説明

回路素子、可変共振器、可変フィルタ

【課題】帯域幅を大幅に変更可能な可変共振器を提供する。
【解決手段】第1の伝送線路101と第2の伝送線路102と複数のスイッチ回路150を備える。第1の伝送線路101の電気長は第2の伝送線路102の電気長に等しく、第1の伝送線路101の偶モード特性インピーダンスは第2の伝送線路102の偶モード特性インピーダンスに等しく、第1の伝送線路101の奇モード特性インピーダンスは第2の伝送線路102の奇モード特性インピーダンスに等しく、各スイッチ回路150は、第1の伝送線路101と第2の伝送線路102のいずれかに接続されており、各スイッチ回路150のうちON状態とされるスイッチ回路の数は一つである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電気回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波無線通信技術においては、フィルタと呼ばれる回路を用いて種々の信号のうち所定の周波数の信号を通過させる、または阻止することにより、必要な信号と不必要な信号とを分別することが行われている。一般的に、フィルタは、その設計パラメータとして不変の中心周波数や帯域幅を持つ。
【0003】
フィルタは種々の無線通信装置に搭載されている。無線通信装置を様々な周波数と様々な帯域幅において機能させるためには、フィルタリング機能を様々な中心周波数と様々な帯域幅において実現させる必要がある。この方法として、当該装置に予め実装された中心周波数と帯域幅の組み合わせの異なる複数のフィルタをスイッチにより切り替える方法が考えられる。この方法によると、中心周波数と帯域幅との組み合わせの数だけフィルタが必要であり、回路規模が大きくなる。このため装置が大型化してしまう。また、この方法によると、予め実装した各フィルタが有する中心周波数と帯域幅の組み合わせ以外の条件では無線通信装置を機能させることができない。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1に開示される技術は、フィルタを構成する共振器に圧電体を用いており、この圧電体に外部からバイアス電圧をかけることで圧電体の周波数特性(共振周波数)を変更し、フィルタの帯域幅を変更させている。
【0005】
また、非特許文献1に開示される技術は、2つのマイクロストリップ線路を互いの端部を対向させることでリング状に配置し、対向する端部同士をPINダイオードで接続した共振器を用いることで、フィルタの中心周波数を可変としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−7352号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.Scott Martin, Fuchen Wang and Kai Chang, "ELECTRONICALLY TUNABLE AND SWITCHABLE FILTERS USING MICROSTRIP RING RESONATOR CIRCUITS", IEEE MTT-S Digest, 1988, pp.803-806.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示される可変フィルタは、梯子型フィルタとして帯域幅を持たせているものの、圧電体の特性による制限から中心周波数の変化幅が1%〜2%程度と小さいため、帯域幅の変化量も同程度のものとなっており、大幅な帯域幅の変更が可能ではない。
【0009】
また、上記非特許文献1に開示されるフィルタは、中心周波数を可変とするものであるが、帯域幅を大幅に可変とすることはできない。
【0010】
また、従来技術によると回路に備えられた回路素子(例えば共振器あるいはフィルタ)は、その役割が固定されており、当該回路素子の全部または一部を当該回路素子以外の構成要素(例えば伝送線路)として機能させることが難しい。
【0011】
このような実情に鑑みて、本発明は、簡易な構成でありながらマルチロール(multirole)な回路素子を提供すること、並びに、簡易な構成でありながら帯域幅を大幅に変更可能な可変共振器と可変フィルタを提供すること、並びに、帯域幅を大幅に変更可能でありながら共振周波数(フィルタの場合は中心周波数)を帯域幅の変更とは独立に且つ自在に変更することが可能な可変共振器と可変フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の回路素子は、入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第1の伝送線路と、入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第2の伝送線路と、一つまたは複数のスイッチ回路とを備え、第1の伝送線路の電気長は第2の伝送線路の電気長に等しく、第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ第1の伝送線路の長さ方向に一様であり、第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ第2の伝送線路の長さ方向に一様であり、第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンスは第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンスに等しく、第1の伝送線路の奇モード特性インピーダンスは第2の伝送線路の奇モード特性インピーダンスに等しく、各スイッチ回路は、第1の伝送線路と第2の伝送線路のいずれかに接続されている回路素子である。
【0013】
また、この回路素子は、Rを予め定められた1以上の整数、rを1以上R以下の各整数を表すとして、R個のスイッチSr(1≦r≦R)をさらに備え、r番目のスイッチSrの一端は第1の伝送線路に、スイッチSrの他端は第2の伝送線路に接続されており、スイッチSrの一端と第1の伝送線路との接続点と第1の伝送線路の一端との間の電気長は、スイッチSrの他端と第2の伝送線路との接続点と第2の伝送線路の一端との間の電気長に等しい構成を持つとしてもよい。
【0014】
本発明の可変共振器は、入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第1の伝送線路と、入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第2の伝送線路と、複数のスイッチ回路とを備え、第1の伝送線路の電気長は第2の伝送線路の電気長に等しく、第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ第1の伝送線路の長さ方向に一様であり、第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ第2の伝送線路の長さ方向に一様であり、第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンスは第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンスに等しく、第1の伝送線路の奇モード特性インピーダンスは第2の伝送線路の奇モード特性インピーダンスに等しく、各スイッチ回路は、第1の伝送線路と第2の伝送線路のいずれかに接続されており、各スイッチ回路のうちON状態とされるスイッチ回路の数は一つである可変共振器である。
【0015】
また、この可変共振器は、Rを予め定められた1以上の整数、rを1以上R以下の各整数を表すとして、R個のスイッチSr(1≦r≦R)をさらに備え、r番目のスイッチSrの一端は第1の伝送線路に、スイッチSrの他端は第2の伝送線路に接続されており、スイッチSrの一端と第1の伝送線路との接続点と第1の伝送線路の一端との間の電気長は、スイッチSrの他端と第2の伝送線路との接続点と第2の伝送線路の一端との間の電気長に等しい構成を持つとしてもよい。
【0016】
本発明の可変フィルタは、複数の上記可変共振器と、隣り合う各可変共振器に直列接続されるK−インバータとを含む可変フィルタである。
【0017】
あるいは本発明の可変フィルタは、入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第1の伝送線路と、入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第2の伝送線路と、複数のスイッチ回路と、Rを予め定められた2以上の整数、rを1以上R以下の各整数を表すとして、R個のスイッチSr(1≦r≦R)とを備え、第1の伝送線路の電気長は第2の伝送線路の電気長に等しく、第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ第1の伝送線路の長さ方向に一様であり、第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ第2の伝送線路の長さ方向に一様であり、第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンスは第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンスに等しく、第1の伝送線路の奇モード特性インピーダンスは第2の伝送線路の奇モード特性インピーダンスに等しく、各スイッチ回路は、第1の伝送線路と第2の伝送線路のいずれかに接続されており、r番目のスイッチSrの一端は第1の伝送線路に、スイッチSrの他端は第2の伝送線路に接続されており、スイッチSrの一端と第1の伝送線路との接続点と第1の伝送線路の一端との間の電気長は、スイッチSrの他端と第2の伝送線路との接続点と第2の伝送線路の一端との間の電気長に等しく、各スイッチSr(1≦r≦R)のうちON状態とされる2個以上のスイッチの位置に応じて、両伝送線路の長手方向の少なくとも一部に、動作周波数にて半波長の線路長の区間が少なくとも二つ以上と、当該動作周波数にて1/4波長の線路長の区間が少なくとも一つ以上とが交互に構成され、半波長の線路長の各区間にてON状態とされるスイッチ回路の数は一つであり、1/4波長の線路長の各区間にてON状態とされるスイッチ回路の数はゼロである可変フィルタである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の回路素子に拠れば、スイッチ回路のON/OFF状態の選択により、同一の回路素子が伝送線路としても可変共振器(あるいは可変フィルタ)としても機能できる。本発明の可変共振器に拠れば、複数のスイッチ回路のうちからON状態とする一つのスイッチ回路を選択することにより、帯域幅を大幅に変更可能である。この可変共振器を用いて帯域幅を大幅に変更可能な可変フィルタが実現する。また、可変共振器が二つの伝送線路間を架橋するスイッチを含む場合には、このスイッチのON/OFF状態の選択により、共振周波数を帯域幅の変更とは独立に且つ自在に変更することが可能である。この可変共振器を用いて、帯域幅を大幅に変更可能でありながら中心周波数を帯域幅の変更とは独立に且つ自在に変更することが可能な可変フィルタが実現する。また、二つの伝送線路間を架橋する複数のスイッチを含む可変フィルタであれば、ON状態とするスイッチを適切に選択することにより帯域幅と中心周波数のみならずフィルタ段数も独立に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)帯域幅を可変な可変共振器の平面図。(B)この可変共振器のV1−V1断面図。
【図2】回路シミュレーションに用いた図1に示す可変共振器のモデルを示す図。
【図3】図2に示すモデルの周波数特性。(A)入力線路から電気長30°の位置を接地した場合。(B)入力線路から電気長60°の位置を接地した場合。
【図4】図1に示す可変共振器の変形例。
【図5】図1に示す可変共振器の変形例。
【図6】スイッチ回路の具体的な構成例。(A)スイッチを直接接地した例。(B)スイッチをキャパシタを介して接地した例。(C)スイッチをインダクタを介して接地した例。(D)スイッチを伝送線路を介して接地した例。(E)スイッチに開放線路を接続した例。(F)スイッチを可変キャパシタを介して接地した例。(G)スイッチを可変インダクタを介して接地した例。(H)スイッチを特性が可変な伝送線路を介して接地した例。(I)スイッチに線路長を可変な伝送線路を接続した例。
【図7】スイッチ回路に含まれるスイッチの具体的な構成例。(A)可変キャパシタを用いた並列共振回路の例。(B)可変キャパシタと可変インダクタを用いた並列共振回路の例。
【図8】全てのスイッチ回路をOFF状態とした場合の図1に示す可変共振器のスミスチャート。
【図9】全てのスイッチ回路をOFF状態とした場合の図1に示す可変共振器の伝達特性。
【図10】帯域幅と共振周波数を可変な可変共振器の平面図。
【図11】回路シミュレーションに用いた図10に示す可変共振器のモデルを示す図。(A)位置H3のみ接地した場合。(B)位置H3およびH4の2箇所を接地した場合。
【図12】図11(A)に示すモデルの周波数特性。(A)入力線路から電気長10°の位置を接地した場合。(B)入力線路から電気長40°の位置を接地した場合。
【図13】(A)伝送線路間に複数のスイッチを備えた、図10に示す可変共振器の変形例。(B)伝送線路間の複数のスイッチのうち一つがON状態にされた、図11(A)に示す可変共振器。(C)伝送線路間の複数のスイッチのうち二つがON状態にされた、図11(A)に示す可変共振器。
【図14】図13(A)に示す可変共振器において、伝送線路間の複数のスイッチをON状態とした状況を示す図。
【図15】(A)二つの伝送線路の中央付近のスイッチをON状態とすると不要な共振が現れることを説明する図。(B)伝送線路間の複数のスイッチをON状態とすることにより不要な共振が解消されることを説明する図。
【図16】帯域幅と共振周波数を可変な可変共振器の平面図。
【図17】帯域幅と共振周波数を可変な可変共振器の平面図。
【図18】(A)本発明を実施するための線路構造の一例を示す図。(B)この線路構造のV2−V2断面図。
【図19】(A)本発明を実施するための線路構造の一例を示す図。(B)この線路構造のV3−V3断面図。
【図20】本発明を実施するための線路構造の一例を示す図。
【図21】帯域幅を可変な可変フィルタの平面図。
【図22】K−インバータに含まれる回路の一例。(A)伝送線路を用いた例。(B)インダクタを用いた例。(C)キャパシタを用いた例。(D)電界結合する伝送線路を用いた例。
【図23】帯域幅と中心周波数を可変な可変フィルタの平面図。
【図24】可変K−インバータに含まれる回路の一例。(A)複数の伝送線路を切り替える構成。(B)可変インダクタを用いた例。(C)可変キャパシタを用いた例。(D)可変キャパシタが装荷された伝送線路を用いた例。
【図25】帯域幅と中心周波数と段数を可変な可変フィルタの平面図(波長λaに対応する周波数で動作する場合のスイッチの状態を示している)。
【図26】帯域幅と中心周波数と段数を可変な可変フィルタの平面図(波長λbに対応する周波数で動作する場合のスイッチの状態を示している)。
【図27】回路シミュレーションに用いた図25および図26に示す可変フィルタのモデルを示す図(入力線路から電気長10°、70°、130°の位置を接地し、入力線路から電気長40°、60°、100°、120°、140°の位置で二つの伝送線路を架橋した場合)。
【図28】回路シミュレーションに用いた図25および図26に示す可変フィルタのモデルを示す図(入力線路から電気長60°、180°の位置を接地し、入力線路から電気長80°、120°、200°の位置で二つの伝送線路を架橋した場合)。
【図29】(A)図27に示すモデルの周波数特性。(B)図28に示すモデルの周波数特性。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の一実施形態である、マイクロストリップ線路構造を持つ可変共振器100を示す。可変共振器100は、二つの伝送線路101,102と、複数のスイッチ回路150を含む。図1に示す実施形態では、誘電体基板805上に長方形状の二つの伝送線路101,102が形成されている。第1の伝送線路101の一端101aは誘電体基板805上に形成された入力線路111に接続され、第1の伝送線路101の他端101bは誘電体基板805上に形成された出力線路112に接続されている。第2の伝送線路102の一端102aは入力線路111に接続され、第2の伝送線路102の他端102bは出力線路112に接続されている。2本の伝送線路101,102は、金属などの導電体であり、誘電体基板805の一方の面上に形成され、誘電体基板805の他方の面(裏面)に地導体800が金属など導電体で形成される。なお、二つの伝送線路101,102と入力線路111と出力線路112で囲まれた符号130で示す部分は誘電体基板805が剥き出しになった部分である。
【0021】
二つの伝送線路101,102に求められる条件は、
(1)第1の伝送線路101の電気長が第2の伝送線路102の電気長に等しい、
(2)第1の伝送線路101の偶モード特性インピーダンス(the characteristic impedance for the even mode)及び奇モード特性インピーダンス(the characteristic impedance for the odd mode)はそれぞれ第1の伝送線路101の長さ方向に一様である、
(3)第2の伝送線路102の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ第2の伝送線路102の長さ方向に一様である、
(4)第1の伝送線路101の偶モード特性インピーダンスは第2の伝送線路102の偶モード特性インピーダンスに等しい、
(5)第1の伝送線路101の奇モード特性インピーダンスは第2の伝送線路102の奇モード特性インピーダンスに等しい、
ことである。
【0022】
例えば誘電体基板805がその全面に亘って均一な厚さと一様な比誘電率を持つならば、
(a)第1の伝送線路101の線路長が第2の伝送線路102の線路長に等しく、
(b)第1の伝送線路101の線路幅が第2の伝送線路102の線路幅に等しく、
(c)第1の伝送線路101と第2の伝送線路102との線路間隔(図1にて記号Dで示される)が一定になる
ように二つの伝送線路101,102を形成すると、二つの伝送線路101,102は条件(1)−(5)を満足する。図1に示す可変共振器100では、誘電体基板805がその全面に亘って均一な厚さと一様な比誘電率を持つことを前提に、二つの伝送線路101,102の線路長をともにL、線路幅をともにWとし、二つの伝送線路101,102が誘電体基板805上にギャップ部130を介して線路間距離Dで平行に形成されている。
【0023】
誘電体基板805が均一な厚さまたは/および一様な比誘電率を持たない場合には、比誘電率の分布などを考慮して、条件(1)−(5)を満足するように二つの伝送線路101,102を形成すればよい。この設計方法は周知技術によって達成されるので詳細な説明を省略する。
【0024】
図1に示す可変共振器100は、5個のスイッチ回路150を有する(図が煩雑になることを避けるため、一つのスイッチ回路にのみ符号を附している)。可変共振器100では、第2の伝送線路102のみにすべてのスイッチ回路150が接続されているが、このような構成に限定されず、各スイッチ回路150は、第1の伝送線路101と第2の伝送線路102のいずれかに接続されていればよい。スイッチ回路150の具体的な構成例は後述するが、図1に示す例では、スイッチ回路150は、一端が第1の伝送線路101と第2の伝送線路102のいずれかに接続され、他端が接地されたスイッチ150aを有する。各スイッチ150aは、図1(B)に示すように、スイッチ105aの一端831が第2の伝送線路102に接続され、スイッチ105aの他端832が接地導体800に、導電体833およびビアホール806を介して電気的に接続されている。なお、導電体833の形状などには一切の限定はないから、この他の図では導電体833の図示を省略している。
【0025】
各スイッチ回路150の接続位置は、[1]第1の伝送線路101上にて一端101aからスイッチ回路の接続位置までの電気長が互いに異なる位置(ただし、一端101aおよび他端101bを除く)であり、同様に、[2]第2の伝送線路102上にて一端102aからスイッチ回路の接続位置までの電気長が互いに異なる位置(ただし、一端102aおよび他端102bを除く)である。このような構成では、第1の伝送線路101上に接続された或るスイッチ回路の接続位置から一端101aまでの電気長θ1と、第2の伝送線路102上に接続された或るスイッチ回路の接続位置から一端102aまでの電気長θ2とが等しくなる場合がある。θ1=θ2の場合、一端101aから電気長θ1の位置にて第1の伝送線路101に接続されたスイッチ回路と一端102aから電気長θ2の位置にて第2の伝送線路102に接続されたスイッチ回路をともにON状態にしてはならない。後述するように、可変共振器100を共振器として動作させる場合、各スイッチ回路150のうちON状態とされるスイッチ回路の数は一つである。この観点からすると、入力線路111から等電気長の位置にて第1の伝送線路101と第2の伝送線路102のそれぞれにスイッチ回路150を接続することは意味が無いので、各スイッチ回路150の接続位置に関して、上記条件[1][2]に加えて、[3]二つの伝送線路101,102のうち一方の伝送線路に接続された各スイッチ回路150の当該伝送線路の一端からの電気長はそれぞれ、他方の伝送線路に接続された各スイッチ回路150の当該伝送線路の一端からの電気長いずれとも一致しない、ことを条件に課してもよい。
【0026】
可変共振器100では、各スイッチ回路150のうち或る一つのスイッチ回路をON状態にすると、そのスイッチ回路の接続位置に応じた帯域幅が得られ、別のスイッチ回路をON状態にすると、そのスイッチ回路の接続位置に応じた別の帯域幅が得られる。このため、ON状態にするスイッチ回路を変更することで可変共振器100の帯域幅を変化させることが可能である。このことを、図2に示すモデルを用いた回路シミュレーションの結果を用いて説明する。
【0027】
図2に、理想伝送線路を用いた図1に示す可変共振器100のシミュレーションモデルを示す。平行な2本の伝送線路101,102の線路長Lは共に2GHzの半波長(電気長で180°)とする。このため、この可変共振器100は2GHzにて共振する。
【0028】
2本の伝送線路101,102はお互いに電磁結合しており、第1の伝送線路101の偶モード特性インピーダンスを100Ω、第1の伝送線路101の奇モード特性インピーダンスを50Ω、第2の伝送線路102の偶モード特性インピーダンスを100Ω、第2の伝送線路102の奇モード特性インピーダンスを50Ωとする。このような特性を持つ伝送線路を、誘電率9.5、基板厚さ0.5mmの誘電体基板805上でマイクロストリップ線路として形成する場合には、2本の伝送線路101,102の線路幅Wはそれぞれ約0.2mm、線路間距離Dはそれぞれ約0.2mm、線路長Lはそれぞれ約30mmとなる。
【0029】
入力線路111と出力線路112の各特性インピーダンスは入出力ポートP1,P2のポートインピーダンスと同じであるとし、ここでは50Ωとする。スイッチ回路150(図1に示す例ではスイッチ150a)は理想的であるとし、スイッチ150a端子間のOFF時のインピーダンスは無限大、ON時のインピーダンスは0であるとする。このため、ON状態にするスイッチ回路を選択することに代えて、第2の伝送線路102を接地する部位を変化させることとする。点線の四角で囲まれた各伝送線路101,102の一部は電気長で10°である。符号G1で示す接続位置は一端101a,102aからの電気長が30°になる位置、符号G2で示す接続位置は一端101a,102aからの電気長が60°になる位置である。符号G1で示す接続位置のみを接地した場合の周波数特性を図3(A)に、符号G2で示す接続位置のみを接地した場合の周波数特性を図3(B)に示す。
【0030】
図3の横軸は周波数、縦軸は入力線路111から見た反射係数S11もしくは入力線路111から出力線路112への伝達係数S21を表す。グラフの実線は反射係数、破線は伝達係数を表している。この可変共振器100は2GHzにおいて共振(直列共振)するため、反射係数S11は最小となり、伝達係数S21は最大となる。図3(A)と図3(B)から、いずれの場合も可変共振器100が2GHzにおいて共振することがわかる。また、図3(A)と図3(B)の各伝達係数S21から、共振周波数2GHzを中心とする帯域幅は、接地位置がG2の場合よりG1の場合の方がかなり狭いことがわかる。よって、可変共振器100において、ON状態にするスイッチ回路150を変更することにより、共振周波数を一定に保ったまま帯域幅を変更可能であることがわかる。
【0031】
このシミュレーションから明らかになる可変共振器100の周波数特性は偶モード特性インピーダンスおよび奇モード特性インピーダンスが上述の設定値の場合にのみ得られる特性ではなく、他の設定値でも許容されるが、各伝送線路101,102の長さ方向に亘って偶モード特性インピーダンスと奇モード特性インピーダンスが一様であることが理想的である。しかしながら、実際にはスイッチ回路150は理想的ではなく、スイッチ回路150を設ける際にパッドを設置することなど様々な条件により必ずしも理想的な回路設計にならないことがある。この場合には帯域幅変更時に共振周波数が若干変化することがあるものの、可変共振器の適用対象から要求される範囲内の変化であれば許容できる。
【0032】
図4は、図1に示す可変共振器100と比較して2本の伝送線路101,102の各幅が広く、各伝送線路101,102の外縁部が入力線路111および出力線路112の外縁部より外側に位置する構成を持つ可変共振器100aを示している。このように偶モード特性インピーダンスと奇モード特性インピーダンスが各伝送線路101,102の長さ方向に一様であれば、必ずしも図1に示す可変共振器100のように、各伝送線路101,102の外縁部が入力線路111および出力線路112の外縁部に一致する構成である必要はない。
【0033】
図5は、図1に示す可変共振器100と比較して各伝送線路101,102を曲線状に形成された構成を持つ可変共振器100bを示している。このように2本の伝送線路101,102の偶モード特性インピーダンスと奇モード特性インピーダンスが各伝送線路101,102の長さ方向に一様であれば、可変共振器の各伝送線路101,102の形状が直線状に限定されるものではない。ただし、2本の伝送線路101,102は、条件(1)−(5)を満たさねばならない。
【0034】
図6に、スイッチ回路150の具体的な構成例を示す。図6(A)に示すスイッチ回路150は、スイッチ150aの他端が直接接地されている。
【0035】
図6(B)に示すスイッチ回路150はキャパシタを含み、スイッチ150aの他端がキャパシタの一端に接続され、キャパシタの他端が接地されている。
【0036】
図6(C)に示すスイッチ回路150はインダクタを含み、スイッチ150aの他端がインダクタの一端に接続され、インダクタの他端が接地されている。
【0037】
図6(D)に示すスイッチ回路150は伝送線路を含み、スイッチ150aの他端が伝送線路の一端に接続され、伝送線路の他端が接地されている。この構成の場合、このスイッチ回路がON状態とされるときの動作周波数にて、伝送線路は1/4波長の線路長を持つ。
【0038】
図6(E)に示すスイッチ回路150は伝送線路を含み、スイッチ150aの他端が伝送線路の一端に接続され、伝送線路の他端が開放されている。この構成の場合、このスイッチ回路がON状態とされるときの動作周波数にて、伝送線路は1/2波長の線路長を持つ。
【0039】
図6(F)に示すスイッチ回路150はキャパシタンスを変更可能な可変キャパシタを含み、スイッチ150aの他端が可変キャパシタの一端に接続され、可変キャパシタの他端が接地されている。
【0040】
図6(G)に示すスイッチ回路150はインダクタンスを変更可能な可変インダクタを含み、スイッチ150aの他端が可変インダクタの一端に接続され、可変インダクタの他端が接地されている。
【0041】
図6(H)に示すスイッチ回路150は伝送線路を含み、スイッチ150aの他端が伝送線路の一端に接続され、伝送線路の他端が接地されている。伝送線路には、一つまたは複数のスイッチの各一端が接続されており、各スイッチの他端は接地されている。これらのスイッチをON/OFFを切り替えることにより、スイッチ回路150の特性を変更できる。
【0042】
図6(I)に示すスイッチ回路150はお互いがスイッチを介して直列接続された複数の伝送線路を含み、スイッチ150aの他端が一つの伝送線路の一端に接続されている。伝送線路間の各スイッチのON/OFFを切り替えることにより、スイッチ回路150の特性を変更できる。
【0043】
またスイッチ150aに限らず本明細書においてスイッチと云えば、接点型のスイッチに限定するものではなく、例えばダイオード、トランジスタなどを用いた、回路網に接点を設けないで回路の開閉機能を有するいわゆるスイッチング素子(switching element)とすることもできる。具体例としては、MEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)スイッチ、スイッチングダイオードなどが挙げられる。これらのスイッチング素子は、ON状態のときに直流を通過させるオーミックスイッチ(ohmic switch)に限らず、ON状態において直流は遮断するが交流は通過させるキャパシティブスイッチ(capacitive switch)でもよい。また、図7に示すように、共振周波数を変更可能な並列共振回路でもよい。この場合、スイッチ回路150をOFF状態にする場合に、当該並列共振回路の共振周波数が2本の伝送線路101,102からなる可変共振器の共振周波数に一致するように、かつ、スイッチ回路150をON状態にする場合は、当該並列共振回路の共振周波数が2本の伝送線路101,102からなる可変共振器の共振周周波数で共振しないように、当該並列共振回路の特性を設定する。図7に示すように、例えば可変キャパシタのキャパシタンスや可変インダクタのインダクタンスを変更することにより、この並列共振回路の共振周波数は変更される。
【0044】
スイッチ回路150の構成は、これらの構成に限られない。スイッチ回路150の構成次第で、可変共振器の周波数特性を所望の形に変更することができるが、可変共振器の共振周波数は2本の伝送線路101,102の線路長によって決まる共振周波数のままである。
【0045】
ここまでは2本の伝送線路101,102と複数のスイッチ回路150を含む可変共振器100について、帯域幅を可変とする共振器としての特性を説明してきた。可変共振器100は、共振器として機能する以外に、伝送線路としても機能することができる。とくにスイッチ回路150が一つである場合(図示をしていないが、図1に示す可変共振器100に含まれるスイッチ回路150が一つの場合を想起すればよい。この場合、当該スイッチ回路は、二つの伝送線路101,102のいずれか一方であって当該伝送線路の両端を除く部分に接続される)、符号100で示される回路素子は、帯域幅を変更可能な可変共振器ではなく、スイッチ回路150がOFF状態の場合に伝送線路として機能し、スイッチ回路150がON状態の場合に或る帯域幅を持つ共振器として機能する、マルチロールな回路素子である。もちろん可変共振器100a,100bも、共振器として機能する以外に伝送線路としても機能することができるが、ここでは可変共振器100を代表として説明する。
【0046】
図1に示す可変共振器100において、スイッチ回路150を全てOFF状態にした場合の入力線路111からみた入力インピーダンスと、入力線路111から出力線路112への伝達係数S21をそれぞれ図8、図9に示す。なお、2本の伝送線路101,102の偶モード特性インピーダンス、奇モード特性インピーダンス、入力線路111の特性インピーダンス、出力線路112の特性インピーダンスはそれぞれ図2に示すモデルと同じとする。図8は入力インピーダンスをスミスチャート上に表したもので、スミスチャートの中心は50Ωである。入力インピーダンスは、50Ωのまま動かないことがわかる。これは、2本の伝送線路101,102上を偶モード(even mode)で伝播するうえに、図2に示すモデルにおいて偶モード特性インピーダンスが入力線路111と出力線路112の各特性インピーダンス並びに入出力ポートP1,P2のポートインピーダンスの2倍である100Ωであることから、2本の伝送線路101,102の並列接続、つまり2本の伝送線路101,102が特性インピーダンス50Ωの一本の伝送線路と同等となったためである。
【0047】
また、図9から、一般的な50Ωの伝送線路と同様に広い帯域にわたって信号を伝搬していることがわかる。以上のことから、可変共振器100においてすべてのスイッチ回路150をOFF状態にした場合は通常の伝送線路と同等の動作をすることが分かる。しかしながら、偶モード特性インピーダンスの値によっては2本の伝送線路101,102が必ずしも入力線路111、出力線路112とインピーダンス整合しないため、2本の伝送線路101,102の線路幅Wや線路間隔Dは、偶モード特性インピーダンスが入力線路111及び出力線路112の各特性インピーダンス並びに入力ポートP1および出力ポートP2の各ポートインピーダンスの2倍となるように設計されることが理想的といえる。ただし、この理想条件から外れたとしても、回路素子ないし可変共振器の適用対象からの設計要求次第で許容できる場合はそれでもよい。なお、回路素子ないし可変共振器を伝送線路として機能させた場合、2本の伝送線路101,102は後述する可変フィルタを構成した場合のK−インバータの一部、もしくは全部として機能させることができる。
【0048】
図10は、マイクロストリップ線路構造を用いた本発明の一実施形態であって、共振周波数と帯域幅を変更可能な可変共振器200の構成を示す。図1に示す可変共振器100と異なり、可変共振器200は2本の伝送線路101,102を架橋する一つのスイッチ140を含む。2本の伝送線路101,102を架橋するスイッチ140の数は1に限定されず、複数のスイッチを含む構成としてもよい(図13(A)−(C)、図14参照)。この場合、Rを予め定められた1以上の整数、rを1以上R以下の各整数を表すとして、可変共振器200が、R個のスイッチSr(1≦r≦R)を含むとすると、入力線路111側から数えてr番目のスイッチSrの一端は第1の伝送線路101に、スイッチSrの他端は第2の伝送線路102に接続されており、スイッチSrの一端と第1の伝送線路101との接続点と第1の伝送線路101の一端101aとの間の電気長が、スイッチSrの他端と第2の伝送線路102との接続点と第2の伝送線路102の一端102aとの間の電気長に等しい。
【0049】
図10に示す可変共振器200のスイッチ140をON状態とし、2本の伝送線路101,102の一部分(この例ではスイッチ140から入力線路111までの線路長L1の線路部分)に接続されるスイッチ回路150のうちいずれか一つをON状態とすることで、可変共振器200は長さL1を半波長とする周波数で共振する共振器として動作する。L1<Lであるため、スイッチ140をON状態としたとき、可変共振器200は、スイッチ140をOFF状態としたときの共振周波数より高い周波数で共振する。なお、スイッチ140から出力線路112までの区間(長さL−L1)にあるスイッチ回路150を全てOFF状態にすると、当該区間の線路部分は通常の伝送線路として動作させることができる。図10に示す可変共振器200の構成が共振周波数と帯域幅をともに可変の共振器として動作することを図11(A)のモデルを用いたシミュレーションによって示す。
【0050】
図11(A)は、図2に示すモデルをベースに、2本の伝送線路101,102の中央に理想的なスイッチ140を設け、これをON状態にした場合のモデル構成を示す。ON状態のスイッチ回路150を変更することは、図2に示すモデルと同様に接地位置を変更することによって代替する。符号H1で示す接続位置は一端101a,102aからの電気長が2GHzで30°になる位置、符号H2で示す接続位置は一端101a,102aからの電気長が2GHzで60°になる位置である。符号H1で示す接続位置のみを接地した場合の周波数特性を図12(A)に、符号H2で示す接続位置のみを接地した場合の周波数特性を図12(B)に示す。
【0051】
図12の横軸は周波数、縦軸は入力線路111から見た反射係数S11もしくは入力線路111から出力線路112への伝達係数S21を表す。グラフの実線は反射係数、破線は伝達係数を表している。図12(A)と図12(B)から、スイッチ140をON状態とすることで、スイッチ140がOFF状態では共振周波数は2GHzであったものが2倍の4GHzになっていることがわかる。これは、スイッチ140は入力線路111と2本の伝送線路101,102との接続点から2GHzにおいて電気長が90°の位置に設置されているため、当該スイッチ140をON状態とすることで、スイッチ140から入力線路111までの線路長L1の区間が共振器となり、長さL1が4GHzにおける半波長(電気長が180°)であるためである。
【0052】
また、ON状態のスイッチ回路150の位置がH1とH2の場合では、図12(A)と図12(B)に示す各伝達特性S21から明らかなように、4GHzにおける帯域幅がかなり異なる。共振周波数4GHzを中心とする帯域幅は、接地位置がH2の場合よりH1の場合の方がかなり狭いことがわかる。この際、共振周波数は4GHzのまま変化していない。以上から、図10に示す可変共振器200は、共振周波数と帯域幅を変更可能であり、かつ、帯域幅を変えても共振周波数を一定に保つことが可能であることが分かる。
【0053】
図13(A)−(C)に示すように可変共振器200が複数のスイッチ140を含む場合、可変共振器200はより多くの共振周波数で動作することが可能である。図13(B)に示すように複数のスイッチ140のうち一つのみをON状態とする場合、入力線路111からON状態とされたスイッチ140までの線路長Lxの区間が線路長Lxを半波長とする共振周波数で共振器として動作する。従って、ON状態とするスイッチ140を変更することにより、可変共振器200はON状態とされるスイッチ140の各位置に応じた共振周波数で動作する。なお、この場合、ON状態とされるスイッチ140から入力線路111までの線路長Lxの区間(つまり、ON状態とされるスイッチ140と入力線路111と2本の伝送線路101,102によって閉ループが構成されている線路部分である)に接続されるスイッチ回路150のうちいずれか一つをON状態とする。ON状態とされるスイッチ140から出力線路112までの区間(長さL−L1)は共振器ではなく伝送線路として機能する。
【0054】
図13(C)に示すように複数のスイッチ140のうち二つのみをON状態とする場合、ON状態とされた二つのスイッチ140で挟まれた線路長Lyの区間が線路長Lyを半波長とする共振周波数で共振器として動作する。従って、ON状態とするスイッチ140の組み合わせを変更することにより、可変共振器200はON状態とされるスイッチ140の組み合わせに応じた共振周波数で動作する。なお、この場合、ON状態とされた二つのスイッチ140で挟まれた線路長Lyの区間(つまり、ON状態とされる二つのスイッチ140と2本の伝送線路101,102によって閉ループが構成されている線路部分である)に接続されるスイッチ回路150のうちいずれか一つをON状態とする。ON状態とされる二つのスイッチ140のうち入力線路111に近いスイッチ140から入力線路111までの線路部分および他方のスイッチ140から出力線路112までの線路部分は共振器ではなく伝送線路として機能する。
【0055】
図13(B)(C)に示すように、可変共振器200では、符号200で示される構成全体が共振器として動作するとは限らず、符号200で示される構成の一部が共振器として動作することがあるから、可変共振器200は「全体または一部が帯域幅を変更可能な共振器として動作することにより共振周波数を変更可能な可変共振器」として理解されるべきである。念のため付言しておくと、「符号200で示される構成全体が共振器として動作する」場合とは、可変共振器200の全てのスイッチ140がOFF状態とされ、かつスイッチ回路150のうち一つがON状態に選択された状態である。この状態の可変共振器200は可変共振器100と等価であるから重複説明を省略する。
【0056】
なお、別の観点から複数のスイッチ140をON状態とした方が良い場合がある。このことを図14と図15を参照して説明する。この場合、複数のスイッチ140をON状態とするものの、図13(C)に示す場合と異なり、共振器として動作する部分は、入力線路111からON状態とされたスイッチ140までの線路長Lzの区間である(線路長Lzを半波長とする共振周波数で動作する)。図11(A)に示すモデルにおいて、符号H3で示される位置にあるスイッチ140を理想的なものから、ON状態における移相量が2GHzで電気長2°のものに変えた場合、図15(A)に図示するように移相量を有するスイッチ140を用いることによる共振周波数(約3.8GHz)の近くに、符号Tで示すように別の共振周波数(約4.0GHz)が現れる。これはスイッチ140(位置H3)から出力線路112までの区間(長さL−L1)によるもので、スイッチ140(位置H3)から入力線路111までの区間(長さL1)とスイッチ140(位置H3)から出力線路112までの区間(長さL−L1)が同じであるためほぼ同じ周波数に共振の特性が表れる。
【0057】
この不要な共振は可変フィルタを形成するときに悪影響を与えることが考えられるが、この不要な共振による悪影響をなくす観点から、本来ON状態とするスイッチ140(位置H3)以外の一つ以上のスイッチ140をON状態にすることが有効である。例えば図11(B)に示すモデルのように、ON状態にしたスイッチ140(位置H3)から出力線路112までの区間(長さL−L1)に接続されているスイッチ140(位置H4)をON状態とする。このスイッチ140(位置H4)の移相量が2GHzで電気長2°である場合の共振器の反射係数S11と伝達係数S21の周波数特性を図15(B)に示す。不要な共振を除去することができていることが図15(B)からわかるが、これはスイッチ140(位置H3)から出力線路112までの区間(長さL−L1)による共振の共振周波数を高周波側に移動させることができたためである。なお共振周波数が4GHzから低域に若干移動しているが、これはスイッチ140(位置H3)の移相量によるもので、可変共振器の設計時にこの移相量の影響を考慮すればよい。ここでは一つのスイッチ140(位置H4)をON状態にする場合について述べたが、図14に示すように複数のスイッチ140をON状態にしても構わない。ここで説明した悪影響排除手法は、後に説明する可変フィルタのK−インバータ部にも適用可能である。
【0058】
図16に、本発明の一実施形態である共振周波数と帯域幅を可変とする可変共振器300を示す。可変共振器300は、図1に示す可変共振器100をベースに、第1の伝送線路101の線路長と第2の伝送線路102の線路長をともにL、Mを予め定められた4以上の偶数、mを1以上M以下の各整数を表すとして、M個のリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)をさらに含む。mが1≦m≦M/2を満たす場合、m番目のリアクタンス回路Cmは、第1の伝送線路101の一端101aからL(2m−1)/Mの位置で、第1の伝送線路101に接続されており、mがM/2<m≦Mを満たす場合、m番目のリアクタンス回路Cmは、第2の伝送線路102の一端102aからL(2m−M−1)/Mの位置で、第2の伝送線路102に接続されている。図16はM=4の場合の構成を示している。この構成例では、M個のリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)はキャパシタンスを可変な可変キャパシタである。動作時には、M個のキャパシタンスは全て同じ値に設定される。
【0059】
共振周波数を低周波側に変化させたい場合は、各リアクタンス回路Cm(1≦m≦M)のキャパシタンスを増大させればよい。可変共振器300の帯域幅の変更は、ON状態とするスイッチ回路150を変更することにより可能である。なお、可変共振器300において帯域幅変更の際に共振周波数を変化させないようにするためには、とくに第1の伝送線路101の偶モード特性インピーダンスをZ1,evenとし、第1の伝送線路101の奇モード特性インピーダンスをZ1,oddとし、第2の伝送線路102の偶モード特性インピーダンスをZ2,evenとし、第2の伝送線路102の奇モード特性インピーダンスをZ2,oddとしたとき、Z1,even=Z1,odd=Z2,even=Z2,oddを満足することが理想的である。この理想条件を実用上の観点から実現するには、一般的に2本の伝送線路101,102の線路間隔Dを伝送線路の線路幅W以上になるように設計すればよい。もちろん、D≦Wとなるような構成であっても、可変共振器の適用対象において共振周波数の変化量が許容できる範囲にあるのであれば、当該構成も許容される。
【0060】
なお、M個のリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)を、例えば一定のキャパシタンスを持つキャパシタであるとしてもよいが、この場合、可変共振器300は共振周波数を可変な共振器ではなく帯域幅のみが可変な共振器となる。
【0061】
リアクタンスが不変なM個のリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)を具備することの利点は、各伝送線路101,102の線路長Lを短くしてもリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)の働きによって共振周波数を下げられるからである。逆に言えば、同じ共振周波数で比較すると、図16に示す構成(ただし、各リアクタンス回路Cm(1≦m≦M)のリアクタンスは不変とする)の方が図1に示す構成よりも線路長Lを短くすることができる。
【0062】
図17は、可変共振器200と可変共振器300を組み合わせた構成を持つ共振周波数と帯域幅を変更可能な可変共振器400の一例を示す。可変共振器400は、スイッチ140から入力線路111までの区間(長さL1)において可変共振器300と同様の構成を持ち、スイッチ140から出力線路112までの線路部分(長さL−L1=L2)において可変共振器300と同様の構成を持つ。なお、可変共振器400では、例えば、スイッチ140から入力線路111までの線路部分(長さL1)においてのみ可変共振器300と同様の構成を持つようにしてもよい。スイッチ140により大きく共振周波数を変えた後、M個のリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)のリアクタンスを設定することにより可変共振器400の共振周波数を調整変更することが可能である。
【0063】
なお、スイッチ140に相当するスイッチSr(1≦r≦R)とリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)を持つ可変共振器の構成を一般的に述べると次のようになる。第1の伝送線路101の一端101aからスイッチS1までの区間I1における第1の伝送線路101の線路長と第2の伝送線路102の線路長をともにL1とし、Rが2以上の整数である場合、qを1以上R−1以下の各整数を表すとして、q番目のスイッチSqとq+1番目のスイッチSq+1との間の区間Iq+1における第1の伝送線路101の線路長と第2の伝送線路102の線路長をともにLq+1とし、第1の伝送線路101の他端101bからスイッチSRまでの区間IR+1における第1の伝送線路101の線路長と第2の伝送線路102の線路長をともにLR+1とし、R+1個の区間I1,…,IR+1のうち少なくとも一つの区間IXにおいて、Mを予め定められた4以上の偶数、mを1以上M以下の各整数を表すとして、Mのリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)をさらに備え、mが1≦m≦M/2を満たす場合、m番目のリアクタンス回路Cmは、区間IXの第1の伝送線路101の一端101aからLX(2m−1)/Mの位置で、第1の伝送線路101に接続されており、mがM/2<m≦Mを満たす場合、m番目のリアクタンス回路Cmは、区間IXの第2の伝送線路102の一端102aからLX(2m−M−1)/Mの位置で、第2の伝送線路102に接続されている。
【0064】
上述の各実施形態は、マイクロストリップ線路構造を用いた構成例として説明したが、本発明はマイクロストリップ線路構造のみで実現可能なものではなく、他の伝送線路構造、例えば、ストリップ線路構造、同軸線路構造、サスペンデッドマイクロストリップ線路構造、コプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロットライン構造などでも実施可能である。一例として、図18および図19にコプレーナ導波路とグラウンデッドコプレーナ導波路における構造を示す。図18に示す構造では、地導体190は2本の伝送線路101,102と同じ層に形成されている。図19に示す構造では、図18に示す構造に加えて、誘電体基板805の裏面の地導体800と表面の地導体190を接続するためのViaホール195(図面が煩雑になることを避けるため一部のViaホールのみに符号を付している)が設けられている。
【0065】
また図20に示す構造は、多層基板を用いることで、図1に示す構造では同層に形成していた2本の伝送線路101,102を異なる層に重なるように形成したものである(地導体190の間は例えば誘電体である)。これにより伝送線路101,102の幅方向の大きさを低減することが可能である。
【0066】
このように本発明による可変共振器は図1に示したような単層のマイクロストリップ線路構造以外でも実施可能であり、また、他の構造の例としてここで示した線路構造以外でも偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスが伝送線路101,102の長さ方向において一様であるような2本の伝送線路101,102を用いることができれば、本発明による可変共振器を実施できる。このことは、後述する可変フィルタに於いても同様である。
【0067】
次に、本発明による可変フィルタの実施形態について説明する。図21に示す可変フィルタ500は、二つの図1に示す可変共振器100と三つのK−インバータ900を含み、入出力ポートP1,P2間で二つの可変共振器100と三つのK−インバータ900が交互に直列接続された構成を持つ。各可変共振器100の共振周波数は同一である。K−インバータ900は、可変共振器100の共振周波数において90°の移相量を持つ回路である。90°の移相量は、隣り合う可変共振器100の間、つまり、一方の可変共振器100の出力線路と一つのK−インバータ900と他方の可変共振器100の入力線路からなる回路部分(図21で符号Eで示す部分)で必要であるため、厳密には、90°の移相量を持つK−インバータ900としては一方の可変共振器100の出力線路と他方の可変共振器100の入力線路を含んだものとして考えなければならない。K−インバータ900に含まれる回路901は、例えば図22に示すように、可変共振器100の共振周波数における4分の1波長線路(図22(A))や、キャパシタ(図22(B))、インダクタ(図22(C))や、ギャップを有する線路(図22(D))などであるが、これらに限ったものではない。
【0068】
一般的に複数の共振器と複数のK−インバータを交互に直列接続することにより帯域通過型フィルタを構成することが可能であり、可変フィルタ500は帯域幅を可変な帯域通過型フィルタとなる。可変フィルタ500の中心周波数は可変共振器100の共振周波数と一致し、可変フィルタ500の帯域幅は各可変共振器100にてON状態のスイッチ回路150の位置を変更することで変えることが可能である。この際、可変共振器100の特徴である帯域幅を変えても共振周波数が変わらないという性質を活用できるため、帯域幅変更後も可変フィルタ500の中心周波数は一定である。この実施形態では可変フィルタ500に含まれる可変共振器として図1に示す可変共振器100を用いたが、上記実施形態で説明した帯域幅を変更可能な可変共振器であれば適用可能である。また、可変共振器とK−インバータの個数も本実施形態の個数に限定されない。
【0069】
図23は、可変フィルタ500の別の実施形態であり、二つの図16に示す可変共振器300と一つの可変K−インバータ950を含み、入出力ポートP1,P2間で二つの可変共振器300と可変K−インバータ900が交互に直列接続された構成を持つ可変フィルタ550を示す。各可変共振器300の共振周波数は同一である。各可変共振器300は共振周波数を変更可能であるため、変更後の共振周波数を中心周波数とする帯域通過型フィルタである可変フィルタ550を構成するためには、図21にて符号Eで示す部分を、可変共振器300の共振周波数を変更した場合においても移相量が90°になるよう、特性を変更可能なK−インバータとしなければならない。このため、可変フィルタ550では、特性が変更可能な可変K−インバータ950を用いている。可変K−インバータ950に含まれる回路902は、例えば図24に示すように、線路長が異なる線路をスイッチで切り替える回路(図24(A))、可変キャパシタ(図24(B))、可変インダクタ(図24(C))、可変キャパシタを装荷した伝送線路(図24(D))であるが、特にこれらに限ったものではない。
【0070】
可変フィルタ550の帯域幅は各可変共振器300にてON状態のスイッチ回路150の位置を変えることで変更可能である。また、各可変共振器300にて各リアクタンス回路のリアクタンスを変えることで可変フィルタ550の中心周波数を変更可能である。この実施形態では可変フィルタ550に含まれる可変共振器として図16に示す可変共振器300を用いたが、上記実施形態で説明した共振周波数と帯域幅を変更可能な可変共振器であれば適用可能である。また、可変共振器と可変K−インバータの個数も本実施形態の個数に限定されない。
【0071】
次に、本発明による可変フィルタの実施形態について説明する。図25に示す可変フィルタ600は、その構成自体は図13に示す可変共振器200と同じである。両者の違いは、可変共振器200に含まれる複数のスイッチ140のうちON状態とするスイッチ140の選択にあると言っても過言ではない。そこで、可変フィルタ600の機能構成についてについて説明する。
【0072】
まず図25は、可変フィルタ600の27個のスイッチ140のうち、入力線路111から4番目、6番目、10番目、12番目、16番目の計5個のスイッチ140がON状態であり、波長λaに対応する周波数を中心周波数とする3段の帯域通過型フィルタとして可変フィルタ600が機能する場合を示している。正確に述べると、波長λaに対応する周波数を中心周波数とする3段の帯域通過型フィルタとして可変フィルタ600を機能させたい場合に、この例では、第2の伝送線路102の一端102aからλa/2,3λa/4,5λa/4,3λa/2,2λa離れた位置の各スイッチ140をON状態とするのである。
【0073】
このとき、図25で符号X1、X3、X5で示された各線路部分(線路長λa/2)において、当該区間の或る一つのスイッチ回路150をON状態とすることにより、当該各線路部分が波長λaに対応する周波数を共振周波数とする可変共振器として動作することになる。
【0074】
入力線路111は、通常λa/4以上の線路長を持つように設計されるが、ここでは入力線路111の線路長をLとする(図25では入力線路111の一部しか描画していない)。このとき入力線路111の線路長λa/4の線路部分がK−インバータとして機能し、線路長L−λa/4の部分が通常の伝送線路として機能する。
【0075】
図25で符号X2、X4で示された各線路部分(線路長λa/4)において、当該区間の全てのスイッチ回路150をOFF状態とすることにより、当該各線路部分は通常の伝送線路として機能する。
【0076】
図25で符号X6で示された線路部分(L−2λa)は、当該区間の全てのスイッチ回路150をOFF状態とすることにより、入力線路111側から線路長λa/4までの線路部分がK−インバータとして機能し、線路長L−9λa/4の部分が通常の伝送線路として機能する。出力線路112も通常の伝送線路として機能する。
【0077】
図25には、可変フィルタ600の機能構成に対応させて、可変フィルタ600と等価な機能ブロックを示しており、可変フィルタ600は、符号X1、X3、X5で示された各区間の可変共振器を、入力線路111の一部であるK−インバータ、符号X2、X4で示された各区間のK−インバータ、符号X6で示された区間の一部であるK−インバータで結合させた3段の帯域通過型フィルタとなっている。このようにON状態にするスイッチ回路150、スイッチ140を適切に選択することで、帯域通過型フィルタを実現可能であることが分かる。
【0078】
この可変フィルタ600は各可変共振器(X1,X3,X5)にてON状態にするスイッチ回路150を変えることで帯域幅を波長λaに対応する中心周波数とは独立に変更可能である。また、入力線路111から4番目、6番目、10番目のスイッチ140をON状態とすると(12番目と16番目のスイッチ140をOFF状態とする)、中心周波数を保ったまま2段の帯域通過型フィルタが実現する。このように、段数のみを可変とすることも可能である。また、可変フィルタ600の中心周波数はON状態とするスイッチ140の位置によって決まる。このことを図26を参照して説明する。
【0079】
図26に示す可変フィルタ600は図25に示す可変フィルタ600と同一であるが、ON状態とされるスイッチ140の位置が異なる。図25に示す機能構成では、入力線路111から8番目、12番目、20番目の計3個のスイッチ140がON状態であり、波長λb(>λa)に対応する周波数を中心周波数とする2段の帯域通過型フィルタとして可変フィルタ600が機能する場合を示している。つまり、波長λbに対応する周波数を中心周波数とする2段の帯域通過型フィルタとして可変フィルタ600を機能させたい場合に、この例では、第2の伝送線路102の一端102aからλb/2,3λb/4,5λb/4離れた位置の各スイッチ140をON状態とするのである。
【0080】
このとき、図26で符号Y1、Y3で示された各線路部分(線路長λb/2)において、当該区間の或る一つのスイッチ回路150をON状態とすることにより、当該各線路部分が波長λbに対応する周波数を共振周波数とする可変共振器として動作することになる。
【0081】
入力線路111は、入力線路111の線路長λb/4の線路部分がK−インバータとして機能し、線路長L−λb/4の部分が通常の伝送線路として機能する。
【0082】
図26で符号Y2で示された線路部分(線路長λb/4)において、当該区間の全てのスイッチ回路150をOFF状態とすることにより、当該線路部分は通常の伝送線路として機能する。
【0083】
図26で符号Y4で示された線路部分(L−5λb/4)は、当該区間の全てのスイッチ回路150をOFF状態とすることにより、入力線路111側から線路長λb/4までの線路部分がK−インバータとして機能し、線路長L−3λb/2の部分が通常の伝送線路として機能する。出力線路112も通常の伝送線路として機能する。
【0084】
図26には、可変フィルタ600の機能構成に対応させて、可変フィルタ600と等価な機能ブロックを示しており、可変フィルタ600は、符号Y1、Y3で示された各区間の可変共振器を、入力線路111の一部であるK−インバータ、符号Y2で示された各区間のK−インバータ、符号Y4で示された区間の一部であるK−インバータで結合させた2段の帯域通過型フィルタとなっている。図26に示す機能構成であっても、この可変フィルタ600は各可変共振器(Y1,Y3)にてON状態にするスイッチ回路150を変えることで帯域幅を波長λbに対応する中心周波数とは独立に変更可能である。また、図26に示す機能構成においても一般的に段数のみを可変とすることが可能である(ただし、図26に示される構成では、図示される波長λbと線路長Lとの関係から、波長λbに対応する周波数で3段以上のフィルタを実現することは不可能である)。
【0085】
このように、可変フィルタ600は、ON状態とするスイッチ140の位置とON状態とするスイッチ回路150の位置により、中心周波数、帯域幅、フィルタ段数を可変である。
【0086】
図27および図28に可変フィルタ600の特性をシミュレーションで求めるためのモデルを示す。2本の伝送線路101,102はお互いに電磁結合しており、第1の伝送線路101の偶モード特性インピーダンスを100Ω、第1の伝送線路101の奇モード特性インピーダンスを50Ω、第2の伝送線路102の偶モード特性インピーダンスを100Ω、第2の伝送線路102の奇モード特性インピーダンスを50Ωとする。2本の伝送線路101,102の線路長は、2GHzで220°の電気長に相当するとする。点線の四角で囲まれた各伝送線路101,102の一部は電気長で10°である。
【0087】
図27は、ON状態にするスイッチ140が一端101a,102aから2GHzの電気長で40°、60°、100°、120°、140°である場合の可変フィルタ600のモデルを示している。ON状態にするスイッチ回路150は、一端101a,102aから2GHzの電気長で10°、70°、130°の位置とする。このとき、2GHzで電気長40°の線路で構成されている部分は、9GHzの共振器として動作し、2GHzで電気長20°の線路で構成されている部分は、9GHzにおけるK−インバータとして動作する。従って図27に示す可変フィルタ600のモデルは9GHzを中心周波数とする3段の帯域通過型フィルタとなっている。図29(A)は、図27に示すモデルの伝達係数S21の周波数特性を表しており、9GHz周辺に通過帯を持つ帯域通過型フィルタの特性を示している。
【0088】
図28は、ON状態にするスイッチ140が一端101a,102aから2GHzの電気長で80°、120°、200°の位置である場合の可変フィルタ600のモデルを示している。ON状態にするスイッチ回路150は、一端101a,102aから2GHzの電気長で60°、180°の位置とする。このとき、2GHzで電気長80°の線路で構成されている部分は、4.5GHzの共振器として動作し、2GHzで電気長40°の線路で構成されている部分は、4.5GHzにおけるK−インバータとして動作する。従って図28に示す可変フィルタ600のモデルは4.5GHzを中心周波数とする2段の帯域通過型フィルタとなっている。図29(B)は、図28に示すモデルの伝達係数S21の周波数特性を表しており、4.5GHz周辺に通過帯を持つ帯域通過型フィルタの特性を示している。このように、可変フィルタ600が中心周波数、帯域幅、段数可変のフィルタであることが確認される。
【0089】
なお、ON状態にするスイッチ回路150の位置を適切に組み合わせることで、帯域幅だけでなく最平坦特性(バタワース特性)やチェビシェフ特性などの特性関数も変更可能である。
【0090】
この実施形態の可変フィルタ600は可変共振器200で実現される。しかし、可変共振器200に限らず例えば複数のスイッチ140を備えた可変共振器400であっても、複数のスイッチ140のうちON状態とするスイッチ140の選択により可変フィルタを実現することができる。この場合、この可変フィルタに現れる可変共振器に相当する線路部分に接続されるリアクタンス回路の数や位置は、可変共振器300と可変共振器400に関して説明したとおりの条件を満足する必要がある。また、2本の伝送線路101,102の偶モード特性インピーダンスと奇モード特性インピーダンスの条件についても、前述の条件を満たすことが理想的である。
【0091】
なお、可変共振器200の構成を踏まえて可変フィルタ600の構成を一般的に述べると次のようになる。すなわち、可変フィルタ600は、Rを予め定められた2以上の整数、rを1以上R以下の各整数を表すとして、R個のスイッチSr(1≦r≦R)を含み、r番目のスイッチSrの一端は第1の伝送線路101に、スイッチSrの他端は第2の伝送線路102に接続されており、スイッチSrの一端と第1の伝送線路101との接続点と第1の伝送線路101の一端101aとの間の電気長は、スイッチSrの他端と第2の伝送線路102との接続点と第2の伝送線路102の一端102aとの間の電気長に等しく、さらに、各スイッチSr(1≦r≦R)のうちON状態とされる2個以上のスイッチの位置に応じて、両伝送線路101,102の長手方向の少なくとも一部に、動作周波数にて半波長の線路長の区間が少なくとも二つ以上と、当該動作周波数にて1/4波長の線路長の区間が少なくとも一つ以上とが交互に構成され、半波長の線路長の各区間にてON状態とされるスイッチ回路150の数は一つであり、1/4波長の線路長の各区間にてON状態とされるスイッチ回路150の数はゼロである。
【0092】
また、複数のスイッチ140を備えた可変共振器400の構成を踏まえて可変フィルタ600の構成を一般的に述べると次のようになる。すなわち、可変フィルタ600は、半波長の線路長の各区間のうち少なくとも一つの区間IXにおいて、当該半波長をLXで表し、Mを予め定められた4以上の偶数、mを1以上M以下の各整数を表すとして、Mのリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)を含み、mが1≦m≦M/2を満たす場合、m番目のリアクタンス回路Cmは、区間IXの第1の伝送線路101の一端101aからLX(2m−1)/Mの位置で、第1の伝送線路101に接続され、mがM/2<m≦Mを満たす場合、m番目のリアクタンス回路Cmは、区間IXの第2の伝送線路102の一端102aからLX(2m−M−1)/Mの位置で、第2の伝送線路102に接続されるように構成されている。
【0093】
また、可変フィルタに含まれるスイッチ回路150は図6に示す構成を採用することができ、さらに、そのスイッチ150aは図7に示す構成を採用することができる。さらに、本発明の可変フィルタは、上述の可変共振器と同様、マイクロストリップ線路以外の線路構造、例えば、ストリップ線路構造、同軸線路構造、サスペンデッドマイクロストリップ線路構造、コプレーナ導波路、グラウンデッドコプレーナ導波路、スロットライン構造などにより実施すること可能である。
【0094】
上記各実施形態の可変共振器100、200、300、400、可変フィルタ600は、共振器あるいはフィルタとして機能する以外に、全てのスイッチ140と全てのスイッチ回路150をOFF状態とすることにより、伝送線路としても機能することができる。とくに可変共振器200、300、400のそれぞれにおいてスイッチ回路150の個数が一つである場合には、符号200、300、400で示される各回路素子は、帯域幅と共振周波数を変更可能な可変共振器としてではなく、スイッチ回路150がOFF状態の場合に伝送線路として機能し、スイッチ回路150がON状態の場合に或る帯域幅を持つ共振周波数が可変な共振器として機能する、マルチロールな回路素子である。
【0095】
また、可変フィルタ600を中心周波数が固定された可変フィルタとして機能させる場合には、当該中心周波数にて共振器相当の線路部分に接続されるスイッチ回路150をそれぞれ1個とすることで十分であるから、この場合の符号600で示される回路素子は、全てのスイッチ回路150がOFF状態の場合に伝送線路として機能し、段数に応じた個数のスイッチ回路150がON状態の場合に或る帯域幅を持つ段数が可変な共振器として機能する、マルチロールな回路素子である。
【0096】
各実施形態から明らかなように、本発明による回路素子、可変共振器、可変フィルタは、伝送線路と、スイッチ、リアクタンス回路などで構成可能であるため、非常に作製が容易である。
【0097】
また本発明による回路素子、可変共振器、可変フィルタの各形状が一般的な伝送線路に近い形状であるため、増幅器やアンテナなどのデバイス間に伝送線路に置き換えて設置することができ、設置自由度が極めて高いことも本発明が持つ有利な効果である。
【0098】
なお、各実施形態ではスイッチ140とスイッチ回路150に対する制御が必要になる場合があるが、この制御はスイッチ140とスイッチ回路150に対して例えば制御信号を印加することにより実現し、この実現手段は周知技術によって達成されるから詳細な説明を省略する。また、同様の理由により図面にもこの実現手段は図示されていない。
【0099】
以上の実施形態の他、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第1の伝送線路と、
上記入力線路に接続される一端と上記出力線路に接続される他端とを有する第2の伝送線路と、
一つまたは複数のスイッチ回路と
を備え、
上記第1の伝送線路の電気長は上記第2の伝送線路の電気長に等しく、
上記第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ上記第1の伝送線路の長さ方向に一様であり、
上記第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ上記第2の伝送線路の長さ方向に一様であり、
上記第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンスは上記第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンスに等しく、
上記第1の伝送線路の奇モード特性インピーダンスは上記第2の伝送線路の奇モード特性インピーダンスに等しく、
各上記スイッチ回路は、上記第1の伝送線路と上記第2の伝送線路のいずれかに接続されている
回路素子。
【請求項2】
請求項1に記載の回路素子において、
上記第1の伝送線路の線路長は上記第2の伝送線路の線路長に等しく、
上記第1の伝送線路の線路幅は上記第2の伝送線路の線路幅に等しく、
上記第1の伝送線路と上記第2の伝送線路との線路間隔が一様である
ことを特徴とする回路素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の回路素子において、
Rを予め定められた1以上の整数、rを1以上R以下の各整数を表すとして、
R個のスイッチSr(1≦r≦R)をさらに備え、
r番目の上記スイッチSrの一端は上記第1の伝送線路に、上記スイッチSrの他端は上記第2の伝送線路に接続されており、上記スイッチSrの一端と上記第1の伝送線路との接続点と上記第1の伝送線路の上記一端との間の電気長は、上記スイッチSrの他端と上記第2の伝送線路との接続点と上記第2の伝送線路の上記一端との間の電気長に等しい
ことを特徴とする回路素子。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の回路素子において、
Mを予め定められた4以上の偶数、mを1以上M以下の各整数を表すとし、
上記第1の伝送線路の線路長と上記第2の伝送線路の線路長をともにLとして、
M個のリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)をさらに備え、
mが1≦m≦M/2を満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記第1の伝送線路の上記一端からL(2m−1)/Mの位置で、上記第1の伝送線路に接続されており、
mがM/2<m≦Mを満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記第2の伝送線路の上記一端からL(2m−M−1)/Mの位置で、上記第2の伝送線路に接続されている
ことを特徴とする回路素子。
【請求項5】
請求項3に記載の回路素子において、
上記第1の伝送線路の上記一端から上記スイッチS1までの区間I1における上記第1の伝送線路の線路長と上記第2の伝送線路の線路長をともにL1とし、
Rが2以上の整数である場合、qを1以上R−1以下の各整数を表すとして、q番目の上記スイッチSqとq+1番目の上記スイッチSq+1との間の区間Iq+1における上記第1の伝送線路の線路長と上記第2の伝送線路の線路長をともにLq+1とし、
上記第1の伝送線路の上記他端から上記スイッチSRまでの区間IR+1における上記第1の伝送線路の線路長と上記第2の伝送線路の線路長をともにLR+1とし、
R+1個の区間I1,…,IR+1のうち少なくとも一つの区間IXにおいて、Mを予め定められた4以上の偶数、mを1以上M以下の各整数を表すとして、Mのリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)をさらに備え、
mが1≦m≦M/2を満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記区間IXの上記第1の伝送線路の上記一端からLX(2m−1)/Mの位置で、上記第1の伝送線路に接続されており、
mがM/2<m≦Mを満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記区間IXの上記第2の伝送線路の上記一端からLX(2m−M−1)/Mの位置で、上記第2の伝送線路に接続されている
ことを特徴とする回路素子。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の回路素子において、
各上記リアクタンス回路Cm(1≦m≦M)は、リアクタンスを変更可能な回路である
ことを特徴とする回路素子。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の回路素子において、
上記偶モード特性インピーダンスは、上記入力線路と上記出力線路の各特性インピーダンスの2倍に等しい
ことを特徴とする回路素子。
【請求項8】
入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第1の伝送線路と、
上記入力線路に接続される一端と上記出力線路に接続される他端とを有する第2の伝送線路と、
複数のスイッチ回路と
を備え、
上記第1の伝送線路の電気長は上記第2の伝送線路の電気長に等しく、
上記第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ上記第1の伝送線路の長さ方向に一様であり、
上記第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ上記第2の伝送線路の長さ方向に一様であり、
上記第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンスは上記第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンスに等しく、
上記第1の伝送線路の奇モード特性インピーダンスは上記第2の伝送線路の奇モード特性インピーダンスに等しく、
各上記スイッチ回路は、上記第1の伝送線路と上記第2の伝送線路のいずれかに接続されており、
各上記スイッチ回路のうちON状態とされるスイッチ回路の数は一つである
可変共振器。
【請求項9】
請求項8に記載の可変共振器において、
上記第1の伝送線路の線路長は上記第2の伝送線路の線路長に等しく、
上記第1の伝送線路の線路幅は上記第2の伝送線路の線路幅に等しく、
上記第1の伝送線路と上記第2の伝送線路との線路間隔が一様である
ことを特徴とする可変共振器。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の可変共振器において、
Rを予め定められた1以上の整数、rを1以上R以下の各整数を表すとして、
R個のスイッチSr(1≦r≦R)をさらに備え、
r番目の上記スイッチSrの一端は上記第1の伝送線路に、上記スイッチSrの他端は上記第2の伝送線路に接続されており、上記スイッチSrの一端と上記第1の伝送線路との接続点と上記第1の伝送線路の上記一端との間の電気長は、上記スイッチSrの他端と上記第2の伝送線路との接続点と上記第2の伝送線路の上記一端との間の電気長に等しい
ことを特徴とする可変共振器。
【請求項11】
請求項8または請求項9に記載の可変共振器において、
Mを予め定められた4以上の偶数、mを1以上M以下の各整数を表すとし、
上記第1の伝送線路の線路長と上記第2の伝送線路の線路長をともにLとして、
M個のリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)をさらに備え、
mが1≦m≦M/2を満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記第1の伝送線路の上記一端からL(2m−1)/Mの位置で、上記第1の伝送線路に接続されており、
mがM/2<m≦Mを満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記第2の伝送線路の上記一端からL(2m−M−1)/Mの位置で、上記第2の伝送線路に接続されている
ことを特徴とする可変共振器。
【請求項12】
請求項10に記載の可変共振器において、
上記第1の伝送線路の上記一端から上記スイッチS1までの区間I1における上記第1の伝送線路の線路長と上記第2の伝送線路の線路長をともにL1とし、
Rが2以上の整数である場合、qを1以上R−1以下の各整数を表すとして、q番目の上記スイッチSqとq+1番目の上記スイッチSq+1との間の区間Iq+1における上記第1の伝送線路の線路長と上記第2の伝送線路の線路長をともにLq+1とし、
上記第1の伝送線路の上記他端から上記スイッチSRまでの区間IR+1における上記第1の伝送線路の線路長と上記第2の伝送線路の線路長をともにLR+1とし、
R+1個の区間I1,…,IR+1のうち少なくとも一つの区間IXにおいて、Mを予め定められた4以上の偶数、mを1以上M以下の各整数を表すとして、Mのリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)をさらに備え、
mが1≦m≦M/2を満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記区間IXの上記第1の伝送線路の上記一端からLX(2m−1)/Mの位置で、上記第1の伝送線路に接続されており、
mがM/2<m≦Mを満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記区間IXの上記第2の伝送線路の上記一端からLX(2m−M−1)/Mの位置で、上記第2の伝送線路に接続されている
ことを特徴とする可変共振器。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の可変共振器において、
各上記リアクタンス回路Cm(1≦m≦M)は、リアクタンスを変更可能な回路である
ことを特徴とする可変共振器。
【請求項14】
請求項8から請求項13のいずれかに記載の可変共振器において、
上記偶モード特性インピーダンスは、上記入力線路と上記出力線路の各特性インピーダンスの2倍に等しい
ことを特徴とする可変共振器。
【請求項15】
複数の、請求項8から請求項14のいずれかに記載の可変共振器と、
隣り合う各上記可変共振器に直列接続されるK−インバータと
を含む可変フィルタ。
【請求項16】
入力線路に接続される一端と出力線路に接続される他端とを有する第1の伝送線路と、
上記入力線路に接続される一端と上記出力線路に接続される他端とを有する第2の伝送線路と、
複数のスイッチ回路と、
Rを予め定められた2以上の整数、rを1以上R以下の各整数を表すとして、R個のスイッチSr(1≦r≦R)と
を備え、
上記第1の伝送線路の電気長は上記第2の伝送線路の電気長に等しく、
上記第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ上記第1の伝送線路の長さ方向に一様であり、
上記第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンス及び奇モード特性インピーダンスはそれぞれ上記第2の伝送線路の長さ方向に一様であり、
上記第1の伝送線路の偶モード特性インピーダンスは上記第2の伝送線路の偶モード特性インピーダンスに等しく、
上記第1の伝送線路の奇モード特性インピーダンスは上記第2の伝送線路の奇モード特性インピーダンスに等しく、
各上記スイッチ回路は、上記第1の伝送線路と上記第2の伝送線路のいずれかに接続されており、
r番目の上記スイッチSrの一端は上記第1の伝送線路に、上記スイッチSrの他端は上記第2の伝送線路に接続されており、上記スイッチSrの一端と上記第1の伝送線路との接続点と上記第1の伝送線路の上記一端との間の電気長は、上記スイッチSrの他端と上記第2の伝送線路との接続点と上記第2の伝送線路の上記一端との間の電気長に等しく、
各上記スイッチSr(1≦r≦R)のうちON状態とされる2個以上のスイッチの位置に応じて、両上記伝送線路の長手方向の少なくとも一部に、動作周波数にて半波長の線路長の区間が少なくとも二つ以上と、当該動作周波数にて1/4波長の線路長の区間が少なくとも一つ以上とが交互に構成され、
半波長の線路長の各上記区間にてON状態とされる上記スイッチ回路の数は一つであり、
1/4波長の線路長の各上記区間にてON状態とされる上記スイッチ回路の数はゼロである
可変フィルタ。
【請求項17】
請求項16に記載の可変フィルタにおいて、
半波長の線路長の各上記区間のうち少なくとも一つの区間IXにおいて、当該半波長をLXで表し、Mを予め定められた4以上の偶数、mを1以上M以下の各整数を表すとして、Mのリアクタンス回路Cm(1≦m≦M)をさらに備え、
mが1≦m≦M/2を満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記区間IXの上記第1の伝送線路の上記一端からLX(2m−1)/Mの位置で、上記第1の伝送線路に接続され、
mがM/2<m≦Mを満たす場合、m番目の上記リアクタンス回路Cmは、上記区間IXの上記第2の伝送線路の上記一端からLX(2m−M−1)/Mの位置で、上記第2の伝送線路に接続されるように構成されている
ことを特徴とする可変フィルタ。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の可変フィルタにおいて、
上記偶モード特性インピーダンスは、上記入力線路と上記出力線路の各特性インピーダンスの2倍に等しい
ことを特徴とする可変フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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