説明

噴流ノズル及び噴流浴装置

【課題】回転摺動部分を設けずに、噴出方向を変化させながらの噴流噴出を実現できる噴流ノズル及び噴流浴装置を提供する。
【解決手段】浴槽壁に対して保持される筒体の内部に導入された流水を、噴出方向を変化させながら浴槽の内部に噴出する噴流ノズルであって、流水が導入される流水導入部と、流水導入部より下流側で流水導入部に連通し、流水導入部に対して流路断面が縮小された流路断面収縮部と、流路断面収縮部より下流側で流路断面収縮部に連通し、流路断面収縮部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部を上流側の端部に有し、且つ浴槽の内部に臨む噴出口を下流側の端部に有するチャンバーと、が筒体の内部に設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内に噴流を噴出させる噴流ノズル及び噴流浴装置に関し、特にノズル中心軸まわりに旋回した噴流を噴出させる噴流ノズル及び噴流浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽壁に噴流ノズルを設けて、そのノズルから噴流を浴槽内に噴出させるものがあるが、その多くは、まっすぐに噴流を噴出させるものであり、噴流が入浴者の体の一部に局所的にあたり、噴流により受ける刺激が単調で飽きやすく、多様なマッサージ感は得られ難かった。
【0003】
特許文献1には、外形形状が略円形で内部に設けた噴流孔の噴流口が軸芯位置より偏心すると共にユニット噴流口カバー内に回転自在に収容配置されたノズル本体と、バスタブ内の水を所定圧力でノズル本体の噴流孔内に噴射するオリフィスとを備えたノズル装置が開示されている。バスタブ内の水は、オリフィスを介してノズル本体の噴流孔内に所定圧力で噴射され、空気と混合して気泡混合噴流となり、噴流孔の噴流口からバスタブ内にジェット噴流として噴射される。この時、ノズル本体の噴流口が軸芯位置に対して偏心した位置に設けられていることから、オリフィスからの噴流によってノズル本体が回転し、これにより、ジェット噴流の噴射方向が変化する回転噴流が得られる。
【0004】
しかし、特許文献1では、ノズル本体を回転させることで回転噴流を生じさせる構成であるため、そのノズル本体を回転自在に支持するための構造が複雑になり、安価に作製できない。さらには、回転摺動部分の摩耗やゴミ詰まりなどによる回転性能の低下が懸念される。
【特許文献1】特開2001−8998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、回転摺動部分を設けずに、噴出方向を変化させながらの噴流噴出を実現できる噴流ノズル及び噴流浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、浴槽壁に対して保持される筒体を備え、前記筒体の内部に導入された流水を、噴出方向を変化させながら浴槽の内部に噴出する噴流ノズルであって、流水が導入される流水導入部と、前記流水導入部より下流側で前記流水導入部に連通し、前記流水導入部に対して流路断面が縮小された流路断面収縮部と、前記流路断面収縮部より下流側で前記流路断面収縮部に連通し、前記流路断面収縮部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部を上流側の端部に有し、且つ前記浴槽の内部に臨む噴出口を下流側の端部に有するチャンバーと、が前記筒体の内部に設けられたことを特徴とする噴流ノズルが提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、浴槽と、前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込む吸入口と、前記吸入口に連通した循環路と、前記循環路の途中に設けられ、前記吸入口から吸い込んだ浴槽水を加圧して吐出する加圧装置と、前記浴槽壁に対して保持されると共に前記循環路に連通する筒体を備え、前記筒体の内部に導入された浴槽水を、噴出方向を変化させながら前記浴槽の内部に噴出する噴流ノズルと、を備え、前記筒体の内部に、前記循環路を介して前記加圧装置から送られる加圧浴槽水が導入される流水導入部と、前記流水導入部より下流側で前記流水導入部に連通し、前記流水導入部に対して流路断面が縮小された流路断面収縮部と、前記流路断面収縮部より下流側で前記流路断面収縮部に連通し、前記流路断面収縮部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部を上流側の端部に有し、且つ前記浴槽の内部に臨む噴出口を下流側の端部に有するチャンバーと、が設けられたことを特徴とする噴流浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転摺動部分を設けずに、噴出方向を変化させながらの噴流噴出を実現できる噴流ノズル及び噴流浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図2は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式図である。
図3は、同噴流浴装置において浴槽を側面方向から見た模式図である。
【0011】
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽1と、浴槽1の浴槽壁3bに開口された吸入口5と、吸入口5に連通した循環路13、14と、循環路13、14の途中に設けられた加圧装置であるポンプ7と、浴槽壁4aに対して保持された噴流ノズル11とを備える。
【0012】
浴槽1は、図2に表すように、略平行に相対向する一対の長辺側浴槽壁3a、3bと、略平行に相対向する一対の短辺側浴槽壁4a、4bとを有する。
【0013】
吸入口5は長辺側浴槽壁3bに形成されている。ポンプ7が駆動されると、浴槽1の内部に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5を介して循環路13へと吸い込まれる。
【0014】
一般に、入浴者は、一方の短辺側浴槽壁(図2に表す具体例では短辺側浴槽壁4a)に背をもたれかけて、他方の短辺側浴槽壁(図2に表す具体例では短辺側浴槽壁4b)に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。なお、図2に表す具体例では、吸入口5を、長辺側浴槽壁3bに形成したが長辺側浴槽壁3aに形成してもよい。
【0015】
循環路13の一端は吸入口5に接続され、他端はポンプ7の吸入口に接続されている。循環路14の一端はポンプ7の吐出口に接続され、他端は噴流ノズル11の流水導入口に接続されている。ポンプ7は、吸入口5から循環路13内に浴槽水を吸い込むと共に、その吸い込んだ浴槽水を加圧してポンプ7の下流側の循環路14に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、噴流ノズル11の流水導入口に流入する。使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は噴流ノズル11よりも上方に設けることが望ましい。
【0016】
本具体例では、図2に表すように、一方の短辺側浴槽壁4aに、2つの噴流ノズル11を取り付けている。2つの噴流ノズル11は、略同じ高さに所定距離間して設けられている。噴流ノズル11が取り付けられた一方の短辺側浴槽壁4aの反対側の他方の短辺側浴槽壁4bの上方には浴槽側水栓が設けられ、またその他方の短辺側浴槽壁4b近傍の浴槽底部には排水口が設けられる。したがって、通常、入浴者は自然と噴流ノズル11が設けられた側の短辺側浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る噴流ノズル11の模式断面図である。
【0018】
噴流ノズル11は、一端(上流端)に、循環路14と連通される流水導入口21が設けられ、他端(下流端)に噴出口26が設けられた筒体20を備える。
【0019】
筒体20は、噴出口26を浴槽1の内部に臨ませて、上記一方の短辺側浴槽壁4aに保持される。噴出口26は、他方の短辺側浴槽壁4bに向いている。流水導入口21は、浴槽1の外部で、循環路14に接続されている。
【0020】
流水導入口21と噴出口26との間の筒体20内部には、上流側(流水導入口21側)から順に、流水導入部22、流路断面収縮部23、チャンバー25が設けられ、これらを介して流水導入口21と噴出口26との間は連通している。
【0021】
流水導入部22は、流水導入口21と流路断面収縮部23との間に設けられ、その流路断面は流水導入口21から流路断面収縮部23に向かうにしたがって徐々に狭められている。流路断面収縮部23は、筒体20の軸中心に位置し、流水導入口21及び流水導入部22に対して流路断面が縮小されている。
【0022】
流路断面収縮部23の下流側には、流路断面収縮部23に対して流路断面が急拡大(例えば3倍以上急拡大された)された流路断面急拡大部24を一端部(上流側端部)に有するチャンバー25が設けられている。チャンバー25は、流路断面急拡大部24の内径寸法のまま噴出口26近傍まで続いている。
【0023】
チャンバー25の内壁面は、流路断面急拡大部24から噴出口26の近傍に至るまでは筒体20の軸中心Cに対して略平行に延在している。チャンバー25において噴出口26に続く内壁面は、筒体20の軸中心Cに向けて傾斜された環状の傾斜面28となっている。また、図21に表すように、筒体20の下流端に、チャンバー25の内周面に対して略直角につながるリップ部20aを設け、そのリップ部20aの内周端に傾斜面28を設けてもよい。この構造でも、図1に表す構造の傾斜面28とした場合と同様の効果が得られる。
【0024】
噴出口26近傍のチャンバー25内には、噴出口26へと通じるチャンバー25内流路の一部を遮る遮蔽体27が設けられている。
【0025】
図4(a)は、遮蔽体27が設けられた部分における筒体20及びチャンバー25の断面図であり、図4(b)は図4(a)におけるA−A断面図である。
【0026】
遮蔽体27は円盤状に形成され、その中心を筒体20の軸中心Cに一致させて、チャンバー25の内部に設けられている。遮蔽体27は、チャンバー25内流路のすべてを遮蔽しておらず、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部25bとの間には、チャンバー25から噴出口26への流水の流れを許容する流路25aが確保されている。
【0027】
遮蔽体27は、遮蔽体27とチャンバー25の内壁部25bとの間に放射状に設けられた3本の棒状の支持部31を介してチャンバー25の内壁部25bに対して支持されている。支持部31の一端は遮蔽体27の内部に嵌入されて固定され、他端はチャンバー25の内壁部25bに形成された孔に嵌入されて固定されている。3本の支持部31は、遮蔽体27の外周面のまわりに周方向に沿って等間隔で設けられている。
【0028】
遮蔽体27は、流水導入口21から導入されチャンバー25を経て噴出口26へと流れる加圧浴槽水の圧力(動圧)を受けるため、支持部31が1本だけであると前記圧力に耐え得る十分な強度が得られず遮蔽体27が外れてしまう可能性があり、支持部31が2本だけであると、遮蔽体27表面に作用する前記圧力が軸中心Cに対して非軸対称分布になることにより生じる支持部周りのモーメントの影響を受け、遮蔽体27が回転してしまう可能性がある。したがって、支持部31は、3本以上設けるのが望ましい。
【0029】
例えば、図5(a)及びそのB−B断面図である図5(b)に表すように、遮蔽体27の外周面のまわりに周方向に沿って90°おきに4本の支持部31を設けてもよい。
【0030】
また、図6(a)及びそのC−C断面図である図6(b)に表すように、遮蔽体27及びチャンバー25の内壁部25bに対して一体に支持部32を設けてもよい。
【0031】
図7(a)及びそのD−D断面図である図7(b)に表すように、筒体20及び遮蔽体27を一体に成形した後、支持部33を残すようにして遮蔽体27のまわりをくり抜いて、チャンバー25から噴出口26への流水の流れを許容する流路25aを形成するようにしてもよい。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る噴流ノズル及び噴流浴装置の作用について説明する。
【0033】
浴槽1近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽1内に貯留された浴槽水が吸入口5から循環路13内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、循環路14を介して、噴流ノズル11の流水導入口21に導入される。噴流ノズル11内に導入された加圧浴槽水は、以下に説明するように、噴出方向を不規則に変化させた旋回噴流として浴槽1内に噴出される。
【0034】
図8(a)〜(d)は、噴流ノズル11にて旋回噴流が形成される様子を説明するための模式図である。
【0035】
流水導入口21から導入された加圧浴槽水は、流水導入部22、流路断面収縮部23および流路断面急拡大部24を順に経てチャンバー25内に噴流となって流入する。加圧浴槽水が、流路断面収縮部23からチャンバー25内に流入する際、流路断面の急拡大により、筒体11内壁面に沿って流れることができなくなり、すなわち流路内壁面に対して流れの剥離が生じる。
【0036】
一般的に、噴流は、外部流体との運動量交換により外部流体を加速し、噴流内部に巻き込む。このとき、噴流近傍に壁面が存在すると、外部流体を内部に引き込むように作用する引きつけ力の反作用により、噴流自身が壁面に向かって曲げられ、再び流れが壁面に沿うようになる。つまり、チャンバー25の内壁面の周方向の一部に流れが再付着する。
【0037】
チャンバー25の内壁面に付着した主流は、そのままチャンバー25内壁面に沿い、遮蔽体27の外周面とチャンバー25内壁面との間を噴出口26に向かって流れ、噴出口26の手前(上流側)で筒体11の軸中心に向かうように傾斜して形成された傾斜面28に沿って軸中心Cに対して傾斜した噴流として噴出口26から浴槽1内に噴出する。
【0038】
以上のようにして、噴流ノズル11内に、主流(図8(a)において太線矢印aで表す)が形成される。
【0039】
流路断面収縮部23に比べて噴出口26の流路断面が大きく、流れは下流に向かって減速、すなわち、チャンバー25内部では下流に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されること、さらにチャンバー25内に流路の一部を遮るように遮蔽体27が設けられていることによって、前述した主流の一部は、噴出口26から噴出されず、図8(b)において矢印bで表すように、チャンバー25の上流側に戻される。
【0040】
その上流側に戻された流れが、図8(c)に表すように、流路断面急拡大部24付近にて主流が剥離したよどみ領域に流れ込むことで、図8(d)に表すように、流路断面急拡大部24付近で中心軸Cまわりに旋回流が形成され、これにより、主流の内壁面に対する再付着位置が周方向で不規則に変化し、噴出口26からは中心軸Cまわりに不規則に旋回した噴流が噴出される。
【0041】
噴出流に気泡を混入させて噴出流を可視化した状態で、本実施形態に係る噴出ノズル11から旋回噴流を噴出させた様子を、図9(a)〜(d)の写真図に表す。上述したように、チャンバー25内は、噴出口26面に比べ圧力が低く、ノズル11が浴槽1に取り付けられる程度の深さに取り付けられるのであれば、チャンバー25内は概ね負圧を生じており、チャンバー壁の位置に空気流入口を設けることで空気を自給させることができる。
【0042】
入浴者は、噴流ノズル11から噴出される旋回噴流を、腰、背、肩、手、足等の身体の一部に受けることにより、マッサージ効果を得ることができる。噴流ノズル11から噴出される噴流は、細く強い直線的な噴流ではなく、太くやわらかい旋回噴流であるため、腰を包み込む、背中、腰全体を押すようにもみほぐすなど、局所的に強い刺激感ではなく、広範囲をもみほぐすような手もみに近いマッサージ感を得ることができ、長時間入浴していても飽きがなくゆったりとリラックスできる。また、直線的な強い噴流を局所的に受ける場合には、所望の部位にその噴流を受けるべく姿勢を保つために緊張状態になりがちであったが、本実施形態の旋回噴流は広範囲にわたってやわらかい刺激を与えるため、入浴者に緊張を強いることなく、力を抜いたリラックスした状態にさせやすい。
【0043】
本実施形態に係る噴流ノズル11から噴出される噴流は旋回しているので、気泡が混入されなくても、マッサージ感を受けるのに十分な刺激感が得られる。気泡を混入しない分、噴流の噴出音及び気泡混入時の音を低減して、静かな環境でよりリラックスできる。もちろん、上記したように、容易に気泡を混入することが可能であるので、本実施形態に係る旋回噴流に気泡を混入してもよく、その場合、気泡を混入しない場合よりも噴流の旋回力が弱まり、よりやわらかな刺激感を受けることが可能である。さらには、気泡混入有無の切り替え、もしくは気泡混入量の調整により多彩な刺激感を実現することが可能である。
【0044】
また、本実施形態に係る噴流ノズル11は、噴流ノズル11内に導入された流体自身が、前述したようにチャンバー25内での還流作用によって、噴出口26から噴出される噴流の旋回を励起する構成となっているため、特許文献1のような回転摺動部分が不要であり、ノズル構造が単純化され、安価に作製することができ、またメンテナンスも容易になる。さらには、回転摺動部分における摩耗やゴミ詰まりなどによる旋回性能低下の心配もない。
【0045】
前述したように、チャンバー25内静圧は、浴槽1内に貯留された浴槽水の静圧より低く、チャンバー25内部では下流側に向かって静圧が増加する逆圧力勾配が形成されるため、遮蔽体27を設けなくても、主流の一部をチャンバー25上流側に戻す還流を形成することは可能である。ただし、遮蔽体27を設けた方が、逆静圧勾配(流れ方向に対して静圧が上昇)による還流形成に比べ、より安定した(確実性の増した)還流が形成されることから、噴流の旋回が安定する。
【0046】
噴出口26の手前(上流側)に傾斜面28を設けなくても、上述したように主流がチャンバー25内壁の周方向の一部に偏ることから偏向した噴流が実現されるが、傾斜面28を設け、その傾斜面28に主流を沿わせることで、主流の偏向を促進することができ、より広範囲にわたるやわらかな旋回噴流を形成しやすくなる。
【0047】
図10に表すように、流水導入部42の内径は、流水導入口21から流路断面収縮部43aにかけて略同じとしてもよい。この場合、流水導入部42とチャンバー25との境界に、軸中心Cに対して略垂直な隔壁43を設け、その隔壁43の中央にオリフィスをあけて流路断面収縮部43aを構成している。
【0048】
ただし、図1に表す前述した実施形態のように、流水導入部22の流路断面を、流水導入口21から流路断面収縮部23に向けて徐々に狭めることで、噴流ノズル11内での圧力損失が小さくなり、噴出に際して大きな圧力を与えなくて済む。すなわち、ポンプ7を大きなものにしなくて済み、設置スペース及びコスト低減が図れる。
【0049】
次に、本発明者等は、図11に表すように、噴出口26の近傍に圧力計45を設け、噴出口26から噴出される旋回噴流の圧力を測定した。圧力計45は、噴出口26から30(mm)離れ、且つ軸中心Cから10(mm)上方の位置に設けた。
【0050】
噴流ノズル11において図1に表す各寸法d、D、DCB、h、Dout、L、Xは、それぞれ以下のように設計した。流路断面収縮部23の内径d=8.3(mm)、流路断面拡大部24及びチャンバー25の内径D=27.8(mm)、遮蔽体27の外径DCB=20.9(mm)、遮蔽体27の軸方向厚さh=5.8(mm)、噴出口26の口径Dout=22.3(mm)、チャンバー25の長さL=76.6(mm)、遮蔽体27の軸方向の中心から噴出口26までの距離X=10.4(mm)。
【0051】
噴流が計測点を通過する際には、噴流の動圧が加味されるため、計測される圧力は大きな値をとる。すなわち、横軸に時間を、縦軸に圧力計45の測定値をとったグラフにおいて、図11に表すような噴流の通過に同期した波形が得られる。この波形の時間変動周波数は、噴流の通過する周波数と一致することから、この圧力計45で測定された旋回噴流圧力の時間変化データを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して、旋回噴流圧力の旋回周波数スペクトルを算出した。そのグラフ図を、図12に表す。図12において、a、b、c、dは、それぞれ、噴出流の流量を30.0、24.5、19.8、15.1(リットル/分)に設定した場合のグラフを表す。
【0052】
図12の結果より、噴出流の旋回周波数は概ね1〜5Hz程度であり、これは、人間のもみマッサージに近い刺激を入浴者に与える。一般に、手や足以外の刺激に敏感な部分では、概ね3Hz程度までの旋回噴流であれば旋回刺激として認識することができ、3Hzより大きくなると連続刺激として錯覚しやすくなる。また、旋回周波数が一定ではなく不規則に変化するので自然なマッサージ感が得られ、入浴者に緊張感を与えにくい。
【0053】
浴槽水の噴出流が人体等のマッサージ部位に当たる瞬間の力、面積をそれぞれF、ΔSとすると、人体がある瞬間に感じる噴出流の強さはF/ΔSと規定することができる。旋回噴流の旋回周波数をf1とし、この周波数で噴出が継続されている場合、周波数f1の逆数である周期(Δt=1/f1)の時間間隔で人体等のマッサージ部位に当たる総面積Sは、周期Δtの間にΔSを積分した値Sとなる。
【0054】
一方、人が刺激を皮膚等を介して感じるときに、刺激を感じる受容器は人や刺激を受ける場所によっても異なるが、数Hz〜数百Hzの範囲に刺激を連続してもしくは連続と同様な刺激を受けているような錯覚を生じる。したがって、ある瞬間に強さF/ΔSの刺激をΔtの周期である軌道で移動した場合(これを移動総軌跡Sとする)、人は強さF/ΔSの刺激を総面積Sで受けているように錯覚を生じる。この傾向はΔtが小さいほど顕著に現れてf=3HzすなわちΔt=0.3秒程度から感じ始める。したがって、旋回刺激を感じるには、旋回周波数は3Hz以下が望ましい。
【0055】
次に、流路断面収縮部の内径(チャンバー25への流入口径)dを様々に変えて、流量(リットル/分)と、圧力(MPa)とを測定した。この測定結果を図13に表す。流量は、ポンプ7の下流側に接続された循環路14に設けた流量計にて測定し、圧力は、その循環路14において流量計より下流側であって噴流ノズル11の手前(上流側)に設けた圧力計にて測定した。
【0056】
図13において、a、b、c、d、e、fは、それぞれ、流路断面収縮部の内径dを4.2、5.5、5.5(orifice)8.3、10.0、12.0(mm)に設定した場合のグラフを表す。”orifice”は、図10に表す流路断面収縮部43aとした場合を表し、他は図1に表す流路断面収縮部23とした。他の部分の寸法D、DCB、h、Dout、L、Xは、前述と同様である。
【0057】
図13の結果より、流路断面収縮部の内径dが大きい方が、噴流ノズル11手前の循環路14内における圧力が小さい、すなわち圧損が小さい。ただし、流路断面収縮部の内径dをあまり大きくすると、噴出流の旋回性能が低下してしまうので、圧損を小さくしつつ所望の旋回性能を得るには、流路断面収縮部の内径dは5〜12(mm)程度が望ましい。
【0058】
流量が20(リットル/分)より小さいと十分な刺激感が得られず、50(リットル/分)より大きいと大きなポンプが必要になるため、流量は20〜50(リットル/分)が望ましい。
【0059】
遮蔽体27とチャンバー25内壁面との隙間は、子供の指が入らないように5mm以内であることが望ましい。また、噴出口26の内周縁部は、指がかかっても安全なように、エッジ状ではなく曲面状に形成するのが望ましい。
【0060】
噴流ノズル11が設けられた短辺側浴槽壁4aに背をもたれた入浴者の背や腰に対して、噴出口26が3〜10mm程離れて位置するように噴流ノズル11を短辺側浴槽壁4aに保持させるのが望ましい。噴出口26が入浴者に対して3〜10mmより近すぎると噴流の旋回感を感じず、遠すぎると噴流が拡散してしまい十分な刺激が得られ難い。また、噴流ノズル11の、浴槽底面からの高さは、噴流ノズル11から噴出される噴流が浴槽1内に貯留された浴槽水の水面から飛び出さない範囲内で適宜設定できる。
【0061】
図20は、噴流ノズルの他の具体例を表す。この噴流ノズルにおける遮蔽体47は、噴出口26に向き合う面の反対側(上流側)の面が曲面状に形成されている。チャンバー25内を流れてきた浴槽水が当たる面を曲面状にすることで、浴槽水中に含まれる砂等の異物の、遮蔽体47に対する衝突を緩和でき、遮蔽体47が外れたり破損するのを防止できる。
【0062】
吸入口5の数は1つに限らず複数設けてもよい。また、吸入流量が多く吸入口5の口径が十分な大きさを有していないと、吸水流速が大きくなる、つまり吸入口5への引き込み力が大きくなり、手足、髪の毛など身体の一部が吸引されやすくなるので、吸入口5の口径及び数はポンプ7の性能や噴出ノズル11からの噴出流量などに応じて適切に設計される。
【0063】
また、浴槽内に砂等が混入する可能性もあり、循環路13、14の内の流速が速すぎると砂等が管内壁面に衝突し損傷させるおそれがあるので、循環路13、14内の流速が概ね2(m/s)以下になるように循環路内径が設計されることが望ましい。
【0064】
ポンプ7は、噴流ノズル11の流水導入口21側に一体に設けてもよい。
【0065】
噴流ノズル11は2つに限らず、図14に表すように、1つの噴流ノズル11を短辺側浴槽壁4aに設けてもよい。もちろん、3つ以上の噴流ノズル11を設けてもよい。
【0066】
また、図15、図16に表すように、一対の長辺側浴槽壁3a、3bにおいて短辺側浴槽壁4aに近い位置(短辺側浴槽壁4aに背を向けた姿勢で入浴する入浴者の胴部の横に位置する位置)にそれぞれ噴流ノズル11を設けてもよい。図15の場合には、各噴流ノズル11の噴出口26から、入浴者の胴部側面から脚に向けて旋回噴流が噴出される。図16の場合には、各噴出口26は自身が設けられた長辺側浴槽壁3a、3bに対向する長辺側浴槽壁3a、3bに向けられ、各噴出口26からは浴槽1の長辺方向に対して略垂直に、入浴者の側部に向けて旋回噴流が噴出される。
【0067】
また、図17に表すように、入浴者の足が向けられる短辺側浴槽壁4bに、例えば浴槽短辺方向に離間して2つの噴流ノズル51を設けてもよい。この噴流ノズル51は、前述した噴流ノズル11と同様な旋回噴流を噴出するノズルであってもよいし、まっすぐに噴流を噴出するノズルであってもよい。各噴流ノズル51の噴出口51aは、反対側の短辺側浴槽壁4aに対向し、各噴出口51aからは入浴者の足裏、下肢、体部前面などに向けて噴流が噴出される。
【0068】
ポンプ7の吸込口は、循環路13を介して、例えば長辺側浴槽壁3bに開口された吸入口5に接続されている。ポンプ7の吐出口は、切替手段(例えば三方弁)53を介して、循環路14と循環路52に接続されている。循環路14は、一方の短辺側浴槽壁4aに設けられた噴流ノズル11に接続され、循環路52は、他方の短辺側浴槽壁4bに設けられた噴流ノズル51に接続されている。
【0069】
切替手段53は、ポンプ7から吐出される加圧浴槽水の供給先を循環路14または循環路52に選択的に切り替える。この切り替え制御は、循環路14、52のうち一方だけをポンプ7に接続させる開閉制御であってもよいし、両循環路14、52をポンプ7と接続させ、両循環路14、52に対する流量比可変制御であってもよい。
【0070】
また、複数の噴流ノズル11、51を設けた場合には、図18に表すように、各噴流ノズル11、51への浴槽水の供給経路(循環経路)を複数系統設けてもよい。
【0071】
例えば、長辺側浴槽壁3bに2つの吸入口5、55が形成され、一方の吸入口5は、循環路13、ポンプ7、循環路14を介して一方の短辺側浴槽壁4aに設けられた噴流ノズル11に接続され、他方の吸入口55は、循環路56、ポンプ57、循環路54を介して他方の短辺側浴槽壁4bに設けられた噴流ノズル51に接続されている。
【0072】
また、循環系統及びポンプを2つ設けた場合であっても、図19に表すように、各系統で1つの吸入口5を共用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係る噴流ノズルの模式断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式図である。
【図3】同噴流浴装置において浴槽を側面方向から見た模式図である。
【図4】(a)は、本実施形態に係る噴流ノズル要部の断面図であり、(b)は図4(a)におけるA−A断面図である。
【図5】(a)は、他の具体例の噴流ノズル要部の断面図であり、(b)は図5(a)におけるB−B断面図である。
【図6】(a)は、さらに他の具体例の噴流ノズル要部の断面図であり、(b)は図6(a)におけるC−C断面図である。
【図7】(a)は、さらに他の具体例の噴流ノズル要部の断面図であり、(b)は図7(a)におけるD−D断面図である。
【図8】本実施形態に係る噴流ノズルにて旋回噴流が形成される様子を説明するための模式図である。
【図9】噴出流に気泡を混入させて噴出流を可視化した状態で、本実施形態に係る噴出ノズルから旋回噴流を噴出させた様子を表す写真図である。
【図10】他の具体例に係る噴流ノズルの要部断面図である。
【図11】本実施形態に係る噴流ノズルの噴出口近傍に圧力計を設け、噴出口から噴出される旋回噴流の圧力の測定実験を説明するための模式図である。
【図12】図11に表す圧力計で測定された旋回噴流圧力の時間変化データを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して、旋回噴流圧力の旋回周波数スペクトルを算出したグラフ図である。
【図13】本実施形態に係る噴流ノズルにおける流路断面収縮部の内径(チャンバーへの流入口径)dを様々に変えて、流量(リットル/分)と、圧力(MPa)とを測定した結果を表すグラフ図である。
【図14】他の具体例に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式図である。
【図15】さらに他の具体例に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式図である。
【図16】さらに他の具体例に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式図である。
【図17】さらに他の具体例に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式図である。
【図18】さらに他の具体例に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式図である。
【図19】さらに他の具体例に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式図である。
【図20】他の具体例に係る噴流ノズルの模式断面図である。
【図21】本発明の実施形態に係る噴流ノズルにおいてチャンバー下流端の構造の他の具体例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0074】
1…浴槽、5…吸入口、11…噴流ノズル、20…筒体、22…流水導入部、23…流路断面収縮部、24…流路断面急拡大部、25…チャンバー、26…噴出口、27…遮蔽体、31〜33…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽壁に対して保持される筒体を備え、前記筒体の内部に導入された流水を、噴出方向を変化させながら浴槽の内部に噴出する噴流ノズルであって、
流水が導入される流水導入部と、
前記流水導入部より下流側で前記流水導入部に連通し、前記流水導入部に対して流路断面が縮小された流路断面収縮部と、
前記流路断面収縮部より下流側で前記流路断面収縮部に連通し、前記流路断面収縮部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部を上流側の端部に有し、且つ前記浴槽の内部に臨む噴出口を下流側の端部に有するチャンバーと、
が前記筒体の内部に設けられたことを特徴とする噴流ノズル。
【請求項2】
前記筒体は前記浴槽における一方の短辺側浴槽壁に保持され、前記噴出口は他方の短辺側浴槽壁に対向していることを特徴とする請求項1記載の噴流ノズル。
【請求項3】
前記流水導入部の流路断面は、前記流路断面収縮部に向けて徐々に狭まっていることを特徴とする請求項1または2に記載の噴流ノズル。
【請求項4】
前記噴出口の近傍で前記チャンバーに臨んで設けられ、前記噴出口へと通じる流路の一部を遮る遮蔽体をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の噴流ノズル。
【請求項5】
前記遮蔽体は、前記遮蔽体と前記チャンバーの内壁部との間に放射状に設けられた3つ以上の支持部を介して前記チャンバーの内壁部に対して支持されていることを特徴とする請求項4記載の噴流ノズル。
【請求項6】
前記遮蔽体、前記支持部および前記チャンバーの内壁部が一体に成形されたことを特徴とする請求項5記載の噴流ノズル。
【請求項7】
前記チャンバーにおいて前記噴出口に続く内壁部を、前記筒体の軸中心に向けて傾斜させたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の噴流ノズル。
【請求項8】
浴槽と、
前記浴槽の浴槽壁に開口され前記浴槽の内部に貯留された浴槽水を吸い込む吸入口と、
前記吸入口に連通した循環路と、
前記循環路の途中に設けられ、前記吸入口から吸い込んだ浴槽水を加圧して吐出する加圧装置と、
前記浴槽壁に対して保持されると共に前記循環路に連通する筒体を備え、前記筒体の内部に導入された浴槽水を、噴出方向を変化させながら前記浴槽の内部に噴出する噴流ノズルと、
を備え、
前記筒体の内部に、
前記循環路を介して前記加圧装置から送られる加圧浴槽水が導入される流水導入部と、
前記流水導入部より下流側で前記流水導入部に連通し、前記流水導入部に対して流路断面が縮小された流路断面収縮部と、
前記流路断面収縮部より下流側で前記流路断面収縮部に連通し、前記流路断面収縮部に対して流路断面が急拡大された流路断面急拡大部を上流側の端部に有し、且つ前記浴槽の内部に臨む噴出口を下流側の端部に有するチャンバーと、
が設けられたことを特徴とする噴流浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−136588(P2008−136588A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324242(P2006−324242)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】