説明

回線エミュレーション装置

【課題】
通信経路の冗長構成を有する回線エミュレーション装置において保守作業や障害発生による経路変更に伴い通信が不能になる時間を短縮する。
【解決手段】
通信に使用する物理ポートの切り替え時、接続している他の装置に対して自身のMACアドレスの変更を知らせるためのMACアドレス学習テーブル更新用フレームを発行する。前記更新用フレームを受信した装置はフレーム内の送信元MACアドレスの情報を元に学習テーブルを更新し、前記更新用フレームはユーザフレームとしては扱わずに直ちにフレームを破棄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非イーサネット(登録商標、以下同じ)回線をイーサネット網に収容する回線エミュレーション装置に関するものであり、装置固有の物理アドレスであるMAC(Media Access Control)アドレスを元にフレーム転送を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATM(Asynchronous Transfer Mode)やTDM(Time Division Multiplexing)に代表される拠点間通信用の専用線サービスを経済的なイーサネット通信網に収容するための技術として回線エミュレーションが広く知られている。
【0003】
回線エミュレーションとは異なる通信方式の回線を擬似的に接続する方式である(例えば非特許文献1)。図3に回線エミュレーションを利用したネットワークシステム構成例を示す。図3に示すネットワークシステム構成例では、イーサネットネットワーク301、回線エミュレーション装置302、303、非イーサネットネットワーク伝送装置304、305、非イーサネットネットワーク端末306、307で構成されている。回線エミュレーション装置302、303によりネットワーク間の通信フレームの相互変換を行い、イーサネットネットワーク301を利用して非イーサネットネットワークを収容することが出来る。
【0004】
イーサネットネットワークを利用して拠点間通信用の専用線サービスを行うために、イーサネットネットワーク上にVLAN(Virtual Local Area Network)を設定し、ブロードキャストドメインの分割を行うことで拠点間のPoint to Point通信を実現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】メトロイーサネットフォーラム(Metro Ethernet Forum)著、「メトロイーサネットネットワーク上のPDHエミュレーションのインプルメンテーショングリーメント(Implementation Agreement for the Emulation of PDH Circuit over Metro Ethernet Networks)」、(米国)、2004年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2は回線エミュレーション装置とイーサネットネットワークを使用したネットワーク構成例である。図2において回線エミュレーション装置201、202、203、204はそれぞれイーサネットネットワークに接続する物理ポートA1、B1、A2、B2、A3、B3、A4、B4と非イーサネットネットワークに接続する物理ポートC1、C2、C3、C4を有している。非イーサネットネットワークに接続する物理ポートには非イーサネットネットワーク端末211、212、213、214が接続され、イーサネットネットワークに接続する物理ポートにはレイヤ2スイッチ221、222、223、224が接続されている。イーサネットネットワークを使用した専用線サービスでは信頼度の高い通信が要求されることから、図のように通信経路や物理ポートの冗長化(二重化)構成を取る場合がある。図では回線エミュレーション装置のイーサネットネットワーク接続用ポートA1とB1、A2とB2、A3とB3、A4とB4が二重化されている。二重化された物理ポートは一方が運用系、もう一方が予備系として動作する。予備系のポートは閉塞されておりフレームの送受信は運用系のみで行う。通信経路や運用系物理ポートおよびポートが属するハードウェアの障害発生時に、予備系物理ポートへの切り替えを自動的に行い通信を維持する。また保守作業などにより物理ポートの切り替えが必要な場合は、手動での切り替えも可能である。物理ポートA1、B1、A2、B2、A3、B3、A4、B4はそれぞれ独立したMACアドレスを保持しており、ここでは物理ポート名と同名のMACアドレスが設定されているとする(例:物理ポートA1のMACアドレスはA1)。レイヤ2スイッチ221、222、223、224はループ状に接続することで冗長化構成を取っており、通信経路やレイヤ2スイッチに障害が発生した際、障害のない経路に切り替えて通信の維持を行う。また論理的ループを防止するためにIEEE802.1dで標準化されているスパニングツリープロトコル(以下、STP)を用いている。STPでは特定のポートをブロックすることにより論理的ループを防止する。ブロックされたポートはフレームの送受信は行わない。ここではSTPによりレイヤ2スイッチ222のポートP22がブロックされているとする。
【0007】
回線エミュレーション装置間にはPoint to Point通信を行うためのVLANが設定されている。接続装置ごとに個別のVLANを設定することでブロードキャストドメインの分割を行う。VLANはVLANIDによって管理される。VLANIDごとにレイヤ2スイッチの所属ポートを設定し、ブロードキャストフレームはこの所属ポート内にのみ流れる。回線エミュレーション装置201と202の間にはVLANID232(所属ポート:P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P34、P41、P42、P44)が設定され、回線エミュレーション装置201と203の間にはVLANID233(所属ポート:P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P33、P41、P42、P45)が設定され、回線エミュレーション装置201と204の間にはVLANID234(所属ポート:P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P35、P41、P42、P43)が設定されている。
【0008】
VLANの適用によりブロードキャストフレームを用いても回線エミュレーション装置間のPoint to Point通信が可能であるが、例えば回線エミュレーション装置201から202への通信において、前述のようにネットワークに冗長化構成を持たせているため、本来の通信に必要な信号経路(物理ポートA1から出力され、レイヤ2スイッチのポートP11、P13、P41、P44を介して物理ポートA2に到達する経路)以外に、VLANID232のその他の所属ポートP12、P21、P23、P31、P32、P34、P42(P22はSTPによるブロッキングポートのため使用しない)に対してもフレームが流れる。このフレームは冗長経路を流れるフレームであり、通常の通信には直接寄与しない。
【0009】
回線エミュレーション装置201から204への通信においては、通信に必要な信号経路(物理ポートA1から出力され、レイヤ2スイッチのポートP11、P13、P41、P42、P32、P35を介して物理ポートB4に到達する経路)と同じ経路上に前述の回線エミュレーション装置201から202への通信によって生じる冗長経路を流れるフレーム(レイヤ2スイッチのポートP42からP32へ流れるフレーム)が存在する。このようにブロードキャストフレームを使うことにより冗長経路を流れる不要なトラフィックは本来の通信に使用するための帯域を圧迫する原因となる。
【0010】
そこで前述のような冗長経路を流れる不要トラフィックの削減のために回線エミュレーション装置にMACアドレス学習機能を加え、ユニキャストでフレームの送受信を行う。図4は回線エミュレーション装置201内のMACアドレス学習テーブルのデータベースを表す図である。他の装置より受信したフレームの送信元MACアドレスとVLANIDの対応関係を装置内のMACアドレス学習テーブルに記憶している。本データベースを用いてユニキャスト通信を行う際の宛先MACアドレスの指定を行う。MACアドレスが未学習時は宛先MACアドレスにブロードキャストアドレスを付与してブロードキャストでフレーム送信を行う。また、学習テーブルにはエージングタイマが設定されており、収容VLANとの無通信時間をカウントし、エージングタイマに設定した時間(例えば300秒)が満了した場合は該当の記憶情報の削除を行う。また収容VLANのエージング時間満了前に別の送信元MACアドレスからのフレームを受信した場合は、後で受信したフレームの送信元MACアドレスで学習テーブルを上書き更新する。
【0011】
上記の構成において、回路エミュレーション装置201、202がMACアドレス学習機能によるユニキャスト通信を行っている状態で、通信経路や物理ポートおよびポートが属するハードウェアの障害などにより回線エミュレーション装置201の使用物理ポートがA1からB1へ切り替わった場合を考える。MACアドレスは物理ポート毎に固有の値を所持しているため物理ポートの変更により回線エミュレーション装置201のMACアドレスがA1からB1へ変更される。このときもう一方の回線エミュレーション装置202にとってはポート切り替え後のMACアドレスB1は未知であるため、ポート切り替え後の回線エミュレーション装置201から送信されたフレームを受信するか、回線エミュレーション装置202内のMACアドレス学習テーブルの記憶情報がエージングタイマの満了によりリセットされ、ブロードキャストでフレーム送信を行うまでは回線エミュレーション装置202は回線エミュレーション装置201の切り替え前の物理ポートA1に対してフレームを送信し続けるため、切り替え後の物理ポートB1にフレームが到達できない。回線エミュレーション装置201が物理ポート切り替え後、回線エミュレーション装置202に対して即座にフレーム送信を行うとは限らないため、最長でエージングタイマが満了するまでの間は回線エミュレーション装置202から回線エミュレーション装置201に対して通信不能な時間が生じ、通信の信頼性が損なわれてしまう。
【0012】
物理ポート切り替え時の通信不能時間を短縮する方法として、非イーサネットネットワーク端末間で診断用の信号を一定間隔で送受信するという方法が考えられる。この方法ならば、回線エミュレーション装置間に常に一定間隔でフレームの送受信が行われることになり、ポートの切り替えが行われた場合でも、比較的短い時間で切り替え先のMACアドレスを学習し、通信不能状態から回復することができる。しかしこの方法の場合、ネットワーク内に常時診断用フレームが転送されるため、その分ユーザ信号用の帯域を圧迫する余分なトラフィックが発生する。
【0013】
そこで、MACアドレス学習機能を使用したユニキャスト通信でイーサネットネットワーク内の余分なトラフィックを抑制しながら、物理ポート切り替え時の通信不能時間を短縮し、かつユーザ通信への影響を少なくすることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
物理アドレス(MACアドレス)学習機能によるユニキャスト通信を行う回線エミュレーション装置において、通信経路や物理ポートおよびポートが属するハードウェアの障害、保守作業などにより通信に使用する物理ポートが切り替えられる場合、ポート変更された装置は収容しているVLANに対し、変更後の物理アドレス(MACアドレス)へ物理アドレステーブル(MACアドレス(学習)テーブル)の更新を促すフレームを送信する。
【0015】
この(学習更新用)フレームを受信した装置は物理アドレステーブルを更新後、ペイロードの解析を行わずに無条件にフレームの廃棄を行う。
【発明の効果】
【0016】
回線エミュレーション装置がMACアドレス学習機能によるユニキャスト通信を行っている状態においても物理ポート切り替え時の通信不能時間を短縮することができ、より信頼度の高い通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】物理ポート切り替え直後の回線エミュレーション装置とイーサネットネットワークの接続を表す図である。
【図2】回線エミュレーション装置とイーサネットネットワークの接続を表す図である。
【図3】回線エミュレーション装置を利用したネットワークシステムの構成例を示す図である。
【図4】回線エミュレーション装置内のMACアドレス学習テーブルのデータベースを表す図である。
【図5】MACアドレス学習更新用フレームのフレームフォーマット例を示す図である。
【図6】MACアドレス学習更新用フレームを送信する側の回線エミュレーション装置の動作を表すフローチャートである。
【図7】MACアドレス学習更新用フレームを受信する側の回線エミュレーション装置の動作を表すフローチャートである。
【図8】回線エミュレーション装置の一実施の形態例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態例を図に従い説明する。
【0019】
図1は回線エミュレーション装置とイーサネットネットワークを使用したネットワーク構成例である。図1において回線エミュレーション装置101、102、103、104はそれぞれイーサネットネットワークに接続するポートA1、B1、A2、B2、A3、B3、A4、B4と非イーサネットネットワークに接続するポートC1、C2、C3、C4を有している。非イーサネットネットワークに接続する物理ポートには非イーサネットネットワーク端末111、112、113、114が接続され、イーサネットネットワークに接続する物理ポートにはレイヤ2スイッチ121、122、123、124が接続されている。イーサネットネットワーク側の物理ポートは二重化され、一方が運用系、もう一方が予備系として動作する。予備系のポートは閉塞されておりフレームの送受信は運用系のみで行う。通信経路や運用系物理ポートおよびポートが属するハードウェアの障害発生時に、予備系物理ポートへの切り替えを自動的に行い通信を継続する。また保守作業などにより物理ポートの切り替えが必要な場合には、手動での切り替えも可能である。物理ポートA1、B1、A2、B2、A3、B3、A4、B4はそれぞれ独立したMACアドレス(物理アドレス)を保持しており、ここでは物理ポート名と同名のMACアドレスが設定されているとする。レイヤ2スイッチ121、122、123、124はループ上に接続することで冗長化構成を取っており通信経路やレイヤ2スイッチに障害が発生した際、障害のない経路に切り替えて通信の維持を行う。また論理的ループを防止するためにSTPを用いている。STPでは特定のポートをブロックすることで論理的ループを防止する。ブロックされたポートはフレームの送受信は行わない。ここではSTPによりレイヤ2スイッチ122のポートP22はブロックされているとする。
【0020】
回線エミュレーション装置間にはPoint to Point通信を行うためのVLANが設定されている。接続装置ごとに個別のVLANを設定することでブロードキャストドメインの分割を行う。VLANはVLANIDによって管理される。VLANIDごとにレイヤ2スイッチの所属ポートを設定し、ブロードキャストフレームはこの所属ポート内にのみ流れる。回線エミュレーション装置101と102の間にはVLANID132(所属ポート:P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P34、P41、P42、P44)が設定され、回線エミュレーション装置101と103の間にはVLANID133(所属ポート:P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P33、P41、P42、P45)が設定され、回線エミュレーション装置101と104の間にはVLANID134(所属ポート:P11、P12、P13、P21、P22、P23、P31、P32、P35、P41、P42、P43)が設定されている。
【0021】
さらに回線エミュレーション装置101、102、103、104は冗長経路を流れる不要トラフィック削減のためにMACアドレス学習機能を有し、ユニキャストでフレームの送受信を行う。他の装置より受信したフレームの送信先MACアドレスとVLANIDの対応関係を装置内のMACアドレス学習テーブルに記憶している。本データベースを用いてユニキャスト通信を行う際の宛先MACアドレスの指定を行う。MACアドレスが未学習時は宛先MACアドレスにブロードキャストアドレスを付与してブロードキャストでフレーム送信を行う。また、学習テーブルにはエージングタイマが設定されており、収容VLANとの無通信時間をカウントし、エージングタイマに設定した時間(例えば300秒)が満了した場合は該当の記憶情報の削除を行う。また収容VLANのエージング時間満了前に別の送信元MACアドレスからのフレームを受信した場合は、後で受信したフレームの送信元MACアドレス優先で学習テーブルを上書き更新する。
【0022】
以上のように説明した図1の構成において、回線エミュレーション装置101、102はそれぞれ物理ポートA1、A2を使用してユニキャスト通信を行っている状態を例に説明する。物理ポートA1およびポートが属するハードウェアの障害が発生したとき、回線エミュレーション装置101は異常を検出し、フレーム送受信に使用する物理ポートをA1からB1へと切り替える。回線エミュレーション装置101側は回線エミュレーション装置102の物理ポートA2のMACアドレスA2を学習テーブル内に記憶しているため、ポートの切り替え後すぐにユニキャストまたはブロードキャストでのフレーム送信が可能だが、回線エミュレーション装置102は回線エミュレーション装置101からのフレームを受信するまでは回線エミュレーション装置101のMACアドレスがA1からB1に変更されたことを認識できない。そこで回線エミュレーション装置101は物理ポートを切り替え後、MACアドレス(物理アドレス)学習テーブル更新用フレーム(更新用フレーム)を生成し、収容しているVLAN宛(VLANID:132、133、134)に対し、それぞれ個別にブロードキャストで送信を行う。更新用フレームの生成は物理ポートの切り替え後、直ちに行っていも良い。また、VLAN宛の更新用フレームは、VLANIDが設定されたパス全てに送信してもよい。本フレームは送信先のMACアドレス学習テーブルのデータベースを更新させる役割を持っている。更新用フレームの1VLANIDあたりの発行回数、送信間隔は1回でもよいし、ネットワーク内での輻輳等によるフレーム廃棄を考慮して複数回としてもよい。また、MACアドレス学習テーブル更新用フレームの送信は物理ポート切り替え後、自動で発行されるが、外部コマンド投入による手動送信も可能である。
【0023】
図5に本実施例のMACアドレス学習テーブル更新用フレームのフレームフォーマットを示す。本フレームは宛先MACアドレス501、送信元MACアドレス502、VLANタグ503、回線エミュレーションフレームヘッダ部504、ペイロード505、FCS(Frame Check Sequence)506で構成される。
【0024】
宛先MACアドレス501はフレーム送信先の回線エミュレーション装置の物理ポートのMACアドレス情報を示している。MACアドレス未学習時やMACアドレス学習更新用フレーム発行時は本フィールドにブロードキャストアドレスを割り当てる。MACアドレス既学習時は宛先MACアドレス501に個別のMACアドレスを指定することで回線エミュレーション装置間でユニキャストでのフレーム送受信を行う。
【0025】
送信元MACアドレス502はフレームの送信元となる回線エミュレーション装置の物理ポートのMACアドレス情報を示している。本実施例における回線エミュレーション装置のMACアドレス学習テーブルにはこのフィールドのMACアドレスとVLANIDとの対応関係を記憶している。MACアドレス学習テーブル更新用フレームでは、この送信元MACアドレス502に切り替え先ポートのMACアドレス情報を記述する。更新用フレームを受信した回線エミュレーション装置はこのフィールドの情報を元にMACアドレス学習テーブルの更新を行う。
【0026】
VLANタグ503はVLANを使用するための情報を示しており、その記述方法はIEEE802.1Qにおいて規定されている。回線エミュレーション装置では接続している装置毎にVLAN設定を行いPoint to Pointでの通信を行う。VLANタグ503内の12ビットのVLANIDは装置内のMACアドレス学習テーブルのデータベースにMACアドレスと対になって記憶され、MACアドレス学習テーブル更新用フレームは装置が収容している全てのVLAN宛に対して発行を行う。
【0027】
回線エミュレーションフレームヘッダ部504は回線エミュレーション装置固有のヘッダ部であり、本フィールドにこのフレームがユーザフレームかMACアドレス学習テーブル更新用フレームかを判別するための情報を含める。2種類のフレームを判別するための情報の記述方法は任意とし、ここでは例えば特定ビットが0か1かで判別を行うとする。判別用の特定ビットが0のフレームはユーザフレームである事を表し、MACアドレス学習テーブル更新後のフレームの廃棄を行わない。通常のフレーム送受信ではこのビットを常時0に設定する。判別用の特定ビットが1のときはそのフレームが物理ポート切り替え時に発行されたMACアドレス学習テーブル更新用フレームであることを表す。保守作業や障害などによる物理ポートの切り替え発生直後に本ビットを1に設定したMACアドレス学習テーブル更新用フレームを生成、切り替え先の物理ポートMACアドレス情報を送信元MACアドレス502に記述し、収容するVLAN宛にそれぞれ個別に送信を行う。このフレームを受信した装置はMACアドレス学習テーブルを切り替え後のMACアドレス情報に更新する。そして、ペイロード504の解析を行うことなく無条件に廃棄を行う。これによりユーザの通信に影響を与えることはない。
【0028】
ペイロード505はユーザ情報部であり、回線エミュレーション装置では非イーサネットネットワークのデータをイーサネットネットワークを利用して伝送するために本フィールドには非イーサネットネットワークのデータがカプセル化されている。MACアドレス学習テーブル更新用フレームは他の装置の学習テーブルを更新させることのみを目的としたフレームであるため、ペイロード505の解析を行わずにフレームの廃棄を行う。そのため、ペイロード505にはどんな情報が入っていてもユーザの通信に影響を与えることはないが、本フィールドには例えば全て0を割り当てるとする。
【0029】
FCS506はフレームの伝送エラーを検出するためのフィールドである。フレーム内の各フィールドから計算したCRC(Cyclic Redundancy Check)値を設定する。受信側と送信側で本フィールドの値が一致しない場合はエラーが発生したと判断し、そのフレームの破棄を行う。
【0030】
MACアドレス学習テーブル更新用フレームを送信する側の回線エミュレーション装置の動作を表すフローチャートを図6に、MACアドレス学習テーブル更新用フレームを受信する側の回線エミュレーション装置の動作を表すフローチャートを図7に示す。
【0031】
図8は回線エミュレーション装置の一実施の形態例を示すブロック図である。このように構成すれば、回線エミュレーション装置の動作が可能である。図8に示すように回線エミュレーション装置はイーサネットネットワークへ接続する物理ポート801、802を備える。これらの物理ポートは前述のように二重化され、一方が運用系、もう一方が予備系として動作する。予備系のポートは閉塞されており、フレームの送受信は運用系のみで行う。物理ポート801、802の状態をポート監視部803で常に監視し、運用系ポートに異常を感知した場合は、即座にポート切り替え部804に情報を伝え、予備系ポートへの切り替えを実行する。また切り替え指示部814を用いて外部信号入力による手動でのポート切り替えも可能である。以下、物理ポート801を運用系ポートとする。
【0032】
イーサネットネットワーク側の物理ポート801がフレームを受信したときの動作を説明する。イーサネットネットワーク側の物理ポート801が受信したフレームはフレーム受信部805へ送信する。フレーム受信部805ではフレーム内のVLANタグ503の情報を読み取り、本フィールドに記載されているVLANIDとVLANテーブル806に記憶されているVLANIDとの照会を行う。照会の結果、収容VLANではないフレームは廃棄し、収容VLANのフレームは送信元MACアドレス・ヘッダ監視部807へ送信する。送信元MACアドレス・ヘッダ監視部807はMACアドレス学習テーブル808を更新する更新制御部の機能も持ち、フレームの送信元MACアドレス502をMACアドレス学習テーブル808と照会し、収容VLANに対して新規であった場合は学習テーブルの更新を行う。さらに送信元MACアドレス・ヘッダ監視部807ではフレーム内の回線エミュレーション装置フレームヘッダ部505を読み取る。本フィールドの情報にて受信したフレームがユーザフレームかMACアドレス学習テーブル更新用フレームか判断を行い、MACアドレス学習テーブル更新用フレームの場合はMACアドレス学習テーブル808の更新後にフレームを廃棄、ユーザフレームの場合はフレーム変換部809へ送信する。フレーム変換部809にてイーサネットフレームのペイロード505から非イーサネットネットワークの信号を取り出し、非イーサネットネットワーク側の物理ポート810から送信する。
【0033】
非イーサネットネットワーク側の物理ポート810が信号を受信したときの動作を説明する。非イーサネットネットワーク側の物理ポートで受信した信号をフレーム変換部809に送信し、ペイロード505に非イーサネットネットワーク信号を収容したイーサネット形式のフレームに変換した後、宛先MACアドレス付与部811へと送信する。宛先MACアドレス付与部811はMACアドレス学習テーブル808から、VLANIDに対応する宛先MACアドレス501を付与する。MACアドレスが未学習の場合にはブロードキャストアドレスを付与する。宛先MACアドレス情報を付与したフレームはフレーム送信部712を経由してイーサネットネットワーク側の物理ポート801から送信する。フレーム送信部812はMACアドレス学習テーブル更新用フレーム生成部813で生成されたMACアドレス学習テーブル更新用フレームの挿入を行う。
【0034】
ここで物理ポート801に障害が発生した場合の動作を説明する。物理ポート801に障害が発生すると、ポート監視部803が物理ポート801の異常を検出し、ポート切り替え部804へ異常発生の情報を送信する。ポート切り替え部804はポート監視部803からの情報より、通信に使用する物理ポートを物理ポート801から物理ポート802へ切り替わる。切り替えに応じてポート切り替え部804はMACアドレス学習テーブル更新用フレーム生成部813へ更新用フレーム生成の指示を行う。MACアドレス学習テーブル更新用フレーム生成部813は、VLANテーブル806が保持しているVLANIDに対して更新用フレームを生成する。フレーム送信部812にて更新用フレームの挿入を行い、切り替え後の物理ポート802からMACアドレス学習テーブル更新用フレームの送信を実行する。ここで、VLANテーブル806が保持している全てのVLANIDに対して更新用フレームを生成する場合、より信頼度の高い通信を行うことができる。
【0035】
以上のように本実施の形態によれば、MACアドレス学習機能によるユニキャスト通信を行っている回線エミュレーション装置の保守作業や障害による物理ポート切り替え時の通信不能時間を短縮し、かつユーザ通信への影響を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0036】
101〜104、201〜204、301、302・・・回線エミュレーション装置
111〜114、211〜214、306、307・・・非イーサネットネットワーク端末
121〜124、221〜224・・・レイヤ2スイッチ
141、241、308・・・伝送路
303・・・イーサネットネットワーク
304、305・・・非イーサネットネットワーク伝送装置
501・・・宛先MACアドレス
502・・・送信元MACアドレス
503・・・VLANタグ
504・・・回線エミュレーションフレームヘッダ部
505・・・ペイロード
506・・・FCS
801、802、A1〜A4、B1〜B4・・・回線エミュレーション装置の物理ポート(イーサネットネットワーク接続側)
803・・・ポート監視部
804・・・ポート切り替え部
805・・・フレーム受信部
806・・・VLANテーブル
807・・・送信元MACアドレス・ヘッダ監視部
808・・・MACアドレス学習テーブル
809・・・フレーム変換部
810、C1〜C4・・・回線エミュレーション装置の物理ポート(非イーサネットネットワーク接続側)
811・・・宛先MACアドレス付与部
812・・・フレーム送信部
813・・・MACアドレス学習テーブル更新用フレーム生成部
814・・・切り替え指示部
P11〜13、P21〜23、P31〜35、P41〜45・・・レイヤ2スイッチの物理ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物理アドレスを持つ第1の物理ポートと、
第2の物理アドレスを持つ第2の物理ポートと、
前記第1の物理ポートと前記第2の物理ポートとを切り替えるポート切り替え部と、
前記ポート切り替え部での切り替えに応じて、切り替え先の物理アドレス情報と識別情報とを含むフレームを生成するフレーム生成部と、
前記フレームを送信するフレーム送信部とを有する回線エミュレーション装置。
【請求項2】
前記フレーム生成部は、前記切り替え先の物理アドレス情報を送信元物理アドレスに、また識別情報をフレームヘッダ部に、各々含めて前記フレームを生成することを特徴とする請求項1に記載の回線エミュレーション装置。
【請求項3】
他の装置の物理アドレスを記憶する物理アドレステーブルと、他の回線エミュレーション装置が生成する前記フレームを受信するときに、前記識別情報に応じて前記物理アドレステーブルを更新する更新制御部とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の回線エミュレーション装置。
【請求項4】
前記フレーム送信部は、前記第1の物理ポートと前記第2の物理ポートとの切り替えに応じて、収容するVLANに対して前記フレームを送信することを特徴とする請求項1に記載の回線エミュレーション装置。
【請求項5】
前記更新制御部は、前記識別情報に応じて、前記フレームが物理アドレステーブルの更新用のフレームであるか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の回線エミュレーション装置。
【請求項6】
前記VLANは、VLANIDが設定され、前記フレーム送信部から前記フレームをブロードキャストで送信されることを特徴とする請求項1に記載の回線エミュレーション装置。
【請求項7】
前記フレームは、前記物理テーブルの更新の後、破棄されることを特徴とする請求項1に記載の回線エミュレーション装置。
【請求項8】
前記フレームは、前記物理テーブルの更新に応じて、ペイロードを解析されずに破棄されることを特徴とする請求項1に記載の回線エミュレーション装置。
【請求項9】
前記フレーム生成部は、前記第1の物理ポートと前記第2の物理ポートとの自動切り替え、または外部からの指示に応じて前記フレームを生成することを特徴とする請求項1に記載の回線エミュレーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate