説明

回収散布装置

【課題】フラックスの貯留容量が大きく、大量のフラックスを搬送して搬送して適切な量で散布することができるホッパを備えた回収散布装置を提供すること。
【解決手段】回収散布装置50は、フラックスFを貯留するホッパ52を載設した回収散布台車51を備えると共に、フラックスFを散布し、使用済のフラックスFを回収する。ホッパ52は、上方に向かって開口した上部開放口52e,52e'と、ホッパ52の内底52h,52h'に形成された下部開放口52f,52f'と、下部開放口52f,52f'を開閉する開閉弁57,58と、を備えている。下部開放口52f,52f'の搬送方向の長さが、上部開放口52e,52e'の搬送方向の長さの1/5以上の長さに形成されている。内底52h,52h'の面積S2は、上部開放口52e,52e'の面積S1の20%以上の大きさに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮止めされた被溶接材の溶接線に沿って片面自動溶接を行う際に、溶接線の裏面に押し当てる裏当フラックスを供給すると共に、溶接で生成された使用済フラックスを回収する回収散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶等に用いられる鋼板は、大きな鋼板面積を必要とすることから溶接によりある大きさの鋼板を繋ぎ合わせて形成されている。その鋼板の溶接作業に使用される片面溶接装置では、溶接機によって被溶接材(被溶接鋼板)を片側からアーク溶接する際に、鋼板裏面に溶接ビードを形成するために、被溶接材の溶接線に沿って、裏当装置により鋼板裏面にトラフ内の裏当フラックスを押し当てながら溶接が行われる。
【0003】
その裏当フラックスや、裏当フラックスの下層に敷設される下敷フラックスや、使用済の裏当フラックスは、一般に、それらのフラックスを貯留するホッパを搭載した回収散布台車(台車)等から主に構成された回収散布装置によって搬送、供給、除去及び回収が行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
その回収散布台車は、パネルラインの下部に位置し、裏当装置に設けた昇降装置が下降して形成された裏面の空間を溶接線に沿って移動する必要があるので、回収散布台車の高さ及び幅の寸法が制約されていて、台車全体の大きさが限られている。
【0005】
特許文献1,2に記載されているように、回収散布台車に搭載される従来のホッパは、正面視及び側面視して、下方に向かって縮径する略逆三角形の形状に形成されて、上部開放口から下部開放口に向かってロート状に体積が縮小する形状に形成されている。そのホッパの内底には、フラックスを散布する下部開放口が形成されている。このように、ホッパは、ホッパ内に貯留されたフラックスが、上層から下層に向かって円滑に供給されるように、収納部の内壁面が上部開放口から内底に向かって傾斜した逆四角錐形に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−175447号公報(段落[0058]、図1、図3及び図4)
【特許文献2】特許第3930793号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に記載された回収散布装置では、回収散布台車の高さ及び幅の外形寸法が制限されているので、ホッパ全体の大きさも制限されている。このため、回収散布台車でフラックスを一度に搬送して散布できる貯留容量も限られていた。
【0008】
本発明は、その問題点に鑑み創案されたものであり、その課題は、フラックスの貯留容量が大きく、一度に大量のフラックスを搬送して適切な量で散布することができるホッパを備えた回収散布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、請求項1記載の回収散布装置は、被溶接材同士を突き合わせた溶接線に沿って片面溶接する際に用いられるフラックスを貯留するホッパを載設し、前記溶接線に沿って移動する回収散布台車を備えると共に、前記フラックスを散布し、使用済のフラックスを回収する回収散布装置において、前記ホッパは、上方に向かって開口した上部開放口と、前記ホッパの内底に形成された下部開放口と、該下部開放口を開閉する開閉弁と、を備え、前記下部開放口の搬送方向の長さが、前記上部開放口の搬送方向の長さの1/5以上の長さに形成されて、前記内底の面積が、前記上部開放口の面積の20%以上の大きさに形成されていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、回収散布装置のホッパは、従来一般に使用されているホッパの上部開放口に対する内底の面積の割合と比較して広くなっている。このように形成されたホッパは、ホッパ全体の高さ、長さ及び幅の外形寸法を規定寸法に維持しながら、内底の面積を増大させたことに伴って、フラックスの貯留容量を従来のホッパの貯留容量よりも大きくすることができる。さらに、下部開放口の搬送方向の長さをホッパの上部開放口の1/5以上とすることによって、ホッパ内部のフラックスを無駄なく使うことができる。
【0011】
請求項2記載の回収散布装置は、請求項1に記載の回収散布装置であって、前記ホッパは、搬送方向側の前後の内壁が、垂直に形成されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、ホッパは、搬送方向側の前後の内壁が垂直になっていることによって、側面視して矩形な形状に形成されている。このため、ホッパ内の容積(フラックスの貯留容量)は、前後の内壁が傾斜していない分だけ増大される。
【0013】
請求項3記載の回収散布装置は、請求項1または請求項2に記載の回収散布装置であって、前記下部開放口は、最大に開放されたときの最大開口面積が、前記上部開放口の面積の10%以上に形成されていることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、ホッパは、内底に上部開放口の面積の10%以上の大きさの下部開放口が形成されているので、その内底の面積が、下部開放口の面積よりもさらに広大に形成されることになる。このため、ホッパは、内底の面積が広く形成されていることに伴って、フラックスの貯留容量が従来のホッパの貯留容量よりも増大している。
【0015】
請求項4記載の回収散布装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の回収散布装置であって、前記フラックスは、前記被溶接材の前記溶接線の裏側に押し当てられる裏当フラックスと、裏当フラックスの下側に敷設される下敷フラックスとの二種類からなり、前記ホッパは、当該ホッパ内を、前記裏当フラックスが収納される裏当フラックス収納部と、前記下敷フラックスが収納される下敷フラックス収納部とに区画する仕切板を備え、前記開閉弁は、前記ホッパの内底の下にそれぞれ設けられ、前記下部開放口を開弁して前記裏当フラックスまたは前記下敷フラックスを散布することを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、回収散布装置のホッパは、裏当フラックスが収納される裏当フラックス収納部と、下敷フラックスが収納される下敷フラックス収納部との二つの収納部の底面がそれぞれ広くなっているので、二つの収容部の容積も大きくなっている。このため、回収搬送台車は、一度に裏当フラックスと下敷フラックスとを大量に搬送して、開閉弁を開弁すれば、それぞれの適量のフラックスが散布される。
【0017】
請求項5記載の回収散布装置は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回収散布装置であって、前記開閉弁は、前記下部開放口の下に水平方向に摺動可能に配置されると共に、前記フラックスを排出する散布口が形成され、前記フラックスは、前記開閉弁を摺動して前記散布口が前記下部開放口と重なった際に、前記下部開放口を通って前記散布口から散布されることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、回収散布装置は、開閉弁を適宜に開閉操作すれば、ホッパに積載された下敷フラックスまたは裏当フラックスが散布される。
【0019】
請求項6記載の回収散布装置は、請求項5に記載の回収散布装置であって、前記下部開放口は、前記回収散布台車の搬送方向に長い矩形に形成され、前記散布口は、前記回収散布台車の搬送方向に向けて複数形成されると共に、前記溶接線に沿って一列に配置されていることを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、回収散布装置の散布口は、回収散布台車の搬送方向に向けて複数形成されると共に、溶接線に沿って一列に配置されていることにより、フラックスを溶接線と合った位置に正確に散布することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係る回収散布装置によれば、回収散布装置のホッパの内底の面積を、上部開放口の面積の20%以上の大きさに形成したことによって、回収散布台車の外形寸法の制限があったとしても、その外径寸法の制限内の大きさのままで、フラックスの貯留容量を飛躍的に増大させて、一度に大量のフラックスを搬送して適切な量で散布することができる。このため、回収散布装置は、フラックスを短時間で大量に搬送することができるので、フラックスの搬送効率を向上させることができる。
【0022】
本発明の請求項2に係る回収散布装置によれば、搬送方向側の前後の内壁が垂直で、傾斜していない分だけ、ホッパ内の容積を増大させて、ホッパの積載能力を向上させることができる。
【0023】
本発明の請求項3に係る回収散布装置によれば、下部開放口が最大に開放されたときの最大開口面積を、上部開放口の面積の10%以上に形成したことによって、回収散布台車の外形寸法の制限があったとしても、その外径寸法を超えることなく、従来のホッパと比較してフラックスの貯留容量を増大させて、一度に大量のフラックスを搬送して散布することができる。このため、回収散布装置は、フラックスを短時間で大量に搬送して散布することができるので、フラックスを回収散布台車に積載して補充する作業回数を削減し、フラックスの搬送効率及び散布効率を向上させることができる。
【0024】
本発明の請求項4に係る回収散布装置によれば、ホッパが裏当フラックス収納部と下敷フラックス収納部との二つの収納部を備えていることによって、一度に大量の裏当フラックス収納部と下敷フラックスとを搬送して、それぞれのフラックスを適量に散布することができる。このため、ホッパを搭載した回収散布台車は、裏当フラックスと下敷フラックスとを搬送して散布する際に、一台の台車で効率よく散布作業を行うことができるため、散布作業の作業効率を向上させることができる。
【0025】
本発明の請求項5に係る回収散布装置によれば、開閉弁を適宜に開閉操作すればホッパに積載された下敷フラックスまたは裏当フラックスを適宜に散布することができる。
【0026】
本発明の請求項6に係る回収散布装置によれば、フラックスの散布口が、回収散布台車の搬送方向に向けて複数形成されると共に、溶接線に沿って一列に配置されていることによって、フラックスを溶接線の位置に合わせて正確に散布させることができる。このため、片面溶接装置で溶接する際に、フラックスの密着不良によって溶接不良が発生するのを抑制して、良好な溶接形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る回収散布装置が使用される片面溶接装置を示す要部拡大縦断面図である。
【図2】本発明に係る回収散布装置が使用される片面溶接装置を示す一部断面を有する要部斜視図である。
【図3】本発明に係る回収散布装置を示す一部断面を有する要部拡大正面図である。
【図4】本発明に係る回収散布装置を示す図であり、車輪でフラックスを押圧しているときの状態を示す一部断面を有する要部拡大正面図である。
【図5】本発明に係る回収散布装置を示す図であり、フラックスを上昇させたときの状態を示す一部断面を有する要部拡大正面図である。
【図6】本発明に係る回収散布装置を示す側面図である。
【図7】本発明に係る回収散布装置を示す図であり、下部開放口が閉弁されているときの状態を示す拡大平面図である。
【図8】本発明に係る回収散布装置を示す図であり、下部開放口が開弁されたときの状態を示す拡大平面図である。
【図9】本発明に係る回収散布装置のホッパを示す概略斜視図である。
【図10】回収散布装置のホッパの比較例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る回収散布装置50の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態の説明において、長手方向は被溶接材Eの溶接線Mに平行な方向、幅方向は溶接線Mに直交する方向とする。回収散布装置50を説明するのに先立って、この回収散布装置50が使用される片面溶接装置1を説明する。
【0029】
≪片面溶接装置の構成≫
図1に示すように、片面溶接装置1は、フラックスFを用いて被溶接材E,E同士を溶接線Mに沿って溶接機30により片面溶接する溶接装置である。片面溶接装置1は、それぞれ後記する溶接機30と、台車フレーム104と、被溶接材搬送及び固定手段105と、裏当装置10と、支持構造体20と、架台フレーム27と、昇降装置26と、回収フラックス搬送装置28と、回収散布装置50(図2参照)と、を備えている。
【0030】
<フラックスの構成>
図2に示すように、フラックスFは、溶接で生じる酸化物や有害物の除去、溶接部の大気遮断、溶接部形状の整形などの目的で使用される粉末状の材料からなる。フラックスFは、例えば、溶接線M(図1参照)の裏側に押し当てられる裏当フラックスF1と、裏当フラックスF1の下側に敷設される下敷フラックスF2との二種類からなる。裏当フラックスF1と下敷フラックスF2とは、後記する回収散布装置50の回収散布台車51のホッパ52内にそれぞれ分けて貯留されて搬送され、トラフ40の上に散布されて積層される。その後、上層の裏当フラックスF1は、溶接の際に、被溶接材E(図1参照)の溶接部の裏面側に密着するように供給される。
【0031】
≪被溶接材の構成≫
図1に示すように、被溶接材Eは、船舶等で用いられる大きな面積を有する鋼板等であり、例えば、1辺が10〜30mの長さの大型の金属製平板材からなる。この被溶接材Eは、溶接機30によりある大きさの鋼板の溶接線Mを溶接して繋ぎ合わせて形成される。
【0032】
≪溶接機の構成≫
図1に示すように、溶接機30は、裏当装置10の上方に配置され、溶接線Mの表側から被溶接材Eを溶接する機械である。溶接機30は、裏当装置10の裏当部材11の長手方向に沿って延設される溶接機ビーム101を走行させる溶接機走行台車31と、溶接機走行台車31に移動可能に取り付けられた調整治具32と、調整治具32に取り付けられた溶接トーチ33とを備えている。
【0033】
そして、溶接機走行台車31にベアリング31aが固定され、固定されたベアリング31aを介して調整治具32に設けられた溶接機移動用レール32aが移動することによって、調整治具32が裏当部材11の幅方向に移動し、調整治具32に取り付けられた溶接トーチ33が移動する。
【0034】
≪台車フレームの構成≫
図2及び図3に示すように、台車フレーム104は、鋼製の角材を枠組みして、断面視凹状を呈するように形成されており、上方が開放され内部に裏当装置10が支持され、裏当装置10の長手方向に沿って延設されるフレームである。台車フレーム104は、長手方向に沿って並設された2本の主梁104aと、主梁104a,104aの間に直角に連結された連結梁104bと、連結梁104bに垂直に立設された連結梁104cと、主梁104a,104aの上方で、それぞれ平行に設置された補助梁104d,104dと、補助梁104d,104dから裏当装置10の反対側に向かって張出した片持梁104eとを備えている。また、台車フレーム104は、連結梁104bの下方に車輪108が設置され、裏当装置10の長手方向に所定の間隔をあけて並設された複数の棒状レール107の上を車輪108が移動することによって、裏当装置10の幅方向に移動する。
【0035】
被溶接材搬送及び固定手段105は、台車フレーム104の補助梁104dの上部に配置され、裏当装置10の上方で被溶接材E(図1参照)を水平移動させるもので、パネル移動ローラ105a、マグネット装置105b等で構成されている。また、搬送及び固定手段105による被溶接材E(図1参照)の搬送を補助するために、台車フレーム104の上部(片持梁104e)には、補助ローラ106が配置されている。
【0036】
≪裏当装置の構成≫
図1に示すように、裏当装置10は、前記被溶接材E,E同士を突き合わせた溶接線Mの裏面にフラックスFを押し当てる装置であり、片面サブマージアーク溶接を行なう片面溶接装置1に設置されている。
図3に示すように、裏当装置10は、それぞれ後記する裏当部材11と、この裏当部材11を上昇及び下降させるエアホース25とを備え、支持構造体20の上に設けられている。
【0037】
≪裏当部材の構成≫
図3に示すように、裏当部材11は、トラフ40内に収納したフラックスFを溶接線Mの裏面に押し当てる部分である。この裏当部材11は、例えば、トラフ40内に収納したフラックスFを溶接線Mの裏面に押し当てるトラフタイプの裏当装置10のものからなる。裏当部材11は、フラックスFと、フラックスFを保持するトラフ40と、トラフフレーム41とを備えている。図4に示すように、裏当装置10の上部には、トラフ40に裏当フラックスF1及び下敷フラックスF2を供給する回収散布装置50が溶接線Mの方向(図1参照)に移動自在に配置されている。
【0038】
≪トラフの構成≫
図4に示すように、トラフ40は、回収散布装置50から供給されたフラックスFが溶接線M(図1参照)の下方の位置に供給されるように支持する長尺の容器状のものからなる。トラフ40は、溶接線Mに沿って配置され、正面視して略U字状、平面視して略直線状の溝に形成された耐熱性を有する弾性体からなる。トラフ40は、トラフフレーム41の一対のトラフ支持フレーム41a,41aの両上端部内側に、このトラフ40の上部両端部を介在して、固定プレート41bを宛がった状態で固定プレート41bと共に固定具41cによって固定されることにより、そのトラフ支持フレーム41a,41aの両上端部間に掛け渡すように配置されている。トラフ40は、その底部分が、その下方に配置された第1エアホース25a、または、第2エアホース25bの膨張により、上方向へ押し上げられたときに変形する素材で形成されている。
【0039】
≪トラフフレームの構成≫
図5に示すように、トラフフレーム41は、トラフ40の左右端部を保持するフレーム部材である。トラフフレーム41は、トラフ40の左右両側に立設されたトラフ支持フレーム41a,41aと、このトラフ支持フレーム41a,41aにトラフ40を固定するための固定プレート41b,41bと、固定プレート41b,41bをトラフ支持フレーム41a,41aに固定するための固定具41c,41cと、前記トラフ支持フレーム41a,41aを立設させる支持板42と、支持板42の下面中央部に垂下されたガイド棒24と、後記する回収散布台車51の車輪59が転動する軌条44(図6参照)と、を一体に固定してなる。このトラフフレーム41は、第3エアホース25cの膨張及び収縮と、昇降装置26との2種類の昇降手段によって、上昇及び下降できるように構成されている。
【0040】
≪エアホースの構成≫
図4及び図5に示すように、エアホース25は、このエアホース25内に送り込まれる圧縮空気による膨張または収縮によって高さが可変するホースである。エアホース25は、フラックスFを収納したトラフ40を直接または間接的に上昇及び下降させて、フラックスFを被溶接材Eの溶接線Mの裏面に押し付けるために昇降させる昇降装置の機能を果たす。エアホース25は、例えば、1本の第1エアホース25aと、1本の第2エアホース25bと、2本の第3エアホース25cの合計4本で、三種類のホースからなる。第1エアホース25a、第2エアホース25b及び第3エアホース25cは、加圧装置(図示省略)にそれぞれ接続されて、圧縮空気が供給されるようになっている。
【0041】
第1エアホース25a、第2エアホース25b、ホースバンド(図示省略)及びホースバンド固定用クリップ(図示省略)は、断面U字状のトラフ40の下方に、断面視して凹状に形成されたトラフフレーム41の内底上に載設されている。第1エアホース25a及び第2エアホース25bは、トラフ40とトラフフレーム41の上部との間で、第1エアホース25aより小径の第2エアホース25bが第1エアホース25aと縦の配列となるように上下に重ねた状態で、トラフフレーム41の長さ方向に沿って配置されている。
【0042】
≪支持構造体の構成≫
図5に示すように、支持構造体20は、上部に裏当部材11を搭載するフレームであり、溶接線Mに沿って配置されている。支持構造体20は、裏当部材11の長手方向に沿って延設された天板23と、天板23の幅方向の両側に垂設された側板22,22と、両方の側板22,22の間に水平に連結された底板21と、一方の側板22に設けられたチェーン支持レール71,72と、このチェーン支持レール71,72の上方に設置され、無端チェーン(図示省略)上にフラックスFが落下するのを抑制するカバー部材29と、を備えて構成されている。
【0043】
天板23は、裏当部材11の長手方向全長に亘って延設された長尺の厚板材であり、その上部に第3エアホース25c,25cが配置されている。天板23に載置された一対の第3エアホース25c,25c間には、ガイド棒24が上下動自在に挿入されてガイドされるガイド穴(図示省略)が形成されている。
【0044】
図3に示すように、底板21は、後記する架台フレーム27の上部に配置された裏当ローラ部27aに支持され、溶接線Mに対する裏当部材11の幅方向の位置を調整する。その底板21には、上昇した際のガイド棒24のストッパ24aが底板21に当接する。そして、支持構造体20は、底板21に係合する係合部を備えた支持構造体駆動装置(図示省略)によって、裏当ローラ部27a(図2参照)の上を幅方向に水平移動する。
側板22は、支持構造体20の支柱の役目をする厚板状部材であり、溶接線Mに沿って平行に配置されている。
【0045】
ガイド棒24は、支持板42がエアホース25によって上昇及び下降させるときに、上下方向に向けて移動するように支持する昇降ガイド部材であり、支持構造体20の天板23及び底板21に対して上下動可能に支持される支柱からなる。
【0046】
≪架台フレームの構成≫
図3に示すように、架台フレーム27は、支持構造体20の直下に配置され、鉛直方向に昇降する略箱状に枠組されたフレームであって、昇降装置26に支持されると共に、上部に裏当ローラ部27aが配置されている。架台フレーム27は、幅方向に延設された下辺フレーム27bと、下辺フレーム27bの両端に梯子状に形成された側部フレーム27c,27cと、側部フレーム27c,27cの間に介設された一対の挟持板27d,27dとを有する。
【0047】
≪回収フラックス搬送装置の構成≫
図3に示すように、回収フラックス搬送装置28は、架台フレーム27の内側に配置され、溶接線Mの溶接後に掻き落とされた使用済のフラックスFを回収して搬送する搬送装置であり、例えば、スクリュコンベアからなる。回収フラックス搬送装置28は、架台フレーム27の上方にV字状に拡開した傾斜部28aと、回収したフラックスFを外部に排出するスクリュー状のコンベア部28bと、を備えて構成されている。
【0048】
≪回収散布装置の構成≫
図6に示すように、回収散布装置50は、被溶接材E,E同士を溶接線Mに沿って片面溶接する際に用いられる裏当フラックスF1と、下敷フラックスF2とを搬送して散布し、使用済の裏当フラックスF1を回収する装置である。回収散布装置50は、裏当フラックスF1と下敷フラックスF2とをそれぞれトラフ40(図5参照)上に散布し、固化した使用済の裏当フラックスF1を掻き落として回収する回収散布台車51と、支持構造体20をその長さ方向に沿って不図示のチェーンまたはベルトを駆動モータ(図示省略)で駆動することにより回収散布台車51を移動させる駆動機構(図示省略)と、この駆動機構と回収散布台車51とを連結する牽引ブラケット53bと、を備えている。
【0049】
<回収散布台車の構成>
図6に示すように、回収散布台車51は、ホッパ52を載設して、溶接線Mに沿って軌条44上を走行する台車である。回収散布台車51は、裏当フラックスF1及び下敷フラックスF2を貯留するホッパ52と、ホッパ52を載設した台車本体53と、台車本体53の搬送方向(溶接線M方向)の一方に設けられた固化フラックス掻き落とし器54と、フラックスFの散布口57a,58aの位置を調整するための位置調節装置55と、台車本体53の前後下部に設けられたスクレーパ56と、台車本体53に設けられると共に牽引ブラケット53bの他端部が連結される牽引部53aと、軌条44上等を転動する車輪59と、を備えている。
【0050】
≪回収散布台車の構成≫
回収散布台車51は、裏当フラックスF1を貯留する裏当フラックス収納部52bと、下敷フラックスF2を貯留する下敷フラックス収納部52cとに収納部52aを区画する仕切板52gを内設して、2種類のフラックスFを貯留するホッパ52と、裏当フラックスF1及び下敷フラックスF2を散布するための開閉弁57,58と、を主に備えている。
【0051】
≪ホッパの構成≫
図6に示すように、ホッパ52は、フラックスFを貯留する容器状の収納部52aを有する部材であり、回収散布台車51に搭載されている。ホッパ52は、上部が拡開して形成された収納部52aを有するホッパ本体52dと、を主に備えている。
【0052】
<ホッパ本体の構成>
ホッパ本体52dは、ホッパ52を形成する本体であり、正面視して逆三角形状に形成され(図5参照)、側面視及び平面視して矩形に形成された収納部52aを形成する金属製の部材である。このホッパ本体52dは、傾斜した左右もしくは片側が垂直で、もう片方が傾斜した内壁を形成する傾斜壁面52i,52i'と、垂直な前後の内壁を形成する垂直壁面52j,52j'と、上方に向かって開口した上部開放口52e,52e'と、内底52h,52h'と、この内底52h,52h'に形成された下部開放口52f,52f'とを備えて、略容器状に形成されている。そのホッパ本体52dの下部開放口52f,52f'の下側には、散布口57a,58aを有する開閉弁57,58が幅方向に摺動可能にそれぞれ配置されている。
【0053】
図9に示すように、ホッパ52は、ホッパ全体の高さH、長さL及び幅Wの外形寸法が予め設定された規定寸法以内になっている。そのホッパ52は、内底52h,52h'の幅が、上部開放口52e,52e'の幅Wの1/5Wの長さに形成されている。そして、内底52h,52h'の搬送方向の長さが、上部開放口52e,52e'の搬送方向の長さと同じLの長さに形成されている。そして、ホッパ52の前後の内壁は、垂直壁面52j,52j'で形成されて傾斜していない。さらに、ホッパ52の内底52h,52h'の全体の面積S2は、上部開放口52e,52e'の全体の面積S1の20%以上の大きさに形成されている。このため、ホッパ52は、上部開放口52e,52e'の面積S1に対する内底52h,52h'の面積S2の大きさの割合が大きい形状に形成されて、これに伴って、ホッパ52の内部容積(フラックスFの貯溜容量)が大きい形状となっている。
【0054】
<収納部の構成>
図6及び図7に示すように、収納部52aは、略逆四角錐形状の収納空間を形成してなる。この収納部52a内は、裏当フラックスF1が収納される裏当フラックス収納部52bと、下敷フラックスF2が収納される下敷フラックス収納部52cとの二つに区画されている。
【0055】
<上部開放口の構成>
上部開放口52e,52e'は、収納部52a内に投入されるフラックスFの投入口であり、仕切板52gによって前後方向に二分された矩形の開口からなる。この上部開放口52e,52e'と内底52h,52h'との間において、左右内壁面は、上部開放口52e,52e'から内底52h,52h'の中央部側に向いて下側へ斜めに形成された傾斜壁面52i,52i'(図4参照)が形成されて、フラックスFが傾斜壁面52i,52i'に案内されて、散布口57a,58a側へ移動するように形成されている。
【0056】
<下部解放口の構成>
下部開放口52f,52f'は、裏当フラックス収納部52b及び下敷フラックス収納部52cのそれぞれの内底52h,52h'の中央部に前後方向に延びて形成されている。
下部開放口52f,52f'は、回収散布台車51の搬送方向(溶接線Mの方向)に長い矩形に形成されている。ホッパ本体52dの下部開放口52f,52f'の下側には、散布口57a,58aを有する開閉弁57,58が幅方向に摺動可能に水平に配置されている。
なお、図9に示すように、下部開放口52f,52f'は、最大に開放されたときの最大開口面積S3,S3の合計が、上部開放口52e,52e'の全体の面積S1の10%以上に形成されている。
【0057】
<仕切板の構成>
図6及び図7に示すように、前記仕切板52gは、ホッパ52内の上部開放口52e,52e'から内底52h,52h'に亘って幅方向に向けて垂直に設置された平板部材からなる。
【0058】
<開閉弁の構成>
図7に示すように、開閉弁57,58は、ホッパ本体52dの内底52h,52h'に形成された下部開放口52f,52f'を開閉する一対の弁であり、例えば、スライド式のものからなる。開閉弁57,58は、ホッパ52の内底52h,52h'の下面に幅方向に摺動可能に設けられた略平板状の弁体からなり、手動または自動で水平方向に移動して開弁され、裏当フラックスF1と下敷フラックスF2とをそれぞれ散布する。
裏当フラックスF1用の開閉弁57には、摺動して下部開放口52f,52f'と重なった際に、裏当フラックスF1を排出する散布口57aと、開閉する際に作業者が手で把持して操作する操作部57bと、が形成されている。これと同様に、下敷フラックスF2用の開閉弁58には、摺動して下部開放口52f,52f'と重なった際に、下敷フラックスF2を排出する散布口58aと、開閉する際に作業者が持って操作する操作部58bと、が形成されている。つまり、開閉弁57と開閉弁58は、同一構造であり、収納部52a内に前後に並べて配置されている。
【0059】
散布口57a,58aは、回収散布台車51の中央部に搬送方向に向けて複数形成されると共に、溶接線Mに沿って搬送方向に一列に配置されている。つまり、散布口57a,58aは、ホッパ本体52dの内底52h,52h'において、溶接線Mの相対中心線S上に配置されて、溶接線Mに沿ってトラフ40上にフラックスFを散布するように設けられている(図2参照)。
【0060】
<台車本体及び牽引部の構成>
図6に示すように、台車本体53は、回収散布台車51の本体を形成するフレーム構造体であり、骨格を形成する骨格フレームと、この骨格フレームに固定された金属製板材と、から主に形成されている。台車本体53には、牽引ブラケット53bが取り付けられる牽引部53aと、前記ホッパ52と、固化したフラックスF等の不要なフラックスFを掻き落すフラックス掻き落とし器54と、フラックスFの散布口57a,58aの位置を調整する位置調節装置55と、スクレーパ56と、前記開閉弁57,58と、車輪59とが設けられている。
【0061】
牽引部53aは、台車本体53を、牽引ブラケット53bを介在して回収散布台車51を移動させる駆動機構(図示省略)に連結するための部材であり、台車本体53の側面中央部に固定されている。
【0062】
<フラックス掻き落とし器の構成>
フラックス掻き落とし器54は、トラフ40上の固化した使用済の裏当フラックスF1を掻き落すための部材である。フラック掻き落とし器54は、搬送方向に対して斜めに設けられたブレード54aと、このブレード54aに設けられその先端部がトラフ40内のフラックスFに挿入される櫛歯54bとを備えている。フラックス掻き落とし器54は、上下方向等に可動可能に設けられている(図6参照)。
なお、固化したフラックスFは、図5に示すように、第2エアホース25bを膨らませてトラフ40を持ち上げることによって、フラックスFをトラフフレーム41の上端部より高く上げた状態で掻き落とす。
【0063】
<位置調節装置の構成>
図6に示すように、位置調節装置55は、フラックスFの散布口57a,58aの高さを調節するための部材であり、散布口57a,58aを上下動させるための連結部材55aと、この連結部材55aに設けられた操作ハンドル55bと、を備えて構成されている。散布口57a,58aは、フラックスFを散布するときに、操作ハンドル55bを回動して下降した状態で使用し、フラックスFを回収するときに、操作ハンドル55bを反転させて上昇させて散布口57a,58aをトラフフレーム41上から退避させる。
【0064】
<スクレーパの構成>
スクレーパ56は、軌条44上に落下したフラックスFを下方に落下させるための部材であり、フラックスFを軌条44の外側へ掻き寄せる板状部材56aを備えてなる。その板状部材56aは、搬送方向に対して斜めに設置されて、軌条44上に落下したフラックスFを回収フラックス搬送装置28上に落下させる。
【0065】
<車輪の構成>
車輪59は、軌条44上を転動して回収散布台車51を搬送方向に移動させる回転体からなる走行用の車輪59aと、下敷フラックスF2を散布する際にトラフ40を押し下げるためのローラ用の車輪59bと、からなる。走行用の車輪59aは、例えば、金属製のものからなり、台車本体53の前後左右に複数配置されて、トラフフレーム41の左右両端部に設けられた軌条44上を転動する。
【0066】
図4及び図5に示すように、トラフ押し下げ用の車輪59bは、固化した使用済のフラックスFの回収後に下敷フラックスF2上を、この車輪59bを転動させることによって、下敷フラックスF2を適宜な押圧力で押圧してトラフ40を押し下げて、トラフ40の形状を整えるための装置である。車輪59bは、この車輪59bを回転自在に支持する車輪支持部材59cを介在して、ホッパ本体52dの搬送方向側の前面に取り付けられている。
【0067】
≪片面溶接装置の作用≫
次に、図1〜図9を参照して本発明に係る片面溶接装置1の作用を説明する。
本発明の片面溶接装置1で溶接を行う場合は、溶接作業を行うのに先立って、その準備であるフラックスFの供給等の準備工程が行われ、その際に、回収散布台車51が使用される。
【0068】
図7に示すように、フラックスFを散布する前の散布時以外の回収散布台車51は、開閉弁57,58が閉弁方向(矢印A方向)に押された閉弁状態になっている。このときは、散布口57a,58aが下部開放口52f,52f'からずれている。このため、裏当フラックス収納部52b及び下敷フラックス収納部52c内の裏当フラックスF1及び下敷フラックスF2が散布口57a,58aから排出されることがない。
【0069】
図9は、本発明の回収散布台車51のホッパ52を示す概略斜視図である。図10は、回収散布台車510のホッパ520の比較例を示す概略斜視図である。
ここで、図9と図10を参照して比較例のホッパ520のフラックスFの貯留容量と、本発明のホッパ52のフラックスFの貯留容量について説明する。
【0070】
図9及び図10に示すように、本発明及び比較例のホッパ52,520は、上部開放口52e,520e'の長さがL、幅がW、高さがHで同じ寸法である。つまり、ホッパ52,520は、全体的な大きさが同一であり、予め定められた所定の外形寸法に形成されている。
【0071】
図10に示す比較例のホッパ520は、一般的な回収散布台車510に使用される大きさのものであって、内底520h,520h'の長さが1/5L〜1/4L、幅が1/5Wである。つまり、ホッパ520は、正面視及び側面視して下側に向かって搬送方向の長さと幅とが縮小した略逆四角錐の形状をしている。このため、ホッパ520の上部開放口520eの面積S10は、
S10=W×L
であるのに対して、内底520h,520h'の面積S20が、
S20=1/5W×1/4L
と大幅に減少した形状となっている。なお、内底520h,520h'の面積S20に合わせて、下部開放口の面積S30も小さくなっている。
その結果、比較例のホッパ520の貯留容量V10は、
V10=H/3(S10+S20+√(S10×S20))
=(1+1/20+√(1/20))/3W×L×H
≒2/5W×L×H
となっている。
【0072】
これに対して、本発明のホッパ52は、側面視して長方形で内底52h,52h'の搬送方向の長さLが上部開放口52e,52e'の長さLと同じ形状となっている。つまり、内底52h,52h'の搬送方向の長さLは、上部開放口52e,52e'の搬送方向の長さの1/2L以上の長さに形成されて、比較例の内底520h,520h'の搬送方向の長さよりも長い。
内底52h,52h'の幅は、フラックスFの散布幅が同じであるので、比較例のホッパ520と同じ1/5Wである。
なお、下部開放口52f,52f'の搬送方向の長さL1+L2は、内底52h,52h'の搬送方向の長さLに合わせて長く形成することが可能となり、上部開放口52e,52e'の搬送方向の長さLの1/5以上の長さに形成されている。
【0073】
つまり、本発明のホッパ52の内底52h,52h'の面積S2は、
S2=L×1/5W
であり、上部開放口52e,52e’の面積S1の20%以上の大きさに形成されている。このため、本発明のホッパ52の貯留容量Vは、
V=3/5W×L×H
であり、比較例のホッパ520の貯留容量V10に比べて1.5倍の貯留容量となっている。したがって、本発明のホッパ52は、比較例のホッパ520と比較して貯留容量が大きいため、一度に大量のフラックスFを搬送することができる
【0074】
そして、フラックスFを散布する場合は、図2に示すように、フラックスFを積載した回収散布台車51から裏当部材11のトラフ40上にフラックスFを供給する。その際、エアホース25は、図4に示すように、収縮した状態にある。このため、トラフフレーム41は、支持板42が側板22,22の上端に載置されて下降した状態にある。フラックスFを供給するときは、駆動装置(図示省略)を駆動させて回収散布台車51を一方向へ走行させながらフラックスFを散布する。
【0075】
フラックスFを散布する場合は、図7に示す閉弁状態の開閉弁57,58を矢印Bの開弁方向へ引っ張る。すると、開閉弁57,58は、図8に示すように、開弁方向(矢印B方向)へ移動して多数ある散布口57a,58aが下部開放口52f,52f'と重なり合って開弁した連通状態になる。すると、裏当フラックス収納部52b及び下敷フラックス収納部52c内の裏当フラックスF1及び下敷フラックスF2が散布口57a,58aから排出されて散布される。
【0076】
そして、図5に示すように、加圧装置(図示省略)によってエアホース25に圧縮空気を注入して膨張させ、トラフ40内のフラックスFを上昇させて、被溶接材Eの溶接線Mの裏側に押し当てる。この状態で、図1に示すように、溶接機30を溶接機ビーム101の上を所定速度で移動させながら、被溶接材Eの溶接線Mに沿って裏当装置10の裏当部材11を押し当て、溶接線Mの表側から溶接トーチ33によって片面溶接を施して、被溶接材E,Eを溶接する。
【0077】
次に、溶接線Mが複数ある場合には、エアホース25,25内の空気を排出して、トラフフレーム41及びトラフ40を降下させ、フラックスFを被溶接材Eの裏側から引き離す。そして、昇降装置26で架台フレーム27を降下させ、裏当部材11を被溶接材Eの裏側からさらに下降させ、フラックスFを被溶接材Eの裏面から引き離す。その後、トラフ40上のフラックスFの使用済み部分の除去を行う。つまり、溶接機30で溶接した後、フラックスFは溶接熱により固化するので、次の溶接をするために、固化したフラックスFを除去しなければならない。
フラックスFを除去するときは、図6に示す回収散布台車51からフラックス掻き落とし器54をトラフ40上に下降させた状態で、回収散布台車51を走行させてフラックス掻き落とし器54によって、トラフ40上で固化した使用済のフラックスFを掻き落として除去する。
【0078】
これと同時に、除去したフラックスFは、図3に示すように、前記回収散布台車51を走行させている際に、フラックス掻き落とし器54(図6参照)により、フラックスFをトラフ40上から回収フラックス搬送装置28上に落下させて、コンベア部28bによって所定の回収場所へ搬送して回収して廃棄する。
【0079】
その後、開閉弁57,58を引いて下部開放口52f,52f'を開弁させた状態で回収散布台車51を走行させて、トラフ40上に新しいフラックスFを補充する第2回目のフラックス供給を行う。
【0080】
このような動作を溶接線Mがなくなるまで数回行う。そして、回収散布台車51でフラックスFを搬送して散布する際には、一度に大量のフラックスFを搬送して適切な量のフラックスFを散布することができる。これに伴って、ホッパ52にフラックスFを積載して補充する作業回数を削減することができるので、作業効率を向上させることができる。
【0081】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更は可能である。
【0082】
例えば、前記実施形態では、トラフ40を使用したトラフタイプの裏当装置10を備えた片面溶接装置1を例に挙げて説明したが、裏当装置10に裏当銅板を使用する銅板タイプのものであっても構わない。
また、図6〜図8に示すように、前記仕切板52gは、収納部52aに対して着脱自在に設けてもよい。例えば、裏当銅板(図示省略)を備えた銅板タイプの裏当装置10の場合には、1種類の裏当フラックスF1のみを使用するため、収納部52aが一つであってもよい。このため、銅板タイプの裏当装置10の場合には、仕切板52gはなくてもよい。この場合、収納部52aに合わせて、開閉弁57,58を1つに一体化させてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 片面溶接装置
10 裏当装置
50 回収散布装置
51 回収散布台車
52 ホッパ
52a 収納部
52b 裏当フラックス収納部
52c 下敷フラックス収納部
52e,52e' 上部開放口
52f,52f' 下部開放口
52g 仕切板
52h,52h' 内底
52j,52j' 垂直壁面(内壁)
57,58 開閉弁
57a,58a 散布口
S1 上部開放口の面積
S2 ホッパの内底の面積
S3 下部開放口の最大開口面積
E 被溶接材
F フラックス
F1 裏当フラックス(フラックス)
F2 下敷フラックス(フラックス)
M 溶接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接材同士を突き合わせた溶接線に沿って片面溶接する際に用いられるフラックスを貯留するホッパを載設し、前記溶接線に沿って移動する回収散布台車を備えると共に、前記フラックスを散布し、使用済のフラックスを回収する回収散布装置において、
前記ホッパは、上方に向かって開口した上部開放口と、
前記ホッパの内底に形成された下部開放口と、
該下部開放口を開閉する開閉弁と、を備え、
前記下部開放口の搬送方向の長さが、前記上部開放口の搬送方向の長さの1/5以上の長さに形成されて、
前記内底の面積が、前記上部開放口の面積の20%以上の大きさに形成されていることを特徴とする回収散布装置。
【請求項2】
前記ホッパは、搬送方向側の前後の内壁が、垂直に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回収散布装置。
【請求項3】
前記下部開放口は、最大に開放されたときの最大開口面積が、前記上部開放口の面積の10%以上に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回収散布装置。
【請求項4】
前記フラックスは、前記被溶接材の前記溶接線の裏側に押し当てられる裏当フラックスと、裏当フラックスの下側に敷設される下敷フラックスとの二種類からなり、
前記ホッパは、当該ホッパ内を、前記裏当フラックスが収納される裏当フラックス収納部と、前記下敷フラックスが収納される下敷フラックス収納部とに区画する仕切板を備え、
前記開閉弁は、前記ホッパの内底の下にそれぞれ設けられ、前記下部開放口を開弁して前記裏当フラックスまたは前記下敷フラックスを散布することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の回収散布装置。
【請求項5】
前記開閉弁は、前記下部開放口の下に水平方向に摺動可能に配置されると共に、前記フラックスを排出する散布口が形成され、
前記フラックスは、前記開閉弁を摺動して前記散布口が前記下部開放口と重なった際に、前記下部開放口を通って前記散布口から散布されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回収散布装置。
【請求項6】
前記下部開放口は、前記回収散布台車の搬送方向に長い矩形に形成され、
前記散布口は、前記回収散布台車の搬送方向に向けて複数形成されると共に、前記溶接線に沿って一列に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の回収散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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