説明

器官検出装置、器官検出方法、及びコンピュータプログラム

【課題】圧縮された画像において器官の検出に要する時間を短縮することを可能とする。
【解決手段】圧縮画像を、圧縮画像の解像度よりも低い解像度の画像に展開し、展開され
た画像において人物の顔を検出し、圧縮画像の一部であって、検出された顔の一部を含む
領域を、先の展開処理よりも高い解像度で展開し、高解像度で新たに展開された画像にお
いて人物の顔の器官を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器官検出装置、器官検出方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像上の人物の顔やその器官の位置を検出し(特許文献1参照)、その後の処理
に検出結果を用いる技術が提案されている。例えば、画像から人の瞳の領域を検出し、瞳
の色調不良を検出して補正を行う技術が提案されている。また、被写体の頭頂部、目、鼻
、唇などを検出し、その位置に基づいて被写体の下顎の位置を補正する技術も提案されて
いる。
【特許文献1】特開2006−338329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の装置は、処理対象となる画像において、顔や各器官に応じたパターンマッチング
等を実行することによって各器官の位置を検出する。処理対象となる画像が、例えばJP
EG(Joint Photographic Experts Group)フォーマットの画像のように圧縮された画像
である場合、この検出を行う為に圧縮展開を行う必要がある。この圧縮展開に要する時間
は、画像の解像度に比例する。そのため、近年の高解像度化に従って、圧縮展開に要する
時間が増大している。従って、器官の検出に要する時間も、圧縮展開に要する時間の増大
に伴って増大してしまう。
本発明は、圧縮された画像において器官の検出に要する時間を短縮することを可能とす
る装置、方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、器官検出装置であって、第一展開部、顔検出部、第二展開部、及び器官検出
部を備える。第一展開部は、圧縮画像を、圧縮画像の解像度よりも低い解像度の画像に展
開する。圧縮画像とは、データ圧縮が施された画像である。顔検出部は、第一展開部によ
って展開された画像において、人物の顔を検出する。第二展開部は、圧縮画像の一部であ
って、顔検出部によって検出された顔の一部を含む領域を、第一展開部よりも高い解像度
で展開する。第二展開部は、圧縮画像と同じ解像度で展開を行っても良い。器官検出部は
、第二展開部によって展開された画像において、人物の顔の器官を検出する。
【0005】
本発明によれば、顔検出部による顔検出処理は、圧縮画像の解像度よりも低い解像度の
画像を用いて行われる。そのため、圧縮画像と同じ解像度の画像を用いた顔検出処理より
も処理時間が短縮される。また、器官検出処理は、画像全体に対して行われるのではなく
、画像の一部に対して行われる。そのため、画像全体において検出処理が行われる場合に
比べて、処理時間が短縮される。従って、本発明によれば、圧縮画像において器官の検出
に要する時間を短縮することが可能となる。また、器官検出部による器官検出処理は、顔
検出処理が行われる画像よりも高い解像度の画像を用いて行われる。そのため、器官検出
処理の精度を高めること、又は精度の低下を抑止することが可能となる。
【0006】
本発明の器官検出装置において、顔検出部は、検出された顔の大きさ又は傾きに係る情
報を取得するように構成されても良い。この場合、器官検出部は、顔検出部によって取得
された顔の大きさ又は傾きに係る情報に基づいて、器官の検出方法を選択するように構成
されても良い。器官の検出方法の決定とは、例えば器官検出装置に実装された複数の検出
アルゴリズムの選択であっても良いし、同一アルゴリズムにおいて用いるパラメータであ
っても良いし、パターンマッチングにおける使用パターンの種類や大きさや回転角度(傾
き)であっても良い。
【0007】
このように構成されることにより、器官検出部は、検出された顔の大きさや傾きに適し
た検出方法を選択するため、器官検出の処理に要する時間の短縮や精度の向上を図ること
が可能となる。
【0008】
本発明は、コンピュータを、上述した器官検出装置として動作させるためのコンピュー
タプログラムとして特定されても良い。また、本発明は、上述した器官検出装置として機
能するコンピュータが行う器官検出方法として特定されても良い。
【0009】
本発明により、圧縮された画像において器官の検出に要する時間を短縮することが可能
となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、器官検出装置1の機能ブロックの概要を示す図である。器官検出装置1は、バ
スに接続されたCPUやメモリ等を備え、プログラムが実行されることによって動作する
。器官検出装置1は、第一展開部11、顔検出部12、第二展開部13、及び器官検出部
14を備える。なお、上記の各機能部は、ハードウェアによって実現されても良い。
【0011】
<第一展開部>
第一展開部11は、処理対象となる圧縮画像を、圧縮画像の解像度(オリジナルの解像
度)よりも低い解像度の画像に直接的に展開する。言い換えれば、第一展開部11は、オ
リジナルの解像度で展開を行った後に縮小処理を行うのではなく、オリジナルの解像度で
の展開を行うことなく、低い解像度の画像に展開を行う。例えば、圧縮画像がJPEGフ
ォーマットである場合、圧縮画像は固定サイズの複数のブロック(MCU:Minimum Code
d Unit)で構成される。この場合、第一展開部11は、各MCUを、元の固定サイズより
も小さいサイズに展開することによって、オリジナルの解像度よりも低い解像度の画像を
直接的に展開する。
【0012】
一般的には、JPEGフォーマットの画像における固定サイズは、縦横ともに8ピクセ
ルである。この場合、第一展開部11は、圧縮画像を、オリジナルの解像度よりも1/8
、2/8、4/8のいずれかの解像度で展開する。なお、1/8、2/8、4/8のうち
いずれの数値を用いるかは、設計者によって適宜選択される。このような展開処理は、オ
リジナルの解像度での展開処理に比べて高速に実現できる。
【0013】
<顔検出部>
顔検出部12は、第一展開部11によって圧縮展開された画像を用いて、この画像上に
撮像されている人物の顔を含む領域(以下、「顔領域」という。)を検出する。そして、
顔検出部12は、検出された顔領域の位置や大きさ等を示す顔領域情報を特定し、顔領域
情報を第二展開部13へ渡す。
【0014】
顔検出部12は、公知の技術を用いて顔領域の検出処理を行う。例えば、顔検出部12
は、顔全体の輪郭に対応したテンプレートを予め有し、このテンプレートを用いたテンプ
レートマッチングによって顔領域を検出する。顔検出部12は、人物の素肌の色を有する
領域を検出し、その領域を顔領域として検出しても良い。
【0015】
<第二展開部>
第二展開部13は、処理対象となる圧縮画像の全体を圧縮展開するのではなく、部分に
ついて圧縮展開を行う。この部分とは、顔検出部12によって検出された顔領域を含む部
分である。例えば、圧縮画像がJPEDフォーマットである場合、上述したように圧縮画
像は複数のMCUで構成される。この場合、第二展開部13は、顔領域を含む各MCUに
ついてのみ圧縮展開を行う。
【0016】
また、第二展開部13は、第一展開部よりも高解像度の圧縮展開を行う。例えば、圧縮
画像がJPEGフォーマットで、第一展開部11がオリジナルの1/8の解像度で圧縮展
開を行う場合は、第二展開部13は、オリジナルの2/8、4/8、8/8のいずれかの
解像度で圧縮展開を行う。
【0017】
<器官検出部>
器官検出部14は、第二展開部13によって圧縮展開された顔領域の画像を用いて、器
官を含む領域(以下、「器官領域」という。)の検出を行う。なお、器官とは、顔に含ま
れる器官又は顔の周囲にある器官である。器官とは、例えば目、鼻、唇、額、耳、頭頂部
、顎、顔の輪郭などである。器官検出部14は、検出された器官領域の位置や大きさ等を
表す器官領域情報を特定し、期間領域情報を出力する。
【0018】
器官検出部14は、公知の技術を用いて器官領域の検出処理を行う。例えば、器官検出
部14は、器官の輪郭に対応したテンプレートを予め有し、このテンプレートを用いたテ
ンプレートマッチングによって器官領域を検出する。
【0019】
〔動作例〕
図2は、器官検出装置1の動作例を示すフローチャートである。まず、第一展開部11
は、処理対象となる圧縮画像を、オリジナルの解像度よりも低い解像度で圧縮展開する(
S01)。顔検出部12は、第一展開部11によって圧縮展開された画像を用いて、顔領
域の検出処理を行う(S02)。第二展開部13は、顔検出部12によって検出された顔
領域を含む部分について、第一展開部11よりも高解像度での圧縮展開を行う(S03)
。器官検出部14は、第二展開部13によって圧縮展開された画像を用いて、器官領域の
検出を行う(S04)。
【0020】
図3は、器官検出装置1による処理の概要を示す図である。画像21は、オリジナルの
解像度で展開された場合の画像である。画像22は、第一展開部11によって展開された
画像であり、画像21よりも解像度が低い。顔検出部12は、第一展開部11によって圧
縮展開された画像22を用いて顔領域の検出処理を行い、顔領域221を検出する。顔領
域の検出処理は、処理対象となる画像の解像度が低いほど、処理に要する時間が少なくな
る。そのため、器官検出装置1では、オリジナルの解像度で展開された画像を用いて顔領
域の検出処理を行う場合に比べて、より高速に顔領域の検出を行うことが可能となる。
【0021】
画像23は、第二展開部13によって展開された画像であり、処理対象となる画像の一
部分のみである。器官検出部14は、画像23を用いて器官領域の検出処理を行い、器官
領域231を検出する。器官領域の検出処理は、処理対象となる画像が小さいほど、処理
に要する時間が少なくなる。そのため、器官検出装置1では、処理対象となる画像全体に
おいて期間検出処理を行う場合に比べて、より高速に器官領域の検出を行うことが可能と
なる。
【0022】
また、画像23は、第二展開部13によって展開された画像であり、画像22よりも解
像度が高い。器官領域の検出処理は、処理対象となる画像の解像度が高いほど、高い精度
で実行できる。そのため、第一展開部11が圧縮展開して顔領域の検出処理に用いられた
画像を用いて器官検出処理が行われる場合に比べて、より高い精度で器官領域の検出を行
うことが可能となる。
【0023】
以上のように、器官検出装置1は、圧縮された画像において器官の検出に要する時間を
短縮することを可能とする。また、器官検出装置1は、上述したように器官の検出に要す
る時間を短縮しつつも、その検出処理の精度低下を抑止することを可能とする。
【0024】
〔変形例〕
器官検出部14は、顔検出部12によって得られた顔領域情報を用いて器官検出処理を
行っても良い。例えば、器官検出部14は、顔領域の大きさに基づいて、器官検出処理に
用いられるテンプレートの大きさを決定しても良い。また、例えば、器官検出部14は、
顔検出部12が顔の傾きや向きなどの情報を顔領域情報として取得する場合は、この情報
に基づいて、器官検出処理に用いられるテンプレートやそのテンプレートの傾き等を決定
しても良い。このように構成されることにより、器官検出部14はより高速に、より精度
良く、器官検出処理を行うことが可能となる。
【0025】
また、器官検出部14は、上述したテンプレートの大きさや傾きではなく、複数の検出
アルゴリズムの中から最適な検出アルゴリズムを選択しても良い。また、器官検出部14
は、パラメータが必要となる検出アルゴリズムが実装されている場合は、このパラメータ
を選択しても良い。
【0026】
顔検出部12は、処理対象となる圧縮画像の付加情報に基づいて顔領域を検出しても良
い。このような付加情報の具体例として、Exif(Exchangeable Image File Format)
情報がある。例えば、処理対象となる圧縮画像がデジタル撮像器によって撮像された写真
画像である場合、デジタル撮像器が顔検出処理を行って、その結果(顔領域の座標など)
をExif情報として画像のデータに付加しても良い。この場合、顔検出部12は、Ex
if情報から顔領域の座標を読み出すことにより、顔の検出処理を行わなくても顔領域の
座標を取得することができる。また、この場合、第一展開部11は展開処理を実行しない
ように構成されても良い。
【0027】
〔適用例〕
器官検出装置1は、器官領域情報に基づいて処理を行う装置であれば、どのような装置
に搭載されても良い。例えば、器官検出装置1は、撮像装置(スチルカメラ、ビデオカメ
ラ等)や、プリンタや、情報処理装置(パソコン、携帯電話機、PDA等)や、ミニラボ
機などに搭載されても良い。この場合、各装置は、器官領域情報に基づいて、赤目の補正
処理や、フレーム調整処理や、コントラストの補正処理などを行う。
【0028】
なお、上述した実施形態における器官検出装置1の一部又は全てをコンピュータで実現
しても良い。その場合、器官検出機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取
り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシス
テムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュ
ータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コン
ピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、RO
M、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の
記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インター
ネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通
信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクラ
イアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラム
を保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現
するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記
録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこ
の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれ
る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】器官検出装置の機能ブロックの概要を示す図である。
【図2】器官検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【図3】器官検出装置による処理の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1…器官検出装置, 11…第一展開部, 12…顔検出部, 13…第二展開部, 1
4…器官検出部, 21…オリジナル解像度の画像, 22…第一展開部により圧縮展開
された画像, 221…顔領域, 23…第二展開部により圧縮展開された画像, 23
1…器官領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮画像を、前記圧縮画像の解像度よりも低い解像度の画像に展開する第一展開部と、
前記第一展開部によって展開された画像において、人物の顔を検出する顔検出部と、
前記圧縮画像の一部であって、前記顔検出部によって検出された顔の一部を含む領域を
、前記第一展開部よりも高い解像度で展開する第二展開部と、
前記第二展開部によって展開された画像において、人物の顔の器官を検出する器官検出
部と、
を備える器官検出装置。
【請求項2】
前記顔検出部は、検出された顔の大きさ又は傾きに係る情報を取得し、
前記器官検出部は、前記顔検出部によって取得された前記顔の大きさ又は傾きに係る情
報に基づいて、器官の検出方法を選択する
請求項1に記載の器官検出装置。
【請求項3】
コンピュータが、圧縮画像を、前記圧縮画像の解像度よりも低い解像度の画像に展開す
る第一展開ステップと、
コンピュータが、前記第一展開ステップによって展開された画像において、人物の顔を
検出するステップと、
コンピュータが、圧縮画像の一部であって、検出された顔の一部を含む領域を、前記第
一展開ステップよりも高い解像度で展開する第二展開ステップと、
コンピュータが、前記第二展開ステップによって展開された画像において、人物の顔の
器官を検出するステップと、
を含む器官検出方法。
【請求項4】
コンピュータに対し、
圧縮画像を、前記圧縮画像の解像度よりも低い解像度の画像に展開する第一展開ステッ
プと、
前記第一展開ステップによって展開された画像において、人物の顔を検出するステップ
と、
圧縮画像の一部であって、検出された顔の一部を含む領域を、前記第一展開ステップよ
りも高い解像度で展開する第二展開ステップと、
前記第二展開ステップによって展開された画像において、人物の顔の器官を検出するス
テップと、
を実行させる為のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−245100(P2009−245100A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89970(P2008−89970)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】