喘息、結核及び肺癌の診断及び疾患管理のための呼気分析システム及び方法
被検者が肺疾患、例えば、喘息、結核又は肺癌に罹患しているか否かを検出するための方法及びシステムを開示する。被検者の健康及び予後のモニタリングも開示する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
《関連出願に対する相互参照》
本願は、2008年12月1日出願の米国仮特許出願第61/118,977号の優先権を主張するものであって、その内容の全体はあらゆる目的で参照することにより本願明細書中に組み込まれる。
【0002】
《発明の分野》
本発明は、ガスセンサ技術を用いて、呼吸器疾患(例えば、感染及び慢性疾患、とりわけ喘息、結核及び肺癌)を低コストで迅速且つ正確に診断する及びモニタリングするシステム及び方法を提供する。
【0003】
《発明の背景》
ヒトの呼気分析についての臨床研究によって、ヒトの息からの一定の微量ガスが一定の疾患、とりわけ肺に関連した疾患、例えば、喘息、結核(TB)、及び肺癌と相関していることが発見された(M. Philips, et al., Cancer Biomarkers, 3:95-109 (2007); M. Philips, et al., Tuberculosis, 87:44-52 (2007) 参照)。他の適用において、ガス分析を用いてヒトの存在と適合しない危険物又は漏出ガス、例えば、メタン、一酸化炭素又は二酸化炭素の存在を測定することができる。
【0004】
現在のガス分析システムはまだ、大型で高価な実験室用機器、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)及びマススペクトロメトリー(MS)に大きく依存している。これらの機器の大部分(とりわけ、質量分析装置)は、その大きさを有意に減少させることを阻む操作特性を有しており、このことは現在のガス分析システムが大型で高価なデバイスでありそして操作が面倒であることを意味する(例えば、実験室サイズのGC/MS)。
【0005】
現在のガス分析装置は高価であることに加えて、その大きなサイズがこれらの機器の普及を妨げている。ポイントオブケア分析は極めて有益なものに違いないが、現在利用できるシステムはない。
【0006】
喘息は、咳、喘鳴、胸部絞扼感(chest tightness)及び呼吸苦(respiratory discomfort)という再発エピソードにより特徴付けられる慢性の肺疾患である。肺炎症は、喘息の発作を引き起こすことがある気管支収縮、及びこの慢性疾患の進行の一因となる。米国内で2,000万人を超える人が喘息を罹っていると推定される。米国心臓肺血液研究所(The National Heart Lung and Blood Institute)は、毎年の直接的及び間接的な健康管理コストのうち喘息が161億ドルを占めると指摘している。
【0007】
TBによって毎年およそ200万人もの人が亡くなっており、そしてTBは世界中で最もよく研究されている死をもたらす病因の一つである。TBの診断は、その認識されている乏しい業績にもかかわらず、数十年間も変わらないままであった。現在の診断方法は、喀痰塗抹標本の顕微鏡検査、培養、及び胸部X線を含む。しかしながら、これらの方法はいずれも低い感度(塗抹標本の顕微鏡検査で45〜60%)、低い特異度(X線で〜66%)であり、又は大変に時間がかかる(培養の場合に3〜6週間)。
【0008】
最近の研究は、患者の呼気中のVOC類及び培養したマイクロバクテリアのガスに基づくGC/MS機器を用いたTB試験が極めて高い感度及び特異度を有することを示している(Michael Phillips, et al., Tuberculosis 87:44-52 (2007);Reinhard Fend, J. Clin. Microb., p. 2039-2045 (June 2006) 参照)。しかし、この方法はとても複雑な設定を必要とするため当該分野で用いるには実用的でない。
【0009】
肺癌は肺の組織における制御されない細胞増殖の疾患である。原発性肺癌の大部分は、上皮細胞から生じた肺の癌腫である。男性において癌に関連した死の最も一般的な原因であり及び女性においても最も一般的な原因である肺癌は、世界中で毎年130万人の死の原因となっている。肺癌の主たる型は、小細胞肺癌(SCLC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)である。治療が異なるため、その区別は重要であり;すなわち、非小細胞肺癌(NSCLC)は外科的処置により治療されることがあるのに対し、小細胞肺癌(SCLC)は通常、化学療法及び放射線照射に対してより良好に反応する。
【0010】
喘息、結核及び肺癌の検出及び診断のためのヒトの呼気分析を可能とするシステム及び方法が必要である。呼気分析及び周囲空気のモニタリングを行なうための使い易くそして高い感度及び特異度を有するデバイスが必要である。本発明はこれら及び他の要求を満足させるものである。
【0011】
《発明の概要》
本発明は、呼吸器疾患、肺感染症及び慢性疾患の検出、診断及びモニタリングのためのヒト呼気分析を可能にするシステム及び方法を提供する。薬効試験の方法も開示する。
【0012】
或る実施態様において、本発明は、被検者が喘息に罹患しているか否かを検出するか又は喘息に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからのシグナルを分析して前記被検者が喘息に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法を提供する。
【0013】
好ましい態様において、前記装置は、ガスクロマトグラフの上流に予備濃縮器を更に含む。
【0014】
有利なことに、本発明のシステム及び方法は、VOC類、及び/又はNO、及び/又は呼吸流速を検出することによって、喘息の段階及び重症度をモニタリングする特異度、感度及びダイナミックレンジを従来技術よりも増大させる。
【0015】
或る観点において、本発明のシステム及び方法は、軽度の喘息に罹患しているか又は喘息に罹患していない患者についてVOC類をモニタリングすることができる。周囲空気をモニタリングし、そして、参照用のバックグランドシグナルとして保存することができる。或る観点において、患者が吸入する前に周囲空気を濾過する。別の実施態様において、バックグランドシグナルを保存した後、呼気から検出されたシグナルからそのバックグランドシグナルをフィルター処理又は減算する。
【0016】
或る場合には、投薬に関する決定は、例えば、薬物治療の前、その間及び/又は後に、VOC類、NO、及び流速をモニタリングすることにより管理することができる。更に、本明細書に開示のシステム及び方法は、喘息患者に対して環境汚染物質についての早期警告を与え、そのことにより一定の環境中のVOC類を回避するよう患者に注意を促す。
【0017】
本明細書に開示の方法及びシステムは、種々のフォーマット及びプラットフォーム、例えば、携帯用、ハンドヘルド又は実験室用機器において実行することができる。前記装置は、ガス分析器、例えば、GC/MS、GC/FID、GC/レーザー光検出器、GC/ナノ粒子センサ、GC/QCM及びeNose装置に含められるか又は統合することができる。
【0018】
別の態様において、本発明は、正確、迅速な及び携帯用であるTBの検出のシステム及び方法、例えば、驚くほど手頃な価格であるポイントオブケアサービスを提供する。
【0019】
同様に、本発明は、被検者が結核に罹患しているか否かを検出するか又は結核に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
被検者の試料からのヘッドスペース又は被検者の息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからのシグナルを分析して前記被検者が結核に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法を提供する。
【0020】
好ましい態様において、前記装置は、ガスクロマトグラフの上流に予備濃縮器を更に含む。
【0021】
有利なことに、本明細書に開示のシステム及び方法は、患者の呼気中のVOC類及び/又は培養されたTB菌のガスに基づくTB試験に対して特異度が高く、感度が高い。試験及び分析は迅速であり、数分間以内に行なうことができる。
【0022】
或る観点において、本発明のシステム及び方法は携帯用であり、そして投薬の前、その間及び後のTB患者のVOC類を安価に検出してTB患者の薬物治療を効果的に管理及び制御する。別の観点において、本発明のシステム及び方法は、種々の薬物治療の前、その間及び/又は後にTB培養物又は患者のVOC類をモニタリングして薬剤耐性TB菌に対する最も効果的な薬剤を同定する。
【0023】
更に、本明細書に開示のシステム及び方法は、患者の喀痰又は喀痰培養物からのヘッドスペースガス中の揮発性有機化合物(VOC類)をモニタリングして患者がTBに罹患しているか否かを診断する。
【0024】
或る他の観点において、本発明の方法及びシステムは、被検者の息、喀痰又は喀痰培養物を用いてTB感染を検出する。或る観点において、マイコバクテリウム培養物からのヘッドスペースサンプリングを用いて治療の間に薬剤耐性菌を検出することができる。医療専門家は、投薬の間のTB患者のVOC類を検出してTB患者の薬物治療を有効に管理及び制御することができる。更に、本明細書に記載の方法及びシステムは、薬剤耐性試験のための培養物からのVOC類のモニタリングを可能にする。
【0025】
更にまた別の実施態様において、本発明は被検者が肺癌に罹患しているか否かを検出するか又は肺癌に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからのシグナルを分析して前記被検者が肺癌に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法を提供する。
【0026】
好ましい態様において、前記装置は、ガスクロマトグラフの上流に予備濃縮器を更に含む。
【0027】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載及び図面から当業者に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A−C】喘息の検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示し;パネルBは口腔及び肺の洗浄を示しそしてパネルCは口腔及び肺の洗浄を示す。
【0029】
【図2A−B】喘息の検出及びモニタリングについての本発明の実施態様を示し;パネルBは喘息の検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0030】
【図3】TBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0031】
【図4A−B】TBの検出及びモニタリングについての本発明の実施態様を示し;パネルBはTBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0032】
【図5A−B】TBの検出及びモニタリングについての本発明の実施態様を示し;パネルBはTBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0033】
【図6】TBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0034】
【図7】TBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0035】
【図8】TBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0036】
【図9】喘息の分類概要の或る実施態様を示す。
【0037】
【図10A−B】喘息の検出の或る実施態様を示し、ここでVOC類は、喘息なし又は軽度の喘息の検出及び診断に有効であり(パネルA)、そしてNOは、軽度及び重度の喘息の検出に有効である(パネルB)。
【0038】
《発明の詳細な記載》
《I.導入》
本発明は、呼吸器疾患(例えば、感染及び慢性疾患)の低コストで迅速且つ正確な診断及びモニタリングに有効なシステム及び方法を提供する。本明細書に開示のシステム及び方法は、ガス分析システム技術を用いて化学的及び生物学的マーカーガスを検出して、医療専門家及び/又は患者に、喘息、TB及び肺癌の低コストで迅速且つ正確な診断のための臨床データを提供する。薬効試験の方法も開示する。
【0039】
《II.態様》
《A.喘息》
或る観点において、本発明のシステム及び方法は、喘息の迅速且つ正確な診断及びモニタリングを提供する。喘息は、一般に、小児及び成人の気道に影響を与え、息切れ、胸の締め付けを引き起こし、そして咳、喘鳴及び呼吸苦を伴う慢性の炎症性疾患であると考えられている。喘息の症状は人によって異なることがある。喘息の症状は、被検者への空気の流れの閉塞を更に含む。換言すれば、被検者の吸気及び呼気は、正常な個体の場合より少ない。このことは、典型的には、気道内部が炎症を起こし、刺激され、及び/又は腫大するために起こる。粘液分泌が気道を塞ぐこともあり、そして気道が炎症を起こす程度が増せば増すほど、気道はますます過敏となりより多くの症状を持続させることになる。炎症は、気管支痙攣と呼ばれる筋肉の緊張を引き起こし、次第に呼吸を困難にさせることもある。
【0040】
図1Aは、被検者が喘息に罹患しているか否かを検出するか又は喘息に罹患している被検者をモニタリングするシステム及び方法100が示された本発明の或る実施態様を表す。本発明の方法は、被検者125からの吸気からの周囲空気110を装置と接触させることを含む。吸気の流速及び流量120を場合により測定又は/及び制御し、そしてベースラインレベルとして(例えば、参照として)周囲の揮発性有機化合物(VOC類)及び一酸化窒素(NO)を測定する。或る観点において、バックグランド又は周囲空気からフィルター(例えば、インライン)によりVOC類を濾過して除きそれによってそれらを除去する(129)。次いで、濾過した吸気が被検者125の肺に入る。その後、その呼気130が装置に入る。場合により、呼気133に対する予備濃縮器を設けることができる(例えば、インライン)。装置の一例は、予備濃縮器モジュール(吸気、呼気又はその両方に対して)、ガスクロマトグラフモジュール及び検出器アレイモジュール150を含む。検出器アレイモジュール150は種々のバイオマーカー155(例えば、VOC類及びNO)を示すシグナルを生成する。シグナルを分析して、被検者が喘息に罹患しているか否か及び/又はその重症度及び段階を決定する(160)。
【0041】
或る観点において、携帯用のガス分析器は、場合により、呼気の流れを調整するモジュールを含む。望ましい流速となるように呼気を補助又は調整することができる。モジュール又は流量計131(例えば、インライン)は、呼気130の気流速度を直接制御する。センサ室を通る分析対象物含有ガスの流速は変化することがあるが、モジュール又は流量計によってその速度を増加又は減少させることができる。或る実施態様において、約200mL/分間〜約1000mL/分間の流速を用いる。他の場合に、流速は約300mL/分間〜約750mL/分間である。更に他の場合に、流速は約400mL/分間〜約650mL/分間である。更にまた他の場合には、一定の速度、例えば、600mL/分間、1000mL/分間、3000mL/分間、又は6000mL/分間に流速を固定することができるが、実測値はこれらの流速に限定されない。
【0042】
或る場合に、反復測定を行なう前に、本発明の方法は場合により、個体による純粋空気を用いた数回の深呼吸を行いそしてこの息を測定しない「肺洗浄」プロトコルを含む。更に、実測の前に場合により、口腔洗浄プロトコルを含めることができる。例えば、図1Bを見ると、清浄水供給165を被検者に与えて被検者の口腔をすすぎ及び洗浄(168)した後、これを廃棄する。同様にして、清浄空気供給システム170を被検者175に与えて周囲空気を清浄にした後、呼気させる(185)。別の態様において、図1Cに示すように、VOC類及びNO(189)を含む周囲空気を濾過して全ての周囲VOC類及びNOを除去する(190)。この方法により、VOC及びNOを含まない清浄空気をヒト肺198に通す。息を吐いて(199)肺を洗浄する。
【0043】
或る場合において、ファン又はポンプを備えたモジュール131によって(図1A)、又は追加の空気、例えば、圧縮空気で希釈することによって、呼気速度を増加させる。或る観点において、気相中の分析対象物は、その気相と別のガス、例えば、空気とを混合することによって更に希釈することができる。更に、所定の温度の水の中で空気(又は不活性ガス)をバブリングし、次いでそれを分析対象蒸気を含むガスと混合することにより、ガス試料中に湿気を導入することができる。空気流を制限するモジュールを用いて呼気の流速を低減させることができる。
【0044】
或る観点において、本明細書に開示の方法は、参照することにより本明細書中に組み込まれる2008年6月17日に出願された発明の名称「Handheld Breath Analysis Microsystems for Rapid Disease Classification, Disease Diagnostics and Health Monitoring」の米国特許出願第12/140,822号に開示されるようなスモールフォームファクタを備えた携帯用ガス分析システム(PGAS)を用いる。或る観点において、呼気分析及び周囲空気モニタリングは医師及び患者によって日常的に行なうことができる。更に、本明細書に開示の方法及びシステムは、ベンチトップ又は中央試験室(central-lab)機器、例えば、GC/MSに適用することができる。
【0045】
或る態様において、被検者の息は、例えば、喘息の検出、診断及びモニタリングに適したマーカー又はバイオマーカーを含んでいる。或る観点において、本発明の方法及びシステムによって検出されるバイオマーカーは、揮発性有機化合物(VOC)又は複数種の揮発性化合物(VOC類)である。或る観点において、VOCは、4−メチルオクタン、2,4−ジメチルヘプタン、イソプロパノール、トルエン、イソプレン、アルカン、酢酸、アセトン、2,6,11−トリメチルドデカン、3,7−ジメチルウンデカン、2,3−ジメチルヘプタン又はそれらの組み合わせからなる群から選択される構成員である。或る観点において、息ガス又はマーカーは一酸化窒素である。有利なことに、本発明の方法は、従来技術の方法と比べて高められた特異度及び広げられたダイナミックレンジで、呼気からのNO及びVOC類の両方を検出することができる。
【0046】
或る他の場合において、呼気中のNO濃度測定値は、治療の間の喘息制御と相互に関連している(例えば、Jones SL, Kittelson J, Cowan JO et al., Am J Respir Crit Care Med.;164:738-743 (2001);Beck-Ripp J, Griese M, Arenz S, et al., Eur. Respir. J., 19:1015-1019 (2002) 参照)。或る場合において、NO濃度レベルは、気道炎症の総合的なマーカーであることができる。このように、或る実施態様において、NO濃度レベルをVOC類と共に用いて喘息を検出、診断及びモニタリングすることができる。
【0047】
或る観点において、周囲空気をVOC類についてモニタリングして参照用のベースラインレベルとして保存する。患者の肺に入る前に、吸入される空気を周囲VOC類から濾過する。言い換えれば、周囲VOC類を濾過することにより、被検者はVOCを含まない空気を吸う。吸気も流速及び流量について測定する。喘息評価に対して流速及び流量の参照と共にNO及びVOC類の検出のために呼気を捕集する。
【0048】
好ましい観点において、喘息の段階及び重症度を決定する。VOC濃度又は複数種のVOC類を用いて喘息を間欠性、軽度、中等度又は喘息と特徴づけ又は診断する。別の態様において、NO濃度レベルを用いて喘息を重度の喘息と特徴づける。喘息の段階は、通常、間欠性、軽度、中等度、重度又は前記の組み合わせ、例えば、軽度〜中等度又は中等度〜重度であると分類される。本発明のシステム及び方法は、喘息の診断に対して高い特異度及び高い感度を与える。有利なことに、本発明の方法及びシステムはダイナミックレンジを高め大変に正確となるので喘息の段階及び重症度(例えば、重度から軽度)を識別することができる。
【0049】
或る好ましい観点において、ヒトの呼気中のNO濃度レベル並びにVOC類の一致性及び量は、喘息の程度及び重症度と相関している。
【0050】
「感度」という用語は、本明細書中で用いる場合、試料が陽性である場合、例えば、被検者が疾患(例えば、喘息)に罹患している場合に、本発明の診断方法又はシステムが陽性の結果を与える確率をいう。感度は、真陽性及び偽陰性の合計で真陽性結果を割った数値として計算される。感度は、本質的に、本発明の方法又はシステムが疾患(例えば、喘息)に罹患している者を該疾患に罹患していない者からどれだけよく正確に同定するかの尺度である。好ましい実施態様において、疾患(例えば、喘息)を分類する感度は、本発明のシステム及び方法を用いて、少なくとも約90%、例えば、約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。
【0051】
「特異度」という用語は、試料が陽性でない、例えば、疾患(例えば、喘息)に罹患していないものである場合に、本発明の診断方法又はシステムが陰性の結果を与える確率をいう。特異度は、真陰性及び偽陽性の合計で真陰性結果を割った数値として計算される。特異度は、本質的に、本発明の方法又はシステムが疾患(例えば、喘息)に罹患していない者を該疾患に罹患している者からどれだけよく除外するかの尺度である。好ましい態様において、分類の特異度は、本発明のシステム及び方法を用いて、少なくとも約90%、例えば、約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。
【0052】
或る好ましい観点において、本明細書に記載の方法及びシステムは、被検者についての流速及び流量測定を含む。装置は、吸気、呼気又は吸気と呼気との両方の流速及び/又は流量を測定する肺活量計を含む。或る場合に、患者は、気道狭窄を誘発するメタコリン中で呼吸する。この手順は、喘息の段階の計算に対して追加のデータを与えることができる。当業者であれば、本発明に有効な他の方法があることを知っているであろう。
【0053】
或る観点において、本発明の方法を用いて定期的な息試料によって治療の効果をモニタリングすることができる。例えば、吸入されたコルチコステロイドを用いる場合又は気管支拡張剤を用いる場合、その治療を本発明の方法を用いて評価することができる。
【0054】
或る観点において、本明細書に開示の方法は、好ましくは肺活量計を用いて、息、例えば、吸気、呼気又はその両方の流れを測定することを含む。肺活量計モジュールは、好ましくは、装置に不可欠である。或る場合に、呼吸からの気流の容積及び速度を測定する。被検者は、場合によりノーズクリップをつけ、使い捨て(disposable)のマウスピースを通して息を吸い及び息を吐く装置を使用することができる。次いで、息を約2.0リットル/分間で約2〜5分間サンプリングして予備濃縮器を通して引くことによりVOC類を捕捉する。同様にして、周囲の室内空気の試料を別の予備濃縮器上へ捕集する。或る観点において、被検者は病院内などで人工呼吸器を付けているので、本明細書に開示の装置は被検者の肺と流体連絡している。
【0055】
或る観点において、被検者の息は、被検者からの息を捕集するように構成されたバッグからのものである(例えば、米国特許第5,465,728号又は第6,723,056号参照)。装置の予備濃縮器モジュールを用いて息を濃縮することができる。或る観点において、予備濃縮器モジュールは対象のVOC類に対して親和性を有する材料又は溶媒を含む。更なる分析のために予備濃縮モジュールを加熱してVOCを脱着する。
【0056】
有利には、一定の分析対象物、例えば、高い蒸気圧の分析対象物の場合、該分析対象物を吸着剤上で濃縮する。予備濃縮器を用いて試験試料中の分析対象物の濃度を高めることができる。予備濃縮器は、吸着剤材料からなるトラップである。吸着剤材料は、使用時に、ガス試料から分子を引き付けて該吸着剤の表面で濃縮する。引き続き、試料は「脱着」されて分析される。適当な予備濃縮材料として、以下に限定されるものではないが、高分子吸着剤材料、シラン処理されていないグラスウール、テフロン(商標)又は多孔性ガラス繊維等を挙げることができる。吸着剤材料は、管、例えば、スチール管に充填される。
【0057】
更に他の観点によれば、本発明の方法は環境的警告のための周囲空気のモニタリングを提供する。周囲空気、例えば、ウイルス、アレルゲン、煙霧(fume)、及び煙をモニタリングすることによって、かかる有害成分の存在に関して喘息患者に警戒させることができる。個々の患者についての喘息を引き起こす要因に基づいて、例えば、パターン認識、により一定のガスにロックオンするように本明細書に記載の方法をプログラムすることができる。或る観点において、被検者の息から減算することができるバックグランドシグナルとして周囲空気を保存する。
【0058】
ここで図2Aを参照すると、そこに示されるように、本発明の方法は、患者が環境に入ることに注意を促す環境的警告のための周囲空気のモニタリング200を提供する。吸入する周囲空気210はバックグランドのVOC類及びNOガスを含む。装置は分析器215を含み、前記分析器215は、肺活量計(1)と、周囲空気中のVOC及びNOベースラインレベル217を出力するVOC検出器(2)及びNO検出器(3)を含む検出器アレイモジュールとを備えている。ベースラインレベルが極めて高い、すなわち、閾値を超えている場合には、警告、すなわち、赤色光又は音楽が発せられ、居住できないような(inhospitable)環境のユーザーに注意を促す。早期の環境的閉じ込めのために周囲空気、例えば、ウイルス、アレルゲン、煙霧、煙、塵埃等をモニタリングすることにより、本発明のシステム及び方法は喘息患者に警告する。個々の患者の喘息を引き起こす要因に基づいて、パターン認識アルゴリズムによって一定のガスをロックオンするように装置をプログラムすることができる。本発明のシステム及び方法は、実際に或る場合には、喘息患者に早期に警告するための特定のアレルゲンに対する個人専用の環境検出装置である。或る観点において、本発明のシステム及び方法は、操作しやすいようにマウスピース及びフィルター(例えば、使い捨て)220を備える。或る実施態様において、肺に入る前に周囲空気中のVOC類を物理的に濾過除去する。個体の肺230は、本発明のシステムを介して吸気し及び呼気する(240)手段を提供する。呼気240は250を通り分析器215に進む。呼気のVOC類及びNOの濃度並びに流速についての出力データ255を評価することができる。図2Bに示すように、別の実施態様において、次に、一定のアルゴリズムを用いたシグナル処理及びデータ操作を用いてバックグランド減算280を行なうことができる。次いで、喘息の重症度の定量的評価290を与えることができる。
【0059】
或る場合に、検出器アレイは着脱可能、交換可能及び/又は使い捨てである。検出器アレイは、特定の増強及び機能性のために「プラグインプレイ」モードで挿入及び取り外しをすることができる。
【0060】
本明細書に開示の方法は、被検者の進行を追跡する上で医療専門家又は患者にとって有益である被検者の状態の規則的なモニタリングを行なうという観点を含む。或る場合には、本明細書に記載の呼気分析は、被検者の息からVOC類を測定することにより気管支収縮の根本原因を提供することができる。特定の実施態様において、携帯用ガス分析システムを用いて投薬及び治療の効果をモニタリングすることができる。更に、在宅用装置を用いることによりこの能動的なモニタリングを通して個々の患者(個人専用の装置)に合わせた薬物治療を行なうことができる。
【0061】
或る観点において、医療専門家は、投薬前後の喘息患者のNO及びVOC類を検出する。これは、患者の薬物治療を管理及び/又は制御する効果的な手段となることができる。或る観点において、患者が治療後に高いNOレベルを有し続けている場合に、これは喘息によるものでなく体の別の領域の炎症によるものである。しかしながら、更なるVOC類を検出することは喘息の治癒を示すことがある。
【0062】
或る観点において、種々の時間間隔で患者のNOレベル及びVOCレベルを測定する。例えば、T1(時点1)で患者の息を測定しそしてNOレベル及びVOC濃度レベルをモニタリング又は計算することができる。T1のしばらく後のT2(時点2)で、患者のNOレベル及びVOC濃度レベルを再度測定する。T1とT2との間の差は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間、2年間等であることができる。
【0063】
《B.結核(TB)》
更に他の実施態様において、本発明は、被検者が結核に罹患しているか否かの検出又は結核被検者のモニタリングの方法及びシステムを提供する。ここで図3を参照すると、図に示されるように、本発明の方法は、或る環境に入ることから患者を変更させる環境的警告のための周囲空気310のモニタリングを提供する。呼気320又は被検者の喀痰(例えば、粘液、痰、唾液等、図示せず)、又は喀痰培養物330からのヘッドスペースガスがVOC類350を含んでいると、それらはガス分析器と接触してシグナルを生成する。このシグナルを用いて、患者がTBに罹患しているか否か(380)を診断するか又はTB感染が薬剤耐性であるか否かを診断し、TBの管理等を行うことができる。或る場合に、反復測定を行なう前に、本発明の方法は、数回の深呼吸を行いそしてそれを測定しない「肺洗浄」プロトコルを含む。
【0064】
或る好ましい観点において、本明細書に開示の方法及びシステムは、薬剤耐性TBを防ぐための効果的な治療を患者が確実に受けられるようにする上で重要である。現在、MGITシステムによる相対的迅速培養試験(relative rapid culture test;例えば、9〜15日間)は、O2消費を測定することにより95〜97%の正確性(すなわち、許容値(accepted value)に対する近さの程度)を提供する。しかしながら、その試験は本発明の方法に比べるとまだかなり遅い。その試験は訓練された専門技術者や適正な細菌学的実験室設備を必要とし、また本発明の簡単で迅速な方法に比べて相対的に高価である。
【0065】
或る観点において、本発明の方法及びシステムは、喀痰又は喀痰培養物への治療的処置あるいは薬物処理の前、その間及び/又は後で、患者の喀痰培養物からのヘッドスペースガス又は患者の息のVOC類をモニタリングして患者のTB菌に対する最も有効な薬剤を同定する。また、能動的モニタリングは、投薬を止める最良のタイミングを決定することができる。
【0066】
図4Aに示すように、本明細書に開示の方法の或る実施態様400において、被検者は、肺活量計(1)及びVOC検出器アレイ(2)を備えた分析器415を通されるバックグランドVOC類を含む周囲空気410を吸入する。出力データ420は閾値に対して測定される周囲VOC類ベースラインレベルを有する。出力データが閾値を超えた場合には、警告421が伝えられる。或る場合に、本発明のシステム及び方法は、操作しやすいように使い捨てのマウスピース及びフィルター425を備える。周囲空気中のVOC類は、肺430に入る前に濾過される。個体の肺430は、本発明のシステムを介して吸気及び呼気する(435)手段を提供する。呼気は分析器415に進む。任意の態様において、装置は、予備濃縮器440(例えば、インライン)及び/又は流量計モジュール444(例えば、インライン)を含む。VOC類を濃縮するために、呼気を濃縮することができる。更に、流量計モジュールは呼気の流れを調整することができる。望ましい流速となるように呼気を補助又は調整することができる。流量計モジュール444は、前記説明のように空気流を制限するか又は空気流を増加させることによって直接に空気流の速度を制御する。呼気中のVOC類について出力データ455の評価を行なうことができる。別の実施態様によれば、次に、シグナル処理及びデータ操作を用いてバックグランド減算460(例えば、図4B)を行なうことができる。有利なことに、次に、TB感染の定量的評価480を与えることができる。
【0067】
図5Aに示す別の実施態様500において、被検者は、肺活量計(1)及びVOC検出器(2)を備えた分析器515を通されるバックグランドVOC類を含む周囲空気510を吸入する。再び、出力データ520は閾値に対して測定される周囲VOC類ベースラインレベルを有する。出力データが閾値を超えた場合には、警告521が伝えられる。或る場合に、本発明のシステム及び方法は、操作しやすいようにマウスピース及びフィルター(例えば、使い捨て)525を備える。周囲空気中のVOC類は、肺に入る前に濾過される。個体の肺530は、本発明のシステムを介して吸気し及び呼気する(535)手段を提供する。呼気は分析器515に進む。呼気中のVOC類について出力データ555の評価を行なうことができる。別の実施態様によれば、次に、シグナル処理及び一定のアルゴリズムを用いたデータ操作を用いてバックグランド減算560(例えば、図5B)を行なうことができる。有利なことに、治療の間に患者の状態をモニタリングすることによって、TB投薬の管理580を達成することができる。種々の薬物治療の前、その間及び後に本発明のシステム及び方法を用いることによって、個々の患者に対し最も有効な薬剤を選択することができる。
【0068】
ここで、図6を参照すると、本発明の更に別の実施態様600が示される。図6に示されるように、分析器620を介して喀痰培養物のヘッドスペースガス、又は息を評価し(610)及びマーカーVOC類の濃度621を測定する。有利なことに、種々の薬剤を用いて(622)、喀痰又は喀痰培養物633中の特定の細菌へのその効果を評価することができる。分析器645を介してヘッドスペースガス640を分析しそしてバイオマーカーの濃度を評価する(650)。本明細書に開示のシステム及び方法は、個々の患者の喀痰又は喀痰培養物に対する薬剤(例えば、薬剤A、622)の効果を評価する。異なる薬剤(B−Z)を用いてこの手順を繰り返すことにより最も有効な薬剤630を見出すことができる。この実施態様は、本明細書に開示のシステム及び方法の臨床試験及び薬物研究への用途も意図している。
【0069】
図7は、本発明の別の実施態様700を示す。図7に示すように、TB汚染環境として高リスクである種々の場所、例えば、TB試験室、病院、クリニック、健康管理施設、ナーシングホーム、監獄、刑務所等710で周囲空気のサンプリングを行なうことができる。分析器730は、種々の濃度のVOC類の濃度750を評価する。VOC類が閾値を超える場合には、警告が伝えられる(780)。
【0070】
或る場合に、以下のものはTB検出に役立つVOC類である:1−メチル−ナフタレン、3−ヘプタノン、メチルシクロドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチル−ヘプタン、1−メチル−4−(1−メチルエチル)−ベンゼン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、1,3−イソベンゾフランジオン、2,3−ジメチル−ペンタン、アセトアルデヒド、α,α,ジメチルベンゼンメタノール、シクロヘキサン、2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、及び2,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチル−3−フェニル−1H−インデン。他に、以下に限定されるものではないが、トランス1,3−ジメチル−シクロヘキサン、1,4−ジヒドロ−ベンゼン、1−オクタノール、2−ブタノン、カンフェン、4−メチル−デカン、3−エチル−2−メチル−ヘプタン、2,6−ジメチルオクタン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、トランス−3,6,6−トリメチル−ビシクロ−3−1−1−ヘプト−2−エン、トランス1−エチル−4−メチル−シクロヘキサン、及び1−β−ピネンを挙げることができる。
【0071】
更に、本発明のアプリケーションは、ベンチトップ又は中央試験室機器、例えば、GC/MS、又は電子鼻に適用することもできる。本明細書に開示の方法及びシステムは、患者の呼気中のVOC類及び培養マイクロバクテリアのヘッドスペースガスに基づくTB試験について大変に高い感度及び特異度を可能にする。
【0072】
図8は、本発明の更に別の実施態様800を示す。図8に示すように、本発明は、喀痰培養物、例えば、ヘッドスペース810をサンプリングする装置及び方法であって、分析器830が種々のマーカーVOC類の濃度850を評価するか、又はVOC類濃度の経時的変化(例えば、濃度の勾配)をモニタリングする装置及び方法を提供する。本発明の装置及び方法は、VOC類が閾値を超えることにより、又は、例えば、勾配が一定の値を超えることによりTB感染という評価870を行なうことができる。患者に対して最も効果的であることについての種々の治療化合物を試験することができる。この方法により、種々の抗体を試験することを通じて個々の患者(個人専用の装置)に合わせた薬物治療を行なうことができる。この実施態様は、現在のTB診断方法に取って代わることができ、そして、より迅速且つより正確となる。
【0073】
《C.肺癌》
更に他の実施態様によれば、本発明は、被検者が肺癌に罹患しているか否かの検出又は肺癌に罹っている被検者のモニタリングの方法及びシステムを提供する。或る場合に、肺癌に関するVOC類として、限定的でなく、2−へプタノン、4−メチル−ナノン、ヘプタナール、2−メチル−ノナン、1,1’−ビシクロペンチル,ノナン、4−メチル−オクタン、ヘキサナール、プロピル−シクロヘキサン、トリジュウテロアセトニトリル、5−メチル−2−へキサンアミン、1−ブチル−2メチル,シス−シクロプロパン、1,1,3−トリメチル−シクロヘキサン、2−クロロ−1−(ジフルオロメトキシ)−1,1,2−トリフルオロ−エタン、3−エチル−2−メチル−ヘプタン、1,3−ジメチル−,トランス−シクロヘキサン、3−(メチルチオ)−1−プロペン、3,6−ジメチル−オクタン、2,3−ジメチル−ペンタン、クロロホルム、1−(1−メチル−2−シクロペンテン−1−イル)−エタノン、2−シアノ−アセトアミド、4−(1,1−ジメチルエチル)−シクロヘキサン、1−メチル−4−(1−メチルエテニル),シクロヘキサン、1,1−ジメチル−シクロプロパン、2−メトキシ−エチル,アセテート、1−メチル−1−(1−メチルエチル)ヒドラジン、トランス−アンチ−1−メチル−デカヒドロナフタレン、エチニル−ベンゼン、2−メチルブチリデン−シクロペンタン、オクタヒドロ4,7−エタノ−1H−インデン、5−メトキシ−1−アザ−6−オキサビシクロ(3.1.0)ヘキサン、1,1−ジメチルシクロヘキサン、4−(1−メチルエチル)−ヘプタン、1,4−ジメチル−シス−シクロヘキサン、ペンタナール、3−メチル−ノナン、1,2,3−トリメチル−,(1α2β3α)シクロヘキサン、2−β−ピネン、[10B]−トリエチルボラン、2,5−ジメチル−,シス−ピペラジン、デルタ−4−カレン、2−メチル−2−メチルブチルプロパン酸エステル、3−メチル−ペンタン及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0074】
或る観点において、本明細書に記載の方法及びシステムは、2つの主要な型の肺癌、すなわち、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌を診断することができる。非小細胞肺癌(NSCLC)は、肺癌の約80%を占め、これらは扁平上皮癌、腺癌、及び肺胞細胞癌(bronchioalveolar carcinoma)を含む。小細胞肺癌(SCLC)は全ての肺癌の約20%を占める。
【0075】
《III.センサアレイ》
或る観点において、検出器アレイは一つのセンサ又は複数のセンサを含む。或る観点において、センサは、表面微細加工センサ(MEMS)である。他の実施態様において、センサは、MEMSセンサの少なくとも一部が表面の代わりに基板内部に形成されることを意味する、バルク微細加工センサであることができる。MEMSセンサを用いたセンサアレイの更に他の実施態様は、表面微細加工センサとバルク微細加工センサとの組み合わせを含んでいることができる。アプリケーション及び要求される感度に応じて、異なるタイプのセンサ(MEMSタイプに限定されない)を用いることができる。用いることができるMEMSセンサの例として、ケミレジスタ(chemiresistor)、バルク弾性波(bulk acoustic wave)(BAW)センサ等を挙げることができる。他の実施態様において、検出器アレイは、非MEMSセンサであることができる1種又は2種以上のセンサを含む。検出器アレイに用いることができる非MEMSセンサの例として、石英若しくはガリウムヒ素基板を用いたSAW(表面弾性波(surface acoustic wave))センサ又はQCM(水晶振動子マイクロバランス)を挙げることができる。
【0076】
或る観点において、各センサはコーティングを有する表面を含む。用いられる各コーティングは、検出すべき1種又は2種以上の特定の化学物質、例えば、(NO、VOC類)に対する親和性を有し、該コーティングはその対応する1種又は2種以上の化学物質を吸収するか又はそれと化学的に相互作用する。コーティングと化学物質との間の相互作用は、次に、センサの物理的特性、例えば、共振周波数、静電容量又は電気抵抗を変化させ、そしてその変化したセンサの物理的特性は変換器又は他の測定装置を用いて測定することができる。或る観点において、センサ用に選択される特定のコーティングは、センサアレイを用いて検出する化学物質に応じる。コーティングの化学親和力は温度に伴って大きく変化することがあるので、操作温度範囲はコーティングの選択において考慮すべきである。或る態様において、センサアレイを用いてヒトの息中の揮発性有機化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、n−オクタン、エチルベンゼン、m−又はp−キシレン、α−ピネン、d−リモネン、ノナナール、ベンズアルデヒド、2−メチルヘキサン、及び4−メチルオクタンを検出する。異なるアプリケーションに用いることができるコーティングとしては、2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)とテトラフルオロエチレン(TFE)、PtC12(オレフィン)、C8−MPN等との非晶質コポリマーを挙げることができる。
【0077】
必要とされるセンサの数は、検出すべき種々の化学物質の数に、及びセンサに用いられるコーティングの性質に応じる。各コーティングが1種類の化学物質だけを吸収し又はそれと化学的に相互作用する態様において、センサの数は検出すべき化学物質の数と正確に一致することがあるが、他の実施態様においては、冗長性のために2個以上のセンサに所定のコーティングを施すことが望ましいことがある。或る観点において、コーティングに対する化学物質の関係は一対一の相関関係ではない。換言すれば、各コーティングは2種以上の異なる化学物質と反応しそして化学物質と所定のコーティングとの間の反応は化学物質が異なれば性質及び強度が変化する。従って、検出器アレイの反応は異なるガスに対して異なるパターンを有することがあるので、種々のコーティングを有するセンサを備えた検出器アレイが有効である。
【0078】
《IV.シグナル処理》
或る観点において、ニューラルネットワークアルゴリズム又は学習アルゴリズムによりシグナル分析を行なう。ニューラルネットワークを用いたパターン認識は当該分野では確立している。訓練セットを用いてニューラルネットワークを訓練しそしてその後に検証セットを用いて検証する。
【0079】
ニューラルネットワークは、コネクショニストの計算へのアプローチに基づく情報処理の数理又は計算モデルを用いる人工ニューロンの相互接続されたグループである。典型的には、ニューラルネットワークは、ネットワークを通じて流れる外部又は内部情報に基づきその構造を変化させる適応システムである。ニューラルネットワークの具体例として、フィードフォワードニューラルネットワーク、例えば、パーセプトロン、単層パーセプトロン、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、ADALINEネットワーク、MADALINEネットワーク、ラーンマトリックス(Learnmatrix)ネットワーク、動径基底関数(RBF)ネットワーク、及び自己組織化マップ又はコホーネン自己組織化ネットワーク;リカレントニューラルネットワーク、例えば、単純リカレントネットワーク及びホップフィールドネットワーク;確率的ニューラルネットワーク、例えば、ボルツマンマシン;モジュラーニューラルネットワーク、例えば、コミッティーオブマシンズ(committee of machines)及び連想型(associative)ニューラルネットワーク;及び他のタイプのネットワーク、例えば、即時訓練型(instantaneously trained)ニューラルネットワーク、スパイキングニューラルネットワーク、ダイナミックニューラルネットワーク、及びカスケーディング(cascading)ニューラルネットワークを挙げることができる。
【0080】
ニューラルネットワーク解析は、例えば、StatSoft社から入手することができるStatisticaデータ解析ソフトウェアを用いて行なうことができる。ニューラルネットワークの更なる説明は、例えば、Freeman et al., In “Neural Networks: Algorithms, Applications and Programming Techniques,” Addison-Wesley Publishing Company (1991);Zadeh, Information and Control, 8:338-353 (1965);Zadeh, “IEEE Trans. on Systems, Man and Cybernetics,” 3:28-44 (1973);Gersho et al., In “Vector Quantization and Signal Compression,” Kluywer Academic Publishers, Boston, Dordrecht, London (1992);及びHassoun, “Fundamentals of Artificial Neural Networks,” MIT Press, Cambridge, Massachusetts, London (1995) を参照されたい。
【0081】
VOC刺激警告のために周囲空気をモニタリングしそしてベースラインレベルとして保存する。吸気及び呼気の両方を流速及び流量について測定する。呼気を捕集しそして喘息評価に対するNO及びVOC類検出のためにバックグランドデータによってフィルター処理する。
【0082】
《V.実施例》
《実施例1》
2007米国喘息教育予防プログラム(NAEPP)ガイドラインに従って評価された種々の段階の喘息重症度について臨床試験を行なう。これらのガイドラインは、National Heart, Lung, and Blood Institute NAEPP Expert Panel Report 3: Guidelines for the Diagnosis and Management of Asthma, Full Report 2007に記載されている。Expert Panel Report 3(図9参照)のガイドラインを用いて、600例の患者の障害(impairment)及びリスクを評価しそして1)間欠性;2)軽症;3)中等症;又は4)重症に分類する。Expert Panel Report 3は、153例の個体が間欠性の喘息に罹っており;101例の個体が軽症の喘息に罹っており;256例が中等症の喘息でありそして90例が重症の喘息であることを示す。
【0083】
2007NAEPPガイドラインに従って各患者の喘息の重症度を分類した後、600例の喘息患者から息試料を得る。例として化合物4−メチルオクタン、2,4−ジメチルヘプタン、イソプロパノール、トルエン、イソプレン、アルカン、アセチック(acetic)、アセトン、2,6,11−トリメチルドデカン、3,7−ジメチルウンデカン、及び2,3−ジメチルヘプタンを含む揮発性有機成分(VOC)及び一酸化窒素のレベルを測定する。周囲空気中のマーカーのベースラインレベルを測定し、そしてその周囲空気中のマーカーのベースラインレベルによって息試料レベルを調整する。
【0084】
各分類に対しこれらの息試料を用いて、VOC類及びNOレベルを決定する。試料の未知の病状を分類するために、未知の試料の特徴を比較する際の基礎、モデル、又はテンプレートとして働く、センサアレイの訓練データセットとしてこれらの試料のコホート(300例)を用いる。訓練後に、訓練セットに用いなかった試料のコホート(300例)を用いてセンサアレイを検証する。これは検証セットとして知られる。この試験から得られるデータを用いてセンサアレイの全ての精度パラメータを計算する。
【0085】
前記マーカー訓練に加えて、600例の各患者の肺活量データ測定を実施し、気管支拡張剤の投与前及び投与後の両方について1秒間努力呼気容量(FEV1)を測定する。データ解析ソフトウェアを用いて訓練セット及び検証セットにこの肺活量測定データを加える。センサアレイの感度、特異度、及び精度を計算する。
【0086】
図10A〜Bに示すように、本明細書に記載の方法は、VOC類、NO、及び流速の全て又は前記のいずれかを検出することによって、喘息の重症度をモニタリングする特異度及びダイナミックレンジを増加させる。好ましくは、本明細書に記載のシステム及び方法は軽症の喘息に罹患した又は喘息に罹患していない患者についてVOC類をモニタリングし、一方で、軽症又は重症の喘息についてNOレベルを定量化する。
【0087】
《実施例2》
150例の喘息患者及び50例の喘息でない健常対照者からの息試料を得る。実施例1に記載のように、マーカーレベルを測定し、そして肺活量測定を実施する。訓練及び検証されたセンサアレイを用いて、150例の喘息患者を重症度の程度によって分類することができる。
【0088】
訓練したセンサアレイを用いて、200例の患者のそれぞれについて喘息重症度レベルを予測する。その後、2007NAEPPガイドラインによって150例の患者それぞれの喘息重症度レベルを分類し、そしてその結果を比較する。アルゴリズムの感度、特異度、及び精度を実施例1の結果と比較する。
【0089】
《実施例3》
センサアレイを開発して患者の息、喀痰及び喀痰培養物中のVOCレベルの測定によって結核感染を同定する。
【0090】
活動性結核に罹患した200例の患者、潜伏結核に罹患した200例の患者、及び100例の健常対照者から息及び喀痰試料を得る。各患者から採取した検体からヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)生物を培養することによって結核の確定診断を行なう。
【0091】
500例の各患者からの検体から、ヒト結核菌又はウシ結核菌(Mycobacterium bovis)からのオフガスを含む揮発性有機成分(VOC)のマーカーのレベルを測定する。周囲空気中のマーカーの濃度によって結果を調整する。各分類に対してこれらの試料を用いて、VOC類を決定する。試料の未知の病状を分類するために、未知試料の特徴を比較する上での基礎、モデル、又はテンプレートとして働く、センサアレイの訓練データセットとしてこれらの試料のコホート(200例)を用いる。訓練した後、訓練セットに用いなかった試料のコホート(200例)を用いてセンサアレイを検証する。この試験から得られるデータを用いてセンサアレイの全ての精度パラメータを計算する。センサアレイの感度、特異度、及び精度を計算する。
【0092】
《実施例4》
活動性結核に罹患した100例の患者、潜伏結核に罹患した100例の患者、及び50例の健常対照者から息試料を得る。通常のスクリーニング技術によって、各患者の結核の存在及び重症度を同定する。実施例3に記載したように、マーカーレベルを測定する。
【0093】
実施例3に定義したアルゴリズムを用いて、各患者について結核分類を計算し、そしてその結果を、標準的スクリーニング技術によって同定された各患者の結核分類と比較する。センサアレイの感度、特異度、及び精度を実施例3の結果と比較する。
【0094】
《実施例5》
活動性結核に罹患した87例の患者から息試料を得る。ヒト結核菌のIS6110反復性DNA要素を用いて各患者における結核の存在及び重症度を確認する。治療の前に、各患者から息VOC類を捕集する。イソニアジド、リファンピン(商品名:Rifadin)、エタンブトール(商品名:Myambutol)及びピラジナミドを含む種々の薬剤を用いてTBを治療する。患者は指示された通りに薬剤を服用する。治療の間、息試料は、患者がより良くなりそしてより健康に感じることを示す。息試料からのVOC類は患者がより良くなっていることを証明する。治療後、VOC類はTB感染がもはや存在しないことを証明する。
【0095】
同時分析において、87例の各患者の喀痰を培養する。分析器により各喀痰培養物のヘッドスペースガスを評価しそしてマーカーVOC類の濃度を決定する。同じ薬剤を用いて、喀痰培養物中の特定の細菌へのその薬剤の効果を評価する。本発明の方法は、薬剤の効果を評価して最も効果的な薬剤を見出す。
【0096】
《実施例6》
本実施例は、87例の患者を用いた臨床試験を表す。第I段階の研究において、87例の患者から息試料を得る。TBマイコバクテリア(Mycobacteria)のVOCマーカーを検証する。プロトコルは、(1)TB培養物、(2)NTM培養物、(3)口腔及び気道(respiratory track)中の微生物叢、及び(4)対照管(control tubes)のヘッドスペースの捕集を含む。次いで、TB培養物ヘッドスペースの特定のVOCマーカーの同定が可能となり、そしてそれを最適化する。
【0097】
第II段階において、患者の息からのVOCマーカーを確認しそして臨床試験プロトコルを確立する。プロトコルは、患者及び対照から喀痰及び息の双方の臨床試料を集めること;参照として喀痰試料について第I段階インビトロ試験を繰り返すこと;TB患者の息の特定VOCマーカーを同定することを含む。
【0098】
第III段階における、最適化のためのクロスサイト(cross-site)臨床試験。
【0099】
本明細書中に引用された全ての刊行物及び特許出願は、個別の刊行物又は特許出願それぞれが参考までに引用されるものであると明確に及び個々に示されたかのようにして参考までに本明細書中に引用する。上記の発明は、明確に理解されることを目的として説明及び実施例によって多少とも詳細に記載してきたが、特許請求の範囲に記載した発明の精神又は範囲から逸脱することなく一定の変化及び修正をなすことができるということは、本発明の教示に照らし当業者には容易に明らかとなるであろう。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【発明の詳細な説明】
【0001】
《関連出願に対する相互参照》
本願は、2008年12月1日出願の米国仮特許出願第61/118,977号の優先権を主張するものであって、その内容の全体はあらゆる目的で参照することにより本願明細書中に組み込まれる。
【0002】
《発明の分野》
本発明は、ガスセンサ技術を用いて、呼吸器疾患(例えば、感染及び慢性疾患、とりわけ喘息、結核及び肺癌)を低コストで迅速且つ正確に診断する及びモニタリングするシステム及び方法を提供する。
【0003】
《発明の背景》
ヒトの呼気分析についての臨床研究によって、ヒトの息からの一定の微量ガスが一定の疾患、とりわけ肺に関連した疾患、例えば、喘息、結核(TB)、及び肺癌と相関していることが発見された(M. Philips, et al., Cancer Biomarkers, 3:95-109 (2007); M. Philips, et al., Tuberculosis, 87:44-52 (2007) 参照)。他の適用において、ガス分析を用いてヒトの存在と適合しない危険物又は漏出ガス、例えば、メタン、一酸化炭素又は二酸化炭素の存在を測定することができる。
【0004】
現在のガス分析システムはまだ、大型で高価な実験室用機器、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)及びマススペクトロメトリー(MS)に大きく依存している。これらの機器の大部分(とりわけ、質量分析装置)は、その大きさを有意に減少させることを阻む操作特性を有しており、このことは現在のガス分析システムが大型で高価なデバイスでありそして操作が面倒であることを意味する(例えば、実験室サイズのGC/MS)。
【0005】
現在のガス分析装置は高価であることに加えて、その大きなサイズがこれらの機器の普及を妨げている。ポイントオブケア分析は極めて有益なものに違いないが、現在利用できるシステムはない。
【0006】
喘息は、咳、喘鳴、胸部絞扼感(chest tightness)及び呼吸苦(respiratory discomfort)という再発エピソードにより特徴付けられる慢性の肺疾患である。肺炎症は、喘息の発作を引き起こすことがある気管支収縮、及びこの慢性疾患の進行の一因となる。米国内で2,000万人を超える人が喘息を罹っていると推定される。米国心臓肺血液研究所(The National Heart Lung and Blood Institute)は、毎年の直接的及び間接的な健康管理コストのうち喘息が161億ドルを占めると指摘している。
【0007】
TBによって毎年およそ200万人もの人が亡くなっており、そしてTBは世界中で最もよく研究されている死をもたらす病因の一つである。TBの診断は、その認識されている乏しい業績にもかかわらず、数十年間も変わらないままであった。現在の診断方法は、喀痰塗抹標本の顕微鏡検査、培養、及び胸部X線を含む。しかしながら、これらの方法はいずれも低い感度(塗抹標本の顕微鏡検査で45〜60%)、低い特異度(X線で〜66%)であり、又は大変に時間がかかる(培養の場合に3〜6週間)。
【0008】
最近の研究は、患者の呼気中のVOC類及び培養したマイクロバクテリアのガスに基づくGC/MS機器を用いたTB試験が極めて高い感度及び特異度を有することを示している(Michael Phillips, et al., Tuberculosis 87:44-52 (2007);Reinhard Fend, J. Clin. Microb., p. 2039-2045 (June 2006) 参照)。しかし、この方法はとても複雑な設定を必要とするため当該分野で用いるには実用的でない。
【0009】
肺癌は肺の組織における制御されない細胞増殖の疾患である。原発性肺癌の大部分は、上皮細胞から生じた肺の癌腫である。男性において癌に関連した死の最も一般的な原因であり及び女性においても最も一般的な原因である肺癌は、世界中で毎年130万人の死の原因となっている。肺癌の主たる型は、小細胞肺癌(SCLC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)である。治療が異なるため、その区別は重要であり;すなわち、非小細胞肺癌(NSCLC)は外科的処置により治療されることがあるのに対し、小細胞肺癌(SCLC)は通常、化学療法及び放射線照射に対してより良好に反応する。
【0010】
喘息、結核及び肺癌の検出及び診断のためのヒトの呼気分析を可能とするシステム及び方法が必要である。呼気分析及び周囲空気のモニタリングを行なうための使い易くそして高い感度及び特異度を有するデバイスが必要である。本発明はこれら及び他の要求を満足させるものである。
【0011】
《発明の概要》
本発明は、呼吸器疾患、肺感染症及び慢性疾患の検出、診断及びモニタリングのためのヒト呼気分析を可能にするシステム及び方法を提供する。薬効試験の方法も開示する。
【0012】
或る実施態様において、本発明は、被検者が喘息に罹患しているか否かを検出するか又は喘息に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからのシグナルを分析して前記被検者が喘息に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法を提供する。
【0013】
好ましい態様において、前記装置は、ガスクロマトグラフの上流に予備濃縮器を更に含む。
【0014】
有利なことに、本発明のシステム及び方法は、VOC類、及び/又はNO、及び/又は呼吸流速を検出することによって、喘息の段階及び重症度をモニタリングする特異度、感度及びダイナミックレンジを従来技術よりも増大させる。
【0015】
或る観点において、本発明のシステム及び方法は、軽度の喘息に罹患しているか又は喘息に罹患していない患者についてVOC類をモニタリングすることができる。周囲空気をモニタリングし、そして、参照用のバックグランドシグナルとして保存することができる。或る観点において、患者が吸入する前に周囲空気を濾過する。別の実施態様において、バックグランドシグナルを保存した後、呼気から検出されたシグナルからそのバックグランドシグナルをフィルター処理又は減算する。
【0016】
或る場合には、投薬に関する決定は、例えば、薬物治療の前、その間及び/又は後に、VOC類、NO、及び流速をモニタリングすることにより管理することができる。更に、本明細書に開示のシステム及び方法は、喘息患者に対して環境汚染物質についての早期警告を与え、そのことにより一定の環境中のVOC類を回避するよう患者に注意を促す。
【0017】
本明細書に開示の方法及びシステムは、種々のフォーマット及びプラットフォーム、例えば、携帯用、ハンドヘルド又は実験室用機器において実行することができる。前記装置は、ガス分析器、例えば、GC/MS、GC/FID、GC/レーザー光検出器、GC/ナノ粒子センサ、GC/QCM及びeNose装置に含められるか又は統合することができる。
【0018】
別の態様において、本発明は、正確、迅速な及び携帯用であるTBの検出のシステム及び方法、例えば、驚くほど手頃な価格であるポイントオブケアサービスを提供する。
【0019】
同様に、本発明は、被検者が結核に罹患しているか否かを検出するか又は結核に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
被検者の試料からのヘッドスペース又は被検者の息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからのシグナルを分析して前記被検者が結核に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法を提供する。
【0020】
好ましい態様において、前記装置は、ガスクロマトグラフの上流に予備濃縮器を更に含む。
【0021】
有利なことに、本明細書に開示のシステム及び方法は、患者の呼気中のVOC類及び/又は培養されたTB菌のガスに基づくTB試験に対して特異度が高く、感度が高い。試験及び分析は迅速であり、数分間以内に行なうことができる。
【0022】
或る観点において、本発明のシステム及び方法は携帯用であり、そして投薬の前、その間及び後のTB患者のVOC類を安価に検出してTB患者の薬物治療を効果的に管理及び制御する。別の観点において、本発明のシステム及び方法は、種々の薬物治療の前、その間及び/又は後にTB培養物又は患者のVOC類をモニタリングして薬剤耐性TB菌に対する最も効果的な薬剤を同定する。
【0023】
更に、本明細書に開示のシステム及び方法は、患者の喀痰又は喀痰培養物からのヘッドスペースガス中の揮発性有機化合物(VOC類)をモニタリングして患者がTBに罹患しているか否かを診断する。
【0024】
或る他の観点において、本発明の方法及びシステムは、被検者の息、喀痰又は喀痰培養物を用いてTB感染を検出する。或る観点において、マイコバクテリウム培養物からのヘッドスペースサンプリングを用いて治療の間に薬剤耐性菌を検出することができる。医療専門家は、投薬の間のTB患者のVOC類を検出してTB患者の薬物治療を有効に管理及び制御することができる。更に、本明細書に記載の方法及びシステムは、薬剤耐性試験のための培養物からのVOC類のモニタリングを可能にする。
【0025】
更にまた別の実施態様において、本発明は被検者が肺癌に罹患しているか否かを検出するか又は肺癌に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからのシグナルを分析して前記被検者が肺癌に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法を提供する。
【0026】
好ましい態様において、前記装置は、ガスクロマトグラフの上流に予備濃縮器を更に含む。
【0027】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載及び図面から当業者に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A−C】喘息の検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示し;パネルBは口腔及び肺の洗浄を示しそしてパネルCは口腔及び肺の洗浄を示す。
【0029】
【図2A−B】喘息の検出及びモニタリングについての本発明の実施態様を示し;パネルBは喘息の検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0030】
【図3】TBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0031】
【図4A−B】TBの検出及びモニタリングについての本発明の実施態様を示し;パネルBはTBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0032】
【図5A−B】TBの検出及びモニタリングについての本発明の実施態様を示し;パネルBはTBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0033】
【図6】TBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0034】
【図7】TBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0035】
【図8】TBの検出及びモニタリングについての本発明の或る実施態様を示す。
【0036】
【図9】喘息の分類概要の或る実施態様を示す。
【0037】
【図10A−B】喘息の検出の或る実施態様を示し、ここでVOC類は、喘息なし又は軽度の喘息の検出及び診断に有効であり(パネルA)、そしてNOは、軽度及び重度の喘息の検出に有効である(パネルB)。
【0038】
《発明の詳細な記載》
《I.導入》
本発明は、呼吸器疾患(例えば、感染及び慢性疾患)の低コストで迅速且つ正確な診断及びモニタリングに有効なシステム及び方法を提供する。本明細書に開示のシステム及び方法は、ガス分析システム技術を用いて化学的及び生物学的マーカーガスを検出して、医療専門家及び/又は患者に、喘息、TB及び肺癌の低コストで迅速且つ正確な診断のための臨床データを提供する。薬効試験の方法も開示する。
【0039】
《II.態様》
《A.喘息》
或る観点において、本発明のシステム及び方法は、喘息の迅速且つ正確な診断及びモニタリングを提供する。喘息は、一般に、小児及び成人の気道に影響を与え、息切れ、胸の締め付けを引き起こし、そして咳、喘鳴及び呼吸苦を伴う慢性の炎症性疾患であると考えられている。喘息の症状は人によって異なることがある。喘息の症状は、被検者への空気の流れの閉塞を更に含む。換言すれば、被検者の吸気及び呼気は、正常な個体の場合より少ない。このことは、典型的には、気道内部が炎症を起こし、刺激され、及び/又は腫大するために起こる。粘液分泌が気道を塞ぐこともあり、そして気道が炎症を起こす程度が増せば増すほど、気道はますます過敏となりより多くの症状を持続させることになる。炎症は、気管支痙攣と呼ばれる筋肉の緊張を引き起こし、次第に呼吸を困難にさせることもある。
【0040】
図1Aは、被検者が喘息に罹患しているか否かを検出するか又は喘息に罹患している被検者をモニタリングするシステム及び方法100が示された本発明の或る実施態様を表す。本発明の方法は、被検者125からの吸気からの周囲空気110を装置と接触させることを含む。吸気の流速及び流量120を場合により測定又は/及び制御し、そしてベースラインレベルとして(例えば、参照として)周囲の揮発性有機化合物(VOC類)及び一酸化窒素(NO)を測定する。或る観点において、バックグランド又は周囲空気からフィルター(例えば、インライン)によりVOC類を濾過して除きそれによってそれらを除去する(129)。次いで、濾過した吸気が被検者125の肺に入る。その後、その呼気130が装置に入る。場合により、呼気133に対する予備濃縮器を設けることができる(例えば、インライン)。装置の一例は、予備濃縮器モジュール(吸気、呼気又はその両方に対して)、ガスクロマトグラフモジュール及び検出器アレイモジュール150を含む。検出器アレイモジュール150は種々のバイオマーカー155(例えば、VOC類及びNO)を示すシグナルを生成する。シグナルを分析して、被検者が喘息に罹患しているか否か及び/又はその重症度及び段階を決定する(160)。
【0041】
或る観点において、携帯用のガス分析器は、場合により、呼気の流れを調整するモジュールを含む。望ましい流速となるように呼気を補助又は調整することができる。モジュール又は流量計131(例えば、インライン)は、呼気130の気流速度を直接制御する。センサ室を通る分析対象物含有ガスの流速は変化することがあるが、モジュール又は流量計によってその速度を増加又は減少させることができる。或る実施態様において、約200mL/分間〜約1000mL/分間の流速を用いる。他の場合に、流速は約300mL/分間〜約750mL/分間である。更に他の場合に、流速は約400mL/分間〜約650mL/分間である。更にまた他の場合には、一定の速度、例えば、600mL/分間、1000mL/分間、3000mL/分間、又は6000mL/分間に流速を固定することができるが、実測値はこれらの流速に限定されない。
【0042】
或る場合に、反復測定を行なう前に、本発明の方法は場合により、個体による純粋空気を用いた数回の深呼吸を行いそしてこの息を測定しない「肺洗浄」プロトコルを含む。更に、実測の前に場合により、口腔洗浄プロトコルを含めることができる。例えば、図1Bを見ると、清浄水供給165を被検者に与えて被検者の口腔をすすぎ及び洗浄(168)した後、これを廃棄する。同様にして、清浄空気供給システム170を被検者175に与えて周囲空気を清浄にした後、呼気させる(185)。別の態様において、図1Cに示すように、VOC類及びNO(189)を含む周囲空気を濾過して全ての周囲VOC類及びNOを除去する(190)。この方法により、VOC及びNOを含まない清浄空気をヒト肺198に通す。息を吐いて(199)肺を洗浄する。
【0043】
或る場合において、ファン又はポンプを備えたモジュール131によって(図1A)、又は追加の空気、例えば、圧縮空気で希釈することによって、呼気速度を増加させる。或る観点において、気相中の分析対象物は、その気相と別のガス、例えば、空気とを混合することによって更に希釈することができる。更に、所定の温度の水の中で空気(又は不活性ガス)をバブリングし、次いでそれを分析対象蒸気を含むガスと混合することにより、ガス試料中に湿気を導入することができる。空気流を制限するモジュールを用いて呼気の流速を低減させることができる。
【0044】
或る観点において、本明細書に開示の方法は、参照することにより本明細書中に組み込まれる2008年6月17日に出願された発明の名称「Handheld Breath Analysis Microsystems for Rapid Disease Classification, Disease Diagnostics and Health Monitoring」の米国特許出願第12/140,822号に開示されるようなスモールフォームファクタを備えた携帯用ガス分析システム(PGAS)を用いる。或る観点において、呼気分析及び周囲空気モニタリングは医師及び患者によって日常的に行なうことができる。更に、本明細書に開示の方法及びシステムは、ベンチトップ又は中央試験室(central-lab)機器、例えば、GC/MSに適用することができる。
【0045】
或る態様において、被検者の息は、例えば、喘息の検出、診断及びモニタリングに適したマーカー又はバイオマーカーを含んでいる。或る観点において、本発明の方法及びシステムによって検出されるバイオマーカーは、揮発性有機化合物(VOC)又は複数種の揮発性化合物(VOC類)である。或る観点において、VOCは、4−メチルオクタン、2,4−ジメチルヘプタン、イソプロパノール、トルエン、イソプレン、アルカン、酢酸、アセトン、2,6,11−トリメチルドデカン、3,7−ジメチルウンデカン、2,3−ジメチルヘプタン又はそれらの組み合わせからなる群から選択される構成員である。或る観点において、息ガス又はマーカーは一酸化窒素である。有利なことに、本発明の方法は、従来技術の方法と比べて高められた特異度及び広げられたダイナミックレンジで、呼気からのNO及びVOC類の両方を検出することができる。
【0046】
或る他の場合において、呼気中のNO濃度測定値は、治療の間の喘息制御と相互に関連している(例えば、Jones SL, Kittelson J, Cowan JO et al., Am J Respir Crit Care Med.;164:738-743 (2001);Beck-Ripp J, Griese M, Arenz S, et al., Eur. Respir. J., 19:1015-1019 (2002) 参照)。或る場合において、NO濃度レベルは、気道炎症の総合的なマーカーであることができる。このように、或る実施態様において、NO濃度レベルをVOC類と共に用いて喘息を検出、診断及びモニタリングすることができる。
【0047】
或る観点において、周囲空気をVOC類についてモニタリングして参照用のベースラインレベルとして保存する。患者の肺に入る前に、吸入される空気を周囲VOC類から濾過する。言い換えれば、周囲VOC類を濾過することにより、被検者はVOCを含まない空気を吸う。吸気も流速及び流量について測定する。喘息評価に対して流速及び流量の参照と共にNO及びVOC類の検出のために呼気を捕集する。
【0048】
好ましい観点において、喘息の段階及び重症度を決定する。VOC濃度又は複数種のVOC類を用いて喘息を間欠性、軽度、中等度又は喘息と特徴づけ又は診断する。別の態様において、NO濃度レベルを用いて喘息を重度の喘息と特徴づける。喘息の段階は、通常、間欠性、軽度、中等度、重度又は前記の組み合わせ、例えば、軽度〜中等度又は中等度〜重度であると分類される。本発明のシステム及び方法は、喘息の診断に対して高い特異度及び高い感度を与える。有利なことに、本発明の方法及びシステムはダイナミックレンジを高め大変に正確となるので喘息の段階及び重症度(例えば、重度から軽度)を識別することができる。
【0049】
或る好ましい観点において、ヒトの呼気中のNO濃度レベル並びにVOC類の一致性及び量は、喘息の程度及び重症度と相関している。
【0050】
「感度」という用語は、本明細書中で用いる場合、試料が陽性である場合、例えば、被検者が疾患(例えば、喘息)に罹患している場合に、本発明の診断方法又はシステムが陽性の結果を与える確率をいう。感度は、真陽性及び偽陰性の合計で真陽性結果を割った数値として計算される。感度は、本質的に、本発明の方法又はシステムが疾患(例えば、喘息)に罹患している者を該疾患に罹患していない者からどれだけよく正確に同定するかの尺度である。好ましい実施態様において、疾患(例えば、喘息)を分類する感度は、本発明のシステム及び方法を用いて、少なくとも約90%、例えば、約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。
【0051】
「特異度」という用語は、試料が陽性でない、例えば、疾患(例えば、喘息)に罹患していないものである場合に、本発明の診断方法又はシステムが陰性の結果を与える確率をいう。特異度は、真陰性及び偽陽性の合計で真陰性結果を割った数値として計算される。特異度は、本質的に、本発明の方法又はシステムが疾患(例えば、喘息)に罹患していない者を該疾患に罹患している者からどれだけよく除外するかの尺度である。好ましい態様において、分類の特異度は、本発明のシステム及び方法を用いて、少なくとも約90%、例えば、約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。
【0052】
或る好ましい観点において、本明細書に記載の方法及びシステムは、被検者についての流速及び流量測定を含む。装置は、吸気、呼気又は吸気と呼気との両方の流速及び/又は流量を測定する肺活量計を含む。或る場合に、患者は、気道狭窄を誘発するメタコリン中で呼吸する。この手順は、喘息の段階の計算に対して追加のデータを与えることができる。当業者であれば、本発明に有効な他の方法があることを知っているであろう。
【0053】
或る観点において、本発明の方法を用いて定期的な息試料によって治療の効果をモニタリングすることができる。例えば、吸入されたコルチコステロイドを用いる場合又は気管支拡張剤を用いる場合、その治療を本発明の方法を用いて評価することができる。
【0054】
或る観点において、本明細書に開示の方法は、好ましくは肺活量計を用いて、息、例えば、吸気、呼気又はその両方の流れを測定することを含む。肺活量計モジュールは、好ましくは、装置に不可欠である。或る場合に、呼吸からの気流の容積及び速度を測定する。被検者は、場合によりノーズクリップをつけ、使い捨て(disposable)のマウスピースを通して息を吸い及び息を吐く装置を使用することができる。次いで、息を約2.0リットル/分間で約2〜5分間サンプリングして予備濃縮器を通して引くことによりVOC類を捕捉する。同様にして、周囲の室内空気の試料を別の予備濃縮器上へ捕集する。或る観点において、被検者は病院内などで人工呼吸器を付けているので、本明細書に開示の装置は被検者の肺と流体連絡している。
【0055】
或る観点において、被検者の息は、被検者からの息を捕集するように構成されたバッグからのものである(例えば、米国特許第5,465,728号又は第6,723,056号参照)。装置の予備濃縮器モジュールを用いて息を濃縮することができる。或る観点において、予備濃縮器モジュールは対象のVOC類に対して親和性を有する材料又は溶媒を含む。更なる分析のために予備濃縮モジュールを加熱してVOCを脱着する。
【0056】
有利には、一定の分析対象物、例えば、高い蒸気圧の分析対象物の場合、該分析対象物を吸着剤上で濃縮する。予備濃縮器を用いて試験試料中の分析対象物の濃度を高めることができる。予備濃縮器は、吸着剤材料からなるトラップである。吸着剤材料は、使用時に、ガス試料から分子を引き付けて該吸着剤の表面で濃縮する。引き続き、試料は「脱着」されて分析される。適当な予備濃縮材料として、以下に限定されるものではないが、高分子吸着剤材料、シラン処理されていないグラスウール、テフロン(商標)又は多孔性ガラス繊維等を挙げることができる。吸着剤材料は、管、例えば、スチール管に充填される。
【0057】
更に他の観点によれば、本発明の方法は環境的警告のための周囲空気のモニタリングを提供する。周囲空気、例えば、ウイルス、アレルゲン、煙霧(fume)、及び煙をモニタリングすることによって、かかる有害成分の存在に関して喘息患者に警戒させることができる。個々の患者についての喘息を引き起こす要因に基づいて、例えば、パターン認識、により一定のガスにロックオンするように本明細書に記載の方法をプログラムすることができる。或る観点において、被検者の息から減算することができるバックグランドシグナルとして周囲空気を保存する。
【0058】
ここで図2Aを参照すると、そこに示されるように、本発明の方法は、患者が環境に入ることに注意を促す環境的警告のための周囲空気のモニタリング200を提供する。吸入する周囲空気210はバックグランドのVOC類及びNOガスを含む。装置は分析器215を含み、前記分析器215は、肺活量計(1)と、周囲空気中のVOC及びNOベースラインレベル217を出力するVOC検出器(2)及びNO検出器(3)を含む検出器アレイモジュールとを備えている。ベースラインレベルが極めて高い、すなわち、閾値を超えている場合には、警告、すなわち、赤色光又は音楽が発せられ、居住できないような(inhospitable)環境のユーザーに注意を促す。早期の環境的閉じ込めのために周囲空気、例えば、ウイルス、アレルゲン、煙霧、煙、塵埃等をモニタリングすることにより、本発明のシステム及び方法は喘息患者に警告する。個々の患者の喘息を引き起こす要因に基づいて、パターン認識アルゴリズムによって一定のガスをロックオンするように装置をプログラムすることができる。本発明のシステム及び方法は、実際に或る場合には、喘息患者に早期に警告するための特定のアレルゲンに対する個人専用の環境検出装置である。或る観点において、本発明のシステム及び方法は、操作しやすいようにマウスピース及びフィルター(例えば、使い捨て)220を備える。或る実施態様において、肺に入る前に周囲空気中のVOC類を物理的に濾過除去する。個体の肺230は、本発明のシステムを介して吸気し及び呼気する(240)手段を提供する。呼気240は250を通り分析器215に進む。呼気のVOC類及びNOの濃度並びに流速についての出力データ255を評価することができる。図2Bに示すように、別の実施態様において、次に、一定のアルゴリズムを用いたシグナル処理及びデータ操作を用いてバックグランド減算280を行なうことができる。次いで、喘息の重症度の定量的評価290を与えることができる。
【0059】
或る場合に、検出器アレイは着脱可能、交換可能及び/又は使い捨てである。検出器アレイは、特定の増強及び機能性のために「プラグインプレイ」モードで挿入及び取り外しをすることができる。
【0060】
本明細書に開示の方法は、被検者の進行を追跡する上で医療専門家又は患者にとって有益である被検者の状態の規則的なモニタリングを行なうという観点を含む。或る場合には、本明細書に記載の呼気分析は、被検者の息からVOC類を測定することにより気管支収縮の根本原因を提供することができる。特定の実施態様において、携帯用ガス分析システムを用いて投薬及び治療の効果をモニタリングすることができる。更に、在宅用装置を用いることによりこの能動的なモニタリングを通して個々の患者(個人専用の装置)に合わせた薬物治療を行なうことができる。
【0061】
或る観点において、医療専門家は、投薬前後の喘息患者のNO及びVOC類を検出する。これは、患者の薬物治療を管理及び/又は制御する効果的な手段となることができる。或る観点において、患者が治療後に高いNOレベルを有し続けている場合に、これは喘息によるものでなく体の別の領域の炎症によるものである。しかしながら、更なるVOC類を検出することは喘息の治癒を示すことがある。
【0062】
或る観点において、種々の時間間隔で患者のNOレベル及びVOCレベルを測定する。例えば、T1(時点1)で患者の息を測定しそしてNOレベル及びVOC濃度レベルをモニタリング又は計算することができる。T1のしばらく後のT2(時点2)で、患者のNOレベル及びVOC濃度レベルを再度測定する。T1とT2との間の差は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間、2年間等であることができる。
【0063】
《B.結核(TB)》
更に他の実施態様において、本発明は、被検者が結核に罹患しているか否かの検出又は結核被検者のモニタリングの方法及びシステムを提供する。ここで図3を参照すると、図に示されるように、本発明の方法は、或る環境に入ることから患者を変更させる環境的警告のための周囲空気310のモニタリングを提供する。呼気320又は被検者の喀痰(例えば、粘液、痰、唾液等、図示せず)、又は喀痰培養物330からのヘッドスペースガスがVOC類350を含んでいると、それらはガス分析器と接触してシグナルを生成する。このシグナルを用いて、患者がTBに罹患しているか否か(380)を診断するか又はTB感染が薬剤耐性であるか否かを診断し、TBの管理等を行うことができる。或る場合に、反復測定を行なう前に、本発明の方法は、数回の深呼吸を行いそしてそれを測定しない「肺洗浄」プロトコルを含む。
【0064】
或る好ましい観点において、本明細書に開示の方法及びシステムは、薬剤耐性TBを防ぐための効果的な治療を患者が確実に受けられるようにする上で重要である。現在、MGITシステムによる相対的迅速培養試験(relative rapid culture test;例えば、9〜15日間)は、O2消費を測定することにより95〜97%の正確性(すなわち、許容値(accepted value)に対する近さの程度)を提供する。しかしながら、その試験は本発明の方法に比べるとまだかなり遅い。その試験は訓練された専門技術者や適正な細菌学的実験室設備を必要とし、また本発明の簡単で迅速な方法に比べて相対的に高価である。
【0065】
或る観点において、本発明の方法及びシステムは、喀痰又は喀痰培養物への治療的処置あるいは薬物処理の前、その間及び/又は後で、患者の喀痰培養物からのヘッドスペースガス又は患者の息のVOC類をモニタリングして患者のTB菌に対する最も有効な薬剤を同定する。また、能動的モニタリングは、投薬を止める最良のタイミングを決定することができる。
【0066】
図4Aに示すように、本明細書に開示の方法の或る実施態様400において、被検者は、肺活量計(1)及びVOC検出器アレイ(2)を備えた分析器415を通されるバックグランドVOC類を含む周囲空気410を吸入する。出力データ420は閾値に対して測定される周囲VOC類ベースラインレベルを有する。出力データが閾値を超えた場合には、警告421が伝えられる。或る場合に、本発明のシステム及び方法は、操作しやすいように使い捨てのマウスピース及びフィルター425を備える。周囲空気中のVOC類は、肺430に入る前に濾過される。個体の肺430は、本発明のシステムを介して吸気及び呼気する(435)手段を提供する。呼気は分析器415に進む。任意の態様において、装置は、予備濃縮器440(例えば、インライン)及び/又は流量計モジュール444(例えば、インライン)を含む。VOC類を濃縮するために、呼気を濃縮することができる。更に、流量計モジュールは呼気の流れを調整することができる。望ましい流速となるように呼気を補助又は調整することができる。流量計モジュール444は、前記説明のように空気流を制限するか又は空気流を増加させることによって直接に空気流の速度を制御する。呼気中のVOC類について出力データ455の評価を行なうことができる。別の実施態様によれば、次に、シグナル処理及びデータ操作を用いてバックグランド減算460(例えば、図4B)を行なうことができる。有利なことに、次に、TB感染の定量的評価480を与えることができる。
【0067】
図5Aに示す別の実施態様500において、被検者は、肺活量計(1)及びVOC検出器(2)を備えた分析器515を通されるバックグランドVOC類を含む周囲空気510を吸入する。再び、出力データ520は閾値に対して測定される周囲VOC類ベースラインレベルを有する。出力データが閾値を超えた場合には、警告521が伝えられる。或る場合に、本発明のシステム及び方法は、操作しやすいようにマウスピース及びフィルター(例えば、使い捨て)525を備える。周囲空気中のVOC類は、肺に入る前に濾過される。個体の肺530は、本発明のシステムを介して吸気し及び呼気する(535)手段を提供する。呼気は分析器515に進む。呼気中のVOC類について出力データ555の評価を行なうことができる。別の実施態様によれば、次に、シグナル処理及び一定のアルゴリズムを用いたデータ操作を用いてバックグランド減算560(例えば、図5B)を行なうことができる。有利なことに、治療の間に患者の状態をモニタリングすることによって、TB投薬の管理580を達成することができる。種々の薬物治療の前、その間及び後に本発明のシステム及び方法を用いることによって、個々の患者に対し最も有効な薬剤を選択することができる。
【0068】
ここで、図6を参照すると、本発明の更に別の実施態様600が示される。図6に示されるように、分析器620を介して喀痰培養物のヘッドスペースガス、又は息を評価し(610)及びマーカーVOC類の濃度621を測定する。有利なことに、種々の薬剤を用いて(622)、喀痰又は喀痰培養物633中の特定の細菌へのその効果を評価することができる。分析器645を介してヘッドスペースガス640を分析しそしてバイオマーカーの濃度を評価する(650)。本明細書に開示のシステム及び方法は、個々の患者の喀痰又は喀痰培養物に対する薬剤(例えば、薬剤A、622)の効果を評価する。異なる薬剤(B−Z)を用いてこの手順を繰り返すことにより最も有効な薬剤630を見出すことができる。この実施態様は、本明細書に開示のシステム及び方法の臨床試験及び薬物研究への用途も意図している。
【0069】
図7は、本発明の別の実施態様700を示す。図7に示すように、TB汚染環境として高リスクである種々の場所、例えば、TB試験室、病院、クリニック、健康管理施設、ナーシングホーム、監獄、刑務所等710で周囲空気のサンプリングを行なうことができる。分析器730は、種々の濃度のVOC類の濃度750を評価する。VOC類が閾値を超える場合には、警告が伝えられる(780)。
【0070】
或る場合に、以下のものはTB検出に役立つVOC類である:1−メチル−ナフタレン、3−ヘプタノン、メチルシクロドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチル−ヘプタン、1−メチル−4−(1−メチルエチル)−ベンゼン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、1,3−イソベンゾフランジオン、2,3−ジメチル−ペンタン、アセトアルデヒド、α,α,ジメチルベンゼンメタノール、シクロヘキサン、2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、及び2,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチル−3−フェニル−1H−インデン。他に、以下に限定されるものではないが、トランス1,3−ジメチル−シクロヘキサン、1,4−ジヒドロ−ベンゼン、1−オクタノール、2−ブタノン、カンフェン、4−メチル−デカン、3−エチル−2−メチル−ヘプタン、2,6−ジメチルオクタン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、トランス−3,6,6−トリメチル−ビシクロ−3−1−1−ヘプト−2−エン、トランス1−エチル−4−メチル−シクロヘキサン、及び1−β−ピネンを挙げることができる。
【0071】
更に、本発明のアプリケーションは、ベンチトップ又は中央試験室機器、例えば、GC/MS、又は電子鼻に適用することもできる。本明細書に開示の方法及びシステムは、患者の呼気中のVOC類及び培養マイクロバクテリアのヘッドスペースガスに基づくTB試験について大変に高い感度及び特異度を可能にする。
【0072】
図8は、本発明の更に別の実施態様800を示す。図8に示すように、本発明は、喀痰培養物、例えば、ヘッドスペース810をサンプリングする装置及び方法であって、分析器830が種々のマーカーVOC類の濃度850を評価するか、又はVOC類濃度の経時的変化(例えば、濃度の勾配)をモニタリングする装置及び方法を提供する。本発明の装置及び方法は、VOC類が閾値を超えることにより、又は、例えば、勾配が一定の値を超えることによりTB感染という評価870を行なうことができる。患者に対して最も効果的であることについての種々の治療化合物を試験することができる。この方法により、種々の抗体を試験することを通じて個々の患者(個人専用の装置)に合わせた薬物治療を行なうことができる。この実施態様は、現在のTB診断方法に取って代わることができ、そして、より迅速且つより正確となる。
【0073】
《C.肺癌》
更に他の実施態様によれば、本発明は、被検者が肺癌に罹患しているか否かの検出又は肺癌に罹っている被検者のモニタリングの方法及びシステムを提供する。或る場合に、肺癌に関するVOC類として、限定的でなく、2−へプタノン、4−メチル−ナノン、ヘプタナール、2−メチル−ノナン、1,1’−ビシクロペンチル,ノナン、4−メチル−オクタン、ヘキサナール、プロピル−シクロヘキサン、トリジュウテロアセトニトリル、5−メチル−2−へキサンアミン、1−ブチル−2メチル,シス−シクロプロパン、1,1,3−トリメチル−シクロヘキサン、2−クロロ−1−(ジフルオロメトキシ)−1,1,2−トリフルオロ−エタン、3−エチル−2−メチル−ヘプタン、1,3−ジメチル−,トランス−シクロヘキサン、3−(メチルチオ)−1−プロペン、3,6−ジメチル−オクタン、2,3−ジメチル−ペンタン、クロロホルム、1−(1−メチル−2−シクロペンテン−1−イル)−エタノン、2−シアノ−アセトアミド、4−(1,1−ジメチルエチル)−シクロヘキサン、1−メチル−4−(1−メチルエテニル),シクロヘキサン、1,1−ジメチル−シクロプロパン、2−メトキシ−エチル,アセテート、1−メチル−1−(1−メチルエチル)ヒドラジン、トランス−アンチ−1−メチル−デカヒドロナフタレン、エチニル−ベンゼン、2−メチルブチリデン−シクロペンタン、オクタヒドロ4,7−エタノ−1H−インデン、5−メトキシ−1−アザ−6−オキサビシクロ(3.1.0)ヘキサン、1,1−ジメチルシクロヘキサン、4−(1−メチルエチル)−ヘプタン、1,4−ジメチル−シス−シクロヘキサン、ペンタナール、3−メチル−ノナン、1,2,3−トリメチル−,(1α2β3α)シクロヘキサン、2−β−ピネン、[10B]−トリエチルボラン、2,5−ジメチル−,シス−ピペラジン、デルタ−4−カレン、2−メチル−2−メチルブチルプロパン酸エステル、3−メチル−ペンタン及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0074】
或る観点において、本明細書に記載の方法及びシステムは、2つの主要な型の肺癌、すなわち、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌を診断することができる。非小細胞肺癌(NSCLC)は、肺癌の約80%を占め、これらは扁平上皮癌、腺癌、及び肺胞細胞癌(bronchioalveolar carcinoma)を含む。小細胞肺癌(SCLC)は全ての肺癌の約20%を占める。
【0075】
《III.センサアレイ》
或る観点において、検出器アレイは一つのセンサ又は複数のセンサを含む。或る観点において、センサは、表面微細加工センサ(MEMS)である。他の実施態様において、センサは、MEMSセンサの少なくとも一部が表面の代わりに基板内部に形成されることを意味する、バルク微細加工センサであることができる。MEMSセンサを用いたセンサアレイの更に他の実施態様は、表面微細加工センサとバルク微細加工センサとの組み合わせを含んでいることができる。アプリケーション及び要求される感度に応じて、異なるタイプのセンサ(MEMSタイプに限定されない)を用いることができる。用いることができるMEMSセンサの例として、ケミレジスタ(chemiresistor)、バルク弾性波(bulk acoustic wave)(BAW)センサ等を挙げることができる。他の実施態様において、検出器アレイは、非MEMSセンサであることができる1種又は2種以上のセンサを含む。検出器アレイに用いることができる非MEMSセンサの例として、石英若しくはガリウムヒ素基板を用いたSAW(表面弾性波(surface acoustic wave))センサ又はQCM(水晶振動子マイクロバランス)を挙げることができる。
【0076】
或る観点において、各センサはコーティングを有する表面を含む。用いられる各コーティングは、検出すべき1種又は2種以上の特定の化学物質、例えば、(NO、VOC類)に対する親和性を有し、該コーティングはその対応する1種又は2種以上の化学物質を吸収するか又はそれと化学的に相互作用する。コーティングと化学物質との間の相互作用は、次に、センサの物理的特性、例えば、共振周波数、静電容量又は電気抵抗を変化させ、そしてその変化したセンサの物理的特性は変換器又は他の測定装置を用いて測定することができる。或る観点において、センサ用に選択される特定のコーティングは、センサアレイを用いて検出する化学物質に応じる。コーティングの化学親和力は温度に伴って大きく変化することがあるので、操作温度範囲はコーティングの選択において考慮すべきである。或る態様において、センサアレイを用いてヒトの息中の揮発性有機化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、n−オクタン、エチルベンゼン、m−又はp−キシレン、α−ピネン、d−リモネン、ノナナール、ベンズアルデヒド、2−メチルヘキサン、及び4−メチルオクタンを検出する。異なるアプリケーションに用いることができるコーティングとしては、2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)とテトラフルオロエチレン(TFE)、PtC12(オレフィン)、C8−MPN等との非晶質コポリマーを挙げることができる。
【0077】
必要とされるセンサの数は、検出すべき種々の化学物質の数に、及びセンサに用いられるコーティングの性質に応じる。各コーティングが1種類の化学物質だけを吸収し又はそれと化学的に相互作用する態様において、センサの数は検出すべき化学物質の数と正確に一致することがあるが、他の実施態様においては、冗長性のために2個以上のセンサに所定のコーティングを施すことが望ましいことがある。或る観点において、コーティングに対する化学物質の関係は一対一の相関関係ではない。換言すれば、各コーティングは2種以上の異なる化学物質と反応しそして化学物質と所定のコーティングとの間の反応は化学物質が異なれば性質及び強度が変化する。従って、検出器アレイの反応は異なるガスに対して異なるパターンを有することがあるので、種々のコーティングを有するセンサを備えた検出器アレイが有効である。
【0078】
《IV.シグナル処理》
或る観点において、ニューラルネットワークアルゴリズム又は学習アルゴリズムによりシグナル分析を行なう。ニューラルネットワークを用いたパターン認識は当該分野では確立している。訓練セットを用いてニューラルネットワークを訓練しそしてその後に検証セットを用いて検証する。
【0079】
ニューラルネットワークは、コネクショニストの計算へのアプローチに基づく情報処理の数理又は計算モデルを用いる人工ニューロンの相互接続されたグループである。典型的には、ニューラルネットワークは、ネットワークを通じて流れる外部又は内部情報に基づきその構造を変化させる適応システムである。ニューラルネットワークの具体例として、フィードフォワードニューラルネットワーク、例えば、パーセプトロン、単層パーセプトロン、多層パーセプトロン、バックプロパゲーションネットワーク、ADALINEネットワーク、MADALINEネットワーク、ラーンマトリックス(Learnmatrix)ネットワーク、動径基底関数(RBF)ネットワーク、及び自己組織化マップ又はコホーネン自己組織化ネットワーク;リカレントニューラルネットワーク、例えば、単純リカレントネットワーク及びホップフィールドネットワーク;確率的ニューラルネットワーク、例えば、ボルツマンマシン;モジュラーニューラルネットワーク、例えば、コミッティーオブマシンズ(committee of machines)及び連想型(associative)ニューラルネットワーク;及び他のタイプのネットワーク、例えば、即時訓練型(instantaneously trained)ニューラルネットワーク、スパイキングニューラルネットワーク、ダイナミックニューラルネットワーク、及びカスケーディング(cascading)ニューラルネットワークを挙げることができる。
【0080】
ニューラルネットワーク解析は、例えば、StatSoft社から入手することができるStatisticaデータ解析ソフトウェアを用いて行なうことができる。ニューラルネットワークの更なる説明は、例えば、Freeman et al., In “Neural Networks: Algorithms, Applications and Programming Techniques,” Addison-Wesley Publishing Company (1991);Zadeh, Information and Control, 8:338-353 (1965);Zadeh, “IEEE Trans. on Systems, Man and Cybernetics,” 3:28-44 (1973);Gersho et al., In “Vector Quantization and Signal Compression,” Kluywer Academic Publishers, Boston, Dordrecht, London (1992);及びHassoun, “Fundamentals of Artificial Neural Networks,” MIT Press, Cambridge, Massachusetts, London (1995) を参照されたい。
【0081】
VOC刺激警告のために周囲空気をモニタリングしそしてベースラインレベルとして保存する。吸気及び呼気の両方を流速及び流量について測定する。呼気を捕集しそして喘息評価に対するNO及びVOC類検出のためにバックグランドデータによってフィルター処理する。
【0082】
《V.実施例》
《実施例1》
2007米国喘息教育予防プログラム(NAEPP)ガイドラインに従って評価された種々の段階の喘息重症度について臨床試験を行なう。これらのガイドラインは、National Heart, Lung, and Blood Institute NAEPP Expert Panel Report 3: Guidelines for the Diagnosis and Management of Asthma, Full Report 2007に記載されている。Expert Panel Report 3(図9参照)のガイドラインを用いて、600例の患者の障害(impairment)及びリスクを評価しそして1)間欠性;2)軽症;3)中等症;又は4)重症に分類する。Expert Panel Report 3は、153例の個体が間欠性の喘息に罹っており;101例の個体が軽症の喘息に罹っており;256例が中等症の喘息でありそして90例が重症の喘息であることを示す。
【0083】
2007NAEPPガイドラインに従って各患者の喘息の重症度を分類した後、600例の喘息患者から息試料を得る。例として化合物4−メチルオクタン、2,4−ジメチルヘプタン、イソプロパノール、トルエン、イソプレン、アルカン、アセチック(acetic)、アセトン、2,6,11−トリメチルドデカン、3,7−ジメチルウンデカン、及び2,3−ジメチルヘプタンを含む揮発性有機成分(VOC)及び一酸化窒素のレベルを測定する。周囲空気中のマーカーのベースラインレベルを測定し、そしてその周囲空気中のマーカーのベースラインレベルによって息試料レベルを調整する。
【0084】
各分類に対しこれらの息試料を用いて、VOC類及びNOレベルを決定する。試料の未知の病状を分類するために、未知の試料の特徴を比較する際の基礎、モデル、又はテンプレートとして働く、センサアレイの訓練データセットとしてこれらの試料のコホート(300例)を用いる。訓練後に、訓練セットに用いなかった試料のコホート(300例)を用いてセンサアレイを検証する。これは検証セットとして知られる。この試験から得られるデータを用いてセンサアレイの全ての精度パラメータを計算する。
【0085】
前記マーカー訓練に加えて、600例の各患者の肺活量データ測定を実施し、気管支拡張剤の投与前及び投与後の両方について1秒間努力呼気容量(FEV1)を測定する。データ解析ソフトウェアを用いて訓練セット及び検証セットにこの肺活量測定データを加える。センサアレイの感度、特異度、及び精度を計算する。
【0086】
図10A〜Bに示すように、本明細書に記載の方法は、VOC類、NO、及び流速の全て又は前記のいずれかを検出することによって、喘息の重症度をモニタリングする特異度及びダイナミックレンジを増加させる。好ましくは、本明細書に記載のシステム及び方法は軽症の喘息に罹患した又は喘息に罹患していない患者についてVOC類をモニタリングし、一方で、軽症又は重症の喘息についてNOレベルを定量化する。
【0087】
《実施例2》
150例の喘息患者及び50例の喘息でない健常対照者からの息試料を得る。実施例1に記載のように、マーカーレベルを測定し、そして肺活量測定を実施する。訓練及び検証されたセンサアレイを用いて、150例の喘息患者を重症度の程度によって分類することができる。
【0088】
訓練したセンサアレイを用いて、200例の患者のそれぞれについて喘息重症度レベルを予測する。その後、2007NAEPPガイドラインによって150例の患者それぞれの喘息重症度レベルを分類し、そしてその結果を比較する。アルゴリズムの感度、特異度、及び精度を実施例1の結果と比較する。
【0089】
《実施例3》
センサアレイを開発して患者の息、喀痰及び喀痰培養物中のVOCレベルの測定によって結核感染を同定する。
【0090】
活動性結核に罹患した200例の患者、潜伏結核に罹患した200例の患者、及び100例の健常対照者から息及び喀痰試料を得る。各患者から採取した検体からヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)生物を培養することによって結核の確定診断を行なう。
【0091】
500例の各患者からの検体から、ヒト結核菌又はウシ結核菌(Mycobacterium bovis)からのオフガスを含む揮発性有機成分(VOC)のマーカーのレベルを測定する。周囲空気中のマーカーの濃度によって結果を調整する。各分類に対してこれらの試料を用いて、VOC類を決定する。試料の未知の病状を分類するために、未知試料の特徴を比較する上での基礎、モデル、又はテンプレートとして働く、センサアレイの訓練データセットとしてこれらの試料のコホート(200例)を用いる。訓練した後、訓練セットに用いなかった試料のコホート(200例)を用いてセンサアレイを検証する。この試験から得られるデータを用いてセンサアレイの全ての精度パラメータを計算する。センサアレイの感度、特異度、及び精度を計算する。
【0092】
《実施例4》
活動性結核に罹患した100例の患者、潜伏結核に罹患した100例の患者、及び50例の健常対照者から息試料を得る。通常のスクリーニング技術によって、各患者の結核の存在及び重症度を同定する。実施例3に記載したように、マーカーレベルを測定する。
【0093】
実施例3に定義したアルゴリズムを用いて、各患者について結核分類を計算し、そしてその結果を、標準的スクリーニング技術によって同定された各患者の結核分類と比較する。センサアレイの感度、特異度、及び精度を実施例3の結果と比較する。
【0094】
《実施例5》
活動性結核に罹患した87例の患者から息試料を得る。ヒト結核菌のIS6110反復性DNA要素を用いて各患者における結核の存在及び重症度を確認する。治療の前に、各患者から息VOC類を捕集する。イソニアジド、リファンピン(商品名:Rifadin)、エタンブトール(商品名:Myambutol)及びピラジナミドを含む種々の薬剤を用いてTBを治療する。患者は指示された通りに薬剤を服用する。治療の間、息試料は、患者がより良くなりそしてより健康に感じることを示す。息試料からのVOC類は患者がより良くなっていることを証明する。治療後、VOC類はTB感染がもはや存在しないことを証明する。
【0095】
同時分析において、87例の各患者の喀痰を培養する。分析器により各喀痰培養物のヘッドスペースガスを評価しそしてマーカーVOC類の濃度を決定する。同じ薬剤を用いて、喀痰培養物中の特定の細菌へのその薬剤の効果を評価する。本発明の方法は、薬剤の効果を評価して最も効果的な薬剤を見出す。
【0096】
《実施例6》
本実施例は、87例の患者を用いた臨床試験を表す。第I段階の研究において、87例の患者から息試料を得る。TBマイコバクテリア(Mycobacteria)のVOCマーカーを検証する。プロトコルは、(1)TB培養物、(2)NTM培養物、(3)口腔及び気道(respiratory track)中の微生物叢、及び(4)対照管(control tubes)のヘッドスペースの捕集を含む。次いで、TB培養物ヘッドスペースの特定のVOCマーカーの同定が可能となり、そしてそれを最適化する。
【0097】
第II段階において、患者の息からのVOCマーカーを確認しそして臨床試験プロトコルを確立する。プロトコルは、患者及び対照から喀痰及び息の双方の臨床試料を集めること;参照として喀痰試料について第I段階インビトロ試験を繰り返すこと;TB患者の息の特定VOCマーカーを同定することを含む。
【0098】
第III段階における、最適化のためのクロスサイト(cross-site)臨床試験。
【0099】
本明細書中に引用された全ての刊行物及び特許出願は、個別の刊行物又は特許出願それぞれが参考までに引用されるものであると明確に及び個々に示されたかのようにして参考までに本明細書中に引用する。上記の発明は、明確に理解されることを目的として説明及び実施例によって多少とも詳細に記載してきたが、特許請求の範囲に記載した発明の精神又は範囲から逸脱することなく一定の変化及び修正をなすことができるということは、本発明の教示に照らし当業者には容易に明らかとなるであろう。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者が喘息に罹患しているか否かを検出するか又は喘息に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからの前記シグナルを分析して前記被検者が喘息に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記装置がハンドヘルド装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
喘息の段階及び重症度を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記呼気が一酸化窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記呼気が揮発性有機化合物(VOC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記VOCが、4−メチルオクタン、2,4−ジメチルヘプタン、イソプロパノール、トルエン、イソプレン、アルカン、アセチック、アセトン、2,6,11−トリメチルドデカン、3,7−ジメチルウンデカン、2,3−ジメチルヘプタン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成員である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
定期的な呼気試料を用いて治療の効果をモニタリングする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ハンドヘルド装置が肺活量計を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
息からの気流の速度及び容積を測定及び/又は制御する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
呼気の流速を増加させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
呼気の流速を減少させる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記被検者の測定された息が、吸気、呼気又はその両方からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記被検者の息が、前記被検者の肺と流体連絡している人工呼吸器からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記被検者の息が、前記被検者からの息を捕集するように構成されたバッグからのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記装置が予備濃縮器を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記予備濃縮器が、一酸化窒素及びVOC類に対して親和性を有する物質を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被検者に対する環境的警告のために周囲空気をモニタリングする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
周囲空気をバックグランドシグナルとして保存する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記検出器アレイがMEMSセンサアレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
シグナルの分析がパターン認識アルゴリズムによるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記検出器アレイが着脱可能及び交換可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記予備濃縮器及びガスクロマトグラフが使い捨てである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記装置がマウスピースを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マウスピースが着脱可能、交換可能及び使い捨てである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被検者が結核に罹患しているか否かを検出するか又は結核被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからの前記シグナルを分析して前記被検者が結核に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法。
【請求項26】
前記装置がハンドヘルド装置である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記呼気が揮発性有機化合物(VOC類)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記呼気が、ヒト結核菌、ウシ結核菌及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成員からのオフガスを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
定期的な呼気試料を用いて治療の効果をモニタリングする、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記ハンドヘルド装置が肺活量計を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
息からの気流の速度及び容積を測定及び/又は制御する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
呼気の流速を増加させる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
呼気の流速を減少させる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記被検者の測定された息が、吸気、呼気又はその両方からのものである、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記被検者の息が、前記被検者の肺と流体連絡している人工呼吸器からのものである、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記被検者の息が、前記被検者からの息を捕集するように構成されたバッグからのものである、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記ハンドヘルド装置が予備濃縮器を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記予備濃縮器が、VOC類に対して親和性を有する物質を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記被検者に対する環境的警告のために周囲空気をモニタリングする、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
周囲空気をバックグランドシグナルとして保存する、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
前記検出器アレイがMEMSセンサを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記検出器アレイが着脱可能、交換可能又は使い捨てである、請求項25に記載の方法。
【請求項43】
シグナルの分析がパターン認識アルゴリズムによるものである、請求項25に記載の方法。
【請求項44】
被検者が肺癌に罹患しているか否かを検出するか又は肺癌に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからの前記シグナルを分析して前記被検者が肺癌に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法。
【請求項45】
前記装置がハンドヘルド装置である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記呼気が揮発性有機化合物(VOC類)を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
定期的な呼気試料を用いて治療の効果をモニタリングする、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記ハンドヘルド装置が肺活量計を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
息からの気流の速度及び容積を測定する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
呼気の流速を増加させる、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
呼気の流速を減少させる、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記被検者の測定された息が、吸気、呼気又はその両方からのものである、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記被検者の息が、前記被検者の肺と流体連絡している人工呼吸器からのものである、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記被検者の息が、前記被検者からの息を捕集するように構成されたバッグからのものである、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記ハンドヘルド装置が予備濃縮器を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
前記予備濃縮器がVOC類に対して親和性を有する物質を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記被検者に対する環境的警告のために周囲空気をモニタリングする、請求項44に記載の方法。
【請求項1】
被検者が喘息に罹患しているか否かを検出するか又は喘息に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからの前記シグナルを分析して前記被検者が喘息に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記装置がハンドヘルド装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
喘息の段階及び重症度を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記呼気が一酸化窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記呼気が揮発性有機化合物(VOC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記VOCが、4−メチルオクタン、2,4−ジメチルヘプタン、イソプロパノール、トルエン、イソプレン、アルカン、アセチック、アセトン、2,6,11−トリメチルドデカン、3,7−ジメチルウンデカン、2,3−ジメチルヘプタン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成員である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
定期的な呼気試料を用いて治療の効果をモニタリングする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ハンドヘルド装置が肺活量計を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
息からの気流の速度及び容積を測定及び/又は制御する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
呼気の流速を増加させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
呼気の流速を減少させる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記被検者の測定された息が、吸気、呼気又はその両方からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記被検者の息が、前記被検者の肺と流体連絡している人工呼吸器からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記被検者の息が、前記被検者からの息を捕集するように構成されたバッグからのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記装置が予備濃縮器を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記予備濃縮器が、一酸化窒素及びVOC類に対して親和性を有する物質を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被検者に対する環境的警告のために周囲空気をモニタリングする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
周囲空気をバックグランドシグナルとして保存する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記検出器アレイがMEMSセンサアレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
シグナルの分析がパターン認識アルゴリズムによるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記検出器アレイが着脱可能及び交換可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記予備濃縮器及びガスクロマトグラフが使い捨てである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記装置がマウスピースを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マウスピースが着脱可能、交換可能及び使い捨てである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被検者が結核に罹患しているか否かを検出するか又は結核被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからの前記シグナルを分析して前記被検者が結核に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法。
【請求項26】
前記装置がハンドヘルド装置である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記呼気が揮発性有機化合物(VOC類)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記呼気が、ヒト結核菌、ウシ結核菌及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成員からのオフガスを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
定期的な呼気試料を用いて治療の効果をモニタリングする、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記ハンドヘルド装置が肺活量計を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
息からの気流の速度及び容積を測定及び/又は制御する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
呼気の流速を増加させる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
呼気の流速を減少させる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記被検者の測定された息が、吸気、呼気又はその両方からのものである、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記被検者の息が、前記被検者の肺と流体連絡している人工呼吸器からのものである、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記被検者の息が、前記被検者からの息を捕集するように構成されたバッグからのものである、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記ハンドヘルド装置が予備濃縮器を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記予備濃縮器が、VOC類に対して親和性を有する物質を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記被検者に対する環境的警告のために周囲空気をモニタリングする、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
周囲空気をバックグランドシグナルとして保存する、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
前記検出器アレイがMEMSセンサを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記検出器アレイが着脱可能、交換可能又は使い捨てである、請求項25に記載の方法。
【請求項43】
シグナルの分析がパターン認識アルゴリズムによるものである、請求項25に記載の方法。
【請求項44】
被検者が肺癌に罹患しているか否かを検出するか又は肺癌に罹患している被検者をモニタリングする方法であって:
前記被検者からの息を装置と接触させる工程、ここで、前記装置はガスクロマトグラフを備えており、前記ガスクロマトグラフは検出器アレイに流体的に連結されてシグナルを生成するものとする;及び
前記検出器アレイからの前記シグナルを分析して前記被検者が肺癌に罹患しているか否かを決定する工程;
を含む、前記方法。
【請求項45】
前記装置がハンドヘルド装置である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記呼気が揮発性有機化合物(VOC類)を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
定期的な呼気試料を用いて治療の効果をモニタリングする、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記ハンドヘルド装置が肺活量計を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
息からの気流の速度及び容積を測定する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
呼気の流速を増加させる、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
呼気の流速を減少させる、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記被検者の測定された息が、吸気、呼気又はその両方からのものである、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記被検者の息が、前記被検者の肺と流体連絡している人工呼吸器からのものである、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記被検者の息が、前記被検者からの息を捕集するように構成されたバッグからのものである、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記ハンドヘルド装置が予備濃縮器を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
前記予備濃縮器がVOC類に対して親和性を有する物質を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記被検者に対する環境的警告のために周囲空気をモニタリングする、請求項44に記載の方法。
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公表番号】特表2012−510319(P2012−510319A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538714(P2011−538714)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/066103
【国際公開番号】WO2010/065452
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511131974)トリコーンテク コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】TricornTech Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/066103
【国際公開番号】WO2010/065452
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511131974)トリコーンテク コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】TricornTech Corporation
【Fターム(参考)】
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