説明

噴霧装置

【課題】振動子の振動に起因した高調波による他の電気機器の動作への干渉を、容易に抑制或いは低減させることが可能となる噴霧装置を提供する。
【解決手段】それぞれが固有の周波数で振動する複数の振動子を有し、前記複数の振動子の何れかを振動させて、供給された液体をミストにするミスト生成装置と、前記振動させられる振動子を、前記複数の振動子における他のものに切替える、切替動作を実行する切替部と、前記ミスト生成装置に液体を供給する液体供給部と、を備え、前記ミストを外部に放出する、噴霧装置であって、前記固有の周波数は、前記振動子ごとに異なるように設定されている噴霧装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水などの液体を霧状にして噴出する噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水(液体の一種と見ることもできる)を霧状にして噴出する噴霧装置の開発がなされている。噴霧装置の一例として特許文献1には、タンク内に溜めておいた水をミスト生成装置(超音波振動子ともいう)に供給し、振動を与えて霧状にするものが開示されている。当該噴霧装置の構成概略や動作原理等について、以下に簡潔に説明する。
【0003】
図9は、当該噴霧装置の構成図である。本図に示すように当該噴霧装置50は、本体51と、本体51の下方に着脱自在に取付けられるタンク52を備えている。また本体51は、給水棒53、給水棒収納部54、およびミスト生成装置55などから形成される。
【0004】
給水棒53は、例えば繊維を重ね合わせて縮充したフェルト素材を用いて、棒状に形成されている。フェルト素材は繊維の積層物であるため、給水棒53によれば、棒状の一端側(下部)から吸収された水は、毛細管現象によって、他端側(上側)に押し上げられることとなる。
【0005】
給水棒収納部54は、給水棒53を鉛直方向に立てた状態で収納可能となるように、上下方向に伸びた状態で、本体51に固定されて形成されている。また給水棒収納部54の下側は、タンク52が本体51に取り付けられた状態において、タンク52内へ突出するように設計されている。更に給水棒収納部54の下側には、タンク52に貯められている水を内側に進入させる開口部54a、および給水棒53を上側に(ミスト生成装置55に)付勢するバネ部材54bが設けられている。
【0006】
ミスト生成装置55は、タンク12内から供給された水を霧状(ミスト)にする装置である。図10に、ミスト生成装置55の構成図を示す。図10において、上側の図は、ミスト生成装置55を斜め上方から見た状態を表し、下側の図は、線分AA’を含む面を断面とした場合の断面図(但し、電源63等の部分は除く)を表している。本図に示すように、ミスト生成装置55は、薄板61の上面に、ドーナツ型形状(断面は略長方形)のセラミック振動子62が接着された構成となっている。
【0007】
薄板61は、例えばステンレスによって形成された略板状の部材であり、その中央の一定領域にはメッシュ部61aが設けられている。メッシュ部61aは、ミストが通る程度の大きさの微小孔が多数設けられた、メッシュ状に形成されている。またセラミック振動子62は、圧電セラミックにより形成されており、別途設けられた電源63によって所定電圧が印加されると、高周波(超音波)振動を発生させる。セラミック振動子62が振動すると、その振動は薄板61に伝わり、薄板61自体が振動することとなる。
【0008】
なおセラミック振動子62は、電源63によって所定電圧が印加されたとき、当該セラミック振動子62に固有の共振周波数で振動する。ミスト生成装置55の設計段階では、薄板61をある所望の周波数で振動させようとする場合、共振周波数がこの所望の周波数に略一致するように、セラミック振動子62の形状等が決定される。なおセラミック振動子の共振周波数は、その材質や形状(サイズや厚みなど)等によって定まり、同じセラミック振動子を異なる周波数で振動させることはできない。
【0009】
またタンク52は、本体51から取り外された状態で給水され、その後、本体51に取り付けられる。これにより、タンク52内の水は、開口部54aを通って給水棒53の下部に吸収され、上部に押し上げられる。
【0010】
またミスト生成装置55は、給水棒収納部54の上側(開口されている)に設置されており、給水棒53の上端が、薄板61の下面(特にメッシュ部61aの部分)に当接するようになっている。そしてミスト生成装置55が振動すると、この振動は薄板61を通じて、給水棒53によって押し上げられている水(特に、薄板61に接している水)に伝播する。その結果、この水はミスト(霧状)となり(つまり、ミストが生成され)、メッシュ部61aを介して、本体51の上部から外部に放出(噴霧)される。
【0011】
またタンク52内に溜められている水は、不図示の電解処理装置によって、電解水に変換されるようになっている。塩化物イオンを含む水(例えば水道水)から生成された電解水が、ミストとして外部に放出されることにより、ウィルス抑制効果などが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−168328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した通り、噴霧装置は、振動子を用いて水に振動を与えることによって、この水を霧状にすることが可能となっている。ところで振動子が振動すると、この振動に起因して電磁波(高調波)が発生することがある。
【0014】
噴霧装置がこのような高調波を発生させると、これに伴うノイズ(以下、「高調波ノイズ」と称することがある)が、当該噴霧装置の近辺にある他の電気機器の動作に干渉し、電気機器が誤動作を起こすといった不具合が生ずるおそれがある。この場合、当該電気機器から噴霧装置を遠ざけるといった対応も考えられるが、例えば車内で使用される場合のように、設置スペースが限られているときには、このような対応を採ることは難しい。
【0015】
本発明は上述した問題点に鑑み、振動子の振動に起因した高調波による他の電気機器の動作への干渉を、容易に抑制或いは低減させることが可能となる噴霧装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するため、本発明に係る噴霧装置は、それぞれが固有の周波数で振動する複数の振動子を有し、前記複数の振動子の何れかを振動させて、供給された液体をミストにするミスト生成装置と、前記振動させられる振動子を、前記複数の振動子における他のものに切替える、切替動作を実行する切替部と、前記ミスト生成装置に液体を供給する液体供給部と、を備え、前記ミストを外部に放出する、噴霧装置であって、前記固有の周波数は、前記振動子ごとに異なるように設定されている構成とする。
【0017】
本構成によれば、振動させられる振動子を切替えることにより、ミスト生成のための振動の周波数を変えることが可能である。そのため、振動子の振動に起因した高調波による他の電気機器の動作への干渉を、容易に抑制或いは低減させることが可能となる。例えば、噴霧装置の使用を中止したり、噴霧装置を電気機器から遠ざけたりすることなく、当該干渉を抑えることが可能となる。
【0018】
また上記構成において、前記切替部は、ユーザによる前記切替動作の実行指示を受付け、該実行指示がなされたときに、前記切替動作を実行する構成としてもよい。
【0019】
本構成によれば、ユーザが、振動子の振動に起因した高調波による不具合の発生を知ったときに、切替動作の実行指示を行って、当該不具合を極力回避させることが可能となる。
【0020】
また上記構成としてより具体的には、前記複数の振動子の各々は、圧電セラミックによって形成されており、前記固有の周波数は、前記振動子の共振周波数である構成としてもよい。
【0021】
また上記構成において、前記ミスト生成装置は、前記供給された液体が接する一の板状体に、前記複数の振動子が接着した態様で形成されており、前記複数の振動子における何れかの振動子を振動させることにより、該板状体を振動させて、前記供給された液体をミストにする構成としてもよい。
【0022】
本構成によれば、板状体は振動子の種類によらず共通に用いられるため、振動子ごとに別個の板状体が設けられるような場合に比べて、ミスト生成装置を簡潔な構成とすることが可能となる。
【0023】
また上記構成において、前記ミスト生成装置は、前記複数の振動子における一部の振動子が前記板状体の一方の面に接着し、その他の振動子が前記板状体の他方の面に接着した態様で、形成されている構成としてもよい。
【0024】
本構成によれば、板状体の同じ面に設置すると互いに干渉する形状の振動子同士であっても、これらを別々の面に設置して、当該干渉を回避することが可能となる。
【0025】
また上記構成において、前記ミスト生成装置は、前記複数の振動子における全ての振動子が、前記板状体における同一の面に接着した態様で、形成されている構成としてもよい。
【0026】
本構成によれば、板状体の一方の面のみに振動子を設置するだけで良いため、ミスト生成装置の製造工程を簡素化することが可能となる。
【0027】
また上記構成において、塩素を含んだ水が貯められるタンクと、該タンクに貯められている水を電気分解し、電解水を生成する電解処理装置と、を備え、前記液体供給部は、該電解水を前記ミスト生成装置に供給するものであり、前記ミスト生成装置は、供給された電解水をミストにする構成としてもよい。
【0028】
本構成によれば、活性酸素(次亜塩素酸およびOHラジカル)を生成して放出し、ウィルス抑制などの効果を発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
上述した通り、本発明に係る噴霧装置によれば、振動させられる振動子を切替えることにより、ミスト生成のための振動の周波数を変えることが可能である。そのため、振動子の振動に起因した高調波による他の電気機器の動作への干渉を、容易に抑制或いは低減させることが可能となる。例えば、噴霧装置の使用を中止したり、噴霧装置を電気機器から遠ざけたりすることなく、当該干渉を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る噴霧装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るミスト生成装置の構成図である。
【図3】当該ミスト生成装置の外観図である。
【図4】当該ミスト生成装置の設置状態を表す説明図である。
【図5】当該噴霧装置への給水に関する説明図である。
【図6】当該噴霧装置の給水直後の状態を表す説明図である。
【図7】ミスト生成装置への水の供給に関する説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る別態様であるミスト生成装置の構成図である。
【図9】従来の噴霧装置の一例についての構成図である。
【図10】従来のミスト生成装置の一例についての構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態について、噴霧装置の一例を挙げて以下に説明する。図1は、当該噴霧装置1(タンク12が本体11に取付けられた状態)の構成図である。なお噴霧装置1は、全体的に概ね円筒形状となっており、図1(特に断りの無い限り、他の図についても基本的に同様)は、この円筒の軸を含む面を断面とした、断面図として描かれている。また噴霧装置1は、図1に示すように、タンク12が下側となるように、台などに立てて置かれた状態で使用される。
【0032】
図1に示すように噴霧装置1は、本体11と、本体11の下部に着脱自在に取付けられるタンク12を備えている。また本体11は、給水棒13、給水棒収納部14、およびミスト生成装置15などから形成されている。噴霧装置1の各部は、特に材質に言及していない限り、例えばプラスチック成形品として形成される。
【0033】
給水棒13は、例えば繊維を重ね合わせて縮充したフェルト素材を用いて、棒状に形成されている。フェルト素材は繊維の積層物であるため、給水棒13によれば、棒状の一端側(下部)から吸収された水は、毛細管現象によって、他端側(上側)に押し上げられることとなる。
【0034】
給水棒収納部14は、給水棒13を鉛直方向に立てた状態で収納可能となるように、上下方向に伸びた状態で、本体11に固定されて形成されている。また給水棒収納部14の下側は、タンク12が本体11に取り付けられた状態において、タンク12内へ突出するように設計されている。更に給水棒収納部14の下側には、タンク12に貯められている水を内側に進入させる開口部14a、および給水棒13を上側に(ミスト生成装置15に)付勢するバネ部材14bが設けられている。なお給水棒収納部14の形状としては、図1に示す通り略管状が好適であるが、給水棒を適切に収納可能となっている限り、種々の形状が採用され得る。
【0035】
ミスト生成装置15(超音波振動子ともいう)は、タンク12内から供給された水を霧状(ミスト)にする装置である。図2に、ミスト生成装置15の構成図を示す。また図3に、ミスト生成装置15の外観図(斜め上方から見た状態であり、電源24等の表示は省略する)を示す。なお図2において、上段の図は、ミスト生成装置15を上側から見た図を、中段の図は、横方向から見た図(電源24等の部分を除き、線分AA’で切った場合の断面図)を、下段の図は、下側から見た図を、それぞれ表している。
【0036】
図2や図3に示すように、ミスト生成装置15は、外縁が円形である薄板21の両側の面のそれぞれに、ドーナツ型形状(断面は略長方形)のセラミック振動子が接着(設置)された構成となっている。より具体的には、薄板21の上面(上側に向けられる面)には、第1セラミック振動子22が、薄板21の下面(下側に向けられる面)には、第2セラミック振動子23が、それぞれ接着している。
【0037】
薄板21は、例えばステンレスによって形成された略板状の部材であり、その中央の一定領域(各セラミック振動子(22、23)に囲まれた領域の一部)には、メッシュ部21aが設けられている。メッシュ部21aは、ミストが通過できる程度の大きさの微小孔が多数設けられた、メッシュ状に形成されている。
【0038】
また各セラミック振動子(22、23)は、圧電セラミックにより形成されており、自身の表面(薄板21との接着面とは反対側の面)には、電極膜が形成されている。更に本体11内には、セラミック振動子(22、23)に所定の動作電圧を供給する電源24(例えば電池)が設けられている。そして電源24の一方の電極は、薄板21が電気的に接続され、他方の電極は、スイッチ25を介して、各セラミック振動子(22、23)に形成された電極膜に電気的に接続されている。
【0039】
スイッチ25は、電源24を、何れかのセラミック振動子(22、23)の電極膜に切替可能に接続する。なお、電源24のON/OFF(電力供給の有無)やスイッチ25の切替については、本体11に設けられたユーザインターフェース(不図示)の操作(例えばボタンスイッチの押下)を通じて、ユーザが自在に実行可能となっている。
【0040】
また各セラミック振動子(22、23)は、電源24から動作電圧が印加されると、高周波(超音波)振動を発生させる。なお当該振動の周波数は、セラミック振動子(22、23)の各々に固有の共振周波数となる。ここで、第1セラミック振動子22と第2セラミック振動子23とは、互いに共振周波数が異なるようになっている。なお、各セラミック振動子(22、23)は、その材質や形状(サイズや厚みなど)等のうちの、少なくとも一要素が互いに異なっており、これにより、共振周波数が異なるように設定されている。例えば、各セラミック振動子(22、23)のうち、一方の共振周波数は160kHzに、他方の共振周波数は200kHzに設定されている。
【0041】
一方のセラミック振動子(22、23)が振動を発生させると、その振動は薄板21に伝わり、セラミック振動子の振動の周波数と同じ周波数で、薄板21自体が振動することとなる。
【0042】
以上の説明から明らかなように、噴霧装置1は、ユーザによる、振動させるセラミック振動子(動作電圧を与えるセラミック振動子)を他のものに切替える切替動作の実行指示を受付ける。そして噴霧装置1は、この実行指示がなされたときに、当該切替動作を実行する。なお、セラミック振動子が3個以上設けられている場合、当該切替動作の実行指示だけでなく、何れのセラミック振動子に切替えられるようにするかが、ユーザによって指定可能となっていても良い。
【0043】
図4は、ミスト生成装置15の設置状態を表す図である。本図に示すように、ミスト生成装置15は、薄板21の下面の中央よりの領域(特にメッシュ部21a)が、給水棒13の上側先端に向かい合うように配置されている。先述したように、給水棒13はバネ部材14bによって上側へ付勢されるため、給水棒13の上側先端は、薄板21の下面に密着する。
【0044】
またミスト生成装置15は、薄板21の外縁よりの領域が、給水棒収納部14と固定部材31に挟まれるようにして、固定されている。これにより、ミスト生成装置15の位置を固定させつつ、薄板21の中央よりの領域を、振動させることが可能となっている。
【0045】
ミスト生成装置15は、上述した構成並びに配置となっており、電源24から動作電圧が印加されている間に、薄板21を振動させる動作(振動動作)を行う。薄板21が振動することによって、薄板21の下面に接する水(給水棒13によってタンク12から押し上げられた水)は霧状にされ、メッシュ部21aを通って薄板21の上面側に出てきたミストが、外部に放出される。
【0046】
タンク12は、水を貯えておくために利用される容器であり、図5に示すように、本体11から取り外された状態で手作業によって水が給水された後、本体11に取付けられる。なおタンク12の形状等については、図面に表されているものの他、種々のものが採用され得る。また本実施形態の説明では、タンク12に貯えられる液体として水(特に水道水が想定される)を例に挙げるが、他種の液体であっても構わない。
【0047】
またタンク12は、例えば螺子形状を利用した螺子止めや、フック状の部材を使った係り止め等によって、本体11の下部に着脱自在に取付けられる。本体11とタンク12との接合部分には、ゴム材質のパッキンが配置されており、タンク12が本体11に取付けられた状態では、タンク12の内部は、噴霧装置1の外側から密閉されるようになっている。
【0048】
図6は、給水直後の噴霧装置1の状態を表している。このようにタンク12への給水は、給水棒13の下側に水が吸収されるように、水位が開口部14aの位置よりも十分高くなるようになされる。その結果、図7に示すように、タンク12内の水は、給水棒13によって押し上げられ、薄板21の下面に接するようになる。このようにして、タンク12内の水は、ミスト生成装置15へ供給される。
【0049】
上述した通り、噴霧装置1は、水が貯められて重くなるタンク12が極力下方に設けられていることで、装置全体の重心が下がり、コンパクトに構成されていても姿勢が安定する(例えば、多少揺らされても倒れない)ようになっている。また、ミストを生成して放出するミスト生成装置15が極力上方に設けられていることで、噴霧装置1は、ミストを出来るだけ上部から放出させ、外部空間により広く行き届かせることが容易となっている。
【0050】
[噴霧装置の動作内容等について]
図7に示すように、水がミスト生成装置15へ供給される状態となった噴霧装置1は、ミストを生成して外部に放出する動作を行うことが可能である。次に、噴霧装置1の動作内容や使用方法について説明する。
【0051】
ユーザによって電源ONの操作がなされると、セラミック振動子(22、23)の一方(スイッチ25を介して電源24に接続されている方)に動作電圧が供給される。これにより、ミスト生成装置15は振動動作を開始する。その後、電源OFFの操作がなされるまで、振動動作は継続される。またユーザによってスイッチ25の切替の操作がなされると、振動動作を行うセラミック振動子(22、23)が変更される。
【0052】
給水棒13の作用によって薄板21の下面に到達した水は、ミスト生成装置15の振動動作によって霧状となり、先述した通り、メッシュ部21aを通って外部に放出される。これにより、ミストを生成して外部に放出するという噴霧装置の主目的が達成される。給水棒の作用によって、水はタンク12からミスト生成装置15へ継続的に供給されるため、ミスト生成は継続的に実行される。
【0053】
ところで噴霧装置1を使用している間、ミスト生成装置15の振動に起因した電磁波(高調波)が発生することがある。そのため、噴霧装置1の近辺において他の電気機器が存在する場合、この発生した電磁波が、高調波ノイズとして当該電気機器の動作に干渉し、不具合を引き起こすおそれがある。一例としては、テレビ受像機やラジオ等の受信品質が劣化したり、車などのキーレスエントリー装置が誤動作を起こしたりといった具合である。このような不具合は、主に、噴霧装置1が放出する高調波の周波数特性(特に、振幅がピークとなる周波数)が、他の電気機器で用いられる電波の周波数特性に一致或いは近似することで引き起こされる。
【0054】
しかしながらユーザは、このような不具合が生じた場合(不具合が生じたことを知った場合)において、スイッチ25を切替えるという対応を採ることができる。先述した通り、スイッチ25が切替えられると、動作電圧の供給先が切替り、振動を発生させるセラミック振動子(22、23)が変更される。
【0055】
例えば、第1セラミック振動子22が振動を発生させている状態において、スイッチ25が切替えられると、第1セラミック振動子22は振動を停止し、第2セラミック振動子23が、新たに振動を発生させるようになる。その結果、薄板21の振動を継続させた状態で(つまり、噴霧装置1の使用を中断させる必要なく)、噴霧装置1から放出される高調波の周波数が変更されることになる。
【0056】
そのため噴霧装置1によれば、当該変更の前に比べて、噴霧装置1から放出される高調波の周波数特性と、他の電気機器で用いられる電波の周波数特性との差異を大きくすること(換言すれば、双方の近似度合を小さくすること)が可能となっている。その結果、噴霧装置1の使用によって生じる電磁波が、他の電気機器の動作に極力干渉しないようにし、上述した不具合を抑えることが可能である。
【0057】
なお高調波の周波数は、通常、基本周波数の整数倍になる。そのため、例えばミスト生成装置15における振動の周波数を、100kHzと200kHz(一方が他方の整数倍となっている)の間で切替えても、高調波の周波数特性の変動は比較的少なく、他の電気機器の動作への干渉を低減させる効果は小さいと考えられる。そこでミスト生成装置15に設けられる各振動子に係る周波数(共振周波数)は、互いに、他の振動子に係る周波数の整数倍とはならないように、適切に設定されていることが望ましい。
【0058】
[セラミック振動子の個数や設置態様について]
噴霧装置1においては、セラミック振動子を複数個有することによって、ミスト生成装置15の振動の周波数を調節可能としている。本実施形態では、2個のセラミック振動子を備えるようにしているが、当該周波数をより多段階に調整可能とするため、3個以上のセラミック振動子を備えるようにしても構わない。また、各セラミック振動子の材質や形状などは、図2等に示したものに限られず、種々の態様とすることができる。なお本実施形態では、固有の周波数で振動する振動子としてセラミック振動子が採用されているが、他種の振動子が採用されても構わない。
【0059】
また薄板21へのセラミック振動子(22、23)の設置態様(主に、設計段階での決定事項)に着目すると、図2等に示すように、第1セラミック振動子22は薄板21の上面に、第2セラミック振動子23は、薄板21の下面に設置されている。つまりこれらは互いに、薄板21の別の面に設置されている。
【0060】
そのため、第1セラミック振動子22と第2セラミック振動子23とを、互いに干渉させることなく、薄板21へバランス良く(互いに略回転体であるセラミック振動子(22、23)と薄板21との軸が、ほぼ一致するように)設置することが可能となっている。なお図2に示すように、第1セラミック振動子22の外径は、第2セラミック振動子の内径より大きいため、双方のセラミック振動子(22、23)を同一の面に設置しようとしても、互いに干渉するために、このような設置は困難であったといえる。このように、ミスト生成装置15の仕様設計において、薄板21の両面をセラミック振動子の設置面とすれば、セラミック振動子の設置の自由度が大きくなる。
【0061】
ただし双方のセラミック振動子(22、23)が干渉しないように設置できるような場合は、図8(図2の変形例に相当)に示すように、双方のセラミック振動子(22、23)が、薄板21の同一の面に設置されるようにしても構わない。このようにすれば、薄板21の一方の面にはセラミック振動子が配置されず、他方の面にのみ配置されるので、ミスト生成装置15の製造工程を簡素化すること(例えば、薄板21を裏返す工程の省略)等が容易となる。なおセラミック振動子が3個以上設置される場合であっても、これら全てのセラミック振動子が、薄板の同一の面に設置されるようにすることで、同様の利点を享受することが可能である。
【0062】
何れにしても、各セラミック振動子は、一枚の板状体である薄板21に設置されており、この薄板21を振動させてミストを生成するようになっている。ミスト生成装置15はこのような構成となっているため、ミストを生成するための板状体が振動子ごとに別個に設けられるような場合に比べ、簡潔な構成となっている。
【0063】
[その他]
また噴霧装置1においては、タンク12内の水を電気分解して電解水とするための、電解処理装置を備えておくことが望ましい。電解処理装置は、タンク12内の水に接するように設置された一対の電極(正極と負極)を有し、例えばユーザによる主動作開始の指示がなされたときに当該電極間に電圧を印加し、タンク12内の水を電気分解する。
【0064】
電解処理装置が備えられている場合、タンク12に給水される水として、水道水のように塩素(塩化物イオン)を含む水が用いられると、噴霧装置1は、水の電気分解によって活性酸素(次亜塩素酸とOHラジカル)を生成し、ミストの放出に伴ってこれらの物質をも外部へ放出する。その結果、噴霧装置1は、ウィルスの抑制などの効果を発揮する。このような効果については、例えばウェブサイト(http://jp.sanyo.com/vw/concept/index.html)にも掲載されているように公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0065】
また噴霧装置1においては、タンク12内の水をミスト生成装置15に供給する手段として、給水棒13を用いているが、他の手段が利用されるようにしても構わない。例えば、タンク12内からミスト生成装置15への水の流動経路を、管状の部材等によって形成しておき、タンク12内の水を加圧することにより、ミスト生成装置15に水が押し上げられるようにしても良い。なおタンク12内の水の加圧は、タンク12内の空気層を密閉状態としておき、ファン等の送風装置を使って、タンク12の外部から内部に空気を送り込む(空気圧を増大させる)こと等により実現可能である。
【0066】
以上に説明した通り、本実施形態の噴霧装置1は、それぞれが固有の周波数(共振周波数)で振動する複数のセラミック振動子(22、23)を有し、複数のセラミック振動子(22、23)の何れかを振動させて、供給された水(液体)をミストにするミスト生成装置15を備えている。
【0067】
また噴霧装置1は、この振動させられる振動子を、ユーザによる実行指示に応じて、複数のセラミック振動子(22、23)における他のものに切替える機能部(ユーザインターフェースや、スイッチ25等が該当)と、ミスト生成装置15に水を供給する液体供給部と、を備え、当該ミストを外部に放出するものとなっている。そして更に、当該固有の周波数は、第1セラミック振動子22と第2セラミック振動子23とで異なるように設定されている。
【0068】
そのため噴霧装置1によれば、振動させられる振動子を切替えることにより、ミスト生成のための振動の周波数を変えることが可能となっている。これにより、振動子の振動に起因した高調波による他の電気機器の動作への干渉を、容易に抑制或いは低減させることが可能となっている。例えば、噴霧装置の使用を中止したり、噴霧装置を電気機器から遠ざけたりすることなく、当該干渉を抑えることが可能となっている。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、液体を霧状にして放出する噴霧装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 噴霧装置
11 本体
12 タンク
13 給水棒
14 給水棒収納部
14a 開口部
14b バネ部材
15 ミスト生成装置(超音波振動子)
21 薄板(板状体)
21a メッシュ部
22 第1セラミック振動子
23 第2セラミック振動子
24 電源
25 スイッチ(切替部)
31 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが固有の周波数で振動する複数の振動子を有し、前記複数の振動子の何れかを振動させて、供給された液体をミストにするミスト生成装置と、
前記振動させられる振動子を、前記複数の振動子における他のものに切替える、切替動作を実行する切替部と、
前記ミスト生成装置に液体を供給する液体供給部と、を備え、
前記ミストを外部に放出する、噴霧装置であって、
前記固有の周波数は、前記振動子ごとに異なるように設定されていることを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
前記切替部は、
ユーザによる前記切替動作の実行指示を受付け、
該実行指示がなされたときに、前記切替動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記複数の振動子の各々は、圧電セラミックによって形成されており、
前記固有の周波数は、前記振動子の共振周波数であることを特徴とする請求項2に記載の噴霧装置。
【請求項4】
前記ミスト生成装置は、
前記供給された液体が接する一の板状体に、前記複数の振動子が接着した態様で形成されており、
前記複数の振動子における何れかの振動子を振動させることにより、該板状体を振動させて、前記供給された液体をミストにすることを特徴とする請求項3に記載の噴霧装置。
【請求項5】
前記ミスト生成装置は、
前記複数の振動子における一部の振動子が前記板状体の一方の面に接着し、その他の振動子が前記板状体の他方の面に接着した態様で、形成されていることを特徴とする請求項4に記載の噴霧装置。
【請求項6】
前記ミスト生成装置は、
前記複数の振動子における全ての振動子が、前記板状体における同一の面に接着した態様で、形成されていることを特徴とする請求項4に記載の噴霧装置。
【請求項7】
塩素を含んだ水が貯められるタンクと、
該タンクに貯められている水を電気分解し、電解水を生成する電解処理装置と、
を備え、
前記液体供給部は、該電解水を前記ミスト生成装置に供給するものであり、
前記ミスト生成装置は、供給された電解水をミストにすることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の噴霧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−92833(P2011−92833A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247739(P2009−247739)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】