説明

回路接続材料並びに回路端子の接続構造体及び接続方法

【課題】アクリルゴムを添加しなくても柔軟性を有する回路接続材料を提供する。
【解決手段】相対向する回路電極1a,2a間に介在され、相対向する回路電極1a,2aを加圧し加圧方向の電極1a,2a間を電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(4)の成分を必須とし、アクリルゴムは含まない回路接続材料。
(1)エポキシ樹脂
(2)アニオン重合型硬化剤
(3)ラジカル重合性物質
(4)遊離ラジカルを発生する硬化剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続材料と、回路端子の接続構造体及び接続方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂系接着剤は、高い接着強度が得られ、耐水性や耐熱性に優れること等から、電気・電子・建築・自動車・航空機等の各種用途に多用されている。
中でも一液型エポキシ樹脂系接着剤は、主剤と硬化剤との混合が不必要であり使用が簡便なことから、フィルム状、ペースト状、粉体状の形態で使用されている。エポキシ樹脂系接着剤の接着性を向上させるために、柔軟性を付与する手段として、アクリルゴムの添加が主流である(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、低温速硬化性の接着剤として、ラジカル重合性接着剤が知られている(例えば、特許文献2)。エポキシ樹脂系接着剤とラジカル重合系接着剤は、通常異なる重合タイプの接着剤として別々に使用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO98/3047パンフレット
【特許文献2】WO98/44067パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アクリルゴムを添加しなくても柔軟性を有する回路接続材料を提供することである。なかんずく、アクリルゴムを使用せずに、液晶ディスプレイの実装方式の一種であるCOF(Chip On Flex)実装に対する接着性を向上することにある。COFは、従来主に使用されてきた実装方式であるTCP(Tape Carrier Package)実装と類似の形態を為しているが、被着体の構成材料が異なるために、TCPとCOFでは、その接着性に差が見られる。大まかな構成として、TCPが「銅箔−(エポキシ系)接着剤層−ポリイミド」の3層構成であるのに対し、COFは銅箔−ポリイミドの2層構成である。TCPは回路スペース面に接着剤層が露出し、接着に有利である一方、COFは回路スペースにポリイミドが露出し、接着に不利に働く。そのため、COFとの高接着性を得るために、アクリルゴムが使用されていた。しかしながら、アクリルゴムを用いた場合、COFに対する高接着性を得ようとすると、TCPに対する接続信頼性が悪化するという背反特性があった。材料を統一したいとの市場の要求から、COFとTCPの両者に対して高接着性と安定した接続信頼性が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究した結果、アニオン重合性エポキシ樹脂接着剤と、ラジカル重合性接着剤とを組み合わせたハイブリッド硬化により、アクリルゴムを添加しなくても柔軟性を付与できることを見い出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の回路接続材料が提供される。
1.相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(4)の成分を必須とし、回路接続材料。
(1)エポキシ樹脂
(2)アニオン重合型硬化剤
(3)ラジカル重合性物質
(4)遊離ラジカルを発生する硬化剤
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクリルゴムを添加しなくても柔軟性を有する回路接続材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、D等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂が代表的であり、その他グリシジルアミン、グリシジルエステル、脂環式、複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物が適用できる。これらは単独又は2種以上混合して用いることが可能である。これらエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0009】
上記したエポキシ樹脂の中では、ビスフェノール型エポキシ樹脂が分子量の異なるグレードが広く入手可能で、接着性や反応性等を任意に設定できることから好ましい。中でもビスフェノールF型エポキシ樹脂は、粘度が特に低いことからフェノキシ樹脂との組み合わせで流動性を広範囲に設定できることや、液状であり粘着性も得やすいことから特に好ましい。また、1分子内に3個以上のオキシラン基を有するいわゆる多官能エポキシ樹脂も、組成物の架橋密度を向上し耐熱性が向上するので好ましく、溶剤による補修性を保つために組成物中に占める多官能エポキシ樹脂の割合を30%以下として使用できる。
【0010】
エポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂とラジカル重合性物質の和100重量部に対し5〜95重量部用いるのが好ましく、20〜80重量部がより好ましく、40〜60重量部がさらに好ましい。
【0011】
本発明に用いるアニオン型硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ素ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等、及びこれらの変性物があり、これらは単独又は2種以上の混合体として使用できる。
【0012】
アニオン型硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対し30〜60重量部用いるのが好ましく、40〜50重量部がより好ましい。
【0013】
本発明で用いるラジカル重合性物質としては、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物等が挙げられる。ラジカル重合性物質はモノマー、オリゴマーいずれの状態で用いることが可能であり、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。アクリレート(メタクリレート)の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート等がある。これらは単独又は併用して用いることができ、必要によっては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を適宜用いてもよい。
また、ジシクロペンテニル基及び/又はトリシクロデカニル基及び/又はトリアジン環を有する場合は、耐熱性が向上するので好ましい。
【0014】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するもので、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4−8(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。これらは単独でもまた組み合わせても使用できる。
【0015】
また、上記のラジカル重合性物質に下記式で示されるリン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を併用すると金属等の無機物表面での接着強度が向上する。
【化1】

(ただし、nは1〜3の整数である)
配合量は、ラジカル重合性物質100重量部に対し0.1〜10重量部用いるのが好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物として得られる。具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アッシドポスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アッシドポスフェート等がある。これらは単独でもまた組み合わせても使用できる。
【0016】
ラジカル重合性物質の配合量は、エポキシ樹脂とラジカル重合性物質の和100重量部に対し5〜95重量部用いるのが好ましく、20〜80重量部がより好ましく、40〜60重量部がさらに好ましい。
【0017】
本発明に用いる遊離ラジカルを発生する硬化剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物等の熱又は光により遊離ラジカルを発生するものを使用できる。中でも、有機過酸化物が好ましい。
硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定されるが、高反応性とポットライフの点から、半減期10時間の温度が40℃以上かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。
【0018】
硬化剤は、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等から選定できる。また、回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、硬化剤中に含有される塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。
具体的には、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドから選定され、高反応性が得られるパーオキシエステルから選定されることがより好ましい。
【0019】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、L−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、L−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が使用できる。
【0020】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が使用できる。
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が使用できる。
【0021】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が使用できる。
【0022】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−ブロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が使用できる。
【0023】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が使用できる。
【0024】
シリルパーオキサイドとしてはt−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が使用できる。
【0025】
これらの遊離ラジカルを発生する硬化剤は単独又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
硬化剤の配合量は、ラジカル重合性物質100重量部に対し0.05〜10重量部用いるのが好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0026】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が使用できる。
これらポリマーの分子量は10000以上が好ましいが1000000以上になると混合性が悪くなる傾向にある。
【0027】
水酸基含有樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が40℃以上で分子量10000以上の水酸基含有樹脂が好ましく使用され、例えばフェノキシ樹脂を使用することができる。水酸基含有樹脂は、カルボキシル基含有エラストマー、エポキシ基含有エラストマー、ラジカル重合性の官能基によって変性されていてもよい。ラジカル重合性の官能基で変性したものは耐熱性が向上するため好ましい。
フェノキシ樹脂は、二官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させるか、又は二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類を重付加反応させることにより得られる。
【0028】
また、カルボキシル基含有エラストマー、エポキシ基含有エラストマーとしては、分子末端又は分子鎖中にカルボキシル基又はエポキシ基を有するエラストマーであるならばどのようなものでもよく、例えば、ブタジエン系重合体、アクリル重合体、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリアミドウレタンゴム、シリコーンゴム等があり、ブタジエン系重合体が好ましい。なお、ブタジエン系重合体としては、ブタジエン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。これらのうち、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体が特に好ましい。
カルボキシル基含有エラストマーの重量平均分子量は、500〜1000000の範囲ものが好ましく、より好ましくは1000〜800000、さらに好ましくは1000〜10000である。
【0029】
エラストマーの骨格中に含まれるフェノキシ樹脂と相溶性を有する成分の量は、多すぎると相溶してしまうので、フェノキシ相とエラストマー相が相分離するように決定するのが好ましい。
【0030】
本発明の回路接続材料はアクリルゴムを含まない。かかるアクリルゴムとして、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はアクリロニトリルのうち少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体であり、グリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムを例示できる。
本発明では、アクリルゴムを含まなくても、アニオン重合性エポキシ樹脂接着剤と、ラジカル重合性接着剤とを組み合わせたハイブリッド硬化により、柔軟性を付与できる。
【0031】
さらに、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基含有物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0032】
本発明の回路接続材料は導電性粒子がなくても、接続時に相対向する回路電極の直接接触により接続が得られるが、導電性粒子を含有した場合、より安定した接続が得られる。
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cu等の遷移金属類ではなくAu、Ag、白金族の貴金属類が好ましくAuがより好ましい。
また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆等により形成し、最外層を貴金属類プラスチックを核とした場合や、熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0033】
導電性粒子の配合量は用途により適宜設定するが、通常は、接着剤樹脂成分100部(体積)に対して0.1〜30部(体積)の範囲である。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10部(体積)とするのがより好ましい。
【0034】
また、回路接続材料を2層以上に分割し、硬化剤を含有する層と導電性粒子を含有する層に分離した場合、ポットライフの向上が得られる。
【0035】
本発明の接続方法は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に本発明の接続材料(フィルム状接着剤)を介在させ、加熱加圧及び/又は光照射して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる。
このような回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板等が用いられる。回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられている。
【0036】
より良好な電気的接続を得るためには、回路電極(接続端子)の少なくとも一方の表面を、金、銀、錫及び白金族から選ばれる金属にすることが好ましい。表面層は金、銀、白金族、又は錫のいずれかから選択され、これらを組み合わせて用いてもよい。また、銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせて多層構成としてもよい。
【0037】
図1は本発明の一実施形態にかかる回路端子の接続方法を示す断面図である。
図1(a)において、1は第一の基板(第一の回路部材)を、2は第二の基板(第二の回路部材)を、1aは第一の回路電極(第一の接続端子)を、2aは第二の回路電極(第二の接続端子)を、3は接着剤を、4は導電性粒子を、5は加熱加圧ヘッドを、それぞれ示している。接着剤3と導電性粒子4から本発明の回路接続材料が構成される。
【0038】
基板1,2は、半導体チップ類のシリコーンやガリウム・ヒ素等や、ガラス、セラミックス、ガラス・エポキシ複合体、プラスチック等の絶縁基板である。
回路電極1aは基板1の表面に銅箔で設けたもので、金の表面層が形成されている。回路電極2aは基板2の表面に銅箔で設けたもので、錫の表面層が形成されている。
回路電極を設けた基板は接続時の加熱による揮発成分による接続への影響をなくすために、回路接続材料による接続工程の前に予め加熱処理することが好ましい。
図1(b)に示すように、仮接続の後に、基板1の回路電極1aと基板2の回路電極2aを位置合わせし、基板2上方より加熱加圧ヘッド5にて所定時間の加熱加圧を行い本接続を完了する。
【実施例】
【0039】
実施例1
エポキシ樹脂およびアニオン重合型硬化剤としてイミダゾール系マイクロカプセル混合型エポキシ樹脂(HX−3941HP,旭化成ケミカルズ(株)製)を44重量部、ラジカル重合性物質としてエチレングリコールジアクリレート(A−600,新中村化学工業(株)製)を16重量部、遊離ラジカルを発生する硬化剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン(パーヘキサ25O,日本油脂(株)製)を3重量部(パーヘキサ25Oは50%溶液なので、実際の配合は6重量部)、トルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶媒に溶解して得られた40重量%のフェノキシ樹脂(PKHC,平均分子量45,000,インケムコーポレーション社製)をフィルム形成成分として100重量部(固形分としては40重量部)配合し、更に、平均粒径4μmのポリスチレン球状粒子の表面に0.1μmのNi層とAu層を設けたもの(以下、導電粒子と呼ぶ)を4重量部配合し、更に、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(SH6040、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を1重量部配合した。この混合溶液をアプリケータでPETフィルム上に塗布し、70℃10分の熱風乾燥により、接着剤層の厚み20μmの回路接続材料を得た。
【0040】
比較例1
エポキシ樹脂およびアニオン重合開始剤としてイミダゾール系マイクロカプセル混合型エポキシ樹脂(HX−3941HP,旭化成ケミカルズ(株)製)を44部、アクリルゴムとしてブチルアクリレート40部−エチルアクリレート30部―アクリロニトリル30部―グリシジルメタクリレート3部の共重合体(重量平均分子量約85万)(以下、アクリルゴム1と呼ぶ)をトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤に溶解して得られた10重量%のアクリルゴム溶液を400重量部(固形分として40重量部)、フィルム形成成分として、上述したPKHCの40重量%溶液を40重量部(固形分として16重量部)配合し、導電粒子以下は実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0041】
比較例2
エポキシ樹脂およびアニオン重合開始剤としてHX−3941HPを60重量部、アクリルゴムとしてアクリルゴム1の10重量%溶液を200重量部(固形分として20重量部)、フィルム形成成分として上述したPKHCの40重量%溶液を50重量部(固形分として20重量部)配合し、導電粒子以下は実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0042】
比較例3
エポキシ樹脂およびアニオン重合開始剤としてHX−3941HPを60重量部、フィルム形成成分として上述したPKHCの40重量%溶液を100重量部(固形分として40重量部)配合し、導電粒子以下は実施例1と同様にして回路接続材料を得た。
【0043】
評価例
(1)回路接続(COF)
上述の回路接続材料を用いて、厚み38μmのポリイミド上に直接形成された、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み8μmの銅回路を有するフレキシブル回路板(FPC−COFタイプ)と、全面に酸化インジウム(ITO)の薄層を有する厚み0.7mmのガラス版とを、180℃−3MPa−15秒、幅2mmで接続した。この際、あらかじめITOガラス上に、回路接続材料の接着面を貼り付けた後、80℃、1MPa,5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、PETフィルムを剥離してFPC−COFタイプと接続した。
【0044】
(2)回路接続(TCP)
フレキシブル回路板として、厚み75μmのポリイミドに接着剤層を介して形成された、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み18μmの銅回路を有するフレキシブル回路板(FPC−TCPタイプ)を用いる他は、回路接続(COF)と同様に回路接続した。
【0045】
(3)接着力の測定
回路の接続後、90度剥離、剥離速度50mm/minで接着力測定を実施した。FPC−COFタイプの接着力評価では、実施例1と比較例1が8N/cm以上、比較例2が
4〜5N/cm、比較例3が2〜3N/cmの接着力を示した。FPC−TCPタイプの接着力評価では、いずれの場合も8N/cm以上の高い接着力を示した。
【0046】
(4)接続抵抗の測定(接続信頼性)
回路の接続後、上記接続部を含むFPC−COFタイプ、FPC−TCPタイプ双方の隣接回路間の抵抗値を初期と、85℃/85%RHの高温高湿槽中に500時間保持した後にマルチメーターで測定した。抵抗値は隣接回路完の抵抗値150点のx+3σとした。この値が、初期抵抗に対する上記高温高湿試験後の上昇倍率が2倍以内を良好なレベルとした。FPC−COFタイプの接続抵抗の評価において、いずれの場合も、良好な接続信頼性を示した。また、初期の接続抵抗も低く、高温高湿試験後の抵抗の上昇もわずかであり、高い耐久性を示した。FPC−TCPタイプの接続抵抗の評価において、実施例1、比較例2、3はFPC−COFタイプと同様に良好な接続信頼性を示した。これらに対し、比較例1は初期の抵抗値は低かったが、高温高湿試験後に上昇し、接続信頼性は悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の回路接続材料は、電気・電子用の等方性、異方性接着剤として、幅広く使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態にかかる回路端子の接続方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 第一の基板
1a 第一の回路電極
2 第二の基板
2a 第二の回路電極
3 接着剤
4 導電性粒子
5 加熱加圧ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(4)の成分を必須とする、回路接続材料。
(1)エポキシ樹脂
(2)アニオン重合型硬化剤
(3)ラジカル重合性物質
(4)遊離ラジカルを発生する硬化剤

【図1】
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【公開番号】特開2011−202187(P2011−202187A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157627(P2011−157627)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2006−49624(P2006−49624)の分割
【原出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】