説明

噴霧装置

【課題】溶媒に溶質としてγ−アミノ酪酸を溶解させた溶液を空間に噴霧するのに好適に用いられる噴霧装置を提供する。
【解決手段】噴霧装置(10)は、溶媒に溶質としてγ−アミノ酪酸を溶解させた溶液を空間に噴霧するのに用いられる。噴霧装置(10)は、噴霧剤を貯留する溶液タンク(20)と、溶液タンク(20)内に通じるように設けられて溶液タンク(20)から噴霧剤が供給される噴霧ノズル(31)と、噴霧ノズル(31)から噴霧剤が噴霧されるように噴霧ノズル(31)に電荷を与える電源(16)と、電源(16)のオン/オフのスイッチング制御を行い、電源(16)をオンしている時間と電源(16)をオフしている時間との比率であるデューティー比を制御することにより噴霧ノズル(31)からの噴霧剤の噴霧を制御する制御部(17)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒に溶質としてγ−アミノ酪酸を溶解させた溶液を空間に噴霧するのに用いられる噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
γ−アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid:以下、「GABA」という。)には、種々の薬理作用が確認されている。その薬理作用は、例えば、血圧を正常にする血圧調整作用、血液中のコレステロールや中性脂肪の増加を抑制する作用、腎臓や肝臓や膵臓の働きを活発化させる作用、血糖値の上昇を抑える作用、脳への血流を良好なものにして脳細胞の代謝を活発化させる作用、肥満防止作用、アルコール代謝促進作用、体臭や口臭などの消臭作用、感情障害や不安障害の解消作用、脳卒中の後遺症の改善作用、大腸ガン抑制作用、成長ホルモン分泌促進作用である。このため、GABAは、近年、サプリメントとして非常に注目を集めている。
【0003】
特許文献1には、GABAを経口摂取することで直接脳アルファ波出現を増加させ、ベータ波の出現を減少させることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、グルタミン酸を構成アミノ酸として含む蛋白質又はペプチドを含有する食品素材に、プロテアーゼ生産能を有する微生物及びグルタミン酸デカルボキシラーゼ生産能を有する微生物を接種して培養するGABA含有飲食品の製造法が開示されている。そして、これによれば、食品添加物であるグルタミン酸を添加することなく、味、色調が良好なGABA含有飲食品が効率良く得られる、と記載されている。
【0005】
ところが、GABAは、経口で摂取されると、脳血管関門を通過できないため脳に到達できず、また、小腸で吸収された後に肝臓を通過する際に代謝されてしまう、という問題がある。そこで、GABAそのものではなく、そのような問題を有さないGABA類縁体を用いることが行われている。
【0006】
特許文献3には、有効量のGABA類縁体を含んでなる医薬組成物が開示されている。そして、これによれば、哺乳動物の不眠症を治療することができる、と記載されている。
【0007】
特許文献4及び5には、GABA類縁体を経口投与、或いは、経鼻的投与などの非経口的投与することが開示されている。しかしながら、経鼻的投与について、具体的手段については何ら記載されていない。
【特許文献1】特開2003−252755号公報
【特許文献2】特開2000−14356号公報
【特許文献3】特表2002−520277号公報
【特許文献4】特開2001−131161号公報
【特許文献5】特開2001−342150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願の目的は、溶媒に溶質としてγ−アミノ酪酸を溶解させた溶液を空間に噴霧するのに好適に用いられる噴霧装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明は、溶媒に溶質としてγ−アミノ酪酸を溶解させた溶液を空間に噴霧するのに用いられる噴霧装置(10)であって、
噴霧剤を貯留する溶液タンク(20)と、
上記溶液タンク(20)内に通じるように設けられて該溶液タンク(20)から噴霧剤が供給される噴霧ノズル(31)と、
上記噴霧ノズル(31)から噴霧剤が噴霧されるように該噴霧ノズル(31)に電荷を与える電源(16)と、
上記電源(16)のオン/オフのスイッチング制御を行い、該電源(16)をオンしている時間と該電源(16)をオフしている時間との比率であるデューティー比を制御することにより上記噴霧ノズル(31)からの噴霧剤の噴霧を制御する制御部(17)と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、溶媒に溶質としてγ−アミノ酪酸を溶解させた溶液を空間に噴霧するのに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、空間の雰囲気改変方法の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の空間の雰囲気改変方法は、GABAを含む噴霧剤を噴霧装置で空間に噴霧し、そして、それによってGABAを経鼻粘膜吸収や経肺吸収によって人間の体内に摂取させようとするものである。
【0013】
この噴霧剤は、基本的構成として、溶媒に溶質としてGABAを溶解させた溶液である。また、噴霧剤は、その他に、導電率調整剤、溶解補助剤、けん濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などが配合されており、また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、香料などの製剤添加物が配合される。
【0014】
GABAは、下記式で表される。GABAは、哺乳動物の中枢神経系に高濃度に存在する抑制性神経伝達物質であるが、人工的に合成することも可能である。また、GABAは、例えば、血圧を正常にする血圧調整作用、血液中のコレステロールや中性脂肪の増加を抑制する作用、腎臓や肝臓や膵臓の働きを活発化させる作用、血糖値の上昇を抑える作用、脳への血流を良好なものにして脳細胞の代謝を活発化させる作用、肥満防止作用、アルコール代謝促進作用、体臭や口臭などの消臭作用、感情障害や不安障害の解消作用、脳卒中の後遺症の改善作用、大腸ガン抑制作用、成長ホルモン分泌促進作用などの薬理作用を奏する。

NCHCHCHCOOH

溶媒は、例えば、水(注射用水や生理食塩水やリンゲル液も含む)、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油などである。
【0015】
導電率調整剤は、例えば、エタノール、イソプロパノールなどである。
【0016】
溶解補助剤は、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、イソプロパノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどである。
【0017】
けん濁化剤は、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、界面活性剤(例えばモノステアリン酸グリセリン等)、親水性高分子(例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などである。
【0018】
等張化剤は、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール、D−ソルビトール、ブドウ糖などである。
【0019】
緩衝剤は、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などである。
【0020】
無痛化剤は、例えば、ベンジルアルコールなどである。
【0021】
防腐剤は、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などである。
【0022】
抗酸化剤は、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩などである。
【0023】
着色剤は、例えば、食用赤色2号或いは3号、食用黄色4号或いは5号、食用青色1号或いは2号等の食用色素である水溶性着色タール色素、これらの水溶性食用タール色素のアルミウム塩等の不溶性レーキ色素、β−カロチン、クロロフィル、ベンガラ等の天然色素などである。
【0024】
甘味剤は、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビアなどである。
【0025】
香料は、例えば、レモン、ラベンダー、或いは、ヒノキの香り用の水溶性エッセンスなどである。
【0026】
この噴霧剤は、GABAの濃度が好ましくは0.0097〜3.88mol/l、より好ましくは0.0097〜1.94mol/lである。GABAの濃度がこのような範囲であれば、適量のGABAを体内に摂取することができると共に、粘度や溶解性噴霧剤の液性状が適正となる。また、単位時間当たりの噴霧量を多くして短いサイクル(例えば1日)で噴霧剤を補充するような使用形態、及び、単位時間当たりの噴霧量を少なくして長いサイクル(例えば2〜3ヶ月)で噴霧剤を補充するような使用形態のいずれにも対応することができる。特に、GABAの濃度が0.0097〜1.94mol/lであれば、上記の単位時間当たりの噴霧量を多くして短いサイクルで噴霧剤を補充するような使用形態の場合に好適である。なお、GABAを溶媒としての水に溶解させた噴霧剤では、GABAの濃度0.0097〜3.88mol/lが0.1〜40質量%に相当し、GABAの濃度0.0097〜1.94mol/lが0.1〜20質量%に相当する。
【0027】
この噴霧剤は、導電率が好ましくは50〜1000μs/cm、より好ましくは100〜300μs/cmである。導電率がこのような範囲にあると、噴霧状態が安定し大粒の粒子が発生しないため、詰まり発生原因のひとつである円管状の噴霧ノズル先端への粒子付着がおこらない。導電率を小さくするには石油類の添加比率が増加させる必要があり、その上限は消防法にて定められておりこれを遵守するには上記範囲がより好ましい。
【0028】
この噴霧剤は、粘度が好ましくは0.1〜5.1cPであり、より好ましくは0.1〜3.0cPである。粘度がこのような範囲であると、噴霧装置に詰まり等の支障が起こりにくい。本数値は、0.4〜0.6mmの円管状の噴霧ノズルにて噴霧する場合、粘度が高くても印加電圧を上げたり、導電率を高めることで噴霧は可能であるが、オゾンが発生したりエタノールなどの溶液比率を上げる必要が発生するなど好ましくない。
【0029】
噴霧装置は、例えば、上記の噴霧剤を人間の体内空間に噴霧する薬液吸入用のネブライザや上記の噴霧剤を室内空間に噴霧するエアーコンディショナーに設けられた噴霧器などである。噴霧装置の噴霧方式は、例えば、超音波方式、ピエゾ方式、静電霧化方式等である。
【0030】
以上の噴霧装置による空間への噴霧剤の噴霧では、溶液の粒径が十分に小さい方が鼻や肺への進入が容易であり、その吸収が円滑に営まれるので、溶液を粒径10μm以下とすることが好ましく、5μm以下とするのがより好ましい。また、適量のGABAを体内に摂取するには、噴霧により空間のGABAの濃度を10μg/m〜100mg/mにするのがよい。なお、GABAの体内への最大摂取量は1日当たり1000mg程度であり、噴霧剤を室内空間に噴霧する場合には、GABA換算で1日当たり10g程度の量の噴霧剤を噴霧すればよい。
【0031】
以上のような空間の雰囲気改変方法によれば、GABA溶液を空間に噴霧するので、GABAが経鼻粘膜吸収や経肺吸収されることから、錠剤を飲むなどすることなくGABAを体内に摂取することができる。
【0032】
また、GABAが副鼻腔で経鼻粘膜吸収されて血管だけではなくてリンパにも入り、リンパに入ったGABAは脳血管関門を通過しないので、類縁体でないGABAそのものを脳内に摂取することができる。
【0033】
さらに、GABAが経鼻粘膜吸収や経肺吸収されて門脈を経由しないので、肝臓の初回通過による代謝を回避することができる。
【0034】
また、睡眠中に室内空間にGABA溶液の噴霧を行う場合には、血中のGABA濃度を高い状態に長時間維持できるので、それによって成長ホルモンの分泌促進を図ることができる。
【0035】
次に、このGABAを含む噴霧剤を噴霧する静電噴霧装置の構成について説明する。
【0036】
図4〜6は、本発明の実施形態に係る静電噴霧装置(10)を示す。
【0037】
この静電噴霧装置(10)は、噴霧カートリッジ(15)、電源(16)及び制御部(17)で構成されている。
【0038】
噴霧カートリッジ(15)は、溶液タンク(20)とノズルユニット(30)と電極ホルダー(40)とリング電極(35)とを備えている。
【0039】
溶液タンク(20)は、天板に空気抜き孔(25)が形成された中空のタンク本体(21)を備えている。タンク本体(21)の前面下端寄りには、水平方向に突出した管部(23)が設けられている。管部(23)は、タンク本体(21)の前面の壁に形成された貫通孔(24)を介してタンク本体(21)に通じている。
【0040】
ノズルユニット(30)は、内径が例えば0.4〜0.6mmの円管状の噴霧ノズル(31)と円筒型有底キャップ状のノズルホルダー(32)とを備えている。ノズルホルダー(32)は、管部(23)に被せられるように設けられている。噴霧ノズル(31)は、その基端部がノズルホルダー(32)の底部中央に挿入され、それによって管部(23)及び貫通孔(24)を介してタンク本体(21)に通じている。ノズルホルダー(32)には、外周から側方に延びるように形成された端子部(33)が設けられている。ノズルホルダー(32)及び端子部(33)は導電性樹脂で形成された電極に構成されており、噴霧ノズル(31)がこれに電気的に接続された構成となっている。
【0041】
電極ホルダー(40)は、間隔をおいて同心状に設けられて基端側で結合した内筒部(41)及び外筒部(42)を備えている。電極ホルダー(40)は、内筒部(41)がノズルホルダー(32)に嵌合するように設けられている。電極ホルダー(40)には、外筒部(42)の先端側の外周縁には、舌片で構成された端子部(36)が側方に張り出した円環状に形成されたリング電極が外嵌めされている。
【0042】
電源(16)は、直流高電圧電源である。この電源(16)は、その正極端子がノズルホルダー(32)の端子部(33)を介して噴霧ノズル(31)に、また、その接地された負極端子がリング電極(35)の端子部(36)にそれぞれ電気的に接続されている。
【0043】
制御部(17)は、電源(16)のオン/オフのスイッチング制御を行うように構成されている。
【0044】
なお、環境温度が低くなるとタンク本体(21)に貯留される噴霧剤の粘度が上昇して噴霧ノズル(31)が詰まる虞があるので、タンク本体(21)に対して、断熱材を設けるなどの断熱機構を構成しても、また、面上ヒータなどの加温機構を取り付けてもよい。
【0045】
次に、この静電噴霧装置(10)の噴霧剤の噴霧動作について説明する。
【0046】
この静電噴霧装置(10)では、溶液タンク(20)のタンク本体(21)内に、GABAを含む噴霧剤が貯留される。この噴霧剤は、GABAの濃度が好ましくは0.0097〜3.88mol/l、より好ましくは0.0097〜1.94mol/lであり、粘度が好ましくは0.1〜5.1cP、より好ましくは0.1〜3.0cPである。導電率は好ましくは50〜1000μs/cm、より好ましくは100〜300μs/cmである。タンク本体(21)内の液面(51)の位置は、噴霧ノズル(31)の先端よりも高く、タンク本体(21)内の液面(51)と噴霧ノズル(31)の先端との間にはそのヘッド差があるので、これによってタンク本体(21)内の噴霧剤が噴霧ノズル(31)の先端に供給される。
【0047】
そして、電源(16)がオンされると、噴霧ノズル(31)とリング電極(35)との間に例えば3〜7kV程度の電位差が付与され、噴霧ノズル(31)の先端近傍に電界が形成される。また、噴霧ノズル(31)内の噴霧剤が分極し、噴霧ノズル(31)の先端の気液界面(52)近傍に+(プラス)の電荷が集まる。そして、噴霧ノズル(31)の先端では、図7(A)に示すように、気液界面(52)が引き延ばされて円錐状となり、この円錐状となった気液界面(52)の頂部から一部の噴霧剤が引きちぎられるようにして液滴化し、室内空間に供給される。在室者は、呼吸する際に噴霧剤の液滴を空気と共に吸い込む。吸気中に含まれる液滴を在室者の肺胞へ到達させるには、液滴の粒径が10μm以下と小さいことが好ましく、5μm以下とするのがより好ましい。
【0048】
電源(16)がオフされると、噴霧ノズル(31)とリング電極(35)とが同電位となり、噴霧ノズル(31)の先端に形成された気液界面(52)では、図7(B)に示すように、表面張力とヘッド差に起因する液圧とが均衡した状態となるため、噴霧ノズル(31)の先端から水溶液が流出することはない。具体的には、噴霧ノズル(31)の先端の気液界面(52)に例えば20mmHOの液圧が作用しても、噴霧ノズル(31)の先端からの水溶液(50)の漏洩が阻止される。
【0049】
次に、この静電噴霧装置(10)の制御部(17)による運転動作制御について説明する。
【0050】
この静電噴霧装置(10)では、制御部(17)は、電源(16)をオンしている時間(オン時間)と電源(16)をオフしている時間(オフ時間)との比率であるデューティー比を制御することにより噴霧剤の噴霧の運転制御を行うようになっている。
【0051】
具体的には、この静電噴霧装置(10)では、定常噴霧時よりも噴霧開始時の方がデューティー比が高く設定されて、それによって定常噴霧時よりも噴霧開始時の方が単位時間当たりの噴霧量が高くなるように制御される。これによって、噴霧開始から短時間で空間内のGABAの濃度を高めることができる。
【0052】
また、この静電噴霧装置(10)では、定常噴霧時には、溶液タンク(20)内の液面(51)の高さによって噴霧ノズル(31)で負荷される噴霧剤への圧力が変化するので、その液面(51)の高さに応じてデューティー比が設定されて(液面(51)が高い程デューティー比が低い)、空間のGABAの濃度が一定になるように制御される。これによって、GABAの体内への摂取を安定に継続して行うことができる。
【0053】
次に、制御部(17)による噴霧剤の攪拌動作制御について説明する。
【0054】
噴霧ノズル(31)の先端では、噴霧剤からの溶媒の飛散、溶媒の選択的な電界吸引、GABAと溶媒との運動量の相異による濃度勾配の形成が起こると、噴霧剤の粘度上昇が起こり、それが噴霧ノズル(31)の詰まりなどの原因となる虞がある。この静電噴霧装置(10)では、噴霧剤の噴霧中及び停止中のいずれにおいても、一定インターバル毎(例えば、1〜10分毎)に所定時間(例えば、5〜20秒間)だけ電源(16)のオン及びオフを繰り返して(例えば、繰り返し周波数0.1〜10.0Hz)、電界の形成及び消滅を繰り返すように制御される。電源(16)がオンされて電界が形成されると、噴霧剤は噴霧ノズル(31)の先端からで徐々に膨出する一方、電源(16)がオフされて電界が消滅すると、噴霧ノズル(31)の先端から膨出した噴霧剤が噴霧ノズル(31)の内部に引っ込む。この電界の形成及び消滅を繰り返すことにより、噴霧剤は、噴霧ノズル(31)に対して出たり、引っ込んだりする挙動を繰り返し、この移動によって攪拌される。その結果、噴霧ノズル(31)の先端部における噴霧剤の濃度上昇を抑制することができる。
【0055】
次に、制御部(17)による睡眠時運転モード動作制御について説明する。
【0056】
この静電噴霧装置(10)では、睡眠時運転モードが選択されると、制御部(17)に接続された入眠検知センサ(図示せず)により人の入眠を検知し、入眠検知から一定時間経過後(例えば1時間経過後)に噴霧剤の噴霧を開始するように制御される。GABAの摂取効率は入眠から一定時間経過後に最も高くなるので、これによって効果的に成長ホルモンの分泌促進を図ることができる。
【0057】
なお、これに加えて、睡眠者の性別及び/又は体重及び/又は年齢の入力により最適な噴霧量が設定されるようにしてもよい。
【実施例】
【0058】
GABAの10質量%水溶液の噴霧剤を超音波方式のネブライザ、インクジェット方式の噴霧装置及び静電霧化方式の噴霧装置のそれぞれで噴霧し、そのときの溶液の粒径分布をQCMカスケードインパクタ及びDMA(微分型モビリティー分析器)を用いて計測した。計測は噴霧口から2〜3cmの箇所で実施した。
【0059】
図1は超音波方式のネブライザの、図2はインクジェット方式の噴霧装置の、そして、図3は静電霧化方式の噴霧装置による噴霧での溶液の粒径とその割合との関係を示す。なお、図1及び2はQCMカスケードインパクタによる計測結果、図3はDMAの計測結果である。
【0060】
これらの図によれば、超音波方式のネブライザ及びインクジェット方式の噴霧装置による噴霧では、溶液の粒径がほとんど25μmであって比較的大きいのに対し、静電霧化方式の噴霧装置による噴霧では、溶液の粒径のほとんどが1μm以下であって、他の方式のものに比べて小さいのが分かる。経肺吸収にとって、肺胞に到達する粒径は1〜2μmであり、最適粒径が0.1μmと言われている。従って、静電霧化方式の噴霧装置を用いるのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、溶媒に溶質としてγ−アミノ酪酸を溶解させた溶液を空間に噴霧するのに用いられる噴霧装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】超音波方式のネブライザによる噴霧での溶液の粒径とその割合との関係を示すグラフである。
【図2】インクジェット方式の噴霧装置による噴霧での溶液の粒径とその割合との関係を示すグラフである。
【図3】静電霧化方式の噴霧装置による噴霧での溶液の粒径とその割合との関係を示すグラフである。
【図4】静電噴霧装置(10)の概略構成図である。
【図5】噴霧カートリッジ(15)の斜視図である。
【図6】噴霧カートリッジ(15)の要部を示す断面図である。
【図7】(A)は噴霧中における噴霧ノズル(31)の先端を図示する断面図であり、(B)は噴霧の停止中における噴霧ノズル(31)の先端を図示する断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10 (静電)噴霧装置
16 電源
17 制御部
20 溶液タンク
31 噴霧ノズル
51 液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒に溶質としてγ−アミノ酪酸を溶解させた溶液を空間に噴霧するのに用いられる噴霧装置(10)であって、
噴霧剤を貯留する溶液タンク(20)と、
上記溶液タンク(20)内に通じるように設けられて該溶液タンク(20)から噴霧剤が供給される噴霧ノズル(31)と、
上記噴霧ノズル(31)から噴霧剤が噴霧されるように該噴霧ノズル(31)に電荷を与える電源(16)と、
上記電源(16)のオン/オフのスイッチング制御を行い、該電源(16)をオンしている時間と該電源(16)をオフしている時間との比率であるデューティー比を制御することにより上記噴霧ノズル(31)からの噴霧剤の噴霧を制御する制御部(17)と、
を備えることを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
請求項1に記載された噴霧装置(10)において、
上記噴霧ノズル(31)は、その内径が0.4〜0.6mmであることを特徴とする噴霧装置。
【請求項3】
請求項1に記載された噴霧装置(10)において、
上記制御部(17)は、定常噴霧時よりも噴霧開始時の方がデューティー比が高く設定され、定常噴霧時よりも噴霧開始時の方が単位時間当たりの噴霧量が高くなるように上記噴霧ノズル(31)からの噴霧剤の噴霧を制御することを特徴とする噴霧装置。
【請求項4】
請求項1に記載された噴霧装置(10)において、
上記制御部(17)は、上記溶液タンク内の噴霧剤の液面(51)が高い程デューティー比が低く設定され、液面(51)が下がると単位時間当たりの噴霧量が高くなるように上記噴霧ノズル(31)からの噴霧剤の噴霧を制御することを特徴とする噴霧装置。
【請求項5】
請求項1に記載された噴霧装置(10)において、
上記制御部(17)は、一定インターバル毎に所定時間だけ上記電源(16)のオン及びオフを所定周波数で繰り返すように構成されていることを特徴とする噴霧装置。
【請求項6】
請求項5に記載された噴霧装置(10)において、
上記一定インターバルが1〜10分であると共に、上記所定時間が5〜20秒であり、且つ上記所定周波数が0.1〜10.0Hzであることを特徴とする噴霧装置。
【請求項7】
請求項1に記載された噴霧装置(10)において、
上記制御部(17)に接続された入眠検知センサをさらに備え、
上記制御部(17)は、上記入眠検知センサによる入眠検知から一定時間経過後に上記電源(16)をオンにして上記噴霧ノズル(31)からの噴霧剤の噴霧を開始することを特徴とする噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−56032(P2007−56032A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276127(P2006−276127)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【分割の表示】特願2005−299735(P2005−299735)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】