説明

噴霧器

【課題】エアーノズルと液体ノズルの配置構成を最適化することにより、より効率的に大量のミストをエアーノズルの噴射域に噴射することができる噴霧器を提供する。
【解決手段】本発明は、気体を噴射するエアーノズル4と、エアーノズル4の噴射口40の下流域に配置された液体ノズル8とを備え、エアーノズル4から吹き出される気流により生じる負圧によって液体ノズル8内の液体を吸い上げ、気流の噴射域に液体をミスト化して噴射する噴霧器を対象とする。そして、液体ノズル8の先端を区画する上流側外壁面46の伸び方向と液体ノズル8の中心軸d2とで規定される上流側外壁面46の傾斜角度θ1が、上流側外壁面46の伸び方向d1とエアーノズル4の中心軸d3とで規定される角度θ2以上に設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアーノズルから吹き出される気流の作用により液体ノズルから吸引された液体を、気流の噴射域にミスト化して吐出させる噴霧器に関する。本発明に係る噴霧器は、例えば、電動スプレイヤーに適用される。
【背景技術】
【0002】
この種の噴霧器は、例えば、特許文献1乃至10に公知である。特許文献1には、筐体内に設けられたエアーノズル(噴霧ノズル)と、電気ヒータを内蔵するタンクとを備え、エアーノズルから吹き出される気流によりタンク内で気化された液体を吸引して、筐体の放出口よりミスト化して放出する噴霧器が開示されている。特許文献1の噴霧器において、タンクの上部には、斜め上方に指向して筐体に連通するエジェクタ部が設けられており、該エジェクタ部の気体がエアーノズルからの気流に吸込まれるようになっている。特許文献2には、噴気嚢および香水容器に連通する噴気室を備え、噴気嚢を握り操作することで、エアーノズルからの気流により香水容器内の香水が吸込まれ、噴気室の噴気孔よりミストとして吐出される噴霧器が開示されている。
【0003】
特許文献3には、エアーノズル(ガス噴射ノズル)からのエアーの噴射方向と、液体ノズル(塗料噴射ノズル)からの液体の吐出方向とを直交させてなる噴霧器が開示されている。すなわち特許文献3には、水平方向に向かってエアーを噴射するエアーノズルと、エアーノズルの噴射口の近傍に配されて鉛直方向に指向する液体ノズルとを備え、エアーノズルの噴射域にミストを作成する噴霧器が開示されている。同様の噴霧器は、特許文献4乃至10にも開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−256158号公報
【特許文献2】実公昭25−8749号公報
【特許文献3】特開2005−329341号公報
【特許文献4】実用新案登録第2549702号公報
【特許文献5】特開2006−26612号公報
【特許文献6】登録実用新案第3107400号公報
【特許文献7】実公昭41−23830号公報
【特許文献8】実用新案登録第259120号公報
【特許文献9】特表2007−503990号公報
【特許文献10】実公昭39−9272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載の噴霧器は、液体ノズルから吐出された液体が、筐体内或いは噴気室内の内面に付着するおそれがあり、効率的にミストを吐出することができない。一方、特許文献3乃至10に記載の噴霧器は、エアーノズルと液体ノズルとが、装置外面に露出されているため、ミストの筐体内面への付着問題は生じず、より大量のミストをエアーノズルの噴射域に吐出することができるものの、エアーノズルから噴射されたエアーが液体ノズルに接触して流速が低下し、液体ノズル内の液体に対する吸込作用が低下することが避けられず、よりの大量の液体をミスト化することができない点に問題があった。
【0006】
本発明の目的は、エアーノズルと液体ノズルの配置構成を最適化することにより、より効率的に大量のミストをエアーノズルの噴射域に噴射することができる噴霧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、気体を噴射するエアーノズル4と、エアーノズル4の噴射口40の下流域に配置された液体ノズル8とを備え、エアーノズル4から吹き出される気流により生じる負圧によって液体ノズル8内の液体を吸い上げ、気流の噴射域に液体をミスト化して噴射する噴霧器を対象とする。そして、液体ノズル8の先端を区画する上流側外壁面46の伸び方向(d1)と液体ノズル8の中心軸(d2)とで規定される上流側外壁面46の傾斜角度(θ1)が、上流側外壁面46の伸び方向(d1)とエアーノズル4の中心軸(d3)とで規定される角度(θ2)以上に設定されていることを特徴とする。
【0008】
液体ノズル8の中心軸(d2)とエアーノズル4の中心軸(d3)とで規定される角度(θ5)は、90度未満に設定されていることが望ましい。
【0009】
液体ノズル8の吐出口43は、上方向に行くに従って開口寸法が大きくなる上広がり状に形成されており、水平方向(d4)と吐出口43の上流側内壁面50の伸び方向(d5)とで規定される吐出口43の上流側内壁面50の傾斜角度(θ3)が、水平方向(d4)と吐出口43の下流側内壁面51の伸び方向(d6)とで規定される吐出口43の下流側内壁面51の傾斜角度(θ4)よりも大きくなるように設定されている形態を採ることができる。
【0010】
エアーノズル4を構成する筒外壁31は、その外形寸法が下流方向に行くに従って径寸法が小さくなる先窄まり状に形成することが望ましい。
【0011】
エアーノズル4を支持する支持体23は、その外形寸法が上方に行くに従って小さくなる先窄まり状に形成することが望ましい。
【0012】
エアーノズル4を支持する支持体23が、その外形寸法が下流方向に行くに従って小さくなる先窄まり状に形成することが望ましい。
【0013】
液体ノズル8の筒端壁48の最下流側に位置する筒端縁55は、エッジ状に形成することが望ましい。
【0014】
噴霧器を、エアーノズル4に向けて高圧気体を供給するポンプ5と、ポンプ5をオン・オフ操作するためのスイッチ7と、液体ノズル8に連通されて該液体ノズル8から吐出される液体Lが収容される容器3と、容器3内が負圧になることを防ぐことを目的として開閉操作される負圧防止バルブ60とを備えるものとし、スイッチ7のオン操作に連動して、負圧防止バルブ60が開操作されるように構成することができる。
【0015】
噴霧器には、エアーノズル4から噴射された気体を液体ノズル8の吐出口43に案内するためのガイド部80を設けることができる。
【0016】
不使用時においてエアーノズル4および液体ノズル8を覆うキャップ2を備え、キャップ2にガイド部80が設けられた形態を採ることができる。
【0017】
ガイド部80に、吐出口43の下流側内壁面51の内面形状に合致する外面形状を備える突起84を設けることができる。
【0018】
突起84の上流側の壁面を、幅方向の中央部が下流側に凹む湾曲面に形成することができる。
【0019】
不使用時においてエアーノズル4および液体ノズル8を覆うキャップ2と、エアーノズル4に向けて高圧気体を供給するポンプ5と、液体ノズル8に連通されて該液体ノズル8から吐出される液体Lが収容される容器3と、容器3内が負圧になることを防ぐことを目的として開閉操作される負圧防止バルブ60とを備え、キャップ2は、エアーノズル4および液体ノズル8を覆う不使用姿勢と、エアーノズル4および液体ノズル8を装置外面に露出させる使用姿勢との間で姿勢変位可能に構成されており、キャップ2の不使用姿勢と使用姿勢との間の姿勢変位操作時に、負圧防止バルブ60が開操作されるように構成することができる。
【0020】
エアーノズル4に向けて高圧気体を供給するポンプ5と、液体ノズル8に連通されて該液体ノズル8から吐出される液体Lが収容される容器3と、容器3内が負圧になることを防ぐことを目的として開閉操作される負圧防止バルブ60とを備え、ポンプ5から容器3内に至る連通路110が設けられており、連通路110を介してポンプ5から容器3に向けて気体が送入されるように構成することができる。
【0021】
液体ノズル8のノズル孔26は、吐出口43の側から順に、中心軸方向における内径寸法が均一なストレート部26aと、吐出口43から離れるに従って中心軸方向における内径寸法が大きくなるテーパー部26bとを備えるものとする。そして、中心軸方向におけるテーパー部26bの長さ寸法をストレート部26aの長さ寸法よりも大きく設定することができる。
【0022】
吐出口43の下流側平坦面48bの前後幅Bを、吐出口43の下流側内壁面51の前後幅Cより小さく設定する。
【0023】
吐出口43の下流側平坦面48bの前後幅Bを、吐出口43の下流側外壁面49の前後幅Aより大きく設定し、吐出口43の下流側内壁面51の前後幅Cより小さく設定する。
【0024】
吐出口43の上流側平坦面48aの前後幅Eを、下流側平坦面48bの前後幅Bと同じか、これより大きく設定する。
【0025】
ノズル孔26のテーパー部26bに、液体Lの流動を妨げる段部28を形成する。
【0026】
吸い上げ管19の下端の入口から吐出口43との間の吸い上げ通路内に、液体Lの流動を妨げるせき止め枠111を配置する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の噴霧器においては、液体ノズル8の先端を区画する上流側外壁面46の伸び方向(d1)と液体ノズル8の中心軸(d2)とで規定される上流側外壁面46の傾斜角度(θ1)を、上流側外壁面46の伸び方向(d1)とエアーノズル4の中心軸(d3)とで規定される角度(θ2)以上に設定したので、エアーノズル4から噴射されて液体ノズル8側に流れる気流の変向を滑らかなものとして、液体ノズル8の吐出口43上を通過する気体の流れを円滑化することができる。これにより、より多くの気体を液体ノズル8の吐出口43上を通過させて、液体ノズル8内に作用する負圧を大きくすることができるので、液体ノズル8内から多量の液体を吸い上げて、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0028】
液体ノズル8の中心軸(d2)とエアーノズル4の中心軸(d3)とで規定される角度(θ5)が、90度未満に設定されていると、エアーノズル4から斜め上方に向けて気体を噴射することができる。すなわち、液体ノズル8の中心軸(d2)が鉛直方向と一致すると仮定したとき、エアーノズル4を水平方向よりも斜め上方に指向する状態に配置して、エアーノズル4の噴射口40から気体を斜め上方に向かって噴射させることができる。これにより、斜め下方へのミストの飛散を抑えることができるので、大量のミストをより遠くまで噴射することが可能となる。
【0029】
液体ノズル8の吐出口43を、上方向に行くに従って開口寸法が大きくなる上広がり状に形成し、水平方向(d4)と吐出口43の上流側内壁面50の伸び方向(d5)とで規定される吐出口43の上流側内壁面50の傾斜角度(θ3)が、水平方向(d4)と吐出口43の下流側内壁面51の伸び方向(d6)とで規定される吐出口43の下流側内壁面51の傾斜角度(θ4)よりも大きくなるように設定することができる。これによれば、下流側内壁面51に当る気流の変向を滑らかなものとして、液体ノズル8の吐出口43上を通過する気体の流れを円滑化することができるので、液体ノズル8内に作用する負圧を大きくすることができ、従って、液体ノズル8内から多量の液体を吸い上げて、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0030】
エアーノズル4を構成する筒外壁31が、その外形寸法が下流方向に行くに従って径寸法が小さくなる先窄まり状に形成されていると、筒外壁31に沿って流れて、エアーノズル4の噴射口40から噴射される気流により生じる負圧により、該気流に吸込まれる周辺空気の流れを円滑化することができる。これにて、エアーノズル4から噴射された気流の流速の低下を抑えることができるので、液体ノズル8の吐出口43に作用する負圧を大きくすることができる。従って、より大量の液体を液体ノズル8から吸い上げることができるので、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0031】
同様に、エアーノズル4を支持する支持体23が、その外形寸法が上方に行くに従って径寸法が小さくなる先窄まり状に形成されていると、支持体23に沿って流れて、エアーノズル4から噴射される気流に吸込まれる周辺空気の流れを円滑化することができる。以上より、液体ノズル8の吐出口43に作用する負圧を大きくして、より大量の液体を液体ノズル8から吸い上げることができるので、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0032】
同様に、エアーノズル4を支持する支持体23が、その外形寸法が下流方向に行くに従って小さくなる先窄まり状に形成されていると、支持体23に沿って流れて、エアーノズル4から噴射される気流に吸込まれる周辺空気の流れを円滑化することができるので、液体ノズル8の吐出口43に作用する負圧を大きくして、より大量の液体を液体ノズル8から吸い上げることが可能となり、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0033】
液体ノズル8の筒端壁48の最下流側に位置する筒端縁55がエッジ状に形成されていると、筒端壁55のエッジ56により液体の液切れを良好にし、筒端壁48に液体溜まりや液垂れが発生することを防ぐことができる。これにて、気流の負圧により液体ノズル8から吸い上げられた液体をより効率的にミスト化することができるので、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0034】
エアーノズル4に向けて高圧気体を供給するポンプ5をオン・オフ操作するためのスイッチ7のオン操作に連動して、負圧防止バルブ60が開操作されるように構成することができる。これによれば、スイッチ7のオン操作に連動して負圧防止バルブ60が強制的に開操作されるため、ポンプ5がオン操作されたときに、常に容器3内を大気圧と同圧状態にすることができる。従って、容器3内が負圧状態となることに起因して液体ノズル8から吐出される液体の吐出量が減少し、ミスト量が減少する問題を解消できる。特に、粘性がある液体が容器3内に収容されている場合には、負圧状態にある容器3内から液体を吸い上げることは困難であるが、本願発明のように、スイッチ7のオン操作に連動して負圧防止バルブ60が強制的に開操作されるようになっていると、粘性のある液体であっても確実に液体ノズル8から液体を吸い上げて、これをミスト化することができる。また、スイッチ7がオフ操作されると、負圧防止バルブ60は閉操作されるため、不使用時に噴霧器が転倒した場合でも液体ノズル8から液体が零れ出すことは無い。
【0035】
エアーノズル4から噴射された気体を液体ノズル8の吐出口43に案内するためのガイド部80が設けられていると、ガイド部80を介してエアーノズル4から噴射された気体を液体ノズル8内に流入させることができる。これにて、エアーノズル4から噴射された気体により液体ノズル8内をクリーニングすることができるため、液詰りに起因する液体ノズル8からの液体の吸い上げ不良の発生を確実に防止することができ、従って、噴霧器の動作不良の発生を抑えて、噴霧器の信頼性向上に貢献できる。粘度の高い液体であっても、液詰りの発生を確実に防止できる点でも優れている。
【0036】
不使用時においてエアーノズル4および液体ノズル8を覆うキャップ2を備え、キャップ2にガイド部80が設けられている形態を採ることができる。これによれば、不使用時にキャップ2をエアーノズル4等に被せた状態で、スイッチ7をオン操作するだけの簡単な操作で、ガイド部80を介してエアーノズル4から噴射された気体を液体ノズル8内に流入させて、液体ノズル8内をクリーニングすることができる。
【0037】
ガイド部80に、液体ノズル8の吐出口43の下流側内壁面51に合致する突起84が設けられていると、該突起84を下流側内壁面51に当接させることで、ガイド部80の姿勢および位置を安定化させることができる。これにて、ガイド部80を適正位置に安定的に姿勢保持しながら、クリーニングを行うことができるので、より効率的且つ確実に短時間でクリーニング作業を行うことができる。
【0038】
突起84の上流側の壁面が、幅方向の中央部が下流側に凹む湾曲面に形成されていると、この湾曲面をガイド部として、エアーノズル4から噴射された気体を液体ノズル8内に送り込み、液体ノズル8に対するクリーニング作業を行うことができる。湾曲面を介して、より効率的に大量の気体を液体ノズル内に送り込むことができるので、確実にクリーニング作業を実行できる利点もある。
【0039】
キャップ2が、エアーノズル4および液体ノズル8を覆う不使用姿勢と、エアーノズル4および液体ノズル8を装置外面に露出させる使用姿勢との間で姿勢変位可能に構成されており、キャップ2の不使用姿勢と使用姿勢との間の姿勢変位操作時に、負圧防止バルブ60が開操作されるように構成されている形態を採ることができる。これによれば、キャップ2を姿勢変位操作するたびに、負圧防止バルブ60を強制的に開操作して、容器3内の圧力を大気圧と同圧状態にすることができるので、容器3内が負圧状態に陥ることに起因する液体の吐出不良を確実に解消することができる。負圧防止バルブ60を開操作するための特別の操作を要することなく、容器3内を大気圧と同圧状態とすることができる点でも優れている。また、キャップ2を不使用姿勢とすると、負圧防止バルブ60は閉操作されるため、不使用時に噴霧器が転倒した場合でも液体ノズル8から液体が零れ出すことは無い。
【0040】
ポンプ5から容器3内に至る連通路110が設けられており、連通路110を介してポンプ5から容器3に向けて気体が送入されるように構成することができる。これによれば、ポンプ5を作動させるたびに、連通路110を介して容器3内に気体を送りこむことができるので、容器3内が負圧状態に陥ることに起因する液体の吐出不良を確実に解消することができる。
【0041】
液体ノズル8のノズル孔26が、吐出口43の側から順に、中心軸(d2)方向における内形寸法が均一なストレート部26aと、吐出口43から離れるに従って中心軸(d2)方向における内形寸法が大きくなるテーパー部26bとを備え、中心軸(d2)方向におけるテーパー部26bの長さ寸法がストレート部26aの長さ寸法よりも大きく設定されている形態を採ることができる。これによれば、長く形成されたテーパー部26bで液体を絞ることができるので、液体の吸い上げ速度を向上させて、より効率的に液体を吸い上げてミスト化できる。吐出口43の側から順にストレート部26a、次いでテーパー部26bが形成されているため、例えば、ストレート部26aで液体が固化し、液詰まりが発生した場合でも、該ストレート部26aから固形物をテーパー部26bに落下させるだけの簡単な作業で、液詰まりを解消することができ、液体ノズル8のクリーニング作業が容易である点でも優れている。
【0042】
吐出口43の下流側平坦面48bの前後幅Bを、吐出口43の下流側内壁面51の前後幅Cより小さく設定すると、下流側平坦面48bの前後幅をできるだけ小さくして、下流側平坦面48bに付着するミスト量を減らすことができる。従って、下流側平坦面48bと下流側外壁面49の隣接縁における液だれを抑止することができる。
【0043】
吐出口43の下流側平坦面48bの前後幅Bを、吐出口43の下流側外壁面49の前後幅Aより大きく設定し、吐出口43の下流側内壁面51の前後幅Cより小さく設定すると、下流側外壁面49を設けた分だけ下流側平坦面48bの前後幅Bをさらに小さくすることができる。従って、下流側平坦面48bと下流側外壁面49の隣接縁における液だれをさらに確実に抑止できる。
【0044】
吐出口43の上流側平坦面48aの前後幅Eを、下流側平坦面48bの前後幅Bと同じか、これより大きく設定すると、下流側平坦面48bにおける液だれを抑止することができる。これは、エアーノズル4から噴出された気流を上流側平坦面48aで案内して、下流側平坦面48bに付着したミストを吹飛ばすことができるからである。また、上流側平坦面48aの前後幅Eが大きいほど、下流側平坦面48bに付着したミストをさらに確実に吹飛ばすことができる。
【0045】
ノズル孔26のテーパー部26bに、液体Lの流動を妨げる段部28を形成すると、テーパー部26bに沿って流動する液体Lを段部28でせき止めて、その運動慣性力を低下させ、流動速度を低下できる。従って、ポンプ5を起動した直後に、液体Lないし液滴が吐出口43から斜め前方へ勢いよく噴出するのを抑止して、噴出初期の異常吹出しを効果的に軽減できる。
【0046】
また、吸い上げ管19の下端の入口から吐出口43との間の吸い上げ通路内に、液体Lの流動を妨げるせき止め枠111を配置すると、上記の段部28と同様に、吸い上げ通路を通る液体Lをせき止め枠111でせき止めて、その運動慣性力を低下させ、流動速度を低下できる。従って、ポンプ5を起動した直後に、液体Lないし液滴が吐出口43から斜め前方へ勢いよく噴出するのを抑止して、噴出初期の異常吹出しを効果的に軽減できる。段部28に加えてせき止め枠111を設ける場合には、吸い上げ通路を通る液体Lの勢いをさらに確実に削いで、噴出初期の異常吹出しをさらに効果的に抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る噴霧器の要部の縦断側面図である。
【図2】噴霧器の側面図である。
【図3】噴霧器の縦断側面図である。
【図4】噴霧器の要部の縦断側面図である。
【図5】噴霧器の平面図である。
【図6】噴霧器の要部の正面図である。
【図7】図6におけるV−V線断面図である。
【図8】液体ノズルの吐出口を示す縦断側面図である。
【図9】負圧防止バルブおよびスイッチを説明するための図である。
【図10】ガイド部による気体の流入動作を説明するための縦断側面図である。
【図11】ガイド部を示す平面図であり、図10のW−W線断面図である。
【図12】図1のX−X線断面図である。
【図13】液体ノズルの吐出口の別実施形態を示す縦断側面図である。
【図14】液体ノズルの吐出口の別実施形態を示す縦断側面図である。
【図15】液体ノズルの吐出口の別実施形態を示す縦断側面図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る噴霧器を示す要部の縦断側面図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係る噴霧器を示す要部の側面図である。
【図18】図17のY−Y線断面図である。
【図19】本発明の第4実施形態に係る噴霧器を示す要部の縦断側面図である。
【図20】本発明の第5実施形態に係る噴霧器を示す要部の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(第1実施形態)
図1ないし図12に、本発明の第1実施形態に係る噴霧器を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図1、図2、および図5に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0049】
図2および図3に示すように、噴霧器は、グリップ部を兼ねる本体ケース1と、本体ケース1の上部に装着されたキャップ2とを備えている。本体ケース1の内部には、液体Lが収容されるタンク(容器)3と、エアーノズル4に向けて高圧空気を供給するポンプ(エアーポンプ)5と、ポンプ5の駆動電源となる電池6とが収容され、本体ケース1の右側面にポンプ5をオン・オフ操作するためのスイッチ7が配置されている。スイッチ7は、上方のオン位置と、下方のオフ位置との間でスライド移動可能に構成されており、下方のオフ位置から上方のオン位置にスイッチをスライド移動させることで、ポンプ5をオン操作することができる。図3および図4において、符号7aは、スイッチ7の上下方向のスライド操作に伴って、上下動されるスイッチ接点を示す。
【0050】
本体ケース1の前上肩部には、エアーノズル4と液体ノズル8とが配置されており、キャップ2は、エアーノズル4および液体ノズル8の先端を覆ってエアーノズル4等を保護する不使用姿勢(図3参照)と、エアーノズル4および液体ノズル8の先端を装置外面に露出させる使用姿勢(図1および図2参照)との間で、本体ケース1の上部に設けられたヒンジ軸10まわりに揺動可能に構成されている。本体ケース1は、上側後方が上方に突出して、前方上側に欠損部11を有する略四角容器状に形成されており、上述のようにキャップ2を不使用姿勢としたとき、欠損部11がキャップ2で覆われて、全体が直方形状となるように構成されている(図3参照)。以上のような噴霧器においては、キャップ2を使用姿勢としたうえで、スイッチ7をオン操作してポンプ5を作動させると、エアーノズル4から吹き出される気流により生じる負圧により、液体ノズル8を介してタンク3内の液体Lが吸い上げられ、エアーノズル4の前方の噴射域に液体がミスト化して噴射される。
【0051】
図3および図4に示すように、本体ケース1の内部は、区分壁12により、タンク3が収容される前室1aと、ポンプ5および電池6が収容される後室1bとに区分されている。前室1aを区画する本体ケース1の底壁には底部開口13が設けられており、この底部開口13を介して本体ケース1内にタンク3を装脱着することができる。図3において符号14は、底部開口13を封止するカバーを示す。カバー14は、本体ケース1に対して取り外し可能に構成されている。カバー14の上面には、前室1a内に収容されたタンク3を下支えするための緩衝材15が装着されている。
【0052】
図3および図4に示すように、タンク3は、上下方向に長い有底容器状のタンク本体17と、タンク本体17の上壁から上方に向かって突設された連出筒18とを備え、上端がハット形に形成されたプラスチック成形品である。連出筒18の上端には、液体ノズル8に連通された吸い上げ管19の挿入を許す上方開口20が開設されており、この上方開口20を介してタンク本体17内に挿入された吸い上げ管19を通って、タンク3内の液体Lが液体ノズル8に吸い上げられる。
【0053】
図3および図4に示すように、本体ケース1の欠損部11には、エアーノズル4と液体ノズル8の両ノズルを備えるプラスチック製の噴霧部21が装着されている。図5および図6に示すように、噴霧部21は、平面視で円状のベース部22と、ベース部22の上面から上方に伸びる液体ノズル8を有する支持体23と、支持体23の上端に設けられたエアーノズル4とで構成され、図3および図4に示すように、本体ケース1の前室1aに開設された円状の上方開口を塞ぐように装着される。
【0054】
図4に示すように、噴霧部21のベース部22の下面には、タンク本体17を受け入れて、これを遊動不能に支持する第1支持凹部24と、連出筒18を受け入れて、これを遊動不能に支持する第2支持凹部25の二つの凹部が上凹み状に形成されている。第2支持凹部25は液体ノズル8のノズル孔26に連通しており、該第2支持凹部25の上端には無底円筒状のガスケット27が装着され、該ガスケット27の筒内部に吸い上げ管19が装着されている。ガスケット27は、連出筒18の上方開口20からの液漏れを防止する目的で装着される。
【0055】
噴霧部21は、第2支持凹部25にガスケット27と吸い上げ管19とを装着し、ユニット部品化した状態で本体ケース1に組み付けられる。詳しくは、図3および図5に示すように、噴霧部21の第1支持凹部24を区画するベース部22の側壁には、前後一対の係合凹部29・29が形成されており、本体ケース1の前室1aを区画する前壁、左右の側壁、および区分壁12のそれぞれの内面には、これら係合凹部29・29に対応する前後一対の係合リブ30・30が突設されている。以上より、予め噴霧部21にガスケット27と吸い上げ管19とを装着してユニット部品化したうえで、係合凹部29・29を係合リブ30・30に係合させることにより、本体ケース1の前室1aの上方開口を塞ぐように、ユニット部品化された噴霧部21を固定することができる。
【0056】
図3および図4に示すように、エアーノズル4は、区分壁12の上端近傍に設けられた通孔12aを介して、本体ケース1の後室1b内に進入している。エアーノズル4の筒外壁31にはゴム製の連結管32が外嵌装着されており、この連結管32を介して、ポンプ5から噴射された気体がエアーノズル4内に導入される。図4および図5に示すように、エアーノズル4の筒外壁31には、連結管の外嵌装着を許す小径部33と、該小径部33よりも大きな外径寸法を有する大径部34とが設けられており、小径部33と大径部34との間に設けられた規制面35により、連結管32の前方への装着限界が規制されている。
【0057】
図1に示すように、エアーノズル4は、連結管32を介してポンプ5に連通するエアー通孔37を備えており、ポンプ5から送られてきた圧縮空気を、エアー通孔37の前端部に設けられた噴射口40より、前方の噴射域に向けて噴射する。図1および図5に示すように、エアーノズル4の先端の筒外壁31は、その外形寸法が下流方向(前方向)に行くに従って径寸法が小さくなる先窄まり状に形成されている。すなわち、本体ケース1の欠損部11において装置外面に露出するエアーノズル4の筒外壁31の大径部34は、前窄まり状に形成されている。
【0058】
図1、図4および図5に示すように、エアー通孔37は、ポンプ5側(上流側)に設けられて、下流側に行くに従って漸次内径寸法が小さくなるテーパー部38と、テーパー部38の下流端に連通されて、内径寸法が均一なストレート部39とで構成され、ストレート部39の下流端に噴射口40が開設されている。ポンプ5からエアー通孔37内に送られてきた圧縮空気は、テーパー部38によって絞られた後に、ストレート部39を通り、噴射口40より前方に向かって噴射される。
【0059】
図7に示すように、エアーノズル4を支持する支持体23の外形は、平面視において前方向に行くに従って漸次左右の幅寸法が小さくなる前窄まりのテーパー状に形成されている。また、図6に示すように、支持体23は、その外形寸法が上方に行くに従って径寸法が小さくなる上窄まり状に形成されている。すなわち、支持体23は、正面視において上方に行くに従って漸次左右の幅寸法が小さくなる上窄まり状に形成されている。本実施形態においては、支持体23の左右両側面を湾曲面とした。
【0060】
図7に示すように、液体ノズル8は支持体23の前端部に設けられている。より詳しくは、図6に示すように、支持体23の前端部には円筒部42が突設されており、これら支持体23および円筒部42に、吸い上げ管19に連通するノズル孔26を通設して液体ノズル8を形成した。図1乃至図4に示すように、ノズル孔26の上端に開設された吐出口43は、エアーノズル4から吹き出される気流を直接的に受けることができるように、エアーノズル4の噴射口40の前側(下流側)に近接配置されている。加えて、図8に示すように、液体ノズル8の吐出口43は、エアーノズル4の噴射口40の上端縁40aおよび下端縁40bと、エアーノズル4の中心軸の伸び方向(d3)とで規定される、上下方向における気体の噴射領域45内に配置されている。
【0061】
図1および図8において、符号46は、液体ノズル8の先端を区画する上流側外壁面を、符号47は、エアーノズル4の噴射口40の下端縁40bから延びる下凹み状の湾曲面を示す。上流側外壁面46は、液体ノズル8の筒端壁48の上流縁から斜め下後方に延びて、湾曲面47の前端(上流端)に連続している。図1に示すように、上流側外壁面46の伸び方向(d1)と液体ノズル8の中心軸(d2)とで規定される上流側外壁面46の傾斜角度(θ1)は、上流側外壁面46の伸び方向(d1)とエアーノズル4の中心軸(d3)とで規定される角度(θ2)以上に設定されている(θ1≧θ2)。符号49は、筒端壁48の下流縁に連続して傾斜する下流側外壁面である。
【0062】
図1および図8に示すように、液体ノズル8の吐出口43は、上方向に行くに従って開口寸法が大きくなる上拡がり状に形成されている。吐出口43の後方側に位置する上流側内壁面50の傾斜角度(θ3)と、吐出口43の前方側に位置する下流側内壁面51の傾斜角度(θ4)とは異なる角度に設定されている。より詳しくは、水平方向(d4)と上流側内壁面50の伸び方向(d5)とで規定される上流側内壁面50の傾斜角度(θ3)は、水平方向(d4)と下流側内壁面51の伸び方向(d6)とで規定される下流側内壁面51の傾斜角度(θ4)よりも大きく設定されている(θ3>θ4)。上記のように、上流側内壁面50と下流側内壁面51の傾斜角度を異ならせることにより、吐出口43の上端開口縁の形状はいびつな円形となる(図5参照)。
【0063】
図1に示すように、液体ノズル8を構成するノズル孔26は、吐出口43の側から順に(上方から順に)、上下方向における内径寸法が均一なストレート部26aと、上下方向における内径寸法が下方に行くに従って大きくなるテーパー部26bとを備える。気流の負圧により、吸い上げ管19を介してタンク3から吸い上げられた液体Lは、ノズル孔26のテーパー部26b、次いでストレート部26aを通って、吐出口43より吐出される。上下方向におけるテーパー部26bの長さ寸法(D2)は、ストレート部26aの長さ寸法(D1)よりも大きく設定されている(D2>D1)。
【0064】
テーパー部26bを通過する液体Lの流れに抵抗を与えるために、テーパー部26bを不連続の3個のテーパー面で形成して、各テーパー面の隣接部分に段部28を形成している(図1参照)。このように、テーパー部26bの中途部に段部28を設けて、テーパー部26bにおける液体Lの流動を妨げると、ポンプ5を起動した直後に、液体Lないし液滴が吐出口43から斜め前方へ噴出す、噴出初期の異常吹出しを効果的に抑止できる。これは、テーパー面に沿って流動する液体Lを段部28でせき止めて、その運動慣性力を低下させ、流動速度を低下することにより、噴出初期に液体Lないし液滴が吐出口43から勢いよく飛出るのを妨げることができるからである。
【0065】
同様に、吸い上げ管19を通る液体Lの流動を妨げるために、吸い上げ管19の上端内面にせき止め枠111を設けている。図12に示すように、せき止め枠111は吸い上げ管19の内部を二等分する状態で設けてあり、管内面に沿って吸い上げられた液体Lをせき止めて、その運動慣性力を低下させ、テーパー部26bに流入する液体Lの勢いを削ぐ。この実施形態におけるせき止め枠111は吸い上げ管19と一体に形成したが、独立した部品として形成して、吸い上げ管19に組み込むことができる。また、せき止め枠111は、吸い上げ管19の下端の入口から吐出口43との間の吸い上げ通路内であれば、任意の位置に設けることができ、例えばノズル孔26の内部に設けてあってもよい。さらに、せき止め枠111は十字枠状、放射枠状、同心円枠状などに形成してあってもよい。
【0066】
図1に示すように、液体ノズル8の中心軸(d2)は、本体1の軸線方向、すなわち上下方向(鉛直方向)と完全に一致している。一方、エアーノズル4の中心軸(d3)は、前後の水平方向よりも僅かに斜め前上方に向かって指向している。すなわち、液体ノズル8の中心軸(d2)とエアーノズル4の中心軸(d3)とで規定される角度(θ5)は、90度未満に設定されている。
【0067】
以上のような構成からなる噴霧器においては、不使用姿勢にあるキャップ2をヒンジ軸10まわりに回転させて使用姿勢としたうえで、本体ケース1の外面に露出するスイッチ7を下方のオフ位置から上方のオン位置に手動で移動させると、ポンプ5が駆動されて、エアーノズル4の噴射口40から気体が前方に向かって噴射される。噴射口40から前方に向かって噴射された気体のうち、液体ノズル8の吐出口43よりも上方に噴射された気体は、液体ノズル8および上流側外壁面46に接触することなく、該吐出口43の上方を通って液体ノズル8の前方の噴射域に噴射される。一方、液体ノズル8の吐出口43よりも下方に噴射された気体は、上流側外壁面46により前斜め上方に変向されて、吐出口43の上方を通って噴射域に噴射される。以上のように、本実施形態に係る噴霧器によれば、液体ノズル8の吐出口43よりも下方に噴射された気体であっても、これを上流側外壁面46で変向して吐出口43の上方に案内することができるので、より多くの気体を吐出口43の上方に案内して噴射域に噴射することができる。これにて、より大きな負圧を液体ノズル8に与えることができるので、タンク3からより大量の液体を吸い上げてミスト化することができる。
【0068】
また、上流側外壁面46の伸び方向(d1)と液体ノズル8の中心軸(d2)とで規定される上流側外壁面46の傾斜角度(θ1)を、上流側外壁面46の伸び方向(d1)とエアーノズル4の中心軸(d3)とで規定される角度(θ2)以上に設定したので、エアーノズル4から噴射されて液体ノズル8側に流れる気流の変向を滑らかなものとして、液体ノズル8の吐出口43上を通過する気体の流れを円滑化することができる。これによっても、より多くの気体を液体ノズル8の吐出口43上を通過させて、液体ノズル8内に作用する負圧を大きくすることができるので、タンク3から多量の液体を吸い上げて、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0069】
液体ノズル8の中心軸(d2)とエアーノズル4の中心軸(d3)とで規定される角度(θ5)が、90度未満に設定されていると、エアーノズル4から斜め上方に向けて気体を噴射することができる。すなわち、液体ノズル8の中心軸(d2)が鉛直方向と一致すると仮定したとき、エアーノズル4を水平方向よりも斜め上方に指向する状態に配置して、エアーノズル4の噴射口40から気体を斜め上方に向かって噴射させることができる。これにより、斜め下方へのミストの飛散を抑えることができるので、大量のミストをより遠くまで噴射することが可能となる。液体ノズル8の下流側筒端縁55にミストが付着し難く、液垂れを防止できる利点もある。
【0070】
図8に示すように、水平方向(d4)と吐出口43の上流側内壁面50の伸び方向(d5)とで規定される上流側内壁面50の傾斜角度(θ3)を、水平方向(d4)と吐出口43の下流側内壁面51の伸び方向(d6)とで規定される下流側内壁面51の傾斜角度(θ4)よりも大きくなるように設定したので(θ3>θ4)、下流側内壁面51に当る気流の変向を滑らかなものとして、液体ノズル8の吐出口43上を通過する気体の流れを円滑化して液体ノズル8内に作用する負圧を大きくすることができる。従って、この点でも液体ノズル8内から多量の液体を吸い上げて、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0071】
図1に示すように、エアーノズル4を構成する筒外壁31の大径部34が、その外形寸法が下流方向に行くに従って径寸法が小さくなる先窄まり状に形成されていると、筒外壁31に沿って流れて、エアーノズル4からの気流により生じる負圧により該気流に吸込まれる周辺空気の流れを円滑化することができる。これにて、エアーノズル4から噴射された気流の流速の低下を抑えることができるので、液体ノズル8の吐出口43に作用する負圧を大きくして、より大量の液体を液体ノズル8から吸い上げることができる。従って、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0072】
同様に、図6に示すように、エアーノズル4を支持する支持体23が、その外形寸法が上方に行くに従って径寸法が小さくなる先窄まり状に形成されていると、支持体23に沿って流れて、エアーノズル4から噴射される気流に吸込まれる周辺空気の流れを円滑化することができる。以上より、液体ノズル8の吐出口43に作用する負圧を大きくして、より大量の液体を液体ノズル8から吸い上げることができるので、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0073】
同様に、図7に示すように、エアーノズル4を支持する支持体23が、平面視において前方向に行くに従って漸次左右の幅寸法が小さくなる前窄まりのテーパー状に形成されていると、換言すれば、支持体23の外形寸法が下流方向に行くに従って外形寸法が小さくなる先窄まり状に形成されていると、支持体23に沿って流れて、エアーノズル4から噴射される気流に吸込まれる周辺空気の流れを円滑化することができる。以上より、液体ノズル8の吐出口43に作用する負圧を大きくして、より大量の液体を液体ノズル8から吸い上げることができるので、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0074】
図8に示すように、液体ノズル8の筒端壁48の最下流側に位置する筒端縁55にエッジ56が形成されていると、当該エッジ56により液体の液切れを良好にし、筒端壁48上に液体溜まりや液垂れが発生することを防ぐことができる。これにて、気流の負圧により液体ノズル8から吸い上げられた液体をより効率的にミスト化することができるので、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0075】
また、本実施形態においては、図1に示すように、液体ノズル8のノズル孔26を、吐出口43の側から順に、中心軸(d2)方向における内形寸法が均一なストレート部26aと、吐出口43から離れるに従って中心軸(d2)方向における内形寸法が大きくなるテーパー部26bとを備えるものとし、中心軸(d2)方向におけるテーパー部26bの長さ寸法(D2)をストレート部26aの長さ寸法(D1)よりも大きく設定した。これによれば、テーパー部26bで液体Lを絞って、液体Lの吸い上げ速度の向上を図ることができるので、より効率的に液体Lをタンク3から吸い上げてミスト化できる。吐出口43の側から順にストレート部26a、次いでテーパー部26bを形成したので、例えば、ストレート部26aで液体Lが固化し、液詰まりが発生した場合でも、該ストレート部26aから固形物をテーパー部26bに落下させるだけの簡単な作業で、液詰まりを解消することができ、液体ノズル8のクリーニング作業を簡単確実に進めることができる利点もある。
【0076】
図8において、吐出口43の周辺の各部の前後方向の幅寸法を符号A〜Eで示している。符号Aは、先に説明した下流側外壁面49の前後幅である。また、符号Bは、筒端壁48の下流側平坦面48bの前後幅、符号Cは下流側内壁面51の前後幅である。さらに符号Dは、上流側内壁面50の前後幅、符号Eは筒端壁48の上流側平坦面48aの前後幅である。符号Fは、ノズル孔26のストレート部26aの直径寸法、符号Gは、エアー通孔37のストレート部39の直径寸法である。上流側外壁面46および上流側内壁面50と上流側平坦面48aとは、いずれも鈍角状のエッジを介して隣接している。また、下流側外壁面49および下流側内壁面51と下流側平坦面48bとは、いずれも鈍角状のエッジを介して隣接している。
【0077】
各部の前後方向の幅寸法A〜Gは、以下のように設定してある。下流側平坦面48bの前後幅Bは、下流側外壁面49の前後幅Aより大きい(A<B)。下流側内壁面51の前後幅Cは、下流側平坦面48bの前後幅Bより大きく(B<C)、上流側内壁面50の前後幅Dより大きい(D<C)。上流側内壁面50の前後幅Dと、上流側平坦面48aの前後幅Eは等しく(D=E)、上流側平坦面48aの前後幅Eは、下流側平坦面48bの前後幅Bと同じか、下流側平坦面48bの前後幅Bより大きく設定する(B=<E)。エアー通孔37のストレート部39の直径寸法Gは、下流側内壁面51の前後幅Cより大きく(C<G)、ノズル孔26のストレート部26aの直径寸法Fより小さい(G<F)。以上を整理すると(A<B=<D=E<C<G<F)となる。
【0078】
下流側内壁面51の前後幅Cを、下流側平坦面48bの前後幅Bより大きくすると(B<C)、下流側平坦面48bの前後幅をできるだけ小さくして、下流側平坦面48bに付着するミスト量を減らすことができる。従って、下流側平坦面48bと下流側外壁面49の隣接縁における液だれを抑止できる。また、下流側外壁面49を設けてその前後幅Aの分だけ下流側平坦面48bの前後幅Bを小さくすることにより、下流側平坦面48bと下流側外壁面49の隣接縁における液だれをさらに確実に抑止できる。
【0079】
エアーノズル4から噴出された気流は、平坦な上流側平坦面48aに案内されて吐出口43を前方へ縦断し、その間に液体Lをミスト化して前方へ吹飛ばす。また、ミストを含む気流は下流側平坦面48bで案内されたのち、吐出口43の前方の空間へと放出される。このとき、エアーノズル4から噴出された気流を上流側平坦面48aで案内して、下流側平坦面48bに付着したミストを確実に吹飛ばすために、上流側平坦面48aの前後幅Eを、下流側平坦面48bの前後幅Bと同じか、下流側平坦面48bの前後幅Bより大きく設定している(B=<E)。
【0080】
加えて、この種の噴霧器においては、噴霧動作に伴ってタンク3内の液体Lが吸い上げられると、タンク3内は負圧状態、すなわちタンク3内の圧力は大気圧よりも低い圧力状態となる。一方、タンク3内が極度の負圧状態に陥ると、エアーノズル4からの気流により生じる負圧により効率的に液体Lを液体ノズル8の吐出口43に吸い上げることが困難となり、噴射されるミスト量が低下することが避けられない。かかる不具合の発生を防ぐため、本実施形態に係る噴霧器では、タンク3に負圧防止バルブ60を設けるとともに、スイッチ7と負圧防止バルブ60との間にバルブ作動機構61を設けて、スイッチ7を作動させるたびに、タンク3内を大気圧状態に維持することができるようにしている(図2乃至図4、および図9参照)。
【0081】
図9に示すように、かかる負圧防止バルブ60は、無底円筒状のボディ62と、ボディ62の上方開口に装着された上蓋63と、ボディ62の下方開口に装着された下蓋64と、ボディ62内で上下動可能に構成されて、バネ65により上方に押し上げ付勢されているステム66と、下蓋64の開口から下方に突出するステム66の下端に装着された弁体67と、弁体67の上面に装着されたパッキン68とで構成されており、タンク本体17の上方肩部に装着されている。上蓋63には、本体ケース1の内部とボディ62内とを連通する第1連通孔69が開設されており、下蓋64には、ボディ62内とタンク3内とを連通する第2連通孔70が開設されている。ステム66は、バネ65の付勢力を受けて上方に移動し、弁体67により第2連通孔70を閉じる閉姿勢と、バネ65の付勢力に抗して下方に移動し、弁体67が第2連通孔70を開く開姿勢の間で、上下方向に移動可能に構成されている。ステム66の上下方向の中央部には、バネ65の上端を受け止めるバネ受壁71が突設されており、該バネ受壁71の下面と下蓋64の上面との間に配された捩りコイル形のバネ65により、常態においてステム66は閉姿勢に向かって上方に押し上げ付勢されている。符号72は、上蓋63の開口から下方に突出するステム66の上端に装着されて、バルブ作動機構61の作動力を受け止める受動片を示す。
【0082】
バルブ作動機構61はアーム機構であり、スイッチ7に連結されて、該スイッチ7の下方のオフ位置(図3参照)と上方のオン位置(図4、図9参照)との間の上下操作に伴って上下動される操作体75と、本体ケース1の区分壁12に設けられた揺動軸76まわりに揺動自在に装着されたアーム77とで構成される。アーム77は、揺動軸76よりも後方に伸びる受動アーム77aと、揺動軸76よりも前方に伸びる作動アーム77bとで構成され、区分壁12に開設された通孔12bを介して、前室1aと後室1bに跨るように装着されている。受動アーム77aの後端には、長円状の連結孔78が開設されており、この連結孔78に挿通されたピン79により、アーム77の後端と、操作体75の上端とは揺動可能に連結されている。なお、連結孔78を長円状としたのは、該連結孔78内でピン79が遊動できるようにするためであり、これにて、操作体75の上下動に伴うピン79と揺動軸76との間の間隔寸法を吸収することができる。
【0083】
以上のような構成からなる噴霧器においては、スイッチ7の下方のオフ位置からオン位置への移動操作に伴って操作体75が上方に移動操作されると、アーム77が揺動軸76まわりに反時計方向に回転する。これにて、下方に移動する作動アーム77bの先端により、ステム66がバネ65の付勢力に抗して上方の閉姿勢から開姿勢に向かって押し下げられ、弁体67による第2連通孔70の閉止状態が解除される(図9参照)。以上のように、本実施形態に係る噴霧器においては、スイッチ7が上方のオン位置にあるときには、弁体67による第2連通孔70の閉止状態が解除されて、タンク3の周辺の空気がタンク3内に流入するので、タンク3内が負圧状態に陥ることは無く、常にタンク3内を大気圧状態に維持することができる。なお、スイッチ7が下方のオフ位置に移動されると、弁体67により第2連通孔70が閉じられるため、不用意にタンク3内の液体が漏れ出すことは無い。
【0084】
加えて、本実施形態に係る噴霧器においては、エアーノズル4から噴射された気流を吐出口43の方向にガイドして、液体ノズル8のノズル孔26に対するクリーニング動作を実行するためのガイド部80を備えている。詳しくは、図3および図10に示すように、キャップ2の上壁2aの内面には、前斜め下方に指向する傾斜壁81が突設されており、この傾斜壁81の後面(上流側面)に、ガイド部80が突設されている。ガイド部80の後面(上流側面)には、エアーノズル4の噴射口40から略水平方向に噴射された気流を下方向に変向させて、液体ノズル8の吐出口43に案内するためのガイド面82が形成されている。なお、図3および図10において、符号83は、キャップ2の上壁2aの内面から突設されて、傾斜壁81を前方側から支持する支持壁を示す。
【0085】
図11に示すように、ガイド部80の左右両端部80a・80aは、左右中央部80bよりも後方側(上流側)に突出されており、従って、ガイド面82は、左右中央部80bが前方側(下流側)に凹んだ部分球面状を呈している。また、図10に示すように、ガイド面82の左右中央部80bの伸び方向で規定されるガイド面82の傾斜角度は、前方斜め下方とされており、ガイド面82に当った気流は下方に向かって流れるように構成されている。加えて、図11に示すように、後方側に突出するガイド部80の左右両端部80a・80aの対向内面で規定される、ガイド面82の左右方向の幅寸法は、吐出口43の開口寸法よりも僅かに小さく設定されており、図10に示すように、キャップ2を閉姿勢としたとき、ガイド部80の後方側(上流側)の下端は、吐出口43の内部に進入するように構成されている。
【0086】
ガイド部80の前方側(下流側)には、突起84が設けられている。この突起84の外面形状は、吐出口43の下流側内壁面51の内面形状に合致するものとされている。すなわち、突起84の外面の傾斜角度は、吐出口43の下流側内壁面51の傾斜角度(θ4:図8参照)に合致するものとされている。これにて、キャップ2を閉姿勢としたとき、突起84の外面が吐出口43の下流側内壁面51に面接触することで、ガイド部80の不用意な揺動を防止することができるので、ガイド部80を適正位置に保持しながら、安定的にクリーニング動作を進めることが可能となる。
【0087】
以上より、キャップ2を不使用姿勢(図3参照)としたうえで、スイッチ7をオン操作してポンプ5を作動させると、エアーノズル4から噴射された気流は、ガイド面82により下方向に変向されて、液体ノズル8の吐出口43内に案内される。これにて、液体ノズル8のノズル孔26内に塵埃が溜まっている場合にも、これを気流の風力によりタンク3内に落下させて、液体ノズル8をクリーニングすることができる。また、タンク3内の液体Lが粘着性の高い液体であり、これがノズル孔26内に付着して留まっている場合でも、気流の風力により液体Lをタンク3内に落下させて、液体ノズル8をクリーニングすることができる。
【0088】
(第2実施形態)
図13に本発明の第2実施形態を示す。そこでは、吐出口43の下流側内壁面51の上端縁にエッジ85を形成した点が、先の第1実施形態と相違する。より具体的には、液体ノズル8の円筒部42の下流側筒端縁55に係る上端コーナー部を切り欠いて、吐出口43の下流側内壁面51の上端縁にエッジ85を形成している。ノズル孔26のストレート部26aの開口周縁と下流側内壁面51の上端縁とで規定される、下流側内壁面51の前後方向の幅寸法(W1)と、下流側内壁面51の上端縁と円筒部42の前端縁とで規定される切り欠きの前後方向の幅寸法(W2)とは、同一寸法に設定されている。それ以外の点は、先の第1実施形態と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0089】
このように、吐出口43の下流側内壁面51の上端縁にエッジ85を形成していると、当該エッジ85により液体の液切れを良好にすることができる。加えて、吐出口43の下流側には筒端壁48は存在せず、従って、筒端壁48上に液体溜まりや液垂れが発生することを防ぐことができる。これにて、気流の負圧により液体ノズル8から吸い上げられた液体をより効率的にミスト化することができるので、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0090】
(第3実施形態)
図14に本発明の第3実施形態を示す。この第3実施形態においては、ノズル孔26のストレート部26aの開口周縁と下流側内壁面51の上端縁とで規定される、下流側内壁面51の前後方向の幅寸法(W1)を、下流側内壁面51の上端縁と円筒部42の前端縁とで規定される切り欠きの前後方向の幅寸法(W2)よりも大きくした点が、先の第2実施形態と相違する。それ以外の点は、先の第2実施形態と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
本第3実施形態によれば、第2実施形態に比べて、下流側内壁面51の傾斜角度を緩やかなものとすることができるので、エアーノズル4の噴射口40から噴射される気流の下流側内壁面51による変向をより滑らかなものとすることができる。以上より、液体ノズル8の吐出口43上を通過する気体の流れを円滑化して液体ノズル8内に作用する負圧を大きくすることができるので、液体ノズル8内から多量の液体を吸い上げて、気流の噴射域に噴射されるミスト量を増やすことができる。
【0092】
(第4実施形態)
図15に本発明の第4実施形態を示す。この第4実施形態においては、筒端壁48の下流側上部に、気流をより斜め上方に変向させるためのガイド部86を突設した点が、先の第1実施形態と相違する。より具体的には、筒端壁48の下流側上部の左右両縁部にガイド部86を突設している。図15において、W3は、ガイド部86の筒端壁48からの上方への突出寸法を示す。ガイド部86の最上部には、エッジ85が形成されている。このように、ガイド部86を形成していると、水切りが良くなり、細かいミストを生成することができる。
【0093】
(第5実施形態)
図16に、バルブ作動機構61を変更した第5実施形態を示す。この第5実施形態においては、アーム77を含むアーム機構に代えて、歯車機構によりバルブ作動機構61を構成した点が先の第1実施形態と相違する。具体的には、この第5実施形態に係るバルブ作動機構61は、スイッチ7に装着されて該スイッチ7の上下操作に伴って上下動される第1ラック90と、回転軸91まわりに回転自在に設けられて、第1ラック90の上下動に伴って回転されるピニオン92と、ピニオン92の回転力を受けて上下動される第2ラック93とを含む歯車機構で構成される。
【0094】
この噴霧器においては、スイッチ7を下方のオフ位置から上方のオン位置へ移動操作させると、第1ラック90が下方位置から上方位置に移動し、これに伴って第1ラック90に噛合い連動するピニオン92が反時計方向に回転軸91まわりに回転し、このピニオン92の回転に伴って第2ラック93が下方に移動する。これにて、バネ65の付勢力に抗してステム66が下方に移動されて、弁体67による第2連通孔70の封止状態が解除されて、タンク3内への気体の流入が可能となる。また、スイッチ7を上方のオン位置から下方のオフ位置に移動操作させると、これら第1ラック90、ピニオン92、第2ラック93およびステム66が先とは逆方向に変位されて、弁体67により第2連通孔70が封止される。
【0095】
このように、歯車機構によりバルブ作動機構61を構成していると、スイッチ7の操作に応じた負圧防止バルブ60の開閉操作を確実に実行でき、より信頼性に優れたバルブ作動機構61を得ることができる。
【0096】
(第6実施形態)
図17および図18に、バルブ作動機構61を変更した第6実施形態を示す。本実施形態に係るバルブ作動機構61は、キャップ2の開閉動作に連動して負圧防止バルブ60が開閉操作されるように構成した点が先の第1実施形態と相違する。具体的には、バルブ作動機構61は、エアーノズル4および液体ノズル8を覆う不使用姿勢と、エアーノズル4および液体ノズル8を装置外面に露出させる使用姿勢との間で、本体ケース1に設けられたヒンジ軸10まわりに回転自在に装着されたキャップ2を操作要素とするものであり、上方位置と下方位置との間に上下方向に移動可能に構成され、キャップ2の不使用姿勢から使用姿勢への姿勢変位に伴って、下方位置から上方位置に変位される操作体95と、操作体95を上方位置に向かって移動付勢させるバネ65と、操作体95の下方位置から上方位置への変位に応じて、負圧防止バルブ60のボディ62に開設された通孔70(第2連通孔70)の閉止状態を解除するように移動操作される弁体67とで構成される。
【0097】
具体的には、図18に示すように、操作体95は、上壁95aと、上壁95aの左右両端部から下方に伸びる側壁95b・95bとからなる断面ハット状に形成されている。操作体95の側壁95b・95bの下端のそれぞれには、本体ケース1の左右側壁1c・1cに設けられた開口1d・1dから装置外面に突出するように、操作片95c・95cが設けられている。
【0098】
負圧防止バルブ60は、有底円筒状のボディ62と、ボディ62の上方開口を塞ぐように装着された上蓋63と、ボディ62内で上下動可能に構成されたステム66と、ボディ62内でステム66の下方に設けられた弁体67と、弁体67の下面に装着されたパッキン68とで構成されており、タンク3のタンク本体17の肩部に装着されている。上蓋63には、本体ケース1の内部とボディ62内とを連通する第1連通孔69が開設されており、ボディ62の下端には、ボディ62内とタンク3内とを連通する第2連通孔70が開設されている。ステム66の上蓋63より上方に突出する上方部には、捩りコイル形のバネ65が外嵌状に装着されている。また、ステム66の上端部には受動片72が装着されている。
【0099】
以上のような構成からなる噴霧器においては、キャップ2の使用姿勢から不使用姿勢への変位に伴って、キャップ2を構成する側壁2b・2bの下端により操作片95c・95cが押し下げられ、操作体95の全体がバネ65の付勢力に抗して下方位置に移動操作される。かかる操作体95の下方位置への移動操作に伴って、ステム66が押し下げられ、弁体67により第2連通孔70が閉止される。すなわち、キャップ2が不使用姿勢にあるときには、操作体95が下方位置に移動され、同時に、弁体67により第2連通孔70が閉止されて、負圧防止バルブ60は閉じられる。
【0100】
また、上記とは逆の手順でキャップ2を不使用姿勢から使用姿勢へ変位させたときには、キャップ2の側壁2b・2bの下端による操作片95c・95cの下方への押圧操作力が解除され、操作体95の全体がバネ65の付勢力により上方位置に移動操作され、同時に、ステム66がバネ65の付勢力により押し上げられる。これにて弁体67による第2連通孔70の閉止状態が解除されて、タンク3の周辺の空気がタンク3内に流入するので、タンク3内は大気圧状態に維持される。すなわち、キャップ2が使用姿勢にあるときには、操作体95が上方位置に移動され、同時に、弁体67により第2連通孔70の閉止状態が解除されて、負圧防止バルブ60は開かれる。
【0101】
(第7実施形態)
図19に、バルブ作動機構61を変更した第7実施形態を示す。本実施形態に係るバルブ作動機構61は、キャップ2の開閉動作に連動して負圧防止バルブ60が開閉操作されるように構成した点が先の第1実施形態と相違する。具体的には、バルブ作動機構61は、エアーノズル4および液体ノズル8を覆う不使用姿勢と、エアーノズル4および液体ノズル8を装置外面に露出させる使用姿勢との間で、本体ケース1に設けられたヒンジ軸10まわりに回転自在に装着されたキャップ2を操作要素とするものであり、キャップ2の不使用姿勢と使用姿勢との間の姿勢変位に伴ってヒンジ軸10を中心に回転操作されて、キャップ2が使用姿勢とされたときに、負圧防止バルブ60を押し下げ操作するアーム100で構成される。
【0102】
アーム100は、ヒンジ軸10に装着されており、キャップ2が使用姿勢とされたときに、その下端がステム66の上端に設けられた受動片72の上下方向の移動軌跡に臨んで、ステム66を押し下げ操作する作動姿勢(図19において実線で示す)と、キャップ2が不使用姿勢とされたときに、その下端が受動片72の上下方向の移動軌跡から退避する待機姿勢(図19において仮想線で示す)との間で、ヒンジ軸10を中心に回転自在に構成されている。
【0103】
図19に示すように、ヒンジ軸10は、負圧防止バルブ60よりも後方側に配置されており、受動片72には、後ろ斜め上方に指向して、作動姿勢におけるアーム100の下端に接触する傾斜面が形成されている。それ以外の負圧防止バルブ60等の構成は、第1実施形態と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
以上のような構成からなる噴霧器においては、キャップ2が不使用姿勢にあるときには、アーム100は待機姿勢にあり、バネ65によりステム66は押し上げ付勢されて、弁体67により第2連通孔70が閉止される。すなわち、キャップ2が不使用姿勢にあるときには負圧防止バルブ60は閉じられる。不使用姿勢にある状態からキャップ2を使用姿勢に変位させると、アーム100が待機姿勢から作動姿勢に変位する。かかるアーム100の作動姿勢への変位に伴って、ステム66が押し下げられ、弁体67による第2連通孔70の閉止状態が解除されて、タンク3の周辺の空気がタンク3内に流入するので、タンク3内は大気圧状態に維持される。すなわち、キャップ2が使用姿勢にあるときには、負圧防止バルブ60は開かれる。
【0105】
(第8実施形態)
図20に、負圧防止バルブ60の構成を変更した第8実施形態を示す。本実施形態に係る負圧防止バルブ60は、上流側にエアー流入口101aを有し、下流側にエアー吐出口101bを有する無底円筒状のボディ孔101と、ボディ孔101内に遊動可能に装着されたボール102と、ボディ孔101内に装着されてボール102をエアー流入口101aに向かって移動付勢させるバネ103とを含む。ボディ孔101のエアー流入口101aは、ポンプ5からの気流を受けるエアー流入管104に連通されており、エアー吐出口101bは、タンク3内に至るエアー吐出管105に連通されている。これらエアー流入管104、ボディ孔101、およびエアー吐出管105により、ポンプ5から容器3内に至る連通路110が形成されている。なお、ボディ孔101、およびエアー流入管104は、噴霧部21内に形成されている。
【0106】
エアー流入管104は、前後方向に走る第1管部104aと、第1管部104aの前端部に連通されて鉛直方向に走る第2管部104bとからなる。ボディ孔101の内径寸法は、エアー流入管104の第2管部104bの内径寸法よりも大きく設定されており、ボディ孔101の上端部には、第2管部104bの内面とボディ孔101の内面とを繋ぐ下拡がり状のテーパー面106が形成されている。ボール102の外径寸法は、ボディ孔101の内径寸法よりも小さく、第2管部104bの内径寸法よりも大きく設定されており、ボール102は、その外面がテーパー面106に接触してエアー流入口101aを閉止する上方の閉位置と、その外面がテーパー面106と非接触となりエアー流入口101aを開放する下方の開位置との間で移動可能に構成されており、バネ103により閉位置に向かって移動付勢されている。エアー吐出管105の上端部には、バネ103の下端を受け止めるバネ受面107が段付き状に設けられており、バネ103は、バネ受面107とボール102との間に配置されている。なお、符号108は、タンク3の上壁に装着されて、エアー吐出管105の外壁面とタンク3の上壁との間の隙間を封止するガスケットを示す。
【0107】
以上のような構成からなる負圧防止バルブ60においては、噴霧動作が行われない待機状態においては、バネ103の付勢力を受けてボール102は上方に付勢されて閉位置にある。つまり噴霧動作が行われない待機状態においては、負圧防止バルブ60は閉じられている。かかる待機状態から、スイッチ7がオン位置に操作されてポンプ5が駆動されると、エアー流入管104内にポンプ5から送出された気体が流入し、該気体の気流の風圧によりボール102が閉位置から開位置に移動される。すなわち、気流の風圧により、バネ103の付勢力に抗してボール102は閉位置から開位置に移動される。これにて、ポンプ5からの気体がエアー流入管104、負圧防止バルブ60のボディ孔101、およびエアー吐出管105を介してタンク3内に流入されるので、噴霧動作に伴ってタンク3内が負圧状態に陥ることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0108】
2 キャップ
3 容器(タンク)
4 エアーノズル
5 ポンプ
7 スイッチ
8 液体ノズル
23 支持体
26 液体ノズルのノズル孔
26a ストレート部
26b テーパー部
31 筒外壁
40 噴射口
43 液体ノズルの吐出口
46 吐出口の上流側外壁面
48 液体ノズルの筒端壁
50 吐出口の上流側内壁面
51 吐出口の下流側内壁面
53 液体ノズルの最上流側の筒端縁
55 液体ノズルの最下流側の筒端縁
60 負圧防止バルブ
80 ガイド部
84 突起
110 連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を噴射するエアーノズル(4)と、エアーノズル(4)の噴射口(40)の下流域に配置された液体ノズル(8)とを備え、エアーノズル(4)から吹き出される気流により生じる負圧によって液体ノズル(8)内の液体を吸い上げ、気流の噴射域に液体をミスト化して噴射する噴霧器であって、
液体ノズル(8)の先端を区画する上流側外壁面(46)の伸び方向と液体ノズル(8)の中心軸(d2)とで規定される上流側外壁面(46)の傾斜角度(θ1)が、上流側外壁面(46)の伸び方向(d1)とエアーノズル(4)の中心軸(d3)とで規定される角度(θ2)以上に設定されていることを特徴とする噴霧器。
【請求項2】
液体ノズル(8)の中心軸(d2)とエアーノズル(4)の中心軸(d3)とで規定される角度(θ5)が、90度未満に設定されている、請求項1記載の噴霧器。
【請求項3】
液体ノズル(8)の吐出口(43)は、上方向に行くに従って開口寸法が大きくなる上広がり状に形成されており、
水平方向(d4)と吐出口(43)の上流側内壁面(50)の伸び方向(d5)とで規定される吐出口(43)の上流側内壁面(50)の傾斜角度(θ3)が、水平方向(d4)と吐出口(43)の下流側内壁面(51)の伸び方向(d6)とで規定される吐出口(43)の下流側内壁面(51)の傾斜角度(θ4)よりも大きくなるように設定されている、請求項1又は2記載の噴霧器。
【請求項4】
エアーノズル(4)を構成する筒外壁(31)が、その外形寸法が下流方向に行くに従って径寸法が小さくなる先窄まり状に形成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項5】
エアーノズル(4)を支持する支持体(23)が、その外形寸法が上方に行くに従って小さくなる先窄まり状に形成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項6】
エアーノズル(4)を支持する支持体(23)が、その外形寸法が下流方向に行くに従って小さくなる先窄まり状に形成されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項7】
液体ノズル(8)の筒端壁(48)の最下流側に位置する筒端縁(55)がエッジ状に形成されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項8】
エアーノズル(4)に向けて高圧気体を供給するポンプ(5)と、ポンプ(5)をオン・オフ操作するためのスイッチ(7)と、液体ノズル(8)に連通されて該液体ノズル(8)から吐出される液体(L)が収容される容器(3)と、容器(3)内が負圧状態に陥ることを防ぐことを目的として開閉操作される負圧防止バルブ(60)とを備え、
スイッチ(7)のオン操作に連動して、負圧防止バルブ(60)が開操作されるように構成されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項9】
エアーノズル(4)から噴射された気体を液体ノズル(8)の吐出口(43)に案内するためのガイド部(80)が設けられている、請求項1乃至8のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項10】
不使用時においてエアーノズル(4)および液体ノズル(8)を覆うキャップ(2)を備え、
キャップ(2)にガイド部(80)が設けられている、請求項9記載の噴霧器。
【請求項11】
ガイド部(80)に、吐出口(43)の下流側内壁面(51)の内面形状に合致する外面形状を備える突起(84)が設けられている、請求項9又は10記載の噴霧器。
【請求項12】
突起(84)の上流側の壁面が、幅方向の中央部が下流側に凹む湾曲面に形成されている請求項11に記載の噴霧器。
【請求項13】
不使用時においてエアーノズル(4)および液体ノズル(8)を覆うキャップ(2)と、エアーノズル(4)に向けて高圧気体を供給するポンプ(5)と、液体ノズル(8)に連通されて該液体ノズル(8)から吐出される液体(L)が収容される容器(3)と、容器(3)内が負圧に陥ることを防ぐことを目的として開閉操作される負圧防止バルブ(60)とを備え、
キャップ(2)は、エアーノズル(4)および液体ノズル(8)を覆う不使用姿勢と、エアーノズル(4)および液体ノズル(8)を装置外面に露出させる使用姿勢との間で姿勢変位可能に構成されており、
キャップ(2)の不使用姿勢と使用姿勢との間の姿勢変位操作時に、負圧防止バルブ(60)が開操作されるように構成されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項14】
エアーノズル(4)に向けて高圧気体を供給するポンプ(5)と、液体ノズル(8)に連通されて該液体ノズル(8)から吐出される液体(L)が収容される容器(3)と、容器(3)内が負圧状態に陥ることを防ぐことを目的として開閉操作される負圧防止バルブ(60)とを備え、
ポンプ(5)から容器(3)内に至る連通路(110)が設けられており、
連通路(110)を介してポンプ(5)から容器(3)に向けて気体が送入されるように構成されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項15】
液体ノズル(8)のノズル孔(26)は、吐出口(43)の側から順に、中心軸(d2)方向における内径寸法が均一なストレート部(26a)と、吐出口(43)から離れるに従って中心軸(d2)方向における内径寸法が大きくなるテーパー部(26b)とを備え、
中心軸(d2)方向におけるテーパー部(26b)の長さ寸法がストレート部(26a)の長さ寸法よりも大きく設定されている、請求項1乃至14のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項16】
吐出口(43)の下流側平坦面(48b)の前後幅(B)が、吐出口(43)の下流側内壁面(51)の前後幅(C)より小さく設定されている、請求項3乃至15のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項17】
吐出口(43)の下流側平坦面(48b)の前後幅(B)が、吐出口(43)の下流側外壁面(49)の前後幅(A)より大きく設定され、吐出口(43)の下流側内壁面(51)の前後幅(C)より小さく設定されている、請求項3乃至15のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項18】
吐出口(43)の上流側平坦面(48a)の前後幅(E)が、下流側平坦面(48b)の前後幅(B)と同じか、これより大きく設定してある請求項3乃至17のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項19】
ノズル孔(26)のテーパー部(26b)に、液体(L)の流動を妨げる段部(28)が形成してある、請求項15乃至18のいずれかに記載の噴霧器。
【請求項20】
吸い上げ管(19)の下端の入口から吐出口(43)との間の吸い上げ通路内に、液体(L)の流動を妨げるせき止め枠(111)が配置してある請求項15乃至19のいずれかに記載の噴霧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−99717(P2013−99717A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244731(P2011−244731)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】