説明

回路接続部の接着剤剥離用組成物およびそれを用いた剥離方法

【課題】補修が必要な部分の接着剤を効率良く剥離でき、かつ接続信頼性に優れた剥離
用組成物及び剥離方法を提供する。
【解決手段】沸点が110℃以上の含酸素系有機溶剤と含窒素系有機溶剤との混合溶剤100重量部に対し、この溶剤に不溶性の多孔質体微粉0.5〜50重量部を含有してなり、含酸素系有機溶剤がアセトニルアセトン、ジアセトンアルコール及びジイソブチルケトンから選ばれる1種以上であり、含窒素系有機溶剤がN−メチルピロリドン及びホルムアミドから選ばれる1種以上であり、チキソトロピックインデックスが1.2以上3.5以下である、回路接続部の接着剤剥離用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤による回路や電極等の接続部の補修に好適な剥離用組成物およびそれを用いた剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型薄型化に伴い、これらに用いる回路や電極等は、高密度、高精細化している。これら微細回路等の接続は、接着剤による方法が最近多用されるようになってきた。この場合、接着剤中に導電性粒子を配合し加圧により接着剤の厚み方向に電気的接続をえるもの(例えば特許文献1)と、導電性粒子を用いないで接続時の加圧により電極面の微細凹凸により電気的接続をえるもの(例えば特許文献2)がある。
【0003】
これら接着剤による接続において、電気的接続が不良であったり、接続後に電子部品や回路が不良になった場合、接続部間を剥離し、残った接着剤を溶剤や剥離液等で除去した後、再度良品を接着剤により接続することがおこなわれる。この時、例えば液晶デイスプレイパネルのような多数の接続用回路を有する1つの電子部品に、多数の例えばICチップのような他の電子部品を接続する場合、前記の接着剤除去法では、周辺部の他の接続部にまで影響し、接続不良や信頼性が低下する問題があった。
【0004】
また、最近ではこの様な用途に使用される接着剤は、接続信頼性に優れることから熱や紫外線等による硬化型が多用されるが、その場合の適当な剥離液がなく接続不良や信頼性が低下する問題を抱えながら使用されていた。これらの対策として先に本発明者等は、補修を要する接着剤面積とほぼ等しい所定形状の多孔質シ−トに剥離液を含ませ、補修を要する接着剤と接触させて剥離させる試みを提案した(特許文献3)。
【特許文献1】特開昭55−104007号公報
【特許文献2】特開昭60−262430号公報
【特許文献3】特開平03−283284号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3(特開平03−283284号公報)の方法は、限定領域の極めて有効な剥離方法であるが、所定形状の多孔質シ−トを補修が必要な部分のみに形成するため、シ−トの正確な切断や裁置、および剥離液の含浸が必要なことから作業性に欠けるきらいがある。また、剥離液中に酸やハロゲン系溶剤を含む場合に、電食が発生し易く接続信頼性が不十分であった。加えて、ガラスエポキシ基板上の回路を接続するような場合に、剥離を要する接着剤の形成面がこれと同様な接着剤材質の近傍にある場合には、剥離液の程度次第で下地の基板の接着剤や回路と基板の接着剤をも劣化させてしまう欠点があった。
【0006】
本発明は、上記欠点を解消すべくなされたものであり、補修が必要な部分のみの接着剤を効率良く剥離でき、かつ接続信頼性に優れた剥離用組成物及び剥離方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、沸点が110℃以上の含酸素系有機溶剤と含窒素系有機溶剤との混合溶剤100重量部に対し、この溶剤に不溶性の多孔質体微粉0.5〜50重量部を含有してなる回路接続部の接着剤剥離用組成物、および剥離を要する接着剤部に前記組成物を接触させ、暫時接触後にこれらを取り除き清浄化する剥離方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、必要部の接着剤を効率良く剥離できるので作業性に優れる。また剥離剤の液状物は、非ハロゲン系の有機溶剤のみであり接続信頼性の維持が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いる有機溶剤について説明すると、接着剤を分解または膨潤、溶解する性質を持つもので、特に硬化後の接着剤を分解または膨潤、溶解し易いものが好ましい。そのため本発明における必須溶剤として、沸点(760mmHg)が110℃以上の含酸素系有機溶剤と含窒素系有機溶剤との混合溶剤を用いる。この様な溶剤は、例えば(株)講談社発行、溶剤ハンドブック、第7刷、632頁〜756頁に示されておりこれらを適用できる。本発明は上記のように沸点(760mmHg)が110℃以上の含酸素系有機溶剤と含窒素系有機溶剤との混合溶剤をもちいることを必須とするが、所望により沸点が100℃以下の有機溶剤を適宜配合してもよい。
【0010】
これらの溶剤を例示すると、含酸素有機溶剤としては、ジアセトンアルコ−ル(沸点168℃)、アセトニルアセトン(191℃)、メシチルオキサイド(129℃)、ジイソブチルケトン(168℃)、ホロン(198℃)、イソホロン(215℃)、2−ヘキサノン(127℃)、メチルイソブチルケトン(116℃)、2−ヘプタノン(150℃)、4−ヘプタノン(144℃)、シクロヘキサノン(155℃)、メチルシクロヘキサノン(170℃)、アセトフェノン(202℃)等である。これらの中では、1分子中に2個以上のカルボニル基を有するものが、特に硬化後の接着剤を分解または膨潤しやすく好ましい。また、含酸素有機溶剤としては、上記ケトン類のほか、エステル類、エーテル類、フェノール類が適用可能である。エステル類としては、酢酸ブチル(沸点126℃)、ギ酸ペンチル(130℃)酢酸ペンチル(150℃)、酢酸ベンジル(213℃)等がある。エーテル類としては、ジブチルエーテル(142℃)、ジヘキシルエーテル(226℃)、アニソール(153℃)、フェネトソール(172℃)、メトキシトルエン(172℃)、ベンジルエチルエーテル(189℃)、トリオキサン(114℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(188℃)等がある。含窒素有機溶剤としては、ホルムアミド(沸点210℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(177℃)、アセトアミド(221℃)、N−メチルホルムアミド(180℃)、N−メチルピロリドン(202℃)、ニトロプロパン(131℃)、ニトロベンゼン(211℃)、2−ピロリドン(245℃)等がある。これらは任意に混合して用いることもできる。これらの沸点は揮発性抑制の点から110℃以上が適用可能であり、120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。
【0011】
剥離液中の溶剤は酸やハロゲン系溶剤を含有しない、非ハロゲン系の有機溶剤であることが、接続信頼性を保持することから必要である。溶剤の粘度は、低い方が剥離すべき接着剤への浸透性がよく好ましい。またSP値は8以上、より好ましくは10以上が、接着剤の浸蝕作用が大きいので好ましい。本発明に用いる多孔質体微粉は、内部または表面に多数の小さな空隙を有するものであり、剥離用組成物の溶剤に不溶性であることが必要である。剥離用組成物を補修が必要な部分のみに形成するためには適用回路類の精細性の点から、空隙の孔径は100μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下である。空隙の度合いをしめす指標として、本発明おいてはBET法比表面積(ASTMD−3037−73)が、1m/g以上のものが好ましく、10m/g以上のものがより好ましく適用できる。
【0012】
また多孔質体の吸油量(JIS K5101)が20以上であるものも好ましく適用できる。本発明に用いる多孔質体微粉が溶剤に溶解性であると、剥離用組成物の揺変性や溶剤の保持性が低下してしまい好ましくないが、これらの特性が大幅に低下せず実用上問題なければ若干の膨潤程度は差支えない。これら多孔質体微粉を例示すると、炭酸カルシウムやマグネシウムなどの炭酸塩、水酸化アルミニウムやマグネシウムなどの水酸化物、酸化亜鉛やマグネシウムなどの酸化物、シリカやスメクタイト、タルク等のケイ酸及びケイ酸塩、スチレンやエポキシ樹脂などのポリマ粒子類などがある。ポリマ粒子類の場合、溶剤による変質防止のため架橋体が好ましい。また、カ−ボンなどの導電性を有するものも、清浄化工程の摩擦により発生する静電気除去作用があり好ましい。これら粒子類は、添加量を少なくしても揺変性を得られることから微粒子状が好ましく、その粒径は10μm以下、より好ましくは粒径1μm以下である。また、架橋ポリマの多孔質シ−ト類や吸水性樹脂類を、粉砕等により微粉化したものも適用可能である。この場合の微粉の大きさは数mm以下、好ましくは数百μm以下と比較的大きなサイズのものまで適用できるので、剥離用組成物中への分散が容易であり、さらに溶剤の保持量を多量とすることが可能となり好ましい。微粉化したものと前記微粒子状の物は混合して用いることも可能である。
【0013】
以上よりなる組成物を液状に調整して、本発明になる剥離用組成物を得る。液状とする理由は、補修が必要な部分のみに容易に形成容易とするためである。この時、組成物の粘度(JIS K6833)は、100cps以上が好ましく、800cps以上がより好ましい。粘度の上限は、100、000cps程度のペ−スト状までの広い範囲が適用できる。また同法によるチキソトロピックインデックスは、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。粘度が低いと接着剤への浸透性に優れ、チキソトロピックインデックスが大きいと細部への精密な形成性が向上する。これらの理由から多孔質体微粉の添加量は、前記溶剤100重量部に対し0.5〜50重量部が適用可能であり、1〜20重量部がより好ましい。剥離用組成物中には、例えば使用溶剤に可溶な増粘剤としてのポリマ類や、剥離すべき接着剤への溶剤の浸透性を増進する界面活性剤、形成領域を明示するための着色材、などを必要に応じて使用することもできる。
【0014】
以上よりなる剥離用組成物を用いた剥離方法について説明する。まず補修を要する接続部の相互の接合部を必要に応じて剥離させ、剥離を要する接着剤面を露出させる。この時例えば接着剤のガラス転移点以上に加熱しながら行うと剥離が容易である。補修面積が微小の場合など、接合部に剥離用組成物が簡単に浸入出来る場合、本工程は省略することもできる。次に、剥離を要する接着剤露出面に剥離用組成物を形成し暫時接触させる。形成手段としては、剥離用組成物が液状なので、例えば刷毛、デイスペンサ、シルクスクリ−ン等適宜選択出来る。この時、周辺部への悪影響を防止するためマスキングテ−プ等により、除去しない部分を保護しても良い。接触時間は、接着剤を分解または溶解する時間で決定する。この時高沸点溶剤の揮発を抑制出来る程度に加熱しながら行うと、接着剤を分解または溶解することがさらに容易となり作業時間の短縮に有効である。この後、剥離用組成物の形成面を、布、紙、綿棒等で拭きとるか、これらにアセトンやアルコ−ル等の溶剤を含浸させたもので拭きとる等により、接着剤を取り除き清浄化する。
【0015】
本発明が適用される接着剤は、硬化剤が触媒硬化型の例えばエポキシ樹脂が主成分であると好適である。すなわち、回路接続用接着剤は短時間硬化が求められることから、開環重合を開始させる触媒硬化型が用いられる。一方、基板や基板と回路との接着剤は重付加型が多用され、これらの硬化物の構造が異なるために耐溶剤性に差を生じる。一般的に触媒硬化型に比べ重付加型は、高度に網状化されないと機械的物性の発現が不十分なため、硬化反応を十分に行い製品化されており耐溶剤性が強い。触媒硬化型の例としては、ベンジルジメチルアミン等の第3アミン、2メチルイミダゾ−ル等のイミダゾ−ル類、ルイス酸やオニウム塩などのカチオン触媒がある。重付加型の例としては、ポリアミン、フェノ−ルノボラックやレゾ−ル、ポリメルカプタン、酸無水物などである。
【0016】
本発明によれば、剥離を要する接着剤部に剥離用組成物を形成し暫時接触させる。この時多孔質体微粉を含有しているので、剥離用組成物は揺変(チキソトロピ−)性を有し、剥離を要する接着剤部に剥離用組成物を形成する時は液状で比較的低粘度のため形成が容易であるが、形成後の静置により増粘剤として作用し必要部外への流出を防ぎ補修が必要な部分のみへの形成を容易にする。また多孔質体微粉の空隙部に充填されていた溶剤は、接触過程で接着剤との界面にしみだし剥離を要する接着剤部を常時湿潤して、接着剤と任意の時間接触することができる。この時、組成物中に沸点が高い化合物を含むので揮発しにくい。また剥離用組成物中には、接着剤を分解または溶解、膨潤する性質が強い有機溶剤を含有しているので、剥離可能な状態にすることができる。剥離用組成物中の溶剤は有機溶剤のみなので、補修部および/またはその周辺部の接続信頼性を保持することが可能であり、剥離液中に酸やハロゲン系溶剤を含有しないので、特にこの効果が顕著である。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
参考例1〜3
(1)剥離用組成物の作成
アセトニルアセトンにアエロジル130(高純度シリカ、粒径約16mμ、BET法比表面積130m/g、130と略)の配合比(重量比で、1部…参考例1、5部…参考例2、10部…参考例3)を変えて、乳鉢で練り添加した。参考例1〜3の粘度(JIS K6833)およびチキソトロピックインデックス(TI)は、250cps,1.3(参考例1)、800cps,2.0(参考例2)、1500cps,3.5(参考例1)であった。
(2)接続体
ITO回路端子を有するガラス基板と、接続幅が10mmのFPC回路基板(いずれも回路幅50μm,回路間隔50μm)3枚を間隔0.5mmで、異方導電性接着フィルム(イミダゾ−ル系の触媒型硬化剤含有のエポキシ系接着剤が主成分、日立化成工業株式会社製商品名アニソルムAC−7073、厚み25μm)を用いて、170℃−20kg/cm−20秒で導電接続した。本接続条件により接着剤は硬化し十分な接続信頼性が得られることを確認した。
(3)剥離
上記(2)の接続体の中央のFPC回路基板のみを、機械的に静かに剥がした。このガラス基板及びFPC回路基板の剥離面には接続により硬化した接着剤が残存した。この剥離面上に(1)の剥離用組成物をテトラフルオロエチレン製のスパチュラにより厚さ約2〜3mmとなるように形成した。この時参考例1〜3の番号が後になるほど粘度が高くペ−スト状に近い状態であり、形成が容易であった。その状態で30分放置した後、綿棒でこすり接着剤及び剥離用組成物を除去し、さらにアセトンを含浸した綿棒で清浄化した。同様にFPC回路も清浄化した。両者とも剥離用組成物の他部への浸透がなく、必要部のみの剥離が可能であった。
(4)再接続
前項でえた清浄化したガラス基板及びFPCを用いて、前記と同様にAC−7073により再接続した。再接続を行ったFPC回路部の接続抵抗及び、これと隣接するFPC回路の接続抵抗と、接着剤の除去を実施する前の接続抵抗との差は、±0.5Ω以内で、各実施例とも接続抵抗の上昇は見られなかった。また参考例1〜3に用いたFPCは、銅箔とポリイミド基材の接着剤として、やはりエポキシ系接着剤が主成分(硬化剤はヘキサヒドロ無水フタル酸/ジシアンジアミド系)であったが、この接着剤の劣化は見られなかった。この理由として、FPC接着剤は重付加型であるのに対し、異方導電性接着フィルムの接着剤は開環重合を開始させる触媒硬化型であり、硬化物の構造が異なるために剥離性に差を生じたものと考えられる。
【0018】
比較例1
参考例1〜3と同様であるが、剥離用組成物の多孔質体微粉を含まない場合である。この場合、剥離用組成物を形成放置した際に隣接するFPC回路部にまで流れてしまい、隣接したFPCの接続抵抗が上昇してしまった。
【0019】
実施例1〜5
(1)剥離用組成物の作成
アセトニルアセトン(AA)/N−メチルピロリドン(NMP)/アエロジル(AE)130(高純度シリカ、粒径約16mμ、BET法比表面積130m/g、130と略)の配合比を表1のように変えて、乳鉢で練り添加した。これらの粘度(JIS K6833)およびチキソトロピックインデックス(TI)は、実施例1(1000cps,TI2.1)、実施例2(250、1.3)、実施例3(700、2.1)、実施例4(1500、3.5)、実施例5(500、1.9)であった。
(2)接続体
ITO回路端子を有するガラス基板と、接続幅が10mmのFPC回路基板(いずれも回路幅50μm,回路間隔50μm)3枚を間隔0.5mmで、異方導電性接着フィルム(イミダゾ−ル系の触媒型硬化剤含有のエポキシ系接着剤が主成分、日立化成工業株式会社製商品名アニソルムAC−7073、厚み25μm)を用いて、170℃−20kg/cm−20秒で導電接続した。本接続条件により接着剤は硬化し十分な接続信頼性が得られることを確認した。
(3)剥離
上記(2)の接続体の中央のFPC回路基板のみを、機械的に静かに剥がした。このガラス基板及びFPC回路基板の剥離面には接続により硬化した接着剤が残存した。この剥離面上に(1)の剥離用組成物をテトラフルオロエチレン製のスパチュラにより厚さ約2〜3mmとなるように形成した。その状態で30分放置した後、綿棒でこすり接着剤及び剥離用組成物を除去し、さらにアセトンを含浸した綿棒で清浄化した。同様にFPC回路も清浄化した。両者とも剥離用組成物の他部への浸透がなく、必要部のみの剥離が可能であった。
(4)再接続
前項でえた清浄化したガラス基板及びFPCを用いて、前記と同様にAC−7073により再接続した。再接続を行ったFPC回路部の接続抵抗及び、これと隣接するFPC回路の接続抵抗と、接着剤の除去を実施する前の接続抵抗との差は、±0.5Ω以内で、各実施例とも接続抵抗の上昇は見られなかった。また実施例1〜5に用いたFPCは、銅箔とポリイミド基材の接着剤として、やはりエポキシ系接着剤が主成分(硬化剤はヘキサヒドロ無水フタル酸/ジシアンジアミド系)であったが、この接着剤の劣化は見られなかった。この理由として、FPC接着剤は重付加型であるのに対し、異方導電性接着フィルムの接着剤は開環重合を開始させる触媒硬化型であり、硬化物の構造が異なるために剥離性に差を生じたものと考えられる。
【0020】
実施例6〜10
実施例1〜5と同様であるが、剥離用組成物の種類と組成をかえた。すなわち新しくジアセトンアルコ−ル(DA)、ジイソブチルケトン(DB)、ホルムアミド(HA),スメクタイトSAN(合成スメクタイト、BET法比表面積750m/g,SAN)である。各実施例とも剥離用組成物が揺変性を有しているので形成が容易であり、形成後の静置により増粘して必要部外への流出を防ぎ補修が必要な部分のみへの形成が容易であった。また再接続部の接続抵抗の上昇は見られず良好な再接続が可能であった。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例11
実施例3の剥離用組成物を用いて、接続体の構成を変えた。すなわち、半導体チップ(3×10mm,高さ0.5mm,主面の4辺周囲にバンプとよばれる100μm角、高さ20μmの突起した金電極が存在)のバンプ配置と対応した接続端子を有する厚み1mmのガラスエポキシ基板(回路は銅箔で厚み18μm、接着剤は、エポキシ樹脂が主成分で硬化剤はジアミノジフェニルメタン/イミダゾ−ル系)を用意した。実施例1と同様に、異方導電性接着フィルム(イミダゾ−ル系アニオン重合触媒硬化剤含有のエポキシ系接着剤が主成分、日立化成工業株式会社製商品名アニソルムAC−8201、厚み30μm)を用いて、170℃−20kg/cm−20秒で導電接続した。本接続条件により接着剤は硬化し十分な接続信頼性が得られることを確認した。上記に続いて接続体を熱盤上で180℃に加熱しながら、剪断力を加えながら静かにはがした。この剥離面に実施例1と同様に剥離用組成物を形成した。20分放置後、テトラフルオロエチレン製のピンセットを用いて、除去、清浄化、および再接続を行なった。両実施例共に剥離用組成物の他部への浸透がなく、必要部のみの接着剤除去が可能であった。また再接続後の接続抵抗は良好であり、信頼性に優れていた。
【0023】
実施例12
実施例11と同様であるが、半導体チップを強制的に剥離せずに、接続部周辺の接着剤はみ出し部に剥離用組成物を形成し、24時間放置後に剥離したところ、簡単に剥離可能であった。以下実施例11と同様な評価を実施したが、良好な再接続が可能であった。以上の実施例11、12においても、異方導電性接着フィルムとガラスエポキシ基板との硬化物の構造が異なるために、ガラスエポキシ基板の接着剤の劣化は目視観測では認められなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が110℃以上の含酸素系有機溶剤と含窒素系有機溶剤との混合溶剤100重量部に対し、この溶剤に不溶性の多孔質体微粉0.5〜50重量部を含有してなり、前記含酸素系有機溶剤がアセトニルアセトン、ジアセトンアルコール及びジイソブチルケトンから選ばれる1種以上であり、前記含窒素系有機溶剤がN−メチルピロリドン及びホルムアミドから選ばれる1種以上であり、チキソトロピックインデックスが1.2以上3.5以下である、回路接続部の接着剤剥離用組成物。
【請求項2】
剥離を要する回路接続部に請求項1の組成物を接触させ、暫時接触後に清拭・清浄化することからなる回路接続部の剥離方法。
【請求項3】
回路接続部の接着剤が、触媒硬化型のエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項2記載の回路接続部の剥離方法。



【公開番号】特開2008−144177(P2008−144177A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332991(P2007−332991)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願2004−68937(P2004−68937)の分割
【原出願日】平成7年9月18日(1995.9.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】