説明

回折構造表示体

【課題】表示体の回転位置により表示パターンの白黒が反転したり切り換わり、意匠性、装飾性、視覚効果が高く、偽造防止効果の高い回折構造表示体を提供する。
【解決手段】表示体1の表示面に白色再生ホログラムHLとそれぞれ異なる回折構造の複数のパターン領域41,42,43とが並列配置され、前記白色再生ホログラムHLは前記表示面に対して所定方向から入射する照明光によって前記表示面に対して正面方向から観察可能な再生像を再生するものであり、前記複数のパターン領域41,42,43各々は、前記表示面の法線又は前記所定方向から入射する照明光の含む入射面に垂直な軸の周りで回転したときに、それぞれの回折構造に依存する特定の回転角度のみで前記白色再生ホログラムHLからの再生像が観察可能な位置へ前記照明光を回折、散乱するものであることを特徴とする回折構造表示体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折構造表示体に関し、特に、表示体の回転位置により表示パターンの白黒が反転したり切り換わる回折構造表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
預貯金用カード、クレジットカード等のカード類には、それらの真正性を保証する意味で、回折格子やホログラムが適用されていることが多い。また、模造品が出回りやすい高額商品若しくはそのケース等にも、やはりそれらの真正性を保証する意味で回折格子やホログラムが適用されていることが多い。
【0003】
回折格子やホログラムが上記の例以外の種々の分野の物品にも適用されているのは、ホログラム等が製造若しくは複製の困難性を有しているからであり、また、外観的には干渉色を有していて目をひきやすく、意匠的にも優れており、さらに場合によっては、剥がそうとすると破壊して、他に転用できない構造とすることが可能である等のメリットを有しているからである。
【0004】
このようなホログラムとして、原画像のフーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして記録した計算機ホログラム(CGH)を用いるものが特許文献1にて提案されている。このフーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして記録したホログラム(CGH)は、レーザー光を当てると、原画像がスクリーン面上等に投影再生される。このホログラム(CGH)は、図14に示すように、次の(1)〜(7)の各ステップを順次行うことで得られる。
(1)まず、原画像を形成する。原画像は任意に決定された画像でよく、文字、数字、図形若しくは記号、絵画、アニメーション、又は、写真等の何れでもよい。
(2)次に、原画像からコンピュータを用いて原画像をフーリエ変換処理することにより、原画像のフーリエ変換像を作成する。
(3)振幅=1とする。
(4)フーリエ逆変換を行う。
(5)振幅を元の振幅とする(位相はそのままとする。)。
この後、(2)に戻り、「フーリエ変換→フーリエ逆変換」を繰返した後、所定の条件を満たすフーリエ変換像が得られたと判断された時点で停止する。
(6)停止後、位相データを抽出する。
(7)位相データの多値化を行って、所定の段数の深さ情報とする。
【0005】
原画像に基づく位相データの多値化は、例えば、2値化、4値化、8値化、若しくは、16値化等であり得る。
【0006】
一方、方向の揃った複数の直線状の凸部又は凹部からなり、その方向が互いに異なる複数の光散乱能異方性を持つ領域からなるものが特許文献2にて提案されている。図15に示すように、数字“9”の文字領域20aとその数字“9”を囲む領域20bとでは、平行に並ぶ多数の直線状の凸部又は凹部の方向が相互に直交しており、各領域の凸部又は凹部の方向に直交する方向から見ると、その領域は周囲光の散乱のため相対的に白色に見え、その凸部又は凹部の方向から見るとその方向には周囲光が散乱されないため相対的に黒色に見える。したがって、図15の場合、右上乃至左下方向から見ると、文字領域20aが白色に、囲む領域20bが黒色に見える。それと直交する左上乃至右下方向から見ると、白黒が反転して、文字領域20aが黒色に、囲む領域20bが白色に見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−122233号公報
【特許文献2】特開2008−107472号公報
【特許文献3】特開平11−202741号公報
【特許文献4】特開2000−214750号公報
【特許文献5】特開2000−214751号公報
【特許文献6】特開2001−13858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のホログラム(CGH)も、特許文献2の光散乱能異方性を持つ媒体も偽造防止用の記録体あるいは表示体として用いられるものであったが、特許文献1の場合はその記録体に意匠性、装飾性あるいは視覚効果の点から必ずしも十分なものではなかった。他方、特許文献2の表示体の場合、見る方向により表示パターンが白黒反転するだけで、表示パターンの切り換わり等の変化が少なく意匠性、装飾性あるいは視覚効果の点から必ずしも十分なものではなかった。
【0009】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、表示体の回転位置により表示パターンの白黒が反転したり切り換わり、意匠性、装飾性、視覚効果が高く、偽造防止効果の高い回折構造表示体を提供することである。特に、その際に、観察者の視点を適切に誘導するための構成を付加した回折構造表示体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の回折構造表示体は、表示体の表示面に白色再生ホログラムとそれぞれ異なる回折構造の複数のパターン領域とが並列配置され、前記白色再生ホログラムは前記表示面に対して所定方向から入射する照明光によって前記表示面に対して正面方向から観察可能な再生像を再生するものであり、前記複数のパターン領域各々は、前記表示面の法線又は前記所定方向から入射する照明光の含む入射面に垂直な軸の周りで回転したときに、それぞれの回折構造に依存する特定の回転角度のみで、前記白色再生ホログラムからの再生像が観察可能な位置へ前記照明光を回折、散乱するものであることを特徴とするものである。
【0011】
この場合、前記白色再生ホログラムは、レインボー・ホログラム又は水平方向にのみ視差を持つ計算機ホログラムからなることが望ましい。
【0012】
また、前記複数のパターン領域各々は、前記表示面の法線の周りで回転したときに、それぞれの回折構造に依存する特定の回転角度のみで、前記白色再生ホログラムからの再生像が観察可能な位置へ前記照明光を回折、散乱するものとすることができる。
【0013】
その場合、前記複数のパターン領域の1つのパターン領域の回折構造は、画像面上の中心を通る特定方向の中心から一方の方向の外れた位置に第1の画像が配置されてなる原画像のフーリエ変換像の位相情報を位相データを3値以上の多値化をして深さとして記録したホログラムからなり、前記複数のパターン領域の別のパターン領域の回折構造は、画像面上の中心を通る前記特定方向に直交する方向の中心から一方の方向の外れた位置に第2の画像が配置されてなる原画像のフーリエ変換像の位相情報を位相データを3値以上の多値化をして深さとして記録したホログラムからなるようにすることができる。
【0014】
あるいは、前記複数のパターン領域の1つのパターン領域の回折構造は、前記表示面に
垂直に入射する光を画像面上の中心を通る特定方向へ回折、散乱する回折格子又は光散乱能異方性散乱体からなり、前記複数のパターン領域の別のパターン領域の回折構造は、前記表示面に垂直に入射する光を前記特定方向と直交する方向へ回折、散乱する回折格子又は光散乱能異方性散乱体からなるようにしてもよい。
【0015】
また、前記複数のパターン領域各々は、前記所定方向から入射する照明光の含む入射面に垂直な軸の周りで回転したときに、それぞれの回折構造に依存する特定の回転角度のみで、前記白色再生ホログラムからの再生像が観察可能な位置へ前記照明光を回折、散乱するものとすることもできる。
【0016】
その場合、前記複数のパターン領域の1つのパターン領域の回折構造は、前記軸に平行な方向に伸びる格子からなる特定の格子間隔の第1回折格子からなり、前記複数のパターン領域の別のパターン領域の回折構造は、前記軸に平行な方向に伸びる格子からなる前記第1回折格子と異なる格子間隔の第2回折格子からなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、表示体から白色再生ホログラムの再生像が見える角度位置に表示体を位置するように調整することで、観察者自身を確実に表示体の正面に位置させることができる。その後に観察者が表示面の法線又は所定方向から入射する照明光の含む入射面に垂直な軸の周りで表示体を回転することで、複数のパターン領域各々が白黒反転して見え、全体として見た場合に各回転位置で異なったパターンに切り換わって見え、意匠性、装飾性、視覚効果の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】原画像として点光源を用いる場合のフーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして記録するホログラムを説明するための図である。
【図2】本発明の回折構造表示体に用いるホログラムの1つの実例を示す図である。
【図3】本発明の回折構造表示体に用いるホログラムの他の実例を示す図である。
【図4】本発明の回折構造表示体に用いるホログラムの他の実例を示す図である。
【図5】本発明による回折構造表示体を作製順に従って説明するための図である。
【図6】ホログラムの代わりに回折格子を用いる場合の図5と同様の図である。
【図7】本発明による回折構造表示体の1つの実施例の配置を示すための図である。
【図8】図7の回折構造表示体を法線を中心に回転させた場合に白黒反転してパターンが切り換わる様子を示す図である。
【図9】本発明により表示体中に配置された白色再生ホログラムの作用について説明するための図である。
【図10】図7の回折構造表示体の真正性を確認するための配置を示す図である。
【図11】原画像面上において画像が配置可能な領域を示す図である。
【図12】本発明による回折構造表示体の別の実施例の配置を示すための図である。
【図13】図12の表示体において白黒反転してパターンが切り換わる作用を説明するための図である。
【図14】公知の原画像のフーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして記録したホログラムの作製手順を示す図である。
【図15】公知の複数の光散乱能異方性を持つ領域からなり、白黒が反転して見える表示体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の回折構造表示体の実施例の説明をその原理の説明に基づいて行う。
【0020】
図1は、原画像として点光源を用いる場合のフーリエ変換像の位相情報を多値化して深
さとして記録するホログラム(CGH)を説明するための図であり、正レンズのフーリエ変換作用を用いて説明する。
【0021】
焦点距離fの正レンズLの前側焦点Fを通り光軸に直交する平面を原画像面とし、正レンズLの後側焦点を通り光軸に直交する平面をホログラム面Hとする。正レンズLの光軸を水平方向にとり、原画像面上の光軸に直交する水平方向にx軸、垂直方向にy軸、ホログラム面H上の光軸に直交する水平方向にp軸、垂直方向にq軸をとる。原画像面上のy軸上の光軸(原点)から負方向に離れた位置に点光源Pが位置しているとき、すなわち、原画像として、原画像面の中心から垂直方向に外れた位置に点光源Pが位置している画像のフーリエ変換像を考える。点光源Pから出た球面波は正レンズLで平面波に変換され、点光源Pと正レンズLの中心を通る直線方向に進む平面波となってホログラム面Hに入射する。図1(a)は平面図、図1(b)は側面図であり、正レンズLで平面波に変換された光束の等位相面Sは、平面図でみたとき、ホログラム面Hに平行になってホログラム面に入射し、側面図でみたとき、ホログラム面Hに対して角度をなして入射する。そのため、ホログラム面Hに記録されるこの点光源Pのフーリエ変換像の等位相位置(等位相面Sとホログラム面Hの交差点(線))は、水平方向(p方向)に延びる平行線となる。等位相位置として、例えば位相π及びその奇数倍の位置を最も深い位置とし、2π及びその整数倍の位置を最も高い位置としとする場合、最も高い位置の分布はホログラム面H上で水平方向(p方向)に延びる等間隔の平行線(干渉縞)となる。点光源Pがy軸上の原点から正方向にずれている場合も同様である。
【0022】
この検討から分かることは、原画像面上の中心から所定方向(上記の例ではy軸方向)に点光源Pがずれて位置していると、そのフーリエ変換像の等位相線(干渉縞)はそのずれ方向と直交する方向(上記の例ではp軸方向)に延びる直線となることである。
【0023】
原画像は通常点光源Pではないが、点光源Pの集合と考えることができるので、原画像面上の中心から所定方向を挟んで両側に原画像面上の中心からずれて配置された原画像のフーリエ変換像は、その所定方向と直交する方向に平行な等位相線とその所定方向と直交する方向に小さな角度をなして延びる等位相線とを多数重畳したものとなる。
【0024】
図2は1つの実例を示す図であり、(a)は原画像、(b)はフーリエ変換像を示す図であり、原画像は原画像面の中心から垂直上方向(+y方向)の外れた位置に文字“D”が位置しているもので、その原画像のフーリエ変換像は、等位相線(干渉縞)Bが水平方向(p方向)に略向くように分布しているものであることが分かる。
【0025】
このように、画像面の中心から所定方向の外れた位置に原画像が位置している原画像のフーリエ変換像は、等位相線(干渉縞)Bがその所定と直交する方向(特定方向)あるいはその直交する方向に対して小さな角度をなして延びるものとなる。
【0026】
このような位相像の記録媒体(ホログラム(CGH))は、その特定方向に並列して延びる曲線状の多数の凸部又は凹部Bからなるものであり、図2(b)の実施例で言えば、ホログラム(CGH)の前面から入射した光をその曲線状の凸部又は凹部Bに直交する方向、すなわち、±q方向に散乱する光散乱能異方性を持つものとなる(特許文献2)。
【0027】
ただし、後で説明するように、ホログラム(CGH)に位相を記録する際に位相データの多値化を2値化ではなく、それ以上の3値化、4値化、8値化、16値化等を行うと、記録される等位相線(干渉縞)Bはブレーズド化され、図2の実施例の場合で言えば、原画像“D”の偏り方向である+q方向に大部分の周囲光が散乱する特性になる。
【0028】
図3は他の実例を示す図であり、(a)は原画像、(b)はフーリエ変換像を示す図で
あり、原画像は原画像面の中心から垂直下方向(−y方向)の外れた位置に文字“GENUINE”が位置しているもので、その原画像のフーリエ変換像は、図2の場合と同様に、等位相線(干渉縞)Bが水平方向(p方向)に略向くように分布しているものであることが分かる。
【0029】
この場合も、ホログラム(CGH)に位相を記録する際に位相データの多値化は、3値化、4値化、8値化、16値化等を行うことで、記録される等位相線(干渉縞)Bはブレーズド化され、原画像“GENUINE”の偏り方向である−q方向に大部分の周囲光が散乱する特性になる。
【0030】
図4はもう1つの実例を示す図であり、(a)は原画像、(b)はフーリエ変換像を示す図であり、原画像は原画像面の中心から水平左方向(+x方向)の外れた位置に文字“OK”が位置しているもので、その原画像のフーリエ変換像は、今度は等位相線(干渉縞)Bが垂直方向(q方向)に略向くように分布しているものであることが分かる。
【0031】
ただし、図4の場合は、ホログラム(CGH)に位相を記録する際に位相データの多値化は2値化とする。こうすると、記録される等位相線(干渉縞)Bはブレーズド化されず、原画像“OK”の偏り方向に沿った±p方向に大部分の周囲光が散乱する特性になる。
【0032】
このように、画像面の中心から所定方向の外れた位置に原画像が位置している原画像のフーリエ変換像は、等位相線(干渉縞)Bがその所定方向と直交する方向(特定方向)あるいはその直交する方向に対して小さな角度をなして延びるものとなる。
【0033】
このような位相像の記録媒体(ホログラム(CGH))は、その特定方向に並列して延びる曲線状の多数の凸部又は凹部Bからなるものであり、図2の実施例で言えば、ホログラム(CGH)の前面から入射した光をその曲線状の凸部又は凹部Bに直交する方向、すなわち、±q方向に散乱する光散乱能異方性を持つものとなる(特許文献2)。図3、図4の実施例の場合も同様である。
【0034】
ただし、後で説明するように、ホログラム(CGH)に位相を記録する際に位相データの多値化を2値化ではなく、それ以上の3値化、4値化、8値化、16値化等を行うと、記録される等位相線(干渉縞)Bはブレーズド化され、図2の実施例の場合で言えば、原画像“D”の偏り方向である+q方向に大部分の周囲光が散乱する特性になり、図3の実施例の場合で言えば、原画像“GENUINE”の偏り方向である−q方向に大部分の周囲光が散乱する特性になる。なお、図4の実施例の場合は位相データを2値化しているため、原画像“OK”の偏り方向だけでなく、その反対方向にも、すなわち、±p方向に大部分の周囲光が散乱する特性になる。
【0035】
なお、図1のように、画像面の中心から所定方向の外れた位置に点光源Pがある場合は、上記したように、等位相線(干渉縞)Bがその外れた方向と直交する方向に延びる等間隔の平行線となり、その位相データを3値化以上の多値化すると、ブレーズド化された回折格子(ブレーズド回折格子)と同じになる。また、2値化の場合は単純な(ブレーズド化されていない)回折格子と同じになる。
【0036】
次に、図2〜図4のような3つのホログラム(CGH)を作製順に従って説明する。図5(a)/(1)、(b)/(1)、(c)/(1)に示すように、それぞれ図2(a)、図3(a)、図4(a)に示すような原画像を用意する。すなわり、図5(a)/(1)の原画像12は、原画像面11の中心Oから垂直上方向(+y方向)の外れた位置に文字“D”が位置しているものであり、図5(b)/(1)の原画像22は、原画像面21の中心Oから垂直下方向(−y方向)の外れた位置に上下反転した文字“GENUINE
”が位置しているものであり、図5(c)/(1)の原画像32は、原画像面31の中心Oから水平左方向(+x方向)の外れた位置に文字“OK”が位置しているものである。
【0037】
それぞれの原画像面11、21、31を特許文献1の(1)〜(6)と同様にしてフーリエ変換したフーリエ変換像13、23、33は、それぞれ図5(a)/(2)、(b)/(2)、(c)/(2)に示すようにな位相データを持つもので、曲線は等位相線を模型的に示しているが、原画像12、22、32に対してそれぞれ図2(b)、図3(b)、図4(b)のような等位相線Bが分布したものである。そして、それぞれのフーリエ変換像13、23、33を、特許文献1の(7)のように行うことで、それぞれ図5(a)/(3)、(b)/(3)、(c)/(3)に示すようにな位相データを図5(a)/(3)、(b)/(3)の場合は3値以上の多値化したホログラム(CGH)14、24を、図5(c)/(3)の場合は2値化したホログラム(CGH)34が得られる。
【0038】
図5(a)/(4)、(b)/(4)はぞれぞれホログラム(CGH)14、24のq軸に平行な直線A−A’に沿って取った断面図を模式的に示す図であり、図5(c)/(4)はホログラム(CGH)34のp軸に平行な直線C−C’に沿って取った断面図を模式的に示す図であり、ホログラム(CGH)14、24の位相分布を示す等位相線Bの断面形状は、各々の凸部の断面が鋸歯状をしており、このホログラム(CGH)14、24を透過型で使用する場合も、レリーフ面等に反射コーテングを施して反射型で使用する場合も、断面鋸歯状面の斜面が屈折面あるいは反射面として作用し、回折格子のブレーズド面と同様に回折光あるいは散乱光を特定方向に集中させる作用を持つようになり、図4(a)/(3)、(4)のホログラム(CGH)14は、正面から入射した光を原画像12側である+q方向に偏って散乱するか、+qの斜め方向から入射した光を正面方向に散乱する。他方、図4(b)/(3)、(4)のホログラム(CGH)24は、正面から入射した光を原画像22側である−q方向に偏って散乱するか、−qの斜め方向から入射した光を正面方向に散乱するものとなる。また、ホログラム(CGH)34の位相分布を示す等位相線Bの断面形状は、凸部の断面が矩形波状をしており、このホログラム(CGH)34を透過型で使用する場合も、レリーフ面等に反射コーテングを施して反射型で使用する場合も、等位相線Bに直交する両側に回折光あるいは散乱光を集中させる作用を持つようになり、図5(c)/(3)、(4)のホログラム(CGH)34は、正面から入射した光を±p方向に散乱するか、±pの斜め方向から入射した光を正面方向に散乱するものとなる。
【0039】
なお、原画像12が原画像面11の中心Oから垂直上方向(+y方向)の外れた位置にある点光源の場合は、上記のようなフーリエ変換、位相データの多値化をしなくとも、断面が図6(a)/(2)(図5(a)/(4)と同じ)に示したような鋸歯状で、格子の方向が図6(a)/(1)に示したように水平方向(p方向)に伸びるブレーズド回折格子14となり、同様に、原画像22が原画像面21の中心Oから垂直下方向(−y方向)の外れた位置に点光源の場合は、上記のようなフーリエ変換、位相データの多値化をしなくとも、断面が図6(b)/(2)(図5(b)/(4)と同じ)に示したような鋸歯状で、格子の方向が図6(b)/(1)に示したように水平方向(p方向)に伸びるブレーズド回折格子24となり、原画像32が原画像面31の中心Oから水平左方向(+x方向)の外れた位置に点光源の場合は、上記のようなフーリエ変換、位相データの多値化をしなくとも、断面が図6(c)/(2)(図5(c)/(4)と同じ)に示したような矩形波状で、格子の方向が図6(c)/(1)に示したように垂直方向(q方向)に伸びる単純な(ブレーズド化されていない)回折格子34となる。
【0040】
このようなブレーズド回折格子14も、ホログラム(CGH)14と同様に、正面から入射した光を+q方向に偏って散乱するか、+qの斜め方向から入射した光を正面方向に散乱するものである。また、ブレーズド回折格子24も、ホログラム(CGH)24と同
様に、正面から入射した光を−q方向に偏って散乱するか、−qの斜め方向から入射した光を正面方向に散乱するものである。また、ブレーズド化されていない回折格子34も、ホログラム(CGH)34と同様に、正面から入射した光を±p方向に散乱するか、±pの斜め方向から入射した光を正面方向に散乱するものである。
【0041】
そこで、例えば図7に示すように、表示体の並列する3つのパターン領域、文字“A”の内側領域41、文字“B”の内側領域42、文字“A”と“B”の外側領域43を配置し、文字“A”の内側領域41には、図5(a)/(3)の位相データを3値以上の多値化したホログラム(CGH)14、あるいは、図6(a)/(1)のブレーズド回折格子14を配置し、文字“B”の内側領域42には、図5(b)/(3)の位相データを3値以上の多値化したホログラム(CGH)24、あるいは、図6(b)/(1)のブレーズド回折格子24を配置し、文字“A”と“B”の外側領域43には、図5(c)/(3)の位相データを2値化したホログラム(CGH)34、あるいは、図6(c)/(1)の単純な(ブレーズド化されていない)回折格子34を配置して表示体1を構成する。また、その作用は後で説明するが、表示体1の一部、望ましくは中央に白色再生ホログラムHLを配置する。
【0042】
このような表示体1は、図7の状態で照明光源が斜め上方に位置している場合、図7の正面から表示体1を観察すると、図8(a)に示すように、文字“A”の内側領域41のホログラム(CGH)14あるいはブレーズド回折格子14は、表示体1の斜め上方から入射した周囲光を主として前方に回折、散乱するため、正面に位置する観察者には相対的に明るく見え、文字“B”の内側領域42のホログラム(CGH)24あるいはブレーズド回折格子24は、表示体1の斜め上方から入射した周囲光を前方にはほとんど回折、散乱しないため、正面に位置する観察者には相対的に暗く見え、文字“A”と“B”の外側領域43のホログラム(CGH)34あるいは回折格子34は、表示体1の斜め上方から入射した周囲光を前方にはほとんど回折、散乱しないため、正面に位置する観察者には相対的に暗く見えるため、文字“A”の内側領域41のみが明るく見えることになり、図8(a)に示すように、表示体1は文字“A”のみが明るく観察され、同時に白色再生ホログラムHLの再生像(この場合は地球の青色の像)が観察される。
【0043】
この状態(図7)から照明光源が斜め上方に位置したまま表示体1をその法線を中心に90°右へ回転させると、照明光源は相対的に斜め左方に位置することになり、今度は、文字“A”の内側領域41のホログラム(CGH)14あるいはブレーズド回折格子14、及び、文字“B”の内側領域42のホログラム(CGH)24あるいはブレーズド回折格子24からは前方にはほとんど回折、散乱しなくなるため、正面に位置する観察者には相対的に暗く見え、文字“A”と“B”の外側領域43のホログラム(CGH)34あるいは回折格子34からは前方へ回折、散乱することになるため、表示体1は文字“A”、“B”が相対的に暗く、文字“A”と“B”の外側領域43は相対的に明るく、図8(b)に示すように、表示体1は文字“A”と“B”が暗い文字として観察される。なお、白色再生ホログラムHLの配置領域は中間階調領域として観察される。
【0044】
同様に、図7の状態から照明光源が斜め上方に位置したまま表示体1をその法線を中心に90°左へ回転させると、図8(c)に示すように、表示体1は文字“A”と“B”が暗い文字として観察される。また、白色再生ホログラムHLの配置領域は中間階調領域として観察される。なお、図8(b)と(c)の違いは、文字“A”と“B”の向きが反対になるだけである。
【0045】
図8(a)(図7)の状態から表示体1をその法線を中心に右あるいは左へ180°回転させるか、図8(b)の状態から右へさらに90°回転させるか、あるいは、図8(c)の状態から左へさらに90°回転させると、照明光源は相対的に斜め下方に位置するこ
とになり、文字“A”の内側領域41のホログラム(CGH)14あるいはブレーズド回折格子14からは前方にはほとんど回折、散乱せず、文字“B”の内側領域42のホログラム(CGH)24あるいはブレーズド回折格子24からは今度は前方に回折、散乱することになり、また、文字“A”と“B”の外側領域43のホログラム(CGH)34あるいは回折格子34からは前方にはほとんど回折、散乱しないため、文字“B”の内側領域42のみが明るく見えることになり、図8(d)に示すように、表示体1は文字“B”のみ明るく観察され、同時に白色再生ホログラムHLの配置領域は中間階調領域として観察されるか、白色再生ホログラムHLの再生像と異なる色の地球の像が観察される。
【0046】
したがって、本発明の表示体1は観察者が正面から観察するとき、表示体1を正立状態から90°、180°回転させると、3つのホログラム(CGH)14、24、34のパターンが各々白黒が反転して見え、全体として見た場合に各回転位置で異なったパターンに切り換わって見え、意匠性、装飾性、視覚効果の高いものとなる。
【0047】
ところで、表示体1中に配置された白色再生ホログラムHLの作用について説明する。白色再生ホログラムHLは、例えばレインボー・ホログラムや特許文献3〜6等で知られた水平方向にのみ視差を持つ計算機ホログラム(CGH)からなり、白色の外光で記録像が再生可能なものであり、図9(a)に入射面の沿った断面に示すように、外光の照明光源が白色再生ホログラムHLの斜め上方に位置している場合に、その照明光源からの照明光(外光)SLが所定の入射角θで白色再生ホログラムHLに入射する配置で、正面方向の観察者Eに所定の再生像(上記の例では、青色の地球像)が観察可能に再生するものである。
【0048】
したがって、観察者Eは表示体1から白色再生ホログラムHLの再生像である青色の地球像が見える角度位置に表示体1を位置するように調整すると、所定方向からの外光SLが表示体1に入射する位置で表示体1の正面方向に観察者E自身が位置することになる。
【0049】
仮に、外光SLの方向と観察者Eの視線の間の関係が図9(a)と同様であっても、図9(b)や(c)のように、表示体1の正面に観察者Eが向いていない場合は、白色再生ホログラムHLから所定の再生像が観察できず、図9(b)のように照明光SL入射角がより大きくなる場合は紫色の地球像が見えるか何の再生像も見えず、図9(c)のように照明光SL入射角がより小さくなる場合は緑色や赤色の地球像が見えるか何の再生像も見えないので、表示体1が正しい位置に配置されていないことが観察者E自身に分かる。
【0050】
このようにして、まず、観察者Eは表示体1から白色再生ホログラムHLの再生像である青色の地球像が見える角度位置に表示体1を位置するように調整して、その後に上記のように、表示体1をその法線を中心に90°、180°の回転させることで、3つのホログラム(CGH)14、24、34のパターンが各々白黒が反転して見え、全体として見た場合に各回転位置で異なったパターンに切り換わって見えることになる。
【0051】
そして、このような表示体1を用いたカード10を例に、真正性証明の方法を説明する。この場合の表示体1は、文字“A”の内側領域41にはホログラム(CGH)14が、文字“B”の内側領域42にはホログラム(CGH)24が、文字“A”と“B”の外側領域43にはホログラム(CGH)34が配置されている場合で、3つの領域41〜43の全てでなく、1個又は2個の領域のみにホログラムが配置され、他の領域には回折格子が配置されていてもよい。ただし、3つの領域41〜43に全て回折格子14、24、34が配置されている場合は、以下のような真正性証明の方法は採用できない。
【0052】
図10に示すように、このような回折構造表示体1にレーザー光源51を用いて、所定の波長のコヒーレント光であるレーザー光52を真上から照射する。レーザー光52のビ
ーム径は、回折構造表示体1の領域41、42、43よりも小さくてもよいが、複数領域41〜43にかかる大きさの方が好ましい。この照射により、領域41のホログラム(CGH)14、領域42のホログラム(CGH)24、領域43のホログラム(CGH)34に予め多値化された深さ情報情報として記録されている原画像“D”、“GENUINE”及び“OK”が回折光54a、54b、54cによって再生される。再生された像を予め準備された基準像と比較し、同一であるか、若しくは、異なるかの判定を行うことにより、真正性の確認を行うことができる。
【0053】
したがって、表示体1からある程度離れたある面53を想定すると、例えば、図10の向かって右の53aの区域でホログラム(CGH)14の記録像“D”を、図10の向かって左の53bの区域でホログラム(CGH)24の記録像“GENUINE”を、図10の奥側の53cの区域でホログラム(CGH)34の記録像“OK”を観察することができるので、面53を箱の上板とし、レーザー光源51及び真正性証明用の回折構造表示体1(カード10)の固定台(図示せず)等を備えた器具を準備し、箱の上板の53a〜53cの各区域に透過型スクリーンを設けておく等しておけば、この器具を用いて、再生された像を判定することが可能であり、真正性証明用の回折構造表示体1の真正性を確認することが、簡便にできる。なお、3つの領域41〜43の1個又は2個の領域のみにホログラムが配置されている場合は、原画像“D”、“GENUINE”及び“OK”の中の1つ又は2つが再生される。その場合も、基準像と比較することで真正性の確認を行うことができる。
【0054】
ところで、図2、図3の説明では、画像面の中心からy軸の+y方向あるいは−y方向の外れた位置にホログラム(CGH)14、24として記録する画像(文字)“D”、“GENUINE”を配置するとしたが、y軸に直交する方向にその画像がどの程度広がっていてもよいか説明しなかった。y軸に直交する方向への広がり方が少ない程、等位相線(干渉縞)Bの向きがy軸に直交する方向に向くことになり、その等位相線(干渉縞)Bでの散乱方向も狭くなるため、ホログラム(CGH)14の領域41とホログラム(CGH)24の領域42の白黒反転が顕著に観察できるようになり、望ましい。
【0055】
図11に、実際上に原画像面11、21の中心Oから+y方向に外れる場合の画像を配置可能な領域をハッチ領域として示す。原画像面11、21の中心Oからy軸を挟んで±45°の範囲にフーリエ変換像として記録する画像を配置すれば、白黒反転が容易に観察できるようになる。また、中心Oから+y方向の原画像面11、21の最大値の2分の1の範囲内に配置するのが望ましい。その中心Oから+y方向の最大値の2分の1を超えると、ホログラム(CGH)14、24から再生される像(図10の“D”及び“GENUINE”)が歪んでしまい、好ましくない。
【0056】
図4のホログラム(CGH)34として記録する原画像面31に記録する画像(文字)“OK”も、図11のハッチ領域と同様の範囲に配置することが望ましい。ただし、この場合は、図11のy軸がx軸に置き代わる。
【0057】
ところで、等位相線(干渉縞)あるいは格子線と直交する両側からの光を正面方向へ散乱するか、正面方向から入射した光を等位相線(干渉縞)あるいは格子線と直交する両側へ散乱するホログラム(CGH)34あるいは回折格子34の代わりに、同様の特性を持つ特許文献2に記載されているような方向の揃った複数の直線状の凸部又は凹部からなる光散乱能異方性を持つ光散乱領域(光散乱能異方性散乱体)を用いてもよい。本発明においては、このような光散乱能異方性散乱体も回折構造に含めることにしている。
【0058】
また、ホログラム(CGH)34あるいは回折格子34の代わりに、ホログラム(CGH)14、24あるいはブレーズド回折格子14、24と同様のホログラム(CGH)あ
るいはブレーズド回折格子を用いてもよい。その場合は、図7の例では、図8(b)あるいは図8(c)の状態で、全面が暗い一様な状態で観察されるようになる。
【0059】
図7の実施例の場合は、表示体1をその法線を中心に回転させることで、各パターンの白黒が反転して、全体として見た場合に各回転位置で異なったパターンに切り換わって見える実施例であったが、照明光(外光)を含む入射面に垂直な軸を中心に回転させることで各パターンの白黒が反転して、全体として見た場合に各回転位置で異なったパターンに切り換わって見えるようにすることもできる。図12はその実施例の表示体1の配置を示すための図であり、図7の実施例と同様に、表示体1の一部、望ましくは中央に白色再生ホログラムHLを配置する。この白色再生ホログラムHLの作用は、図7の場合と同様に、例えばレインボー・ホログラムや計算機ホログラム(CGH)からなり、白色の外光で記録像が再生可能なものであり、照明光源からの照明光(外光)SLが所定の入射角θで白色再生ホログラムHLに入射する配置で、正面方向の観察者Eに所定の再生像(上記の例では、青色の地球像)が観察可能に再生するものである。
【0060】
そして、白色再生ホログラムHLの左右に文字“A”の内側領域41、文字“B”の内側領域42が配置され、白色再生ホログラムHLと文字“A”と“B”の外側領域43が配置され、文字“A”の内側領域41には、格子の方向が水平方向を向いていて最も格子間隙の大きな回折格子61を配置し、文字“B”の内側領域42には、中間の格子間隙の回折格子62を配置し、文字“A”と“B”の外側領域43には、最も格子間隙の小さな回折格子63を配置して表示体1を構成する。なお、図12では、回折格子61、62、63の格子の方向と格子間隙を模式的に示すように、それぞれ表示体1から吹き出しで回折格子61、62、63を示してある。
【0061】
この表示体1に対して、図13(a2)に外光SLを含む入射面の沿った断面に示すように、外光SLの照明光源が白色再生ホログラムHLの斜め上方に位置している場合に、その照明光源からの照明光(外光)SLが所定の入射角θで白色再生ホログラムHLに入射する配置で、図13(a1)に示すように、正面方向の観察者Eに所定の再生像(上記の例では、青色の地球像)が観察可能に再生する。
【0062】
この図13(a2)の状態から照明光源と観察者Eの位置を保ったまま、図12に示すように、外光SLを含む入射面に垂直な軸X−X’の周りで表示体1を図13(b2)に示すように若干上向きに回転させると、最も格子間隙の大きな回折格子61からの回折光が元の正面方向(図13(a2))に回折し、観察者Eに入射して、文字“A”の内側領域41が相対的に明るく、文字“B”の内側領域42と文字“A”と“B”の外側領域43は相対的に暗く見え、図13(b1)に示すように、表示体1は文字“A”のみが明るい文字として観察される。なお、白色再生ホログラムHLの配置領域は中間階調領域として観察される。
【0063】
図13(a2)の状態から照明光源と観察者Eの位置を保ったまま、軸X−X’の周りで表示体1を図13(c2)に示すように若干下向きに回転させると、今度は、中間の格子間隙の回折格子62からの回折光が元の正面方向(図13(a2))に回折し、観察者Eに入射して、文字“B”の内側領域42が相対的に明るく、文字“A”の内側領域41と文字“A”と“B”の外側領域43は相対的に暗く見え、図13(c1)に示すように、表示体1は文字“B”のみが明るい文字として観察される。この場合も、白色再生ホログラムHLの配置領域は中間階調領域として観察される。
【0064】
図13(c2)の状態から軸X−X’の周りで表示体1を図13(d2)に示すようにさらに下向きに回転させると、今度は、最も格子間隙の小さな回折格子63からの回折光が元の正面方向(図13(a2))に回折し、観察者Eに入射して、文字“A”と“B”
の外側領域43が相対的に明るく、文字“A”の内側領域41と文字“B”の内側領域42は相対的に暗く見えるぽうになり、図13(d1)に示すように、表示体1は文字“A”と“B”が暗い文字として観察される。この場合も、白色再生ホログラムHLの配置領域は中間階調領域として観察される。
【0065】
図12の実施例の場合は、以上のように、まず、観察者Eは表示体1から白色再生ホログラムHLの再生像である青色の地球像が見える角度位置に表示体1を位置するように調整して、その後に上記のように、表示体1を外光SLを含む入射面に垂直な軸X−X’の周りで上向き、下向きに若干回転させることで、3つの回折格子61、62、63のパターンが各々白黒が反転して見え、全体として見た場合に各回転位置で異なったパターンに切り換わって見えることになる。
【0066】
ところで、本発明による回折構造表示体には、ホログラム(CGH)あるいは回折格子14、24、34、61、62、63を配置した表示パターン領域だけでなく、別の回折格子からなる表示領域や別のレリーフホログラムからなる表示領域を表示体1の周囲に密にあるいは離して配置することで、複雑で意匠効果のより高い表示体を持つカードを構成するようにしてもよい。
【0067】
なお、以上の説明において、「回折、散乱」のように、回折と散乱を並列して用いたのは、回折格子、ホログラムの干渉縞、光散乱能異方性散乱体に特定方向から入射した光が特定の方向に向くのは、回折現象に基づくと考えた方が良い場合と、散乱現象に基づくと考えた方が良い場合との両方が有り得るので、並列して用いている。
【0068】
以上、本発明の回折構造表示体の原理と実施例を説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によると、表示体から白色再生ホログラムの再生像が見える角度位置に表示体を位置するように調整することで、観察者自身を確実に表示体の正面に位置させることができる。その後に観察者が表示面の法線又は所定方向から入射する照明光の含む入射面に垂直な軸の周りで表示体を回転することで、複数のパターン領域各々が白黒反転して見え、全体として見た場合に各回転位置で異なったパターンに切り換わって見え、意匠性、装飾性、視覚効果の高いものとなる。
【符号の説明】
【0070】
f…焦点距離
L…正レンズ
F…前側焦点
H…ホログラム面
P…点光源
S…等位相面
B…等位相線(干渉縞、凸部又は凹部)
O…原画像面の中心
SL…照明光(外光)
HL…白色再生ホログラム
10…カード
11、21、31…原画像面
12、22、32…原画像
13、23、33…フーリエ変換像
14、24…ホログラム(CGH)、ブレーズド回折格子
20a…文字領域
20b…文字領域を囲む領域
34…ホログラム(CGH)、ブレーズド化されていない回折格子
41、42…文字の内側領域
43…文字の外側領域
51…レーザー光源
52…レーザー光
53…面
53a…右の区域
53b…左の区域
53c…奥側の区域
54a、54b、54c…回折光
61…最も格子間隙の大きな回折格子
62…中間の格子間隙の回折格子
63…最も格子間隙の小さな回折格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示体の表示面に白色再生ホログラムとそれぞれ異なる回折構造の複数のパターン領域とが並列配置され、前記白色再生ホログラムは前記表示面に対して所定方向から入射する照明光によって前記表示面に対して正面方向から観察可能な再生像を再生するものであり、前記複数のパターン領域各々は、前記表示面の法線又は前記所定方向から入射する照明光の含む入射面に垂直な軸の周りで回転したときに、それぞれの回折構造に依存する特定の回転角度のみで、前記白色再生ホログラムからの再生像が観察可能な位置へ前記照明光を回折、散乱するものであることを特徴とする回折構造表示体。
【請求項2】
前記白色再生ホログラムは、レインボー・ホログラム又は水平方向にのみ視差を持つ計算機ホログラムからなることを特徴とする請求項1記載の回折構造表示体。
【請求項3】
前記複数のパターン領域各々は、前記表示面の法線の周りで回転したときに、それぞれの回折構造に依存する特定の回転角度のみで、前記白色再生ホログラムからの再生像が観察可能な位置へ前記照明光を回折、散乱するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の回折構造表示体。
【請求項4】
前記複数のパターン領域の1つのパターン領域の回折構造は、画像面上の中心を通る特定方向の中心から一方の方向の外れた位置に第1の画像が配置されてなる原画像のフーリエ変換像の位相情報を位相データを3値以上の多値化をして深さとして記録したホログラムからなり、前記複数のパターン領域の別のパターン領域の回折構造は、画像面上の中心を通る前記特定方向に直交する方向の中心から一方の方向の外れた位置に第2の画像が配置されてなる原画像のフーリエ変換像の位相情報を位相データを3値以上の多値化をして深さとして記録したホログラムからなることを特徴とする請求項3記載の回折構造表示体。
【請求項5】
前記複数のパターン領域の1つのパターン領域の回折構造は、前記表示面に垂直に入射する光を画像面上の中心を通る特定方向へ回折、散乱する回折格子又は光散乱能異方性散乱体からなり、前記複数のパターン領域の別のパターン領域の回折構造は、前記表示面に垂直に入射する光を前記特定方向と直交する方向へ回折、散乱する回折格子又は光散乱能異方性散乱体からなることを特徴とする請求項3記載の回折構造表示体。
【請求項6】
前記複数のパターン領域各々は、前記所定方向から入射する照明光の含む入射面に垂直な軸の周りで回転したときに、それぞれの回折構造に依存する特定の回転角度のみで、前記白色再生ホログラムからの再生像が観察可能な位置へ前記照明光を回折、散乱するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の回折構造表示体。
【請求項7】
前記複数のパターン領域の1つのパターン領域の回折構造は、前記軸に平行な方向に伸びる格子からなる特定の格子間隔の第1回折格子からなり、前記複数のパターン領域の別のパターン領域の回折構造は、前記軸に平行な方向に伸びる格子からなる前記第1回折格子と異なる格子間隔の第2回折格子からなることを特徴とする請求項6記載の回折構造表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−123267(P2011−123267A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280430(P2009−280430)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】