説明

回路基板用積層板、回路基板および回路基板用積層板の製造方法

【課題】高い放熱性を有する回路基板用積層板を提供する。
【解決手段】高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材と、前記基材上に形成され、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層と、前記絶縁層上に形成された金属層とを有し、前記基材中の高熱伝導性フィラーの含有率が15〜65vol%であり、前記絶縁層中の熱伝導性フィラーの含有率が15〜65vol%であることを特徴とする回路基板用積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用積層板、回路基板および回路基板用積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板用積層板は、放熱性基材と、必要に応じて設けられる絶縁層と、回路形成用の金属層とを有する。従来、放熱性基材および回路基板用積層板ならびにこれらの製造方法は、たとえば特許文献1〜6に記載されている。
【0003】
特許文献1には、金属粉末と結晶性カーボン材とを混合しホットプレス成形することにより得られる高熱伝導率複合材とその製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、黒鉛結晶含有炭素質マトリックスとこのマトリックス中に分散された金属成分とからなる炭素基金属複合材料およびその製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、結晶性樹脂と低融点合金、金属または合金粉末、無機粉末、繊維強化材とからなる熱伝導性樹脂組成物およびその製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、ガラス不織布を芯材層の基材とし、ガラス布を表面層の基材とし、これらの基材に無機充填剤を配合した熱硬化性樹脂を含浸硬化してなるコンポジット積層板が開示されている。
【0007】
これらはいずれも、放熱性基材として用いられる複合材およびその製造方法であり、回路基板用積層板を製造するためには絶縁層と導電層を形成する工程を必要とし、生産性に欠ける。
【0008】
複合材からなる回路基板用積層板の製造方法としては、特許文献5が知られている。特許文献5には、ガラス布基材とガラス繊維不織布基材に熱硬化性樹脂ワニスを含浸させた後、加熱して乾燥し、さらに加熱して硬化させ、強制急冷した後に銅箔などの金属箔を貼着した金属箔張積層板が開示されている。熱硬化性樹脂は非結晶性で熱伝導性が低く、樹脂中に分散させる繊維も基板の強化材であり材質がガラスや有機物であるため熱伝導率が低い。また、基材に樹脂を含浸させ、気泡の巻き込みを少なくするためにロールで加圧するなどの処理を必要とし、含浸した樹脂を加熱乾燥させ、さらに加熱硬化させた後に、銅箔などを貼着する工程を必要とする。このように、複雑で特殊な設備を要する多数の工程を含む。この方法では、ガラス布とガラス繊維不織布の積層工程、熱硬化性樹脂ワニスの含浸工程、乾燥工程、樹脂の硬化工程はバッチまたは連続で実施できるが、銅箔の積層・貼着工程はバッチ処理となる。
【0009】
複合材からなる放熱性基材を有する回路基板用積層板の製造方法としては、特許文献6が知られている。特許文献6には、炭素粒子および/または炭素繊維とタールピッチとの押出成形体を焼成することにより黒鉛化して得られた多孔質黒鉛化押出成形体に、高温高圧下で溶融金属を含浸させて得られた黒鉛/金属複合材に熱処理を施して高熱伝導・低熱膨張複合材を作製し、さらに金属層としてNi−Bメッキ層および/またはNi−Pメッキ層を形成した回路基板用積層板が開示されている。この製造方法は多数の工程を含み、金属を溶融させ高温高圧下で含浸させるのに特殊な設備を必要とするため、生産性に欠ける。この方法では、炭素粒子および炭素繊維とタールピッチとの混合押出は連続的に実施できるが、焼成工程、溶融金属の含浸工程、熱処理工程、およびメッキ工程はいずれもバッチ処理となる。
【0010】
また、一般に知られている回路基板用積層板として、セラミック基材や金属基材を用いたものがある。
【0011】
前者は、基材としてアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミック板を用い、基材の表面にメタライジングにより回路形成用の金属層を形成したものである。メタライジングの方法としては、導電金属箔を焼き付ける方法、導電ペーストを印刷し焼き付ける方法、蒸着・スパッタなどによって配線パターンを形成する方法などがある。しかし、セラミック板を製造する工程が複雑であり、サイズの大きな製品を作りにくいという問題点がある。また、メタライジングはバッチ処理となる。さらに、材料価格が大変高く、加工が困難なため製品価格の低減が困難であるという問題点もある。
【0012】
後者は、基材としてアルミニウム、銅、鉄などの金属板を用い、その上に絶縁層を形成し、その上に回路を形成するための金属層を形成した構造を有する。その製造方法として、基材に絶縁性の接着剤を塗布するかまたは接着性フィルムを積層した後、回路形成用の導電箔を貼り付けて加熱加圧するなどの方法が知られている。この方法は、絶縁接着層(たとえばエポキシプリプレグ)の作製工程、金属板、絶縁接着層および回路形成のための銅箔の積層工程、ならびに加熱加圧工程がバッチ処理になり、連続的な工程を採用できないため生産性が悪い。また、銅箔をエッチングして回路を形成する際、基材である金属を腐食させないように保護膜処理(マスキング)し、エッチング後に保護膜を剥離するなどの工程が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−168502号公報
【特許文献2】特許3673436号公報
【特許文献3】特開2006−22130号公報
【特許文献4】特開平8−309928号公報
【特許文献5】特公平3−29580号公報
【特許文献6】特開2005−2470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上で説明した複合材を用いた回路基板用積層板やセラミックまたは金属を基材とする回路基板用積層板は高い放熱性を示すが、いずれも生産性の悪い製造方法を採用せざるを得なかったため、安価に大量に生産することが強く望まれていた。
【0015】
本発明の目的は、高い放熱性を有する回路基板用積層板および回路基板、ならびにこのような回路基板用積層板を極めて高い生産性で製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材と、前記基材上に形成され、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層と、前記絶縁層上に形成された金属層とを具備し、前記基材中の高熱伝導性フィラーの含有率が15〜65vol%であり、前記絶縁層中の熱伝導性フィラーの含有率が15〜65vol%であることを特徴とする回路基板用積層板が提供される。
【0017】
本発明の他の態様によれば、高熱伝導性のフィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む基材組成物と、絶縁性の熱伝導性フィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物とを多層押出成形して、基材と絶縁層とを含む成形体を形成し、前記成形体の絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積することを特徴とする回路基板用積層板の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によれば、高熱伝導性のフィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む基材組成物を単層押出成形して基材を形成し、絶縁性の熱伝導性フィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物を単層押出成形して絶縁層を形成し、前記基材と前記絶縁層とをラミネートして成形体を形成し、前記成形体の絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積することを特徴とする回路基板用積層板の製造方法が提供される。
【0019】
本発明のさらに他の態様によれば、高熱伝導性のフィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む基材組成物を単層押出成形して基材を形成し、絶縁性の熱伝導性フィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物を単層押出成形して絶縁層を形成し、前記基材と前記絶縁層と金属箔とをラミネートすることを特徴とする回路基板用積層板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い放熱性を有する回路基板用積層板および回路基板、ならびにこのような回路基板用積層板を極めて高い生産性で製造し得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る回路基板用積層板の断面図。
【図2】本発明に係る回路基板用積層板の製造方法の一例を示す説明図。
【図3】本発明に係る回路基板用積層板の製造方法の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る回路基板用積層板の断面図である。図1に示すように、この回路基板用積層板10は、高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材11と、前記基材11上に形成され、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層12と、前記絶縁層12上に形成された金属層13とを有する。
【0024】
本発明において、基材および絶縁層には結晶性ポリマーが用いられる。結晶性ポリマーは、非結晶性ポリマーに比べ熱伝導率が大きいことが知られている。結晶性ポリマーとしては、例えばポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。
【0025】
本発明において、基材は高い熱伝導性を有することが重要であり、電気的な特性は特に要求されない。基材に充填する高熱伝導性のフィラーは、熱伝導率が200W/m・k以上である、炭素短繊維、カーボンナノチューブおよび金属粉粒体からなる群より選択することが好ましい。炭素短繊維とは、繊維平均長が12mm以下のものをいう。繊維長が12mmを超えると、押出成形が困難になり量産性がなくなる。金属粉粒体としては、たとえば銅、銀、金、アルミニウムなど熱伝導率の高い金属の粉粒体が挙げられる。
【0026】
本発明において、絶縁層は、その上に形成される金属層をパターニングして回路を形成するため、絶縁性を有することが要求されるとともに、熱伝導性が高いことが望ましい。絶縁層に含まれる絶縁性の熱伝導性フィラーは、熱伝導率が20W/m・k以上である、金属酸化物の粉粒体および金属窒化物の粉粒体からなる群より選択することが好ましい。金属酸化物としては、たとえばAl23、ZrO2、MgOが挙げられる。金属窒化物としては、たとえばAlN、BN、Si34が挙げられる。
【0027】
本発明において、基材中の高熱伝導性フィラーの含有率は15〜65vol%であり、絶縁層中の熱伝導性フィラーの含有率は15〜65vol%である。フィラーの含有率は、押出成形が可能な流動性と回路基板用積層板の放熱性とを考慮して設定されている。すなわち、基材中の高熱伝導性フィラーの含有率および絶縁層中の熱伝導性フィラーの含有率が15vol%未満である場合には、得られる回路基板用積層板の放熱性は低くなるので望ましくない。一方、基材中の高熱伝導性フィラーの含有率および絶縁層中の熱伝導性フィラーの含有率が65vol%を超える場合には、連続的な押出成形が困難になり量産性が得られなくなる。
【0028】
本発明において、基材中のフィラーとして、絶縁層中のフィラーよりも熱伝導性が高いものを用いる理由は、回路形成用の金属層の反対側に位置する基材の放熱性をより高めるためである。基材に充填するフィラーとして、絶縁層に充填する絶縁性の熱伝導性フィラーである金属酸化物や金属窒化物の粉粒体を用いた場合、基材の熱伝導性が低くなるので望ましくない。一方、絶縁層に充填するフィラーとして、基材に充填する炭素短繊維、カーボンナノチューブまたは金属粉粒体を用いた場合、熱伝導性には優れるが、絶縁性に劣るので回路基板用積層板として使用することができなくなる。基材と絶縁層とで同じフィラーを用いようとすると、絶縁性が要求され、絶縁性の熱伝導フィラーを使用せざるを得ず、回路基板用積層板全体の熱伝導性が低くなるので望ましくない。
【0029】
本発明において、基材と絶縁層とで同じ種類の結晶性ポリマーを用いると、基材と絶縁層とが強固に密着して剥離することがないので望ましい。一方、基材と絶縁層とで異なる種類の結晶性ポリマーを用いると、結晶性ポリマーの相溶性が悪い場合や結晶化温度が異なり成形時の温度変化で基材と絶縁層との間に大きな歪が発生する場合などに剥離を起こす可能性がある。
【0030】
本発明において、絶縁層が厚いほど一般的には絶縁性が大きくなるが、絶縁層は基材に比べ熱伝導性が低いため絶縁層が厚すぎると回路基板用積層板全体の放熱性が低くなる。そこで、放熱性が高い回路基板用積層板を得るには、要求に応じた絶縁性を確保できる範囲で、絶縁層をできるだけ薄くすることが望ましい。
【0031】
本発明において、基材と絶縁層と金属層とを有する回路基板用積層板を製造するには、次の(1)〜(3)の方法が用いられる。
【0032】
(1)高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材組成物と、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物とを多層押出成形して、基材と絶縁層とを含む成形体を形成し、前記成形体の絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積する方法。
【0033】
(2)高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材組成物を単層押出成形して基材を形成し、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物を単層押出成形して絶縁層を形成し、前記基材と前記絶縁層とをラミネートして成形体を形成し、前記成形体の絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積する方法。
【0034】
(3)高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材組成物を単層押出成形して基材を形成し、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物を単層押出成形して絶縁層を形成し、前記基材と前記絶縁層と金属箔とをラミネートする方法。
【0035】
上記のように本発明の方法では、基材および絶縁層を押出成形により連続的に成形でき、絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積することにより金属層も連続的に形成できるので、放熱性の高い回路基板用積層板を安価に大量に生産することができる。
【0036】
本発明において、高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材組成物、および絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物は、予めニーダーや二軸混練機などで混練し、ペレットなどの形状に加工した後に、押出機へ供給してもよい。あるいは、定量可能なフィーダーと二軸混練押出機を用い、フィラーと結晶性ポリマーとを所定の配合比になるように押出機に供給してもよい。
【0037】
図2を参照して、本発明に係る回路基板用積層板の製造方法の一例を説明する。図2において、高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材組成物と、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物とを多層押出機21のダイスから多層押出成形して、基材11と絶縁層12とを含む成形体を形成する。一方、送出しロール22から金属箔を送り出す。加熱ロール23、24の間に成形体を供給するとともに、成形体の絶縁層12上に金属箔を供給してラミネートすることによって金属層13を形成し、回路基板用積層板を製造する。
【0038】
図3を参照して、本発明に係る回路基板用積層板の製造方法の他の例を説明する。図3において、高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材組成物と、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物とを多層押出機21のダイスから多層押出成形して、基材11と絶縁層12とを含む成形体を形成する。成形体の絶縁層12上に、蒸着装置25から金属層13を堆積することによって、回路基板用積層板を製造する。
【0039】
本発明においては、回路基板用積層板の金属層をパターニングすることによって回路基板が得られる。また、回路を形成する際に、基材の保護処理が不要である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0041】
(実施例1)
基材の原料に、高熱伝導性フィラーとしてアルミニウム粉末(高純度化学(株)製、商品名:ALE16PB)、および結晶性ポリマーとしてPEN(帝人化成(株)製、商品名:テオネックスTN8065S)を用意した。アルミニウム粉末が40vol%、PENが60vol%の配合比になるように定量フィーダで供給し、二軸押出機で押出成形してペレットを作製した。
【0042】
絶縁層の原料に、絶縁性の熱伝導性フィラーとしてAl23(昭和電工(株)製、商品名:AS−40)、および結晶性ポリマーとしてPEN(帝人化成(株)製、商品名:テオネックスTN8065S)を用意した。Al23が40vol%、PENが60vol%の配合比になるように定量フィーダで供給し、二軸押出機で押出成形してペレットを作製した。
【0043】
図3に示すように、基材用のペレットを多層押出機21の一方の押出機へ、絶縁層用のペレットを多層押出機21の他方の押出機へ供給して、基材11と絶縁層12が一体となった板状の成形体を連続的に押出した。次に、板状の成形体の絶縁層12側に、蒸着装置25からAg薄膜を堆積して連続的に金属層13を形成し、回路基板用積層板を製造した。
【0044】
(実施例2)
基材の原料に、高熱伝導性フィラーとして炭素短繊維(帝人(株)製、商品名:ラヒーマR−A201)、および結晶性ポリマーとしてPET(ユニチカ(株)製、商品名:SA−1346P)を用意した。
【0045】
絶縁層の原料に、絶縁性の熱伝導性フィラーとしてBN(水島合金鉄(株)製、商品名:HP−40P)、および結晶性ポリマーとしてPET(ユニチカ(株)製、商品名:SA−1206)を用意した。
【0046】
図2に示すように、基材原料を炭素短繊維が15vol%、PETが85vol%の配合比になるように、定量フィーダを用いて多層押出機21の一方の押出機へ供給し、絶縁層の原料をBNが40vol%、PETが60vol%の配合比になるように、定量フィーダを用いて多層押出機21の他方の押出機へ供給して、基材11と絶縁層12が一体となった板状の成形体を連続的に押出した。次に、送出しロール22からCu箔を送り出し、一対の加熱ロール23、24を用いてPETの融点±20℃の範囲に加熱し、板状の成形体の絶縁層12側にCu箔をラミネートして連続的に金属層13を形成し、回路基板用積層板を製造した。
【0047】
(実施例3)
基材の原料に、高熱伝導性フィラーとして銅粉末(高純度化学(株)製、商品名:CuE13PB)、および炭素短繊維(日本グラファイトファイバー(株)製、商品名:ミルドファイバーXN−100)、ならびに結晶性ポリマーとしてPPS(東レ(株)製、商品名:トレリナA900)を用意した。銅粉末が55vol%、炭素短繊維が10vol%、PPSが35vol%の配合比になるように定量フィーダで供給し、二軸押出機で押出成形してペレットを作製した。
【0048】
絶縁層の原料に、絶縁性の熱伝導性フィラーとしてAlN(東洋アルミニウム(株)製、商品名:FLZ−1)、および結晶性ポリマーとしてPPS(東レ(株)製、商品名:トレリナA900)を用意した。AlNが65vol%、PPSが35vol%の配合比になるように定量フィーダで供給し、二軸押出機で押出成形してペレットを作製した。
【0049】
図2に示すように、基材用のペレットを多層押出機21の一方の押出機へ供給し、絶縁層用のペレットを多層押出機21の他方の押出機へ供給して、基材11と絶縁層12が一体となった板状の成形体を連続的に押出した。次に、送出しロール22からCu箔を送り出し、一対の加熱ロール23、24を用いてPPSの融点±20℃の範囲に加熱し、板状の成形体の絶縁層12側にCu箔をラミネートして連続的に金属層13を形成し、回路基板用積層板を製造した。
【0050】
実施例1〜3に係る回路基板用積層板の成形性、熱伝導率について調べた。結果を表1に示す。
【0051】
表1に示されるように、実施例1〜3のいずれの回路基板用積層板も、良好な成形性を有するとともに、良好な放熱性を有することが確認できた。
【表1】

【0052】
本発明に係る回路基板用積層板は、基材が高熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーからなる複合材で形成され、基材と回路形成用の金属層との間の絶縁層が絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーからなる複合材で形成されているので、高い熱伝導率を示し、金属層をパターニングして形成される回路での発熱を基材から良好に放熱することができる。
【0053】
また、本発明に係る回路基板用積層板の製造方法によれば、基材および絶縁層を多層押出またはそれぞれ単層押出した後、両者をラミネートすることによって板状の成形体を連続的に形成することができ、しかも金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積することによって金属層も連続的に形成できるので、回路基板用積層板を生産性よく製造することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。また、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0055】
具体的には、基材および絶縁層のフィラーおよび結晶性ポリマーの種類、フィラーの含有率、ならびに金属層の材料は、上記実施形態に記載されたものに限定されない。また、上記実施例では、基材および絶縁層を多層押出成形して成形体を作製した後に成形体の絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積する方法について説明したが、これに限らず、基材と絶縁層をそれぞれ単層押出成形し基材と絶縁層とをラミネートして成形体を形成した後に成形体の絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積する方法や、基材と絶縁層をそれぞれ単層押出成形した後に基材と絶縁層と金属箔とを同時にラミネートする方法を用いることもできる。
【符号の説明】
【0056】
10…回路基板用積層板、11…基材、12…絶縁層、13…金属層、21…多層押出機、22…送出しロール、23、24…加熱ロール、25…蒸着装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱伝導性のフィラーと結晶性ポリマーとを含む基材と、
前記基材上に形成され、絶縁性の熱伝導性フィラーと結晶性ポリマーとを含む絶縁層と、
前記絶縁層上に形成された金属層とを有し、
前記基材中の高熱伝導性フィラーの含有率が15〜65vol%であり、前記絶縁層中の熱伝導性フィラーの含有率が15〜65vol%であることを特徴とする回路基板用積層板。
【請求項2】
前記基材に含まれる高熱伝導性フィラーが、炭素短繊維、カーボンナノチューブおよび金属粉粒体からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の回路基板用積層板。
【請求項3】
前記絶縁層に含まれる絶縁性の熱伝導性フィラーが、金属酸化物粉粒体および金属窒化物粉粒体からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の回路基板用積層板。
【請求項4】
前記基材に含まれる結晶性ポリマーと前記絶縁層に含まれる結晶性ポリマーとが同じ種類であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回路基板用積層板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回路基板用積層板の金属層をパターニングすることによって得られる回路基板。
【請求項6】
高熱伝導性のフィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む基材組成物と、絶縁性の熱伝導性フィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物とを多層押出成形して、基材と絶縁層とを含む成形体を形成し、
前記成形体の絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積する
ことを特徴とする回路基板用積層板の製造方法。
【請求項7】
高熱伝導性のフィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む基材組成物を単層押出成形して基材を形成し、
絶縁性の熱伝導性フィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物を単層押出成形して絶縁層を形成し、
前記基材と前記絶縁層とをラミネートして成形体を形成し、
前記成形体の絶縁層上に金属箔をラミネートするかまたは金属層を堆積する
ことを特徴とする回路基板用積層板の製造方法。
【請求項8】
高熱伝導性のフィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む基材組成物を単層押出成形して基材を形成し、
絶縁性の熱伝導性フィラー15〜65vol%と結晶性ポリマーとを含む絶縁層組成物を単層押出成形して絶縁層を形成し、
前記基材と前記絶縁層と金属箔とをラミネートする
ことを特徴とする回路基板用積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−960(P2012−960A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140974(P2010−140974)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】