説明

噴霧式塗布装置

【課題】被塗布物に均一に液体を塗布できる噴霧式塗布装置を提供する。
【解決手段】容器6に収容されたグリスを圧送するグリスポンプ3と、グリスポンプ3により圧送されたグリスをギヤ2に噴霧する吐出ノズル42と、空気を圧送する圧縮空気源28とを備えた噴霧式塗布装置1であって、吐出ノズル42は、グリスポンプ3に連通され、圧送されたグリスを吐出する液体吐出口と、圧縮空気源28に連通され、液体吐出口の周囲を取り囲むように形成された空気吐出口とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばグリス等を被塗布物に噴霧するための噴霧式塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被塗布物に、ドラム缶やペイル缶に収納されたグリス等の液体(高粘度流体)を塗布する装置が知られている。この種の装置は、液体を圧送するポンプ本体と、液体の流量や流速を調整するための定量弁と、ポンプ本体に高圧ホースを介して連結され、ポンプ本体により圧送されたグリスを被塗布物に向けて吐出するための吐出ノズルとを有している。ポンプ本体としては、例えば、圧縮空気により作動するエア式のプランジャポンプ等が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−357178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、吐出ノズルから吐出された液体が被塗布物上で満遍なく広がらず、被塗布物に必要量塗布されずに塗布ムラが生じるという課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、被塗布物に均一に液体を塗布できる噴霧式塗布装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、容器に収容された液体を圧送する液体ポンプと、前記液体ポンプにより圧送された液体を被塗布物に噴霧する吐出ノズルと、空気を圧送する空気ポンプとを備えた噴霧式塗布装置であって、前記吐出ノズルは、前記液体ポンプに連通され、圧送された前記液体を吐出する液体吐出口と、前記空気ポンプに連通され、前記液体吐出口の周囲を取り囲むように形成された空気吐出口とを有していることを特徴とする。
【0007】
このように構成することで、液体吐出口の周囲から圧縮空気を噴射することができるので、液体吐出口から吐出された液体が圧縮空気の流れに巻き込まれて吹き飛ばされる。このため、被塗布物にムラ無く液体を塗布することができる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記液体ポンプから圧送された前記液体の流量、及び流速の少なくとも何れか一方を調整可能な液体定量化装置を備え、前記液体ポンプと前記吐出ノズルは、前記液体定量化装置を介して連結されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、被塗布物に、所望の量の液体を確実に塗布することができ、被塗布物の品質を向上することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体吐出口の周囲から圧縮空気を噴射することができるので、液体吐出口から吐出された液体が圧縮空気の流れに巻き込まれて吹き飛ばされる。このため、被塗布物にムラ無く液体を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における噴霧式塗布装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるグリス噴霧塗布ガンの要部拡大図である。
【図3】本発明の実施形態における吐出ノズルから吐出されるグリスの挙動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(噴霧式塗布装置)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、噴霧式塗布装置1の概略構成図である。
同図に示すように、噴霧式塗布装置1は、被塗布物であるギヤ2に不図示のグリスを塗布するためのものであって、グリスポンプ3と、グリス噴霧塗布ガン4とが定量弁5を介して連結されている。
【0013】
(グリスポンプ)
グリスポンプ3は、ペイル缶等で構成され、不図示のグリスが収容される容器6と、容器6内のグリスを高圧ホース7を介して定量弁5に圧送するポンプ本体8とを有している。
ポンプ本体8は、不図示の圧縮空気供給手段からの圧縮空気により作動する所謂エア式のプランジャポンプであって、ポンプフレーム9に支持されている。また、ポンプ本体8は、シリンダ部10と、このシリンダ部10内を軸方向に沿って進退移動可能なピストン11とを有している。このピストン11が圧縮空気によってシリンダ部10内を進退移動することにより、定量弁5に高圧ホース7を介してグリスが圧送される。
【0014】
(定量弁)
定量弁5は、グリスポンプ3から圧送されたグリスの流量や流速を調整し、所定の流量を所定の流速でグリス噴霧塗布ガン4に供給するためのものである。定量弁5は、ケーシング21を有し、このケーシング21に、ピストン22とリストリクタ23とが設けられている。
【0015】
ケーシング21の下部(図1における下部)には、グリスポンプ3から圧送されたグリスが供給される吸入ポート24が開設されている。また、ケーシング21の吸入ポート24よりもやや上部であって、且つ吸入ポート24と同一面上には、グリスをグリス噴霧塗布ガン4に吐出するための吐出ポート25が開設されている。そして、吸入ポート24に、グリスポンプ3に連結されている高圧ホース7の一端が連結されている。
【0016】
吸入ポート24、及び吐出ポート25は、ケーシング21内で連通されており、さらにケーシング21に設けられたピストン22は、吸入ポート24、及び吐出ポート25に連通している。また、ケーシング21内には、不図示のエアピストンがケーシング21内をスライド自在に設けられている。不図示のエアピストンは、ケーシング21の上部(図1における上部)に開設されているエアポート26から供給される圧縮空気によりスライド移動し、吸入ポート24、吐出ポート25、及びピストン22の連通状態を切り替え可能に構成されている。
【0017】
より詳しくは、不図示のエアピストンが一方にスライド移動すると、吸入ポート24とピストン22とが連通され、ピストン22と吐出ポート25との間が遮断される。また、不図示のエアピストンが他方にスライド移動すると、吸入ポート24とピストン22との間が遮断され、ピストン22と吐出ポート25とが連通される。
ここで、エアピストンの動力源となる圧縮空気が供給されるエアポート26には、エアーホース27を介して空気圧縮機等からなる圧縮空気源28が連結され、圧縮空気源28から電磁弁66に圧縮空気が供給されている。
【0018】
吸入ポート24、及び吐出ポート25に連通しているピストン22は、ケーシング21の吸入ポート24、及び吐出ポート25が開設されている側とは反対側(図1における右側)に配置されている。そして、吸入ポート24、及び吐出ポート25側に向かって進退移動可能な不図示のピストンロッドを有している。このピストンロッドの進退移動量は、基端側(図1における右端側)に設けられている調整ねじ29によって調整可能になっている。
【0019】
このような構成のもと、不図示のピストンロッドの背圧側には、吸入ポート24に供給されたグリスの液圧が作用するようになっている。これにより、不図示のピストンロッドには、常時ピストン22内のグリスを吐出する方向に向かって力が付勢される。
さらに、ピストン22内にグリスが流入する場合には、このピストン22の内側とピストンロッドの背圧側との間に差圧が生じ、ピストン22内にグリスが流入して充填されるようになっている。このように、ピストン22は、グリスポンプ3からの吐出圧を利用して吐出ポート25に向かってグリスの吐出を行う。
【0020】
ここで、ピストン22の不図示のピストンロッドの進退移動量は、調整ねじ29によって調整することができるので、調整ねじ29によって、吐出されるグリスの流量が調整されることになる。
また、吐出ポート25には、リストリクタ23が設けられており、このリストリクタ23、及び高圧ホース31を介してグリス噴霧塗布ガン4が連結されている。リストリクタ23は、吐出ポート25より吐出されるグリスの流速を調整するためのものである。
【0021】
(グリス噴霧塗布ガン)
図2は、グリス噴霧塗布ガン4の要部拡大図である。
図1、図2に示すように、グリス噴霧塗布ガン4は、シリンダ部41と、シリンダ部41の先端(図1における左端)に設けられた吐出ノズル42とにより構成されている。シリンダ部41には、定量弁5から圧送されたグリスが供給される吸入ポート46が開設されている。これにより、シリンダ部41内にグリスが充填される。
【0022】
また、シリンダ部41内には、不図示のピストンが進退移動可能に設けられている。さらに、シリンダ部41には、エアポート43が開設されており、このエアポート43がエアーホース44を介して電磁弁66に連結されている。これにより電磁弁66を介して圧縮空気がシリンダ部41内に供給され、不図示のピストンが進退移動することにより、吐出ノズル42にグリスが圧送される。
【0023】
ここで、シリンダ部41の基端(図1における右端)には、調整ねじ45が設けられており、この調整ねじ45によって不図示のピストンの進退移動量を調整できるようになっている。これによって、グリス噴霧塗布ガン4自体でグリスの吐出量を調整することが可能になる。
また、シリンダ部41の先端側に括れ部47が形成され、さらにこの括れ部47よりも先端にノズル取付けフランジ部48が形成されている。このノズル取付けフランジ部48に吐出ノズル42が取付けられている。
【0024】
図2に詳示するように、吐出ノズル42は、軸心に配置されているインナー管51と、インナー管51に外嵌されるアウター管52とにより構成されている。インナー管51には、軸心にシリンダ部41内に連通するグリス吐出口53が形成されている。また、インナー管51には、グリス吐出口53の周囲を取り囲むように、管状の空気吐出口54が形成されている。
【0025】
さらに、インナー管51には、後述のアウター管52に形成されている噴霧用エアポート55と空気吐出口54とを連通するエア流路56が全周に亘って形成されている。そして、インナー管51の先端には、雄ねじ部57が刻設されており、ここに、インナー管51に外嵌されるアウター管52の雌ねじ部58が螺入される。
【0026】
アウター管52は略円柱状に形成されており、先端(図2における左端)に先細り部61を有している。また、アウター管52には、軸心にインナー管51に外嵌可能な孔59が形成されている。そして、インナー管51にアウター管52を外嵌させた状態で、孔59の雄ねじ部57に対応する位置に、雌ねじ部58が刻設されている。
さらに、アウター管52には、基端(図2における右端)に、Oリング等のシール部材62を装着するためのシール溝63が形成されている。このシール溝63にシール部材62を装着することにより、吐出ノズル42と、シリンダ部41のノズル取付けフランジ部48との間のシール性を確保することができる。
【0027】
また、アウター管52には、インナー管51の軸心を通るグリス吐出口53が連通形成されており、このグリス吐出口53がアウター管52の先端に開口されている。さらに、アウター管52には、インナー管51の空気吐出口54が連通形成されており、この空気吐出口54がアウター管52の先端に開口されている。
また、アウター管52には、インナー管51のエア流路56に対応する位置に、噴霧用エアポート55が形成されている。この噴霧用エアポート55に、エアーホース64を介して電磁弁66が連結されている。
【0028】
これにより、電磁弁66を介して圧縮空気源28から空気吐出口54に圧縮空気が供給される。噴霧用エアポート55と電磁弁66とを連結するエアーホース64の途中には、レギュレータ65が設けられている。このレギュレータ65は、空気吐出口54に供給される圧縮空気の圧力を調整するためのものである。
ここで、定量弁5のエアポート26に一端が接続されているエアーホース27の他端、及びグリス噴霧塗布ガン4のシリンダ部41に開設されたエアポート43に一端が連結されているエアーホース44の他端は、それぞれレギュレータ65を介すことなく、直接圧縮空気源28に接続されている。
【0029】
(噴霧式塗布装置の動作)
次に、図1、図3に基づいて、噴霧式塗布装置1の動作について説明する。
図3は、吐出ノズル42から吐出されるグリスの挙動説明図であって、図2に対応している。
図1に示すように、まず、グリスを塗布するギヤ2に、グリス噴霧塗布ガン4の吐出ノズル42の先端を向けた状態でグリスポンプ3を駆動し、定量弁5にグリスを供給する。このとき、定量弁5は、吸入ポート24とピストン22とが連通した状態になっており、ピストン22内にグリスが充填される。
【0030】
続いて、圧縮空気源28から、エアーホース27を介して定量弁5のエアポート26へ圧縮空気を供給し、エアーホース44を介してグリス噴霧塗布ガン4のエアポート43へ圧縮空気を供給し、エアーホース64を介して噴霧用エアポート55へ圧縮空気を供給する。これらエアポート26,43,55への圧縮空気の供給は同時に行われる。
【0031】
すると、定量弁5において、不図示のエアピストンがスライド移動し、吸入ポート24とピストン22との間が遮断され、ピストン22と吐出ポート25とが連通される。そして、リストリクタ23、及び高圧ホース31を介してグリス噴霧塗布ガン4のシリンダ部41に開設されている吸入ポート46にグリスが供給される。
【0032】
図3に詳示するように、吸入ポート46に供給されたグリスは、グリス吐出口53を通って吐出ノズル42の先端から吐出される。このとき、吐出ノズル42の先端の空気吐出口54から圧縮空気が吐出されている。このため、グリス吐出口53から吐出されたグリスが圧縮空気の流れに巻き込まれて吹き飛ばされる。ここで、グリスは粘度が高いので、圧縮空気の流れに巻き込まれて吹き飛ばされた場合であっても分散されることなく、塗布面に対して均一に薄く延ばされるようにして吐出される。
【0033】
したがって、上述の実施形態によれば、ギヤ2の全体に均一にグリスを塗布することができる。
また、グリスポンプ3からグリス噴霧塗布ガン4にグリスを供給するにあたって、定量弁5を介してグリスを供給するように構成しているので、グリス噴霧塗布ガン4に、所望の量のグリスを、所望の流速で供給することができる。また、本実施形態において、ギヤ2は図示しない治具にギヤ2の中心軸で回転可能に保持されており、グリスの供給と同期してギヤ2が回転されることで、ギヤ2へのグリスの塗布量を制御している。このため、ギヤ2に塗布されるグリスの状態を高精度に管理することができるので、グリスが塗布された状態のギヤ2の品質を向上させることができる。
【0034】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、噴霧式塗布装置1を用いてギヤ2にグリスを塗布する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ギヤ2に代わってウォームギヤやスクリュー等、さまざまな部品に噴霧式塗布装置1を用いてグリスを塗布することが可能である。
【0035】
また、上述の実施形態では、噴霧式塗布装置1を用いて粘度の高いグリスを噴霧する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな液体に噴霧式塗布装置1を用いることが可能である。この場合、液体の粘性や種類に応じてグリスポンプ3に代わって、その液体に対応可能なポンプを用いると共に、定量弁5に代わって、その液体に対応可能な定量弁を用いる。一方、グリス噴霧塗布ガン4は、構成そのものは変える必要がなく、空気吐出口54に供給される圧縮空気の圧力をレギュレータ65によって調整することで対応することが可能である。
【0036】
さらに、上述の実施形態では、定量弁5は、グリスの吐出流量、及び吐出流速を調整可能なものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、定量弁5は、グリスの吐出流量、及び吐出流速の少なくとも何れか一方を調整可能に構成されていればよい。グリスの吐出流量、及び吐出流速の少なくとも何れか一方を調整することにより、ギヤ2に塗布されるグリスの状態を管理することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1 噴霧式塗布装置
2 ギヤ(被塗布物)
3 グリスポンプ(液体ポンプ)
4 グリス噴霧塗布ガン
5 定量弁(液体定量化装置)
6 容器
28 圧縮空気源(空気ポンプ)
42 吐出ノズル
53 グリス吐出口(液体吐出口)
54 空気吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された液体を圧送する液体ポンプと、
前記液体ポンプにより圧送された液体を被塗布物に噴霧する吐出ノズルと、
空気を圧送する空気ポンプとを備えた噴霧式塗布装置であって、
前記吐出ノズルは、
前記液体ポンプに連通され、圧送された前記液体を吐出する液体吐出口と、
前記空気ポンプに連通され、前記液体吐出口の周囲を取り囲むように形成された空気吐出口とを有していることを特徴とする噴霧式塗布装置。
【請求項2】
前記液体ポンプから圧送された前記液体の流量、及び流速の少なくとも何れか一方を調整可能な液体定量化装置を備え、
前記液体ポンプと前記吐出ノズルは、前記液体定量化装置を介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧式塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−217952(P2012−217952A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87538(P2011−87538)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【出願人】(300008634)株式会社ケイ・ジー・ケイ (8)
【Fターム(参考)】