説明

回路構成体、及び電気接続箱

【課題】本発明は、製造工程に掛かる時間を短縮可能な回路構成体、及び電気接続箱を提供する。
【解決手段】回路構成体12は、表面17側と裏面18側とを連通する切欠部32を有し、且つ表面17に導電路19が形成された回路基板20と、回路基板20の裏面18に積層された第1バスバー21と、回路基板20の第1面が露出した状態で回路基板20と第1バスバー21とを一体にモールド成形してなるモールド樹脂部材22と、第1バスバー21に設けられて、回路基板20の切欠部32内に位置して配されると共にモールド樹脂部材22から露出する第1露出部33と、回路基板20の切欠部32内に配設されて第1バスバー21の露出部と電気的に接続された半導体リレー34と、半導体リレー34と回路基板20の導電路19とをワイヤーボンディングにより接続する第1金属線37と、備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路構成体、及び電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されて、ランプ、ホーン等の車載電装品のスイッチングを実行する電気接続箱としては、特許文献1に記載のものが知られている。この電気接続箱は、ケースと、このケース内に収容された回路構成体と、を備えてなる。回路構成体は、回路基板と、この回路基板の一方の面に接着されたバスバーと、を備える。回路基板には貫通孔が形成されており、この貫通孔内には半導体スイッチング素子が収容されている。この半導体スイッチング素子は、貫通孔内に露出するバスバーと電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−164039公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記の構成によると、回路基板と、バスバーとを接着する際に、回路基板とバスバーとを積層した状態でプレスし、接着剤を加熱硬化する工程が必要となる。このため、製造工程に時間が掛かるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、製造工程に掛かる時間を短縮可能な回路構成体、及び電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回路構成体であって、第1面及び第2面を有すると共に前記第1面側と前記第2面側とを連通する切欠部を有し、且つ前記第1面に導電路が形成された回路基板と、前記回路基板の第2面に積層された第1バスバーと、前記回路基板の第1面が露出した状態で前記回路基板と前記第1バスバーとを一体にモールド成形してなるモールド樹脂部材と、前記第1バスバーに設けられて、前記回路基板の切欠部内に位置して配されると共に前記モールド樹脂部材から露出する第1露出部と、前記回路基板の切欠部内に配設されて前記第1露出部と電気的に接続された半導体リレーと、前記半導体リレーと前記回路基板の導電路とをワイヤーボンディングにより接続する第1金属線と、を備える。
【0007】
また、本発明は、電気接続箱であって、ケース内に前記回路構成体を収容してなる。
【0008】
本発明によれば、第1バスバーと回路基板とはモールド成形により一体とされているので、接着剤をプレスして加熱硬化する工程が不要となる。これにより回路構成体、及び電気接続箱の製造工程に掛かる時間を短縮できる。
【0009】
また、回路基板の導電路と、半導体リレーとは第1金属線を介してワイヤーボンディングにより接続されている。これにより、半導体リレーから突出して設けられたリード端子を回路基板の導電路に半田付けする場合に比べて、回路設計の自由度が高くなる。
【0010】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記回路基板には基板貫通孔が形成されており、前記基板貫通孔内には、モールド成形により前記モールド樹脂部材が充填されていることが好ましい。
【0011】
上記の態様によれば、回路基板がモールド樹脂部材から離間する方向の力が生じた場合でも、基板貫通孔内に充填されたモールド樹脂部材と基板貫通孔の内周面との間の摩擦により、回路基板とモールド樹脂部材とが積層された状態を保持できる。
【0012】
前記第1バスバーには、外部回路に接続されたワイヤーハーネスと接続可能なコネクタ端子部が、前記モールド樹脂部材から突出して設けられていることが好ましい。
【0013】
コネクタ端子部にワイヤーハーネスを接続したり離脱したりすると、第1バスバーにはコネクタ端子部を介して力が加わる。すると、第1バスバーと回路基板とが剥離することが懸念される。上記の態様によれば、第1バスバーに加えられた力は、回路基板と第1バスバーとを一体化するモールド樹脂部材によって受けられるので、第1バスバーと回路基板とが剥離することが抑制される。
【0014】
また、通電時に半導体リレーで発生した熱は、第1バスバーに伝達された後、コネクタ端子部を介してワイヤーハーネスに伝達される。これにより、半導体リレーで発生した熱をワイヤーハーネスに放散させることができるので、回路構成体の放熱性を向上させることができる。
【0015】
前記モールド樹脂部材には更に第2バスバーがモールド成形されており、前記第2バスバーには前記モールド樹脂部材から露出する第2露出部が形成されており、前記第2露出部と前記半導体リレーとは第2金属線を介してワイヤーボンディングにより接続されていることが好ましい。
【0016】
上記の態様によれば、半導体リレーに設けられたリード端子を第2バスバーに半田付けする場合に比べて、回路設計の自由度が高くなる。
【0017】
前記回路基板の導電路はプリント配線技術により形成されており、前記導電路にはランドが設けられており、前記ランドには金属板材からなる中継部材が電気的に接続されており、前記中継部材は前記第1金属線と接続されていることが好ましい。
【0018】
回路基板にプリント配線技術により形成された導電路は金属箔からなるので、比較的に大きな力を加えると、回路基板から導電路が剥離するおそれがある。また、プリント配線板は比較的に低剛性であり、ボンディング時のエネルギーが減衰することで接続強度が下がるおそれもある。このため、公知のウェッジボンディングによっては、第1金属線を導電路に接続することが困難であった。上記の態様によれば、ランドには金属板材からなる中継部材が接続されている。この中継部材に対しては、比較的に大きな力を加えることができるので、回路基板に形成された導電路と、第1金属線とを、ウェッジボンディングにより電気的に接続できる。
【0019】
前記ケース内には、前記回路構成体に密着すると共に前記ケースの内面と密着する伝熱部材が配されていることが好ましい。
【0020】
上記の態様によれば、通電時に回路構成体で発生した熱は、回路構成体と密着する伝熱部材に伝達される。この伝達部材はケースの内面と密着しているので、伝達部材からケースへと熱が伝達される。その後、熱はケースの外面から外部に放散される。これにより、電気接続箱の放熱性を向上させることができる。
【0021】
前記モールド樹脂部材には、前記第1バスバーに達する深さ寸法を有する伝熱孔が形成されており、前記伝熱孔内には前記伝熱部材が充填されており、前記伝熱部材は前記第1バスバーと密着していることが好ましい。
【0022】
上記の態様によれば、通電時に半導体リレーで発生した熱は、第1バスバーに伝達された後、第1バスバーと密着する伝熱部材に伝達される。その後、熱は伝熱部材からケースに伝達され、ケースの外面から外部に放散される。これにより、電気接続箱の放熱性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回路構成体、及び電気接続箱の製造工程に掛かる時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る電気接続箱を示す平面図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】図1におけるIII−III線断面図
【図4】図1における半導体リレーの近傍を拡大して示す一部拡大平面図
【図5】回路構成体の製造工程を示す断面図
【図6】回路構成体の製造工程を示す断面図
【図7】回路構成体の製造工程を示す断面図
【図8】回路構成体の製造工程を示す断面図
【図9】回路構成体の製造工程を示す断面図
【図10】回路構成体の製造工程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を車載用の電気接続箱10に適用した一実施形態を図1ないし図10を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電気接続箱10は、電源(図示せず)と、ランプ、ホーン等の車載電装品(図示せず)と、の間に配設されて、車載電装品に対してスイッチングを実行する。電気接続箱10は、合成樹脂製のケース11と、このケース11内に収容された回路構成体12と、を備える。なお、以下の説明においては、図1における上方を前方とし、下方を後方とする。また、図2における上側を表側とし、下側を裏側として説明する。
【0026】
(ケース11)
図1に示すように、ケース11は、表裏方向(図1において紙面を貫通する方向)から見て略長方形状をなしている。また、図2に示すように、ケース11は、表裏方向(図2における上下方向)について扁平な形状をなしている。
【0027】
図1に示すように、ケース11の前端(図1における上端)には、合成樹脂製であって、前方(図1における上方)に開口する複数(本実施形態では3つ)のコネクタハウジング13が取り付けられている。コネクタハウジング13内には、図示しない外部回路に接続されたワイヤーハーネス14が接続可能になっている。ワイヤーハーネス14は、電線15と、この電線15の端部に接続された相手側コネクタ16と、を備える。相手側コネクタ16は、コネクタハウジング13の開口内に嵌合可能になっている。コネクタハウジング13は、図1における左から順に、第1コネクタハウジング13A、第2コネクタハウジング13B、及び第3コネクタハウジング13Cとされる。
【0028】
(回路構成体12)
図2に示すように、回路構成体12は、表面17(特許請求の範囲に記載の第1面に相当、図2における上面)と、裏面18(特許請求の範囲に記載の第2面に相当、図2における下面)と、を有する回路基板20を備える。回路基板20の表面17にはプリント配線技術により導電路19が形成されている。なお、図2においては、相手側コネクタ16、及び電線15は省略してある。
【0029】
図2に示すように、回路基板20の裏面18(図2における下面)には、回路基板20の板面に沿うように第1バスバー21が積層されている。回路構成体12は、回路基板20の裏面18に第1バスバー21を積層した状態で一体にモールド成形してなるモールド樹脂部材22を備える。回路基板20の表面17(図2における上面)は、モールド樹脂部材22から露出している。
【0030】
第1バスバー21は、金属板材を所定形状にプレス加工することにより形成される。図1に示すように、第1バスバー21は、表裏方向(図1において紙面を貫通する方向)から見て略L字状をなしており、前後方向(図1における上下方向)に延びる部分と、この部分の後端(図1における下端)から、図1における右方に延びる部分と、を有する。
【0031】
第1バスバー21の前端(図1における上端)は、モールド樹脂部材22から前方に突出しており、上述したワイヤーハーネス14と電気的に接続可能な第1コネクタ端子部23(特許請求の範囲に記載のコネクタ端子部に相当)とされる。第1コネクタ端子部23は、ケース11と、上述した第1コネクタハウジング13Aとを貫通して、第1コネクタハウジング13A内に位置して配されている。この第1コネクタハウジング13A内に、ワイヤーハーネス14の相手側コネクタ16が嵌合することにより、ワイヤーハーネス14と第1バスバー21とが電気的に接続される。第1コネクタハウジング13Aと接続可能なワイヤーハーネス14は電源と接続されている。この第1コネクタ端子部23には、電気接続箱10に供給される電力が入力されるようになっている。
【0032】
図1に示すように、回路基板20には、第1バスバー21の近傍に、回路基板20を貫通する複数(本実施形態では4つ)の基板貫通孔24が形成されている。基板貫通孔24内には、モールド樹脂部材22が充填されている。
【0033】
図1に示すように、モールド樹脂部材22の前端部寄りの位置には、複数(本実施形態では4つ)の第2バスバー25が、一体にモールド成形されている。第2バスバー25は金属板材を所定の形状にプレス加工して形成される。第2バスバー25は、前後方向に細長い形状をなしており、図1における左右方向について、互いに隙間を空けて並んで配されている。
【0034】
第2バスバー25の前端(図1における上端)は、モールド樹脂部材22から前方(図1における上方)に突出しており、上述したワイヤーハーネス14と電気的に接続可能な第2コネクタ端子部26とされる。第2コネクタ端子部26は、ケース11と、上述した第2コネクタハウジング13Bとを貫通して、第2コネクタハウジング13B内に位置して配されている。この第2コネクタハウジング13B内に、ワイヤーハーネス14の相手側コネクタ16が嵌合することにより、ワイヤーハーネス14と第2バスバー25とが電気的に接続される。第2コネクタハウジング13Bと接続可能なワイヤーハーネス14は、車載電装品と接続されている。この第2コネクタ端子部26からは、車載電装品に供給する電力が出力されるようになっている。
【0035】
回路基板20の前端部(図1における上端部)寄りの位置には、図1における右端部寄りの位置に、複数(本実施形態では4つ)のコネクタ端子27が図1における左右方向に並んで配されている。図3に示すように、コネクタ端子27の前端部(図3における右端部)は、ケース11と、第3コネクタハウジング13Cとを貫通して、第3コネクタハウジング13C内に位置して配されている。コネクタ端子27の後端部は、裏側(図3における下側)に直角に曲げ加工されて、回路基板20に貫通されており、回路基板20の導電路19と半田付け等の公知の手法により電気的に接続されている。なお、図3においては、相手側コネクタ16、及び電線15は省略してある。
【0036】
第3コネクタハウジング13C内に、ワイヤーハーネス14の相手側コネクタ16が嵌合することにより、ワイヤーハーネス14とコネクタ端子27とが電気的に接続される。第3コネクタハウジング13Cと接続可能なワイヤーハーネス14は、図示しないマイコンと接続されている。このマイコンは、後述する半導体リレー34のオンオフを制御する制御信号を出力する。マイコンと接続されることにより、コネクタ端子27には、電気接続箱10を制御する制御信号が入力される。
【0037】
コネクタ端子27は、回路基板20の表面17に配された支持部28に載置されている。この支持部28によって、各コネクタ端子27同士のアライメントが保持されている。図1に示すように、支持部28の左右両端部に表裏方向(図1における紙面を貫通する方向)に貫通する支持部貫通孔29が形成されている。この支持部貫通孔29内には、モールド樹脂部材22が充填されている。これにより支持部28は回路基板20と一体に配される。
【0038】
図2に示すように、回路構成体12の裏側(図2における右側)には、回路構成体12と密着する、合成樹脂製の伝熱部材30が配されている。本実施形態では、伝熱部材30は、モールド樹脂部材22の裏面18と密着している。また、伝熱部材30の裏側(図2における右側)は、ケース11の内面と密着している。伝熱部材30を構成する合成樹脂材としては、モールド樹脂部材22を構成する合成樹脂材よりも熱伝導率の大きな材料が用いられている。本実施形態では、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。
【0039】
モールド樹脂部材22には、第1バスバー21にまで達する深さ寸法を有する伝熱孔31が、表裏方向(図2における上下方向)を向いて形成されている。この伝熱孔31内には、伝熱部材30が充填されている。伝熱孔31内に充填された伝熱部材30は、第1バスバー21の裏面(図2における右側面)と密着している。
【0040】
(半導体リレー34)
図1に示すように、回路基板20の前端縁(図1における上端縁)には、後方(図1における下方)に切り欠いた切欠部32が形成されている。図2に示すように、この切欠部32により、回路基板20の表面17側(図2における上面側)と、裏面18側(図2における下面側)とが連通している。図1に戻って、上記の切欠部32内には、第1バスバー21のうちモールド樹脂部材22から露出する第1露出部33が配されている。第1露出部33には複数(本実施形態では4つ)の半導体リレー34が半田付け等の公知の手法により電気的に接続されている。この半導体リレー34はいわゆるベアチップが用いられる。第1露出部33には、半導体リレー34の裏面に形成された入力端子(図示せず)が接続されている。
【0041】
図2に示すように、モールド樹脂部材22の伝熱孔31は、第1バスバー21の裏側のうち半導体リレー34が接続された位置と対応する領域に形成されている。これにより、通電時に半導体リレー34で発生した熱を、効率よく伝熱部材30に伝達させることができるようになっている。
【0042】
図2に示すように、回路基板20の導電路19には、切欠部32の後方(図2における左方)であって、各半導体リレー34と対応する位置に、ランド35が形成されている。このランド35の表面(図2における上面)には、金属板材からなる中継部材36が、半田付け等の公知の手法により電気的に接続されている。
【0043】
図1に示すように、半導体リレー34と、中継部材36とは、第1金属線37によって電気的に接続されている。これにより、回路基板20の導電路19と、半導体リレー34とが電気的に接続される。詳細には、図4に示すように、第1金属線37は、半導体リレー34の制御端子38と接続されると共に、中継部材36と接続されている。第1金属線37と、半導体リレー34の制御端子38及び中継部材36とは、公知のワイヤーボンディングにより接続されている。本実施形態においては、公知のウェッジボンディングにより接続されている。
【0044】
図1に示すように、第2バスバー25の後端(図1における下端)には、モールド樹脂部材22から露出する第2露出部39が形成されている。半導体リレー34と、第2露出部39とは、第2金属線40によって電気的に接続されている。詳細には、図4に示すように、各半導体リレー34の出力端子41と、各第2バスバー25の第2露出部39とが電気的に接続されている。第2金属線40と、半導体リレー34の出力端子41及び打2バスバーの第2露出部39とは、公知のワイヤーボンディングにより接続されている。本実施形態においては、公知のウェッジボンディングにより接続されている。なお、第2露出部39の前端部(図2における右端部)の位置は、ウェッジボンディング時に、第2金属線40を接続するための治具と、モールド樹脂部材22とが干渉しない位置に設定されている。
【0045】
図2に示すように、回路基板20の切欠部32を含んで、切欠部32よりもやや広い領域は、ポッティング材42によって埋設されている。ポッティング材としては、第1金属線37及び第2金属線40に応力が加わることを抑制する観点から、ヤング率の比較的に低い材料を用いるのが好ましい。このポッティング材42によって、第1バスバー21の第1露出部33、第2バスバー25の第2露出部39、半導体リレー34、第1金属線37、第2金属線40、ランド35、及び中継部材36が埋設されている。このポッティング材42によって、電気接続箱10に加えられた振動によって第1金属線37、及び第2金属線40が共振することが抑制される。この結果、第1金属線37、及び第2金属線40が半導体リレー34から離脱することが抑制される。なお、図1においては、ポッティング材42は省略してある。
【0046】
(製造工程)
続いて、本実施形態に係る電気接続箱10の製造工程の一例を説明する。まず、図5に示すように、回路基板20の裏面18(図5における下面)に第1バスバー21を積層すると共に、所定の位置に第2バスバー25を配置した状態で、モールド成形することにより、回路基板20、第1バスバー21、及び第2バスバー25を一体に成形する。
【0047】
次に、図6に示すように、ランド35の表面に中継部材36を半田付けすると共に、第1バスバー21の第1露出部33に半導体リレー34を半田付けする。
【0048】
その後、図7に示すように、公知のウェッジボンディングにより、第1金属線37の一方の端部を中継部材36に接続すると共に、他方の端部を半導体リレー34の制御端子38に接続する。
【0049】
また、公知のウェッジボンディングにより、第2金属線40の一方の端部を第2バスバー25の第2露出部39に接続すると共に、半導体リレー34の出力端子41に接続する。
【0050】
続いて、図8に示すように、液状のポッティング材42を、切欠部32を含んで切欠部32よりもやや広い領域に流し込んだ後、固化させる。続いて、図9に示すように、回路構成体12の裏面(図9における下面)に密着するようにして伝熱部材30を積層する。なお、伝熱部材30を積層した後に、ポッティング材42の充填、固化してもよい。以上により、回路構成体12が完成する。
【0051】
その後、図10に示すように、回路構成体12をケース11内に収容し、第1コネクタハウジング13Aないし第3コネクタハウジング13Cをケース11に組み付けることにより、電気接続箱10が完成する。
【0052】
(作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態によれば、第1バスバー21と回路基板20とはモールド成形により一体とされているので、第1バスバー21と回路基板20とを接着剤で接着する場合と比較して、接着剤を加熱硬化する工程が不要となる。これにより回路構成体12、及び電気接続箱10の製造工程に掛かる時間を短縮できる。
【0053】
また、回路基板20の導電路19と、半導体リレー34とは第1金属線37を介してワイヤーボンディングにより接続されている。これにより、半導体リレー34から突出して設けられたリード端子を回路基板20の導電路19に半田付けする場合に比べて、回路設計の自由度が高くなる。
【0054】
また、本実施形態によれば、回路基板20には基板貫通孔24が形成されており、この基板貫通孔24内には、モールド成形によりモールド樹脂部材22が充填されている。これにより、回路基板20がモールド樹脂部材22から離間する方向の力が生じた場合でも、基板貫通孔24内に充填されたモールド樹脂部材22と基板貫通孔24の内周面との間の摩擦により、回路基板20とモールド樹脂部材22とが積層された状態を保持できる。
【0055】
また、第1コネクタ端子部23にワイヤーハーネス14を接続したり離脱したりすると、第1バスバー21には第1コネクタ端子部23を介して力が加わる。すると、第1バスバー21と回路基板20とが剥離することが懸念される。本実施形態によれば、第1バスバー21に加えられた力は、回路基板20と第1バスバー21とを一体化するモールド樹脂部材22によって受けられるので、第1バスバー21と回路基板20とが剥離することが抑制される。
【0056】
また、本実施形態によれば、第2バスバー25と第2金属線40とはワイヤーボンディングにより接続されている。これにより、半導体リレー34に設けられたリード端子を第2バスバー25に半田付けする場合に比べて、回路設計の自由度が高くなる。
【0057】
また、回路基板20にプリント配線技術により形成された導電路19は金属箔からなるので、比較的に大きな力を加えると、回路基板20から導電路19が剥離するおそれがある。また、プリント配線板は比較的に低剛性であり、ボンディング時のエネルギーが減衰することで接続強度が下がるおそれもある。このため、公知のウェッジボンディングによっては、第1金属線37を導電路19に接続することが困難であった。本実施形態によれば、ランド35には金属板材からなる中継部材36が接続されている。この中継部材36に対しては、比較的に大きな力を加えることができるので、回路基板20に形成された導電路19と、第1金属線37とを、ウェッジボンディングにより電気的に接続できる。
【0058】
また、通電時に半導体リレー34で発生した熱は、第1バスバー21に伝達された後、第1コネクタ端子部23を介してワイヤーハーネス14に伝達される。これにより、半導体リレー34で発生した熱をワイヤーハーネス14に放散させることができるので、回路構成体12の放熱性を向上させることができる。
【0059】
そして、本実施形態によれば、ケース11内には、回路構成体12に密着すると共にケース11の内面と密着する伝熱部材30が配されている。これにより、通電時に回路構成体12で発生した熱は、回路構成体12と密着する伝熱部材30に伝達される。この伝達部材はケース11の内面と密着しているので、伝達部材からケース11へと熱が伝達される。その後、熱はケース11の外面から外部に放散される。これにより、電気接続箱10の放熱性を向上させることができる。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、モールド樹脂部材22には、第1バスバー21に達する深さ寸法を有する伝熱孔31が形成されており、伝熱孔31内には伝熱部材30が充填されており、伝熱部材30は前記第1バスバー21と密着している。これにより、通電時に半導体リレー34で発生した熱は、第1バスバー21に伝達された後、第1バスバー21と密着する伝熱部材30に伝達される。その後、熱は伝熱部材30からケース11に伝達され、ケース11の外面から外部に放散される。これにより、電気接続箱10の放熱性を一層向上させることができる。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)回路基板20の基板貫通孔24は省略してもよい。
(2)モールド樹脂部材22の伝熱孔31は省略してもよい。
(3)伝熱部材30は省略してもよい。
(4)回路基板20の切欠部32は、回路基板20を貫通する孔としてもよい。
(5)本実施形態においては、第1バスバー21は入力用とし、第2バスバー25は出力用としたが、第1バスバー21を出力用とし、第2バスバー25を入力用としてもよい。
(6)本実施形態においては、半導体リレー34と、第1バスバー21、第2バスバー25、及び中継部材36とは、ウェッジボンディングにより接続する構成としたが、これに限られず、ボールボンディングにより接続する構成としてもよい。
(7)第1バスバー21は、2つ以上の複数であってもよい。また、第2バスバー25は、1つ、又は2つ〜3つ、若しくは5つ以上の複数であってもよい。
(8)半導体リレー34は、1つ、又は2つ〜3つ、若しくは5つ以上の複数であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…電気接続箱
11…ケース
12…回路構成体
14…ワイヤーハーネス
17…表面(第1面)
18…裏面(第2面)
19…導電路
20…回路基板
21…第1バスバー
22…モールド樹脂部材
23…第1コネクタ端子部(コネクタ端子部)
24…基板貫通孔
25…第2バスバー
30…伝熱部材
31…伝熱孔
32…切欠部
33…第1露出部
34…半導体リレー
35…ランド
36…中継部材
37…第1金属線
39…第2露出部
40…第2金属線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有すると共に前記第1面側と前記第2面側とを連通する切欠部を有し、且つ前記第1面に導電路が形成された回路基板と、前記回路基板の第2面に積層された第1バスバーと、前記回路基板の第1面が露出した状態で前記回路基板と前記第1バスバーとを一体にモールド成形してなるモールド樹脂部材と、前記第1バスバーに設けられて、前記回路基板の切欠部内に位置して配されると共に前記モールド樹脂部材から露出する第1露出部と、前記回路基板の切欠部内に配設されて第1露出部と電気的に接続された半導体リレーと、前記半導体リレーと前記回路基板の導電路とをワイヤーボンディングにより接続する第1金属線と、を備えた回路構成体。
【請求項2】
前記回路基板には基板貫通孔が形成されており、前記基板貫通孔内には、モールド成形により前記モールド樹脂部材が充填されている請求項1に記載の回路構成体。
【請求項3】
前記第1バスバーには、外部回路に接続されたワイヤーハーネスと接続可能なコネクタ端子部が、前記モールド樹脂部材から突出して設けられている請求項1または請求項2に記載の回路構成体。
【請求項4】
前記モールド樹脂部材には更に第2バスバーがモールド成形されており、前記第2バスバーには前記モールド樹脂部材から露出する第2露出部が形成されており、前記第2露出部と前記半導体リレーとは第2金属線を介してワイヤーボンディングにより接続されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の回路構成体。
【請求項5】
前記回路基板の導電路はプリント配線技術により形成されており、前記導電路にはランドが設けられており、前記ランドには金属板材からなる中継部材が電気的に接続されており、前記中継部材は前記第1金属線と接続されている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の回路構成体。
【請求項6】
ケース内に、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の回路構成体を収容してなる電気接続箱。
【請求項7】
前記ケース内には、前記回路構成体に密着すると共に前記ケースの内面と密着する伝熱部材が配されている請求項6に記載の電気接続箱。
【請求項8】
前記モールド樹脂部材には、前記第1バスバーに達する深さ寸法を有する伝熱孔が形成されており、前記伝熱孔内には前記伝熱部材が充填されており、前記伝熱部材は前記第1バスバーと密着している請求項7に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−178490(P2010−178490A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17969(P2009−17969)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】