説明

商品陳列ケースの盗難防止装置

【課題】 店員のもつ専用キーにより商品陳列ケースを、簡単かつ自動的に施錠解錠でき、また第3者は解錠できず防犯性に優れてなる商品陳列ケースの盗難防止装置を得る。加えて、当事者による施錠のし忘れを防止する。
【解決手段】 商品陳列ケース1の扉3を施錠解錠する施錠機構10は、その本体部の一部から選択的に突出させるラッチ11を相手側部材に設けたラッチ穴13に係合させることで施錠状態とし、電気信号によりラッチを退出させてラッチ穴との係合を解除することで解錠状態とするように構成される。トランスポンダ21を組み込んだ専用キー20が接近することにより所定の検知範囲内に臨んだことを検知する検知手段18と、これにより検知範囲に臨んだことを検知することで、トランスポンダからIDコードを読み取るコントローラが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は商品陳列ケースの盗難防止装置に関し、特に個々にIDコードが設定された複数のトランスポンダから特定のIDコードを読み取ることにより施錠解錠することができる商品陳列ケースの盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば各種の店舗などにおいて、貴金属、ブランド品、薬などの商品を陳列するガラスショーケースなどといった商品陳列ケースには、盗難防止を目的として従来から種々の構造をもつ施錠装置が設けられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2006−181013号公報
【特許文献2】 特開2000−179220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の施錠装置による盗難防止装置によれば、施錠装置としての機構部品が多くなり、また施錠装置毎の専用のキーを必要とし、しかも解錠時には鍵穴にキーを差し込んで解錠操作するといった面倒な操作を必要とするものであった。
また、合いカギ作成もメカニカルの合いカギ作成機や工作加工技術があれば容易に作成可能であった。
【0005】
特に、商品陳列ケースなどでは、顧客の要請などに応じて商品を出し入れするために、頻繁に施錠解錠操作を行う必要があり、煩雑さは避けられないものであった。
また、施錠し忘れや従業員によるメカニカルの合いカギ作成、盗難などが発生する虞れもあった。
【0006】
さらに、このような従来の機械的な施錠装置では、泥棒などへの対策上でも解錠ツールを使用されたりする等の不安があり、防犯上の面から難点があるものであった。
【0007】
近年、いわゆる電子キー等による施錠装置も知られているが、ひとつのキーで複数のシリンダを開閉できない等、一長一短があり、店員がいくつものキーを常に携帯しなくてはならない。しかも、このような場合では、店員が必要に応じて急いで施錠解錠しにくく、また施錠することをし忘れることがある等といった操作性の面からも、防犯性の面からも問題があり、これらの問題を一掃し得る何らかの対策を講じることが望まれている。
【0008】
また、この種の商品陳列ケース等では、店舗がチェーン店であって、そのエリアマネージャーなどが各店舗を巡回している際に、全店舗の商品陳列ケースを開けることができるような、いわゆるマスターキーをもつことが望まれるが、このようなケースに対して機動性に優れてなる何らかの対策も必要とされている。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、店舗が定めた複数の店員が複数の商品陳列ケースを必要に応じて簡単にしかも自動的に施錠解錠することが可能であり、しかも第3者には解錠することができない盗難防止効果に優れ、またチェーン店の管理者等は全店舗の商品陳列ケースを解錠することが可能で、管理上等の面で優れてなる商品陳列ケースの盗難防止装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る商品陳列ケースの盗難防止装置は、商品を陳列する商品陳列ケースの開閉扉を選択的に施錠解錠する施錠機構を備えた商品陳列ケースの盗難防止装置であって、前記施錠機構は、その本体部の一部から選択的に突出させるラッチを相手側部材に設けたラッチ穴に係合させることで施錠状態とし、電気信号によりラッチを退出させてラッチ穴との係合を解除することで解錠状態とするように構成されるとともに、個別にパスワードまたはIDコードのうちの少なくともいずれか一方が設定されたトランスポンダを組み込んだ専用キーが接近することにより所定の検知範囲内に臨んだことを検知する検知手段と、この検知手段により前記専用キーが所定の検知範囲に臨んだことを検知することにより、該トランスポンダにパスワード要求信号、IDコード要求信号またはそのいずれか一方を伝送して、特定のトランスポンダからパスワード、IDコードを読み取るコントローラとが設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明(請求項2記載の発明)に係る商品陳列ケースの盗難防止装置は、請求項1において、施錠機構は、ラッチを解錠動作させるための電導アクチュエータを有し、この電導アクチュエータが、前記トランスポンダからのIDコードを読み取って登録されたIDコードであることを確認することでコントローラから得られる信号によって作動されることを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項3記載の発明)に係る商品陳列ケースの盗難防止装置は、請求項1または請求項2において、施錠機構は、専用キーに組み込まれるトランスポンダが近接することにより検知するアンテナを検知手段として備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係る商品陳列ケースの盗難防止装置によれば、店員が携帯している専用キーを、施錠機構の検知部であるアンテナの検知範囲内に位置づけることにより、これを検知して、IDコードを送信、受信することにより、必要に応じて簡単にしかも自動的に施錠解錠することが可能であり、しかも施錠し忘れといった問題もなく、また第3者には解錠することができず、盗難防止効果に優れている。
【0014】
また、本発明によれば、チェーン店の管理者等が数個の専用キーをもつことにより、全店舗での商品陳列ケースを、その地域エリアや店舗ごとといった任意の選択をしたうえで、解錠する設定が可能であり、ケースを開けたカギ番号の管理や時間の管理を効率よく行うことができる。
【0015】
さらに、本発明による盗難防止装置は、基本的に安価であり、商品陳列ケースであれば適宜の構造をもつものでも自由に取り付けることができる。また、施錠、解錠操作も、特別な操作は不要であり、だれでもが特別な技術を習得することなく、自由に施錠、解錠することができる。
【0016】
また、ユーザーそれぞれの用途に応じて必要最小限のほかの機器(たとえば音声モジュール、コンピュータ管理ソフト等)と接続できるから、システム全体としてのコストも安価となる。
【0017】
また、本発明によれば、微電力の使用で済むため、通常は100V電源からAC−DCコンバーターを使い、電圧変換して使用するが、臨時展示場などでは12Vバッテリでも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明に係る商品陳列ケースの盗難防止装置の一実施形態を示し、要部構成を説明するための概略構成図である。
【図2】 本発明に係る商品陳列ケースの盗難防止装置において、商品陳列ケースの概略図である。
【図3】 本発明に係る商品陳列ケースの盗難防止装置において、施錠機構の施錠解錠動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2は本発明に係る商品陳列ケースの盗難防止装置の一実施形態を示すものである。
【0020】
これらの図において、全体を符号1で示す商品陳列ケースは、棚台の上部にガラス製のショーケース部2を有し、このショーケース部2の背面部は、上端側をヒンジとして開閉自在な蓋部3として形成されている。なお、このショーケース部2の蓋部3としては、上下方向に開閉自在な蓋に限定されず、左右方向にスライド可能なスライドタイプの蓋(扉)、あるいはその他適宜の構造をもつ開閉蓋であれば適用可能である。
【0021】
本発明によれば、上述したショーケース部2の背面部を開閉する扉部3の施錠、解錠のために用いられる施錠機構10を備えている。
この施錠機構10は、ラッチ11を係合方向に進退動作可能に設けた本体部12と、該ラッチ11が係合するラッチ穴13を有するカギ穴部材14とから構成される。
【0022】
ここで、図中15は前記ラッチ11を退出方向、すなわち解錠方向に動作させるための電導アクチュエータである電磁ソレノイド、16はラッチ11を進出方向、すなわち施錠方向に動作させるための付勢手段であるばねである。
【0023】
また、図中17はコントローラ、18は該コントローラ17から引き出されたリング状アンテナであり、このリング状アンテナ18に対して後述する専用キー20が近づけられ、該アンテナ18の検知範囲内に位置すると、その状態が検知されるようになっている。
【0024】
すなわち、アンテナ18が専用キー20を検知すると、磁気を発生しその影響を受けてIDコードを発信可能となり、そのIDコードが専用キー20のトランスポンダ21側の受信器で受信される。そして、受信器で受信したIDコードがコントローラ17に設定されるIDコードと一致したときに、信号が送出され、ソレノイド15が作動してラッチ11を解錠動作させるようになっている。
【0025】
ここで、この図1では、トランスポンダ21やこれを組み込んだ専用キー20としての一例を図示しただけであり、その形状、構造などとしては、必要に応じて適宜変更可能である。たとえば、トランスポンダ21等としては、角型チップ形状のものも周知である。さらに、専用キー20の形状としても、上述した円柱形状に限らず、たとえば時計型、カード型、携帯電話機ストラップ型などのような適宜の形状をもつ本体に組み込むようにしてもよい。
【0026】
また、上述した専用キー20に組み込んだトランスポンダ21としては、たとえばRFIDを内蔵したICカードなどのタグであるICチップを用いることも自由である。
【0027】
これを図3のフローチャートを用いて説明すると、S1では専用キー20がアンテナ18による検知範囲内にあるか否かを判定する。そうであれば、S2に進み、そうでなければ、S1を繰り返す。
【0028】
S2では、誘導磁界、電波またはその反射波等といった検知波(検知信号)を所定時間発生させ、そしてS3でIDコードを受信する。
S4では、IDコードを読み取れるか否かを判断し、S5でそれが登録された正規のIDコードであるか否かが判断され、登録された正規のIDコードであれば、S6でソレノイド15に信号が送られ、ラッチ11が退出して解錠動作が行われる。
【0029】
S4でIDコードが読み取れない場合には、S7に進み、検知波を所定時間発生させ、S8でパスワード要求信号とIDコード要求信号を送信し、S9でパスワードとIDコードを受信し、S10で登録された正規のパスワードとIDコードであるかを判断し、そうであれば終了となる。
【0030】
以上の構成によれば、専用キー20が、検知手段であるアンテナ18の検知範囲に入ると、コントローラ17等でIDコードの確認が行われ、一致したときに、ソレノイド15が作動して、ラッチ11が外れ、解錠が行われ、ショーケース部2の扉3を開放することができる。
【0031】
また、専用キー21が、アンテナ18の検知範囲から外れると、ソレノイド15は非作動状態となり、ラッチ11がラッチ穴14に係合して施錠状態となるものである。
【0032】
したがって、上述した構成による施錠装置10を用いると、商品陳列ケース1において店員が携帯している専用キー20を、施錠機構10の検知部であるアンテナ18の検知範囲内に位置づけることにより、検知波を生じさせて、IDコードを送信、受信することにより、必要に応じて簡単に施錠解錠することが可能であり、しかも第3者には解錠することができないことになり、盗難防止の面で優れている。
【0033】
そして、このような構成によれば、たとえばチェーン店のマネージャなどが数個の専用キー20をもつことにより、全店舗またはその地域エリアや店舗ごとといった任意の選択をしたうえでの商品陳列ケース1を解錠する設定が可能であり、ケースを開けたカギ番号の管理や時間の管理を効率よく行うことができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、商品陳列ケース1の盗難防止装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【0035】
たとえば上述した実施形態では、ラッチ11をラッチ穴13に係合させることで施錠を行う施錠機構10について説明したが、これに限定されず、これに類する施錠機構であれば適用可能である。勿論、その際のアクチュエータとしても、上述した実施形態での電磁ソレノイド15に限定されないことは言うまでもない。
【0036】
また、本発明による装置では、電気信号を使うことから、音声モジュールとの併用により使用者が予め作成しておいた音声により、キーの開閉を確認し、また周囲に告知することも可能である。
【0037】
また、本発明による装置は、動画録画式レコーダに接続することにより、そのレコーダをオンオフ操作することもできる。そして、その機能により、商品陳列ケースの開閉時や開閉した人物を記録特定することも可能となる。
【0038】
さらに、本発明による装置は、任意の店舗の階数またはコーナーごと、あるいは店舗ごとのすべての商品陳列ケースの共通カギとしてカスタマーが専門業者に依頼したり、コンピューターを用いることなく安価に、しかも容易にIDコードを設定することが可能であるから、たとえばゲームセンターの遊技機の集金箱のカギ、パチンコ機の開閉可能なガラス窓のカギ、スロットマシン機の開閉カギとしても使用することができることは容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0039】
1 商品陳列ケース
2 ショーケース部
3 扉部
10 施錠装置
11 ラッチ
12 本体部
13 ラッチ穴
14 カギ穴部材
15 電磁ソレノイド(電導アクチュエータ)
17 コントローラ
18 アンテナ
20 専用キー
21 トランスポンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を陳列する商品陳列ケースの開閉扉を選択的に施錠解錠する施錠機構を備えた商品陳列ケースの盗難防止装置であって、
前記施錠機構は、その本体部の一部から選択的に突出させるラッチを相手側部材に設けたラッチ穴に係合させることで施錠状態とし、電気信号によりラッチを退出させてラッチ穴との係合を解除することで解錠状態とするように構成されるとともに、
個別にパスワードまたはIDコードのうちの少なくともいずれか一方が設定されたトランスポンダを組み込んだ専用キーが接近することにより所定の検知範囲内に臨んだことを検知する検知手段と、
この検知手段により前記専用キーが所定の検知範囲に臨んだことを検知することにより、該トランスポンダにパスワード要求信号、IDコード要求信号あるいは一方を伝送して、特定のトランスポンダからパスワード、IDコードを読み取るコントローラが設けられていることを特徴とする商品陳列ケースの盗難防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の商品陳列ケースの盗難防止装置において、
施錠機構は、ラッチを解錠動作させるための電導アクチュエータを有し、
この電導アクチュエータが、前記トランスポンダからのIDコードを読み取って登録されたIDコードであることを確認することでコントローラから得られる信号によって作動されることを特徴とする商品陳列ケースの盗難防止装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の商品陳列ケースの盗難防止装置において、
施錠機構は、専用キーに組み込まれるトランスポンダが近接することにより検知するアンテナを検知手段として備えていることを特徴とする商品陳列ケースの盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−285857(P2010−285857A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159306(P2009−159306)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(509137021)ツーフィット株式会社 (5)
【Fターム(参考)】