説明

回帰的連鎖反応の助けで特異的核酸フラグメントを増幅するための方法

本発明は、回帰的連鎖反応の2つの変形2/2及び2/1の助けにより、特異的核酸フラグメントを増幅するための方法に関し、この方法では、標準的PCRで使用される典型的プライマーの代わりに、通常の(基本的)プライマーのタンデム反復配列の形態のプライマー(反復は、「頭尾」型に従って配置され、2つ又はそれ以上のこのようなエレメントからなる)が、直接的プライマー及び/又は逆方向プライマーとして使用される。増幅の結果として、アンプリコンの長さは、通常のプライマーの長さ分だけ、各サイクルと共に増加し、それにより、サイクルにわたって、アンプリコン中のプライマーに対するアニーリング場所を増加させ、正味の複製の増大を提供し、PCR中の数よりも数オーダー大きい数の、アンプリコンの蓄積の加速をもたらす。DNA鎖置換活性を示す熱安定Vent型DNAポリメラーゼの使用は、各サイクルにおける二本鎖アンプリコンの産生を生じ、かつプライマーのアニーリング前に形成されて上記ポリメラーゼによって置換されるDNA一本鎖を生じ、DNA一本鎖形態でのこのようなアンプリコンの数は、各サイクルにおいて増加する。本発明の方法は、医学、獣医科学、公衆衛生及び疫学的研究において、遺伝子組み換え生物から製造された食品製品を検出するために食品産業において、原材料の品質を試験するために、可能性のあるバイオテロリストの攻撃を含む危険な感染症の因子を検出するために、並びに犯罪者を同定するために犯罪捜査学において、DNAを配列決定するため、DNA診断のために、推奨され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学及びバイオテクノロジーに関し、DNA分子及びRNA分子の増幅及び分析に関する。本発明は、医学、獣医科学、公衆衛生及び疫学的研究において、遺伝子組み換え生物から製造された食品製品を検出するために食品産業において、原材料の品質を決定するために、可能性のあるバイオテロリストの攻撃を含む危険な感染症の因子を検出するために、並びに犯罪者を同定するために犯罪捜査学などにおいて、DNAを配列決定するため、DNA診断のために、使用され得る。
【背景技術】
【0002】
DNAを配列決定するため及びDNA診断のための既存の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びその改変の助けによる、特異的なDNAフラグメント又はRNAフラグメントの増幅に主に基づく。近年、リアルタイムPCRがますます使用されており、リアルタイムPCRでは、標的産物の検出は、光学モジュールを備えた特別なDNAサーモサイクラーの助けにより、増幅の間に直接実施される。このようなアプローチの重要な利点の1つは、反応産物の電気泳動分離工程を実行する必要がないことである。この分離工程では、試験管を開けること及びその内容物を空気中で操作することが想定され、その結果として、その場の作業領域がPCR産物(アンプリコン(このアンプリコンは、数十億又は実に数兆のコピーである))を汚染し、先立つ陽性反応の間に生成された及び空気中を循環しているアンプリコンにより液滴様式で新たな反応混合物が最初に汚染され得るために、引き続く分析の過程において偽陽性結果が得られる結果となる。これに加えて、電気泳動分析を実施する可能性がないことで、全手順のための時間が顕著に減少される。別の重要な利点は、それ又は他の標的のコピー数(例えば、原材料又は食品製品中の遺伝的に改変された成分又は任意の他の不純物の含量)の、リアルタイムPCRの助けによる正確な定量的決定の可能性である。
【0003】
配列決定のためにPCR産物を使用する際、一本鎖DNAを使用することが所望され、これは、種々の方法で達成できる。つまり、アンプリコン鎖(そのうち一方はプライマーの構造中にビオチン標識を保有する)を分離するために、ストレプトアビジンでコーティングした磁気粒子が使用される[Hultmanら、1989]。配列決定するための一本鎖DNAを得るより単純な方法は、PCRの助けによる非対称的なDNA増幅の種々の変形によって提供される[Gyllensten、Erlich、1988;Mazarsら、1991;Sanchezら、2006]が、これらは鎖の一方の主な蓄積のみを提供し、全体として見るとPCR自体の有効性を低下させる。
【0004】
圧倒的大多数の場合、典型的なPCRは、一対のプライマー(これらは一般に、「順方向」(forward)及び「逆方向」(reverse)と称される)を用いて実施される。プライマーの配列は、互いに対して対応するDNAフラグメントにアニーリングし、それにより指数関数的な増幅を提供するような方式で選択される。通常、プライマーはアニーリング場所に対して完全に相同であり、単一又は複数のヌクレオチドの置換分だけ異なるいくつか又は他のDNAフラグメントの識別に関する特別な場合、及び不対合ヌクレオチドがプライマーの3’末端又はその近傍に配置され得る場合のいずれかを例外とする[Gibbsら、1989;Huangら、1992]。アニーリング場所でのプライマーの不完全な相同性の別の理由は、実施された部位特異的変異誘発であり、その場合、特異的配列変化が所望される不対合ヌクレオチドは、通常、プライマーの中央部分に位置する[Hemsleyら、1989]。5’末端に不対合部分を有するプライマーは、分子クローニングにおけるその引き続く使用のために1つ又は別の制限エンドヌクレアーゼの認識部位を導入することが所望される場合に、通常使用される[Scharfら、1986]。プライマーの5’末端の不対合区画もまた、いくつかのユニバーサルハイブリダイゼーションプローブがアニーリングする場所として機能し得る[Zhangら、2003]。
【0005】
PCRにおいて通常使用されるプライマー対に加えて、感度が増強された反応の特異性の増強を達成することを目的としたいくつかの場合には、互いに対して外部及び内部である2対のプライマーが使用され、PCRを実施するこのような方法は「ネステッド」と呼ばれる[Erlichら、1991]。ここで、このようなPCRが実施される場合、反応を停止させ、第一のプライマー対に関して内部である第二のプライマー対を添加することを含む変形が存在する。より単純かつより簡便な変形は、アニーリング温度に関して顕著に異なるプライマーの対の使用である。この結果として、高温のアニーリングを用いる第一の工程において、外部プライマー対のみによる増幅が生じ、一方で第二の工程において、アニーリング温度の対応する低下の際に、第二の内部プライマー対が増幅に含められる[Yourno、1992]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
著者らが連結線形増幅(Linked Linear Amplification)即ち略してLLAと呼ぶ増幅方法もまた公知であり[Reyesら、2001;Killenら、2003]、その基礎はPCRと本質的に同じであるが、対応する窒素含有塩基の代わりにそれらの各々の3’末端近傍に複製不能なエレメントが存在することを特徴とする複数対のネステッドプライマー(上限7〜9対)が使用され、引き続くサイクルにおいてそれらに基づいて新たなDNA鎖が構造化されるのを妨害する。つまり、これらのプライマーのための新たなアニーリング場所は、この増幅過程においては生じず、指数関数的増幅が生じることを不可能にしている。それにもかかわらず、プライマー対の数が大きいことに起因して、必要とされるDNAフラグメントの中心部分の複製の合計は、PCRにおける複製の合計と比較され得る。複製不能なエレメントを有する各対から1つのプライマーだけが製造される場合、倍増係数が増加することが他の著者によって指摘されたが[Behlkeら、2006]、ちなみにこれは驚くべきことではない。これらの反応の特異性の増加は、これらの刊行物の著者によって強調されているが、その特異性は高価な費用で達成される。なぜなら、プライマー対の数の増加は、その反応を顕著により高価にし、完全に価値のある(複製不能なエレメントを含まない)プライマーの少なくとも一部を使用する場合、事実上その反応をより予測不可能なものにするからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
つまり、LLA法は、ネステッドPCRと一緒になって、本発明者らが提唱した新たな反応の原型としてある程度まで機能し、ここで、PCRはその基礎であるが、比較的鋭い識別が存在するという事実に起因して、蓄積する標的産物を主に特徴とし、その点において数オーダーPCRに勝っている。本発明者らは、この反応を別の方法で命名することを決定した−回帰的連鎖反応(Recurrent Chain Reaction)即ち略してRCRである。実際に、標的産物が線形を上回って蓄積する既存の核酸増幅反応の大多数は、本質的に回帰的即ち再帰的である。しかし、既存の数学的用語「回帰的」(recurrent)に加えて、この語の主な意味は、RCR中のアニーリングするプライマーの特徴に対応する特定の程度まで、「事象から事象へと周期的に反復」して生じる事象を特徴付ける。つまり、「DNA分子を増幅する係数が各サイクルで増加する(又はアンプリコン内のプライマーのアニーリング場所の数が各サイクルで増加する)PCR」型としてのこの反応の長い名前を解消するため、及び通常のPCRからこの新たな語を識別するために、本発明者らは、かなり標準的かつ短い様式−RCR−でそれを命名することを決定した。厳密に言うと、RCRという名称は充分な容量がない。なぜならば、使用した酵素−ポリメラーゼ−のみがそこで言及され、その反応混合物の、重要度が劣ることはない、別の成分としてのDNAに関して全く情報がないからである。例えば、反応LLAの名称は、与える情報がさらに少ない。従って、導入された名称RCRが存在する権利があり得るというのが本発明者らの意見であり、この反応を広く使用した場合には、この略語に言及すればしばしの時間後、何が考慮されるかがすぐさま明らかとなり、このPCRが何であるかを解釈する必要性がないように、本発明者らには思われる。
【0008】
本発明の目的は、標的アンプリコンの蓄積が有意により速く生じることに起因して、複製の係数が各サイクルで増加した、特異的DNA(又は逆転写酵素若しくはこのような活性を有するDNAポリメラーゼの関与によりRNA)フラグメントの増幅を実施する可能性にある。一方でこれは反応時間を減少させ、他方その感度を増加させ、ネステッドPCRを使用することも、新たな成分を有する第一の反応由来のアリコート部分を用いたPCRの第二の工程もなしに、20〜25サイクルだけで、核酸の単一分子を確信を持って検出することが可能となる。これに加えて、この反応の変形の1つにおいて、ダイデオキシターミネーターを用いて酵素的にDNAを配列決定する際に使用され得る、DNA鎖の一方が主に蓄積する。
【0009】
本発明のエッセンスは、通例アニーリングの場所に関して完全に相補的である、標準的PCRにとっては通常であるプライマーの代わりに、プライマーが、RCRにおいて順方向及び逆方向として又はそれらのうち一方のみとして使用され、このプライマーは、「頭から尾への」(head to tail)型に従ってそれらの中に反復が配置され、2つ又は多数のこのようなエレメントからなる、単数(メイン)プライマーのタンデム反復配列である点にある。通常のプライマーについて、プライマー中のヌクレオチドの全配列が文字「a」の形態で示される場合、ダブルのプライマーは「aa」で示され、トリプルのプライマーは「aaa」で示されるであろう。それらは、ヌクレオチド記録の形態で、例えば、


として提示され得、ここで、2つの(異なって)下線を付した部分は、下線なしの部分の完全なコピーである。各サイクルと共に、アンプリコンの伸長もまた、単数プライマーの長さ分だけ(ダブレットの使用の場合。或いはトリプレットの使用の場合にはダブレットの長さ分だけ)生じ、アンプリコン構造中のプライマーのためのアニーリング場所が増加するという事実に加えて、鎖置換活性を有するVent型の熱安定DNAポリメラーゼの使用は、各サイクル中の二本鎖アンプリコンの発生を生じ、そしてまた、アニーリングしたプライマーがこのようなポリメラーゼによって置換される前に、一本鎖DNA鎖を増幅する。ここで、一本鎖DNA鎖の形態でのこのようなアンプリコンの数は、各サイクルと共に増加する。
【0010】
図1から明らかなように、「A」と示され得る、1つのアニーリング場所のみを保有する最初のヌクレオチド配列上の単数プライマーのタンデム反復からなるようなプライマーがアニーリングする際に、不対合区画が、2つの「a」の一方として形成される。ここで、プライマーが、3’末端の近傍に配置されたそのメイン部分でアニーリングすると、既に1サイクルの後、アンプリコン構造中のプライマーのアニーリングのためのこのような区画は、2つの「AA」であり、理論的には例えば2つのダブレットプライマー「aa」及び「aa」が、それらに対してアニーリングし得る。ここで、外部のアニーリング場所でアニーリングしたプライマーの伸長の結果として、鎖置換活性を有する熱安定DNAポリメラーゼは、その進路で遭遇する、内部の場所でアニーリングしたプライマーの助けで増幅されたDNA鎖を置換する。これは、シフトするDNA活性鎖を有するDNAポリメラーゼを使用する場合の、内部及び外部のプライマーが同時にアニーリングする、ネステッドPCRをいくらか思い起こさせ得る。しかし、ネステッドPCRにおいて、プライマーのアニーリング場所の数の増加は起こらず、それらの各々(外部及び内部)は互いに独立して「機能する」。アニーリング場所の数の増加に起因して、RCRにおいてアンプリコンの伸長が生じ、その結果として、各サイクルで、さらにより多い数のダブレットプライマー「aa」が、成長しつつあるAA−、AAA−、AAAA−などの部分に対してアニーリングし得る。アニーリング場所の増加はまた、少なくともダブレットが第二のプライマーとして使用される限り、他方の鎖についても同様の様式で生じるであろう。
【0011】
1つの単数(共通)プライマー及び1つのダブレットプライマーを使用するRCRを、本発明者らはRCR2/1と名づける。順方向及び逆方向としてダブレットプライマーを使用するRCRを、同様の様式でRCR2/2と名づける。これらの反応におけるアンプリコンの蓄積の増加は、一般的なPCRにおけるアンプリコン蓄積の増加を顕著に超え、これは図2から明らかである。つまり、PCRについて、理論的に可能な増幅係数の最大は、この反応の100%の有効性が存在するとしたとき、2に等しい。RCRにおいて、DNA分子の増幅係数は、各サイクルと共に増加し(図3)、RCR2/2については20回目のサイクルで、増幅係数は理論的に平均4.35であり、ここで、例えば第一のサイクルで現れるアンプリコンの場合、その瞬間では、これもまた理論的には8.5及び8となろう。上記を考慮すると、例えば10回目のサイクルの完了後、最初のDNA鎖及びこれらの鎖自体に対してプライマーがアニーリングして形成されるアンプリコンの長さ分だけの異種性を考慮して、PCRにおける最初のDNA配列の増幅は、理論的には210回即ち1024回生じると考えられ得ることになる。同じサイクル数で、RCR2/1及びRCR2/2中のDNAの特異的フラグメントの最初の数は、理論的に、それぞれ約4000倍及び18000倍増加し、各サイクルと共に、この差異はなだれのように増加するであろう。20回目のサイクルで、PCRとRCR2/2との間の増幅度合いの差異は5百万倍に達し、30回目のサイクルでは、8桁を超える。RCR2/1について、各サイクルと共に、一本鎖アンプリコンの数もまた増加し、既に20サイクルの後には、理論的に約10億の鎖になり得、それらに対する配列決定プライマーのアニーリングに即座に適する(図4)。ここで、RCR2/2において、一本鎖アンプリコンが各サイクルにおいて形成されるが、反応のこの変形においては、このような一本鎖アンプリコンは、最初のDNAの第二の相補鎖の子孫として生成されるアンプリコンに対応し、同様の子孫と共に第一の2本鎖構造を形成可能であり、従ってアニーリング場所に関して配列決定プライマーと競合可能である。
【0012】
実際、実に最初のRCRサイクルにおけるDNA分子の増幅の有効性は、反復するアニーリング場所でプライマーのアニーリングが回帰的に生じるが、図1中に図示される理想的な様式では必ずしも生じないという事実を考慮すると、理論的に計算されたものとは顕著に異なるであろう。より可能性のある事象は、(そのような事象が生じる場合)2つのアニーリング場所の即座の占有を伴うダブレットプライマーのアニーリングであり、従って、置換された鎖の数を減少させる。その第二の5’末端部分によるプライマーのアニーリングもまた可能であり、従ってこれは、アニーリングしたプライマーがそれ自体伸長されず、かつDNA鎖の置換も引き起こさないという結果を生じるが、但し、このようなことは、第一のプライマーに関して内部であるそのメイン部分によって「正確に」アニーリングしたプライマーから構造化されることを条件とする。しかし、3’末端近傍に配置されたそのメインの単数部分による「正確な」プライマーのアニーリングをときどき生じる形態でプライマーをアニーリングすることの回帰性に起因して、このような事象は疑いなく生じ、これは、RCR産物の電気泳動分離が示された図5からも理解される。共通プライマーを用いたPCRの助けによる増幅(トラック1)との違いは、アンプリコンの長さの増加がトラック2で観察されることであり、このことは、ダブレットプライマーの計画された「正確な」アニーリングが、他の事象のなかでもとりわけ生じるということを示している。複数のバンドに起因して、ゲル電気泳動の助けによる最終地点でのRCR産物の分析を事実上実施できないことが、図5から明らかである。しかし、リアルタイムRCRにおいて、SYBR Green I型の特異的色素の蛍光の増加の検出、又は順方向プライマー及び逆方向プライマーの構造中にそれぞれ含まれる色素ドナーから色素アクセプターへの蛍光共鳴エネルギー移動の検出は、後者がこのような移動により提供される距離で標的とアニーリングすることを条件として、全く可能である。インターカレート色素SYBR Green Iの蛍光の増加曲線は、共通プライマーを用いたPCR及びダブレットプライマーを用いたRCRについては図6中に示され、これらから、RCRに関する曲線の顕著により早い上昇が明らかであり、ここで、DNA標的の最初の数は同じであり、両方の反応について約20コピーであった。蛍光の増加曲線は、蛍光共鳴エネルギー移動を伴うPCR及びRCRについて、図7中に示される。しかし、得られた意味を明確に配置する、PCRフレームのために主に開発された、意味の標準化を実施するために調整される既存のデバイスの特異性を考慮し、RCRについての意味のバックグラウンドに対するPCRにおける蛍光の増加がそれほど重要でないと思われることを考慮すると、RCRにおける蛍光の増加は、それほど急激とは思われない。しかし、RCRについて得られた意味が除外され、デバイスがPCRについてのみ蛍光の増加を再計算するために作製される場合、それが完全に許容可能でありかつ急激でさえあることがわかる(図8)。PCRについての蛍光のまっすぐな増加が、外挿によってRCRについての実験における増加と関連付けられる場合、後者に関する蛍光の増加曲線は、実質的にまっすぐになるであろうし、これは原理上、図2に示されるこれらの反応についてのアンプリコン鎖の蓄積の特徴に対応する。
【0013】
特異的なDNAフラグメント又はRNAフラグメントの回帰的連鎖反応の助けによる増幅の提案された方法は、リアルタイム様式でのそれらの検出及び一本鎖アンプリコンの産生と共に、以下の実施例により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、RCR2/1(回帰的連鎖反応2/1)のスキームであり、図中、プライマーの1つはダブレットであり、第二(単数)は、DNA増幅鎖の非対称性の蓄積を生じる。
【図2】図2は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と比較した、回帰的連鎖反応の2つの変形(RCR2/1及びRCR2/2)についてのアンプリコン数の増加の特徴を示す図である。
【図3】図3は、各引き続くサイクルに伴い増加する、RCR2/2におけるDNA分子の複製係数の増加を示す図である。
【図4】図4は、アンプリコンの20回目のサイクルでの、単数(順方向)プライマー及びダブレット(逆方向)プライマーの使用によって形成された、鎖混合活性を有するDNAポリメラーゼの助けによるコピーの特徴を示す図である。1つの二本鎖産物及び14の一本鎖産物の形態で形成された鎖の総量に従って、この係数は、8に等しいとみなされ得る。
【図5】図5は、10%ポリアクリルアミドゲルにおける、25サイクルの間に熱安定性Vent exo−DNAポリメラーゼの助けで増幅された、PCR産物及びRCR産物の電気泳動分析の画像を示す図であり、図中、共通プライマーの使用によるトラック(PCR)は番号1によって示され、プライマーの1つがダブレットであるトラック(RCR2/1)は番号2によって示される。
【図6】図6は、RCR及びPCRにおけるインターカレート色素SYBR Green Iの蛍光曲線の増大を示す図である。サンプル1は、RCR2/1(ここで、プライマーの1つはダブレットである)に特徴的な曲線を示し、サンプル2は、共通プライマーを用いたPCRに特徴的な曲線を示す。
【図7】図7は、RCR2/2及びPCRにおけるFRET効果(蛍光共鳴エネルギー移動)後の蛍光曲線の増大を示す図であり、ここで、サンプル1は、プライマーが両方ともダブレットであるRCR2/2に特徴的な曲線を示し、一方でサンプル2は、共通プライマーを用いたPCRに特徴的な曲線を示す。
【図8】図8は、RCR2/2についての意味を考慮から除外した後の、図7と同じ実験でPCRを実施した際の蛍光曲線の増大を示す図であり、これに起因して、デバイス(本明細書では、DNAサイクラーモデルiCycler iQ)による提示されたデータの標準化の結果として、蛍光の増加曲線(2)は標準的な特徴を獲得し、図7中には示されていないが、外挿を使用した場合、図7中の曲線1が、顕著により急激な方向に向かって上昇するはずであることを示している。
【実施例】
【0015】
(例1)
RCR2/2及びRCR2/1の実施
RCRを、緩衝液(40mMのTris−HCl(pH8)、0.25mMのMgCl、25mMのKCl);1単位の活性Vent exoDNAポリメラーゼ;それぞれ0.5pmolの2つのダブレットプライマー(それぞれ、その蛍光色素(ドナー及びアクセプターで、又は色素及びクエンチャーで)でマーキングした)及び対応する量の蒸留水を含む反応混合物25μl中で実施した。蛍光色素で標識したプライマーの代わりに、未標識のプライマーもまた使用した。このとき、蛍光の変化は、インターカレート色素SYBR Green Iの助けで制御した。RCRを、以下の条件下で、モデルiCycler iQのDNAサーモサイクラー(Bio−Rad Laboratories)中で実施した:第一のサイクルにおける二本鎖DNAの変性を、95℃で30秒間実施し、次いで、プライマーをアニーリングさせ(55℃、10秒)、伸長させ(72℃、20秒)(この工程の最後で蛍光を検出した)、標的産物を20秒間変性させ、異なる実験におけるサイクル数は20から30まで変動させた。
【0016】
RCR2/1は、ダブレットプライマーを1つ使用したことだけがRCR2/2とは異なり、一方でその対の第二のプライマーは単数であり、これにより、DNA鎖の一方を主に蓄積させる。
【0017】
(例3)
RCR産物の電気泳動分析
RCR産物の電気泳動分離を、垂直型のデバイスにおいて4時間の間、ゲルの長さ1cm当たり4Vの電圧勾配で、非変性条件下で、tris−アセテート緩衝液(pH7.8)中、8%ポリアクリルアミドゲルで実施した。電気泳動の完了後、エチジウムブロマイドで染色した後のゲルを、写真文書化システムGel Camera System(UVP,Inc.)で写真撮影する。
【0018】
文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖置換活性を有する熱安定性DNAポリメラーゼ並びに順方向プライマー及び逆方向プライマーのダブレットの使用に起因して、プライマーのアニーリング場所の数の増加が生じ、増幅の過程においてDNA分子の複製係数の一定の増加を生じ、アンプリコンの蓄積の加速を生じることを特徴とする、特異的核酸フラグメントを増幅するための方法。
【請求項2】
順方向プライマー及び/又は逆方向プライマーの構造が、メインプライマーの3つ又はそれ以上の反復を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
順方向プライマー及び/又は逆方向プライマーの構造が、そのメインプライマーの反復に加えて、他のヌクレオチド配列又は他の分子を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アンプリコンの蓄積の検出が、光学モジュールを備えたサーモサイクラーにおいて、蛍光の増加に従って実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
アンプリコンの蓄積の検出が、光学モジュールを備えたサーモサイクラーにおいて、蛍光の増加に従って実施されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
プライマー対の一方(順方向又は逆方向)が単数のメイン配列からなり、他方が、反応の非対称的過程、及び酵素的方法によるその配列決定に適した一本鎖DNAフラグメントの形態でのアンプリコンの出現を提供する反復プライマーであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
プライマー対の一方(順方向又は逆方向)が単数のメイン配列からなり、他方が、反応の非対称的過程、及び酵素的方法によるその配列決定に適した一本鎖DNAフラグメントの形態でのアンプリコンの出現を提供する反復プライマーであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−527559(P2011−527559A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512107(P2010−512107)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/RU2008/000461
【国際公開番号】WO2008/153446
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(506358753)インスティチュート バイオキミー アイ ジェネティキ ウフィムスコゴ ナウチノゴ ツェントラ ラン (2)
【Fターム(参考)】