説明

噴管の連結構造

【課題】噴管同士の回転角度の調節が容易とされ、作業者の負担を低減できる噴管の連結構造を提供する。
【解決手段】弾性材から成る一方の噴管2の外周面に周方向に沿って形成された環状凸条2cを、弾性材から成る他方の噴管4の内周面に周方向に沿って形成された環状凹条4bに収容し、噴管2,4同士を軸線方向に位置決めして回転自在に連結し、さらに、一方の噴管2の環状凸条2cから一方の噴管2の軸方向に沿って隣接した位置に形成された位置決め凸部2dと、他方の噴管4に設けられた係合部4c,4dとを回転方向に係合させ、噴管2,4同士を回転方向に位置決めすることによって、噴管2,4同士の回転角度の調整を容易とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴管の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液等を散布する散布機本体に接続される噴管の連結構造として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。ここでは、一方の噴管を他方の噴管に差し込んで、双方の噴管を互いに回転自在に連結し、360°任意の方向に薬液等を噴出可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭40−26843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、一方の噴管が他方の噴管に対して回転自在であるから、噴管同士を所定の回転角度とする場合には、回転角度を大まかに調整し、さらに微調整する必要があり、作業が煩雑であるため作業者の負担が大きかった。
【0005】
そこで本発明は、噴管同士の回転角度の調節が容易とされ、作業者の負担を低減できる噴管の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一方の噴管(2)を他方の噴管(4)に差し込み回転自在に連結した噴管の連結構造であって、噴管(2,4)を弾性材より構成し、一方の噴管(2)は、外周面において、周方向に沿って形成された環状凸条(2c)と、環状凸条(2c)から一方の噴管(2)の軸方向に沿って隣接した位置に形成された位置決め凸部(2d)と、を備え、他方の噴管(4)は、内周面において、周方向に沿って形成され環状凸条(2c)を回転自在に収容する環状凹条(4b)と、位置決め凸部(2d)と回転方向に係合する係合部(4d)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明にあっては、弾性材から成る一方の噴管(2)の外周面に周方向に沿って形成された環状凸条(2c)が、弾性材から成る他方の噴管(4)の内周面に周方向に沿って形成された環状凹条(4b)に収容されることによって、噴管(2,4)同士が軸線方向に位置決めされて回転自在に連結される。さらに、一方の噴管(2)の環状凸条(2c)から一方の噴管(2)の軸方向に沿って隣接した位置に形成された位置決め凸部(2d)と、他方の噴管(4)に設けられた係合部(4d)とが回転方向に係合し、噴管(2,4)同士が回転方向に位置決めされる。このため、噴管(2,4)同士の回転角度の調整が容易とされ、作業者の負担を低減できる。
【0008】
また、他方の噴管(4)に、一方の噴管(2)が差し込まれる側の端部から環状凹部(4b)に達するスリット(4c)が設けられていることが好適である。
【0009】
この場合には、一方の噴管(2)の外周面に形成された環状凸条(2c)を、他方の噴管(4)の内周面に形成された環状凹条(4b)に収容する際に、スリット(4c)により他方の噴管の開口を容易に広げることができ、一方の噴管(2)の環状凸条(2c)を他方の噴管(4)の環状凹条(4b)に容易に収容できる。
【0010】
また、スリット(4c)が、係合部(4d)と兼ねていると、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、噴管同士の回転角度の調節が容易とされ、作業者の負担を低減できる噴管の連結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】背負動力散布機を示す概略背面図である。
【図2】偏向キャップを噴管の先端に組み付けた状態を前方から見た斜視図である。
【図3】噴管と偏向キャップを分離した状態を後方から見た斜視図である。
【図4】噴管と偏向キャップを分離した状態を示す縦断面図である。
【図5】偏向キャップを内側から見た図である。
【図6】偏向キャップを噴管に組み付けた状態を示す要部断面図である。
【図7】偏向キャップを噴管に組み付けてスリットと位置決め凸部とが係合した状態を示す要部断面図である。
【図8】偏向キャップを噴管に組み付けて係合部と位置決め凸部とが係合した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る噴管の連結構造を、添付図面を参照しながら説明する。ここでは、薬液等を散布する背負動力散布機本体に接続される噴管と、噴管の先端に取り付けられる偏向キャップとの組み付け構造に適用した実施形態について説明する
【0014】
図1は、背負動力散布機を示す概略背面図、図2は、偏向キャップを噴管の先端に組み付けた状態を前方から見た斜視図、図3は、噴管と偏向キャップを分離した状態を後方から見た斜視図、図4は、噴管と偏向キャップを分離した状態を示す縦断面図、図5は、偏向キャップを内側から見た図、図6は、偏向キャップを噴管に組み付けた状態を示す要部断面図、図7は、偏向キャップを噴管に組み付けてスリットと位置決め凸部とが係合した状態を示す要部断面図、図8は、偏向キャップを噴管に組み付けて係合部と位置決め凸部とが係合した状態を示す要部断面図であり、図1に示すように、本実施形態の噴頭1は、噴管2と、ミストノズル3と、噴管2の先端に組み付けられる偏向キャップ4とを備え、図1に示す背負動力散布機100に装着されるものである。
【0015】
この背負動力散布機100は概略、エンジン10、薬液タンク11を搭載すると共に機内に送風機(不図示)を備え、エンジン10が駆動されると、送風機が回転駆動して高速気流が発生し、この高速気流が送気管12を介して、当該送気管12の先端に装着された噴頭1の噴管2に流れると共に、薬液タンク11に貯留された薬液が上記高速気流の一部により加圧されて仮想線で示す送液管13を介して噴頭1のミストノズル3に流れ当該ミストノズル3の先端のノズル吐出口3a(図4参照)から吐出することで、薬液が高速気流に乗せられて遠方まで噴霧できるものである。
【0016】
以下、噴頭1について詳説する。この噴頭1を構成する噴管2は、樹脂等の弾性材によって構成され、図2〜図4に示すように、円筒状を成し、胴部2aに連なる一方側の先端がラッパ状に拡大する拡径部2xを有する。この噴管2の胴部2aにおける一方側の先端側には、ミストノズル3を支持するための支持部2bが設けられている。また、拡径部2xの先端部外周面には、周方向に沿って形成された円環状の環状凸条2cと、環状凸条2cから噴管2の軸方向に沿って隣接した位置に形成された位置決め凸部2dと、が設けられている。
【0017】
この位置決め凸部2dは、環状凸条2cから噴管2の後方側の位置に設けられ、位置決め凸部2dの頂部と、環状凸条2cの頂部とがほぼ同じ高さで連設する構成となっている。また、位置決め凸部2dは、2個設けられ、周方向に180°離間し、後述のルーバー4aの並設方向(図3の上下方向)に直交する方向に並ぶように配置されている。そして、位置決め凸部2d及び環状凸条2cを含む拡径部2x、支持部2b、胴部2aは一体成形によって形成されている。
【0018】
偏向キャップ4は、樹脂等の弾性材によって構成され、図2〜5に示すように、円筒状を成し、先端側(図4の左側)の開口部にルーバー4aが並設されている。ルーバー4aは、偏向キャップ4の軸方向に対して傾斜して設けられた偏向板であり、薬液を偏向キャップ4の軸方向に対して所定の傾斜角度の方向に向かって噴霧させるためのものである。
【0019】
この偏向キャップ4の後部側(噴管2側)の端部の開口を形成している内周面には、周方向に沿う円環状の環状凹条4bと、周方向に90度等間隔に離間する4つのスリット4cとが設けられている。これらのスリット4cは、特に図4及び図7に示すように、内外を連通し、偏向キャップ4の開口側の端部から環状凹条4bに達し、さらに環状凹条4bを横断するように形成され、このうちの一対のスリット4cはルーバー4aの並設方向(図5の上下方向)に離間して配置されている。
【0020】
また、この偏向キャップ4の後部側(噴管2側)の端部の開口を形成している内周面には、ルーバー4aの並設方向に離間する上記一対の対向スリット4cから周方向の同方向(図5では反時計回り)に同角度(例えば45°)離された位置に、2つの係合部4dが設けられている。係合部4dは、特に図4に示すように、偏向キャップ4の開口側の端部から環状凹条4bに達する溝状に形成されている。なお、偏向キャップ4の内周面において、スリット4cの端部からルーバー4aの位置に亘ってリブ4tがそれぞれ設けられている。
【0021】
ここで、偏向キャップ4を噴管2に組み付ける場合には、まず、偏向キャップ4の開口部内に噴管2の先端を差し込む。すると、スリット4cにより、偏向キャップ4の開口部が半径方向外側に反るようにして広がるため、図6に示すように容易に噴管2の環状凸条2cを偏向キャップ4の環状凹条4b内に収容することができ、軸方向の位置決めがされる。
【0022】
このとき、偏向キャップ4の開口部側の噴管2の位置決め凸部2dに対応する部位と、位置決め凸部2dはともに弾性変形して偏向キャップ4と噴管2との相対回転を許容し、従って、噴管2に対して偏向キャップ4は周方向に回転自在となっている。
【0023】
このように、偏向キャップ4を噴管2に組み付けた状態で、偏向キャップ4を例えば図5における反時計回りに回転させていき、図7に示すように、位置決め凸部2dがスリット4cの位置に達すると、スリット4c内において位置決め凸部2dが弾性復帰し、位置決め凸部2dの側面とスリット4cの側面とが回転方向に係合する。即ち、位置決め凸部2dは、スリット4cを形成する両側面に挟まれた状態となり、偏向キャップ4の回転方向の位置決めがされる。ここでは、ルーバー4aにより、斜め上方に噴霧できるとする(図3参照)。
【0024】
ここで、位置決め凸部2dの側面とスリット4cの側面との係合面積(両者が重なっている面積)は、図7に示すように小さく、位置決め凸部2d及びスリット4cの近傍は弾性変形するため、偏向キャップ4を再び回転させることができ位置決め凸部2dとスリット4cとを容易に係合または離脱させることができる。
【0025】
従って、偏向キャップ4を噴管2に組み付けた状態で、さらに偏向キャップ4を反時計回りに回転させていき、図8に示すように、位置決め凸部2dが係合部(溝部)4dの位置に達すると、係合部4d内において位置決め凸部2dが弾性復帰し、位置決め凸部2dの側面と係合部4dとが回転方向に係合する。即ち、位置決め凸部2dは、係合部4dを形成する両側面に挟まれた状態となり、偏向キャップ4の回転方向の別の位置での位置決めがされる。ここでは、ルーバー4aにより、水平より45°左斜め上方へ噴霧できる。
【0026】
ここでも同様に、位置決め凸部2dの側面と係合部4dの側面との係合面積(両者が重なっている面積)は小さく、これらの弾性変形により偏向キャップ4を再び回転させることができ位置決め凸部2dと係合部4dとを容易に係合または離脱させることができる。
【0027】
従って、偏向キャップ4を噴管2に組み付けた状態でさらに偏向キャップ4を反時計回りに回転させていくと、位置決め凸部2dがスリット4cと回転方向に係合し、ルーバー4aにより水平方向斜め左側への噴霧ができる。
【0028】
このように本実施形態の噴管2と偏向キャップ4との連結構造によれば、弾性材から成る噴管2の先端部の外周面に周方向に沿って形成された環状凸条2cが、弾性材から成る偏向キャップ4の内周面に周方向に沿って形成された環状凹条4bに収容されることによって、噴管2と偏向キャップ4とが軸線方向に位置決めされて回転自在に連結され、さらに、噴管2の環状凸条2cから噴管2の軸方向に沿って隣接した位置に形成された位置決め凸部2dと、偏向キャップ4に設けられたスリット4cまたは係合部4dとが回転方向に係合し、噴管2と偏向キャップ4とが回転方向に位置決めされるため、噴管2に対して偏向キャップ4の回転角度の調整が容易とされ、作業者の負担を低減できる。
【0029】
また、噴管2の外周面に形成された環状凸条2cを、偏向キャップ4の内周面に形成された環状凹条4bに収容する際に、スリット4cにより偏向キャップ4の開口を容易に広げることができるため、噴管2の環状凸条2cを偏向キャップ4の環状凹条4bに容易に収容できる。
【0030】
また、スリット4cにおいても係合部4dと同様に噴管2の位置決め凸部2dを係合させる構造とすることにより、スリット4cと係合部4dが兼用されるため、多くの係合部4dを設けなくても種々の回転方向の位置に偏向キャップ4を位置決めすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0031】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、位置決め凸部2dを他の部分と一体成形するものとしたが、一体成形ではなく、位置決め凸部2dに代えてビスを用い位置決め凸部としてもよい。
【0032】
また、偏向キャップ4にスリット4cと係合部4dを設けるものとしたが、スリット4cだけを設けてもよく、また係合部4dだけを設けてもよい。また、スリット4cや係合部4dの数を多くすればするほど、偏向キャップ4の回転方向の位置決めを、より微細な角度で行うことができる。
【0033】
また、噴管2の外周面に環状凸条2cと位置決め凸部2dとを設け、偏向キャップ4の内周面に環状凹条4bと位置決め凸部2dに回転方向に係合する係合部とを設けるものとしたが、偏向キャップ4の外周面に環状凸条と位置決め凸部とを設け、噴管2の内周面に環状凹条と位置決め凸部に回転方向に係合する係合部とを設け、噴管2の開口部内に偏向キャップ4を差し込み、回転自在に連結する構成であってもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、本発明に係る噴管の連結構造を、背負動力散布機に用いられる噴管2と偏向キャップ4との組み付け構造に適用した例について説明したが、背負動力散布機に用いられる噴管2と偏向キャップ4とに限定されることなく、他の装置で用いられる噴管同士の連結など、本願発明を種々の部材の連結構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…噴頭、2…噴管、2c…環状凸条、2d…位置決め凸部、4…偏向キャップ、4b…環状凹条、4c…スリット、4d…係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の噴管(2)を他方の噴管(4)に差し込み回転自在に連結した噴管の連結構造であって、
前記噴管(2,4)を弾性材より構成し、
前記一方の噴管(2)は、外周面において、周方向に沿って形成された環状凸条(2c)と、前記環状凸条(2c)から前記一方の噴管(2)の軸方向に沿って隣接した位置に形成された位置決め凸部(2d)と、を備え、
前記他方の噴管(4)は、内周面において、周方向に沿って形成され前記環状凸条(2c)を回転自在に収容する環状凹条(4b)と、前記位置決め凸部(2d)と回転方向に係合する係合部(4d)と、を備える、
ことを特徴とする噴管の連結構造。
【請求項2】
前記他方の噴管(4)に、前記一方の噴管(2)が差し込まれる側の端部から前記環状凹部(4b)に達するスリット(4c)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の噴管の連結構造。
【請求項3】
前記スリット(4c)が、前記係合部(4d)を兼ねていることを特徴とする請求項2に記載の噴管の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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