説明

噴霧装置の貯液タンク

【課題】噴霧液の漏水を防止し且つ常に脱気機能を維持することが可能な噴霧装置の貯液タンクを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る噴霧装置の貯液タンク80によれば、脱気口92を通気性と撥水性とを備えた気体透過シート94で塞ぐことによって、脱気口92からの噴霧液の漏水を防止することができる。また、脱気口92をタンク本体80aのそれぞれ異なる側の辺縁部近傍に複数形成することで、噴霧装置100の設置された車両等が如何なる斜面に駐停車した場合でも全ての脱気口92が同時に噴霧液で塞がれることはない。従って、いずれかの脱気口92が常に脱気機能を維持し、貯液タンク80内の内圧の変化を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間にミストを噴霧する噴霧装置の貯液タンクに関し、特に貯液タンク内の噴霧液の漏水を防止する噴霧装置の貯液タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空間に水等の噴霧液をミスト化して噴霧し加湿を行う噴霧装置は、体感温度の上昇による暖房効率の向上や空気中の病原体や花粉の飛散を抑制し人体の健康維持等に極めて有益である。そして近年、車両等の室内に設置するタイプの噴霧装置が商品化されている。このような車内に設置する噴霧装置の例としては、下記[特許文献1]に開示された発明が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−315633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な噴霧装置の貯液タンクには、気温変化に伴う貯液タンク内の内圧の変化を防止するために脱気口が設けられている。しかしながら、噴霧装置を特に車両内等に設置する場合、車両の移動時に貯液タンク内の噴霧液が大きく揺れ脱気口から噴霧液が漏水する危険性がある。また、車両等を斜面などに駐停車した場合には、漏水の危険性に加え脱気口が噴霧液で塞がれて機能しなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、噴霧液の漏水を防止し且つ常に脱気機能を維持することが可能な噴霧装置の貯液タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
ミスト化した噴霧液を空間に噴霧する噴霧装置の貯液タンクにおいて、
前記噴霧液を貯留するタンク本体80aと、
前記タンク本体80a上部の少なくとも辺縁部近傍に形成される気体室90と、
当該気体室90における前記タンク本体80aの辺縁部近傍に形成される複数の脱気口92と、
当該脱気口92を塞ぐ通気性と撥水性とを備えた気体透過シート94と、
を有することを特徴とする噴霧装置の貯液タンク80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る噴霧装置の貯液タンクは、上記の構成により、
脱気口を通気性と撥水性とを備えた気体透過シートで塞ぐことによって、脱気口からの漏水を防止することができる。
また、脱気口をタンク本体のそれぞれ異なる側の辺縁部近傍に複数形成することで全ての脱気口が同時に噴霧液で塞がれることを防止する。このため、脱気機能を常に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る噴霧装置の貯液タンクの実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る貯液タンクを備えた噴霧装置の設置例を示す図である。図2は、本発明に係る貯液タンクを備えた噴霧装置の設置部を示す図である。図3は、本発明に係る貯液タンクを備えた噴霧装置のタンクユニットを示す図である。図4は、本発明に係る貯液タンクの上面図及び断面図である。図5は、本発明に係る貯液タンクの脱気口の配置例を示す図である。
【0009】
先ず、本発明に係る噴霧装置の貯液タンクを用いた車載用の噴霧装置100の例を図1〜図3を用いて説明する。尚、本発明は車載用の噴霧装置に好適なものであるが、特に車載用に限定されるものではなく車載用以外の噴霧装置の貯液タンクに適用しても良い。
【0010】
図1に示す噴霧装置100は、車両の天井部1に設置される設置部30と、ミストとなる噴霧液を貯留する貯液タンク80を備え設置部30に着脱可能なタンクユニット40と、を有している。そして、噴霧装置100は車両のバッテリ等から電源ケーブル12を介して電力を取得し、噴霧装置100の各部に対し電力を供給する。また、設置部30とタンクユニット40とは、着脱ボタン50を操作することにより容易に取り外すことができる。尚、設置部30には必要に応じて空調設備や照明等の付随設備10を設けても良い。本例においては、付随設備10として車内を照らすルームライトを設けた例を示す。
【0011】
次に、上記の設置部30とタンクユニット40とを、図2、図3を用いて更に詳しく説明する。
【0012】
図2は、タンクユニット40を取り外した状態の設置部30をタンクユニット40の設置面側、即ち噴霧装置100の設置状態における下方向から示した図である。噴霧装置100の設置部30は、タンクユニット40とは別に独立して動作する付随設備10と、電源ケーブル12と、タンクユニット40を取り外す際に押下する着脱ボタン50と、タンクユニット40が設置可能な取り付け部38と、を有している。また、設置部30の内部には、付随設備10及び設置部30の各部を制御する制御部と、電源ケーブル12から供給される電力を付随設備10とタンクユニット40とに供給する電力供給部と、を備えた設置部制御基板34を有している。また、設置部制御基板34の所定の位置には接触型の電源コネクタ36aが設置され、設置部30はこの電源コネクタ36aを介してタンクユニット40に電力を供給する。
【0013】
設置部30の取り付け部38の両側面には保持体62が形成され、この保持体62とタンクユニット40のストッパリブ60とを係合することで、設置部30にタンクユニット40を取り付けることができる。また、取り付け部38におけるタンクユニット40の設置面には、設置部30を車両の天井部1などにネジ等の締結部材を用いて固定するための設置孔14と、設置部制御基板34上の電源コネクタ36aを露出させるための電源コネクタ口33aと、タンクユニット40の取り外し操作に用い着脱ボタン50と連動して動作するホック部52と、同じく着脱ボタン50と連動してタンクユニット40の取り外し方向に突出する着脱リブ56と、を有している。
【0014】
また図3は、設置部30から取り外した状態のタンクユニット40をタンクユニット40の設置面側、即ち噴霧装置100の設置状態における上方向から示した図である。噴霧装置100のタンクユニット40内には、ミストとなる噴霧液を貯留する本発明に係る貯液タンク80が設置されている。また、タンクユニット40には、貯液タンク80に貯留された噴霧液をミスト化し噴霧口72から空間に噴霧するミスト噴霧手段70と、設置部30のホック部52と係合する受け部54と、を有している。更に、タンクユニット40の両側面には、設置部30の保持体62と係合可能なストッパリブ60が形成されている。
【0015】
また、貯液タンク80は、噴霧液を貯留するタンク本体80aと、タンク本体80a内に噴霧液を供給するための供給口82と、供給口82を開閉するためのキャップ82aと、タンクユニット40を設置部30に設置したときにタンク本体80aの上部に位置するとともにタンク本体80aの辺縁部近傍を含んで形成される気体室90と、気体室90におけるタンク本体80aの辺縁部近傍に形成される複数の脱気口92と、を有している。
【0016】
また、タンクユニット40の内部には、ミスト噴霧手段70を制御する噴霧手段制御部を備えるとともにタンクユニット40の各部を制御するタンクユニット制御基板46が設置されている。また、タンクユニット制御基板46は、設置部30の電源コネクタ36aと接触することで設置部30から電力を取得する電源コネクタ36bを有しており、電源コネクタ36bはタンクユニット40の所定の位置に形成された電源コネクタ口33bにより露出している。尚、電源コネクタ口33bには、貯液タンク80への供給時に噴霧液等が電源コネクタ36bに付着することを防止するスライド式の保護カバー16を設けても良い。
【0017】
噴霧液としては水道水の他、保湿性を有するヒアルロン酸水溶液や芳香成分が溶解した水溶液等、人体に悪影響を及ぼさない各種の液体を用いることができる。また、噴霧液に電解液を用いるとともに、タンクユニット40の所定の部位に貯液タンク80内に貯留された噴霧液(電解液)を電解する電解手段を設け、電解手段で電解された電解液をミスト化して空間に噴霧するようにしても良い。この構成によれば、噴霧される電解液の効果により空間に存在する病原体や花粉による健康被害をさらに抑制することが可能となる。尚、一般的な水道水中には消毒のための次亜塩素酸化合物が溶解しており、この次亜塩素酸化合物は水の電解を助けるため水道水をそのまま電解液として使用しても良い。
【0018】
また、タンクユニット40には、貯液タンク80内の噴霧液が凍結した場合に、凍結した噴霧液を融解させるための加熱手段を設けても良い。
【0019】
尚、上記の噴霧装置100では、タンクユニット40側にミスト噴霧手段70と噴霧手段制御部とを設けた例を用いているが、噴霧手段制御部を設置部制御基板34上に形成するとともにミスト噴霧手段70を設置部30側に設けても良い。
【0020】
次に、噴霧装置100の使用法を説明する。先ず、設置部30の電源ケーブル12と車両のバッテリ等からのケーブルとを接続する。次に、設置部30の着脱ボタン50を押下して、設置部30のホック部52とタンクユニット40の受け部54との係合状態を解除する。このとき、着脱リブ56が突出してタンクユニット40が取り外し方向に所定量スライドする。そして、設置部30の保持体62からタンクユニット40のストッパリブ60を取り外すことで、設置部30からタンクユニット40を取り外す。次に、設置部30の設置孔14に所定の締結部材を挿入し、設置部30を車両の天井部1などに固定する。
【0021】
次に、貯液タンク80のキャップ82aを取り外し供給口82を開栓する。また、保護カバー16をスライドさせて電源コネクタ口33bを閉鎖する。次に、供給口82から例えば水道水などの噴霧液を貯液タンク80内に供給する。そして、貯液タンク80内に所定量の噴霧液が貯留されたところで供給を停止し、キャップ82aを供給口82に取り付けて供給口82を閉栓する。
【0022】
次に、保護カバー16をスライドさせてタンクユニット40の電源コネクタ口33bを開け電源コネクタ36bを露出させた後、タンクユニット40のストッパリブ60と設置部30の保持体62とを係合するとともに、設置部30のホック部52とタンクユニット40の受け部54とを係合状態とする。これにより、タンクユニット40は設置部30の取り付け部38に取り付けられる。このとき、設置部30の電源コネクタ36aとタンクユニット40の電源コネクタ36bとは接続状態となり、タンクユニット40に対し電源コネクタ36a、36bを介して電力が供給される。
【0023】
次に、噴霧装置100の図示しないミスト噴霧スイッチを操作する。これにより、噴霧手段制御部がミスト噴霧手段70を動作させ、ミスト噴霧手段70は貯液タンク80から吸液した噴霧液をミスト化して噴霧口72から空間に噴霧する。また、付随設備10に対する図示しない付随設備操作スイッチを操作することで、噴霧装置100の付随設備10がミスト噴霧手段70とは別に独立して所定の動作を行う。
【0024】
次に、本発明に係る噴霧装置の貯液タンク80を図4を用いてさらに詳しく説明する。図4(a)は本発明に係る貯液タンク80を示す上面図である。また、図4(b)は、図4(a)に示す貯液タンク80のX−Xでの断面図である。
【0025】
前述のように、貯液タンク80はタンク本体80aと、タンク本体80aの上部にタンク本体80aにおけるそれぞれ異なる側の辺縁部近傍を含んで形成された気体室90と、気体室90におけるタンク本体80aのそれぞれ異なる側の辺縁部近傍に形成された複数の脱気口92と、を有している。そして、気体室90は、図4(b)に示すように、貯液タンク80の供給口82より上方に位置しているため、供給口82から噴霧液を供給した場合でも気体室90が噴霧液で満たされることはない。また、脱気口92には脱気口92を塞ぐように気体透過シート94が設置されている。気体透過シート94は通気性と撥水性とを兼ね備えたポリテトラフルオロエチレン樹脂などの多孔質膜等が用いられ、気体室90内の空気を透過可能としながら噴霧液の通過を妨げ、脱気口92からの噴霧液の漏水を防止する。
【0026】
そして、この脱気口92が存在することにより、外気温が上昇し貯液タンク80内の空気が膨張したときでも、膨張した空気は気体透過シート94を透過して脱気口92から速やかに貯液タンク80外に放出される。従って、貯液タンク80の内圧が上昇することはない。また、脱気口92はタンク本体80aのそれぞれ異なる側の辺縁部近傍に複数形成されているため、例えば噴霧装置100の設置された車両等が斜面に駐停車した場合でも全ての脱気口92が同時に噴霧液で閉塞することはない。従って、いずれかの脱気口92が常に脱気機能を維持することができる。
【0027】
次に、脱気口92の配置例を図5に示す。尚、図5においては、便宜的にタンク本体80aと脱気口92と気体室90のみを示し、その他の部位に関する記載は省略する。前述のように脱気口92はタンク本体80aのそれぞれ異なる側の辺縁部近傍、即ち車両等の設置体3に対して前後左右方向を網羅するように配置する必要がある。従って、脱気口92を2つとする場合には、図5(a)に示すように、設置体3の略対角線方向に沿うようにタンク本体80aの辺縁部近傍に配置する。この配置例によれば一方の脱気口92が左方向及び前方向を網羅しもう一方の脱気口92が右方向及び後方向を網羅している。脱気口92を3つ設ける場合には、例えば図5(b)に示すように、タンク本体80a(設置体3)の一辺方向(図5(b)では、右方向)の前方向及び後方向にそれぞれ1つずつ脱気口92を配置し、上記の一辺方向と逆側の辺方向に1つの脱気口92を配置する。尚、図5(b)では1つの脱気口92を左方向の中央部分に配置する例を用いているが、図5(c)に示すように、脱気口92は設置体3の略対角線方向に沿うように配置することがより好ましい。また、脱気口92を4つ設ける場合には、図5(d)に示すように、タンク本体80a(設置体3)の略四隅方向に配置することが好ましい。
【0028】
また、気体室90は貯液タンク80の上部の全面に形成する必要はなく、図5(e)に示すように、少なくとも貯液タンク80の辺縁部近傍の前後左右方向を網羅するように形成すれば良い。さらに、気体室90は図5(f)に示すように、必要に応じて分割して形成しても良い。上記のことは、例えば図5(g)に示すように、貯液タンク80が円形や楕円形、多角形等どのような形状をとっても基本的に同様である。そして、気体室90の形状及び脱気口92の配置は基本的に上記の条件を満たした上で、貯液タンク80、設置部30の形状及び噴霧装置100に付随する各部の設置位置等に応じて適宜変更することができる。
【0029】
以上のことから、本発明に係る噴霧装置の貯液タンク80によれば、脱気口92を通気性と撥水性とを備えた気体透過シート94で塞ぐことによって、脱気口92からの噴霧液の漏水を防止することができる。また、脱気口92をタンク本体80aのそれぞれ異なる側の辺縁部近傍に複数形成することで、噴霧装置100の設置された車両等が如何なる斜面に駐停車した場合でも全ての脱気口92が同時に噴霧液で塞がれることはない。従って、いずれかの脱気口92が常に脱気機能を維持し、貯液タンク80内の内圧の変化を防止することができる。
【0030】
尚、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る貯液タンクを備えた噴霧装置の設置例を示す図である。
【図2】本発明に係る貯液タンクを備えた噴霧装置の設置部を示す図である。
【図3】本発明に係る貯液タンクを備えた噴霧装置のタンクユニットを示す図である。
【図4】本発明に係る貯液タンクの上面図及び断面図である。
【図5】本発明に係る貯液タンクの脱気口の配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
80 貯液タンク
80a タンク本体
90 気体室
92 脱気口
94 気体透過シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミスト化した噴霧液を空間に噴霧する噴霧装置の貯液タンクにおいて、
前記噴霧液を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体上部の少なくとも辺縁部近傍に形成される気体室と、
当該気体室における前記タンク本体の辺縁部近傍に形成される複数の脱気口と、
当該脱気口を塞ぐ通気性と撥水性とを備えた気体透過シートと、
を有することを特徴とする噴霧装置の貯液タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−7897(P2010−7897A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165180(P2008−165180)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(391043815)サンヨー・オートメディア・センディリアン・バハド (36)
【住所又は居所原語表記】Plot 10,Phase 4,Prai Industrial Estate,13600 Prai,Penag.Malasya
【Fターム(参考)】