説明

回収治具、及び当該回収治具を備えた汚染物回収装置

【課題】ウエハ外周部のみに液体を精度良く接触させることができる回収治具と、当該回収治具を備えることによって、ウエハ外周部の汚染物を簡易に効率良く回収することができる汚染物回収装置とを提供する。
【解決手段】本発明の汚染物回収装置に設けられた回収治具30は、回収本体31と制御手段32とを備えている。制御手段32は、回収本体31の上部に螺着することで、液体を貯留した、回収本体31の貯留部34を密閉することができる。これにより、貯留部34に貯留された液体を外部に露出するための、回収本体31の貫通部35に、ウエハを挿入した際、ウエハの外周部端面のみ液体を接触させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収治具、及び当該回収治具を備えた汚染物回収装置に関し、詳細には、ウエハ外周部端面のみに汚染物回収用の液体を精度良く接触させることができるとともに、接触させた液体を効率良く回収することができる回収治具と、当該回収治具によって、ウエハ外周部端面の汚染物を精度良く回収することができる汚染物回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切断処理が施された直後のシリコンウエハ(以下、ウエハという)は、外周部端面のエッジ部が尖っているため、以後の取り扱い作業時に欠けが発生し、欠けたチップによってウエハ面が汚れたり、傷やクラックなどが発生したりして、半導体装置の歩留まり低下を招く。このため、一般的には、ウエハの外周部端面のエッジ部をベベリングホイールを用いて削り取るベベリング加工が施されている。
【0003】
一方、半導体分野において集積回路の高集積化、小型化、高速化が進み、素材となるウエハに対する要求も厳しくなっており、上述したベベリング加工時のベベリングホイールからウエハ外周部端面への金属汚染が問題となっている。
【0004】
これまで、ウエハの金属汚染を評価するための手法は数多く開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ウエハを薬液の入った浸漬容器に浸漬させることによって、ウエハ周辺領域中に含まれる微量金属不純物を薬液中に分解回収する構成が記載されている。具体的には、特許文献1の回収装置(不図示)には、図10に示すように、上面中央長手方向に沿ってスリット状のウエハ浸漬部110を有する浸漬容器105が配設されている。浸漬容器105の薬液注入用穴109からマイクロピペットで薬液mが注入され、ウエハ浸漬部110が薬液mで満たされると、図示しない回転体に垂直に保持されているウエハWのエッジ部が薬液m中に浸漬される。そして、その状態でウエハWを回転させることによって、ウエハWの周辺領域の微量金量不純物を薬液m中に分解回収する。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成の場合、図10に示すように、ウエハ表面にも薬液が接触するため、上述したウエハ外周部端面(べべリング面)のみの金属汚染の評価を行うことは困難である。
【0007】
一方、特許文献2には、ウエハを略水平に保持した状態で、図11に示す回収治具230に貯留された液体を接触させる構成が記載されている。回収治具230は、図11(a)に示すように、筒状部231と、フランジ状に構成されている。貫通孔232の寸法及び配設位置は、貫通孔232から液体204が漏れ出るのを防止するために、適切に設定されている。筒状部231には、図11(a)に示すように、液体を貯留可能な内部空間Hが設けられており、液体を内部空間Hに貯留すると、貯留されている液体204の一部が、筒状部231の側部に設けられた貫通孔232から雰囲気の空間に露出する液体204は、接触工程が終了すると、図11(c)に示すバイアル234に回収される。
【特許文献1】特開平11−204604号公報(1999年7月30日公開)
【特許文献2】特開2005−236145号公報(2005年9月2日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献2は、貫通孔232の寸法及び配設位置を適切に設定することによって、図11(b)に示す基板201を貫通孔232に挿入したときに、貫通孔232で露出している液体204を、基板201の側面のみに接触するように、すなわち、基板201の縁の表面には接触しない状況を実現していることが記載されている。しかしながら、上記の回収治具の構造では、基板の表面状態に影響を受けやすく、特に基板表面が親水性の場合は、基板と液体との接触範囲が変化して、液体が基板表面に流れてしまい、側面のみを分析することは困難である。また、例えばウエハ表面に形成された膜(例えば厚さ100nmのSiO)について、ウエハ外周部(ベベリング面)の当該膜中の汚染状態を評価する場合、フッ化水素酸などで接触溶解して当該膜中に含まれる汚染物を回収する必要がある。しかしながら、特許文献2の内部空間Hにフッ化水素酸を貯留した場合、フッ化水素酸溶液がSiOによって徐々にウエハ表裏面に引き出される虞がある。すなわち、特許文献2の回収治具では、ウエハ外周部の評価を精度良く実施することは事実上困難である。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウエハ外周部のみに液体を精度良く接触させることができる回収治具と、当該回収治具を備えることによって、ウエハ外周部の汚染物を簡易に効率良く回収することができる汚染物回収装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る、基板に液体を接触させて当該基板に付着した汚染物を分析するための汚染物回収装置に配設される回収治具は、上述した課題を解決するために、上記液体を貯留する貯留部、及び上記貯留部と外部とを連通し、且つ上記貯留部に貯留されている液体の一部を外部に露出させて上記基板に付着させるように構成された貫通部が設けられており、上記貫通部にて基板と貫通部に露出した液体とが接触したときの、基板への液体の接触範囲を制御する制御手段が、取り外し可能な状態で配されていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成を備えた回収治具を、基板の汚染物を回収するための汚染物回収装置に用いることによって、基板(例えば、ウエハ)の特定の領域のみに、液体を精度よく接触させることができる。そのため、上述した従来技術で実現困難であったウエハ外周部のみへの接液も、精度よく実現させることが可能となる。
【0012】
具体的には、本発明に係る回収治具によれば、上記制御手段が取り外し可能な状態で取り付けられている。これにより、基板の特定範囲、すなわち汚染物の回収・分析を実施すべき領域のみに液体が接触するように、上記貫通部において上記基板と当該貫通部に露出した上記液体とが接触したときの基板への液体の接触範囲を制御することができる。
【0013】
すなわち、本発明の上記構成によれば、従来実施困難であった基板の外周部のみへの接液を、精度良く実施することができる。尚、ここで、基板の外周部とは、ウエハをベベリング加工することによって生じた(ウエハの)ベベリング面に相当する。
【0014】
また、本発明によれば、基板の表面状態に左右されることなく、接触溶解によって上記基板の特定部分の膜中に含まれる汚染物を、精度良く回収・分析することができる。具体的には、本発明によれば、ウエハ表面に形成された膜(例えば厚さ100nmのSiO)を、上述したようにフッ化水素酸などで接触溶解する場合であっても、上記制御手段を具備することによって、フッ化水素酸がウエハ外周部以外の領域、具体的にはウエハ表裏面にまで引き出されることを抑制することができる。すなわち、本発明の構成を用いることによって、従来と比較して、幅広い上記液体の種類を用いて基板の外周部の汚染物を回収することができる。
【0015】
したがって、上記の構成とすれば、本発明に係る回収治具は、基板(例えば、ウエハ)の特定領域から汚染物を精度良く回収することができ、当該特定領域の汚染状況を精度よく分析・評価することが可能である。
【0016】
また、本発明に係る回収治具は、上記制御手段が、上記貫通部に露出した液体に対して上記貯留部からかかる圧力を変化させることが好ましい。
【0017】
これにより、上記貫通部において上記基板と当該貫通部に露出した上記液体とが接触したときの基板への液体の接触範囲を、所望の範囲になるように制御することができる。
【0018】
また、本発明に係る回収治具は、上記制御手段が、上記貫通部に液体が露出した状態の上記貯留部を密閉することが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記制御手段が、上記貯留部を密閉していることにより、貫通部において露出した液体の、基板との接触量を制限することができる。これにより、基板の特定領域のみに液体が接触して、当該特定領域のみから汚染物を回収することができる。
【0020】
また、本発明に係る回収治具は、上記制御手段が、上記密閉した状態において上記貯留部の容積を変化させることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、上記制御手段によって上記密閉した状態において上記貯留部の容積を変化させることにより、貫通部において露出している液体の、基板との接触量を制御することができる。
【0022】
また、上記の構成によれば、上記制御手段によって容器の内部の容積を変化させて、基板と液体との接触領域を、回収条件に応じて、所望の領域に変化させることができる。
【0023】
また、本発明に係る回収治具は、上記制御手段が、上記密閉した状態において上記容器の上記内部に形成されている空間の気圧を変化させる構成とすることもできる。
【0024】
上記の構成によれば、上記制御手段によって上記容器の内部に形成されている空間の気圧を変化させることにより、貫通部において露出した液体の、基板との接触量を制御することができる。
【0025】
また、上記の構成によれば、上記制御手段によって上記気圧を変化させて、基板と液体との接触領域を、回収条件に応じて、所望の領域に変化させることができる。
【0026】
また、本発明に係る回収治具は、上記の構成に加えて、上記貫通部が、上記貯留部と外部とを水平方向に連通するように形成されており、且つ上記基板の厚さよりも大きく開口していることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、上記貫通部の上記開口部分に、水平に沿って表面が配置されている基板の外周部を挿入して、当該外周部に、上記貫通部に露出した液体を接触させることができる。
【0028】
また、上記の構成のほかに、本発明に係る回収治具は、上記貫通部が、上記貯留部と外部とを、水平に対して垂直な方向に連通するように形成されており、且つ上記基板の厚さよりも大きく開口していてもよい。
【0029】
上記の構成によれば、上記貫通部の上記開口部分に、水平に対して垂直な方向に沿って表面が配置されている当該基板の外周部を挿入して、当該外周部に、上記貫通部に露出した液体を接触させることができる。
【0030】
また、具体的には、上記回収治具は、内径が互いに異なる筒構造の本体上部と本体下部とが互いの中空部が連通するように一軸方向に上下に並んでいる回収本体を備えており、上記貯留部は、上記本体下部の中空部として形成されており、上記本体上部における上記本体下部との境界部には、当該本体上部と当該本体下部とを繋ぐ、上記筒構造の径方向に延びた底部を有しており、上記制御手段は、上記本体上部の中空部に挿入することによって取り付けられる。
【0031】
また、本発明に係る回収治具は、上記の構成に加えて、上記筒構造が円筒構造であり、上記本体上部の中空部の壁面には、ネジ山が形成されており、上記制御手段には、その側面に上記ネジ山と螺合するネジ山が形成されていることが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、上記本体上部への制御手段の取り付けが螺合という簡易な操作で実現することができる。
【0033】
また、本発明に係る回収治具は、上記制御手段が、当該制御手段の底面を上記底部に接触させることによって、当該底部に設けられている上記本体下部の一端である開口部を封止するように構成されていることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、上記制御手段の底面を上記底部に接触させて上記本体下部の一端である開口部を封止することによって、上記貫通部に液体が露出した状態の上記貯留部を密閉することができる。
【0035】
また、本発明に係る回収治具は、上記制御手段が、上記一軸方向に沿って動かすことができる芯部と当該芯部を囲む枠部とを有した二重構造となっており、上記芯部と上記枠部とを相対的に動かすことによって、上記芯部の底面と上記枠部の底面との高さが可変するように構成されていることが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、上記制御手段の上記底面を、上記芯部の底面と上記枠部の底面とが構成しているので、上述したように上記制御手段の上記底面を上記底部と接触させることによって底部に設けられている上記本体下部の一端である開口部を封止した際に、封止後に、上記芯部の底面を引き上げることによって、上記貯留部を減圧することができる。これにより、上記貫通部に露出する液体の液面を、より貯留部側に引き込むことができる。
【0037】
また、本発明に係る、基板に液体を接触させて当該基板に付着した汚染物を分析するための汚染物回収装置は、上述した課題を解決するために、上述した構成を備えた回収治具と、上記基板の表面を水平に維持した状態で当該基板を回転させる基板回転体と、上記回収治具と上記基板回転体とを相対移動させるための駆動体とを備えていることを特徴としている。
【0038】
これにより、本発明に係る汚染物回収装置は、基板回転体によって回転している基板に、回収治具を近づけて、基板の一部を回収治具に設けた貫通部に挿入させることができる。そのため、貫通部から露出した液体を基板の一部に接触させることができる。そして、上述した構成を備えた回収治具を備えていることによって、上述した種々の効果を奏することができるため、半導体ウエハの外周部端面(ベベリング面)に接触した液体を効率よく回収することができる。
【0039】
よって、本発明に係る汚染物回収装置は、半導体ウエハの特定領域における汚染の有無、及び汚染の程度の正確な評価に寄与することができる。特に、従来困難であった半導体ウエハのべべリング面の汚染物の分析の精度向上と、分析対象とすることができる膜の種類の拡大および液体と接触する領域のバリエーションの拡大とに大きく貢献することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る、基板に液体を接触させて当該基板に付着した汚染物を回収するための汚染物回収装置に配設される回収治具は、以上のように、上記液体を貯留する貯留部、及び上記貯留部と外部とを連通し、且つ上記貯留部に貯留されている液体の一部を外部に露出させて上記基板に付着させるように構成された貫通部が設けられており、上記貫通部にて基板と貫通部に露出した液体とが接触したときの、基板への液体の接触範囲を制御する制御手段が、取り外し可能な状態で配されていることを特徴としている。また、本発明に係る、基板の汚染物を回収するための汚染物回収装置は、以上のように、上記した構成を備えた回収治具と、上記基板の表面を水平に配置させた状態で当該基板を保持するとともに、垂直な回転中心軸まわりに上記基板を回転させる基板回転体と、上記回収治具と上記基板回転体とを相対移動させるための駆動体とを備えていることを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、基板の外周部のみに液体を精度良く接触させて、基板の外周部の汚染物を、簡易に、且つ効率良く回収することができる回収治具、及び当該回収治具を備えた汚染物回収装置を提供することができ、また、フッ化水素酸など従来では使用できなかった回収液を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の実施の一形態について図1から図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、以下の説明では、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲が以下の実施形態及び図面に限定されるものではない。
【0043】
図1は、本形態における汚染物回収装置の構成を示した図である。本形態の汚染物回収装置は、半導体ウエハの特定領域に付着または含有した汚染物を捕集することができる液体を用いて、当該液体を、半導体ウエハの特定領域に接触させると同時に回収する装置である。そのため、本形態の汚染物回収装置1は、図1に示すように、ウエハ回転体10と、駆動体20と、回収治具30と、支持台50とを備えている。
【0044】
上記ウエハ回転体10は、図1に示すように、上記支持台50の上面に載置されている。ウエハ回転体10は、半導体ウエハWの表面が水平になるように半導体ウエハWの下面を下方から保持する保持部10aと、当該保持部10aを垂直方向の回転中心軸を中心として回転させる回転部10bとを有している。回転部10bは、保持部10aに保持された半導体ウエハWを、その表面を水平に維持した状態で回転させることができる。
【0045】
上記駆動体20は、図1に示すように、上記支持台50の上面に載置されている。駆動体20は、上記回収治具30を保持するための回収治具ホルダー20aと、当該回収治具ホルダー20aに連結して、上記回収治具30を所定の方向に移動させる駆動機構20bとを有している。
【0046】
上記回収治具ホルダー20aは、端部に貫通穴が設けられており、この貫通穴に、回収治具30を挿入させることによって、回収治具30を保持する。
【0047】
上記駆動機構20bは、回収治具ホルダー20aを介して回収治具30を、支持台50の上面に沿って平行に、所定の位置に移動させることによって、回収治具30と半導体ウエハWとの相対位置を変化させる。駆動機構20bによる回収治具30の具体的な移動方向について、汚染物回収装置1の上面図である図2を用いて説明する。図2に示すように、駆動機構20bは、回収治具30に半導体ウエハWの一部を挿入させる位置(図2の回収治具30−2の位置)まで回収治具30を移動させることができ、反対に、その位置から、例えば、半導体ウエハWの挿入後に半導体ウエハWを保持部10aから取り外す際などには、回収治具30を、半導体ウエハWから離間した位置(図2の回収治具30−1の位置)まで移動させることができる。
【0048】
尚、図2の回収治具30−2の位置において、半導体ウエハWが、所定の位置に挿入されているか否かの確認は、図示しない撮像機器を用いて側面から撮像することによって、確認することができる。
【0049】
次に、上記回収治具30について説明する。
【0050】
回収治具30は、半導体ウエハの特定領域に付着または含有した汚染物を捕集することができる液体を、内部に貯留させることができるように構成されている。ここで、汚染物とは、後述する実施例に示すような金属元素が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、液体に捕集されるのことが可能な物質であれば適用することができる。回収治具30は、このような液体を、半導体ウエハWの外周部端面(以下、半導体ウエハWのべべリング面と称する)に接触させるとと同時に回収することができるように構成されている。以下に、図3及び図4を用いて、回収治具30の具体的な構成について説明する。
【0051】
図3は、回収治具30の構成を、上記回収治具ホルダー20aの一部とともに示した斜視図である。尚、図面の一部分は透視図としている。また、図4は、図3に示す切断線A−A´において回収治具30を切断した状態を示した矢視断面図である。
【0052】
回収治具30は、図3に示すように、回収治具ホルダー20aに保持され、保持された状態で、半導体ウエハWのべべリング面に接触させるための液体を内部に貯留している。そのために、回収治具30は、図4に示すように回収本体31を有している。
【0053】
上記回収本体31は、内径が互いに異なる円筒構造であって、互いに連通した本体下部31aと本体上部31bとから構成されている。
【0054】
上記本体下部31aと上記本体上部31bとは、各々の軸心が、水平に対して垂直である軸Cに沿って並んだ構成となっている。本体下部31aと本体上部31bとの境界部分には、その外形が、当該軸心から放射状に突出しているフランジ部33が形成されている。フランジ部33の外径は、回収治具ホルダー20aの端部に設けられた上記貫通穴の径よりも大きく形成されている。そのため、回収治具ホルダー20aの上方から、上記貫通穴に本体下部31aを挿入してフランジ部33の下面が回収治具ホルダー20aの上面と接触することによって、回収治具30が回収治具ホルダー20aによって保持される。
【0055】
尚、図4では、フランジ部33の下面は平坦であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、従来構成として示した図11のフランジ部の下面と同様に、テーパー形状を有していてもよい。この場合は、上記回収治具ホルダー20aの上記貫通穴も、テーパー形状を有していることが好ましい。
【0056】
本体下部31a、本体上部31b及びフランジ部33の材質は、耐薬品性を考慮するとともに、後述する液体を貯留可能な貯留部を制御手段によって密閉する際の密閉性を確保することを考慮すればよく、また、汚染物の分析処理において分析に影響を与えない材料であれば、特に限定されるものではない。また、製造方法も特に限定されるものではないが、例えば、射出成型によって一体成型することができほか、押し出し成型や圧縮成型等を用いることもできる。
【0057】
上記本体下部31aには、上記液体を貯留可能な貯留部34と、貯留部34に貯留されている液体の一部を外部に露出させるための、貯留部34と外部とを連通する貫通部35とが設けられている。
【0058】
上記貯留部34は、上記円筒構造の中空部に相当し、液体を、本体下部31aの下端から、上記貫通部35を覆う高さの水位まで貯留することができる。特に限定されるものではないが、500μL程度の容積であることが好ましい。
【0059】
上記貫通部35は、上記円筒構造の曲面部に形成されており、図4に示すように、貯留部34と外部とを水平方向に連通しており、後述するように半導体ウエハを挿入させることができる。貫通部35の大きさは、貯留部34に貯留した液体が漏れ出ない程度の大きさを有している。貫通部35の形成位置としては、特に限定されないが、本体下部31aの高さの中間位置に配置することができる。
【0060】
上記本体上部31bは、図4に示すように、軸Cに沿って、本体下部31aの上方に設けられており、本体上部31bの上端は、後述する制御手段32を挿入することができるように開口している。また、上記円筒構造の中空部に相当する空間の内径は、上記貯留部34の内径よりも大きく構成されており、且つ、内壁の曲面部分の少なくとも一部分には、図4に示すようにネジ山36が形成されている。また、一例はネジ式であるが、注射器状のピストン式でも同様の効果を得ることが出来る。
【0061】
このような回収治具30には、更に、図4に示すように、制御手段32が設けられている。
【0062】
上記制御手段32は、上記本体上部31bの内壁に形成されたネジ山36に螺合するネジ山37を外面に有しており、螺合することによって、本体上部31bの所定の位置に螺着することができる。また、制御手段32は、軸心が、本体上部31bの軸心と一致しており、外面にネジ山37を有し、且つ軸心部分が雌ネジ38となっている枠部32aと、当該雌ネジ38のネジ山に螺合するネジ山を有した雄ネジ構造を有した芯部32bとを有している。
【0063】
上記枠部32aは、その底面39の外径は、貯留部34の径よりも大きく構成されている。そのため、芯部32bを枠部32aの雌ネジ38に螺着させた状態で、ネジ山37とネジ山36とを螺合させて底面39を本体上部31bの内側の底面40に接触させることにより、貯留部34は、貫通部35を除いて閉鎖空間となる。すなわち、ここに、貫通部35を覆う高さまで貯留部34に液体が貯留されていれば、貯留部34の液体の液面と、底面39との間に形成された密閉状態となる。これに関しては、後で詳述する。
【0064】
上記芯部32bは、雌ネジ38と完全に螺着した状態で、底面が、枠部32aの底面39と面一になるように構成されているが、雌ネジ38との螺合の程度を変化させることによって、底面を、底面39よりも上昇させることができる。芯部32bと雌ネジ38との螺合の調節は、芯部32bを軸心を回転軸として回転させることによって行なうことができ、回転は、図示しない機器が行なってもよく、手動で行なってもよい。
【0065】
枠部32a及び芯部32bの材質は、耐薬品性を考慮するとともに、後述するように貯留部34を密閉した際に密閉性を確保することを考慮すればよく、また、汚染物の分析処理において分析に影響を与えない材料であれば、特に制限されるものではない。
【0066】
本形態の汚染物回収装置1(図1)は、このような構成を具備した制御手段32を回収治具30に設けたことにより、貫通部35に露出した液体を、半導体ウエハWのべべリング面以外に接触させることなく、べべリング面のみに接触させることができる。以下、図5(a)〜(c)を用いて、制御手段32の作用を詳述する。尚、図5(a)〜(c)は、何れも、図4に示した回収治具30の断面に相当する。
【0067】
図5(a)は、半導体ウエハWに液体を接触させる接触工程の前の工程(第1準備工程)を示している。図5(a)の状態は、本体上部31bの開口端に制御手段32が挿入されて、本体上部31bのネジ山36と、制御手段32のネジ山37との螺合が開始された状態である。ここでの制御手段32は、芯部32bが枠部32aの雌ネジ38と完全に螺着している。
【0068】
尚、この図5(a)の段階で、貯留部34には、既に液体が貯留されている。貯留させる液体は、半導体ウエハWのべべリング面に付着している汚染物、または当該べべリング面の膜中に含まれている汚染物を回収できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、後述する実施例で用いている希王水溶液、フッ化水素酸溶液を挙げることができる。特に注目すべきは、本形態の回収治具は、従来の治具にとっては回収液として不適切である膜溶解性のある薬液を用いることができる点にある。具体的には、本形態の回収治具であれば、SiO膜に対してはフッ過水素酸、Cu膜に対しては硝酸や王水を、回収液として用いることができる。
【0069】
また、本体上部31bと制御手段32とを螺合させる前に、各部材を適切な方法で洗浄しておく。これにより、各部材からの対象の汚染物の溶出を抑えることができる。特に、評価対象成分が金属元素であれば適切な酸及び超純水などで洗浄する。
【0070】
ここで、図5(a)では、一見すると、制御手段32が螺合を開始して回収本体31の中空部の容積が徐々に減少していくのに伴って、貯留部34の液体の液面と、制御手段32の底面(底面39、及び芯部32bの底面)との間に形成された空間の圧力が圧縮されることによって、当該液面を押し下げて、貫通部35から液体が流出する虞が懸念されるところである。しかしながら、この制御手段32には、図5(a)に示すように、枠部32aに通気孔41が設けられている。そのため、制御手段32の螺合によって上記空間の容積が徐々に減少しても、中空部の空気は通気孔41を通じて外部に排出されるため、述したような流出の虞はない。
【0071】
ここで、図5(a)に示す状態では、貫通部35にて外部に露出している液体は、露出部分の表面張力と、貫通部35から流出しようとする圧力とがつり合った状態となっているだけで、その他の圧力は何ら受けていない。従って、仮に、この状態のもとで半導体ウエハを貫通部35に挿入して、貫通部35の液体を半導体ウエハのべべリング面のみに接触させようとしても、半導体ウエハの表面の比較的高い濡れ性の影響によって、貫通部35の液体に対してかかる‘貫通部35から流出しようとする圧力’が高くなるので、液体が半導体ウエハの表面に流れてしまい、べべリング面のみに接触させることはできない。そこで、図5(b)は、図5(a)の状態から、本体上部31bのネジ山36と、制御手段32のネジ山37との螺合を更に進めて、制御手段32の底面を本体上部31bの内側の底面40に接触させて螺着を完了させている。
【0072】
図5(b)の工程(第2準備工程)では、枠部32aの通気孔41は、底面40によって封止されており、よって、液面から底面39までの空間が完全な密閉状態となっている。
【0073】
このように液面から底面39までの空間が完全な密閉状態となっていると、貫通部35に露出している液体に対して、貯留部34の液体からかかる圧力が、図5(a)の段階のそれと比較して、小さくなっている。そのため、図5(b)の段階で半導体ウエハを貫通部35に挿入した場合、半導体ウエハへの液体の接触範囲をべべリング面に限定するように制御することができる場合がある。しかしながら、例えば半導体ウエハ表面に厚さ100nmのSiOの膜が形成され、当該膜のべべリング面の汚染物をフッ化水素酸溶液などを用いて接触溶解させる場合には、SiOによってフッ化水素酸溶液がウエハの表裏面に引き出される虞が高い。従って、このような場合は、図5(b)の段階であっても半導体ウエハへの液体の接触範囲を正確に制御することは困難である。そこで、本形態では、図5(b)の段階に続けて、図5(c)に示すように、芯部32bを、枠部32aの雌ネジ38との螺合を解除させる方向に回転させて、芯部32bの底部を引き上げることができる。
【0074】
この図5(c)の工程(第3準備工程)によって、上述した密閉された空間が減圧され、これに伴って、貯留部34の液体の液面が制御手段32の底面のほうへ引き上げられて、図5(b)の段階で貫通部35に露出した液体の露出液面が、貯留部34側に引き込まれる。
【0075】
この図5(c)の段階とすることで、図5(b)の段階と比較して、貫通部35に露出している液体が貯留部34側に強く引き込まれている。そのため、上述したようなSiOの膜が形成された半導体ウエハを貫通部35に挿入した場合であっても、貫通部35に露出している液体をSiOの膜の表面に引き出そうとする力に比べて、制御手段32による、貫通部35に露出している液体を貯留部34側に留めようとする力のほうが上回っている状態を実現することができる。
【0076】
この図5(c)の段階を実現した後、または実現している間に、半導体ウエハを貫通部35に挿入した状態を図6に示す。
【0077】
図6に示すように、図5(c)の段階を実現した後、または実現している間に、半導体ウエハを貫通部35に挿入すると、半導体ウエハの表面状態に影響を受けることなく、半導体ウエハのべべリング面のみに液体を接触させることができる(接触工程)。このように貫通部35に露出している液体を半導体ウエハに接触させている間、制御手段32の枠部32a及び芯部32bの位置を変化させる必要はない。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体ウエハと液体とが接触している最中に、制御手段32の枠部32aを回転させて、貫通部35への液体の露出状態を制御してもよい。
【0078】
図5(c)の段階で実現することができる半導体ウエハのべべリング面への液体の接触範囲は、液体の種類や、貫通部35の大きさ、半導体ウエハの表面の性質にもよるが、後述する実施例に示すように、半導体ウエハのべべリング面の端部から、半導体ウエハの中心に向けて、長さ300μmで示される範囲を実現することができる(図6)。
【0079】
このように、本形態の汚染物回収装置によれば、制御手段32が回収治具30に設けられたことによって、貫通部35にて半導体ウエハと貫通部35に露出した液体とが接触したときの、半導体ウエハWへの液体の接触範囲を限定することができる。また、接触させた液体を効率良く回収することができる。このような回収治具30を具備することによって、汚染物回収装置は、半導体ウエハの特定領域における汚染の有無、及び汚染の程度の正確な評価に寄与することができる。特に、本形態の汚染物回収装置は、半導体ウエハのべべリング面の汚染物の分析の精度向上に大きく貢献することができる。すなわち、本形態の汚染物回収装置は、従来実施困難であったべべリング面のみへの液体接触を、精度良く実施することができる。
【0080】
また、上記の構成によれば、半導体ウエハの表面状態に左右されることなく、接触溶解によって半導体ウエハの特定部分の膜中に含まれる汚染物を、精度良く回収することができる。そのため、従来と比較して、幅広い上記液体の種類を用いて半導体ウエハのべべリング面に付着した汚染物を回収することができる。
【0081】
尚、気相分解法などを組み合わせてウエハ表面に形成されたSiO膜をフッ化水素蒸気により分解することにより評価する従来法があるが、分解に時間がかかることや、分解時に蒸気がウエハ表面で凝縮することなどで正確な位置情報を得ることが困難であるという理由から精度の良い評価は困難であると言える。したがって、本形態に係る回収治具30は、基板(例えば、ウエハ)の特定領域から汚染物を精度良く回収することができ、当該特定領域の汚染状況の分析・評価の精度向上に大きく貢献することができる。
【0082】
このように、本形態の汚染物回収装置の回収治具30によって回収された液体は、貯留部34から取り出され、適切な測定装置を用いて汚染物を定量することにより、汚染状況の評価、判定をすればよい。定量操作は、評価対象成分毎に異なるが、特に評価対象成分が金属元素であれば、一般的には誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、黒鉛炉原子吸光分析装置などにより測定する方法が用いられる。イオン成分、有機酸等についても、適切な溶解液(例えば超純水)の選択、イオンクロマトグラフ法などによって測定することができる。
【0083】
尚、本形態では、半導体ウエハのべべリング面を液体の接触領域として特定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本形態の構成を用いれば、制御手段32の芯部32bと枠部32aの雌ネジ38との螺合の割合を調整することによって、所望の領域、すなわち汚染物の回収・分析を実施すべき領域のみに液体を接触させることができる。上述した長さ300μmで示す範囲から、長さ2mmで示す範囲までの間で制御することが可能である。
【0084】
また、本形態では半導体ウエハを分析対象として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液晶基板などの基板であっても分析対象とすることができる。
【0085】
また、本形態では、ウエハ回転体10と駆動体20とを支持台50の上面に載置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、回収治具30と半導体ウエハWとの相対位置を変化させることによって、図2の回収治具30−1の位置と、回収治具30−2の位置とを実現することができるならば、ウエハ回転体10と駆動体20とはそれぞれ別体で配置してもよい。
【0086】
また、本形態では、半導体ウエハWの表面が水平になるように保持する保持部10aを備えており、また、半導体ウエハWの表面が水平に維持されていることに合わせて、図4及び図5(a)〜(c)に示すように、貫通部35も、貯留部34と外部とを水平方向に連通している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、表面を水平面に対して垂直になるようにして半導体ウエハWを保持する保持部と、貯留部34と外部とを水平に対して垂直方向に連通する貫通部35´とを配した構成であってもよい。この場合の回収治具30´の構成を図7に示す。図7は、本形態の変形例として用いられる回収治具30´は、図4に示した本体下部31aの貫通部35に代えて、図7に示すように、本体下部31aの貯留部34と外部とを水平に対して垂直方向に連通する貫通部35´が設けられている。これにより、表面が水平面に対して垂直になるように半導体ウエハWを保持する保持部が設けられた構成であっても、図5(a)〜(c)と同様の段階を経ることによって、半導体ウエハWのべべリング面のみに、貫通部35´に露出した液体を接触させることができる。
【0087】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
〔実施例1〕
図4に示した回収治具30として、図8に示すような寸法の回収治具30を用いた。すなわち、回収本体31には、図8に示す寸法のPTFE製のものを用いた。また、制御手段32は、枠部32aとして図8に示す寸法のPFA製のものを用い、芯部32bとして図8に示す寸法のPTFE製のものを用いた。
【0089】
上述した回収治具30を用いて、貯留部34に希王水溶液を200μL導入した後、制御手段32によって貯留部34を密閉状態にして、回収治具30の準備を終えた。
【0090】
次に、図1に示したウエハ回転体10として、水平保持型基板検査装置(SC-2000;NAS技研社製)を用いて、この水平保持型基板検査装置に、厚さ0.7mmのシリコンウエハを設置し、2mm/秒の線速度で回転させた。シリコンウエハは、外周部端面がべべリング加工されたベベリング面を有しており、室内に長時間放置されていたものを用いた。
【0091】
そして、接触工程として、回転中のシリコンウエハのべべリング面を、回収治具30の貫通部35から露出した希王水溶液に接触させた。このとき、シリコンウエハのべべリング面の先端が、貫通部35における最も貯留部34側まで挿入した。挿入は、回収治具30の側面を、図示しない撮像機器を用いて観察することによって確認した。接触は、接触開始地点からシリコンウエハを2回転させたところで接触した希王水溶液の回収操作を終了させた。
【0092】
接触状態を、図9に示す。図9に示すように、本実施例の回収治具を用いることによって、液体がべべリング面のみに接触していることがわかる。
【0093】
接触処理の終了後、貯留部34に回収された希王水溶液を用いて、誘導結合プラズマ質量分析法によって液中の汚染物質を定量した。以上の操作を1回として、3回繰り返して実施し、各元素の量をそれぞれ求め(各回)/(3回の合計)の割合から、Na、Mg、Al、K、Mn、Znの各元素の回収率を求めた。
【0094】
〔比較例〕
比較例として、制御手段32を備えていない回収治具を用いて、実施例1と同じ検証を行なった。比較例で用いる回収治具は、実施例1の回収本体31と同一である。
【0095】
以下に、実施例1及び比較例の分析結果を示す。
【0096】
【表1】

【0097】
上記の表1から、本実施例の回収治具30を用いた場合、1回目の回収処理における各元素の回収率が、2回目以降の回収率理と比較して著しく高い。これは、本実施例の回収治具30を用いた場合、希王水溶液の接触範囲がべべリング面に限定されており、また、1回目の回収処理によって各元素の大部分が回収されているためであると言える。これに対して、比較例の回収治具の回収率を検証すると、2回目以降の回収処理でも各元素が回収されていることから、希王水溶液の接触範囲が安定していないことがわかる。また、比較例の回収治具の場合、1回目の回収処理における回収率が、実施例1の回収治具の結果と比較して低く、実施例1の回収治具に比べて、回収率が劣っている。
【0098】
以上のことから、本形態の構成によれば、ウエハのべべリング面のみに液体を接触させることができるとともに、汚染物を高い回収率で回収することができる回収治具を提供することができる。
【0099】
〔実施例2〕
上記実施例1で用いたシリコンウエハに代えて、本実施例では100nmSiO膜付きのシリコンウエハを用いた。また、上記実施例1で用いた希王水溶液に代えて、本実施例では、フッ化水素水溶液(HF溶液)を用いた。回収治具は、実施例1で使用したものと同一である。また、接触処理についても、実施例1の接触処理と同一である。
【0100】
接触処理の終了後、貯留部34に回収されたHF溶液を用いて、誘導結合プラズマ質量分析法によって液中の汚染物質を定量した。以上の操作を1回として、3回繰り返して実施し、各元素の量をそれぞれ求め(各回)/(3回の合計)の割合から、Na、Mg、Al、K、Ca、Tiの各元素の回収率を求めた。
【0101】
以下に、実施例2の分析結果を示す。
【0102】
【表2】

【0103】
尚、本実施例の比較例として上記比較例1で使用した回収治具にHF溶液を導入して、100nmSiO膜付きのシリコンウエハのベベリング面への接触を試みたが、HF溶液が当該シリコンウエハの表面に引き出されてしまい、分析不可能であった。
【0104】
上記の表2から、本形態の回収治具を用いれば、従来困難であったHF溶液を用いた分析を良好に実施することができる。
【0105】
また、本実施例の分析であっても、実施例1と同様に、1回目の回収処理における各元素の回収率が、2回目以降の回収率理と比較して著しく高く、非常に高い回収率で回収することができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る、汚染物回収装置に設けられた回収治具は、基板の特定領域のみに回収用の液体を接触させることができる。特に、従来困難であった半導体ウエハのベベリング面のみに液体を接触させ、ベベリング面に付着した汚染物を効率的に回収することができる。
【0107】
従って、特定領域のみに回収用の液体を接触させたいあらゆる種類の基板を用いて、当該基板の特定領域に付着した汚染物の定量を実施するための汚染物回収装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の一実施形態に係る汚染物回収装置の構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した汚染物回収装置の上面図である。
【図3】図1に示した汚染物回収装置の主要部の構成を示した斜視図である。
【図4】図3に示した主要部を切断線A−A’において切断した状態を示した矢視断面図である。
【図5】図4に示した主要部における制御の仕組みを説明した図である。
【図6】図3に示した主要部に半導体ウエハを挿入した状態を示した断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る汚染物回収装置に用いられる回収治具の変形例を示した断面図である。
【図8】本実施例で用いた回収治具の詳細な構成を示した断面図である。
【図9】本実施例で用いた回収治具にシリコンウエハを挿入し、当該回収治具に貯留された液体とシリコンウエハとを接触させた状態を示した画像である。
【図10】従来例の構成を示した断面図である。
【図11】従来例の構成を示した断面図である。
【符号の説明】
【0109】
1 汚染物回収装置
10 ウエハ回転体
10a 保持部
10b 回転部
20 駆動体
20a 回収治具ホルダー
20b 駆動機構
30、30´ 回収治具
30−1 回収治具
30−2 回収治具
31 回収本体
31a 本体下部
31b 本体上部
32 制御手段
32a 枠部
32b 芯部
33 フランジ部
34 貯留部
35、35´ 貫通部
36 ネジ山
37 ネジ山
38 雌ネジ
39 底面
40 底面
41 通気孔
50 支持台
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に液体を接触させて当該基板に付着した汚染物を回収するための汚染物回収装置に配設される回収治具であって、
上記液体を貯留する貯留部、及び
上記貯留部と外部とを連通し、且つ上記貯留部に貯留されている液体の一部を外部に露出させて上記基板に付着させるように構成された貫通部が設けられており、
上記貫通部にて、貫通部に露出した液体と基板とが接触したときの液体の接触範囲を制御する制御手段が、取り外し可能な状態で配されていることを特徴とする回収治具。
【請求項2】
上記制御手段は、上記貫通部に露出した液体に対して上記貯留部からかかる圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の回収治具。
【請求項3】
上記制御手段は、上記貫通部に液体が露出した状態の上記貯留部を密閉していることを特徴とする請求項1に記載の回収治具。
【請求項4】
上記制御手段は、上記密閉した状態において上記貯留部の容積を変化させることを特徴とする請求項3に記載の回収治具。
【請求項5】
上記制御手段は、上記貯留部に上記液体が貯留されたときに上記貯留部に形成される空間に隣接して配置されており、当該空間の気圧を変化させることを特徴とする請求項3に記載の回収治具。
【請求項6】
上記貫通部は、上記貯留部と外部とを水平方向に連通するように形成されており、且つ上記基板の厚さよりも大きく開口していることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の回収治具。
【請求項7】
上記貫通部は、上記貯留部と外部とを、水平に対して垂直な方向に連通するように形成されており、且つ上記基板の厚さよりも大きく開口していることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の回収治具。
【請求項8】
上記回収治具は、内径が互いに異なる筒構造の本体上部と本体下部とが互いの中空部が連通するように一軸方向に上下に並んでいる回収本体を備えており、
上記貯留部は、上記本体下部の中空部として形成されており、
上記本体上部における上記本体下部との境界部には、当該本体上部と当該本体下部とを繋ぐ、上記筒構造の径方向に延びた底部を有しており、
上記制御手段は、上記本体上部の中空部に挿入することによって取り付けられることを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の回収治具。
【請求項9】
上記筒構造は、円筒構造であり、
上記本体上部の中空部の壁面には、ネジ山が形成されており、
上記制御手段には、その側面に上記ネジ山と螺合するネジ山が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の回収治具。
【請求項10】
上記制御手段は、当該制御手段の底面を上記底部に接触させることによって、当該底部に設けられている上記本体下部の一端である開口部を封止するように構成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の回収治具。
【請求項11】
上記制御手段は、上記一軸方向に沿って動かすことができる芯部と当該芯部を囲む枠部とを有した二重構造となっており、
上記芯部と上記枠部とを相対的に動かすことによって、上記芯部の底面と上記枠部の底面との高さが可変するように構成されていることを特徴とする請求項8から10までの何れか1項に記載の回収治具。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか1項に記載の回収治具と、
上記基板の表面を水平に維持した状態で当該基板を回転させる基板回転体と、
上記回収治具と上記基板回転体とを相対移動させるための駆動体とを備えていることを特徴とする、基板の汚染物を回収するための汚染物回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−246192(P2009−246192A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92178(P2008−92178)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【Fターム(参考)】