説明

回路基板ユニット、回路基板ユニットの製造方法、及び電子装置

【課題】パッケージ基板の回路基板に対する実装高さをより大きくすることによりパッケージ基板と回路基板との間の接続信頼性を高めるに当り、所望の実装高さを容易に達成することができる手段を提供する。
【解決手段】熱膨張率が異なる第1基板27と第2基板24とが半田材28により加熱接合されて形成される回路基板ユニットであって、第1基板27と第2基板24との間に配置され、熱膨張性材11と熱硬化性材12から形成されるスペーサ10を備え、熱硬化性材12の硬化温度は前記半田材28の融点よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージが実装された回路基板ユニット、回路基板ユニットの製造方法、及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8には、一般的に半導体チップ21及びパッケージ基板24を含む半導体パッケージが搭載された回路基板27(例えば、マザーボード等)が模式的に示されている。かかる構成におけるパッケージ基板24と回路基板27との間での熱膨張係数差(ΔCTE)については、小さな熱膨張係数を有するガラスセラミック等がパッケージ基板24の材料として使用され、回路基板27には、樹脂等を含む材料が使用される。即ち、回路基板27には「熱膨張係数が比較的大きい材料」が用いられる。この結果、パッケージ基板24と回路基板27との間での熱膨張係数差(ΔCTE)に起因して、パッケージ基板24と回路基板27との熱膨張による寸法変化量の差が大きくなる。この寸法変化量の差による歪により、パッケージ基板24と回路基板27との間の半田接合部28、特に回路基板側における、太鼓状の半田接合部28の括れ部分に応力が集中されクラックが発生し、パッケージ基板24と回路基板27との間での接続信頼性が低下するという問題が生ずる場合がある。
【0003】
また、当該技術分野においては更なる高性能化(多ピン化)が求められており、昨今の設計においては、パッケージ基板、半導体チップ共に、益々大型化の傾向が続いている。かかるパッケージ基板の大型化により、パッケージ基板24と回路基板27との間での熱膨張係数差(ΔCTE)に起因する熱膨張による寸法変化量の差はより一層大きくなる。この結果、パッケージ基板24と回路基板27との間では、上述の原因で接続信頼性の低下がより顕著になってきている。
【0004】
ところで、昨今の環境保護に対する関心の高まりから、電子機器において使用される各種化学物質の規制が強化される傾向が強まっており、パッケージ基板の実装に使用される半田も、鉛フリー半田が使用されるようになっている。この鉛フリー半田は、鉛半田と比較して融点が高く、クリープし難いことが知られている。従って、上述のような状況下においてパッケージ基板24と回路基板27との接合部にかかる歪が増大した際に、鉛フリー半田は鉛半田ほどには歪に十分に追随してクリープすることができない。その結果、鉛フリー半田を使用した場合には、パッケージ基板24と回路基板27との間での接続信頼性が、鉛半田を使用する場合と比較して、より一層低下することが懸念される。
【0005】
そこで、パッケージ基板と回路基板との実装高さを確保するために、スペーサをパッケージ基板と回路基板との間に配置することが提案されている。(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−094002号公報
【特許文献2】特開2006−339491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前述のように、熱膨張性のスペーサをパッケージ基板と回路基板との間に配置する構成においては、リフロー後に常温に戻って半田接合部が冷却固化された際にスペーサが再び収縮してしまい、実装高さを精度よく制御することが困難であるという課題が残っている。
【0008】
本発明は、上記課題を解消すべく創作されたものである。すなわち、本発明は、リフロー後に常温に戻ってもパッケージ基板の回路基板に対する実装高さを維持することによりパッケージ基板と回路基板との間の接続信頼性を高めるに当り、所望の実装高さを容易に確保することができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、熱膨張率が異なる第1基板と第2基板とが半田材により加熱接合されて形成される回路基板ユニットであって、第1基板と第2基板との間に配置され、熱膨張性材と熱硬化性材から形成されるスペーサを備え、熱硬化性材の硬化温度は半田材の融点よりも高い回路基板ユニットによって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るスペーサを第1基板と第2基板との間に配置し、熱膨張率が異なる第1基板と第2基板とを半田材により加熱接合する際に、スペーサ中の熱膨張性材により実装高さが大きくされるとともに、熱硬化性材が半田材の融点よりも高い温度で硬化し、スペーサの働きによる実装高さが維持される。即ち、加熱接合工程の後、半田を冷却固化しても、硬化温度にて所定の寸法変化量まで熱膨張した状態における高さのまま、当該スペーサの形状が維持され、所望の実装高さを精度良く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1つの実施態様に係るパッケージ基板のマザーボード等の回路基板への接合方法において使用されるスペーサの構造を示す模式図である。
【図2】本発明の1つの実施態様に係るパッケージ基板のマザーボード等の回路基板への接合方法における、パッケージ基板と回路基板(搭載ボード)との位置合わせ工程を表す模式図である。
【図3】本発明の1つの実施態様に係るパッケージ基板のマザーボード等の回路基板への接合方法における、半田のリフロー工程を表す模式図である。
【図4】本発明の1つの実施態様に係るパッケージ基板のマザーボード等の回路基板への接合方法における、半田のリフロー工程後にスタンドが膨張するスタンド膨張工程を表す模式図である。
【図5】本発明の1つの実施態様に係るパッケージ基板のマザーボード等の回路基板への接合方法における、スタンドが膨張した状態でスタンドの表面を覆う熱硬化性材料が硬化するスタンド硬化工程を表す模式図である。
【図6】本発明の実施例において作製された4種のスペーサについての温度差(ΔT)と寸法変化量との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例において調製された半田接合パッケージ及び対照標準の半田接合パッケージのぞれぞれについての、実装高さと上記加速試験におけるサイクル数との関係を示すグラフである。
【図8】従来技術に係るパッケージ基板とマザーボード等の回路基板との間の半田接合を示す模式図である。
【図9】本発明に係る電子機器の一例としてサーバコンピュータ装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施態様の概要について説明する。先ず、図1は、本発明の第1の実施態様に係るスペーサ10の構造を示す模式図である。スペーサ10は、パッケージ基板と回路基板との間に配置され、半田バンプのリフロー時に回路基板に対するパッケージ基板の実装高さを制御する。
【0013】
図9は本発明に係る電子機器の一例としてサーバコンピュータ装置110を概略的に示す。サーバコンピュータ装置110は筐体120を備える。筐体120内には収容空間が区画される。収容空間には、プリント配線板と代表されるマザーボードに半導体パッケージが実装された基板ユニットが搭載される。
【0014】
スペーサ10は、熱膨張性材料を含む本体部11と、本体部11の表面上に設けられた、熱硬化性材料を含む被覆部12とを備える。被覆部12に含まれる熱硬化性材料は、パッケージ基板に設けられる半田バンプの融点よりも高い硬化温度(Th)を有する。一方、本体部11は熱膨張性材料を含むので、温度上昇に伴って熱膨張する。なお、スペーサ10の線膨張係数は、半田材の線膨張係数よりも大きい。
【0015】
従って、パッケージ基板と回路基板との半田接合時に前記硬化温度(Th)まで温度を上げると、被覆部12に含まれる熱硬化性材料が硬化する。この時、本体部11は、前記硬化温度(Th)と常温との温度差に対応する熱膨張による寸法変化を生じている。この寸法変化の量は、前記硬化温度(Th)と常温との温度差、本体部11の熱膨張係数、及び本体部11の寸法によって定まる。リフローの終了後、周囲温度が常温まで下がっても、被覆部12が既に硬化されているので、本体部11の熱収縮が阻害される。このようにして、スペーサ10は、所望の実装高さを実現することができる。
【0016】
特に、被覆部12の硬化温度(Th)は、パッケージ基板と回路基板とを接合するのに使用される半田接合部(即ち、パッケージ基板の下面に配置される半田バンプ及び回路基板の上面に配置される予備半田)の融点(Tm)よりも高く設定される。これは、被覆部12の硬化温度が半田接合部の融点よりも低い(Th<Tm)と、半田が流動可能な状態になる前にスペーサ10の被覆部12が硬化してしまい、本体部11の熱膨張が阻害される。その結果、所望の実装高さを確保できなくなる。
【0017】
被覆部12には、例えば、熱硬化性接着剤として知られる各種材料を使用することができる。具体的には、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)等を使用することができる。ここで、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂の熱硬化温度は、大抵120〜200℃であり、ポリウレタン(PUR)は60〜100℃、熱硬化性ポリイミド(PI)は200〜400℃である。
【0018】
また、本体部11は、所定の熱膨張性を有する材料を含んでなる。本体部11の熱膨張性材料としては、リフロー温度が上記被覆部12硬化温度(Th)に至った際に、高さ方向に所望の熱膨張量を達成し得る熱膨張係数を有する限り如何なる材料であってもよい。好ましくは高耐熱性プラスチック、より好ましくは所謂「スーパーエンジニアリングプラスチック」として分類される各種プラスチック材料から、所望の熱膨張係数に応じて適宜選択される。より具体的には、上記本体部11に含まれる熱膨張性材料としては、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
【0019】
スペーサ10を構成する本体部11の形状は、特に限定されるものではない。具体的には、本体部11の形状は、接合されるべきパッケージ基板24及び回路基板27の構成や加工上の制約等に応じて、例えば、柱状(円柱状、直方体状、立方体状、角柱状等)、板状、球状等の種々の形状から適宜選択することができる。また、本実施形態では、熱膨張性の本体部11の表面を熱硬化性の被覆部12が設けられることについて説明されているが、これに限らず、熱膨張性の材料に、熱硬化性樹脂の粉末を混入してスペーサを形成してもよく、或いは熱膨張性および熱硬化性を同時に有する材料を選択してスペーサを形成してもよい。
【0020】
尚、上記本体部11の鉛直方向の長さ(高さ)は、達成すべき熱膨張量と本体部11を構成する材料の鉛直方向の熱膨張係数との関係によって定まる。従って、達成すべき熱膨張量と本体部11を構成する材料の鉛直方向の熱膨張係数との組み合わせによっては、常温での本体部11の高さを、パッケージ基板24と回路基板27との間隔(スタンドオフ)よりも長くする必要がある場合もある。このような場合には、本体部11の高さに応じて、(図2に示されているように)回路基板27に凹部を設けて、凹部の底部からパッケージ基板の下部との間にスペーサ10が収まるようにしてもよい。また、本体部11の高さが、かかる凹部によって収納するには長すぎる場合は、スペーサ10が貫通する貫通孔を回路基板27に設けて、スペーサ10の下端を適切な位置に別途固定してもよい。逆に、スペーサ10が貫通する貫通孔をパッケージ基板24に設けて、スペーサ10の上端を適切な位置に別途固定してもよい。
【0021】
逆に、達成すべき熱膨張量と本体部11を構成する材料の鉛直方向の熱膨張係数との組み合わせにより決定される本体部11の高さが、パッケージ基板24と回路基板27との間隔(スタンドオフ)よりも短くなる場合もあり得る。このような場合には、例えば、スペーサ10と回路基板27との間及び/又はスペーサ10とパッケージ基板24との間に補助部材等を配置して、スペーサ10の高さとスタンドオフとの差分を埋め合わせてもよい。
【0022】
次に、図2乃至図5を参照しながら、半田バンプのリフローによってパッケージ基板と回路基板とを半田付けする、本発明の第2の実施態様に係る半田付け方法を詳しく説明する。
【0023】
図2は、半田バンプのリフローによってパッケージ基板24と回路基板27とを半田付けする方法における、パッケージ基板24と回路基板(プリント基板等のマザーボード)27との位置合わせ工程を表す模式図である。パッケージ基板24の上面には半導体チップ21が導電バンプ22を介して電気的にフリップチップ実装されている。一方、パッケージ基板24の下面には各電極上にBGA半田バンプ25が配置されている。また、回路基板27の上面には、各電極上に予備半田26と、本発明の第1の実施態様に係るスペーサ10が配置されている。かかる構成を有するパッケージ基板24と回路基板27とを、個々の半田バンプ25と予備半田26とが対向するように位置合わせする。ここで、回路基板27は、本発明における第1基板とみなすことができ、パッケージ基板24は第2基板とみなすことができる。
【0024】
尚、本実施形態では、スペーサ10は、例えばパッケージ基板24が直方体の形状を有する場合、その四隅近傍に対応する、回路基板27上の位置に配置される。しかしながら、スペーサ10の配置箇所は、接合されるべきパッケージ基板24及び回路基板27の構成(例えば、形状や部品配置、回路パターン等)や加工上の制約等に応じて適宜設定することができる。また、本実施形態では、スペーサ10は回路基板27の上面に配置されているが、必要に応じ、スペーサ10をパッケージ基板24の下面に配置してもよい。
【0025】
また、本実施形態では、パッケージ基板24上の半導体チップ21が導電バンプ22を介して電気的にフリップチップ実装されており、かつパッケージ基板24と半導体チップ21との間にはアンダーフィル23が充填されている。しかしながら、かかる構成はあくまでも一例に過ぎず、本実施形態はかかる例示に何ら制限されるものではない。
【0026】
次に、上記のように位置合わせがなされた状態で、パッケージ基板24及び回路基板27等を加熱し、半田バンプ25及び予備半田26をリフローさせる。この際、半田バンプ25及び予備半田26が溶融温度に達すると、図3に示されているように、半田バンプ25及び予備半田26が溶融して表面張力で一体化し、パッケージ基板24と回路基板27との間の電気的接続が確保される。その後、図4に示されているように、所定の熱膨張係数を有する材料を含む本体部11が温度上昇に応じて高さ方向に熱膨張してパッケージ基板24を押し上げる。この結果、半田接合部28の溶融状態でパッケージ基板24と回路基板27との間隔(スタンドオフ)がスペーサ10によって押し広げられる。但し、この時点では、未だスペーサ10の被覆部12の硬化温度には達していないので、本体部11は高さ方向に熱膨張を続ける。
【0027】
更に加熱温度が上昇し、上記被覆部12に含まれる熱硬化性材料の硬化温度(Th)に達すると、図5に示されているように、その硬化温度(Th)に対応する本体部11の熱膨張量を維持したまま被覆部12が硬化する。一旦、被覆部12が硬化すると、被覆部12に囲まれているスペーサ10の本体部11は、硬化した被覆部12により拘束されるためそれ以上熱膨張の進行はできない。そのため、上記のように押し広げられたスタンドオフの高さが維持される。さらに、リフロー終了後、常温に戻っても被覆部12はもはや硬化されているため、スペーサ10は熱収縮せずにスタンドオフが維持されることになる。従って、より精度良く所望の実装高さが確保される。このように、押し広げられたスタンドオフの高さの分だけ半田接合部28の形状が柱状に近く形成されるため、前述のようにパッケージ基板24と回路基板27との間の熱膨張係数の差に起因する歪が接合部に生じても、従来、太鼓状の半田接合部28における括れ部分に集中されていた応力が柱状の半田接合部28の全体に分散され、クラック発生等の不具合が有効に抑制される。
【0028】
また、本発明の実施形態に係るスペーサにおいては、被覆部に含まれる熱硬化性材料を適宜選択して硬化温度(Th)を調整して、本体部に含まれる熱膨張性材料の熱膨張による高さ方向の寸法変化量を精度良く制御することができる。逆に、本体部に含まれる熱膨張性材料を適宜選択してスペーサの熱膨張係数を調整して、本体部を構成する熱膨張性材料の熱膨張による寸法変化量を所望の程度に制御することもできる。このように、本発明の実施形態に係るスペーサを用いて半導体パッケージを回路基板に実装すれば、リフロー時に半田接合部が溶融状態でスペーサが固まることで、リフローの終了後、常温に戻ってもリフロー時のスペーサの高さが維持され、パッケージ基板の回路基板に対する実装高さをより精度良く確保することができる。
【0029】
従って、半導体パッケージの製造時、回路基板への実装時、又は稼動時に生ずる温度変化に伴うパッケージ基板と回路基板との間の熱膨張係数の差によって生ずる、半田接合部の括れ部分への応力集中を有効に分散させ、半田接合パッケージの接合信頼性を大幅に向上させることができる。
【0030】
上記のような半田接合パッケージの接合信頼性を評価するための加速試験としては、例えば、以下に記載する条件下での熱サイクル試験が挙げられる。先ず、試験対象となる半田接合パッケージにおける個々の半田接合部をデイジーチェーン接続によって直列に接続する。このデイジーチェーン接続された回路に所定の直流電流を流した状態で、−65℃において15分、常温において2分、及び125℃において15分、それぞれ維持するサイクルを繰り返す。対象となる半田接合部はデイジーチェーン接続されているので、いずれかの半田接合部で電気的接続が遮断されると、前記直流電流が流れなくなる。このように直流電流が流れなくなるまでに繰り返された上記温度サイクルの数を記録し、接続信頼性の目安とする。因みに、当該サイクル数が多いほど、半田接合パッケージの接合信頼性が高いことを意味する。
【0031】
図9には、電子機器の一例としてサーバコンピュータ装置110を概略的に示す。サーバコンピュータ装置110は筐体120を備える。筐体120内には収容空間が区画され、該収容空間には本実施形態が適用された回路基板ユニットが搭載される。本発明の電子機器の他の例としては、スーパーコンピュータなどが挙げられる。
【0032】
尚、上記においては、半導体パッケージとマザーボード等の回路基板との間での半田接合に着目して説明をしてきたが、他の種々の基板の間での半田接合に対しても本実施形態は適用可能である。例えば、半導体チップとパッケージ基板との間での半田のリフローによる接合においても、本実施形態を適用して、かかる接合の信頼性を向上させることができることは言うまでもない。
【0033】
以下に記載する実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
1.スペーサの作製
本実施例においては、スペーサの本体部として、それぞれが異なる熱膨張係数(50、60、70、80ppm/℃)を有する高耐熱性プラスチックを含む、4種類の部材を用意した(図6参照)。これらの部材の高さは3.43mmとした。これら4種類の本体部の表面に、硬化温度が略230℃の熱硬化性エポキシ樹脂をディップコーティングによって塗布して被覆部を設け、スペーサとした。従って、常温を25℃とすると、本実施例におけるスペーサの高さが被覆部の硬化によって固定されるまでの温度差(ΔT)は、230℃−25℃=205℃ということになる。
【0035】
2.スペーサの選択
本実施例においては、スペーサを用いずに実装した場合の実装高さが430μmである半田接合パッケージの実装高さを、本発明の実施態様に係るスペーサを用いて、600μmとする場合を想定した。従って、本実施例において、スペーサが高さ方向の熱膨張によって延伸すべき実装高さ(すなわち、スペーサの熱膨張による寸法変化量)は、600μm−430μm=170μmである。そこで、上記4種類のスペーサについての温度差(ΔT)と寸法変化量との関係を示す図6のグラフを参照する。その結果、この170μmの寸法変化量を前述の温度差(ΔT=205℃)において達成し得るのは、70ppm/℃の熱膨張係数を有するスペーサであることが判る(図6の四角で囲まれている部分参照)。このようにすれば、本実施例において目的とする実装高さを実現するために用いるべきスペーサの構成(本体部及び被覆部の材料の組み合わせ)が特定できる。尚、確保したい実装高さに応じて、上記と同様の手順によって、スペーサの構成(本体部及び被覆部の材料の組み合わせ)を特定することができる。
【0036】
3.半導体パッケージの実装
上記のように特定された70ppm/℃の熱膨張係数を有するスペーサを使用して、図2乃至図5を参照しながら既に説明した手順に沿って、BGAの半導体パッケージを回路基板上に実装した。
【0037】
尚、前述のように、本実施例においては、半導体パッケージの実装高さが、スペーサを使用しない場合は430μmであったものを、硬化温度が230℃、かつ70ppm/℃の熱膨張係数を有するスペーサを使用して600μmとする。従って、リフロー加熱前の常温(25℃)における回路基板上でのスペーサの突出高さが430μmとなり、スペーサの被覆部の硬化温度(Th=230℃)における回路基板上でのスペーサの突出高さが600μmとなる必要がある。そこで、スペーサの高さ(3.43mm)のうち3mmが回路基板に設けられた凹部に収納されるように、本実施例のスペーサを回路基板とパッケージ基板の間に配置した。また、本実施例において使用したリフロー温度は約250℃であった。
【0038】
4.半田接合部の信頼性評価(温度加速試験)
上記のように実装された本発明の実施態様に係る半導体パッケージと、比較例としてスペーサを使用しない半導体パッケージにつき、前述の条件下での温度加速試験を行い、各半導体パッケージの半田接合部での信頼性を評価した。
【0039】
図7は、本実施例に係る半導体パッケージおよび比較例の半導体パッケージについての、実装高さと上記温度加速試験におけるサイクル数との関係を示すグラフである。図7から明らかなように、本実施例に係るスペーサを使用して作製された半導体パッケージにおいては、比較例の半導体パッケージと比較して、実装高さが430μmから600μmに増大している。この実装高さの増大に伴い、上記温度加速試験における温度サイクル数が720回から1000回へと大幅に増加している。
【0040】
上記結果は、本発明に係る半田の融点以上の硬化温度を有する被覆材がコーティングされたスペーサを使用することにより、回路基板に対する半導体パッケージの実装高さを精度良く制御することができ、その結果、半田接合部の信頼性を大幅に向上することができることを示唆している。
【符号の説明】
【0041】
10 スペーサ
11 本体部
12 被覆部
21 半導体チップ
22 導電バンプ
23 アンダーフィル
24 半導体パッケージ基板
25 半田バンプ
26 予備半田
27 回路基板(マザーボード)
28 半田接合部
110 サーバコンピュータ装置
120 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張率が異なる第1基板と第2基板とが半田材により加熱接合されて形成される回路基板ユニットであって、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、熱膨張性材と熱硬化性材から形成されるスペーサを備え、
前記熱硬化性材の硬化温度は前記半田材の融点よりも高いことを特徴とする回路基板ユニット。
【請求項2】
前記第1基板と前記第2基板との間隔は、硬化した前記スペーサの高さにより定められることを特徴とする請求項1に記載の回路基板ユニット。
【請求項3】
前記第2基板が、前記第1基板上に半田接合され、
前記スペーサは、前記第2基板のコーナー部に対応する前記第1基板上の位置に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の回路基板ユニット。
【請求項4】
前記スペーサは、前記熱膨張性材を含有する本体部と、前記本体部の表面を囲んで設けられる前記熱硬化性材を含有する被覆部とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回路基板ユニット。
【請求項5】
前記スペーサは、前記熱膨張性材と前記熱硬化性材が一体化して形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回路基板ユニット。
【請求項6】
前記スペーサは、前記熱膨張性材に粉末状の前記熱硬化性材が混合して形成されることを特徴とする請求項5に記載の回路基板ユニット。
【請求項7】
熱膨張率が異なる第1基板と第2基板とが半田材により加熱接合される回路基板ユニットの製造方法であって、
前記第1基板と前記第2基板との間に、熱膨張性材と前記半田材よりも高い硬化温度を有する熱硬化性材とから形成されるスペーサを配置する工程と、
前記半田材の融点以上に加熱を継続し、前記スペーサの熱硬化性材を硬化させる工程と、を備えることを特徴とする回路基板ユニットの製造方法。
【請求項8】
電子装置であって、
熱膨張率が異なる第1基板と第2基板とが半田材により加熱接合されて形成される回路基板ユニットと、
前記回路基板ユニットが内部に搭載される筐体と、を備え、
前記回路基板ユニットには、熱膨張性材と熱硬化性材から形成されるスペーサが前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、前記熱硬化性材の硬化温度は前記半田材の融点よりも高いことを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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