説明

商品収容陳列容器

【課題】蓋部を迅速に開閉できると共に、掛け止め部を引っ掛けた際に、蓋側係合部と本体側係合部との相対ずれを防止できる構造の釣竿収納展示容器を提供する。
【解決手段】横断面形状が多角形の縦長容器であり、本体部10と、該本体部の下端開口部を塞ぐ底部40と、本体部の上端開口部を塞ぐ開閉可能な蓋部20とを有し、蓋部は、本体部を形成する側壁の上端部に設けられ、該側壁に対して折り曲げ可能な蓋要素を有し、前記本体部を形成する複数個の側壁10A,10B,10C,10Dの中の特定側壁10Cの外側に設けた本体側係合部を有し、前記蓋要素の中の特定蓋要素20Aに設けられ、該特定蓋要素が折り曲げられてその自由端部側領域20A’が前記特定側壁の外側に覆い被さった状態の場合に、前記本体側係合部と着脱可能に係合できる蓋側係合部を有し、前記特定側壁の上端部に接続した掛け止め部30を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小売店等において、釣竿等の商品を収容すると共に、店内の陳列壁面から突き出たフック部材等に引っ掛け、吊るして展示陳列する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小売店において、釣竿等を陳列販売する場合、釣竿が継式であったり、また短い場合に、従来から、一部に透明なフィルム部を設けると共に、主として厚紙を使って組み立て形成したり、透明状のプラスチックシートを折り曲げ形成して、通常、細長い直方体の陳列容器に入れ、これの上端部に設けた掛け止め部を、店内の陳列壁面から突き出たフック部材に引っ掛け、吊るして陳列することが行われている。
【0003】
図4はその典型的な容器の要部(上方部)を斜視図によって図示しており、蓋部を開放している状態の(a)図と、閉じる途中の(b)図と、完全に閉じた状態の(c)図を示している。容器の本体部10は、4つの長方形の側壁10A,10B,10C,10Dから形成されている。この本体部の上端開口部を塞ぐ蓋部20は、4つの矩形状の蓋要素20A,20B,20C,20Dを有しており、この順番で上記各側壁に対応しており、夫々の側壁上端部を延伸させた形状に一体に接続形成しており、その各境界ライン部を復元可能に折り曲げることができる。
【0004】
本体部の4つの側壁の中の特定側壁10Cの上端近くの位置には、本体側係合部としての面ファスナー(ベルクロテープ(登録商標))10Kが両面テープによって接着固定されている。一方、特定側壁10Cと対向する位置にある側壁10Aに接続している蓋要素(特定蓋要素)20Aの所定位置裏面には、蓋側係合部としての面ファスナー20Kが両面テープによって接着固定されている。また、この特定蓋要素20Aには、切り起こし型の掛け止め部30が設けられている。
【0005】
蓋部20の閉じ方は、まず蓋要素20B,20Dを閉じ、次に、蓋要素20Cを閉じ、最後に特定蓋要素20Aを閉じ、面ファスナー同士10K,20Kを係合させて蓋部20の閉鎖が完了する。この後、掛け止め部30を起こし、その貫通孔30Hに、店の陳列壁面から突き出たフック部材を通して引っ掛け、吊るして陳列する。
また、下記特許文献には本出願人による釣竿収容陳列容器が開示されている。特定側壁1cには延出片1j(掛け止め部)が延設されており、延出片1f(特定蓋要素)の自由端部側領域1oが特定側壁の内側に収納される形態で蓋の閉鎖が成される。
【特許文献1】特開2002−142639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4の形態では、収容釣竿等の全重量が上記掛け止め部30に作用するため、上で説明した形態容器の場合、掛け止め部30と一体の特定蓋要素20Aが本体部10に対して相対的に持ち上がろうとする。それ故に、蓋側係合部である面ファスナー20Kと、本体側係合部の面ファスナー10Kとが相対的に上下の方向に強く引き合うこととなる。これにより、側壁や蓋要素における面ファスナーの接着界面に負荷が作用し、面ファスナーの位置がずれたり、剥離する不具合が発生し得る。接着接合として、両面テープに代えて接着剤にすると作業性が悪く、接着固定までに時間を要する。瞬間接着剤では、合成樹脂製フィルムである容器が白化してしまう。こうしたことのため、両面テープで接着した面ファスナーを、更にホッチギスによって側壁や蓋要素に固定した容器も出現している。
【0007】
こうした金属部品であるホッチギスで固定する場合は、容器製造工程において、その工程が追加される他、出来上がった容器製品の見栄えも決して良くはなく、更には、購入者側において容器を廃棄する際に、ゴミの分別からは金属製ホッチギスを取り除かねばならず、好ましくない。
また、特許文献1の形態の場合は、特定蓋要素の自由端部側領域が容器内部に入った状態にして閉鎖するため、蓋部を開放させる際、特定蓋要素の自由端を指先で引っ掛けることができず、このため蓋部の開放に手間取る欠点がある。
よって本発明が解決しようとする課題は、釣竿等の商品を収容陳列する容器において、蓋部を迅速に開閉できると共に、掛け止め部を引っ掛けた際に、蓋側係合部と本体側係合部との相対ずれを防止できる構造の容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明では、横断面形状が多角形の縦長容器であり、本体部と、該本体部の下端開口部を塞ぐ底部と、本体部の上端開口部を塞ぐ開閉可能な蓋部とを有し、蓋部は、本体部を形成する側壁の上端部に設けられ、該側壁に対して折り曲げ可能な蓋要素を有し、前記本体部を形成する複数個の側壁の中の特定側壁の外側に設けた本体側係合部を有し、前記蓋要素の中の特定の蓋要素に設けられ、該特定蓋要素が折り曲げられてその自由端部側領域が前記特定側壁の外側に覆い被さった状態の場合に、前記本体側係合部と着脱可能に係合できる蓋側係合部を有し、前記特定側壁の上端部に接続した掛け止め部を有することを特徴とする商品収容陳列容器を提供する。
上下は、容器を吊るした状態における上下で表現している。
【0009】
第2の発明では、第1の発明の前記多角形は矩形であり、前記掛け止め部は平板状であって、前記特定蓋要素の領域内部に孔を設けており、前記自由端部領域を前記特定側壁の外側に覆い被せるよう特定蓋要素を折り曲げる際に、前記平板状掛け止め部が前記孔を挿通できると共に、前記孔の、平板状掛け止め部の平板状広がり方向の寸法が該平板状掛け止め部の幅と概ね一致するよう構成する。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明では、掛け止め具を本体部に設けたので、この掛け止め部に対して容器と収容商品の全重量が作用するが、その負荷は本体部が受け止める。従って、前記重量負荷によって蓋部が本体部に対して上方にずれる作用を受けることもない。このため、蓋側係合部と本体側係合部との相対ずれを防止できる。また、特定蓋要素が折り曲げられ、その自由端部側領域が特定側壁の外側に覆い被さって本体側係合部と蓋側係合部とが係合するため、蓋部を開放させる際には、容器の外側に露出した特定蓋要素の自由端を指先で引っ掛けて開放できるため、迅速に可能となる。
【0011】
第2の発明では、蓋部を閉じた場合に平板状掛け止め部の幅と、特定蓋要素の領域内部に設けた孔の同方向の寸法とが概ね同じであるため、特定側壁と、この側壁と対向する側の側壁(特定蓋要素を設けている側壁)とが、前記幅方向に相対的にずれようとした場合に、孔壁と平板状掛け止め部とが干渉し合ってずれに抵抗する。従って、横断面矩形状容器がこの方向にずれるように潰れ変形する(横断面が長方形から平行四辺形に変形する)ことが防止できる。概ね一致するとは、この作用効果を奏するためのものであり、厳密に同じ値ということではなく、数ミリの差を許容する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図面を用いて更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る容器の第1形態例を示す図であり、(a)は展開図、(b)は組み立て途中の要部斜視図、(c)は組み立て終了後の要部斜視図である。容器の基本構造は図4で説明した従来構造を有しており、異なる構造を主に説明する。説明しない構造は図4と同様である。容器の材料は透明状のプラスチック材であり、(a)図に示す通り、1枚のプラスチックシートから折り曲げ形成できる。
【0013】
シートの本体部10に対応する領域には、側壁10A,10B,10C,10Dがこの順に並んで配列しており、その下端部には、本体部の下端開口部を塞ぐための底部40を形成する底部の4つの矩形状底要素40A,40B,40C,40Dが、夫々が独立した折り曲げが可能なように各隣接側縁が分離した状態で形成されている。また、上端部には、本体部の上端開口部を塞ぐ蓋部20の4つの矩形状蓋要素20A,20B,20C,20Dが、夫々が独立した折り曲げが可能なように各隣接側縁が分離した状態で形成されている。自由端部側領域20A’は(特定)蓋要素20Aの一部であり、閉じた場合に本体部の側壁10Cの外側に重合する領域である。
【0014】
図4で説明した構造とは異なり、蓋部20の特定蓋要素20Aには、切り起こし型の掛け止め部は設けられていない。掛け止め部30は、本体部20の特定側壁10Cの上端部に一体接続形成されており、現実には蓋要素20Cの折り曲げライン部で起こされる切り起こし型の掛け止め部として形成されている。一方、特定蓋要素20Aには、閉じた際に蓋要素20Cの折り曲げライン部に対応する位置、即ち、領域20A’の自由端ではない境界ライン付近に、折り曲げラインに平行な細長いスリット状孔20Hを設けており、この孔から掛け止め部30を上方に抜き出すことができる。
【0015】
第1の発明の観点からは、上記孔は掛け止め部が上方に出せればよいので、この孔はスリット状孔に限らず、例えば、当該特定蓋要素20Aの領域20A’の自由端から切り込んで自由端側に開口した矩形開口部としてもよい。しかし、第2の発明の観点からは、領域20A’の自由端側に開口した孔ではなく、こうしたスリット状孔20Hか、又は後述する図2の孔20H’のような、他辺も長目の正方形や長方形の孔でなくてはならない。何れの孔20H,20H’であっても平板状掛け止め部30の幅が、スリット状孔20Hの長手方向辺寸法、又は孔20H’の2辺の内の、平板状掛け止め部30の平板状の広がり方向の辺寸法、即ち、図1(c)、図2(b)の各矢印方向の孔寸法と概ね一致している。このため、容器に対して、側壁10Aと10Cとを相対的に矢印方向にずらせるような変形をさせようとする際、特定側壁10Cに一体の平板状掛け止め部30が、側壁10Aに一体の特定蓋要素20Aの孔壁と干渉し、その変形を防止する。
【0016】
面ファスナーの図示を省略しているが、図4と同様な位置、即ち、特定蓋要素20Aの領域20A’の裏面に蓋側係合部である面ファスナー20Kを設け、本体部10の特定側壁10Cの上端近くに本体側係合部の面ファスナー10Kを設けている。前記スリット状孔20Hに代えて、既述した自由端側に矩形開口した開口部とする場合は、その矩形開口部の左右位置に面ファスナー20Kを分割配設し、面ファスナー10Kも対応して分割配設させればよい。
【0017】
上記構造の容器では、特定蓋要素20Aの自由端部側領域20A’が特定側壁10Cの外側に重合するため、領域20A’の自由端に指先を引っ掛けることができ、蓋部の迅速な開放が可能となる。また、その掛け止め部30が、本体部20の特定側壁10Cの上端部に一体接続形成されているため、吊るした際の重量負荷は、この掛け止め部材30と特定側壁等の本体部10で受け止め、特定蓋要素20Aには及ばない。従って、面ファスナー10K,20Kの各接着境界に重量負荷が作用することは防止でき、相対位置もずれることが防止されて面ファスナーの接着位置が安定保持できる。
【0018】
図2は第1形態例の変形例ともいえる第2形態例を示す斜視図である。第1形態例と異なるのは、第1形態例と同じ掛け止め部30の他に、特定蓋要素の領域20A’の境界ライン部に折り曲げ部を有するように切り起こし型の掛け止め部32を設けていることである。容器を組み立てる際には、掛け止め部32を起こした後に、第1形態例のスリット状孔20Hに対応する矩形孔20H’が形成され、ここに側壁10Cの上端部に一体に接続した掛け止め部30を挿通させ、2つの掛け止め部30,32を揃えられる。この状態で揃った貫通孔30H(32H)にフック部材を挿通させて吊るすことができ、貫通孔周辺の掛け止め部の強度を向上できる。
【0019】
この形態例の場合も、蓋部の開放が迅速に行えると共に、2つの掛け止め部30,32の一方30が、鉛直状の特定側壁10Cに対して、その側壁の延長として一体化接続されているため、吊るした際の重量荷重は特定側壁10Cに対して引っ張り荷重として作用するに過ぎず、特定蓋要素20Aには作用しない。従って、他方の掛け止め部32を介して、特定蓋要素20Aに負荷を及ぼそうとしても、一方30にその負荷が伝達され、結局、特定蓋要素20Aに対しては負荷が及ばず、各面ファスナーの接着位置が安定保持される。
【0020】
本発明では、容器を吊るした際に、特定蓋要素を開放させるようには力が作用しない構造であるため、第2形態例の変形例としての図3では、本発明では蓋側係合部と本体側係合部とが、面ファスナーの如き強い引っ張り力に耐える係合でなくてもよいことを例示したものであり、第3形態例を示している。特定蓋要素20Aの領域20A’の自由端に舌状係合部20K’を延設し、これに対応した特定側壁10Cの位置には、スリット状切欠又は孔10K’を設けている。この孔10K’に舌状係合部20K’を挿入するだけでよい。第1形態例の構造に対しても同様である。
【0021】
第3形態例の場合は、容器が、プラスチック材以外の材料部材(面ファスナーの部材)を使用することなく単一の材料(プラスチック材)で形成でき、容器廃棄の際に分別の必要が無く、便利である。
【0022】
以上の形態例では、特定蓋要素20Aの領域20A’が重なり合う特定側壁10Cの上端部に接続した掛け止め部30を必須としており、展示の際は1、通常、特定側壁は容器の裏側となる。このため、陳列壁面から突き出たフック部材に引っ掛け、吊るして陳列する場合に、掛け止め部材30をフック部材の奥の壁面に近接(接触)させて陳列できる。従って、フック部材の長さを最も効率的に使用でき、多くの容器を吊るすことができる。
【0023】
以上の説明では、容器は直方体の形状をなしていたが、第1の発明の観点では、横断面が三角形や六角形等、他の多角形でもよい。また、何れの発明でも、容器の構成材はプラスチック材でなくてもよく、厚紙等でもよい。更には、容器内に収容する商品は釣竿以外でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、釣竿を収容すると共に、店内のフック部材等に引っ掛け、吊るして陳列をする容器等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明に係る容器の第1形態例を示す図である。
【図2】図2は第2形態例を示す図である。
【図3】図3は第3形態例を示す図である。
【図4】図4は従来構造を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
10 容器の本体部
10A,10B,10D 側壁
10C 特定側壁
20 蓋部
20B,20C,20D 蓋要素
20A 特定蓋要素
30,32 掛け止め部
40 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が多角形の縦長容器であり、本体部(10)と、該本体部の下端開口部を塞ぐ底部と、本体部の上端開口部を塞ぐ開閉可能な蓋部(20)とを有し、
蓋部は、本体部を形成する側壁の上端部に設けられ、該側壁に対して折り曲げ可能な蓋要素を有し、
前記本体部を形成する複数個の側壁の中の特定側壁(10C)の外側に設けた本体側係合部(10K)を有し、
前記蓋要素の中の特定の蓋要素(20A)に設けられ、該特定蓋要素が折り曲げられてその自由端部側領域(20A’)が前記特定側壁の外側に覆い被さった状態の場合に、前記本体側係合部と着脱可能に係合できる蓋側係合部(20K)を有し、
前記特定側壁の上端部に接続した掛け止め部(30)を有する
ことを特徴とする商品収容陳列容器。
【請求項2】
前記多角形は矩形であり、前記掛け止め部は平板状であって、前記特定蓋要素の領域内部に孔を設けており、前記自由端部領域を前記特定側壁の外側に覆い被せるよう特定蓋要素を折り曲げる際に、前記平板状掛け止め部が前記孔を挿通できると共に、前記孔の、平板状掛け止め部の平板状広がり方向の寸法が該平板状掛け止め部の幅と概ね一致する請求項1記載の商品収容陳列容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−30635(P2010−30635A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195274(P2008−195274)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】