説明

回折光学パワー領域を備えた多焦点レンズ

【課題】回折光学パワー領域を備えた多焦点レンズを提供する。
【解決手段】回折光学パワー領域を有するレンズシステムが提示される。回折光学パワー領域は複数の同中心表面浮彫回折構造を有する。中心点に近い回折構造への入射光の大部分は、そこから周囲に離間した回折構造への入射光よりも光学パワーに寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それの周囲縁に近い回折光学パワー領域の回折効率を減少させることによってレンズ中に混合される回折光学パワー領域に関する。本発明はまた、光学パワーの累進を提供する回折光学パワー領域に関する。本発明はさらに、連続的または不連続的回折構造を使用し得る静的および動的多焦点レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
回折光学パワー領域は、光を回折することによって光学パワーを生成するレンズまたは光学部品の領域である。静的回折光学パワー領域は、一般に閉じた同中心曲線である個別表面浮彫回折構造を備えている。表面浮彫回折構造は、(たとえば、可視光の波長のオーダーの距離だけ)近接して離間している。表面浮彫回折構造は一般に同じ高さを有する。表面浮彫回折構造は一般にフレネル帯と呼ばれ得る。
【0003】
一般に、レンズまたは光学部品の与えられた厚さに対して、回折光学パワー領域は、それらの屈折対応物よりも大きい光学パワーを生成することができる。この利点にもかかわらず、回折光学パワー領域はいくつかの不利益を有する。
【0004】
回折光学パワー領域を使用することの主な不利益の一つは、それらが、それらの屈折対応物と比較して、大量の色収差を示すことである。色収差は、光学波長が変わるときに生じる光学パワーの変化に関連する。一定の光学パワーを有する回折光学パワー領域の色収差は、回折構造がレンズの周囲に接近するにつれて増加する。したがって、回折光学パワー領域の周囲は、最高度の色収差を示す。
【0005】
そのような色収差の結果、回折光学パワー領域を有するレンズは重大な視力妥協を提供する。視力妥協は、回折領域が二焦点レンズを作り出すために使用されるときに、一つのアプローチにおいて見ることができる。このアプローチでは、回折光学パワー領域は、眼用レンズの底部半分と光連絡して配置され得る。レンズは遠距離視力補正を有し、回折光学パワー領域は、近距離補正のための追加光学パワーを提供する。したがって、回折光学パワー領域の周囲は、遠距離補正と近距離補正の間の境界を形成する。この境界が最高度の色収差を有するので、境界を横切って見るユーザーは最高度の妥協視力を経験する。
【0006】
回折光学パワー領域の別の不利益は、外見的に魅力的でないと一般に見なされることである。前述の二焦点アプローチにおいて、レンズは、従来の二焦点における線と同様に、着用者上で観察され得る、回折光学パワー領域と眼用レンズの間の境界に鋭い描写を有するだろう。着用者はこの不所望に一般に気づく。眼科産業は線のない多焦点レンズ(たとえば累進追加レンズ)へ向かう傾向があるので、回折光学パワー領域は外見的に望ましくはない。
【0007】
したがって、前述の視力と外見の妥協を解決することが回折光学パワー領域のための技術分野に必要がある。したがって、今、この技術分野に固有の前述の障害と長年の問題を有効に解決するための改良レンズがこの発明で提供される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態では、レンズシステムは回折光学パワー領域を有し得る。回折光学パワー領域は複数の同中心表面浮彫回折構造を有する。中心点に近い回折構造への入射光の大部分は、そこから周囲に離間した回折構造への入射光よりも光学パワーに寄与する。
【0009】
本発明の実施形態では、レンズシステムは回折光学パワー領域を有し得る。回折光学パワー領域は複数の同中心表面浮彫回折構造を有する。回折構造は、鋸歯パターンを形成する一連の頂と隣接谷を有する。各同中心表面浮彫回折構造は鋸歯パターンの谷から頂まで延びている。中心点に近い第一の頂と第一の隣接谷の間の(たとえば垂直)距離は、中心点から離間した第二の頂と第二の隣接谷の間の(たとえば垂直)距離よりも大きい。
【0010】
本発明の実施形態では、レンズシステムは回折光学パワー領域を有し得る。回折光学パワー領域は中心と周囲縁を有する。回折光学パワー領域は光を焦点に集中させる。中心から焦点に集中された光量は周囲縁から焦点に集中された光量よりも大きい。
【0011】
本発明の実施形態では、電気活性レンズシステムは、電圧を印加するためのコントローラーと、コントローラーに電気的に連結された複数の同中心個別アドレサブル電極と、個別アドレサブル電極間に配置された電気活性物質とを有し得る。コントローラーが複数の個別アドレサブル電極へ電圧を印加するとき、電気活性物質の屈折率が光学パワーを提供するために変更される。複数の個別アドレサブル電極の幾何学的中心に近い個別アドレサブル電極への入射光の大部分は、複数の個別アドレサブル電極の幾何学的中心から離間した入射光よりも光学パワーに寄与する。
【0012】
本発明の実施形態では、レンズシステムは、特定の波長Aの光を焦点距離fに集中させるための複数の同中心表面浮彫回折構造を備えた第一の領域を有する回折光学パワー領域を有し得る。n番目の同中心表面浮彫回折構造の中心点からの半径は(2nλf)1/2よりも大きい。
【0013】
本発明の実施形態では、レンズシステムは、特定の波長λの光を焦点距離fに集中させるための複数の同中心表面浮彫回折構造を備えた第一の領域を有する回折光学パワー領域を有し得る。n番目の同中心表面浮彫回折構造の中心点からの半径は(2nλf)1/2よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施形態は、図と関連する続く詳細な説明からより完全に理解され認識されるであろう。図は実尺どおりではなく、図において同様の参照符号は一致か類似か同様の要素を示している。
【図1】図1は、屈折累進追加領域と回折光学パワー領域を有するレンズ100の正面図を示す。
【図2A】図2Aは、静的回折光学パワー領域を有する図1のレンズ100の正面図を示す。
【図2B】図2Bは、軸AAに沿って破断された図2Aのレンズの断面図を示す。
【図3】図3は、剪定回折光学パワー領域を有する図1のレンズ100の正面図を示す。
【図4】図4は、剪定回折光学パワー領域を有する図1のレンズ100の正面図を示す。
【図5】図5は、縁取り境界を有する図4のレンズ100の正面図を示す。
【図6A】図6Aは、それぞれ、連続的回折光学パワー領域と剪定回折光学パワー領域を備えた基層を有する図1のレンズ100の正面図を示す。
【図6B】図6Bは、それぞれ、連続的回折光学パワー領域と剪定回折光学パワー領域を備えた基層を有する図1のレンズ100の正面図を示す。
【図7】図7は、基層に剪定回折光学パワー領域を彫刻するために彫刻工具が図6Bのレンズ100の周回する経路を示す。
【図8A】図8Aは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図8B】図8Bは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図8C】図8Cは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図8D】図8Dは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図8E】図8Eは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図8F】図8Fは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図8G】図8Gは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図8H】図8Hは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図8I】図8Iは、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図9A】図9Aは、不連続的回折構造を備えた剪定回折光学パワー領域と不連続的回折構造を混合するための混合ゾーンとを有する図6Bのレンズ100の側面図を示す。
【図9B】図9Bは、不連続的回折構造を備えた剪定回折光学パワー領域と不連続的回折構造を混合するための混合ゾーンとを有する図6Bのレンズ100の側面図を示す。
【図10A】図10Aは、図6Bの剪定回折光学パワー領域をレンズの基層にエッチングする連続行程のレンズの側面図を示す。
【図10B】図10Bは、図6Bの剪定回折光学パワー領域をレンズの基層にエッチングする連続行程のレンズの側面図を示す。
【図10C】図10Cは、図6Bの剪定回折光学パワー領域をレンズの基層にエッチングする連続行程のレンズの側面図を示す。
【図11】図11は、混合剪定回折光学パワー領域を有するレンズを製造するための型の測定表面トポグラフィのグラフである。
【図12A】図12Aは、剪定回折光学パワー領域の混合ゾーンを横切って測定された図11のレンズ型の表面トポグラフィのグラフである。
【図12B】図12Bは、剪定回折光学パワー領域の混合ゾーンを横切って測定された図11のレンズ型の光学パワーのグラフである。
【図12C】図12Cは、剪定回折光学パワー領域の混合ゾーンを横切って測定された図11のレンズ型の回折効率のグラフである。
【図13A】図13Aは、表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィと回折構造の表面トポグラフィを滑らかにするための混合関数のグラフである。
【図13B】図13Bは、表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィと回折構造の表面トポグラフィを滑らかにするための混合関数のグラフである。
【図13C】図13Cは、表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィと回折構造の表面トポグラフィを滑らかにするための混合関数のグラフである。
【図13D】図13Dは、表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィと回折構造の表面トポグラフィを滑らかにするための混合関数のグラフである。
【図14A】図14Aは、多段階表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィと多段階回折構造の表面トポグラフィを滑らかにするための混合関数のグラフである。
【図14B】図14Bは、多段階表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィと多段階回折構造の表面トポグラフィを滑らかにするための混合関数のグラフである。
【図14C】図14Cは、多段階表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィと多段階回折構造の表面トポグラフィを滑らかにするための混合関数のグラフである。
【図14D】図14Dは、多段階表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィと多段階回折構造の表面トポグラフィを滑らかにするための混合関数のグラフである。
【図15】図15は、電気活性レンズの分解断面図を示す。
【図16】図16は、電気活性レンズの分解断面図を示す。
【図17A】図17Aは、図16の電気活性レンズのパターン電極層の正面図を示す。
【図17B】図17Bは、図16の電気活性レンズのパターン電極層の正面図を示す。
【図18A】図18Aは、個別アドレサブル電極を有する図16の電気活性レンズの側面図を示す。
【図18B】図18Bは、回折光学パワー領域を生じさせるようにあらかじめ決められた図18Aの個別アドレサブル電極に印加される電圧を示す。
【図18C】図18Cは、回折効率混合回折光学パワー領域を生じさせるようにあらかじめ決められた図18Aの個別アドレサブル電極に印加される電圧を示す。
【図19A】図19Aは、累進追加回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図19B】図19Bは、剪定された図19Aの累進追加回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図19C】図19Cは、剪定された図19Aの累進追加回折光学パワー領域の正面図を示す。
【図20A】図20Aは、鉛直軸140と水平軸141に沿った光学パワー累進を備えた図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域を示す。
【図20B】図20Bは、図20Aの軸140と141に沿った光学パワーのグラフを示す。
【図20C】図20Cは、図20Aの軸140と141に沿った光学パワーのグラフを示す。
【図20D】図20Dは、図20Aの軸140と141の一方または両方に沿った光学パワーのグラフを示す。
【図21A】図21Aは、図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域を有するレンズ400の正面図を示す。
【図21B】図21Bは、図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域を有するレンズ400の正面図を示す。
【図22A】図22Aは、図1の屈折累進追加領域と光連絡している図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域を有する図21Aと21Bのレンズ400の正面図を示す。
【図22B】図22Bは、図1の屈折累進追加領域と光連絡している図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域を有する図21Aと21Bのレンズ400の正面図を示す。
【図23A】図23Aは、図1の屈折累進追加領域の光学パワーの等高プロットである。
【図23B】図23Bは、図1の屈折累進追加領域の非点収差の等高プロットである。
【図23C】図23Cは、図1の屈折累進追加領域の光学パワー累進に近似する図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域の光学パワーの等高プロットである。
【図23D】図23Dは、図1の屈折累進追加領域の光学パワー累進に近似する図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域の非点収差の等高プロットである。
【図24A】図24Aは、図19Aの累進追加回折光学パワー領域の光学パワーの等高プロットである。
【図24B】図24Bは、図19Aの累進追加回折光学パワー領域の非点収差の等高プロットである。
【図24C】図24Cは、図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域の光学パワーの等高プロットである。
【図24D】図24Dは、図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域の非点収差の等高プロットである。
【図24E】図24Eは、図1の屈折累進追加領域との組み合わされた図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域の光学パワーの等高プロットである。
【図24F】図24Fは、図1の屈折累進追加領域との組み合わされた図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域の非点収差の等高プロットである。
【図25A】図25Aは、一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域を有する図21A〜21Bのレンズ400の正面図を示す。
【図25B】図25Bは、一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域を有する図21A〜21Bのレンズ400の正面図を示す。
【図25C】図25Cは、一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域を有する図21A〜21Bのレンズ400の正面図を示す。
【図25D】図25Dは、一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域を有する図21A〜21Bのレンズ400の正面図を示す。
【図26A】図26Aは、図1の屈折累進追加領域と光連絡している一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域を有する図25A〜25Dのレンズ400の正面図を示す。
【図26B】図26Bは、図1の屈折累進追加領域と光連絡している一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域を有する図25A〜25Dのレンズ400の正面図を示す。
【図26C】図26Cは、図1の屈折累進追加領域と光連絡している一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域を有する図25A〜25Dのレンズ400の正面図を示す。
【図26D】図26Dは、図1の屈折累進追加領域と光連絡している一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域を有する図25A〜25Dのレンズ400の正面図を示す。
【図27A】図27Aは、回折光学パワー領域の剪定境界に外に少なくとも部分的に配置された屈折累進追加領域を有する図26A〜26Dのレンズ400の正面図を示す。
【図27B】図27Bは、回折光学パワー領域の剪定境界に外に少なくとも部分的に配置された屈折累進追加領域を有する図26A〜26Dのレンズ400の正面図を示す。
【図27C】図27Cは、回折光学パワー領域の剪定境界に外に少なくとも部分的に配置された屈折累進追加領域を有する図26A〜26Dのレンズ400の正面図を示す。
【図27D】図27Dは、回折光学パワー領域の剪定境界に外に少なくとも部分的に配置された屈折累進追加領域を有する図26A〜26Dのレンズ400の正面図を示す。
【図28A】図28Aは、図3と4のレンズ100の側面図を示す。
【図28B】図28Bは、図3と4のレンズ100の側面図を示す。
【図28C】図28Cは、図3と4のレンズ100の側面図を示す。
【図28D】図28Dは、図3と4のレンズ100の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
レンズ中の回折光学パワー領域は静的または動的のいずれであってもよい。静的回折光学パワー領域は、どの点においても固定した光学パワーを有する。光学パワーは、電気的または他のパワーの印加によって変化しない。静的回折光学パワー領域とは対照的に、動的回折光学パワー領域は、回折領域に沿った一つ以上の位置に可変光学パワーを有する。動的回折光学パワー領域は、電源を有するコントローラーに電気的に連結された複数の導電構造たとえばピクセルまたは電極リングを一般に有する。コントローラーは、光を回折して所望の光学パワーを生じさせるようにあらかじめ決められた電圧パターンを動的回折光学素子の両端に作り出す導電構造に電力を印加する。
【0016】
図1は、従来技術設計にしたがった、屈折累進追加領域103と回折光学パワー領域104を有するレンズ100の正面図を示す。レンズは、回折光学パワー領域104単独によって提供される少なくとも一つの第一光学パワーと、屈折累進追加領域103と回折光学パワー領域104の組み合わせによって提供される少なくとも一つの第二の光学パワーとを有する多焦点レンズである。
【0017】
屈折累進追加領域103は単調増加正光学パワーの勾配を提供する。屈折累進追加領域103は光の屈折によって光学パワーを提供する。屈折累進追加領域103は静的レンズ中に示される。したがって、屈折累進追加領域103の表面に沿った異なる点において光学パワーに変化があるが、任意の単一点において、静的レンズの光学パワーは固定している(すなわち、電気的または他のパワーの印加によって変化しない)。
【0018】
回折光学パワー領域104は光の回析によって光学パワーを提供する。回折光学パワー領域104は静的レンズ中に示される。静的回折光学パワー領域104は、中心点105と同中心にある複数の回折構造110を有する。回折光学パワー領域104が静的であるとき、回折構造110は一般に、鋸歯断面パターンを一般に有する表面浮彫回折構造である。回折光学パワー領域104は一定の光学パワーを提供するように示されるが、任意の光学パワーが達成されてもよい。回折光学パワー領域104の光学パワーは各表面浮彫回折構造110間の間隔によって決まる。一定の光学パワーを達成するために、表面浮彫回折構造110の半径は次式によって定義される。
【数1】

【0019】
ここにおいて、ρは、n番目の同中心表面浮彫回折構造110の回折幾何学的中心105からの半径、fは設計焦点距離(すなわち、曲光度[m−1]で表現される回折領域の一定の光学パワーの逆数)、λは設計波長である。
【0020】
静的回折光学パワー領域104が図1に示されるが、本発明の他の実施形態において、動的回折光学パワー領域が使用されてもよいことが理解される。動的回折光学パワー領域は、図1の静的アプローチに関連して説明されたものと等価な電気活性回折光学影響を達成するようにあらかじめ決められた一つ以上の電圧を一般に使用する。
【0021】
回折光学パワー領域104は屈折累進追加領域103と光連絡している。回折光学パワー領域104は、少なくとも部分的に、好ましくは大部分が、屈折累進追加領域103に重なる。組み合わせて使用されるとき、屈折累進追加領域103が、着用者の総必要近距離光学パワー補正よりも小さい光学パワーを着用者に提供し、回折光学パワー領域104が、残りの光学パワーを提供して、着用者の総必要近距離光学パワー補正を提供する。屈折累進追加領域103の光学パワーを補足するために回折光学パワー領域104を使用することは、屈折累進追加領域103の全体的光学パワーを低減する。不所望な非点収差は、屈折累進追加領域の総追加パワーの関数として線形の割合よりも大きい増加が知られているので、屈折累進追加領域103の光学パワーを補足することは、ひずみ、知覚の曇り、スイムなど、それらの非点収差と他の不所望な影響を低減する。
【0022】
レンズ100は、遠距離視力領域107と遠中視力領域108と中近距離視力領域109とを有する。中近距離視力領域109は、たとえば、屈折累進追加領域103が最大追加パワーを有し、回折光学パワー領域104の中心と一致する領域に配置され得る。遠中距離視力領域108は、たとえば、屈折累進追加領域103がその最大追加パワーよりも小さく、回折光学パワー領域104と一致する領域に配置され得る。あるいは、遠中距離視力領域108は、たとえば、屈折累進追加領域103が不在で、回折光学パワー領域104が存在する領域に配置され得る。遠距離視力領域107は、たとえば、屈折累進追加領域103と回折光学パワー領域104が不在の領域に配置され得る。(たとえば読書のための)近距離視力は一般に、目からほぼ10”からほぼ16”までの範囲内の距離における視力を言う。(たとえばコンピューターと他のオフィス業務のための)中距離視力は一般に、目からほぼ16”からほぼ24”までの範囲内の距離における視力を言う。遠中視力は、目からほぼ24”からほぼ6’までの範囲内の距離における視力を言う。たとえば、遠中視力を補正するための光学パワーは、近距離視力を補正するための光学パワーのほぼ50%(好ましくはほぼ40%)以下である。
【0023】
レンズ100は、幾何学的(または物理的)中心102とフィッティングポイント101を有する。一般に、遠距離視力領域107は、フィッティングポイント101の上方のレンズ100の視野領域の上半分に配置される。フィッティングポイント101は、着用者のひとみの位置と一致するように設計され、遠距離視力領域107から中近距離視力領域109へ(累進追加領域103を通る)光学パワー累進の開始を一般に示す。
【0024】
回折光学パワー領域は、フィッティングポイント101の下方に配置され、レンズ100の幾何学的中心102に重なるように図1に示される。しかしながら、回折光学パワー領域104は、レンズ100上のどこにでも配置され得ることが認められるであろう。たとえば、回折光学パワー領域104をレンズ100のフィッティングポイント101に中心に配置し、回折構造110がフィッティングポイント101と同中心とすることができる。
【0025】
図2Aは、従来技術設計にしたがった、静的回折光学パワー領域104を有する図1のレンズ100の正面図を示す。静的回折光学パワー領域104は、回折幾何学的中心105と同中心にある複数の表面浮彫回折構造110を有する。表面浮彫回折構造110は連続的閉曲線であり、円形に示されているが、楕円などの任意の閉曲線として形づくることができる。
【0026】
図2Bは、従来技術設計にしたがった、軸AAに沿って破断された図2Aのレンズ100の断面図を示す。図2Bは、回折構造110から形成された図2Aの回折光学パワー領域104のトポグラフィ輪郭を示す。表面浮彫回折構造110のトポグラフィ輪郭は鋸歯パターンを示す。構造の最大高さである表面浮彫回折構造110の部分は「回折ピーク」と呼ばれ、構造の最小高さである表面浮彫回折構造110の部分は「回折谷」と呼ばれる。表面浮彫回折構造110の高さは一定であるように示される。
【0027】
しかしながら、回折構造110の径方向幅、すなわち、一つのピークから隣接ピークまでの(すなわち一つの谷から隣接谷までの)距離は、回折構造110が回折光学パワー領域104の周囲の方へ径方向に延びるにつれて減少する。径方向幅は図2B中に112として示される。上述したように、回折構造110の径方向幅112が減少するにつれて、色収差が増加する。したがって、回折光学パワー領域104の周囲領域は、最強度の色収差を示す。
【0028】
図1を再び参照すると、回折光学パワー領域104は妥協視力領域106を有する。妥協視力領域106は、所定のしきい値よりも大きい色収差を入射光に経験させる領域である。一般に、妥協視力領域106は、回折光学パワー領域104の周囲の少なくとも一部の近くに配置されている。妥協視力領域106は、レンズ100の残りものでその境界に鋭い描写を形成してもよい。
【0029】
図3に示されるように、これらの外見と視力の妥協を最小にするために、図1に示される妥協視力領域は、本発明のアスペクトにしたがって、レンズ100から取り除くことができる。一つのアプローチでは、回折光学パワー領域の周囲縁の少なくとも一部は、妥協視力領域を除外するために物理的に「剪定」することができる。一般に、回折光学パワー領域の剪定は、領域を形成する個別表面浮彫回折構造の形状を変更しない。たとえば、個別表面浮彫回折構造は円形で中心点105に同中心のままである。しかしながら、剪定することは、それの新しい周囲縁を定義することによって回折光学パワー領域の形状を全体として変更する。剪定することに先立ち、周囲縁、したがって、回折光学パワー領域の寸法は、最外周囲表面浮彫回折構造(すなわち最大径を備えた円)によって定義される。剪定することは、最外周囲表面浮彫回折構造を切断し、それによりその閉曲線形状を中断する。中断表面浮彫回折構造はもはや閉曲線ではなく、弧または弓形である。剪定回折光学パワー領域の周囲縁は、(もはや閉曲線を形成しない)弧として形づくられる一つ以上の表面浮彫回折構造を有する。
【0030】
図3と4は、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、剪定回折光学パワー領域111を有する図1のレンズ100の正面図を示す。「剪定回折光学パワー領域」は、閉曲線を形成しない一つ以上の回折構造113を有する回折光学パワー領域である。代わりに、回折構造は、弧、たとえば完全な閉曲線(たとえば円または楕円)の閉じた弓形として形づくられる。これらの回折構造113は「不連続的」と呼ばれ得る。剪定回折光学パワー領域111はまた、完全な閉曲線を形成する表面浮彫回折構造を有することができる。完全な閉曲線を形成する回折構造は「連続的」と呼ばれる。図1に示される回折構造110は、たとえば、連続的であるとみなすことができる。連続的回折構造は一般に、不連続的回折構造113の内部に径方向に配置される。剪定回折光学パワー領域111の周囲の境界は「剪定境界」と呼ばれる。
【0031】
一般に、不連続的回折構造113の中に存在しない(すなわち剪定された)連続的回折構造の部分は、もし存在すれば、最高度の球面収差を有するものである。したがって、剪定回折光学パワー領域中のこれらの部分の排除は、剪定されていない(すなわち連続的回折構造を有する)同じ光学パワー(すなわち回折構造の同じ径方向離間)を有する比較可能回折光学パワー領域よりも少ない視力妥協を提供する。
【0032】
であるが、剪定回折光学パワー領域111は、図3と4にそれぞれ「D」形状と楕円形状を有するように示されるが、剪定回折光学パワー領域は任意の形状を有していてもよいことが認められるであろう。
【0033】
図5は、本発明のアスペクトにしたがった、縁取り境界114を有する図4のレンズ100の正面図を示す。縁取り境界114は、たとえば剪定回折光学パワー領域111の光学特性を破損または変更することなく、レンズ100を眼鏡レンズフレームに装着するために縁取ることができる境界である。縁取り境界に縁取ることは、本発明のアスペクトにしたがって、回折光学パワー領域が電気活性素子から形成されるとき、図15と16に示される実施形態においては特に重要になり得る。そのような実施形態では、回折光学パワー領域を縁取ることは、電気活性物質の漏れなどの電気活性素子への物理的損傷をもたらしかねない。
【0034】
図6Aと6Bは、それぞれ、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、連続的回折光学パワー領域104と剪定回折光学パワー領域111を備えた基層115を有する図1のレンズ100の正面図を示す。基層115は、たとえば、紫外線(UV)および/または熱硬化性モノマー樹脂、または熱可塑性プラスチックなどの眼科眼鏡レンズでの使用に好適な任意の透明光学材料から構成され得る。回折光学パワー領域111は、この分野で既知の方法を使用して眼科眼鏡レンズに好適な透明光学材料中に回折光学パワー領域111を鋳造、スタンピング、エンボシング、熱形成するための工具内で形成され得る。そのような工具は一般に、金属、たとえば、ニッケル被覆アルミニウム、ステンレス鋼材、または他の任意の既知の物質から構成される。
【0035】
図6Aは、回折光学パワー領域104の連続的回折構造110を形成する閉曲線を有する基層115を示す。
【0036】
図6Bは、剪定回折光学パワー領域111の不連続的回折構造113を形成する不連続的曲線を有する基層115を示す。剪定回折光学パワー領域111はまた、連続的回折構造110を形成する連続的閉曲線を有する。図6Bは剪定境界116(すなわち剪定回折光学パワー領域111の外側境界)を有する。剪定境界116は、完全に基層115の周囲縁の中に位置する。
【0037】
回折構造がレンズ内へ窪まされるかレンズから突き出し得るように図6Aと6Bの基層115に回折構造113を彫刻するためにさまざまな方法とデバイスが使用され得る。
【0038】
一つの方法では、ダイヤモンド機械工具を使用し、基層に溝を直接彫刻またはエッチングして回折構造の曲線を形成する。あるいは、溝は、基層を鋳造またはエンボシングするための型工具(または後の複製のための型マスター)に彫刻されてもよい。旋盤は、基層の外側表面に垂直に角度づけられたダイヤモンドチップ彫刻工具を利用し得る。レンズまたは型工具が回転され、彫刻工具が、(回転面に垂直な)レンズ回転の軸に平行な方向に沿って移動され得る。彫刻工具がレンズに向かって内部へ移動されるとき、工具が基層に突き刺さり、層から物質を取り除く。同様に、彫刻工具がレンズから遠ざけられるとき、彫刻工具は基層を解放し、どんな物質も層から取り除かれない。したがって、レンズまたは型工具が回転しているとき、彫刻工具はレンズに突き刺さって回転対称(すなわち円形)溝を形成し得る。あるいは、楕円の溝は、レンズを軸周りに回転させながら、彫刻工具がレンズ表面に一定の深さで突き刺さるように彫刻工具を直線的に移動させることによってレンズに彫刻され得る。同様に、彫刻工具は、他の湾曲を有する溝を彫刻する他のパターンで移動されてもよい。
【0039】
図6Bの不連続的回折構造113は図7に示されるような基層に彫刻される。
【0040】
図7は、本発明のアスペクトにしたがって、剪定回折光学パワー領域111を基層115に彫刻するために、彫刻工具が図6Bの正面図レンズ100の周回する経路を示す。軌道の経路は、工具が基層115に彫刻することを示す実線経路117と、工具が基層115に彫刻しないことを示す破線経路118とによってしるされている。彫刻工具は基層115の内外へ縫うように進み、彫刻を始める入口点119でレンズ100に入り、彫刻を止める出口点120でレンズ110を出る。入口点119と出口点120の位置は、回折構造が基層115に彫刻されるところと、それらがされないところとを定める。入口点119と出口点120は、不連続的回折構造113の湾曲弧の端を形成する。入口点119と出口点120は、剪定境界116上にあり、これを定める。剪定境界116の内部では、彫刻工具は基層115に係合し、不連続表面浮彫回折構造113の溝を(実線経路117に沿って)彫刻する。剪定境界116の外部では、機械的アクチュエーターが一般に工具を基層115から取り除くとともに、彫刻工具が非係合時に(破線経路118に沿って)レンズを周回する。したがって、剪定回折光学パワー領域111の不連続的回折構造113が基層115に彫刻される。剪定回折光学パワー領域111は、高速工具サーボまたは低速工具サーボ技術を使用する彫刻工具で基層115に彫刻することができるが、基層115を彫刻するための他の既知の技術と工具を使用することができる。剪定境界116の外部エリアは、彫刻されず、連続的回折光学パワー領域104の周囲縁の近くに図1に示される妥協視力領域106を一般に有する。妥協視力領域106は、もし形成されれば、高度の色収差を提供することが予想され得る。
【0041】
図7のレンズ100の回転の向きは、(入口点と出口点119と120における矢印によって示される)反時計回りであるように示されるが、その向きは時計回りに逆にすることができることが認められるであろう。レンズ100の回転の向きが逆にされるならば、入口点119と出口点120の位置も逆にされる。
【0042】
図7は、楕円形状剪定回折光学パワー領域111に関連して説明されるが、同様のプロセスは、回折光学パワー領域を任意の回転形状を有するように剪定するために使用され得ることが認められるであろう。一つのアプローチでは、入口点119と出口点120は、所望の形状と大きさを有する剪定境界を定めるためにレンズ100の表面上の代替位置に配置されていてもよい。
【0043】
図8A〜8Iは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、さまざまな形状を有する剪定回折光学パワー領域111の正面図を示す。剪定回折光学パワー領域111の他の形状と大きさが、ここに説明された技術を使用して可能であることが理解されよう。図8A〜8Iに示される剪定回折光学パワー領域111も、図6Aの連続的回折光学パワー領域104に合致させられ得る。
【0044】
図6Aの回折光学パワー領域104の連続的回折構造110は、レンズ100が回転している間に、彫刻工具で層を異なる半径で突き刺すことによって基層115に彫刻することができる。レンズ100は、彫刻工具が次の半径に移動される前に、彫刻工具に対して少なくとも十分な回転(たとえば少なくとも360[度])を回転し得る。あるいは、レンズが旋盤内で回転しながら彫刻工具が連続的に外へ移動して螺旋状溝を形成してもよい。
【0045】
しかしながら、不連続部を有することは他の光学的障害を導入し得る。一般に、彫刻工具が瞬時の刺しまたは解放で彫刻するとき、基層115の深さの鋭い不連続的勾配が剪定回折光学パワー領域111の剪定境界116に沿って生じる。深さの不連続的勾配は剪定境界116に沿って不所望な線を引き起こす。この問題を解決するために、この境界を混合するために混合ゾーンが追加されてもよい。
【0046】
従来の混合ゾーンは一般に光学パワーを混合する。光学パワーは、回折構造の径方向位置を変更することによって回折領域と別の領域との間で混合される。そのような実施形態のより詳細な説明は、「光学パワー混合領域を有する電気活性眼用レンズ」と題する2006年11月13日に提出された米国出願シリアル番号11/595,971に見つけられ得、その全体は参照によってここに組み込まれる。回折領域の光学パワーは、回折構造がレンズの残りに遭遇するところで一般にゼロに減少する。したがって、回折構造とレンズの残りとの間のこの境界における光学パワーの急な変化つまり任意の線が除去される。この混合ゾーンはレンズから線の可視性を低減するが、それはさらなる不利益を有する。一つの不利益は、光学パワーが混合ゾーンでゼロに減少するため、混合ゾーンが光学的使用をほとんど有しないということである。
【0047】
この問題を解決するため、その周囲縁に向かって径方向に延び、その回折効率をゼロに低減することによって回折光学パワー領域を混合する混合ゾーンが提案されている。回折効率は、所望の回析次数(すなわちレンズの設計光学パワーまたは焦点距離)に方向付けられる入射光の割合である。回折光学パワー領域の回折効率がゼロに接近するにつれて、回折光学パワー領域によって集中される光の割合も同様にゼロに低減される。したがって、回折光学パワー領域の周囲縁において、回折効率がゼロに混合されるとともに領域の光学影響も同様にゼロに混合されて、漸進的で線のない境界を形成する。
【0048】
設計焦点距離における回折効率ηは数学的に次のように定義される。
【数2】

【0049】
ここにおいて、ΔΦは、表面浮彫回折構造などの回折光学部品によって生成される位相遅れである。
【0050】
式(2)は、位相遅れΔΦが2πのときに回折効率ηが1となり(入射光の100%が設計焦点距離に集中され)、位相遅れΔΦがゼロのときにゼロとなる(どんな光も設計焦点距離に集中されない)ことを示している。
【0051】
第一の屈折率n1を有する表面浮彫回折構造が、第二の屈折率n2を有する別の光学構造に接しているとき、位相遅れΔΦは次式のように定義される。
【数3】

【0052】
ここにおいて、λは入射光学波長であり、dは回折構造の深さである。
【0053】
式(2)と(3)はいずれも、回折構造の深さdが滑らかにゼロに混合されるにつれて、回折効率も同様にゼロに混合されることを示している。
【0054】
したがって、回折効率混合ゾーンは、回折構造の高さを混合することによって形成することができる。
【0055】
図9Aと9Bは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、不連続的回折構造113と不連続的曲線を混合するための混合ゾーン123の単一の不連続的曲線の側面図を示す。混合ゾーン123は、剪定回折光学パワー領域の剪定境界における不連続的曲線の高さを変えることによって達成される。彫刻工具121が剪定境界に接近するとともに、彫刻工具は、(たとえば最小値(0)から最大値までの)不連続的曲線の高さに連続的勾配を生じさせるようにあらかじめ決められた距離wを有する混合ゾーン123にわたって基層115に出入りする。深さのこの連続的勾配は、線のない剪定境界を形成するように剪定回折光学パワー領域を混合するようにあらかじめ決められる。彫刻工具の入口と出口に関する距離wは、たとえば、ほぼ0.5ミリメートル(mm)からほぼ4mmまでの範囲内にあり、好ましくはほぼ1mmであるが、任意の距離wを使用することができる。
【0056】
図9Aでは、彫刻工具121は、突き出し不連続的曲線を形成するようにあらかじめ決められた経路124に沿って基層を彫刻する。図9Bでは、彫刻工具121は、窪んだ不連続的曲線を形成するようにあらかじめ決められた経路125に沿って基層を彫刻する。図9Aと9Bの不連続的曲線は物理的に逆さまであるが、それらは一般に光学的に等価である。
【0057】
彫刻工具を使用して形成された混合剪定回折光学パワー領域を示す図7、9Aおよび9Bとは対照的に、図10A〜10Cで示されるように、混合剪定回折光学パワー領域は既知の半導体処理工具と技術を使用して代替的にエッチングされてもよい。
【0058】
図10A〜10Cは、それぞれ、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、レンズの基層上に剪定回折光学パワー領域をエッチングする連続行程におけるレンズ1000〜1002の側面図を示す。
【0059】
図10Aは、エッチレジスト層127で被覆された平面基層128を有するレンズ1000の側面図を示す。エッチレジスト層127は、たとえばフォトレジストで構成され得るが、他の物質が使用されてもよい。基板材料は、レンズ用の所望の最終材料であってもよく、または所望の回折構造が鋳造、スタンプ、熱形成またはエンボスされ得る型材料であってもよい。
【0060】
図10Bは、図10Aの平面基層128と、表面浮彫回折トポグラフィを有するパターン形成エッチレジスト層129とを有するレンズ1001の側面図を示す。表面浮彫回折トポグラフィは、たとえば既知の半導体処理工具と技術を使用して、エッチレジスト層129をパターン形成することによって形成される。たとえば、エッチレジスト層は、たとえば、直接レーザー書き込みを使用する技術または可変透過高エネルギービーム感応(HEBS)フォトマスクを通した露光などの任意のグレースケール・リソグラフィプロセスを使用してパターン形成することができる。表面浮彫回折トポグラフィは、不連続的回折構造のパターンを有する。表面浮彫回折トポグラフィは、回折領域の周囲において高さに減少して混合ゾーンを形成することができる。不連続的回折構造は、たとえば、図8A〜8Iに示されるものなどの種々様々の形状を有し得る。一つのアプローチでは、表面浮彫回折トポグラフィは、最初に連続的回折構造を備えたエッチレジスト層127をパターン形成し、それからそれらを剪定してそれらの周囲縁において高さに滑らかな混合を有する不連続的回折構造を形成することによって形成される。あるいは、不連続的回折構造と混合ゾーンは、エッチレジスト層に直接パターン形成される。
【0061】
図10Cは、図6Bの不連続的回折構造113を有する剪定回折光学パワー領域111を備えたパターン形成基層130を有するレンズ1002の側面図を示す。不連続的回折構造113は、表面浮彫回折パターンを図10Bのパターン形成エッチレジスト層129から図10Bの平面基層128へ転写することによって形成される。一つのアプローチでは、パターンは、たとえば反応性イオンエッチング(REE)マシンなどのドライエッチチャンバー内に図10Bのレンズ1001を置くことによって転写される。ドライエッチチャンバーは、図10Bのパターン形成エッチレジスト層129と平面基層128の両方をエッチングして回折パターンを転写する。いったん転写されたならば、不連続的回折構造113と混合剪定回折光学パワー領域111を有する図10Cのパターン形成基層130が形成される。
【0062】
図11は、本発明のアスペクトにしたがった、レンズの周囲縁からレンズの中心へ向かったレンズを製造するための型の測定表面トポグラフィのグラフである。レンズは、剪定回折光学パワー領域と混合ゾーンを有する。たとえば図7と9Bまたは代替的に図10A〜10Cに説明されるように、回折光学パワー領域は剪定することができる。剪定回折光学パワー領域は、楕円形状を備えた剪定境界を有する。剪定境界の楕円形状は、たとえばほぼ30mmの長軸とたとえばほぼ16mmの短軸とを有する。混合ゾーンは、剪定境界(すなわち回折光学パワー領域の周囲縁が型の残りに出合うところ)においてゼロに接近する高さの連続的変化を有する回折構造を有する。混合ゾーンは剪定境界の外に配置される。あるいは、混合ゾーンは剪定境界の内または中央に配置される。混合ゾーンは、たとえばほぼ1mmの幅を有する。であるが、混合ゾーンは、たとえばほぼ0.1mmないしほぼ5.0mm範囲内の、好ましくはたとえばほぼ0.2mm〜ほぼ1.0mm範囲内の幅を有することができる。剪定回折光学パワー領域は、たとえば550ナノメートルの波長を有する光に対してたとえば+1.25の曲光度Dの光学パワーを提供する。他の所望の物理的または光学的特性を有するレンズを鋳造するための型に対して他の寸法、光学パワーおよび波長を使用することができる。
【0063】
グラフは、(ミリメートル(mm)で測定された)型の表面の長さに沿った(マイクロメートル(μm)で測定された)型の表面浮彫回折構造の高さを示す。この例における表面長さは、図6Bに示される測定線126に沿って測定される。この例では、測定はZygo白色光干渉計によって提供される。
【0064】
図12A〜12Cは、それぞれ、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、図11に関連して説明されるレンズ型の回折光学パワー領域の混合ゾーンを横切って測定されたレンズの表面トポグラフィと光学パワーと回折効率のグラフである。
【0065】
レンズ型の長さに沿って測定された図12Cの回折効率と図12Aの回折構造の高さとの関係は式(2)と(3)によって定義される。回折構造の高さが最大値からゼロに減少するにつれて、混合ゾーンの回折効率も同様にゼロに減少する。混合ゾーンは、回折構造の光学パワーではなくそれの高さを変えることによって回折領域を混合する。先に説明したように、光学パワーは、たとえば式(1)にしたがう回折構造の半径の関数であり、回折構造の高さに依存しない。したがって、回折構造の高さが回折効率の混合のために変更されるため、光学パワーは影響されない。したがって、任意の光学パワーを有する混合回折領域を達成することができる。
【0066】
図12Bでは、回折光学パワー領域の光学パワーは一定である。一定光学パワー領域によって集中される光は、単一対応焦点に集中される。しかしながら、混合ゾーンの回折効率は領域の周囲縁においてほぼ0に減少するので、それによって(焦点に)集中される光の量も同様にゼロに減少する。したがって、回折光学パワー領域の周囲縁を横切って光学パワーに急な変化があるが、回折光学パワー領域によって集中される光の量つまり可視性は、周囲縁において徐々にゼロに接近して線のない境界を形成する。
【0067】
図13Aは、本発明のアスペクトにしたがった、剪定境界に急な終端ポイント131をもつ回折構造を有するレンズの表面トポグラフィのグラフである。グラフは、表面浮彫回折構造の高さdを、剪定境界を横切る径方向距離rの関数として示す。回折構造は同中心であり、鋸歯パターンを形成する一連の頂と隣接谷を有する。各同中心回折構造は、鋸歯パターンの谷から頂まで延びている。回折構造は、「表面浮彫回折光学素子」と題する2008年3月24日に提出された米国出願シリアル番号12/054,313に見つかる実施形態によって説明されて使用され得、その全体は参照によってここに組み込まれる。
【0068】
図13Bは、本発明のアスペクトにしたがった、剪定境界において急な終端ポイントを低減するために図13Aのレンズの回折構造を混合するための混合関数のグラフである。グラフは、混合関数mを、剪定境界を横切る径方向距離rの関数として示す。混合関数は、レンズの中心から剪定境界へ単調に減少する。混合関数は、最初は一定であり(たとえば、変化しない深さに対して1の値を有し)、それから有限距離にわたって徐々に減少しているように示される。混合関数は、たとえば定数関数、一次関数、多項式関数、三角関数、指数関数、双曲線関数または対数関数の単独または組み合わせのいずれかなどの任意の連続的関数または数学的関係とすることができる。
【0069】
図13Cは、本発明のアスペクトにしたがった、剪定境界を横切る径方向距離rの関数としての図13Aの回折構造と図13Bの混合関数mの高さdとの積m*dのグラフである。
【0070】
図13Dは、本発明のアスペクトにしたがった、13C図の積である高さを有する回折構造の混合表面トポグラフィのグラフである。グラフは、混合表面浮彫回折構造の高さdを、剪定境界を横切る径方向距離rの関数として示す。混合表面浮彫回折構造の高さは、非混合表面浮彫回折構造の高さと混合関数との積である。
【0071】
混合関数が表面浮彫回折輪郭の表面トポグラフィに適用されるとき、混合関数は、混合ゾーンの幅wにわたって回折効率の単調減少を引き起こす。複数の同中心回折構造を有する回折光学パワー領域に対して、回折光学パワー領域の中心点に近い第一の回折構造の高さ(すなわち第一の頂とそれに隣接する第一の谷との間の距離)は、中心点から離間した第二の回折構造の高さ(すなわち第二の頂とそれに隣接する第二の谷との間の距離)よりも大きい。
【0072】
積は、回折構造の高さを、たとえば1と(剪定境界における)ゼロとの間の値(m)によって縮小する。縮小は、演算子による値関数の適用である。図13Cの例では、値関数は、1から0までの範囲を有する単調減少値関数であり、演算子は乗算である。
【0073】
回折構造の高さを縮小することによって、回折光学パワー領域の回折効率が最大値からゼロまで変わる。最大回折効率は、回折構造が十分に不変なピーク高さを有するところで生じる。最大回折効率は一般に、同中心回折構造の中心点の近くすなわち混合ゾーンの内部に生じる。最小(ゼロ)回折効率では、回折光学パワー領域は、回折光学パワーへの入射光のいずれも集中させない。最小回折効率は、回折構造がゼロのピーク高さを有するところで生じる。最小回折効率は一般に、同中心回折構造の周囲すなわち混合ゾーンの周囲に生じる。
【0074】
最大回折効率の領域では、回折光学パワー領域は、回折領域の設計光学パワーへの入射光のほぼ100%を集中させる。回折光学パワー領域の回折効率がゼロに減少するにつれて、領域によって影響される光の量がゼロに減少し、したがって領域は目に見えなくなる。したがって、図13Dの混合表面トポグラフィを有するレンズは、それの回折効率を変えることによって十分に混合された回折光学パワー領域を有する。
【0075】
図14Aは、本発明のアスペクトにしたがった、剪定境界にある急な終端ポイント132において終わる多段階表面浮彫回折構造を有するレンズの表面トポグラフィのグラフである。多段階表面浮彫回折構造の表面トポグラフィは、階段関数または平方関数の組み合わせなどの離散関数である。多段階表面浮彫回折構造の回折効率は、最高段の高さが増加するにつれて増加する。多段階表面浮彫回折構造は、図13Aの表面浮彫回折構造に近似するように知られる。多段階表面浮彫回折構造の回折効率は、それによって近似される表面浮彫回折構造の回折効率よりも小さい。表面トポグラフィを近似するために使用されるゾーンあたりの段の数が増加するにつれて、それの回折効率も同様に増加する。
【0076】
図14Bは、本発明のアスペクトにしたがった、剪定境界にある急な終端ポイントを低減するために回折構造図14Aの表面トポグラフィを混合するための混合関数のグラフである。混合関数は、図13Bの混合関数であってもよい。
【0077】
図14Cは、本発明のアスペクトにしたがった、図14Aの回折構造の表面トポグラフィと図13Bの混合関数との積のグラフである。
【0078】
図14Dは、本発明のアスペクトにしたがった、14C図の積である高さを有する回折構造の混合表面トポグラフィのグラフである。図13A〜13Dに関連して説明したように、図13Dの混合表面トポグラフィを有するレンズは、それの回折効率を変えることによって十分に混合される回折光学パワー領域を有する。
【0079】
回折効果を生じさせるようにあらかじめ決められた表面トポグラフィに物理的な漸次的移行を利用する表面浮彫回折構造を有する静的回折光学素子が前述の図に説明されるが、代わりに、本発明のアスペクトにしたがった、静的構造によって達成された光学的結果をすべて生成する図15、16および17A〜17Dに示されるような動的回折光学素子を使用することができる。
【0080】
図15は、本発明のアスペクトにしたがった、電気活性レンズ200の第一の分解断面図を示す。レンズ200は、第一の光学素子202と第二の光学素子203の間に配置された電気活性素子201を有する。電気活性素子201は、第一の基層204と、第二の基層205と、透明電極207および208と、絶縁層209と、配向層210および211と、電気活性物質212とを有する。そのような実施形態のより詳細な説明は、「コレステリック液晶物質」と題する2008年1月22日に提出された米国出願シリアル番号12/018,048に見つけられ得、その全体は参照によってここに組み込まれる。
【0081】
電気活性素子201は、第一および第二の光学素子202および203と光連絡している。電気活性素子201は、第一および第二の光学素子202および203に、たとえば(図示しない)接着剤層によって取り付けられている。第一および第二の光学素子202および203はそれぞれ凸および凹であってもよく、あるいは、さもなければ、所望の光学効果を提供するように形づくられまたは仕上げられてもよい。たとえば、屈折累進光学パワー領域は、光学パワーに累進を生じさせるように第一および第二の光学素子の一方または両方の内または外表面上に形成することができる。第一および第二の光学素子202および203の一方または両方は、未完成、半完成または完成であってもよい外表面を有していてもよい。第一および第二の光学素子202および203の一方または両方は、それぞれ、第一および第二の基層204および205として形成されてもよい。
【0082】
第一の基層204は平坦表面トポグラフィを有し、第二の基層205は、回折構造206によって形成された表面浮彫回折トポグラフィを有する。第一の基層204の表面トポグラフィは平坦であるように示されるが、(たとえば曲げられた)任意の実質的に特色のない表面トポグラフィが使用されてもよい。透明電極208と、配向層211と、電気活性物質212を包含する領域とは、第二の基層205に沿って形成され、したがって、また表面浮彫回折トポグラフィを有する。あるいは、第一の基板204もまた表面浮彫回折トポグラフィを有する。別の代替案としては、第二の基板205が平坦表面トポグラフィを有し、第一の基板204が表面浮彫回折トポグラフィを有する。
【0083】
第一の基層204と第二の基層205は、それぞれ、透明電極207および208で被覆されてもよい。透明電極207および208は、それぞれ、第一の基層204と第二の基層205の内側表面全面上に一様に堆積されてもよい。
【0084】
電気活性物質212は、第一および第二の基層204および205の間に包含されていてもよい。電気活性物質212は、ネマティック液晶、コレステリック液晶、スメクティック液晶、ポリマー分散液晶、またはポリマー安定液晶などの液体結晶物質であってもよい。
【0085】
配向層210および211は、電気活性物質212の分子を基層204および205に対して所定の方向に整列させる。配向層210および211は、たとえば(機械的研磨のために)ポリイミド物質、または(偏光UV光学配向のために)感光物質から構成されてもよい。
【0086】
透明電極207および208は、(図示しない)コントローラーに、たとえば(図示しない)電気コンタクトを介して電気的に連結されてもよい。透明電極207および208の間の電気伝導(すなわち電気的短絡)を防止するために、絶縁層209が透明電極207および208の間に配置される。コントローラーは、配向層210および211のほかに電気活性物質212を横切って電界を生じさせるようにあらかじめ決められた透明電極207および208に電圧を印加する。電界は、電気活性物質212の分子の配向を変化させ、それによって電気活性物質212の屈折率を変化させる。電気活性物質212の屈折率の変化は、電気活性物質212中に回折パターンを生じさせて光学パワーを提供させるようにあらかじめ決められる。電圧が電極207および208に印加されないとき、電気活性物質212の屈折率は、表面浮彫回折構造206の屈折率と一致する。したがって、光学的位相遅れは生成されず、光は集中されない(すなわち回折効率はゼロである)。所定の電圧が電極207および208に印加されるとき、電気活性物質212の屈折率は、表面浮彫回折構造206の屈折率と相違する。したがって、ほぼすべての入射光を光学パワーに(すなわちほぼ100%の回折効率で)集中させるための光学的位相遅れが生成される。したがって、透明電極207および208に印加される電圧をオンまたはオフに切り替えることによって、電気活性素子201の光学パワーも同様にオンまたはオフに切り替えられ、それによって電気活性素子201の回折効率をそれぞれ最大値と最小値の間で変調する。
【0087】
電圧が電気活性素子201に印加されるとき、光学パワーが境界222内に生成される。電圧の印加は、最も外側の連続的表面浮彫回折構造によって形成された境界222を横切って光学パワーに急な変化を生じさせる。したがって、可視の線がレンズ200中に形成される。線の可視性を低減するため、混合ゾーンが必要である。
【0088】
境界222は、境界222におけるあらかじめ決められた距離にわたって回折構造206の高さをゼロに混合する混合ゾーンを使用して混合することができる。混合ゾーンは、図9A、9Bまたは11A〜11Cに説明される実施形態にしたがって形成される。
【0089】
図15の電気活性素子201は平坦であるように示されるが、電気活性素子201が代替的に曲げられてもよいことは理解されるに違いない。
【0090】
電気活性物質が、たとえばネマティック液晶などの偏光感応液体結晶物質であるとき、二つの電気活性素子が好ましく使用される。二つの電気活性素子は直列に配置され、任意の偏光状態の入射光の等しい集中を可能にするために直交配向方向を備えた配向層を有する。そのような実施形態のより詳細な説明は、「ハイブリッド電気活性レンズ」と題する2004年6月9日に提出された米国出願シリアル番号10/863,949に見つけられ得、その全体は参照によってここに組み込まれる。
【0091】
図16は、本発明のアスペクトにしたがった、両方とも平坦表面トポグラフィを有する第一の基層204と第二の基層213を含む電気活性素子301を有する図15の電気活性レンズ200の第二の分解断面図を示す。第一の基層204と第二の基層213の表面トポグラフィは平坦であるように示されるが、(たとえば曲げられた)任意の実質的に特色のない表面トポグラフィが使用されてもよい。
【0092】
電気活性レンズ300は、パターン形成透明電極214と、配向層215と、電気活性物質212を包含する領域とを有する電気活性素子301を有し、それらはいずれも第二の基層213に沿って形成されている。前述の素子が沿って形成される第二の基層213が平坦表面トポグラフィを有するので、これらの素子もまた平坦表面トポグラフィを有する。
【0093】
パターン形成透明電極214は複数の個別アドレサブル電極216(たとえば電極リングまたはピクセル)を有する。図17Aと17Bに示されるように、個別アドレサブル電極216は、回折光学パワー領域をレンズ300中に形成するために配列される。
【0094】
透明電極207は、パターン形成透明電極214に対する基準電極(すなわち電気アース)として働く薄膜透明電極層である。電圧が電気活性素子301にパターン形成透明電極214と透明電極207の間に印加されると、回折パターン形状が電気活性素子301の境界222内に生じる。
【0095】
図17Aと17Bは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、境界222によってくるまれた個別アドレサブル電極216を有する図16のパターン形成透明電極214の正面図を示す。
【0096】
個別アドレサブル電極216は、連続的全体電極218と、連続的閉曲線電極219と、湾曲弧電極220とを有する。あるいは、個別アドレサブル電極216は不連続的曲線電極だけであってもよい。個別アドレサブル電極216は円または円弧として形づくられるように示されるが、楕円または多角形幾何学などの他の幾何学が代替的に使用されてもよい。12および13の個別アドレサブル電極216が図17Aと17Bにそれぞれ示されるが、任意の数の個別アドレサブル電極216が使用されてもよい。pixilatedアプローチでは、任意の数と配置のピクセルが使用されてもよい。個別アドレサブル電極216は好ましくは同中心である。個別アドレサブル電極216は光学的に透明である。個別アドレサブル電極216は、任意の既知の透明導電性酸化物(たとえばポリ(3,4−エチレンジオキシオフェン(ethylenedioxythiophene))ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)またはカーボンナノチューブ)から構成される。
【0097】
個別アドレサブル電極216は、電気的境界217に沿って(図示しない)コントローラーとの個別電気的接続を有する。(図示しない)電気的絶縁層が個別アドレサブル電極216間に形成される。電気的絶縁層は、隣接する個別アドレサブル電極216間に形成された空間221を占領してそれらの間の電気伝導を防止する。
【0098】
任意の配列に配置されて任意の形状を有する回折光学パワー領域を形成することができる少なくとも一つの湾曲弧電極220を有する個別アドレサブル電極216。図17Aでは、個別アドレサブル電極216は、楕円形状回折光学パワー領域を生成するために配列され、いっぽう図17Bでは、個別アドレサブル電極216は、フラットトップ弓形回折光学パワー領域を生成するために配列される。あるいは、個別アドレサブル電極216は、任意の形状(たとえば図8A〜8Iの)を有する回折光学パワー領域を生成のために異なって配列され形づくられてもよい。
【0099】
図16のレンズ300で使用されるとき、個別アドレサブル電極216に印加される電圧は、電気活性物質212の両端に電圧パターンを生じさせるようにあらかじめ決められる。この電圧パターンは、今度は、電気活性物質212(したがってレンズ300)の屈折率に変化を生じさせるようにあらかじめ決められる。屈折率のこの変化は回折パターンを、したがって電気活性素子301中に回折光学パワー領域を形成する。
【0100】
図18Aは、本発明のアスペクトにしたがった、複数の個別アドレサブル電極216を有する図16の電気活性レンズ300の径方向周囲部分の側面図を示す。
【0101】
図18Bは、本発明のアスペクトにしたがった、図16の電気活性素子301中に回折光学パワー領域を生じさせるようにあらかじめ決められた個別アドレサブル電極216に印加される電圧を示す。電圧(たとえば四つの電圧V1、V2、V3およびV4)は、個別アドレサブル電極216に印加される。電圧は、個別アドレサブル電極216が径方向に配列される順番で個別アドレサブル電極216に電圧を単調に増加させる繰り返しシーケンスで印加される。電圧は、電気活性素子301中に多段階回折パターンを生じさせるようにあらかじめ決められた電気活性物質212の両端に多段階電圧パターンを形成する。図18Bの多段階回折パターンは、図14Aの多段階表面浮彫回折パターンと同様である。しかしながら、図14Aの多段階回折パターンが、回折構造の高さの変動によって物理的に形成されるのに対して、図18Bの多段階表面浮彫回折パターンは屈折率の変動によって形成される。回折構造は、光を回折することができる任意の構造に適用し得る。一例では、回折構造は、図13A、13D、14Aおよび14Dに示されるような、一連の頂と隣接谷を有する物理的形成鋸歯パターンを有する表面浮彫回折構造に適用し得る。別の例では、図15において、回折構造は、鋸歯パターンを有する回折構造206、鋸歯パターンを有する電極208、またはそれらの組み合わせおよび/または電気活性素子201の他の構成要素に適用し得る。また別の例では、図16において、回折構造は、一様または平坦表面トポグラフィを有する個別アドレサブル電極216に適用し得る。この例では、光の回析は、電気活性物質212の屈折率を変えるための電圧パターンを印加することによって形成される。この例では、回折構造(すなわち個別アドレサブル電極216)は光を回折することができるが、それに電圧が印加されないとき、回折構造は光を回折しない。
【0102】
図18Bの電圧が図18Aの個別アドレサブル電極216に印加されると、電気活性素子301中の回折パターンが境界222内に生じ、レンズ中に可視の線を生じさせる境界222を横切って光学パワーに急な変化を生じさせる。この問題を解決するため、混合ゾーンが必要である。
【0103】
前述の図では静的混合ゾーンが説明され、それらは、回折構造の高さの物理的変動を利用して回折効率の混合を生じさせて回折構造の境界222の線の可視性を低減する。しかしながら、図16のレンズ300は、平坦表面トポグラフィを有するパターン形成透明電極214を利用するので、代替混合手段が必要である。
【0104】
図18Cは、図16の電気活性素子301中に回折光学パワー領域の混合を生じさせるようにあらかじめ決められた個別アドレサブル電極216に印加される電圧を示す。混合関数(たとえば図13B〜13Dおよび14B〜14Dの)は、有限距離にわたってレンズ300の径方向中心から境界222までの回折効率を単調に減少させることによって輪郭を変調する。混合関数は、個別アドレサブル電極216に印加される電圧振幅を、たとえば1と(境界222における)0との間の値(m)によって縮小する。個別アドレサブル電極216に印加される電圧振幅は境界222の近くでゼロに接近するため、それによって引き起こされるレンズ300中の屈折率の変化つまり回折効果(すなわち回折効率)もまた境界222の近くでゼロに接近する。レンズ300の回折効率がゼロに減少するため、境界222は目に見えなくなる。
【0105】
図18Bと18Cには4つの電圧が示されるが、任意の数の電圧を使用することができる。別個の電圧の数(したがってフレネル帯または電圧期間あたりの段)が大きいほど、理想的回折構造への近似はよい。しかしながら、電圧のシーケンスの一周期の幅、したがって、これらの電圧が印加される個別アドレサブル電極216の幅は、レンズ300の回折光学パワーを決定する。この回折光学パワーを保存するために、回折構造に近似するために使用される別個の電圧の数が増加されるにつれて、同じ領域中の個別アドレサブル電極216の数も同様に増加されなければならない。したがって、個別アドレサブル電極216の密度が増加される。より多くの個別アドレサブル電極216をレンズ300の同じサイズ領域内に入れるために、個別アドレサブル電極216を狭くし、互いにより接近させて移動することができる。個別アドレサブル電極216間の間隔が低減されるとき、隣接個別アドレサブル電極216間の電気伝導(すなわち短絡)の電位が増加される。したがって、そのような電気伝導を防止するために個別アドレサブル電極216間に(図示しない)追加絶縁が使用されてもよい。
【0106】
図18Aの動的混合手段は物理的構造ではなく、たとえば回折効率の混合を生じさせるようにあらかじめ決められた電圧の電気的状態である。混合手段は好ましくは電気活性素子301に一体的である。
【0107】
別のアプローチでは、電圧振幅は混合関数によって変調されない。このアプローチでは、電圧振幅はソース(個別アドレサブル電極)において減少されないが、その代り、電気活性素子の周囲に配置された(図示しない)絶縁物質によって遮られる。絶縁物質は、図18Cに示された電圧パターンにしたがって電圧振幅を低減するようにあらかじめ決められた単調増加厚さを有する。したがって、回折光学パワー領域の回折効率を混合する効果は、印加電圧を変調する代わりに絶縁物質の所定の配置によって引き起こされるものと同じである。
【0108】
回折光学パワー領域の回折効率を混合するための前述の手段のいずれも、(たとえばスチュアートらによる米国出願シリアル番号11/595,871に教示され、その全体は参照によってここに組み込まれる)従来の光学パワー混合ゾーンと関連して使用されてもよい。レンズと一緒に使用されるとき、回折効率混合ゾーンと光学パワー混合ゾーンは別々に配置されてもよく、あるいは部分的または完全に重なってもよい。
【0109】
図18Aでは、電気活性レンズ300は、電気活性物質212の厚さを制御するためのスペーサー223を有する。
【0110】
図19Aは、本発明のアスペクトにしたがった、累進追加回折光学パワー領域133の正面図を示す。累進追加回折光学パワー領域は、特定の波長λの光を焦点距離fに集中させるための複数の同中心表面浮彫回折構造を有する。累進追加回折光学パワー領域133は静的または動的である。累進追加回折光学パワー領域133は、第一の範囲d<r≦d+dにある中心点からの半径rを有する同中心表面浮彫回折構造110を有する第一の領域を有する。累進追加回折光学パワー領域133は、第二の範囲r≦dにある中心点からの半径rを有する同中心表面浮彫回折構造110を有する第二の領域を有する。たとえば、第二の領域は、第一の領域の径方向内部に配置されている。
【0111】
累進追加回折光学パワー領域133は、それの径方向距離が中心点からの増加するにつれて、光学パワーの累進を有する。図では、累進追加回折光学パワー領域133の光学パワーは第二の領域内では一定である。一定の光学パワーを達成するために、n番目の同中心表面浮彫回折構造110の中心点からの第二の領域の半径は(2nλf)1/2に等しい(すなわち式(1)の定義にしたがう)。図では、累進追加回折光学パワー領域133の光学パワーは第一の領域内では、それの中心点からの径方向距離が増加するにつれて減少する。減少光学パワー累進を達成するために、回折構造110の少なくともいくつかの半径は式(1)の定義に反する。減少光学パワーの累進を達成するために、n番目の同中心表面浮彫回折構造110の中心点からの第一の領域の半径は(2nλf)1/2よりも大きい。あるいは、累進追加回折光学パワー領域133の光学パワーは第一の領域内では、それの中心点からの径方向距離が増加するにつれて増加する。増加光学パワーの累進を達成するために、nの同中心表面浮彫回折構造の中心点からの第一の領域の半径は(2nλf)1/2よりも小さい。一例では、回折構造の少なくともいくつかの径方向幅は、たとえば第一の領域内の他のひとつと等しい。
【0112】
累進追加回折光学パワー領域133の光学パワー累進がグラフ134に示される。図では、累進追加回折光学パワー領域133の光学パワーは径方向距離の増加とともに減少する。したがって、累進追加回折光学パワー領域133の回折構造の相対的径方向幅は、一定の回折光学パワー領域よりも遅い速さで減少する。色収差の程度は、回折構造増加の幅が増加するにつれて減少するので、累進追加回折光学パワー領域133の色収差は、一定の回折光学パワー領域の色収差よりも小さい。+1.00Dの光学パワーを提供する一般的な眼鏡レンズ材料から構成される累進追加回折光学パワー領域は、累進追加回折光学パワー領域133の中心から6mmよりも小さい径方向距離において所定のしきい値レベル(たとえば人目をひくレベル)よりも低い程度の色収差を示すことが実験的に観察される。
【0113】
たとえば+1.00Dの累進追加回折光学パワー領域133のそれの中心から6.0mmにおける色収差の程度が所定のしきい値レベルよりも低いならば、同じ径方向幅を有する回折構造を有する他の領域、たとえば、中心から12.0mmにおいて+0.50Dの回折光学パワー領域と、中心から18.0mmにおいて+0.33Dの回折光学パワー領域と、中心から3.0mmにおいて+2.00Dの回折光学パワー領域もある。回折構造の径方向幅は、それの色収差を決定し、各径方向距離において局所的に一定であり、半径の増加とともに減少する。このアプローチは、すべての回折構造に対して一様の色収差を有する累進追加回折光学パワー領域133を形成する。累進追加回折光学パワー領域133は剪定境界において剪定して所定のしきい値よりも大きい色収差を生じさせるようにあらかじめ決められた回折構造を除去することができる。
【0114】
図19Bと19Cは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、剪定境界116に沿って剪定された図19Aの累進追加回折光学パワー領域133の正面図を示す。図19Bは、幅広近距離視力ゾーンと、鉛直および水平両方向の光学パワー累進とをもつ剪定累進追加回折光学パワー領域135を示す。図19Cは、幅狭中近距離視力ゾーンと、ほとんど鉛直方向だけの光学パワー累進とをもつ剪定累進追加回折光学パワー領域135を示す。回折光学パワー領域135は、(たとえば図8A〜8Iに示されるような)任意の所望な形状を有するように剪定することができることが認められるであろう。
【0115】
回折効率混合ゾーンは、図19Bおよび19Cの剪定累進追加回折光学パワー領域135を、それの回折効率をそれの周囲縁に向かって径方向に延びてゼロに減少させることによって混合することができる。回折効率混合ゾーンが光学パワーと無関係に混合するので、混合ゾーンは、剪定回折光学パワー領域を、(変化する光学パワーを有する)それの剪定境界全体に沿って混合して、剪定境界116に沿った線の外観を低減することができる。
【0116】
図19A〜19Cの累進追加回折光学パワー領域は、鉛直および水平方向に異なる光学パワー累進を有していてもよい。そのうえに、光学パワー累進は、ゼロ光学パワーに終わる必要はない。
【0117】
図20Aは、本発明のアスペクトにしたがった、鉛直軸140に沿った光学パワー累進と水平軸141に沿った光学パワー累進をもつ図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域135を示す。
【0118】
図20B、20Cおよび20Dは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、図20Aの軸140および141に沿った光学パワーのグラフを示す。
【0119】
図20Bおよび20Cにおいて、光学パワー累進143は、図20Aの鉛直軸140に沿った光学パワーであり、光学パワー累進145は、図20Aの水平軸141に沿った光学パワーである。図20Bおよび20Cにおいて、一定の光学パワー142は、図20Aの鉛直および水平軸140および141の両方に沿った光学パワーであり、そこでは光学パワーは一致する。光学パワーは一般に近距離視力領域で一致する。
【0120】
図20Bでは、鉛直軸に沿った光学パワー累進143は、近距離視力領域の外でほぼゼロ光学パワー144(すなわちプラノ)に単調に減少する。水平軸に沿った光学パワー累進145は、近距離視力領域の外で非ゼロ光学パワー146に単調に減少する。一例では、水平軸に沿った光学パワーは、一定の光学パワー142のほぼ50%からほぼ75%までの範囲にある非ゼロ光学パワー146に減少するが、他の非ゼロ光学パワーが使用されてもよい。
【0121】
図20Cでは、鉛直軸に沿った光学パワー累進143と水平軸に沿った光学パワー累進145の両方が、近距離視力領域の外で非ゼロ光学パワー148と146に単調にそれぞれ減少する。一例では、鉛直軸に沿った光学パワーは、ほぼ+0.12Dからほぼ+1.00Dまでの範囲にあるが、好ましくはほぼ+0.25Dからほぼ+0.75Dまでの範囲にある非ゼロ光学パワー148に減少するが、他の非ゼロ光学パワーが使用されてもよい。
【0122】
鉛直軸に沿った光学パワー累進143が(中距離視力領域において)非ゼロ光学パワー148に減少するとき、遠中および中距離視力領域の間で光学パワーに不連続部がある。これらの不連続部は一般に、距離および中距離視力領域を横切って見るときに、画像破損や光学パワーの上昇などの不所望な光学影響を引き起こす。画像破損の程度は一般に、不連続部における光学パワーの変化の大きさに依存する。
【0123】
図20Dでは、鉛直軸に沿った光学パワーは、近距離視力領域では一定の光学パワー142であり、ゼロ光学パワー150または非ゼロ光学パワー151のいずれかへの(たとえば階段または区分的関数としての)分散単調減少光学パワー149である。分散光学パワー累進中の不連続部は、光学パワー混合ゾーンまたは回折効率混合ゾーンに混合することができる。
【0124】
あるいは、図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域135の光学パワーは、たとえば、定数関数、一次関数、多項式関数、三角関数、指数関数、双曲線関数、対数関数、またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の数学関数にしたがって径方向に変更されてもよい。眼鏡レンズにおける回折光学パワー変化は、ほぼ6mmからほぼ16mmまで、またはほぼ8mmからほぼ14mmまで、好ましくはほぼ10mmからほぼ12mmまでの範囲内の距離にわたって生じてもよい。
【0125】
図21Aと21Bは、本発明のアスペクトにしたがった、所定のしきい値よりも小さい非点収差を有し、着用者の全近距離視力処方を提供する図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域135を有するレンズ400の正面図を示す。剪定累進追加回折光学パワー領域135は着用者の全近距離視力処方を提供するので、追加光学部品は必要ない。
【0126】
図21Aでは、累進追加回折光学パワー領域135は、ゼロ光学パワーを有する最小光学パワー領域158(たとえばプラノ領域)から最大光学パワー領域159(たとえば+1.25Dの光学パワーを有する領域)までの範囲にわたって光学パワーの連続的単調増加累進を提供する。
【0127】
図21Bでは、光学パワーの累進は、非ゼロ最小光学パワー領域160から最大光学パワー領域159(たとえば+1.00Dの光学パワーを有する領域)まで変わってもよい。(たとえば非ゼロ最小光学パワー領域において終わる)図21Bの光学パワー累進は一般に、ゼロ光学パワーにおいて終わる光学パワー累進を有すると一般に定義される累進追加レンズ(PAL)とみなされない。着用者の全近距離視力処方が(たとえば老眼の人を出現するための)近距離視力領域においてたとえば+1.50D未満の光学パワーであるとき、剪定累進追加回折光学パワー領域135によって補正が十分に提供され得る。
【0128】
いくつかの場合では、剪定累進追加回折光学パワー領域135を剪定することによって回折構造を除去することは、レンズ400の光学パワーを、着用者に処方される光学パワーよりも小さく減少させる。他の場合では、たとえば、着用者の全近距離視力処方が+1.50Dよりも大きいとき、+1.50D光学パワーよりも大きいものを提供する剪定累進追加回折光学パワー領域135は、色収差と不所望な非点収差の十分な低減を提供しない。そのような場合、(たとえば、必要とされる光学パワーの一部を提供する)剪定累進追加回折光学パワー領域は、(たとえば、必要とされる光学パワーの一部を提供する)屈折累進追加領域などの光学部品と組み合わされて、必要とされる全光学パワーを提供してもよい。
【0129】
図22A〜22Bは、本発明のアスペクトにしたがった、図1の屈折累進追加領域103と光連絡している図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域135を有する図21A〜21Bのレンズ400の正面図を示す。剪定累進追加回折光学パワー領域135は、所定のしきい値よりも小さい非点収差を有し、また着用者の全近距離処方未満を有する。屈折累進追加領域103は、着用者の全近距離視力処方を提供するために必要とされる光学パワーの残りを提供する。一例では、着用者の全近距離視力処方は、たとえば、近距離視力領域において+2.00Dの光学パワーである。たとえば、+1.00Dの光学パワーが累進追加回折光学パワー領域135によって提供され、+1.00Dの光学パワーが屈折累進追加領域103によって提供される。
【0130】
図22Aでは、累進追加回折光学パワー領域135と屈折累進追加領域103はいずれも、ゼロ光学パワー(たとえばプラノ領域)をもつ最小光学パワー領域158有する。最小光学パワー領域は、その領域の周囲端が累進チャンネルのトップに遭遇するところに配置される。したがって、累進チャンネルのトップにおいて光学パワーに上昇はない。図22Bでは、累進追加回折光学パワー領域135は、非ゼロ(たとえば+0.25D)最小光学パワー領域160において始まる。したがって、累進チャンネルのトップにおいて光学パワーに(たとえば+0.25Dの)上昇がある。
【0131】
図23Aと23Bは、それぞれ、図1の屈折累進追加領域の光学パワーと非点収差の等高プロットである。図では、屈折累進追加レンズは、近距離視力領域136において(この例では+2.00Dの)最高光学パワーを提供する。
【0132】
屈折累進追加領域は、所定のしきい値よりも大きい非点収差を入射光に経験させる妥協視力領域を有する。所定のしきい値よりも大きい非点収差は、非点収差等高プロットの領域137内に配置されている。1.00Dよりも大きい非点収差が、レンズ中を見たときに顕著な歪みとスイムを一般に引き起こすので、所定のしきい値はほぼ1.00D、好ましくは0.25Dであってもよいが、他の値が使用されてもよい。図23Bでは、累進チャンネルのそれぞれの側に二つの領域137があるが、任意の数と位置の領域137があってもよい。この例では、領域137は、ほぼ2.00Dの最大非点収差を有する。
【0133】
領域137の不所望な非点収差を低減するために、図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域135は、領域137の不所望な非点収差を引き起こす妥協視力領域を除外する剪定境界116を有するけれども、図1の屈折累進追加領域を近似するために使用することができる。
【0134】
図23Cと23Dは、それぞれ、図1の屈折累進追加領域の近距離視力領域における+2.00D光学パワー累進を近似する図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域135の光学パワーと非点収差の等高プロットである。
【0135】
図23Bに示される屈折累進追加レンズの領域137の(たとえば2.00Dまでの)不所望な非点収差は、それぞれ同じ光学パワー136と139に対して、図23Dに示される剪定累進追加回折光学パワー領域の領域138の(たとえば1.25Dまでの)不所望な非点収差よりも大きい。したがって、必要光学パワーの一部またはすべてを提供する剪定累進追加回折光学パワー領域を使用することは、屈折累進追加領域を単独で使用することに比べて非点収差を低減することができる。回折光学パワー領域を剪定することは非点収差を除去しないが低減し得ることが認められるであろう。たとえば、図23Dは、剪定することが非点収差を、所定のしきい値の非点収差よりも低くに、たとえば、0.25D未満、好ましくは1.00D未満に低減することができることを示す‥‥。
【0136】
図24Aと24Bは、それぞれ、図19Aの累進追加回折光学パワー領域133の光学パワーと非点収差の等高プロットである。図24Aと24Bは、それぞれ、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、(たとえば+1.00Dまでの光学パワーの)光学パワー領域161と、所定のしきい値(たとえば0.25D)以下の非点収差を有する非点収差領域163とを有する。
【0137】
図24Cと24Dは、それぞれ、図19Aの剪定累進追加回折光学パワー領域135のそれぞれ光学パワーと非点収差の等高プロットである。図24Cと24Dは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、所定のしきい値(たとえば0.25D)の非点収差165よりも大きい剪定エリアを有する。他の光学パワーとしきい値が使用されてもよい。
【0138】
図24Eと24Fは、それぞれ、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、図19Bの剪定累進追加回折光学パワー領域135と図1の屈折累進追加領域103とを有する図22Aのレンズ400の光学パワーと非点収差の等高プロットである。レンズの光学パワーは、剪定累進追加回折光学パワー領域の光学パワー領域161と屈折累進追加領域の光学パワー領域162の追加になる。この例では、近距離視力領域136に(たとえば+2.00Dまでの)複合光学パワー累進を備えたレンズを提供するために、光学パワー領域161が(たとえば+1.00Dまでの)光学パワーの第一の累進を提供し、光学パワー領域162が(たとえば+1.00Dまでの)光学パワーの第二の累進を提供する。同様に、レンズの非点収差は、所定のしきい値(たとえば0.25D)の非点収差165以下の非点収差を有する非点収差領域163と、屈折累進追加領域の非点収差を有する非点収差領域164との追加になる。この例では、非点収差領域163は、(たとえば0.25Dまでの)所定のしきい値に等しい非点収差を提供し、非点収差領域164は、(たとえば+1.00D光学パワー)の屈折累進追加領域と連合して(たとえば1.00Dまでの)非点収差を提供する。したがって、レンズは、総計1.25Dまでの非点収差を有する。+2.00Dの光学パワーを提供する回折光学パワー領域と屈折累進追加領域を組み合わせることによって形成される非点収差の1.25Dは、(図23Bに示されるように)+2.00Dの光学パワーを単独で提供する屈折累進追加領域によって形成される2.00Dの非点収差未満である。
【0139】
一例では、着用者の全近距離視力処方が(たとえば老眼の人をいくつかの視力調節を残して出現するための)近距離視力領域においてたとえば+1.00D未満、好ましくは+0.75未満の光学パワーであるとき、一定の光学パワーを有する回折光学パワー領域によって補正が十分に提供され得る。
【0140】
図25A〜25Dは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、一定の光学パワーを有するそれぞれ図8G、8E、8Iおよび6Bの剪定回折光学パワー領域111を有する図21A〜21Bのレンズ400の正面図を示す。図25A〜25Dの剪定回折光学パワー領域111はさまざまな形状を有するが、連続的回折光学パワー領域の任意の部分を剪定することができることが認められるであろう。剪定回折光学パワー領域111は、図8A〜8Iに示されるような静的、または図15に示されるような表面浮彫回折構造206を被覆する透明電極208によって、または図17A〜17Bに示されるような個別アドレサブル電極216によって形成される動的とすることができる。
【0141】
図26A〜26Dは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、図1の屈折累進追加領域103と光連絡している一定の光学パワーを有する剪定回折光学パワー領域111を有する図25A〜25Dのレンズ400の正面図を示す。
【0142】
屈折累進追加領域103は、剪定回折光学パワー領域111の剪定境界116から離間していてもよい。たとえば、屈折累進追加領域103は、たとえば(鉛直軸に沿って測定して)ほぼ0からほぼ6mmまで範囲内の距離だけ離間して、剪定境界116の光学パワー不連続部の下方から始まってもよい。
【0143】
一例では、着用者の近距離視力処方はたとえばほぼ+2.00D、遠中距離視力処方はたとえばほぼ+0.62のD、中距離視力処方はたとえばほぼ+1.00Dである。この例における処方のための総光学パワーを提供するために、図26Bのレンズ400は、たとえば+0.62Dまでの一定の光学パワーを提供する剪定回折光学パワー領域111を有していてもよい。剪定回折光学パワー領域111は、ほぼ40mmの直径を有する最大回折構造を有していてもよい。レンズ400は、ほぼゼロ(プラノ)光学パワーを有する剪定境界116の光学パワー不連続部のほぼ6mm下方から始まる屈折累進追加領域103を有していてもよい。屈折累進追加領域103は、(たとえば中距離視力領域において)剪定境界116の光学パワー不連続部から9mmの距離において+0.38Dを提供するように光学パワーを増加させてもよい。屈折累進追加領域103によって寄与される+0.38Dの光学パワーは、剪定回折光学パワー領域111によって寄与される+0.62Dの光学パワーを有するレンズ400と組み合わされて、着用者の中距離視力処方のための総計+1.00Dの光学パワーを提供する。屈折累進追加領域103は+1.38Dまでの光学パワーを提供し、剪定回折光学パワー領域111によって提供される+0.62Dと組み合わされたときに、着用者の総計+2.00D近距離視力処方を提供する。屈折累進追加領域103の上方に位置している剪定回折光学パワー領域111の部分は、着用者の遠中距離視力処方の補正を提供する。別の例では、近距離視力に対して補正するために必要とされる光学パワーは、剪定回折光学パワー領域111と屈折累進追加領域103との間に等しく分割されてもよい。この例では、着用者の近距離視力処方が+2.50Dであるならば、剪定回折光学パワー領域111が+1.25Dの一定の光学パワーを提供し、屈折累進追加領域103が+1.25Dまでの光学パワーの累進を提供する。
【0144】
図26A〜26Dでは、屈折累進追加領域103が剪定回折光学パワー領域111の剪定境界116から離間して配置されているので、屈折累進追加領域103の形状と大きさは、剪定回折光学パワー領域111の形状と大きさに依存する。
【0145】
図27A〜27Dは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、剪定回折光学パワー領域111の剪定境界116に外に少なくとも部分的に配置された屈折累進追加領域103を有する図26A〜26Dのレンズ400の正面図を示す。たとえば、屈折累進追加領域103は、たとえば(鉛直軸に沿って測定して)ほぼ0からほぼ6mmまでの範囲内の距離だけ、剪定回折光学パワー領域111の光学パワー不連続部の上方から始まってもよい。
【0146】
一例では、着用者の近距離視力処方はたとえばほぼ+2.50D、遠中距離視力処方はたとえばほぼ+0.75のD、中距離視力処方はたとえばほぼ+1.25のDである。この例における処方のための光学パワーを提供するために、図26Bのレンズ400は、たとえば+0.75Dまでの一定の光学パワーを提供する回折光学パワー領域111を有していてもよい。屈折累進追加領域103は、剪定境界116の光学パワー不連続部の上方3mmの距離にほぼゼロ(すなわちプラノ)光学パワーを有していてもよい。屈折累進追加領域103は、光学パワー不連続部における上昇を低減するために不連続部において+0.25Dの光学パワーを提供するように光学パワーを増加させてもよい。屈折累進追加領域103は、(たとえば中距離視力領域において)光学パワー不連続部の下方6mmにおいてほぼ+0.50Dの光学パワーを提供するように光学パワーを増加させてもよい。屈折累進追加領域103によって寄与される光学パワーの+0.50Dは、剪定回折光学パワー領域111によって寄与される+0.75Dの光学パワーを備えたレンズ400と組み合わされて、着用者の中距離視力処方のための総計+1.25Dの光学パワーを提供する。屈折累進追加領域103は+1.75Dまでの光学パワーを提供し、剪定回折光学パワー領域111によって提供される+0.75Dと組み合わされたときに、着用者の総+2.50D近距離視力処方を提供する。
【0147】
図27A〜27Dでは、屈折累進追加領域103が剪定境界116の光学パワー不連続部の上方に配置されているので、屈折累進追加領域103の形状と大きさは、剪定回折光学パワー領域111の形状と大きさに依存する。
【0148】
他の実施形態では、屈折累進追加領域または剪定回折光学パワー領域は、着用者のための高(たとえば1.00Dよりも大きい)近距離視力処方の補正のために単独で使用されてもよい。あるいは、屈折累進追加領域または回折光学パワー領域は、着用者のための低(たとえば+1.00Dよりも小さい)近距離視力処方を補正するために組み合わされて使用されて、純粋な屈折または回折レンズに一般に関連する歪みと色収差をさらに低減してもよい。
【0149】
図19A〜19C、20A〜20D、21A〜21B、22A〜22B、25A〜25D、26A〜26Dおよび27A〜27Dのレンズ400は、本発明のさまざまなアスペクトにしたがって、静的または動的とすることができる。
【0150】
図28A〜28Bは、本発明のさまざまなアスペクトにしたがった、図3と4の静的レンズ100の側面図を示す。レンズ100は、(回折光学パワー領域を形成する)表面浮彫回折トポグラフィを有する回折構造110を有する第一の層152を有する。
【0151】
図28Aでは、回折構造110は第一の層152に形成される。第一の層152は、第一屈折率(n)を有する第一の物質から構成されている。第一の層152は、第二の異なる屈折率(n)を有する第二の物質から構成されている第二の層153と光連絡している。回折構造110の高さdは好ましくは次のように定義される。
【数4】

【0152】
ここでλは回折光学パワー領域の設計波長である。屈折率の差Δnが増加するにつれて、回折構造110高さは減少する。より短い回折構造110は、製造するのがより簡単で目に見えにくい。しかしながら、屈折率の差を増加させることは一般に、第一と第二の物質間のフレネル反射を増加させ、それは、最終完成レンズを通る光の伝達を減少させる。したがって、屈折率の差Δnは、たとえばほぼ0.02からほぼ0.25までの範囲に、好ましくはほぼ0.05からほぼ0.15までの範囲にある。そのうえに、二つの物質または任意の光学材料界面を横切る光の伝達は、この技術分野で知られている、薄膜、四分の一波長および屈折率整合層を使用することによって増加され得る。
【0153】
一つのアプローチでは、本発明のアスペクトにしたがって、レンズ100は、表面浮彫回折構造110を有する第一の層152または第二の層153のプレフォームを初期に生成することによって製造される。それから、プレフォームは、たとえば光学品質接着剤を使用してレンズ100の残りの部分に接合される。プレフォームは、たとえば熱または紫外線(UV)硬化性モノマー樹脂を鋳造することによって製造されてもよい。あるいは、プレフォームは、この技術分野で知られているように、射出成形、エンボシング、スタンピングによって、またはさもなければ熱可塑性物質を熱形成することによって製造されてもよい。プレフォームは、使い捨て型として働いてもよい。第二の層153のプレフォームが形成されるとき、プレフォームの内側表面は回折構造110を有し、(レンズ100の前面を形成する)プレフォームの外側表面はたとえば累進追加領域などの屈折光学部品として形成することができる。遠、遠中および中近距離視力領域が適切に生成されることを保証するために、累進追加領域は、好ましくは表面浮彫回折構造に対して所定の配向に整列される。プレフォームおよびプレフォームに加えられた任意の物質の厚さは、表面浮彫回折構造110が最終レンズの完成前面からほぼ1mm以下で離間しているようなものである。
【0154】
上述したように、第一の層152と第二の層153の屈折率は異なっていなければならない。一例では、第一の層152と第二の層153の一方が(1.594の屈折率を有する)MR−20から構成される一方、他方は(1.53の屈折率を有する)Trivexから構成される。一例では、第一の層152と第二の層153の一方が(1.49の屈折率を有する)CR39から構成される一方、他方は(1.59の屈折率を有する)TS216から構成される。また別の例では、第一の層152と第二の層153の一方が(1.668の屈折率を有する)MR−10から構成される一方、他方は(1.53の屈折率を有する)Trivexから構成される。
【0155】
一般に、レンズ100は、表1に列記された任意の物質から構成されてもよいが、他の物質が使用されてもよい。
【表1】

【0156】
図28Bは、第三の屈折率(n)を有する第三の物質から構成された第三の層154を有する図28Aのレンズ100を示す。第三の層154がプレフォームであるならば、回折構造110は第三の層154に形成される。第三の層154は、第一の基層152と第二の基層153の間に配置される。第三の層154の屈折率は、第一の層152と第二の層153の一方または両方の屈折率と異なる。第一の層152と第二の層153の屈折率は同じにするまたは異なせることができる。第三の屈折率は、たとえばほぼ1.50からほぼ1.75までの範囲内にあり、第一および第二の屈折率は、たとえばほぼ1.40からほぼ1.65までの範囲内にある。この例では、相対的高屈折率を有する物質が、相対的低屈折率を有する物質に囲まれる。あるいは、第三の屈折率は、たとえば、ほぼ1.40からほぼ1.65までの範囲内にあり、第一および第二の屈折率は、たとえばほぼ1.50からほぼ1.75までの範囲内にある。この例では、相対的低屈折率を有する物質が、相対的高屈折率を有する物質に囲まれる。そのような配置は一般に、(同じ光学パワーを有するレンズに対して)反対の構成と比較して、より薄くより平らな完成レンズを生成する。
【0157】
図28Bの第一の層152と第二の層153は、図28Aに関して説明されるような表面浮彫回折構造を備えたプレフォームを使用して製造されてもよい。第三の層154は、第一の基層152を第二の基層153に接着するために使用される光学品質接着剤の形態をとってもよい。光学品質接着剤は、たとえば表面浮彫回折構造110の高さが式(4)を満たす(すなわち高い回折効率を有する)ことを可能にする光学特性を有する。(回折構造を含む)第三の層154の厚さは、たとえばほぼ0.05mmからほぼ1.00mmまでの範囲内に、好ましくはほぼ0.1mmからほぼ0.5mmまでの範囲内にある。
【0158】
あるいは、第三の層154は、表面浮彫回折プレフォーム(たとえば挿入物)として製造されてもよい。第一の層152と第二の層153は、この技術分野で周知である偏光太陽レンズを製造するために使用されるものと同様の埋設鋳造プロセスを使用して、プレフォームに続けて接合されもよい。
【0159】
上述したように、第三の層154の屈折率は、第一の層152と第二の層153の一方または両方の屈折率と異なる。一例では、第一の層152と第二の層153の一方または両方がMR−20から構成される一方、第三の層154はTrivexから構成される。別の例では、第一の層152と第二の層153の一方または両方がCR39から構成されている一方、第三の層154はTS216から構成される。また別の例では、第一の層152と第二の層153の一方または両方がMR−10から構成される一方、第三の層154はTrivexから構成される。あるいは、たとえばテーブル1に列記された他の物質、が使用されてもよい。
【0160】
図28Cは、第一の層152と第二の層153に接合するために第三の基層154の各側に配置された光学品質接着剤層155を有する図28Bのレンズ100を示す。第一、第二および第三の層152、153および154はプレフォームとして形成され、それから光学品質接着剤層155によって接合されてもよい。光学品質接着剤層155の厚さは、たとえばほぼ0.05mmからほぼ1.00mmまでの範囲内にあり、好ましくはほぼ0.1mmからほぼ0.5mmまでの範囲内にある。
【0161】
図28Dは、物質不感応性挿入物157を形成するために物質156内に封入された第三の層154を有する図28Bのレンズ100を示す。物質不感応性挿入物157は、第一の層152と第二の層153の間に配置される。物質不感応性挿入物157は、光学品質接着剤を使用して第一の層152と第二の層153に接合されてもよい。あるいは、物質不感応性挿入物157は、たとえばこの技術分野で周知である偏光太陽レンズを製造するために使用されるものと同様の埋設鋳造プロセスを使用して、第一の層152と第二の層153の間に埋設されてもよい。物質不感応性挿入物157は回折構造110を完全に包含している。したがって、式(4)によれば、レンズ100の回折効率は、第三の層154と物質156の間の屈折率差に依存し、層152および153の屈折率に独立(すなわち不感応)である。したがって、第一の層152と第二の層153は、任意のさまざまな光学物質から構成されてもよく、物質不感応性挿入物157は、同じ回折効率を有する光学パワーを生成する。第一の基層152と第二の基層153のためのさまざまな物質と物質不感応性挿入物157のためのほぼ同じ物質を提示することによって、レンズ100のさまざまな設計が、図28A〜28Cの前述のアプローチと比較して、少ない数のSKUの製造と生産工具で達成され得る。
【0162】
発明の(図示しない)別の実施形態では、均一な厚さをもつ(すなわち表面浮彫回折構造をもたない)感光物質の層が、二つのあらかじめ決まった光学部品間に置かれる。感光物質の屈折率は、光学的放射に露出されたときに、所定値に永久に取消不能に変化する。感光物質は、回折光学パワー領域を形成するようにあらかじめ決められたパターンで放射に露出されてもよい。たとえば、回折位相輪郭が、光学マスクまたは走査レーザー源を介する露出によって感光物質に「書き込まれ」てもよい。光学的放射は、たとえば紫外または可視波長バンド内であるが、他の波長を使用することができる。
【0163】
図28A〜28Dに示されるレンズ100は半完成ブランク(SFB)であるが、完成レンズ、完成レンズブランクまたは未完成のレンズブランクなどの他のレンズまたは完成品が使用されてもよい。第一の基層152は図28A〜28Dに未完成であるように示されるが、第一の基層152の背面は一般に、この技術分野で知られる方法を使用して、患者の視力処方を生成するように研削され研磨されるまたはフリー形成される。図28A〜28Dに示されるレンズ100は、縁無し眼鏡レンズフレームに装着されるために穴が空けられるのと同様に眼鏡レンズフレームに適合するために縁取りすることができることが理解される。
【0164】
発明の(図示しない)別の実施形態では、レンズはさらに、静的色調または(フォトクロミックを加えることによる)動的色調、反射防止コーティング、汚れ防止コーティング、耐傷性ハードコーティング、紫外部吸収コーティング、および高エネルギー光の選択的フィルタリングのためのコーティングを有することができる。
【0165】
本発明にしたがって説明された回折構造は、レンズを通過する光の総量を変化させない、すなわち、それらは偏光または着色などによって光を遮断しないことが認められるであろう。代わりに、回折構造は、回折光学パワー領域の焦点に集中される光の総量の一部に影響する。回折光学パワー領域が屈折ホストレンズと組み合わされて使用されるとき、回折光学パワー領域と屈折ホストレンズの組み合わせの焦点に集中されない残りの部分は屈折ホストレンズの焦点に集中される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同中心回折構造を備えている回折光学パワー領域を備えており、中心点に近い回折構造への入射光の大割合は、そこから周囲に離間した回折構造への入射光よりも光学パワーに寄与するレンズシステム。
【請求項2】
前記複数の同中心回折構造は、前記鋸歯パターンを形成する一連の頂と隣接谷を備えており、各同中心回折構造は、鋸歯パターンの谷から隣接頂まで延びており、中心点に近い回折構造の頂と隣接谷との間の距離は、そこから周囲に離間した回折構造の頂と隣接谷との間の距離よりも大きい請求項1のレンズシステム。
【請求項3】
前記鋸歯パターンに沿って形成された第一の電極層と、
前記第一の電極層に沿って形成された電気活性物質と、
前記電気活性物質に沿って形成され、前記第一の電極層に電気的に連結された第二の電極層と、
前記第一および第二の電極層の両端に電圧を印加するためのコントローラーとさらにを備えており、
前記コントローラーが前記第一および第二の電極層の両端に電圧を印加するとき、前記電気活性物質の屈折率が変更されて前記回折光学パワー領域の光学パワーを提供し、前記回折光学パワー領域の光学パワーに寄与する光の割合の差は、前記中心点に近い前記回折構造の前記頂と前記隣接谷の間の距離と、そこから離間した前記回折構造の前記頂と前記隣接谷の間の距離との差による請求項2のレンズシステム。
【請求項4】
前記同中心回折構造は個別アドレサブル電極を備えており、前記回折光学パワー領域は、
複数の前記個別アドレサブル電極に電圧を印加するためのコントローラーと、
前記個別アドレサブル電極間に配置された電気活性物質とを備えており、前記コントローラーが前記複数の個別アドレサブル電極に電圧を印加するとき、前記電気活性物質の屈折率が変更されて前記回折光学パワー領域の光学パワーを提供し、前記回折光学パワー領域の光学パワーに寄与する光の割合の差は、中心点に近い回折構造の隣接個別アドレサブル電極間の前記電気活性物質の屈折率と、そこから離間した前記回折構造の隣接個別アドレサブル電極間の前記電気活性物質の屈折率との差による請求項1のレンズシステム。
【請求項5】
前記個別アドレサブル電極が同中心湾曲電極を有する請求項4のレンズシステム。
【請求項6】
前記個別アドレサブル電極がピクセルを有する請求項4のレンズシステム。
【請求項7】
前記光学パワーに寄付される前記割合は、前記回折構造増加の径方向距離が中心点から増加するにつれて減少する請求項1のレンズシステム。
【請求項8】
前記光学パワーに寄付される前記割合は、第一の径方向距離内において一定であり、第二のより大きい径方向距離内において減少する請求項7のレンズシステム。
【請求項9】
前記割合が、ゼロから1までの範囲を有する関数によって縮小される請求項1のレンズシステム。
【請求項10】
前記割合が、前記回折光学パワー領域の周囲縁においてほぼ0である請求項1のレンズシステム。
【請求項11】
前記割合が、区分的関数によって近似される請求項1のレンズシステム。
【請求項12】
前記光学パワーが一定である請求項1のレンズシステム。
【請求項13】
前記光学パワーが累進である請求項1のレンズシステム。
【請求項14】
前記回折光学パワー領域が剪定される請求項1のレンズシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図23D】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図24F】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図26D】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図27D】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図28D】
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【公表番号】特表2010−532496(P2010−532496A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514872(P2010−514872)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/008254
【国際公開番号】WO2009/005822
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(508366570)ピクセルオプティクス, インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】