説明

回生用機器の冷却構造

【課題】空調装置からの冷風を蓄電デバイスなどの回生用機器に供給するための専用のファンが不要である、回生用機器の冷却構造を提供する。
【解決手段】エアコンディショナ10の送風ファン32が駆動されると、冷風が送風ダクト34を送風口33に向けて流れ、送風口33から車室5内の前部に冷風が供給される。キャパシタ12およびインバータユニット20を収容するハウジング11には、取込口23および放出口25が形成されている。取込口23には、エアコンディショナ10の送風ダクト34から分岐した分岐ダクト39が接続されている。エアコンディショナ10の送風口33が車室5内の前部に臨み、キャパシタ12およびインバータユニット20が車室5内の前部に配置されているので、送風ファン32と送風口33との間の送風ダクト34から分岐する分岐ダクト39が短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッドカーなどの車両に適用され、蓄電デバイスなどの回生用機器を冷却するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護などの観点から、電動機を駆動源とする電気自動車や電動機および内燃機関の両方を駆動源とするハイブリッドカーに関心が高まっている。
【0003】
電気自動車やハイブリッドカーなどの車両では、減速時に運動エネルギーが電力に回生されて、その電力でキャパシタまたは二次電池などの蓄電デバイスが充電される。この充電時には、蓄電デバイスが発熱する。発熱によって蓄電デバイスが高温になると、蓄電デバイスの性能および寿命の低下を招く。そのため、蓄電デバイスを冷却するための構成が必要となる。
【0004】
たとえば、ハイブリッドカーの二次電池を冷却するための構造として、二次電池が収容されたケースを運転席と助手席との間に配置し、また、空調装置からの冷風を運転席および助手席の後側に送るための冷風ダクトを設けて、ケースに接続された排気ダクトに介在されているファンを作動させて、冷風ダクトから放出される冷風によって冷却された車室内の空気をケースに形成された吸気口からケース内に吸い込むようにした構造が提案されている。
【0005】
また、電気自動車の車室下部の後方寄りの位置に配置されたバッテリ収容室内のバッテリを冷却するための構造として、バッテリ収容室に接続された空気ダクトに空調装置からの空気を取り入れる空気取入れ口と外気を取り入れる外気取入れ口とを形成し、空気取入れ口と外気取入れ口とを選択的に開閉するダンパを設けて、バッテリ収容室に設けられたファンを作動させて、バッテリ収容室内に空調装置からの空気または外気を選択的に取り入れるようにした構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−254607号公報
【特許文献2】特開平5−262144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いずれの提案に係る構成においても、二次電池(バッテリ)に冷却用の空気を取り込むための専用のファンが備えられている。そのため、二次電池を含むシステムの小型化が困難であり、また、コストが高くついてしまう。
【0008】
本発明の目的は、空調装置からの冷風を蓄電デバイスなどの回生用機器に供給するための専用のファンが不要である、回生用機器の冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係る回生用機器の冷却構造は、車室内の前部に臨む送風口、前記送風口に向けて冷風を送風するための送風ファンおよび前記送風ファンから前記送風口に向かう冷風が流れる送風通路を有する空調装置と、ハウジング内に収容され、少なくとも回生された電力の蓄積または利用のために使用される回生用機器とを備える車両に適用され、前記回生用機器を冷却するための構造であって、前記回生用機器は、前記車室内の前部に配置され、前記ハウジングには、空気を取り込むための取込口および空気を放出するための放出口が形成されており、前記送風通路から分岐して形成され、前記取込口に接続された分岐通路と、前記分岐通路を流れる冷風の流量を調節する流量調節弁とを含む。
【0010】
車両には、車室内の前部に冷風を供給するための空調装置と、少なくとも回生された電力の蓄積または利用のために使用される回生用機器とが備えられている。回生された電力の蓄積のために使用される回生用機器としては、キャパシタまたは二次電池などの蓄電デバイス、回生された交流電力を変換して得られる直流電力を変圧するコンバータを例示することができる。回生された電力の利用のために使用される回生用機器としては、蓄電デバイスからの直流電力を交流電力に変換するインバータを例示することができる。
【0011】
空調装置は、送風口、送風ファンおよび送風通路を備えている。空調装置の送風ファンが駆動されると、冷風が送風通路を送風口に向けて流れ、送風口から車室内の前部に冷風が供給される。
【0012】
回生用機器は、ハウジング内に収容されている。ハウジングには、空気を取り込むための取込口および空気を放出するための放出口が形成されている。
【0013】
そして、取込口には、空調装置の送風通路から分岐した分岐通路が接続されている。また、分岐通路を流れる冷風の流量を調節する流量調節弁が設けられている。流量調節弁を開くことにより、送風通路から分岐通路に冷風を流すことができる。
【0014】
空調装置の送風口が車室内の前部に臨み、回生用機器が車室内の前部に配置されているので、送風ファンと送風口との間の送風通路から分岐する分岐通路が短い。そのため、送風ファンのみの働きにより、分岐通路を流れる冷風の流量を確保することができ、分岐通路からハウジング内に冷風を十分な流量で供給することができる。その結果、ハウジング内の回生用機器を冷風で良好に冷却することができる。
【0015】
よって、空調装置からの冷風を回生用機器に供給するための専用のファンが不要である。言い換えれば、専用のファンを設けることなく、空調装置からの冷風を回生用機器に供給することができる。専用のファンが不要であるので、空調装置からの冷風を回生用機器に供給するための構成の小型化およびコストの低減を図ることができる。
【0016】
ハウジング内の回生用機器に冷風をむらなく供給するために、ハウジング内に、冷風の流れを均一化するための整流板が設けられてもよい。
【0017】
また、回生用機器の温度を直接的または間接的に検出するための温度検出手段(温度センサ)が設けられて、この温度検出手段によって検出される温度に基づいて、流量調節弁の開度が制御されてもよい。
【0018】
これにより、回生用機器の温度に応じた流量の冷風を分岐通路に流すことができる。その結果、回生用機器が異常高温となることを良好に防止できる。また、回生用機器が比較的低温のときに、分岐通路に大流量の冷風が流れることを防止でき、送風口から車室内に供給される冷風の流量を確保することができる。
【0019】
さらに、送風口から車室内に供給される冷風の流量(風量)を設定する風量設定手段が設けられる場合には、温度検出手段によって検出される温度および風量変更手段によって設定される風量に基づいて、送風ファンの回転数が制御されてもよい。
【0020】
これにより、車室内に供給される冷風の流量と回生用機器に供給される冷風の流量とのバランスを保つことができ、車室内の良好な冷却と回生用機器の良好な冷却とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、専用のファンを設けることなく、空調装置からの冷風を回生用機器に供給することができ、回生用機器の冷却を達成することができる。また、専用のファンが不要であるので、小型化およびコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る回生用機器の冷却構造が適用された車両の図解的な平面図である。
【図2】図2は、回生ユニットおよびエアコンディショナの構成を図解的に示す断面図である。
【図3】図3は、制御部による制御の内容の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る回生用機器の冷却構造が適用された車両の図解的な平面図である。
【0025】
車両1は、エンジン(図示せず)およびモータジェネレータ2を搭載するハイブリッドカーである。車両1の前部には、エンジンルーム3が設けられており、エンジンおよびモータジェネレータ2は、エンジンルーム3内に収容されている。
【0026】
エンジンは、たとえば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンであり、車両1の走行に必要な駆動力を発生する。
【0027】
モータジェネレータ2は、車両1の走行に必要な駆動力を発生するモータとして機能するとともに、車両1の減速時などに車輪4から伝達される運動エネルギーを電力に回生する発電機(ジェネレータ)として機能する。
【0028】
車両1におけるエンジンルーム3の後方には、車室5が設けられている。車室5内の前部には、運転席6および助手席7が車幅方向(左右方向)に並べて配置されている。また、車室5内の前部には、運転席6および助手席7の前方かつ車幅方向の中央部に、回生ユニット8が配置されている。回生ユニット8は、モータジェネレータ2と電気的に接続されている。車室5内にはさらに、運転席6および助手席7の後方に、後部座席9が配置されている。
【0029】
車両1には、エアコンディショナ(A/C)10が装備されている。エアコンディショナ10により、車室5内に冷風を供給することができ、その冷風により、車室5内の気温を調整することができる。また、車両1では、エアコンディショナ10からの冷風を回生ユニット8に供給することができ、その冷風により、回生ユニット8を冷却することができるようになっている。
【0030】
図2は、回生ユニットおよびエアコンディショナの構成を図解的に示す断面図である。
【0031】
回生ユニット8は、中空の直方体形状のハウジング11を備えている。
【0032】
ハウジング11内には、モータジェネレータ2で回生された電力を蓄えるためのキャパシタ12が収容されている。キャパシタ12は、車両1の上下方向と直交する方向(たとえば、前後方向)に並べられた複数のキャパシタセル13を備えている。複数のキャパシタセル13は、ハウジング11の上壁15および下壁16からそれぞれ間隔を空けて設けられた上挟持板17および下挟持板18に挟持されている。上挟持板17および下挟持板18には、各キャパシタセル13間と対向する位置に、キャパシタセル13に沿う方向に長く延びるスリット19が形成されている。
【0033】
また、ハウジング11内には、下挟持板18の下方のスペースに、キャパシタ12に蓄えられた直流電力を交流電力に変換するインバータ回路などを内蔵したインバータユニット20が収容されている。インバータユニット20の上部には、インバータ回路などで発生する熱を放散するためのヒートシンク21が設けられている。
【0034】
ハウジング11の側壁(たとえば、前壁)22の上端部には、空気(具体的には、エアコンディショナ10からの冷風)をハウジング11内に取り込むための取込口23が形成されている。取込口23は、上挟持板17の上方のスペースに臨んでいる。一方、ハウジング11の側壁22と対向する側壁24の下端部には、ハウジング11内から空気を放出するための放出口25が形成されている。
【0035】
また、ハウジング11内における上挟持板17の上方のスペースには、多数の孔を有する整流板26が設けられている。整流板26は、ハウジング11の側壁22側の端部が取込口23よりも下方に位置し、ハウジング11の上壁15との間隔が側壁24側ほど狭くなるように傾斜して配置されている。
【0036】
エアコンディショナ10は、エバポレータ31、送風ファン32、送風口33および送風ダクト34を備えている。
【0037】
送風ファン32は、たとえば、シロッコファンからなる。
【0038】
送風口33は、車室5内の最前部(運転席6および助手席7の前方)に配置されるインストルメントパネル(ダッシュボード)に設けられている。
【0039】
送風ダクト34は、送風ファン32から送風口33に向かって延び、送風口33に接続されている。送風ファン32が駆動されると、送風ダクト34に向けて流れる送風が形成される。この送風は、エバポレータ31を通過する際に冷却されることにより冷風となって、送風ダクト34内を送風口33に向けて流れる。
【0040】
送風ダクト34の途中部には、分岐口35が形成されている。
【0041】
分岐口35は、流量調節弁36によって開閉されるようになっている。具体的には、流量調節弁36は、弁体37および開閉機構38とを備えている。弁体37は、分岐口35を閉塞可能なサイズに形成されている。そして、弁体37は、開閉機構38により、分岐口35を閉塞する全閉位置と分岐口35を大きく開放する全開位置との間で変位される。また、送風ダクト34の断面形状および弁体37の形状により、弁体37が全開位置に位置する状態において、送風ダクト34が弁体37によって閉塞される。
【0042】
分岐口35の近傍には、分岐ダクト39の一端が配置されている。分岐ダクト39は、回生ユニット8のハウジング11に向けて延び、その他端がハウジング11の取込口23に接続されている。
【0043】
また、車両1には、マイクロコンピュータからなる制御部41が備えられている。
【0044】
制御部41には、ヒートシンク21の温度を検出するための温度センサ42が電気的に接続されており、温度センサ42の検出信号が入力される。
【0045】
また、エアコンディショナ10は、送風口33から車室5内に供給される冷風の流量(風量)を設定する風量スイッチ43を備えており、制御部41には、その風量スイッチ43からの信号が入力される。風量スイッチ43は、車室5内のインストルメントパネルに設けられており、手動によって操作することができる。風量スイッチ43の手動操作により、たとえば、送風口33から車室5内への風量を1速〜4速の4段階で設定することができる。
【0046】
そして、制御部41には、送風ファン32および流量調節弁36の開閉機構38が制御対象として接続されている。
【0047】
制御部41は、温度センサ42および風量スイッチ43から入力される信号に基づいて、送風ファン32および開閉機構38を制御する。
【0048】
図3は、制御部による制御の内容の一例を示す表である。
【0049】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が30℃未満である場合には、弁体37が全閉位置に位置したままの状態が維持される。そして、風量スイッチ43によって設定された風量(以下「設定風量」という。)が1速以上である場合には、制御部41により、送風ファン32が設定風量に応じた回転数で回転するように制御される。
【0050】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が30℃以上40℃未満であり、設定風量が1速以上である場合には、制御部41により、送風ファン32が設定風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、全閉位置に対する弁体37の角度が10°となるように開閉機構38が制御される。
【0051】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が30℃以上40℃未満であり、設定風量が零である場合(風量スイッチ43によってエアコンディショナ10が停止されている場合)には、制御部41により、送風ファン32が1速の風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、弁体37が全開位置に位置するように開閉機構38が制御される。
【0052】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が40℃以上50℃未満であり、設定風量が1速以上である場合には、制御部41により、送風ファン32が設定風量から1速アップさせた風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、全閉位置に対する弁体37の角度が20°となるように開閉機構38が制御される。たとえば、設定風量が3速であった場合、送風ファン32が4速の風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、弁体37の全閉位置に対する角度が20°となるように開閉機構38が制御される。
【0053】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が40℃以上50℃未満であり、設定風量が零である場合には、制御部41により、送風ファン32が2速の風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、弁体37が全開位置に位置するように開閉機構38が制御される。
【0054】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が50℃以上60℃未満であり、設定風量が1速以上である場合には、制御部41により、送風ファン32が設定風量から2速アップさせた風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、全閉位置に対する弁体37の角度が30°となるように開閉機構38が制御される。たとえば、設定風量が2速であった場合、送風ファン32が4速の風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、弁体37の全閉位置に対する角度が30°となるように開閉機構38が制御される。
【0055】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が50℃以上60℃未満であり、設定風量が零である場合には、制御部41により、送風ファン32が3速の風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、弁体37が全開位置に位置するように開閉機構38が制御される。
【0056】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が60℃以上であり、設定風量が1速以上である場合には、制御部41により、送風ファン32が設定風量から3速アップさせた風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、全閉位置に対する弁体37の角度が40°となるように開閉機構38が制御される。たとえば、設定風量が3速であった場合、送風ファン32が6速の風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、弁体37の全閉位置に対する角度が40°となるように開閉機構38が制御される。
【0057】
なお、風量スイッチ43から設定可能な風量は、1速〜4速であるが、送風ファン32の目標回転数は、1速〜7速の7段階の風量に応じた回転数が用意されている。
【0058】
温度センサ42によって検出されるヒートシンク21の温度が60℃以上であり、設定風量が零である場合には、制御部41により、送風ファン32が4速の風量に応じた回転数で回転するように制御されるとともに、弁体37が全開位置に位置するように開閉機構38が制御される。
【0059】
弁体37の全閉位置に対する角度が10〜40°である場合、送風ダクト34を送風ファン32から送風口33に向けて流れる冷風の一部は、分岐口35を通り、分岐ダクト39に流入する。このとき、弁体37の全閉位置に対する角度が大きいほど、分岐ダクト39に流入する冷風の流量が増す。また、弁体37が全開位置に位置する場合、送風ダクト34を送風ファン32から送風口33に向けて流れる冷風はすべて、分岐口35を通り、分岐ダクト39に流入する。
【0060】
分岐ダクト39に流入する冷風は、分岐ダクト39を流通し、回生ユニット8のハウジング11の取込口23を介して、ハウジング11内に流入する。ハウジング11内に整流板26が設けられていることにより、ハウジング11内に流入した冷風は、上挟持板17の上方のスペースからその下方にほぼ均一に分散して流れる。そして、冷風は、上挟持板17のスリット19を通して、キャパシタセル13の間をキャパシタセル13の熱を奪いながら流れ、下挟持板18のスリット19を通して、下挟持板18の下方のスペースに流入する。さらに、冷風は、下挟持板18の下方のスペースをヒートシンク21の熱を奪いながら流れ、放出口25からハウジング11外に放出される。その結果、キャパシタ12(キャパシタセル13)およびインバータユニット20(ヒートシンク21)が冷却される。
【0061】
弁体37の全閉位置に対する角度が大きいほど、送風ファン32が設定風量よりも多い風量に応じた回転数で回転するように制御される。これにより、弁体37が大きく開かれて、送風ダクト34から分岐ダクト39に流れる冷風の流量が増えても、送風ダクト34から送風口33を介して車室5内に供給される冷風の流量が低下するのを抑制することができる。その結果、車室5内に供給される冷風の流量とハウジング11内に供給される冷風の流量とのバランスを保つことができ、車室5内の良好な冷却とキャパシタ12およびヒートシンク21の良好な冷却とを両立させることができる。
【0062】
また、設定風量が零であり、ヒートシンク21の温度が30℃以上である場合には、弁体37が全開位置にされるので、送風ファン32が作動しても、送風口33から車室5内に冷風が供給されない。よって、車室5内の乗員に送風ファン32の作動に気づかれることなく、キャパシタ12およびヒートシンク21を冷却することができる。
【0063】
以上のように、車両1には、車室5内の前部に冷風を供給するためのエアコンディショナ10と、少なくとも回生された電力を蓄積するために使用されるキャパシタ12およびその電力の利用のために使用されるインバータユニット20とが備えられている。
【0064】
エアコンディショナ10は、送風ファン32、送風口33および送風ダクト34を備えている。エアコンディショナ10の送風ファン32が駆動されると、冷風が送風ダクト34を送風口33に向けて流れ、送風口33から車室5内の前部に冷風が供給される。
【0065】
キャパシタ12およびインバータユニット20は、ハウジング11内に収容されている。ハウジング11には、空気を取り込むための取込口23および空気を放出するための放出口25が形成されている。
【0066】
そして、取込口23には、エアコンディショナ10の送風ダクト34から分岐した分岐ダクト39が接続されている。また、分岐ダクト39を流れる冷風の流量を調節する流量調節弁36が設けられている。流量調節弁36を開くことにより、送風ダクト34から分岐ダクト39に冷風を流すことができる。
【0067】
エアコンディショナ10の送風口33が車室5内の前部に臨み、キャパシタ12およびインバータユニット20が車室5内の前部に配置されているので、送風ファン32と送風口33との間の送風ダクト34から分岐する分岐ダクト39が短い。そのため、送風ファン32のみの働きにより、分岐ダクト39を流れる冷風の流量を確保することができ、分岐ダクト39からハウジング11内に冷風を十分な流量で供給することができる。その結果、ハウジング11内のキャパシタ12およびインバータユニット20を冷風で良好に冷却することができる。
【0068】
よって、エアコンディショナ10からの冷風をキャパシタ12およびインバータユニット20に供給するための専用のファンが不要である。言い換えれば、専用のファンを設けることなく、エアコンディショナ10からの冷風をキャパシタ12およびインバータユニット20に供給することができる。専用のファンが不要であるので、回生ユニット8の小型化およびコストの低減を図ることができる。
【0069】
また、ハウジング11内に整流板26が設けられているので、ハウジング11内に流入した冷風は、上挟持板17の上方のスペースからその下方にほぼ均一に分散して流れる。その結果、ハウジング11内のキャパシタ12およびインバータユニット20に冷風をむらなく供給することができ、キャパシタ12およびインバータユニット20をむらなく冷却することができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0071】
たとえば、回生用機器として、キャパシタ12およびインバータユニット20を例示したが、この他にも、回生された交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ、その変換後の直流電力を変圧するDC/DCコンバータなどを例示することができる。
【0072】
また、車両1は、ハイブリッドカーに限らず、モータを駆動源とする電気自動車、エンジンを駆動源とする自動車であってもよい。
【0073】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 車両
5 車室
9 エアコンディショナ(空調装置)
11 ハウジング
12 キャパシタ(回生用機器)
20 インバータユニット(回生用機器)
23 取込口
25 放出口
32 送風ファン
33 送風口
34 送風ダクト(送風通路)
36 流量調節弁
39 分岐ダクト(分岐通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の前部に臨む送風口、前記送風口に向けて冷風を送風するための送風ファンおよび前記送風ファンから前記送風口に向かう冷風が流れる送風通路を有する空調装置と、ハウジング内に収容され、少なくとも回生された電力の蓄積または利用のために使用される回生用機器とを備える車両に適用され、前記回生用機器を冷却するための構造であって、
前記回生用機器は、前記車室内の前部に配置され、
前記ハウジングには、空気を取り込むための取込口および空気を放出するための放出口が形成されており、
前記送風通路から分岐して形成され、前記取込口に接続された分岐通路と、
前記分岐通路を流れる冷風の流量を調節する流量調節弁とを含む、回生用機器の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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