行を惹起する段階を含む。次に、血管拡張から血管収縮への移行に関連する移行温度の判定が行われる。本方法は次に、その身体部分において血管拡張を再度確立し、移行温度と等しいかまたはそれ以上の温度のその身体部分から熱を除去する。別の実施例においては、最初に身体部分が血管収縮状態にあるならば、血管拡張から血管収縮への移行を惹起する前に、その身体部分に血管拡張が生じるまで熱が供給される。
【0009】
本発明は、添付の図面および特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明を検討することにより、よりよく理解される。
【0010】
詳細な説明
本発明の詳細な説明に入る前に、本発明は本明細書に記載された特定のバリエーションに限定されるわけではなく、無論さまざまに異なり得ることが理解されるべきである。哺乳動物の体温調節状態を操作するための方法および装置を提供する。以下の説明は、いかなる当業者にも本発明を作成および利用することができるよう示されるものである。具体的な手法および用途の説明は実施例としてのみ提供される。本明細書に説明される実施例に対する種々の改変は当業者に容易に理解されるものと思われ、本明細書に規定される一般的な原理は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の実施例および用途に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に説明および図示される実施例に限定されると意図されるものではなく、本明細書に開示される原理および特徴と矛盾しない、最も広い範囲に一致する。
【0011】
本明細書に列挙する方法は、列挙された各事象を論理的に可能な任意の順序で実施してもよく、明示または暗示されている各事象を列挙順に実施してもよい。さらに、値の範囲が示される場合、その範囲の上限と下限との間の各中間値、および、その提示された範囲内の他の任意の提示された値または中間値は、本発明に含まれるものと理解される。さらに、本明細書に記載された本発明の各バリエーションの、任意の選択的な特徴が、本明細書に記載の1つまたは複数の任意の特徴と独立にまたはこれとの組合せにより、記載および主張され得ることも予期される。
【0012】
本明細書で言及する既存のすべての対象事項(例えば、刊行物、特許、特許出願、およびハードウェア)は、その対象事項が本発明の対象事項と対立し得る場合(その場合は本明細書の提示内容が優先される)を除いて、参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。参照される項目は、本発明の提出日より前に開示されているという理由のみにより提供される。本明細書に記載の事項のいずれも、先行発明によるそのような事項に先行する権利を本発明が有さないことの承認として解釈されるべきでない。
【0013】
単数形の項目への参照は、その項目が複数存在する可能性も含む。より具体的には、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる名詞の単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(said)」および「その(the)」は、複数形でないことを文脈が明確に示しているのでない限り、複数形への参照も含む。さらに注意点として、特許請求の範囲は、任意の選択的な要素を除外するように起草されている可能性がある。したがって本言明は、特許請求の範囲の要素の詳説に関連して「もっぱら(solely)」および「〜のみ/〜だけ(only)」などの排他的な用語を用いること、または、「否定的な(negative)」限定を用いることの前提的根拠として作用することを目的としている。本明細書中で特に断りがない限り、本明細書中の技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を持つ。
【0014】
方法
熱交換血管系を含む哺乳動物の皮膚領域から外部環境への熱伝達は、一般的に、これら身体部分の領域の環境温度が皮膚の温度より低いときに生じる。この温度差は、哺乳動物身体の循環血液から外部環境へと熱エネルギーを動かす温度勾配を生じさせ、これにより、循環血液を介して哺乳動物の身体核心部を冷却する。しかし、これら身体部分の皮膚表面を横切る温度勾配が大きすぎる場合は、身体の自然な体温調節系がこれら領域の血管を収縮させ、その結果、これら領域への血流および血液循環が減少する。血流および血液循環の減少は、AVAを含む身体部分を介した、身体核心部から外部環境への熱伝達を減少させる。
【0015】
熱交換血管系を含む身体部分と接触している環境温度が徐々に低下し、しかし血管収縮が生じる温度より高い場合、身体からの熱伝達は、血管収縮温度になるまで増加する。血管収縮温度に達すると、血管が収縮し、その身体部分への血流が減少する。一般的に、身体からの熱伝達は、温度が低下し例えば血管収縮を惹起すると大幅且つ急激に減少する。したがって、温度勾配に対する熱伝達または血流をプロットすると、階段形状の関数が得られる。
【0016】
逆向きに、熱交換血管系を含む身体部分と接触している環境温度が徐々に上昇する場合は、血管収縮温度より高い温度になると身体のその領域の血流および身体からの熱伝達が大幅且つ急激に増加する。しかし、重要な点として、環境温度が低下して血管収縮を惹起し、次に上昇して血管拡張を惹起する場合、血管拡張への移行は血管収縮への移行より高い温度で起こるのが一般的であり、血管収縮と血管拡張との間の移行の可逆性はまったく同じというわけではない。したがって、血管収縮から血管拡張への移行が生じる温度域と、血管拡張から血管収縮への移行が生じる温度域とは、初期状態によって異なり、この効果を一般的に「ヒステリシス」という。
【0017】
熱交換血管系を含む身体部分と環境との間で比較的大量の熱伝達を起こすには、身体部分と接触する環境の温度が、身体部分の血管収縮温度よりわずかに高い温度または温度域であること、すなわち、血管拡張から血管収縮への移行に関連する温度であることが望ましい。これは、身体部分と環境との間の温度勾配が最も大きくなり、且つ血管収縮が存在しない温度であり、したがって身体核心部からの熱伝達を大きくすることができる。このような教示は、米国特許出願第09/839,590号「Methods and Devices for Extracting Thermal Energy from the Body Core of a Mammal」に示されている。しかし同出願には、特定の温度の熱媒を適用すること以外に、所望の結果を実現するための手段が教示されていない。
【0018】
対照的に、本発明の1つの方法においては、制御された温度操作を実現するため、哺乳動物の身体の熱伝達表面と接触する環境の最適な熱伝達温度または温度域を判定する目的で、その身体部分の血管収縮が生じる温度が実際に判定される。血管収縮温度は、環境温度を、血管収縮温度より高い温度から血管収縮温度より低い温度まで下げることによって判定できる。血管収縮温度は、例えば、環境温度を低下させながら皮膚表面またはその付近で直接的または間接的に血管収縮を検出し、血管収縮がどの温度(または温度域)で生じるかを記録することによって判定してもよい。血管拡張温度は一般的に血管収縮温度より高いため、はじめに環境温度が血管収縮温度より低い場合は、ヒステリシス効果を考慮に入れるため、環境温度を血管拡張温度より高い温度まで上昇させてから血管収縮温度より低い温度まで低下させることが望ましい。最適なまたは最大の熱伝達が生じる環境温度または温度域は、血管収縮温度よりわずかに高い温度域、または、血管収縮への移行が始まる温度になると思われる。
【0019】
最適熱伝達温度または温度域が判定されたら、熱交換血管系を含む身体部分と接触している環境温度を最適熱伝達温度またはその付近に設定して、身体から環境への熱伝達を増加させることができ、これにより、最適温度設定を予想したものの反映にすぎない、より高いまたは低い温度と比較して、より迅速に身体核心部を冷却することができる。
【0020】
哺乳動物の身体核心部を冷却するため最適熱伝達温度を判定および利用するための方法および装置を、以下に詳しく説明する。本方法においては、熱交換血管系を含む身体部分の領域における血管収縮の有無に少なくとも部分的に基づいて、最適熱伝達温度が判定される。次に、その身体部分を最適熱伝達温度の環境に置くことにより、哺乳動物の核心体温を低下させてもよい。さらに、身体核心部の冷却速度を増大させるため、さまざまな身体部分を加温するかまたは他の手段により、血管収縮が生じる温度および最適熱伝達温度を低下させてもよい。例えば、静脈叢を拡張させて熱伝達に利用できる血液量を増大させるため、熱交換血管系を含む身体部分の領域周囲に陰圧を用いることにより、身体核心部の冷却速度を増大させてもよい。
【0021】
身体部分の血管収縮または血管拡張に関連する特性を判定するには、種々の方法および装置が利用できる。身体部分が血管収縮状態にあるか血管拡張状態にあるかを判定するための1つの例示的な方法においては、特定の身体部分の血流を測定することによって身体部分をモニターする。通常、体温および/または環境温度が高い場合は、特定の血管の拡張がこれら表面への血流増加に有利に働き、体温および/または環境温度が低下すると、血管収縮によってこれら表面への血流が減少し、環境への熱損失が最少になる。したがって、身体部分の血流量を測定すると、身体部分が血管収縮状態にあるか血管拡張状態にあるかの評価基準が得られる。
【0022】
血管収縮または血管拡張を測定するための1つの例示的な方法において、身体部分の血流は、レーザードップラー血流計測法によってモニターされる。身体部分の血流をレーザードップラー測定することにより、血流量の変化が測定されるため、身体部分が血管収縮状態にあるか血管拡張状態にあるかの評価基準が得られる。1つの実施例においては、熱交換装置に組み込まれ、且つ、手掌、手指、または他の身体部分に向けられたレーザードップラー画像装置を用いて、身体部分の血流量の変化を測定する。
【0023】
または、身体部分の体積を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。血管拡張時は身体部分の中の血液量が増加するため、血管拡張に伴って、身体部分の体積が血管収縮時に観察されるより大きくなることが一般的に理解されている。したがって、身体部分の体積の物理的変化を、血管拡張または血管収縮の状態と相関させることができる。身体部分の体積を測定するための1つの実施例として考えられるのは、身体部分を流動媒体に浸漬することである。身体部分の体積の変化は、身体部分により押しのけられる流動媒体の体積の変化によって記録される。または、インピーダンスタイプのセンサによって身体部分の体積の変化を測定してもよい。
【0024】
または、身体部分の熱伝達を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。例えば、手指とそれに対応する前腕との間などで温度差を測定したときの温度勾配の有無を測定することによって、身体部分の熱伝達を検査する。温度勾配がないこと(手指への熱伝達があることを示す)は手指の血管拡張状態と相関し、一方、前腕の温度が手指より高いこと(手指への熱伝達がないことを示す)は血管収縮状態と相関する。
【0025】
または、皮膚表面の熱流束を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。例えば、皮膚表面とその皮膚の表面に接触する冷却物体との間に温度感知装置を置くことによって、皮膚表面の熱流束を検査する。この感知装置の温度が血管収縮または血管拡張の指標となる。温度が冷却物体より高い場合は血管拡張の指標となり、一方、温度が冷却物体に近い場合は、皮膚表面の温度がより低いため、血管収縮の指標となる。
【0026】
または、身体部分の光吸収を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。例えば、プレチスモグラフィの手法を用いることによって、または、赤外線パルスオキシメーターを用いて、光吸収を検出することができる。
【0027】
または、哺乳動物の体温を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。任意の便利な温度感知手段を用いてよく、好適な手段としては、熱電対、熱抵抗器、マイクロ波温度センサなどがあるが、それに限定されるわけではない。温度感知装置の位置および性質は、一般的に、検査する身体部分によって異なる。
【0028】
温度測定は、哺乳動物の核心体温のモニタリングを含んでいてもよい。身体核心部とは、哺乳動物の表面に対して、哺乳動物の身体内部の領域または部分を意味する。対象となる具体的な身体核心部領域は、頭部の身体核心部領域(例えば脳深部領域)、および、哺乳動物の体幹の身体核心部領域(例えば哺乳動物の胸部/腹部領域)である。頭部の身体核心部領域の温度を検出するためには、対象となるセンサ位置は以下を含む:耳道(鼓膜)、口腔、および、マイクロ波検出の場合には、下層の温度を測定するための、頭部表面の任意の位置。胸部/腹部の核心体温を検出するためには、センサ位置は以下を含む:食道、直腸、膀胱、膣、および、マイクロ波検出の場合には、下層の温度を測定するための、身体表面の任意の位置。
【0029】
または、哺乳動物の皮膚温度を測定することによって血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。哺乳動物の皮膚温度を測定するには、手を保持して温かさまたは冷たさを検査するという単純で経験的な看護法を用いてもよい。この皮膚温度測定方法の実施において、手が温かいことは一般的に血管拡張と関連性があり、手が冷たいことは血管収縮と関連性がある。皮膚の温度はまた、熱電対、熱抵抗器、マイクロ波温度センサ、温度感受性液晶、および他の温度測定装置などのセンサを用いて検出してもよい。皮膚表面への温度センサの配置は、熱伝達部位もしくは他の位置であってもよく、または、位置の組合せであってもよい。1つの実施例において、皮膚表面温度の変化、または、熱交換血管構造の上の局所皮膚表面領域を横切る、身体からの熱流の変化を測定することによって、血管収縮または血管拡張をモニターしてもよい。
【0030】
温度観察により血管収縮または血管拡張をモニターするこれらの手段については、熱伝達の位置で温度を検出するだけで局所血管収縮を直接測定できるという点に注意されたい。モニタリングをどのように実施するかにかかわらず(例えば、前述のアプローチのうち任意の2つ以上の組合せを用いた場合でも)、哺乳動物の身体部分の血管収縮または血管拡張を制御することにより、血管収縮温度および熱伝達温度を低下させて、熱交換血管系を含む身体の領域と環境との間の温度勾配を増大させることができ、したがって、熱伝達を増大させ且つ身体核心部の冷却を促進することができる。
【0031】
本発明の1つの局面において、血管収縮または血管拡張は、体温調節感覚操作または「脳のサーモスタットをだますこと」によって制御される。そのような操作の特定の局面は、Grahnらの米国特許第6,602,277号「Methods and Devices for Manipulating the Themoregulatory Status of a Mammal」に提供されており、他の局面は、当業者に理解されるであろうとおり、本明細書において改良される。そのようなすべての局面は、本発明の各局面により提供される改善点に基づいて利用できる可能性がある。
【0032】
いずれの場合も、哺乳動物の脳、特に視索前視床下部前部(POAH)が哺乳動物の身体部分の温度調節に重要な役割を果たしており、本質的に「サーモスタット」の役割を果たしていることが、一般的に了解されている。例示的方法の実施においては、脳への血流の温度を操作することまたは身体(頭、胴、顔、および首を含む)の皮膚温度を変化させることによって、身体部分からの熱伝達が実現され、その目的はPOAHを操作する(すなわち「だます」)ことであり、これは、身体部分の血管収縮または血管拡張を惹起するようPOAHを誘導することによって行われ、その結果、その部分からの制御された熱伝達を得ることが可能となる。さらに、身体部分に、湿度刺激などの他の刺激を、単独でまたは皮膚温度の変化とともに印加してもよいことが理解されている。
【0033】
脳への血流の温度の操作は、例えば、首または顔の周囲の温度ラップ(thermal wrap)によって実現してもよい。そのようなラップにより誘導される熱および/または湿度は、血管拡張が惹起され且つ腕または脚などの身体部分からの熱伝達が生じるよう、POAHに影響を与える1つの方法である。または、そのようなラップを介して、湿度を、単独でまたは皮膚温度の変化とともに印加してもよい
【0034】
または、この方法の実施において、脳への血流の温度の操作は、身体の各部分を覆い、且つ、加温および冷却用の構成部品ならびに/または湿度制御用の構成部品を有する、スーツを使用することによって実現してもよい。例示的な感覚操作装置の詳細は後述する(例えば図4a〜4hを参照されたい)。
【0035】
または、表面処置剤の適用によって血管収縮または血管拡張を制御してもよい。例えば、カプサイシン(トウガラシから得られる)、ウルシ、BEN-GAY、種々のリニメント剤、局所用刺激剤、または他の好適な化学的および/もしくは生物学的物質を局所塗布することによって、身体部分に血管収縮を誘発してもよい。
【0036】
または、あらかじめ選択された1つまたは複数の視覚刺激を提供することによって血管収縮または血管拡張を制御してもよい。この方法の実施において、例えば、哺乳動物に視覚刺激を与えて「戦闘または逃亡」反応を惹起することにより、血管収縮を誘発してもよい。
【0037】
または、血管収縮または血管拡張を誘発する薬剤を送達することによって血管収縮または血管拡張を制御してもよい。例えば、注射、吸入、局所投与、経口投与、鼻腔を介した経路などによって薬剤を送達してもよい。
【0038】
別の局面において、身体部分の血管収縮温度を低下させることおよび/または血管拡張を増大させることを目的に身体部分に陰圧条件を適用することによって、身体部分からの熱伝達を促進してもよい。例示的方法の実施において、陰圧条件は、任意の便利なプロトコルを用いて提供してもよい。多くの態様においては、密封式封入容器の中に哺乳動物の身体部分を封入し、次に、封入容器内の圧力を低下させて、標的とする熱交換表面を含む所望の陰圧を提供することによって、陰圧条件が提供される。本方法およびシステムの多くの実施例において、密封される身体部分は、腕もしくは脚、または、少なくともその一部(例えば手もしくは足)を含む。封入容器の性質は、封入対象となる付属器の性質によって異なると考えられ、代表的な封入容器としては、手袋、靴/ブーツ、またはスリーブなどがある(例えば図2および図3を参照されたい)。
【0039】
陰圧には、本方法が適用される特定の条件下の周囲圧力(例えば海水面で1 ATM)より圧力が低い条件が含まれる。陰圧条件下における周囲圧力からの圧力減少の程度は、1つの実施例において少なくとも約20 mmHg、好ましくは少なくとも30 mmHg、より好ましくは少なくとも約35 mmHgであり、減少の程度は85 mmHgまたはそれ以上であってもよいが、好ましくは約60 mmHgを上回らず、より好ましくは約50 mmHgを上回らない。本方法を海水面またはその付近で実施する場合、陰圧条件下の圧力は一般的に約740〜675 mmHgであってもよく、好ましくは約730〜700 mmHg、より好ましくは約725〜710 mmHgである。
【0040】
例示的方法の実施において、対象物の皮膚と接触している間の陰圧条件は、静的/一定であってもよく、または変動してもよい。したがって、特定の実施例において、表面と低温の媒体とが接触している間、陰圧を一定値に維持してもよい。また別の実施例においては、接触中に陰圧値を変動させる(例えば振動させる)。陰圧を変動または振動させる場合、与えられた期間内の圧力変化は異なっていてもよく、その範囲は約85〜40 mmHgであってもよく、好ましくは約40〜0 mmHgであり、振動の周期の範囲は約.25秒〜10分であってもよく、好ましくは約1秒〜10秒である。
【0041】
好適な真空/陰圧アプローチに関するさらなる説明は、前述の米国特許第6,602,277号の他、Grahnの米国特許第5,683,438号、ならびに、GrahnらのPCT特許出願第PCT/US02/09772号、米国特許出願第09/839,590号、および同第09/877,407号に記載されており、これらのすべては参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。本発明の実施をもたらすための他の任意の詳細事項は、これら4つの情報源のうち1つまたは複数から導出してもよく、または、当業者の才能を適用することによって提供してもよい。
【0042】
態様
図1は、本明細書に説明する方法のための例示的なシステム構成の図である。この例示的なシステムは、システムコントローラ4、圧力源5、熱交換エンジン6、体温調節感覚操作装置のコントローラ7、感覚操作装置8、コンダクタ1を含む手の封入容器2および12、足の封入容器13、配管接続および/または電気接続3、インターフェース特異的センサ10、ならびに体温センサ11を含んでいてもよい。
【0043】
システムコントローラ4は、本明細書記載のさまざまな方法に従って哺乳動物9の身体の少なくとも一部からの制御された熱伝達を実現するため、さまざまなシステム構成要素に信号を送受信する。システムコントローラ4は、さまざまな加温および冷却用のプロトコルおよびスケジュールのためのアルゴリズムまたはプログラム論理を含む、好適にプログラムされたマイクロプロセッサなどを有するユニットを含んでいてもよい。そのようなアルゴリズムまたはプログラム論理の詳細は後述する。アルゴリズムは、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組合せにより実行してもよい。プログラミングは、コンピュータ読み出し可能な媒体(例えば、コンピュータにより直接読み出しおよびアクセスできる任意の媒体)に記録されていてもよい。そのような媒体としては、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、および磁気テープなどの磁気記憶媒体;CD-ROMなどの光学記憶媒体;RAM、ROM、またはEPROMなどの電気記憶媒体;ならびに、磁気/光学記憶媒体などこれらカテゴリーのハイブリッドなどがあるが、それに限定されるわけではない。本方法に従って作動するよう(完全にまたは部分的に)プログラミングされたそのような任意の媒体(または他の媒体)も、本発明の1つの局面を構成する。
【0044】
システムコントローラ4は、密封式封入容器2の中に位置するコンダクタ1と連絡する熱交換媒体(図には示していない)を加温または冷却できる熱交換エンジン6と連絡する。提供される熱交換媒体は、哺乳動物9の少なくとも一部およびコンダクタ1の少なくとも一部と熱的に連絡していてもよい。特定の実施例において、熱交換媒体は水および油などの流体で構成される。他の実施例において、熱交換媒体はガスまたは空気を含んでいてもよい。さらなる実施例において、熱交換媒体は、固体状態の加温または電気的な直接加温を含んでいてもよい。加えて、システムコントローラは、熱交換媒体の供給分を収容するためのリザーバ(図には示していない)と連絡する。
【0045】
システムコントローラ4はさらに、密封式封入容器2の中に陰圧条件を生成できる圧力源5と連絡する。熱交換エンジン6および圧力源5は、熱交換媒体と圧力とを別々にまたは組合せて伝導できる配管接続および/または電気接続3を介して、それぞれコンダクタ1および密封式封入容器2と連絡する。コンダクタ1は、哺乳動物9の身体部分を加温または冷却するため、哺乳動物9の身体部分と熱交換媒体との間のインターフェースを提供する。コンダクタ1は、熱を伝達するのに好適な材料を任意の数だけ含んでいてよい。そのような材料の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、またはチタンなどがあるが、それに限定されるわけではない。1つの実施例において、コンダクタ1は、既に詳述したように身体部分がその中で陰圧条件下に維持される、密封式封入容器2の中に配置される。
【0046】
コンダクタ1と密封式封入容器2とは、ともに、手インターフェース12または足インターフェース13のいずれかを構成する。本システムの1つの実施例において、手インターフェース12は哺乳動物9の腕または手を封入する。本システムの別の実施例において、足インターフェース13は哺乳動物9の脚または足を封入する。本システムのさらに別の実施例において、封入される身体部分は、哺乳動物9の両腕もしくは両手、両脚もしくは両足、または前述の身体部分の任意の組合せを含む。手インターフェース12および足インターフェース13については、詳細を後述し、且つ、それぞれ図2および図3に示す。
【0047】
図1に開示するシステムコントローラ4はさらに体温調節感覚操作装置のコントローラ7と連絡し、体温調節感覚操作装置のコントローラ7はさらに体温調節感覚操作装置8と連絡する。体温調節感覚操作装置8は、脳の(または身体の)サーモスタットの感知機構を操作することにより、例えば哺乳動物9の体温調節反応を制御するための軽度の低体温などを誘発することができる。好適な体温調節感覚操作装置としては、身体部分の以下の組合せ(その一部を図4a〜hに示す)に対して温度刺激および/または湿度刺激を送達するよう設計されたインターフェースなどがあるが、それに限定されるわけではない:全身の皮膚表面(図4a);頭、肩、胸、背、胴、および腕(図4b);頭、肩、胸、背、および腕(図4c);頭、肩、胸、および背(図4d);肩、胸、背、および腕(図4e);肩、胸、背、および胴(図4f);胸 背 胴、および脚(図4g);胴および脚(図4h);頭および肩;頭および首;頭;顔全体;鼻;口;鼻および口;鼻および副鼻腔;ならびに耳。認識されるべき点として、図に示していない他のさまざまな感覚操作装置を前述の方法に基づいて用いてもよい。
【0048】
図1に開示するシステムコントローラ4はさらに、後述し且つ図2に詳しく示すようにコンダクタ1の中にまたはこれと接続して配置された、いくつかの直接的またはインターフェース特異的センサ10のうち任意のものと連絡する。インターフェース特異的センサ10は、システムコントローラ4にフィードバック(例えば、封入された身体部分の血管収縮または血管拡張と関連する特性[血管収縮または血管拡張の指標となる血流の相対的状態など])を提供する。インターフェース特異的センサ10は以下のものを含みうるが、それに限定されるわけではない:レーザードップラー血流感知;生体インピーダンス血流感知;熱流束感知;インターフェース温度感知;皮膚温度感知;圧力感知;身体部分体積感知;エネルギー伝達感知;EKG/ECG;または上記に開示した任意の方法。哺乳動物の身体からの制御された熱伝達を実現するために血管拡張を維持または実現する目的でインターフェース特異的センサ10からのフィードバックを解釈および利用する例示的な方法については後述する。
【0049】
システムコントローラ4はさらに、哺乳動物9の身体上または身体内に適切に配置された、いくつかの全身体温測定センサ11のうち任意のものと接続していてもよい。全身体温センサ11は、哺乳動物9の核心体温に関するフィードバックをシステムコントローラ4に提供する。このフィードバックは、システムコントローラ4が、後述する例示的な方法の選択的な部分を実行するのに望ましい。全身体温センサ11は以下を含み得るが、それに限定されるわけではない:鼓膜温度センサ;食道温度センサ;および上記に開示した方法を非限定的に含む核心体温センサ。
【0050】
図2に、図1のシステム構成とともに使用してもよい例示的な手インターフェース2-8の詳細を示した線図を示す。手インターフェース2-8の目的には、陰圧条件下において、哺乳動物2-9の手とコンダクタ2-1との間に物理的な熱交換表面を提供することが含まれる。手インターフェース2-8は、哺乳動物2-9の手に温度刺激および/または湿度刺激を提供するように設計される。加えて、手インターフェース2-8は、システムコントローラと連絡しているさまざまなセンサを介して血管収縮または血管拡張をモニターおよび/または操作することを可能にする(図1)。手インターフェース2-8は、システムコントローラの誘導のもと、哺乳動物2-9の身体からの制御された熱伝達を促進する。使用してもよい別の例示的な手インターフェースまたはモジュールは米国特許出願第09/878,129号「Methods and Devices for Manipulating Thermoregulatory Status of a Mammal」に説明されている。同特許出願は、本明細書に完全に記述されているが如く、参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。
【0051】
手インターフェース2-8は、密封式封入容器2-2の中に配置され、且つ、哺乳動物2-9の手掌および/または手指とコンダクタ2-1との間の接触を助けるような構成を有する、熱交換インターフェースとして機能するコンダクタ2-1を含む。密封式封入容器は、封入容器2-8内の陰圧条件の維持およびモニタリングを可能にする、密封カフ2-4および圧力センサ2-3を含む。しかし、認識されるべき点として、例示的な手インターフェース2-8は、陰圧を維持できる封入容器を必ずしも含んでいなくてもよい。例えば、手インターフェース2-8は、手が接触するための、封入容器を伴わない熱交換インターフェースまたはコンダクタ2-1のみを含んでいてもよい。
【0052】
手インターフェース2-8は、いくつかの感知構成部品のうち任意のものを収容してもよい。例えば、図2に示すように、熱流束およびインターフェース温度センサ2-10を、哺乳動物2-9の手とコンダクタ2-1との間に配置してもよい。加えて、動物2-9の手の血流を測定するため、レーザードップラー式または光吸収式の血流センサ2-5を、コンダクタ2-1の中または近傍に配置してもよい。加えて、哺乳動物2-9の手とコンダクタ2-1との間の熱エネルギーの伝達を測定するため、熱エネルギー伝達センサ2-6をコンダクタ2-1の中に配置してもよい。手インターフェース2-8はまた、哺乳動物2-9の部分間の温度差(例えば、前腕から手指の先までの温度変化)を測定するよう適合された皮膚温度プローブ、および、動物2-9の手の血流を測定するための前述のような生体インピーダンスセンサ2-7を収容していてもよい。
【0053】
図3に、哺乳動物3-9の足のための例示的な足インターフェース3-8の詳細を示した線図を示す。足インターフェース3-8は、前述の手インターフェースと同様、陰圧条件下において、哺乳動物3-9の足とコンダクタ3-1との間に物理的な熱交換表面を提供する。足インターフェースは、哺乳動物の足に温度刺激および/または湿度刺激を提供するように設計される。加えて、足インターフェースは、手インターフェースの場合と同様、システムコントローラと連絡しているさまざまなセンサを介して血管収縮または血管拡張をモニターおよび/または操作することを可能にする(図1を参照)。足インターフェースは、システムコントローラの誘導のもと、哺乳動物3-9の身体からの制御された熱伝達を促進する。
【0054】
足インターフェース3-8は、密封式封入容器3-2の中に配置され、且つ、哺乳動物3-9の足底および/または足指とコンダクタ3-1との間の接触を助けるような構成を有する、熱交換インターフェースとして機能するコンダクタ3-1を含む。密封式封入容器は、上述のように陰圧条件の維持および/またはモニタリングを可能にする、密封カフ3-4および圧力センサ3-3を含む。手インターフェースと同様、認識されるべき点として、例示的な足インターフェース3-8は、陰圧を維持できる封入容器を必ずしも含んでいなくてもよい。
【0055】
足インターフェース3-8は、いくつかの感知構成部品のうち任意のものを収容してもよい。例えば、図3に示すように、熱流束およびインターフェース温度センサ3-10を、哺乳動物3-9の足とコンダクタ3-1との間に配置してもよい。加えて、動物の足の血流を測定するため、レーザードップラー式または光吸収式の血流センサ3-5を、コンダクタ3-1の中または近傍に配置してもよい。加えて、哺乳動物3-9の足とコンダクタ3-1との間の熱エネルギーの伝達を測定するため、熱エネルギー伝達センサ3-6をコンダクタの中に配置してもよい。足インターフェース3-8はまた、哺乳動物3-9の部分間の温度差(例えば、脚から足指の先までの温度変化)を測定するよう適合された皮膚温度プローブ、および、前述のように哺乳動物3-9の足の血流を測定するための生体インピーダンスセンサ3-7を収容していてもよい。
【0056】
哺乳動物の身体からの制御された熱伝達を実施するための1つの例示的な方法において、駆動力は、哺乳動物の身体の一部(例えば、参照される熱交換血管系の上の皮膚表面)と熱インターフェースまたはコンダクタとの間の熱伝達を含む(上記の説明および図1〜3)。図6〜11に、本明細書に説明する例示的な方法およびシステムが、身体核心部から環境への最適な熱伝達をどのように実現するかを、より明らかに示す。そして図5に、本システム構成により哺乳動物からの熱伝達の増大を実現するための1つの例示的な方法を示す。図6は、哺乳動物の身体核心部の温度(T核心部)[℃]とインターフェース温度(Tインターフェース)[℃]との間の温度差を表す温度勾配を示したグラフを含む。Y軸は温度勾配(T核心部 - Tインターフェース)[℃]を漸増方向に表し、X軸はTインターフェース[℃]を漸増方向に表す。図6に示すように、T核心部とTインターフェースとの差がゼロに達すると(すなわち、両者が等しくなると)、温度勾配が存在しなくなり、熱伝達が生じない(T核心部を指し示す矢印を参照)。逆に、TインターフェースがT核心部より低くなるほど温度勾配が増大する。
【0057】
個々の各哺乳動物について、測定可能な特定の温度域以下では身体部分内の血流の血管収縮が生じ、その温度域以上のある点では血管拡張が生じる。この原理を図7に示す。この図は、Y軸で表した身体部分の血流の増加と、X軸で表したTインターフェースの温度上昇との関係を示したものである。図7が示しているように、血流が比較的少ないことまたは血管収縮(X軸の下にバーVCとして示す)は、Tインターフェースが低い温度域にあることと相関している。この低い温度域のTインターフェースは、移行ゾーンまで伸び、そして、血管拡張(X軸の下にバーVDとして示す)に対応する、血流が比較的多い温度域に達する。
【0058】
本明細書に説明する例示的な方法およびシステムの1つの利点は、これら方法およびシステムが、図6および図7に示した前述の両方の概念に関連しているということを含む。すなわち、これら方法およびシステムは、血管拡張を維持することができる最低のTインターフェースを判定することにより、哺乳動物の身体からの熱伝達を、増大した熱伝達(T最大熱伝達)にすることを可能にする。図8に示すように、熱伝達は、温度勾配×血流の関数として見ることができる。Tインターフェースの値が大きいことは温度勾配の減少およびそれに伴う冷却効果の低減と相関するため、T最大熱伝達は、血管拡張を支持する最低のTインターフェースで生じる。図8のグラフは、このことをより明らかに示すために、図6および図7の2つのグラフを重ね合わせたものである。
【0059】
例示的な方法およびシステムのさらなる利点は、これら方法およびシステムが、血管収縮から血管拡張へおよび血管拡張から血管収縮へという逆向きの移行の間で一般的に見られる、ヒステリシス現象を考慮しているということを含む。図9に、血流およびTインターフェースと関連するヒステリシス現象の例示的な図示を開示する。図9は、血流をY軸上に漸増方向に表し、TインターフェースをX軸上に漸増方向に表しており、血管収縮と血管拡張との間の移行が、Tインターフェースの値に関して、まったく同様に可逆的ではないことを示している。初期条件(すなわち、最初に血管収縮かまたは血管拡張か)によって、移行が生じる温度域は異なる。特に、血管収縮から血管拡張への移行(上向き矢印で示された図9のプロット)は、血管拡張から血管収縮への移行(下向き矢印で示された図9のプロット)の場合より高いTインターフェース域で生じる。
【0060】
以上、本発明に関連するいくつかの利点および原理を確立する基礎として前述の内容を示したので、次に、熱伝達およびシステム制御のための例示的な方法をより詳しく述べる。図5に、哺乳動物の身体からの制御された除熱を実施する目的でシステムコントローラ(前述および図1)を誘導する例示的方法を示したフローチャートを開示する。システム(例えば、適切にプログラミングされたアルゴリズムまたはプログラム論理などを有するシステム)は、Tインターフェースの開始値(前述)に等しい開始値(T設定値)で始まる。アルゴリズムは、血管収縮および/または血管拡張に関連する特性に焦点を当てた第一の構成要素または機能(例えば、血流のモニタリングおよび操作)と、核心体温のモニタリングおよび操作に焦点を当てた第二の構成要素または機能という、2つの主要な構成要素または機能をさらに含んでいてもよい。
【0061】
本方法の第一の部分は、T最大熱伝達(前述および図8を参照)を確立および維持することを目的に、血管収縮または血管拡張を(例えば血流の測定により)感知すること、および、熱インターフェースまたはコンダクタ(例えば、前述および図1〜3を参照)を介して哺乳動物の身体部分の血管収縮または血管拡張を操作することに対応する。したがって、図5に大きく5-1として示すように、本方法のこの局面は、哺乳動物の血管収縮または血管拡張の状態に関するデータを分析し、そしてこの分析に基づいて、T設定値の値を徐々に増加または減少させること(例えば、T設定値 + X0; T設定値 - X0)により血管収縮もしくは血管拡張または血流を操作するための信号を発する。
【0062】
具体的には、ブロック5-10において、インターフェース温度が設定温度T設定値で開始される。T設定値は、用途、身体部分、および哺乳動物の種類など、さまざまな要因によって異なり得る。ブロック5-12において、身体部分の血管収縮または血管拡張に関連する、血流または他の特性の測定値が感知される。次に、ブロック5-14において、身体部分が血管収縮状態にあるか血管拡張状態にあるかの判定が行われる。血管拡張か血管収縮かの最初の判定は、単純に皮膚(例えば手の皮膚)の色を見ることによって行ってもよく、または、血管収縮または血管拡張を測定するための任意の好適な方法を用いた、血管拡張または血管収縮の以前の測定結果によって行ってもよい。
【0063】
身体部分が血管収縮状態にあると判定された場合は、血管拡張が感知されるまで、ブロック5-16においてインターフェース温度を上昇させる。次に、ブロック5-18において、ブロック5-10における当初の設定温度T設定値より高い温度(例えばX℃だけ高い温度)まで、インターフェース温度Tインターフェースを低下させる。温度差は用途および検査に応じて異なる可能性がある。次に、ブロック5-12において、血管収縮または血管拡張に関連する特性が再度感知され、ブロック5-14において、血管収縮か血管拡張かの判定が行われる。
【0064】
身体部分が血管拡張状態にあると判定された場合、本方法は、ブロック5-20において血管収縮が既に感知されているか否かを判定する。感知されていない場合は、ブロック5-10における当初の設定温度より低い温度までインターフェース温度T設定値を低下させ、そして、ブロック5-12において血流または他の特性を再度感知してもよい。血管収縮が既に感知されている場合、本方法は、最後に検出された血管収縮温度より高い温度までインターフェース温度T設定値を低下させる。
【0065】
本アルゴリズムの、選択的な第二の機能は、制御された身体核心部の除熱治療の過程をモニターおよび管理することを目的として、哺乳動物の核心体温を感知すること(体温センサ11に関して前述および図1に示した)を含んでいてもよい。本方法のこの機能は、好ましくは、核心体温を正常より低い温度まで下げることが望ましい状況で用いられ、一般的に核心体温がより注意深くモニターされる。図5に5-2として示すように、アルゴリズムのこの機能は、身体部分からの熱伝達の作用を継続的にモニターおよび管理し、これにより身体核心部の除熱を制御するように機能する。特に、例示的な方法のこの局面は、哺乳動物の核心体温に関するデータを取得し、その値をT最大熱伝達と比較する。核心体温が、その哺乳動物についてあらかじめ確立されたT最大熱伝達と同じかそれ以上である場合、本方法は、現在のTインターフェース(前述)の値で治療を続行させる。核心体温がT最大熱伝達より低いと算出された場合、本方法は、Tインターフェースを増加させる信号を発し、核心体温が再度T最大熱伝達に達するまで核心体温のデータを継続的にモニターする。制御された身体核心部の除熱治療をある期間にわたって行うという目標を実現するため、この処理をサイクル式に繰り返してもよい。
【0066】
具体的には、図5において、例示的な方法は、任意の好適な方法により核心体温を検出するというブロック5-26に進む。ブロック5-28において核心体温が所望の温度より低い場合は、ブロック5-30においてインターフェース温度を上昇させる。次に、核心体温を再度判定してもよく、必要ならばインターフェース温度を上昇させてもよい。
【0067】
図5に示す方法は、好適なアルゴリズムおよびプログラム論理などを有するコントローラによって実行してもよい。または、例えば医師または患者などの人によって、例示的な方法を実行してもよい。さらに、本方法は、特定の順序で発生する特定の事象または演算を示している。別の実施において、特定の事象または演算の順序を変化、修正、または除外してもよい。さらに、説明した方法に動作を追加し、且つ説明した実施に適合することも可能である。さらに、本明細書に説明した演算は逐次的に生じてもよく、または、特定の演算が並列に生じてもよい。
【0068】
例示的な方法およびシステムの1つの利点は、前述および図9に示した生理学的なヒステリシス現象を考慮に入れることにより、血管収縮または血管拡張という開始点からの除熱治療を可能にする、ということを含む。例えば、図10は、哺乳動物の身体部分で最初に血管拡張が検出された場合の図5の方法をグラフに表したものである。この場合、本方法は、血管拡張という開始点から、最初に血管拡張条件が検出された後にT最大熱伝達を確立および維持するように機能する。例示的な方法またはサブルーチン(例えば5-1)は、血管収縮と血管拡張との間の移行に付随するヒステリシス現象および初期条件を考慮に入れている。図9のヒステリシス現象に基づくと、T最大熱伝達の値は、T設定値について選択された任意の値より低い。具体的には、身体部分の血流が血管拡張状態を示しているという図10の点(A)から開始して、Tインターフェースの値は、T設定値と等しくなるよう任意に設定される。次にシステムコントローラは、点(B)に示すように、血管収縮と血管拡張との間の移行温度域を過ぎて血管収縮に達するまで、Tインターフェースの値を徐々に減少させてT設定値の初期値より低い値(例えばT設定値 - X0)にする。次にシステムコントローラは、点(C)に示すように、血管収縮と血管拡張との間の移行温度域に達するまで、Tインターフェースを徐々に増加させてT設定値の初期値より高い値(例えばT設定値 + X0)にしてもよい。最後にシステムコントローラは、点(D)に示すように、Tインターフェースの値をT最大熱伝達の点まで徐々に減少させる。まとめると、このサブルーチンは、T最大熱伝達の値を確立する目的で血管収縮を誘発し、続いて、Tインターフェースの値をT最大熱伝達より高いある点まで増加させることによって血管拡張を再確立し、最後に、TインターフェースをT最大熱伝達の点まで減少させて、哺乳動物の身体部分の温度を操作するように機能する各段階を提供する。
【0069】
図11は、哺乳動物の身体部分で最初に血管収縮が検出された場合の図5の方法をグラフに表したものである。図11に開示するように、アルゴリズムの本サブルーチンは、本方法に付随するヒステリシス現象(前述および図9)を考慮に入れながらT最大熱伝達を確立および維持するように機能する。具体的には、身体部分の血流が血管収縮状態を示しているという図11の点(A)から開始して、Tインターフェースの値は、T設定値と等しくなるよう任意に設定される。次にシステムコントローラは、点(B)に示すように、血管収縮と血管拡張との間の移行温度域に達するまで、Tインターフェースの値を徐々に増加させてT設定値の初期値より高い値(例えばT設定値 + X0)にする。Tインターフェースの値が、点(C)に示すように移行温度域より高くなると、血管拡張が得られる。血管収縮温度を判定するため、システムコントローラは、点(D)に示すように血管収縮が生じるまで、Tインターフェースの値を徐々に減少させる。次に、図9に示すヒステリシス現象を考慮に入れるため、点(E)に示すように血管収縮が再度現れるまで、Tインターフェースを増加させる。次に、点(F)に示すように、Tインターフェースの値をTの点まで減少させる。認識されるべき点として、(前述および図11に示すように)T設定値について選択された値が最初に血管収縮と対応する場合、T最大熱伝達の値は、T設定値について選択された任意の値より大きくなる。したがって、まとめると、例示的な方法は、Tインターフェースの値をT最大熱伝達より高いある点まで増加させることによって血管拡張を誘発し、Tインターフェースを血管収縮温度より低いある点まで減少させ、再度TインターフェースをT最大熱伝達より高いある点まで増加させ、そしてTインターフェースをT最大熱伝達の点まで減少させることによって、哺乳動物の身体部分の温度を操作するように機能する。
【0070】
有用性
前述のように、例示的な方法およびシステムにより、哺乳動物の身体核心部から熱エネルギーまたは熱を取り除くことが可能である。したがって、本方法は、種々の異なる用途に用いるのに好適であり、代表的な用途としては、身体核心部の熱を取り除くことが望ましい、正常および異常な生理学的状態(例えば疾患)の治療がある。本方法が有用である代表的な用途としては、運動または作業誘発性の低体温の治療、脳卒中の治療、嚢胞性線維症の症状の治療、および多発性硬化症の症状の治療などがある。本明細書において治療とは、例えば不快感の軽減、症状の改善または除去など、治療対象の状態に関連する症状のうち1つまたは複数を少なくとも緩和することを意味する。
【0071】
多くの実施例において、本方法は、物理的な手順またはタスクを行う哺乳動物の能力を補強するために用いられる。したがって本方法は、種々の異なる物理的作業が行われる種々の異なる用途に用いるのに好適である。例示のみを目的として後述の代表的な用途を提供する。しかし、注意されるべき点として、本方法は、後述にない他の多数の物理的手順を行うための哺乳動物の物理的能力の補強に用いるのにも好適である。
【0072】
本方法の実施により補強されうる1つの種類の物理的能力は運動能力である。換言すると、本方法は、運動的手順を行うための哺乳動物の能力を向上させるのに用いてもよい。向上または補強の性質は、その哺乳動物が行う運動的手順の性質によって大きく異なり得る。代表的な補強としては以下のものがあるが、それに限定されるわけではない:強度(例えば、特定の重量を持ち上げる能力によって測定されるものなど)の増加;スタミナ(例えば、休息せずにタスクを行うまたはスポーツをする能力として測定されるものなど)の増加;物理的タスクの反復(例えば、ウェイトリフティング、懸垂など)を行うための哺乳動物の能力の向上;能力を制限する苦痛(例えば痙攣など)の減少など。
【0073】
本方法の実施により補強されうる別の種類の物理的能力は物理的作業能力である。換言すると、本方法は、物理的手順に関連する特定の作業を行うための哺乳動物の能力を向上させるのに用いてもよい。物理的手順に関連する作業の例としては以下のものがあるが、それに限定されるわけではない:装置の物理的な建設およびメンテナンス(特に高温環境において);住居およびオフィスの建設および建造など;土木構造物の建設およびメンテナンスなど;発電所または他の産業環境での作業;(特に高温環境におけるまたは重装備を伴う)軍隊環境での作業;重装備が必要な環境での作業。補強は多くの形態を取る可能性があり、形態には以下のものなどがあるが、それに限定されるわけではない:行われ得る反復動作の回数の増加;休息または冷却なしで特定の仕事を行い得る時間の長さの延長;特定の仕事におけるエラーの減少など。
【0074】
多くの態様において、例示的な方法は、回復時間を短縮する以上の結果をもたらして、例えば物理的能力の増強、作業能力の増大など、上記に例示したような他の増強または向上を提供する。前述したように、物理的作業に関連する上記の運動および作業は、本方法を用いて増強されうる手順の代表例にすぎない。
【0075】
特許請求の範囲
以上、種々の特徴を任意で組み込みながら複数の実施例に関して本発明を説明したが、本発明は、本発明の各態様またはバリエーションに関して予期されるものとして説明または提示されたものに限定されることはない。当業者には、本発明の範囲内で多数の修正およびバリエーションが可能であることが理解されるものと思われる。したがって、本発明の幅は、本明細書に提供される説明ではなく、添付の特許請求の範囲の文字どおりのまたは正当な範囲によってのみ限定される。以上を述べたうえで、本発明者らは、添付の特許請求の範囲を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
添付の各図面は本発明の各局面を図示によって示すものである。
【図1】哺乳動物の身体との制御された熱伝達を行うための例示的なシステム構成である。
【図2】熱伝達用の例示的な手インターフェースである。
【図3】熱伝達用の例示的な足インターフェースである。
【図4】体温調節感覚操作装置の種々の例示的な構成である。
【図5】熱伝達のための例示的な制御方法である。
【図6】インターフェース温度と温度勾配との関係を示した例示的なグラフである。
【図7】インターフェース温度と血流との関係を示した例示的なグラフである。
【図8】インターフェース温度と血流との関係を示した例示的なグラフである。
【図9】インターフェース温度と、血管収縮と血管拡張との間の移行を含む血流との関係を示した例示的なグラフである。
【図10】インターフェース温度と、血管収縮と血管拡張との間の移行を含む血流との関係を示した例示的なグラフである。
【図11】インターフェース温度と、血管収縮と血管拡張との間の移行を含む血流との関係を示した例示的なグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の身体部分から熱を伝達するための方法であって、以下の段階を含む方法:
該身体部分において血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階;
血管収縮と判定されたときに該身体部分に熱を供給する段階;および
血管拡張と判定されたときに該身体部分から熱を除去する段階。
【請求項2】
身体部分が、動静脈吻合を含む身体部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
身体部分をあらかじめ選択する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、該血管収縮または血管拡張の状態と関連する身体の特性を感知する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、血流を測定する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
血流を測定する段階が、身体部分の体積を測定する段階をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
血流を測定する段階が、レーザードップラーにより血流を測定する段階をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
血管収縮の状態が血流レベルの第一の範囲と関連し、且つ、血管拡張の状態が血流レベルの第二の範囲と関連する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体部分からの熱伝達を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体の温度を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、核心体温を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、鼓膜温度を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体部分の皮膚温度を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体部分の生体インピーダンスを測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体部分の光吸収を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、EKGを提供する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、ECGを提供する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、身体部分に血管拡張を誘発する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、身体部分に血管収縮を誘発する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、身体部分に表面処置剤を適用する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、哺乳動物の体温調節系に影響を及ぼす段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、哺乳動物の視索前視床下部前部(POAH)に影響を及ぼす段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、あらかじめ選択された少なくとも1つの視覚刺激を提供する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、薬物送達を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、身体部分の温度を調整する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
熱を供給する段階が、血管拡張をもたらすのに十分な熱を供給する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
身体部分に陰圧を印加する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物の身体部分から熱を伝達するための方法であって、以下の段階を含む方法:
該身体部分から熱を除去することによって、血管拡張状態から血管収縮状態への該身体部分の移行を惹起する段階;
血管拡張から血管収縮への移行に関連する移行温度を判定する段階;
該身体部分において血管拡張を再度確立する段階;および
該移行温度と等しいかまたはそれ以上の温度の該身体部分から熱を除去する段階。
【請求項30】
最初に身体部分が血管収縮状態にあるならば、血管拡張から血管収縮への移行を惹起する前に、血管拡張が生じるまで熱を供給する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
血管拡張から血管収縮への移行の温度が2℃以内である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
血管拡張から血管収縮への移行の温度が1℃以内である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
血管拡張を再度確立した後に、血管収縮を惹起することなく温度を低下させる、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜28の一項または複数項に記載の方法をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物の身体部分から熱を伝達するための方法であって、
該身体部分において血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階;
血管拡張と判定されたとき、熱を該身体部分へと伝達することまたは該身体部分から伝達することを選択する段階;および
血管収縮と判定されたとき、該身体部分に熱を供給することおよび該身体部分から熱を除去しないことのうち少なくとも1つを選択する段階
を含み、且つ、該哺乳物の最適な体温調節状態が維持される方法。
【請求項36】
請求項1〜28の一項または複数項に記載の方法をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物の体温を制御するための方法であって、以下の段階を含む方法:
該身体部分の血管収縮または血管拡張の状態と関連する特性の測定結果を利用して制御するための手段により、該身体部分を、該身体部分に血管収縮を起こす温度より高い温度に維持しながら、
該身体部分から熱を除去するまたは該身体部分に熱を供給する段階。
【請求項38】
身体部分の温度が18〜22℃より高く維持される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
身体部分の温度を約25℃より低く維持する段階をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
哺乳動物の体温を制御するための方法であって、以下の段階を含む方法:
身体の少なくとも一部をコンダクタと熱連絡状態にする段階;
該身体部分の血管収縮または血管拡張の状態と関連する特性を測定する段階;および
該特性を血管拡張と関連させる値に基づいて、該身体部分の血管拡張を維持するため該コンダクタの加温または冷却を制御する段階。
【請求項41】
値が以下の段階により判定される、請求項40に記載の方法:
血管拡張が生じるまで熱を供給する段階;
血管収縮が生じるまで熱を除去する段階;
血管拡張を再確立する段階;および
該値を、血管拡張から血管収縮への移行に対応する値と等しいかまたはそれを超える値に設定する段階。
【請求項42】
値が、血管拡張から血管収縮への移行が生じる温度と等しいかまたはそれそれを超えるコンダクタの温度と関連付けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
哺乳動物の身体部分とインターフェースするよう適合されたコンダクタ;
該コンダクタの温度を変化させるよう適合されたコントローラ;および
該身体部分の血管収縮または血管拡張と関連する特性を感知するためのセンサ要素を含む、該哺乳動物の体温を制御するためのシステムであって、
血管拡張の特性に関連するあらかじめ定められたスケジュールに基づいて、該身体部分の血管拡張を維持するために、該コントローラが該コンダクタの該温度を調整するシステム。
【請求項44】
哺乳動物の少なくとも一部およびコンダクタの少なくとも一部と熱連絡状態にある熱交換媒体をさらに含む、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
請求項1〜42の一項または複数項に記載の方法を実行するようにコントローラが適合された、請求項43に記載のシステム。
【請求項1】
哺乳動物の身体部分から熱を伝達するための方法であって、以下の段階を含む方法:
該身体部分において血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階;
血管収縮と判定されたときに該身体部分に熱を供給する段階;および
血管拡張と判定されたときに該身体部分から熱を除去する段階。
【請求項2】
身体部分が、動静脈吻合を含む身体部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
身体部分をあらかじめ選択する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、該血管収縮または血管拡張の状態と関連する身体の特性を感知する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、血流を測定する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
血流を測定する段階が、身体部分の体積を測定する段階をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
血流を測定する段階が、レーザードップラーにより血流を測定する段階をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
血管収縮の状態が血流レベルの第一の範囲と関連し、且つ、血管拡張の状態が血流レベルの第二の範囲と関連する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体部分からの熱伝達を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体の温度を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、核心体温を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、鼓膜温度を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体部分の皮膚温度を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体部分の生体インピーダンスを測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、身体部分の光吸収を測定する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、EKGを提供する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階が、ECGを提供する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、身体部分に血管拡張を誘発する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、身体部分に血管収縮を誘発する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、身体部分に表面処置剤を適用する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、哺乳動物の体温調節系に影響を及ぼす段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、哺乳動物の視索前視床下部前部(POAH)に影響を及ぼす段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、あらかじめ選択された少なくとも1つの視覚刺激を提供する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、薬物送達を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
血管収縮または血管拡張のうち少なくとも1つを制御する段階が、身体部分の温度を調整する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
熱を供給する段階が、血管拡張をもたらすのに十分な熱を供給する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
身体部分に陰圧を印加する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物の身体部分から熱を伝達するための方法であって、以下の段階を含む方法:
該身体部分から熱を除去することによって、血管拡張状態から血管収縮状態への該身体部分の移行を惹起する段階;
血管拡張から血管収縮への移行に関連する移行温度を判定する段階;
該身体部分において血管拡張を再度確立する段階;および
該移行温度と等しいかまたはそれ以上の温度の該身体部分から熱を除去する段階。
【請求項30】
最初に身体部分が血管収縮状態にあるならば、血管拡張から血管収縮への移行を惹起する前に、血管拡張が生じるまで熱を供給する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
血管拡張から血管収縮への移行の温度が2℃以内である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
血管拡張から血管収縮への移行の温度が1℃以内である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
血管拡張を再度確立した後に、血管収縮を惹起することなく温度を低下させる、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜28の一項または複数項に記載の方法をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物の身体部分から熱を伝達するための方法であって、
該身体部分において血管収縮または血管拡張の状態を判定する段階;
血管拡張と判定されたとき、熱を該身体部分へと伝達することまたは該身体部分から伝達することを選択する段階;および
血管収縮と判定されたとき、該身体部分に熱を供給することおよび該身体部分から熱を除去しないことのうち少なくとも1つを選択する段階
を含み、且つ、該哺乳物の最適な体温調節状態が維持される方法。
【請求項36】
請求項1〜28の一項または複数項に記載の方法をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物の体温を制御するための方法であって、以下の段階を含む方法:
該身体部分の血管収縮または血管拡張の状態と関連する特性の測定結果を利用して制御するための手段により、該身体部分を、該身体部分に血管収縮を起こす温度より高い温度に維持しながら、
該身体部分から熱を除去するまたは該身体部分に熱を供給する段階。
【請求項38】
身体部分の温度が18〜22℃より高く維持される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
身体部分の温度を約25℃より低く維持する段階をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
哺乳動物の体温を制御するための方法であって、以下の段階を含む方法:
身体の少なくとも一部をコンダクタと熱連絡状態にする段階;
該身体部分の血管収縮または血管拡張の状態と関連する特性を測定する段階;および
該特性を血管拡張と関連させる値に基づいて、該身体部分の血管拡張を維持するため該コンダクタの加温または冷却を制御する段階。
【請求項41】
値が以下の段階により判定される、請求項40に記載の方法:
血管拡張が生じるまで熱を供給する段階;
血管収縮が生じるまで熱を除去する段階;
血管拡張を再確立する段階;および
該値を、血管拡張から血管収縮への移行に対応する値と等しいかまたはそれを超える値に設定する段階。
【請求項42】
値が、血管拡張から血管収縮への移行が生じる温度と等しいかまたはそれそれを超えるコンダクタの温度と関連付けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
哺乳動物の身体部分とインターフェースするよう適合されたコンダクタ;
該コンダクタの温度を変化させるよう適合されたコントローラ;および
該身体部分の血管収縮または血管拡張と関連する特性を感知するためのセンサ要素を含む、該哺乳動物の体温を制御するためのシステムであって、
血管拡張の特性に関連するあらかじめ定められたスケジュールに基づいて、該身体部分の血管拡張を維持するために、該コントローラが該コンダクタの該温度を調整するシステム。
【請求項44】
哺乳動物の少なくとも一部およびコンダクタの少なくとも一部と熱連絡状態にある熱交換媒体をさらに含む、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
請求項1〜42の一項または複数項に記載の方法を実行するようにコントローラが適合された、請求項43に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−516023(P2007−516023A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539817(P2006−539817)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037540
【国際公開番号】WO2005/048924
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(503174475)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (41)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037540
【国際公開番号】WO2005/048924
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(503174475)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (41)
【Fターム(参考)】
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