説明

商品販売データ処理装置およびその制御プログラム

【課題】処理状態に応じた最適な表示画面の視野角を実現し、操作性を高く維持したまま秘匿情報の覗き見を防止する商品販売データ処理装置およびその制御プログラムを提供すること。
【解決手段】オペレータ側表示器2又は客側表示器3の表示画面上における任意領域の視野角を第1の視野角又はこの第1の視野角よりも狭い第2の視野角のいずれかに設定する視野角設定手段を設ける。そして、商品販売データ処理装置1の処理状態に応じて視野角設定手段を動作させ、オペレータ側表示器2又は客側表示器3の表示画面上における秘匿情報の表示領域の視野角を第2の視野角に設定し、その他の領域の視野角を第1の視野角に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品販売店舗あるいは役務提供店舗にて会計処理に使用される商品販売データ処理装置およびその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人情報や営業秘密などの秘匿情報の保護が、益々重要視されている。この傾向を受け、各種電子機器の表示器に表示される情報の保護に関する発明が多くなされている。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2には、金融機関やコンビニエンスストアに設置される自動取引端末が備える表示器の視野角制御に関する発明が開示されている。
特許文献1に記載された表示制御装置は、自動取引端末の表示器にデータ入力用の操作画面を表示する場合にのみ、該表示器の表示画面の視野角を狭く制御する手段を有している。この手段を設けることで、暗証番号などの秘匿情報を第三者に視認される蓋然性を軽減できる。
【0004】
また、特許文献2に記載された自動取引装置は、第1視野角方向と第2視野角方向とから視認できる画像を表示器に選択的に表示する手段を有している。この手段を設けることで、第三者が顧客の動作を観察したり、カメラで表示器の表示画面を撮影したりしても、容易に暗証番号や口座番号を知ることができなくなる。
【0005】
また、個人情報等が表示される表示器の表面に微小ルーバー層を持つフィルムを貼り付けて視野角を狭くする方法も一般的であり、様々な分野にて使用される電子機器の表示器に採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
商品販売店舗や役務提供店舗にて会計処理に使用される商品販売データ処理装置が備える表示器にも、秘匿情報が頻繁に表示される。例えば、商品情報の登録業務においては顧客がクレジットカードにて決済した場合はクレジットカード番号や顧客氏名などの個人情報が表示され、点検業務中においては店舗の売り上げ情報などが表示される。これらの情報を保護すべく、商品販売データ処理装置のディスプレイにも視野角を制御する手段を講じる必要性がある。
【0007】
しかしながら、自動取引処理装置は顧客が短時間使用するものであるのに対し、一般的に商品販売データ処理装置はオペレータが連続して長時間使用するものである。また、自動取引装置に比べて秘匿情報が表示される場面および表示画面全体における表示箇所は限定的であり、操作性を考慮すれば視野角が広く視認し易い表示が望まれる。
【0008】
ここで、商品販売データ処理装置に対して上述の従来技術を応用して視野角を制御したとすると、第三者に視認されても全く差し支えない表示画面が表示されている場合や、個人情報等が表示されているが他の表示領域の視認性を低下させたくない場合であっても、彼此区別することなく一律に視野角を狭く制御してしまう。したがって、表示画面の視認性が低下することにより操作性が悪化し、オペレータの誤操作が発生し易くなる、作業効率の低下が懸念されるなどの問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理状態に応じた最適な表示画面の視野角を実現し、操作性を高く維持したまま秘匿情報の覗き見を防止する商品販売データ処理装置およびその制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、各種情報を表示する表示手段を備えた商品販売データ処理装置において、前記表示手段の表示画面上における任意領域の視野角を第1の視野角又はこの第1の視野角よりも狭い第2の視野角のいずれかに設定する視野角設定手段と、当該商品販売データ処理装置の処理状態に応じて前記視野角設定手段を動作させ、前記表示画面上における秘匿情報の表示領域の視野角を前記第2の視野角に設定し、その他の領域の視野角を前記第1の視野角に設定する制御手段とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
かかる手段を講じた本発明によれば、処理状態に応じた最適な表示画面の視野角を実現し、操作性を高く維持したまま秘匿情報の覗き見を防止する商品販売データ処理装置およびその制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態における商品販売データ処理装置の外観斜視図。
【図2】同実施形態における制御回路を示すブロック図。
【図3】同実施形態における偏光部材の構成を説明するための模式図。
【図4】同実施形態における視野角制御テーブルのデータ構造を示す模式図。
【図5】同実施形態における視野角制御処理の流れ図。
【図6】同実施形態における登録業務のアプリケーション画面を示す模式図。
【図7】同実施形態における点検業務のアプリケーション画面を示す模式図。
【図8】本発明の第2の実施形態における視野角制御処理の流れ図。
【図9】本発明の変形例における偏光部材の構成を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る商品販売データ処理装置1の外観斜視図である。商品販売データ処理装置1は、本体10にオペレータ側表示器2、客側表示器3、キーボード4およびカードリーダ5などを備えている。
【0014】
オペレータ側表示器2は、商品販売データ処理装置1のオペレータに対して実行中の処理内容に応じた各種情報を表示する。客側表示器3は、客に対して商品や店舗の宣伝広告、イベント情報、ニュースおよび天気予報などの各種コマーシャル情報や、取引の代金などを表示する。なお、オペレータ側表示器2および客側表示器3は、本実施形態における表示手段として機能する。
【0015】
キーボード4は、数値を入力するための置数キー,取引の合計金額を算出するための現計キー,取引の終了を宣言するための締めキーおよび磁気カードの読み取りを宣言するためのカードキーなどの操作キーのほか、オペレータが所持する鍵により回動動作し、停止位置に応じて業務処理を切り替える鍵スイッチ6を備えている。カードリーダ5は、クレジットカード、デビットカードおよび顧客に対して付与された優待ポイントを記憶したポイントカードなどの磁気カードがスライドされたことに応じて、それらの磁気カードに記憶された情報を読み取る。なお、カードリーダ5は、本実施形態におけるカード読取手段として機能する。
【0016】
次に、商品販売データ処理装置1の制御回路について説明する。図2は、商品販売データ処理装置1の制御回路を示すブロック図である。この制御回路は、本体10に内蔵された回路にオペレータ側表示器2、客側表示器3、キーボード4およびカードリーダ5を接続して構成されている。
【0017】
オペレータ側表示器2の表示画面は、表示方向の最上面から順に略同一の幅寸法の矩形平板状に形成されたタッチパネル2a、液晶パネル2b、偏光部材2c、バックライトユニット2dを重ね合わせた構造を有する。また、客側表示器3は、オペレータ側表示器2と同じく表示方向の最上面から順に略同一の幅寸法の矩形平板状に形成されたタッチパネル3a、液晶パネル3b、偏光部材3c、バックライトユニット3dを重ね合わせた構造を有する。
上記液晶パネル2b,3bは、本実施形態における表示部材として機能し、上記偏光部材2c,3cは、本実施形態における視野角設定手段として機能する。
【0018】
本体10内の回路は、制御部11にROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ハードディスクドライブ(HDD)14、タッチパネルコントローラ15、液晶パネルコントローラ16および偏光ブロックコントローラ17をアドレスバスやデータバスなどのバスラインで接続して構成されている。
【0019】
上記制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やシステムメモリなどで構成された商品販売データ処理装置1のメインの制御手段である。上記ROM12は、商品販売データ処理装置1の動作に必要なプログラムなどの固定的情報を記憶している。上記RAM13は、処理場面に応じて作業用の記憶領域を形成する。上記ハードディスクドライブ14は、アプリケーション(AP)ファイル20と視野角制御テーブル30とを記憶している。アプリケーションファイル20は、買い上げ商品の商品データを登録する商品登録業務や店舗の売り上げ情報を処理する点検業務などのアプリケーションを実行するためのデータにて構成されている。視野角制御テーブル30については、図4の説明にて後述する。
【0020】
上記タッチパネル2a、3aは、例えば抵抗膜方式のタッチパネルであり、タッチ操作位置に応じた電気信号を出力する。上記タッチパネルコントローラ15は、タッチパネル2a,3aから出力される電気信号を取り込んで操作位置座標を算出し、その算出結果を制御部11に通知する。上記液晶パネルコントローラ16は、制御部11から送られてきたデータに応じた表示信号を液晶パネル2b,3bに供給し、液晶パネル2b,3bは、供給される表示信号に応じた画像を表示面に表示する。上記バックライトユニット2d,3dは、システムの起動当初において制御部11からの制御信号を受けて点灯し、システムの終了時において制御部11からの制御信号を受けて消灯する。
【0021】
次に、上記偏光部材2c,3cについて説明する。
図3は、偏光部材2cの構成を説明するための模式図である。偏光部材2cは、オペレータ側表示器2の表示画面の縦横それぞれの幅を4等分した大きさの矩形平板状に形成された12枚の偏光ブロックA1〜A4,B1〜B4,C1〜C4,D1〜D4を組み合わせて構成されている。
【0022】
各偏光ブロックA1〜D4は、透明電極が設けられた基盤によって狭持される高分子分散液晶を有するPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)などの透明散乱切替素子にて構成されている。透明散乱切替素子は、例えば特開2008−107404号公報に開示されたものを用いる。当該公報に開示された透明散乱切替素子は、透明電極対間に電圧を印加した状態においてポリマー鎖と高分子分散液晶の屈折率が一致し、透明状態となる。この状態では、バックライトユニットなどの光源から発せられた光の出射角度範囲が制限されるので、表示器の表示画面の視野角が狭くなる。一方、透明電極対間に電圧が印加されていない状態においては、ポリマー鎖と高分子分散液晶の屈折率が不一致となる。この状態では、光源から発せられた光が透明散乱切替素子を通過する際に散乱する。そのため、光源から発せられた光の出射角度範囲が広くなるので、表示画面の視野角が広くなる。このような構成の透明散乱切替素子を用いることにより、表示画面の視野角が電気的に調整可能となる。
【0023】
但し、本実施形形態における12枚の偏光ブロックA1〜D4は、上記偏光ブロックコントローラ17とそれぞれ別個の信号線にて接続されており、偏光ブロックコントローラ17は、各偏光ブロックA1〜D4に対して選択的に電圧信号を印加する。
【0024】
この電圧信号が印加されていない偏光ブロックに対するバックライトユニット2dからの入射光は散乱するため、当該偏光ブロックからの出射光は拡散光として液晶パネル2b内を通過する。このとき、オペレータ側表示器2の画面から発せられる光は、画面に対する法線方向のみならず、全方向に拡散される。そのため、画面の正面のみならず斜め方向にも一定以上の輝度およびコントラスト比が保持され、幅広い範囲からオペレータ側表示器2の表示画像を視認することができる。以下、このような状態を広視野角(第1の視野角)状態と称呼する。
【0025】
一方、上記電圧信号が印加されている偏光ブロックに対するバックライトユニット2dからの入射光は透過して液晶パネル2b,3b内を通過する。このとき、オペレータ側表示器2の画面から発せられる光は、画面に対する略法線方向のみに限定される。そのため、オペレータ側表示器2を正面から見た場合には、電圧非印加時と同じく表示画面を視認することができるが、斜め方向から見た場合には、正面から見た場合に比べて極端に輝度が低下して表示画像を視認することができない。以下、このように広視野角状態に比べて視野角が狭い状態を狭視野角(第2の視野角)状態と称呼する。
【0026】
なお、客側表示器3の偏光部材3cについても、オペレータ側表示器2の偏光部材2cと同様に複数区分に分割された偏光ブロックからなり、偏光ブロックコントローラ17により各偏光ブロックが別個独立して制御される。かくして、オペレータ側表示器2および客側表示器3の表示画面は、局所的にその視野角を広視野角/狭視野角間で切替制御することができる。
【0027】
次に、上記視野角制御テーブル30について説明する。
図4は、視野角制御テーブル30のデータ構造の一例を示す模式図である。視野角制御テーブル30は、データエリア31と、このデータエリアに対応付けられたデータエリア32とを備えている。
【0028】
データエリア31には、アプリケーションファイル20に基づいて実行されるアプリケーションの実行画面の種別が登録されている。データエリア32には、データエリア31に登録されたアプリケーション画面において、個人情報や店舗の売上情報などの秘匿情報が表示される領域に対応する偏光ブロックの識別子が登録されている。
【0029】
本実施形態においては、図4に示すように商品データ登録用のアプリケーションの実行画面を指す“登録業務”に対応付けて偏光ブロックD2を示す“D2”が登録され、点検業務用のアプリケーションの実行画面を指す“点検業務”に対応付けて偏光ブロックB1〜B4,D1〜D4を示す“B1〜B4,D1〜D4”が登録されている。
なお、視野角制御テーブル30は、本実施形態における領域登録手段として機能する。
【0030】
以上説明した商品販売データ処理装置1の構成において、制御部11は、次の機能を実現する。
【0031】
(1)商品販売データ処理装置1の処理状態に応じて偏光部材2c,3cを動作させ、オペレータ側表示器2および客側表示器3の表示画面上における秘匿情報の表示領域の視野角を狭視野角に設定し、その他の領域の視野角を広視野角に設定する制御機能。
【0032】
(2)オペレータ側表示器2および客側表示器3の表示画面を切り替える際に当該切り替え後の表示画面の種別に対応付けられた秘匿情報の表示領域を視野角制御テーブル30から特定する領域特定機能。
【0033】
次に、上記のような構成の商品販売データ処理装置1の動作について説明する。
商品販売データ処理装置1のシステム起動当初において、オペレータ側表示器2の表示画面は広視野角状態となっている。そして、システム起動が完了した後には、ROM12に記憶された視野角制御プログラムと視野角制御テーブル30とがRAM13にロードされ、図5に示した流れの視野角制御処理がOSやアプリケーションによる処理と平行して実行される。
先ず、制御部11は、キーボード4からのキー操作入力あるいは鍵スイッチ6による業務の指定を受け付ける(ST101)。この処理では、システムの起動当初であるならば鍵スイッチ6の停止位置に応じたアプリケーションの指定が受け付けられることとなり、既にアプリケーションが実行されている状態ならばアプリケーションの処理の中での操作が受け付けられることとなる。
【0034】
何らかの操作入力を受け付けたならば、制御部11は、アプリケーション画面の切り替えが必要であるか否かを半定する(ST102)。アプリケーション画面の切り替えを要しない場合には(ST102のNo)、受け付けた操作に応じた処理を実行し(ST103)、次の操作入力を受け付ける(ST101)。
【0035】
一方、何らかのアプリケーションが新たに実行されたことによりアプリケーション画面が表示される場合や、現在実行中のアプリケーションの処理であっても画面の切り替えを伴う場合には(ST102のYes)、オペレータ側表示器2に表示すべきアプリケーション画面をアプリケーションファイル20が有する画面データから特定する(ST104)。表示すべきアプリケーション画面を特定したならば、視野角制御テーブル30を参照し、当該アプリケーション画面の種別がデータエリア31に登録されているか否かを判定する(ST105)。
【0036】
ST104の処理にて特定したアプリケーション画面の種別が視野角制御テーブル30のデータエリア31に登録されていない場合には(ST105のNo)、制御部11は、偏光ブロックコントローラ17に対してオペレータ側表示器2の偏光ブロックA1〜D4の全てを広視野角状態に移行すべき旨の制御信号を出力する(ST106)。この制御信号を受け取った偏光ブロックコントローラ17は、各偏光ブロックA1〜D4が広視野角状態にある場合には電圧信号を印加せずにそのまま広視野角状態を維持し、狭視野角状態にある場合には電圧信号の印加を停止して広視野角状態に切り替える。
【0037】
一方、ST104の処理にて特定したアプリケーション画面の種別が視野角制御テーブル30のデータエリア31に登録されている場合には(ST105のYes)、制御部11は、当該アプリケーション画面の種別に対応付けて視野角制御テーブル30のデータエリア32に登録された偏光ブロックの識別子と、狭視野角状態に移行すべき旨の制御信号とを、偏光ブロックコントローラ17に対して出力する(ST107)。この識別子と制御信号とを受け取った偏光ブロックコントローラ17は、識別子にて指定された偏光ブロックが狭視野角状態にある場合にはそのまま狭視野角状態を維持し、広視野角状態にある場合には電圧信号の印加を開始して狭視野角状態に切り替える。
【0038】
このように、オペレータ側表示器2に対して広視野角状態と狭視野角状態との切り替えを行った後、制御部11は、ST104の処理にて特定したアプリケーション画面の画像データを作成し、当該画像データを液晶パネルコントローラ16に出力する(ST108)。この画像データを受け取った液晶パネルコントローラ16は、当該画像データに基づく表示信号を液晶パネル2bに供給してアプリケーション画面を表示させる。
【0039】
以降においても、上記ST101〜ST108の処理が繰り返し実行される。すなわち、キーボード4、タッチパネル2a、あるいは鍵スイッチ6の操作により何らかの入力がなされ、オペレータ側表示器2に表示されたアプリケーション画面が切り替えられる際に視野角制御テーブル30が参照され、そのアプリケーション画面の種別がデータエリア31に登録されているならば、登録された偏光ブロックが動作して秘匿情報の表示領域の視野角を狭視野角に切り替える。
【0040】
図4に示した視野角制御テーブル30および図6,7を用いて、上記視野角制御処理を経てオペレータ側表示器2に表示されるアプリケーション画面の具体例について説明する。
図6は、商品情報の登録業務を行うアプリケーション画面40の一例を示す模式図である。このアプリケーション画面40には、商品キー群41、登録情報表示エリア42、操作キー群43、客層入力キー44、客層表示エリア45、顧客特定キー46および顧客情報表示エリア47などが表示されている。商品キー群41および操作キー群43を構成する操作キー、客層入力キー44、顧客特定キー46は、タッチパネル2aを介しての接触操作が可能である。
【0041】
商品キー群41は、顧客の買い上げ商品を指定する商品キーや商品情報登録の締めを宣言する小計キーなどで構成されている。登録情報表示エリア42には、上記商品キーの操作にて指定され、買い上げ商品として登録された商品の商品情報や取引の合計金額が表示される。操作キー群43は、数値入力用の置数キー、値引き処理用の値引キー、割引処理用の割引キー、取引の締めを宣言する預/確定キーなどで構成されている。客層入力キー44は、客の性別や年齢などで構成される客層情報の入力を宣言する操作キーである。客層表示エリア45には、客層情報の入力が宣言された後に操作キー群43の操作により入力された客層データが表示される。顧客特定キー46は、会員番号,クレジット番号および顧客名称からなる顧客情報の特定を宣言する操作キーである。顧客情報の特定が宣言された後にカードリーダ5にクレジットカードやポイントカードがスライドされると、これらのカードから読み取られたカード情報に基づいてハードディスクドライブ14に記憶された顧客データベースに予め登録された顧客情報が特定される。顧客情報表示エリア47には、上記顧客データベースから特定された顧客情報が表示される。
【0042】
アプリケーション画面40を表示するアプリケーションが実行されると、視野角制御テーブル30のデータエリア31から“登録業務”が検索され、“登録業務”に対応付けてデータエリア32に登録された偏光ブロックの識別子“D2”が特定される。そして、制御部11が偏光ブロックD2の識別子と、狭視野角状態に移行すべき旨の制御信号とを偏光ブロックコントローラ17に出力する。これを受けて偏光ブロックコントローラ17が制御対象の偏光ブロックD2に電圧信号を印加して狭視野角状態へと切り替える。その後、アプリケーション画面40の画像データが液晶パネルコントローラ16に供給され、オペレータ側表示器2にアプリケーション画面40が表示される。このとき、偏光ブロックD2に対応する部分(斜線を付して示している)のみ狭視野角状態に移行しているため、顧客の個人情報などの秘匿情報が表示される客層表示エリア45および顧客情報表示エリア47は他の部分に比べて視野角が狭く、周囲から視認しにくくなる。
【0043】
図7は、点検業務を行うアプリケーション画面50の一例を示す模式図である。このアプリケーション画面50には、点検項目群51や点検情報表示エリア群52などが表示されている。
【0044】
点検項目群51は、客数,売上点数,総売上,返金金額などの点検項目にて構成されている。点検情報表示エリア群52は、点検項目群51に対応する人数、点数、金額、回数などの情報が表示されている。
【0045】
アプリケーション画面50を表示するアプリケーションが実行されると、視野角制御テーブル30のデータエリア31から“点検業務”が検索され、“点検業務”に対応付けてデータエリア32に登録された偏光ブロックの識別子“B1〜B4,D1〜D4”が特定される。そして、制御部11が偏光ブロックB1〜B4,D1〜D4の識別子と、狭視野角状態に移行すべき旨の制御信号とを偏光ブロックコントローラ17に出力する。これを受けて偏光ブロックコントローラ17が制御対象の偏光ブロックB1〜B4,D1〜D4に電圧信号を印加して狭視野角状態へと切り替える。その後、アプリケーション画面50の画像データが液晶パネルコントローラ16に供給され、オペレータ側表示器2にアプリケーション画面50が表示される。このとき、偏光ブロックB1〜B4,D1〜D4に対応する部分(斜線を付して示している)のみ狭視野角状態に移行しているため、店舗の売上金額などの秘匿情報が表示される点検情報表示エリア群52は他の部分に比べて視野角が狭く、周囲から視認しにくくなる。
【0046】
ところで、本実施形態においては、オペレータ側表示器2のみならず客側表示器3の表示画面に関してもアプリケーション画面の種別に応じて視野角が局所的に制御される。
視野角を制御すべきアプリケーション画面としては、例えばチケットの販売処理や宅配便の受け付け処理に関するアプリケーション画面が挙げられる。チケットの販売処理においては、顧客に購入チケットの情報を確認させるべく客側表示器3にチケット情報や顧客の氏名、住所、年齢などの個人情報を表示したり、Yes/Noを選択可能な操作キーを表示して顧客に対しチケット情報や個人情報が正しいか否かの確認を求めたりする場合がある。また、宅配便の受け付け処理においては、Yes/Noを選択可能な操作キーを表示して顧客に対して送り元や送り先に関する情報が正しいか否かの確認を求める場合がある。これらの場合、顧客は、表示内容を第三者に視認されることを好ましく思わないことが多いので、オペレータ側表示器2と同様に視野角を制御する。
【0047】
客側表示器3の表示画面の視野角を制御する手順は、オペレータ側表示器2の視野角を制御する手順と同様である。すなわち、視野角制御テーブル30にアプリケーション画面の種別を登録し、それに対応付けて制御対象とする偏光ブロックの識別子を登録しておく。そして、上記チケットの販売処理や宅配便の受け付け処理に関するアプリケーションの実行が指示された際に表示すべきアプリケーション画面の種別を特定し(ST104)、視野角制御テーブル30を参照して当該アプリケーション画面の登録エリアを検索する(ST105)。そして、当該アプリケーション画面の種別に対応付けて登録された偏光ブロックに電圧信号を印加して、該偏光ブロックに対応する領域のみ狭視野角状態へと移行させた後(ST107)、アプリケーション画面を表示する(ST108)。このようにすれば、客側表示器3に関しても秘匿情報の表示領域のみ視野角を狭く設定することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態における商品販売データ処理装置1は、処理状態に応じて偏光部材2c,3cを動作させ、オペレータ側表示器2および客側表示器3の表示画面上における秘匿情報の表示領域の視野角のみを狭視野角に設定し、その他の領域を広視野角に設定する。このように秘匿情報の表示領域の視野角を狭く設定することで、当該領域に表示された秘匿情報の覗き見を防止することができる。さらに、秘匿情報の表示領域以外の部分の視野角は広く保たれるので、本来の操作性を最大限維持することができる。
【0049】
また、オペレータ側表示器2および客側表示器3の表示画面を切り替える際に偏光部材2c,3cを動作させる。そのため、秘匿情報が画面上に表示された際には確実に当該表示領域の視野角を狭く設定することができる。
【0050】
また、偏光部材2c,3cを構成する各偏光ブロックの制御は、アプリケーション画面の種別に対応付けて制御対象ブロックの識別子を登録した視野角制御テーブル30に従って実行される。そのため、例えば商品販売データ処理装置1に新規アプリケーションをインストールした場合であっても、そのアプリケーション画面の種別に対応付けて秘匿情報の表示領域に対応する偏光ブロックの識別子を視野角制御テーブル30に登録するだけで視野角の制御が可能である。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態における商品販売データ処理装置1は、表示画面の切り替えタイミングではなく、カードリーダ5によりクレジットカード、デビットカードまたはポイントカードなどの各種磁気カードの読み取りがなされたことに応じてオペレータ側表示器2の表示画面の視野角を制御する点で前記実施形態と異なる。なお、前記実施形態と同一の箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
本実施形態における視野角制御テーブル30には、カードリーダ5にて顧客のカードが読み取られた際に、当該顧客の個人情報が表示される偏光ブロックの識別子が登録されている。
【0053】
また、本実施形態における制御部11は、前記実施形態にて説明した機能に加えて次の機能を実現する。
【0054】
(1)カードリーダ5にてカード情報が読み取られたことに応じて偏光部材2c,3cを動作させ、当該カード情報に基づいて特定される秘匿情報の表示領域の視野角を狭視野角に設定し、その他の領域の視野角を広視野角に設定する制御機能。
【0055】
次に、本実施形態における商品販売データ処理装置1の動作について説明する。
図8は、オペレータ側表示器2の視野角制御処理において制御部11が実行する処理の流れ図である。この処理は、キーボード4に設けられた磁気カードの読み取りを宣言するための操作キーであるカードキーが操作されたことをトリガとして、ROM12に記憶された動作プログラムに基づいて実行される。
【0056】
先ず、制御部11は、カードリーダ5によるカード情報の読み取りを待つ(ST201)。カードリーダ5に磁気カードがスライドされ、当該磁気カードに記憶されたカード情報が読み取られた場合には(ST201のYes)、視野角制御テーブル30を参照して当該テーブル30に登録された偏光ブロックの識別子を特定する(ST202)。そして、視野角制御テーブル30から特定した偏光ブロックの識別子と、狭視野角状態に移行すべき旨の制御信号とを、偏光ブロックコントローラ17に対して出力する(ST203)。この識別子と制御信号とを受けた偏光ブロックコントローラ17は、識別子にて指定された偏光ブロックが狭視野角状態にある場合にはそのまま狭視野角状態を維持し、広視野角状態にある場合には電圧信号の印加を開始して狭視野角状態に切り替える。
【0057】
オペレータ側表示器2の表示画面の所定領域に対して狭視野角状態への切り替えを行った後、制御部11は、ST201の処理にて読み取ったカード情報に基づいてハードディスクドライブ14に記憶されたデータベースを参照することで、あるいはネットワークを介して外部サーバにアクセスすることで顧客の会員番号や氏名などの個人情報を特定し、当該個人情報の画像データを液晶パネルコントローラ16に出力する(ST204)。この画像データを受け取った液晶パネルコントローラ16は、当該画像データに基づく表示信号を液晶パネル2bに供給してアプリケーション画面中の所定領域に上記個人情報を表示させる。
【0058】
このように視野角が制御され、個人情報が表示されたアプリケーション画面は、例えば図6に示したアプリケーション画面40と同様に、個人情報が表示される顧客情報表示エリア47を含む偏光ブロックD2の領域のみが狭視野角状態に移行し、その他の領域では広視野角状態が維持される。
【0059】
個人情報をオペレータ側表示器2に表示した後、制御部11は、カード情報を使用する一連の処理の終了を待つ(ST205)。キーボード4に設けられた顧客との取引完了を宣言する締めキーが操作された場合などには、カード情報を使用する一連の処理が終了したと判断し(ST205のYes)、偏光ブロックコントローラ17に対してオペレータ側表示器2の各偏光ブロックA1〜D4の全てを広視野角状態に移行すべき旨の制御信号を出力する(ST206)。この制御信号を受けた偏光ブロックコントローラ17は、各偏光ブロックA1〜D4が広視野角状態にある場合には電圧信号を印加せずにそのまま広視野角状態を維持し、狭視野角状態にある場合には電圧信号の印加を停止して広視野角状態に切り替える。
全ての偏光ブロックへの電圧信号の印加が停止した後、制御部11は、当該視野角の切り替え処理を終了する。
【0060】
なお、オペレータ側表示器2のみならず客側表示器3の表示画面に関しても同様の手順にて秘匿情報の表示領域の視野角が局所的に制御される。例えば、クレジットカードの読み取り後に客側表示器3を利用して暗証番号の入力を求めるならば、当該暗証番号の入力領域のみ視野角を狭く設定する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態における商品販売データ処理装置1は、カードリーダ5により磁気カードが読み取られたことに応じて偏光部材2c,3cを動作させる。そのため、カード情報に基づいて特定された顧客の個人情報が表示画面上に表示された際には、確実に当該表示領域の視野角を狭く設定することができる。
その他、操作性を維持しつつも秘匿情報の覗き見を防止する点などに関しては、前記実施形態と同様の効果を奏することは勿論である。
【0062】
なお、この発明は、前記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階においてはその要旨を逸脱しない範囲内において各構成要素を適宜変形して具体化することができる。
【0063】
例えば、前記各実施形態においては、液晶パネル3bと略同一の幅寸法を有する矩形平板状の偏光部材2c,3cを12のブロックに分割した場合について説明したが、より少数あるいは多数のブロックに分割してもよい。また、必ずしも複数ブロックに分割しなくとも、図9に図示したように表示画面上の一部分に対応する大きさの偏光部材を採用してもよい。図9は、当該変形例におけるオペレータ側表示器2の表示画面と偏光部材との位置関係を説明するための模式図である。偏光部材2cは、図3に示した偏光ブロックD2の設置領域に対応する大きさに形成されている。この場合であっても、図6に示したアプリケーション画面40が表示されるタイミングで当該偏光部材2cに電圧信号を印加するように制御すれば、客層表示エリア45および顧客情報表示エリア47の表示位置の視野角を狭く制御することができる。この他、商品販売データ処理装置1を使用する店舗の運営や実行し得るアプリケーションの種類に応じて偏光部材2c,3cの形状や分割ブロック数を変更すればよい。
【0064】
また、偏光部材2c,3cを制御するタイミングは、アプリケーション画面の切り替え時やカード情報の読み取り時に限定されない。その他、キーボード4に配設されたいずれかの操作キーの操作時や、タッチパネル2a,3aの操作時に制御されるようにしてもよい。
【0065】
この他、前記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…商品販売データ処理装置、2…オペレータ側表示器、3…客側表示器、4…キーボード、5…カードリーダ、6…鍵スイッチ、10…本体、11…制御部、2c,3c…偏光部材、30…視野角制御テーブル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開平10−240186号公報
【特許文献2】特開2007−188153号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種情報を表示する表示手段を備えた商品販売データ処理装置において、
前記表示手段の表示画面上における任意領域の視野角を第1の視野角又はこの第1の視野角よりも狭い第2の視野角のいずれかに設定する視野角設定手段と、
当該商品販売データ処理装置の処理状態に応じて前記視野角設定手段を動作させ、前記表示画面上における秘匿情報の表示領域の視野角を前記第2の視野角に設定し、その他の領域の視野角を前記第1の視野角に設定する制御手段と、
を備えていることを特徴とする商品販売データ処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記表示手段の表示画面を切り替える際に前記視野角設定手段を動作させ、前記表示画面上における秘匿情報の表示領域の視野角を前記第2の視野角に設定し、その他の領域の視野角を前記第1の視野角に設定することを特徴とする請求項1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項3】
前記表示手段に表示される表示画面の種別に対応付けて秘匿情報の表示領域を登録した領域登録手段と、
前記表示手段の表示画面を切り替える際に当該切り替え後の表示画面の種別に対応付けられた秘匿情報の表示領域を前記領域登録手段から特定する領域特定手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記領域特定手段により表示領域が特定されたことに応じて前記視野角設定手段を動作させ、当該表示領域の視野角を前記第2の視野角に設定し、その他の領域の視野角を前記第1の視野角に設定することを特徴とする請求項1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項4】
磁気カードからカード情報を読み取るカード読取手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記カード読取手段にてカード情報が読み取られたことに応じて前記視野角設定手段を動作させ、当該カード情報に基づいて特定される秘匿情報の表示領域の視野角を前記第2の視野角に設定し、その他の領域の視野角を前記第1の視野角に設定することを特徴とする請求項1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項5】
前記表示手段は、各種情報を表示する表示部材と、この表示部材を背面から照明するバックライトユニットとを備え、
前記視野角設定手段は、前記表示部材と前記バックライトユニットとの間に複数ブロックに区分して設けられ各々独立して制御される透過散乱切替素子であり、前記領域特定手段により特定された秘匿情報の表示領域に対応するブロックを前記バックライトユニットからの入射光を透過させる透明状態に切り替えることで当該領域の視野角を前記第2の視野角に設定し、他のブロックを前記バックライトユニットからの入射光を散乱する不透明状態に切り替えることで当該秘匿情報の表示領域以外の領域の視野角を前記第1の視野角に設定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項6】
各種情報を表示する表示手段と、前記表示手段の表示画面上における任意領域の視野角を第1の視野角又はこの第1の視野角よりも狭い第2の視野角のいずれかに設定する視野角設定手段とを備えた商品販売データ処理装置の制御プログラムであって、
前記商品販売データ処理装置に、自身の処理状態に応じて前記視野角設定手段を動作させ、前記表示画面上における秘匿情報の表示領域の視野角を前記第2の視野角に設定し、その他の領域の視野角を前記第1の視野角に設定する制御機能を実現させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−18130(P2011−18130A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161046(P2009−161046)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】