説明

商品販売データ処理装置

【課題】 キャッシャに別段負担をかけず、顧客の所望に合わせてレシートを発行するか否かを設定でき、また、その設定を容易に変更できる商品販売データ処理装置を提供すること。
【解決手段】 会計内容等を印字媒体に印字してレシートを発行するプリンタを備えた商品販売データ処理装置において、入力された各顧客の識別子に基づき、この識別子に紐付けられたレシートを発行するか否かの発行情報を取得する。そして、レシートを発行する旨の発行情報を取得したときにはプリンタにレシートを発行させ、レシートを発行しない旨の発行情報を取得したときにはレシートを発行させない。さらに、入力された識別子に紐付けられた発行情報の変更を受付けたときには、発行情報を変更して次回以降の取引に反映する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会計内容等を印字媒体に印字してレシートを発行するプリンタを備えた商品販売データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小売店舗等で使用されるPOS(Point Of Sales)端末等の商品販売データ処理装置は、顧客の買上商品を登録処理して会計処理を済ませた後に、レシートプリンタから会計内容等を印字したレシートを自動的に発行することが一般的である。しかしながら、顧客によってはレシートを必要とせず、すぐに捨ててしまうことが多い。かかる場合にまでレシートを発行することは、レシート用紙等の印字媒体を不要に消費する上、捨てられたレシートを処分しなければならないため資源及び経費の浪費となる。現在、一部のPOS端末ではレシートを発行しない設定に変更が可能な構成を持つものも存在する。また、顧客が所持する会員カードを利用して、会員カードで特定される顧客がレシートの発行を必要とするか否かの設定を予め管理サーバに記憶しておき、これを取引毎に参照してレシート不要の設定がなされた顧客に対してはレシートを発行しないようにする管理システムが提案されている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2006−190158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の管理システムにおいては、管理サーバに記憶されたレシートを必要とするか否かの設定を変更することができないため、管理サーバにレシート不要の設定がなされている顧客がレシートを所望するようになった場合などには不便である。また、上記のようにレシートを発行しない設定が可能なPOS端末でも、一旦レシートを発行するか否かの設定を行うと、所定の操作により設定を変更しなければ継続してその設定を維持する。そのため、設定を変更するための処理がキャッシャの負担となり、1取引ごとの設定変更は困難であった。
【0004】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、キャッシャに別段負担をかけず、顧客の所望に合わせてレシートを発行するか否かを設定でき、また、その設定を容易に変更できる商品販売データ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る商品販売データ処理装置は、会計内容等を印字媒体に印字してレシートを発行するプリンタを備えた商品販売データ処理装置において、各顧客の識別子を入力する識別子入力手段と、この識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられたレシートを発行するか否かに関する発行情報を取得する情報取得手段と、この情報取得手段がレシートを発行する旨の発行情報を取得したとき、前記プリンタにレシートを発行させ、レシートを発行しない旨の発行情報を取得したとき、レシートを発行させない発行制御手段と、前記識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられた発行情報の変更を受付ける変更受付手段と、この受付手段が前記発行情報の変更を受付けたとき、前記識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられた発行情報を変更する情報変更手段と、を具備してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
かかる手段を講じた本発明によれば、キャッシャに別段負担をかけず、顧客の所望に合わせてレシートを発行するか否かを設定でき、また、その設定を容易に変更できる商品販売データ処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る商品販売データ処理装置を小売店等で使用されるPOS端末に適用した例について説明する。
図1は、当該POS端末の使用態様を示す模式図である。POS端末10は、店舗1にカードリーダ50を接続して設置され、LAN(Local Area Network)等のネットワーク3を介して管理サーバ40との相互通信が可能となっている。カードリーダ50は、顧客が所持する記憶媒体である顧客カード2から顧客の識別子である顧客コードを読取る際に使用される。管理サーバ40の記憶部には、上記顧客コードに対応した所定のデータエリアを有する顧客ファイル41が記憶されている。
【0008】
図2は、顧客ファイル41に形成されたデータエリアの構造を示す模式図である。顧客ファイル41には、顧客コードに紐付けてデータエリアが設けられており、そのデータエリアには、顧客名、顧客が以前の買物時等に付与されたポイント、及びレシートを発行するか否かの情報であるレシートフラグRF(図4にて具体的に用途を説明する)からなる顧客データ記憶されている。
【0009】
図3は、POS端末10の制御回路を示す模式図である。POS端末10は、制御部本体としてCPU(Central Processing Unit)11を搭載している。また、プログラム等の固定的データが格納されたROM(Read Only Memory)12、各種データを書換え可能に記憶するための種々のメモリエリアが形成されるRAM(Random Access Memory)13、通信回線を介して外部とのデータ通信を制御する通信インターフェイス(I/F)14、カードリーダ50との通信を制御するカードリーダインターフェイス(I/F)15、キャッシャ用表示器23の画面表示を制御する表示コントローラ16、客用表示器24の画面表示を制御する表示コントローラ17、レシートプリンタ25を制御するプリンタコントローラ18、ドロワ26に対して開放指令信号を出力するI/Oポート19、バーコードの読取りに供されるバーコードスキャナ27を制御するスキャナコントローラ20、キーボード28,第1の変更受付手段であるレシート発行釦29及び第2の変更受付手段であるレシート不要釦30(図4にてこれら釦29,30の用途を後述する)からの入力信号を取込む入力コントローラ21を備えている。そしてCPU11と、ROM12,RAM13,通信インターフェイス14,カードリーダインターフェイス15,表示コントローラ16,表示コントローラ17,プリンタコントローラ18,I/Oポート19,スキャナコントローラ20,および入力コントローラ21とをアドレスバス,データバス等のバスライン22で接続して構成されている。
【0010】
キャッシャ用表示器23は、POS端末10のオペレータに向けて処理内容等を表示する。客用表示器24は、会計処理を行う顧客に向けて会計金額等を表示する。レシートプリンタ25は、印字媒体であるレシート用紙への会計情報等の印字を行い、レシートを発行する。バーコードスキャナ27は、商品に付されたバーコードなどを光学的に読取り商品コードを入力する。キーボード28には、数値を入力するための置数キーの他、乗算キー,小計キー,現計キー等の各種ファンクションキーなどが配設されている。レシート発行釦29及びレシート不要釦30は、POS端末10を操作するキャッシャ側に設置されている。
【0011】
次に、図4を用いてPOS端末10が商品登録業務に使用された際にCPU11が行う処理を説明する。顧客が購入する商品をレジへ運び、キャッシャが商品の登録業務を開始すると、CPU11は、ST1としてカードリーダ50に顧客カード2が挿入されたか否かを判断する。カードリーダ50に顧客カード2が挿入されているとき(ST1のYes)には、顧客カード2に記憶された顧客コードを取得し(識別子入力手段)、ST2としてRAM13にカードフラグCFを形成してその値を“1”とする。さらにST3として、通信インターフェイス14を介して管理サーバ40に取得した顧客コードを送信する。これを受信した管理サーバ40は、顧客ファイル41から受信した顧客コードに紐付けられた顧客データを検索してPOS端末10に返信する。かくしてPOS端末10は取得した顧客コードに対応する顧客データを取得して、その顧客データをRAM13に記憶する(情報取得手段)。
【0012】
一方、ST1の処理にて顧客カード2が挿入されていないと判断したとき(ST1のNo)には、ST4としてRAM13にカードフラグCFを形成してその値を“0”とする。
【0013】
ST3又はST4の処理の後、CPU11は、ST5として入力された商品コードに基づいて買上商品の登録処理をする。具体的には、バーコードスキャナ27により商品に付されたバーコードを読取って入力された商品コードに基づいて商品名や商品価格を取得し、これらを登録ファイルに記憶するとともに既登録の商品価格の合計金額を算出する。商品コードの入力は、バーコードスキャナ27による入力のほか、キーボード28の操作によっても入力される。
【0014】
買上商品の登録処理の間、CPU11は、ST6としてキーボード28に設けられた締めキーの操作を待機している。締めキーの操作を検知したとき(ST6のYes)には、ST7としてRAM13に記憶されたカードフラグCFが“1”であるか否かを判断する

【0015】
カードフラグCFが“1”であったとき(ST7のYes)には、CPU11は、ST8としてST3の処理にて取得してRAM13に記憶した顧客データを参照し、レシートフラグRFが“1”であるか否かを判断する。そして、レシートフラグRFが“1”であったとき(ST8のYes)には、ST9としてプリンタコントローラ18を介してレシートプリンタ25を駆動制御し、当該会計内容等を印字したレシートを発行する。カードフラグCFが“1”でなかったとき(ST8のNo)には、ST9のレシート発行処理を行わない。すなわち、ST3の処理にて取得したレシートフラグRFに基づいてレシートプリンタ25にレシートを発行させるか否かを決定するCPU11の制御処理は、発行制御手段である。
【0016】
次に、CPU11は、ST10としてレシート不要釦30が操作されたか否かを判断する。レシート不要釦30は、例えばST9の処理にて発行されたレシートを顧客が受け取らなかった場合や、受け取ったがレジに備え付けの不要レシート入れに入れた場合などにキャッシャが操作する。そして、レシート不要釦30が操作されたとき(ST10のYes)には、ST11として管理サーバ40に当該顧客コードに対応する顧客データのレシートフラグRFを“0”に書き換えるように要求する(第2の情報変更手段)。この要求を受けた管理サーバ40は、顧客ファイル41中の当該顧客コードに対応する顧客データのレシートフラグRFを“0”に書き換える。ST11の処理の後及びST10の処理にてレシート不要釦30が操作されていないとき(ST10のNo)には、CPU11は、当該買上商品の登録処理を終了する。
【0017】
一方、ST8の処理にてレシートフラグRFが“1”でないと判断したとき(ST8のNo)には、CPU11は、ST12としてレシート発行釦29が操作されたか否かを判断する。レシート発行釦29は、例えば顧客がキャッシャにレシートが欲しい旨を伝えたときにキャッシャが操作する。レシート発行釦29が操作されたとき(ST12のYes)には、ST13として管理サーバ40に当該顧客コードに対応する顧客データのレシートフラグRFを“1”に書き換えるように要求する(第1の情報変更手段)。この要求を受けた管理サーバ40は、顧客ファイル41中の当該顧客コードに対応する顧客データのレシートフラグRFを“1”に書き換える。
【0018】
ST13の処理の後及びST7の処理にてカードフラグCFが“1”でなかったとき(ST7のNo)には、ST14としてプリンタコントローラ18を介してレシートプリンタ25を駆動制御し、当該会計内容等を印字したレシートを発行する。しかる後、当該買上商品の登録処理を終了する。
【0019】
このように、POS端末10は、顧客カード2がカードリーダ50に挿入されたときにはその顧客カード2に記憶された顧客コードを読取り、その顧客コードに対応した顧客データを管理サーバ40の顧客ファイル41から取得する。そして、取得した顧客データのレシートフラグRFを参照してレシートを発行するか否かを決定する。このとき、レシートフラグRFが“1”、すなわちレシートを発行する設定がなされている場合でも、レシート不要釦30を操作することでレシートフラグRFの値を変更してレシートを発行しない設定に変更することができる。また、レシートフラグRFが“0”、すなわちレシートを発行する設定がなされていない場合でも、レシート発行釦29を操作することでレシートフラグRFの値を変更してレシートを発行する設定に変更することができる。そして変更した設定は次回以降の取引に反映されるので、キャッシャに別段負担をかけることなく顧客毎にレシートを発行するか否かの設定変更を行うことができる。
【0020】
また、顧客カード2を所持する顧客ごとにレシートの発行が必要であるか否かを自動的に判断し、必要であると判断したときにだけレシートを発行するので、レシート用紙などの消耗品が節約できる上、捨てられるレシートの処分に要する費用も節約できる。
【0021】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0022】
例えば、キャッシャ用表示器23をタッチパネル式のディスプレイとし、その表示画面上にレシート発行釦29及びレシート不要釦30を配置してキャッシャのタッチ操作による入力を受付けるようにしてもよい。
【0023】
また、レシート発行釦29及びレシート不要釦30をPOS端末10の顧客側に設置して顧客が操作するようにしてもよい。さらにこの場合には、客用表示器24をタッチパネル式のディスプレイとし、その表示画面上にレシート発行釦29及びレシート不要釦30を配置して顧客のタッチ操作による入力を受付けるようにしてもよい。
【0024】
また、顧客コードの入力は顧客カード2をカードリーダ50によって読取ることでの入力のみに限定されず、例えばキーボード28に設置された値数キーの操作による入力であってもよいし、顧客カード2に顧客コードをバーコードとして印字しておいてそれをバーコードスキャナ27で読取ることで入力してもよい。
【0025】
また、レシートを発行するか否かの情報は、本実施例で用いたレシートフラグRFの形態に限定されず、レシートを発行するか否かをPOS端末10が判断できる情報であればよい。
【0026】
また、顧客コードごとのレシートを発行するか否かの情報は、顧客ファイル41に記憶せずに別のファイルに記憶してもよいし、管理サーバ40に記憶せずにPOS端末10のRAM13などに記憶するようにしてもよい。その他、カードリーダ50に換えてカードリーダライタをPOS端末10に接続し、顧客カード2に新たな記憶セクションを設けてそこにレシートを発行するか否かの情報を記憶するようにしてもよい。
【0027】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態におけるPOS端末の使用態様を示す模式図。
【図2】同実施の形態において顧客ファイルに形成されたデータエリアの構造を示す模式図。
【図3】同実施の形態におけるPOS端末の制御回路を示す模式図。
【図4】同実施の形態におけるPOS端末が商品登録業務に使用された際にCPUが行う処理を説明するための図。
【符号の説明】
【0029】
RF…レシートフラグ、CF…カードフラグ、1…店舗、2…顧客カード、3…ネットワーク、10…POS端末、11…CPU、12…ROM、13…RAM、23…キャッシャ用表示器、24…客用表示器、25…レシートプリンタ、26…ドロワ、27…バーコードスキャナ、28…キーボード、29…レシート発行釦、30…レシート不要釦、40…管理サーバ、41…顧客ファイル、50…カードリーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
会計内容等を印字媒体に印字してレシートを発行するプリンタを備えた商品販売データ処理装置において、
各顧客の識別子を入力する識別子入力手段と、
この識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられたレシートを発行するか否かに関する発行情報を取得する情報取得手段と、
この情報取得手段がレシートを発行する旨の発行情報を取得したとき、前記プリンタにレシートを発行させ、レシートを発行しない旨の発行情報を取得したとき、レシートを発行させない発行制御手段と、
前記識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられた発行情報の変更を受付ける変更受付手段と、
この受付手段が前記発行情報の変更を受付けたとき、前記識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられた発行情報を変更する情報変更手段と、
を具備してなることを特徴とする商品販売データ処理装置。
【請求項2】
前記変更受付手段は、
前記識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられた発行情報がレシートを発行しない旨の発行情報であるとき、レシートを発行する旨の発行情報に変更することを受付ける第1の変更受付手段と、
前記識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられた発行情報がレシートを発行する旨の発行情報であるとき、レシートを発行しない旨の発行情報に変更することを受付ける第2の変更受付手段と、
を具備し、
前記情報変更手段は、
前記第1の変更受付手段が変更を受付けたときには、前記識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられた発行情報を、レシートを発行する旨の発行情報に変更する第1の情報変更手段と、
前記第2の変更受付手段が変更を受付けたときには、前記識別子入力手段が入力した識別子に紐付けられた発行情報を、レシートを発行しない旨の発行情報に変更する第2の情報変更手段と、
を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の商品販売データ処理装置。
【請求項3】
前記識別子入力手段は、顧客が所持する記憶媒体に記憶された所定の情報を読取って前記識別子を入力することを特徴とする請求項1又は2に記載の商品販売データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−146147(P2009−146147A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322456(P2007−322456)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】