説明

噴出容器

【課題】キャップ状部材の支持筒部とシリンダとの間に補強筒を挿入し、シリンダを肉薄とすることでシリンダにヒケを生ずるおそれを低減し、筒状ピストンを合成樹脂材で形成してもシール性を損なわないようにした噴出容器を提供する。
【解決手段】口頸部6を起立する容器体2と、口頸部外面に嵌合した装着筒部12からフランジ状壁14を介して支持筒部16を起立したキャップ状部材10と、支持筒部16の内側から容器体内部に垂下したシリンダ40と、上記シリンダ内を昇降可能な筒状ピストン52からキャップ状部材上方へ起立したステム54を有し、このステムの上端部から前方へノズル58を突出した作動部材50とを具備し、上記筒状ピストン52を合成樹脂で形成し、上記支持筒部とシリンダの上部との間に補強筒32を嵌入させ、補強筒の下部に付設した鍔部34を口頸部6とフランジ状壁14との間に挟持させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物(液体の他、クリームなどを含む)の噴出容器、特にトリガー式の噴出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー式噴出容器として、容器体の口頸部に嵌合させた大径の下半部からフランジ状壁を介して小径の上半部を起立したキャップ状部材を設け、口頸部とフランジ状壁との間に挟持させた鍔部を有するシリンダを容器体内に垂下し、シリンダ内を摺動可能な筒状ピストンから、前方開口のノズルと連続するステムを起立し、かつキャップ状部材の上半部から上後方へ起立した連結片に、トリガーを前部に有する操作部材の後端を、またステム上部に操作部材の前後方向中間部をそれぞれ装着したものが知られている。
【0003】
この種のトリガー式噴出容器において、図4に示すようにシリンダの筒壁を鍔部Aより上方へ延長し、この延長部分Eを肉厚としてキャップ状部材の上半部内に嵌着させ、キャップ状部材とシリンダとの嵌合強度を大としたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−288344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の容器において、鍔部上方のシリンダ筒壁の延長部分Eを肉厚にしているために成形の際にシリンダ内面にヒケを生じ、筒状ピストンとシリンダとの間のシール性が低下する可能性がある。こうした成形上の不都合は、シリンダとキャップ状部材とを結合するための係合突条をシリンダの表面に形成したときに発生し易い。
【0006】
そこで従来では、上記筒状ピストンをゴムなどの弾性材料で形成して、仮にシリンダ内面に歪みが生じても筒状ピストンの弾性変形によりシリンダ内面との隙間を生じないようにするなどの工夫が行われている。
【0007】
しかしながら、材料費の低減のためには、筒状ピストンをゴムよりも合成樹脂で形成することが好ましい。また内容物の性質によってはゴムよりも合成樹脂の方が望ましい場合がある。
【0008】
本発明の第1の目的は、噴出容器のキャップ状部材の内側から垂下したシリンダ内面にヒケが発生して、作動部材の筒状ピストンとシリンダ内面との間のシール性が低下することを防止することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、上記噴出容器の連結筒部とシリンダとの間に補強筒を挿入し、シリンダの筒壁を肉薄化することが可能とすることで、シリンダの内面にヒケが生ずることを防止し、以て作動部材の筒状ピストンを合成樹脂で形成しても、筒状ピストンとシリンダとの間のシール性が損なわれないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の手段は、
口頸部6を起立する容器体2と、
口頸部6外面に嵌合させた大径の装着筒部12からフランジ状壁14を介して小径の連結筒部16を起立したキャップ状部材10と、
上記連結筒部16の内側から容器体内部に垂下したシリンダ40と、
上記シリンダ内を昇降可能な筒状ピストン52からキャップ状部材上方へ起立したステム54を有し、このステムの上端部から前方へノズル58を突出した作動部材50と、
を具備した噴出容器において、
上記筒状ピストン52を合成樹脂で形成し、
上記連結筒部16とシリンダ40の上部との間に嵌入させた補強筒32を有するとともに、補強筒32の下部に鍔部34を付設した補強部材30を設け、
上記鍔部34を口頸部6とフランジ状壁14との間に挟持させている。
【0011】
本手段は、図1に示す如く合成樹脂製キャップ状部材の連結筒部16とシリンダ40との間に補強部材30の補強筒32を設けることを提案する。補強筒32の下端に付設された鍔部34はフランジ状壁と口頸部との間に挟持されており、本願容器のステムを傾ける向きに力が作用したときに、その力の一部に補強筒及び鍔部で抵抗する。故に十分な強度が確保でき、かつシリンダの一部とキャップ状部材とが外れることを防止できる。強度確保のためにシリンダの筒壁を肉厚とする必要がないので、シリンダ内面にヒケが発生することを抑制することができ、筒状ピストンを合成樹脂で形成してもシール性を損なわない。
【0012】
「噴出容器」は、トリガー式噴出容器とすることが好適であるが、これに限るものではない。「補強筒」は、鍔部とともに連結筒部を補強する程度の剛性及び強度を有する。図示例では、補強筒の上部のみをシリンダに嵌合しているが、補強筒の上下巾全体をシリンダ内に嵌着してもよい。「ヒケ」(sink)とは、合成樹脂が固有の成形収縮率により縮むために成形品の中央部や厚肉部など冷却が遅れた部分の収縮によって表面が引っ張られることで生ずる凹みをいう(「図解プラスチック用語辞典」/発行者:日刊工業新聞社)。
【0013】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記補強筒32の外面及び連結筒部16の内面に、相互に嵌合する第1係合条18及び第2係合条36を横設している。
【0014】
本手段は、補強筒32及び連結筒部16に横設した第1係合条18及び第2係合条36を提案している。これら係合条は相互に嵌合することで補強部材をキャップ状部材と合体させ、外力に対して大きな抵抗力を発揮する。シリンダとは別体である補強部材に係合条を設けるので、各係合条の寸法を自由に設計することができる。これについては後述する。
【0015】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
キャップ状部材10は、連結筒部から後ろ後方へ連結片24を突出しており、
さらに上記連結片24の先部に枢着するとともにステムよりも前側に下方へ延びるトリガー72を設けた操作部材64を設け、
上記ステム54の上部と操作部材64の対応箇所とを枢着して、トリガーの操作により作動部材50を昇降させることが可能に形成している。
【0016】
本手段では、本願の補強部材をトリガー式噴出容器に適用することを提案している。この種の容器は、トリガーを操作するときに連結筒部に作用する応力が強く、故に補強部材を設ける意義が大きいからである。
【発明の効果】
【0017】
第1の手段に係る発明によれば、キャップ状部材の連結筒部16とシリンダ40との間に補強筒32を設け、補強筒32の下端に付設された鍔部34をフランジ状壁と口頸部との間に挟持させたから、強度確保のためにシリンダの上部を肉厚とする必要がない。故にシリンダ内面にヒケを生ずることがなく、筒状ピストンを合成樹脂材で形成しても、シリンダの「ヒケ」によるピストンとシリンダとの間のシール性が劣化することを防止することができる。
【0018】
第2の手段に係る発明によれば、シリンダ40とは別に成形した補強筒32及び連結筒部16とに相互に係合する第1係合条18及び第2係合条36を設けたから、係合力を高めることができる。
【0019】
第3の手段に係る発明によれば、トリガーを引く時に連結筒部に作用する応力の一部を、肉薄にしたシリンダ40ではなく補強筒32に分担させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る噴出容器の主要部縦断面図である。
【図2】図1の容器の平面図である。
【図3】図1の容器の使用状態の説明図である。
【図4】従来容器の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1から図3は、本発明の第1の実施形態に係る噴出容器を示している。この噴出容器は、容器体2と、キャップ状部材10と、補強部材30と、シリンダ40と、作動部材50と、棒状部材60と、操作部材64とで形成している。これら各部材は特に断らない限り、合成樹脂材で形成することができる。
【0022】
容器体2は、図2に示す胴部4から口頸部6を起立している。
【0023】
キャップ状部材10は、上記口頸部6の外面に螺合させた大径の装着筒部12からフランジ状壁14を介して小径の連結筒部16を起立している。
【0024】
上記連結筒部16の下部内面には凹状の第1係合条18を周設することが好ましい。これについては後述する。連結筒部16は、後述のシリンダを支持しかつトリガー操作による応力に対抗することが可能な強度を有する。
【0025】
また上記連結筒部16の上端からは上端小径のテーパ状筒部20を上内方へ突出し、このテーパ状筒部の上端から上下方向へ案内筒部22を延出している。
【0026】
さらに連結筒部16及びテーパ状筒部20の後面からは、連結片24を上後方へ延出する。図示の連結片24は、左右一対の連結板の各後端を連続させるとともに、各連結板の上端部内面に第1枢着軸26を付設させている。
【0027】
補強部材30は、補強筒32の下端に鍔部34を付設しており、その補強筒32を上記連結筒部16内面に嵌着させるとともに、上記鍔部34を、パッキングを介して口頸部6の上端面に載置し、口頸部6とフランジ状壁14との間に挟持させている。
【0028】
上記補強部材30は、キャップ状部材の連結筒部16を補強する役割を有する。連結筒部16は、連結片24とともに装着筒部と連結片の先部の第1枢着軸とを連結する役割を有し、後述の如くトリガーを引くときのテコ作用により、大きな応力が作用するからである。
【0029】
好適な図示例では、補強筒32の下部外面には凸状の第2係合条36を周設し、これを上記第1係合条18に嵌着させている。これにより、例えば後述のトリガー操作にしたときに、連結筒部の前後壁部に応力がそれぞれ作用しても、その力の一部を第1係合条18及び第2係合条36を介して補強部材30で支えることができる。
【0030】
ここで図4に示す従来技術では、シリンダのうち肉厚の延長部分Eの表面に圧接用の係合突条Rを設けるとすると、係合突条と反対側のシリンダ内面に凹状のヒケを生ずるおそれがある。従って係合突条を設けるとしても、シリンダ内面からの係合突条の突出長を小さくする必要がある。他方、本願の構成では、シリンダ40とは別体である補強筒32に凸状の第2係合条36を形成しているので、筒状ピストンの摺動面にヒケを生ずる不都合を考慮しないで、第2係合条36の寸法を設計できるという利点がある。
【0031】
上記第1係合条18及び第2係合条36の構造は、適宜変更することができ、例えば第1係合条を凸条、第2係合条を凹条にすることができる。またこれら係合条は周方向に間欠的に、例えば連結筒部と補強筒との各前壁及び後壁のみに形成することができる。またこれら第1係合条及び第2係合条を省略してもよい。
【0032】
また上記補強筒32の上下方向中間部には、後述のシリンダに当接するための当接リブ38を縦設している。これについては後述する。
【0033】
シリンダ40は、その筒壁44の上端に付設した外方張出し部42を上記補強筒32の上端面に係止させて、容器体2内部へ垂下している。シリンダの下部には吸込み弁46を設け、この吸込み弁下方へ延びる嵌合筒部に吸込みパイプを嵌合している。
【0034】
図示例では、ポンプ室を形成するシリンダ筒壁44を、下方から上方へ小径部44a、中径部44b、大径部44cに形成して、この大径部44cを補強筒の上部全周に嵌着させるとともに、中径部44bに上記補強筒32の当接リブ38を当接させている。また中径部44bの適所には通気孔48を形成する。しかし当該構成は適宜変更することができる。
【0035】
上記シリンダ40の筒壁44は、成形上のヒケや歪みをできるだけ少なくするために次の構造を有する。
【0036】
第1の構造は、当該筒壁のうち少なくとも筒状ピストンと摺接する部分(図示例では中径部44b)を、肉薄で一定の厚さとしたことである。前述の如くヒケは肉厚部(例えば図4の従来容器のシリンダ上部参照)に生じ易いからである。この第1の構造は前述の通りシリンダ40上部と連結筒部16との間に補強筒32を介在させることで実現される。
【0037】
第2の構造は、シリンダ筒壁44のうち筒状ピストンと摺接する部分の外面を垂直平坦面とし、係合突条などの凹凸を設けていないことである。凸部を付設した箇所が周囲に比べて相対的に肉厚となり、凸部と反対側のシリンダ内面部分にヒケが生ずるからである。この第2の構造は、連結筒部16の第1係合条18と係合する第2係合条36を、補強筒32の外面に形成し、シリンダ40は、単に筒壁44上部の鍔部34を補強筒32の上端に係止させることで吊り下げ可能とすることで実現される。
【0038】
またシリンダ40内には、上記案内筒部22の下端部が挿入され、後述の筒状ピストン52の上面を係止するようにしている。
【0039】
作動部材50は、シリンダ40の中径部44bを摺動する筒状ピストン52を有し、この筒状ピストンから起立するステム54から前方へ射出筒56を延設し、射出筒の先部にノズル58を開口している。上記射出筒の内部には図示しない吐出弁を設ける。
【0040】
上記筒状ピストン52は、図示例では、ステム54とは別体として、その外周部において上外方及び下外方へ延びる上下一対のスカート部を有している。しかしながらその形状は適宜変更することができる。この筒状ピストン52は、合成樹脂で形成する。
【0041】
上記シリンダ筒壁44の小径部44aの下部からは、ステムの上部付近まで棒状部材60を起立する。棒状部材の下部には、シリンダとの間に液体流路を存して大径の上向き段部を形成し、この上向き段部と筒状ピストンとの間にコイルスプリング62を介装する。
【0042】
操作部材64は、作動部材50の上部を覆うカバー66の左右側板68の各後部内面を上記第1枢着軸26に枢支させるとともに、カバー66の前部に射出筒を通すための挿通孔70を開口し、さらに左右側板68の前部から下前方へトリガー72を延出している。さらにステム54上部の左右両側及び左右側板68には、第2枢着軸74およびこれと係合する軸受を形成し、トリガーの操作により作動部材50を昇降させることができるように形成する。
【0043】
上記構成において、容器体2の内部は、補強筒32及びシリンダの中径部44bの間の隙間、通気孔48、ステム54及び案内筒部22の間の隙間で形成される外気導入路80を介して外部に連通している。
【0044】
図1の状態からトリガー72を引くと、第1枢着軸26を中心として操作部材64が回動し、ステム54を下降させる。このときトリガー72を引っ張ることで連結筒部16の前後両側に図3に矢示するように応力が作用するが、補強筒32の鍔部34が口頸部6とフランジ状壁14との間に挟持されているために、補助筒32が連結筒部16とともに上記応力に抵抗するので、容器として十分な強度が得られ、かつ上向きの応力を受ける側においてシリンダの一部がキャップ状部材から外れそうになることを防止できる。
【0045】
また容器の強度確保のために、シリンダ筒壁44の一部を肉厚とする代りに上記補強筒32付きの補強部材30を設けたから、シリンダを肉薄とし、シリンダ内面にヒケが生ずることを抑制し、その内面を滑らかな垂直面とすることができる。従って合成樹脂製の筒状ピストンでも十分なシール性が確保できる。
【符号の説明】
【0046】
2…容器体 4…胴部 6…口頸部
10…キャップ状部材 12…装着筒部 14…フランジ状壁 16…連結筒部
18…第1係合条 20…テーパ状筒部 22…案内筒部 24…連結片
26…第1枢着軸 30…補強部材 32…補強筒 34…鍔部
36…第2係合条 38…当接リブ 40…シリンダ 42…外方張出し部
44…シリンダ筒壁 44a…小径部 44b…中径部 44c…大径部
46…吸込み弁 48…通気孔
50…作動部材 52…筒状ピストン 54…ステム 56…射出筒 58…ノズル
60…棒状部材 62…コイルスプリング
64…操作部材 66…カバー 68…側板 70…挿通孔 72…トリガー
74…第2枢着軸 80…外気導入路
A…鍔部 E…延長部分 F…フランジ状壁 R…係合突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頸部(6)を起立する容器体(2)と、
口頸部(6)外面に嵌合させた大径の装着筒部(12)からフランジ状壁(14)を介して小径の連結筒部(16)を起立したキャップ状部材(10)と、
上記連結筒部(16)の内側から容器体内部に垂下したシリンダ(40)と、
上記シリンダ内を昇降可能な筒状ピストン(52)からキャップ状部材上方へ起立したステム(54)を有し、このステムの上端部から前方へノズル(58)を突出した作動部材(50)と、を具備した噴出容器において、
上記筒状ピストン(52)を合成樹脂で形成し、
上記連結筒部(16)とシリンダ(40)の上部との間に嵌入させた補強筒(32)を有するとともに、補強筒(32)の下部に鍔部(34)を付設した補強部材(30)を設け、
上記鍔部(34)を口頸部(6)とフランジ状壁(14)との間に挟持させたことを特徴とする、噴出容器。
【請求項2】
上記補強筒(32)の外面及び連結筒部(16)の内面に、相互に嵌合する第1係合条(18)及び第2係合条(36)を横設したことを特徴とする、請求項1記載の噴出容器。
【請求項3】
キャップ状部材(10)は、連結筒部から後ろ後方へ連結片(24)を突出しており、
さらに上記連結片(24)の先部に枢着するとともにステムよりも前側に下方へ延びるトリガー(72)を設けた操作部材(64)を設け、
上記ステム(54)の上部と操作部材(64)の対応箇所とを枢着して、トリガーの操作により作動部材(50)を昇降させることが可能に形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の噴出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91144(P2012−91144A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242614(P2010−242614)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】