説明

回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置

【課題】乾燥ゾーンにおける廃棄物の乾燥に用いる一次空気量を減少させる。
【解決手段】回転ストーカ式焼却炉におけるストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aと対応する炉上流側風箱17aに、周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eを設け、空気送給ライン26の開閉弁27付きの分岐ライン26a,26b,26c,26d,26eを接続する。空気送給ライン26に、炉上流側風箱17aへ供給する一次空気5の総通気量を検出する流量計28を設ける。流量計28からの入力信号を基に、各開閉弁27へ指令を与える制御装置30を備える。制御装置30により、一次空気5の総通気量が目標通気量よりも大となる範囲内において、周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eの通気を両外側より順次制限し、一次空気5を廃棄物層の厚い幅方向中央部に対して吹き込むことで廃棄物層内における滞留時間を延長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ストーカ式焼却炉にて都市ごみ等の被処理物を焼却処理する際、ストーカ炉本体内の被処理物を乾燥させるために炉上流側部分へ風箱より一次空気を供給するようにしてある一次空気供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理物としての廃棄物を焼却処理する装置の一つとして、円筒状のストーカ炉本体を回転させることにより廃棄物の送りと撹拌を連続的且つ立体的に行いながら効率よく焼却処理できるようにした回転ストーカ式焼却炉が知られている。
【0003】
かかる回転ストーカ式焼却炉は、図4(イ)(ロ)(ハ)に示す如く、リング状に形成した入口側ヘッダー管2と出口側ヘッダー管3との間に、多数の水管4を周方向に一定間隔で配置して、該各水管4の両端を、上記入口側及び出口側の各ヘッダー管2,3に連通させて接続すると共に、該各水管4間の隙間に、長手方向の所要間隔位置に多数の空気孔6が穿設してあるフィン7を取り付けて円筒状に成形してなるストーカ炉本体1を有している。更に、該ストーカ炉本体1をカバーケーシング8内に、入口側ヘッダー管2よりも出口側ヘッダー管3の方が低くなるよう傾斜させて横置きして、入口側と出口側の端部外周に取り付けてあるタイヤ9を、それぞれターニングローラ10上に載置させて、駆動装置11にて上記ターニングローラ10を回転させることにより上記ストーカ炉本体1を回転駆動させるようにしてある。又、上記各水管4内には、出口側ヘッダー管3に連結したロータリージョイント12を介してボイラ水を循環流通させるようにしてある。更に又、上記ストーカ炉本体1には、入口側より投入ホッパ13内の廃棄物14を給じん機15で供給するようにしてあり、一方、上記ストーカ炉本体1の下側位置には、カバーケーシング8の下端に連通する風箱16が設けてあり、ストーカ炉本体1の下部位置より一次空気5を上記空気孔6を通して炉内へ供給するようにしてある。
【0004】
上記風箱16は、ストーカ炉本体1の長手方向(炉上下流方向)に複数分割、たとえば、3分割されており、上流側より炉上流側風箱17a、炉中間部風箱17b、炉下流側風箱17cとしてある。炉上流側風箱17a、炉中間部風箱17b、炉下流側風箱17cにはそれぞれダンパ18が備えてあり、該各ダンパ18の調整で一次空気5の供給量をそれぞれ調整するようにしてある。又、上記炉上流側風箱17a、炉中間部風箱17b、炉下流側風箱17cには、各々が図4(ロ)に示す如く、周方向に通気領域である分割流路19a,19b,19cが3分割して形成してあり、該各周方向の分割流路19a,19b,19cにもそれぞれダンパ18が備えてあり、ストーカ炉本体1の炉底部に滞留する廃棄物14の周方向の量に応じて一次空気5の供給量を調整できるようにしてある。
【0005】
上記各風箱17a,17b,17cの各周方向の分割流路19a,19b,19cのストーカ炉本体1寄りの位置には、それぞれシール装置20が取り付けてあり、ストーカ炉本体1の各水管4の外側に取り付けてあるシール用フィン21が回転しながら上記各シール装置20に接することによりシール作用が行われて、上記各周方向の分割流路19a,19b,19cから供給される一次空気5が、ストーカ炉本体1の炉底部のそれぞれ対応する個所へ吹き込まれるようにしてある。
【0006】
かかる構成としてある回転ストーカ式焼却炉によれば、駆動装置11によりストーカ炉本体1を低速回転させた状態にて、該ストーカ炉本体1内に、給じん機15より廃棄物14を供給すると、供給された廃棄物14は、自重により常に炉底部に落下しようとするため、ストーカ炉本体1の回転に伴って撹拌されると共に、ストーカ炉本体1の傾斜配置により順次炉下流側へ移送させられ、この移送の間に、下側に設置してある風箱16における炉上流側風箱17a、炉中間部風箱17b、炉下流側風箱17cから供給される一次空気5により炉上流側から順に乾燥、熱分解、燃焼の過程を経て焼却処理されるようになる。
【0007】
すなわち、ストーカ炉本体1内に供給された廃棄物14は、先ず、炉上流側部分に形成される乾燥ゾーン1aにて、主として炉上流側風箱17aから供給される所要温度、たとえば、200℃程度の一次空気5、及び、炉内の高温雰囲気に曝されることで乾燥させられる。次に、この乾燥された廃棄物14は、炉中間部分に形成される熱分解ゾーン1bに移され、ここで炉中間部風箱17bから一次空気5が供給され、下流側の燃焼ゾーン1cにて生じる燃焼熱を熱源として燃焼させられて熱分解される。しかる後、この熱分解物が、炉下流側部分に形成される燃焼ゾーン1cへ移送されて、炉下流側風箱17cから供給される一次空気5を用いて燃焼されることで焼却処分が行なわれるようにしてある。図中、22は二次燃焼室、23は後燃焼装置である(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
ところで、上記回転ストーカ式焼却炉にて廃棄物14の焼却処理を行う場合、ストーカ炉本体の炉底部に滞留している廃棄物層の厚さが、ストーカ炉本体1の長手方向の乾燥、熱分解、燃焼の各ゾーン1a,1b,1cで変動したり、周方向で変動すると、燃え切り点が移動して安定した燃焼が行なわれなくなる。そのために、風箱16の上下流方向の各風箱17a,17b,17cごとに供給する一次空気の流量と圧力を計測し、この計測された流量と圧力及び廃棄物14の層厚との相関関係から、上記長手方向の各風箱17a,17b,17cの上側に存在する炉底部の廃棄物層の層厚をそれぞれ推定し、この推定された層厚に応じて、上記長手方向の各風箱17a,17b,17cへの一次空気5の分配比を調整するようにすることが従来提案されている。更に、上記長手方向の各風箱17a,17b,17cのそれぞれの周方向の分割流路19a,19b,19cごとに、上記長手方向の各風箱17a,17b,17cの場合と同様に、供給される一次空気5の流量と圧力から層厚検出を行い、この検出される層厚に応じて一次空気5の分配比を制御するようにすることも提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平11−257616号公報
【特許文献2】特開2000−291928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、近年の研究によれば、図4(イ)(ロ)(ハ)に示したような回転ストーカ式焼却炉にて、高含水率の廃棄物14の焼却処理を行う場合、ストーカ炉本体1の炉長のかなりの部分、多いときには炉長の半分程度までが、投入された高含水率廃棄物14の乾燥ゾーン1aとして費やされているということが判明してきた。すなわち、高含水率の廃棄物14を処理しようとする場合には、乾燥時間を長くすることが必要となり、このように乾燥に長い時間をとるためには、上記ストーカ炉本体1では出口側が低くなるようにしてあって回転により廃棄物14を順次炉下流側へ移送させるようにしてあるため、炉長を長くしなければならないことになる。そのために、ストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aとなる炉上流側部分での廃棄物14の乾燥効率を向上させることが望まれている。
【0011】
上記図4(イ)(ロ)(ハ)に示した従来の回転ストーカ式焼却炉では、ストーカ炉本体1内へ供給されて炉底部に滞留する廃棄物14の層は、上記ストーカ炉本体1が円筒状としてあるため、該ストーカ炉本体1の周方向に沿う方向の両端部、すなわち、廃棄物層の幅方向の両端部の層厚が幅方向中央部よりも薄くなっていて、廃棄物層の幅方向両端部における廃棄物14の存在量は、幅方向中央部に比して相対的に少なくなっている。しかし、ストーカ炉本体1の炉上流側部分の乾燥ゾーン1aにて、供給された高含水率の廃棄物14を、風箱16における炉上流側風箱17aより供給される一次空気5を用いて乾燥させる際、該乾燥ゾーン1aにおける廃棄物層の幅方向の両端部に対しては、それぞれ対応する下方位置の炉上流側風箱17aの周方向の分割流路19a及び19cより通気されるが、その通気は、層厚が相対的に厚い廃棄物層の幅方向中央部に対応する周方向の分割流路19bからの通気と同等の通気か、あるいは、上記分割流路19a及び19cでは、上側に存在する廃棄物14の層厚が廃棄物層の幅方向中央部よりも相対的に薄くて低圧力損失となることに起因して上記分割流路19b以上の通気が行なわれている。
【0012】
そのために、上記炉上流側風箱17aの周方向両側部の分割流路19a,19cから層厚が薄い廃棄物層の幅方向両端部へ供給される一次空気5は、廃棄物層内を通過するのに要する時間、すなわち、廃棄物層内における滞留時間が短く、その保有する乾燥能力が十分に利用されないまま廃棄物層より排気される割合が多くなっているというのが実状である。このため、上記ストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aにおける一次空気5の通排気量が過多になり、排ガス量の増加による排ガス処理設備の大型化、ダイオキシン類の生成につながる排ガス温度の低下や、廃棄物層の幅方向両端部の早期着火によるクリンカの発生等が生じ易くなる虞が懸念される。
【0013】
更に、ストーカ炉本体1は大径で且つ溶接構造物であるため真円に精度良く製作することが難しく、また、回転軸の振れも多少あるため、炉上流側風箱17aの周方向の各分割流路19a,19b,19cのストーカ炉本体1寄りの位置に設けたシール装置20と、ストーカ炉本体1側のシール用フィン21との接触による完全なシール作用を行うことは難しく、このため、炉上流側風箱17aの周方向両側の分割流路19a及び19cでは、ストーカ炉本体1の炉底部より吹き込むべき一次空気5が、カバーケーシング8の方へ漏れ易く、このことによっても廃棄物14の乾燥を行うために供給する一次空気5の通排気量が増加することも懸念される。
【0014】
なお、特許文献2に記載されたものでは、ストーカ炉本体1内における炉上流側風箱17a、炉中間部風箱17b、炉下流側風箱17cと、その各周方向の分割流路19a,19b,19cの上側に存在する廃棄物14の層厚に応じて、供給する一次空気5の分配比を該各風箱17a,17b,17cごと、あるいは各分割流路19a,19b,19cごとに調整するようにしてあるが、これは、ストーカ炉本体1内にて燃え切り点が移動して燃焼が不安定になることを防止するためのものであって、ストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aとなる炉上流側部分において廃棄物14を一次空気5を用いて乾燥させるときに、保有する乾燥能力が十分に利用されないまま廃棄物層を通過して排気されてしまう一次空気5の量を減らす考えについては全く示されていない。しかも、廃棄物14の層厚に応じて周方向の分割流路19a,19b,19cにおける一次空気5の分配比を調整する際、上記各分割流路19a,19b,19cのうちの一部からの一次空気5の供給を停止させる考えは全く示されておらず、示唆されるものでもない。
【0015】
そこで、本発明は、回転ストーカ式焼却炉におけるストーカ炉本体の乾燥ゾーンとなる上流側端部にて、焼却処理すべく供給される被処理物を、風箱から吹き込む一次空気により乾燥させるときに、該乾燥に用いられる一次空気が被処理物の層内を通過するのに要する時間を延長して、該一次空気の有する乾燥能力のうち、被処理物の乾燥に寄与する割合を従来に比して大きくできて、廃棄物の乾燥効率を向上でき、廃棄物の乾燥に用いられる一次空気の通排気量を減少させることができるような回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応して、回転可能に横置きされたストーカ炉本体に上流側から供給される被処理物を、該ストーカ炉本体の回転により撹拌しながら下流側へ移送する間に、風箱から供給される一次空気により乾燥、熱分解、燃焼の過程を経て焼却処分するようにしてある回転ストーカ式焼却炉における炉上流側へ一次空気を供給する風箱を、ストーカ炉本体の周方向に細分化した多数の通気領域を有するものとし、且つ該細分化した各通気領域に送風機より一次空気を導くようにする空気送給ラインに、各通気領域ごとの開閉弁を設けて、上記送風機の能力範囲内で使用する通気領域を周方向外側から順に閉じて行くことができるようにした構成とする。
【0017】
又、上記請求項1に係る発明における炉上流側へ一次空気を供給する風箱を、ストーカ炉本体の周方向に4以上の通気領域に細分化するようにした構成とする。
【0018】
上述した構成において、周方向の各通気領域へ供給される一次空気の総通気量を検出する流量計又は一次空気の圧力を検出する圧力計を空気送給ラインに設け、該流量計又は圧力計から入力される信号に基づいて上記各通気領域ごとの開閉弁へ開閉指令を与える制御装置を備えた構成とする。
【0019】
更に、上記構成における制御装置を、周方向の各通気領域へ供給される一次空気の総通気量が、ストーカ炉本体の炉上流側にて被処理物を乾燥させるために所望される通気量よりも大となる範囲内において、両外側の周方向の通気領域への通気を順次制限できる機能を有してなるものとした構成とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)回転ストーカ式焼却炉における炉上流側風箱を、ストーカ炉本体の周方向に細分化した多数の通気領域、具体的には、ストーカ炉本体の周方向に4以上の通気領域を有するものとし、該細分化した各通気領域にそれぞれ送風機より一次空気を導くようにする空気送給ラインに、各通気領域ごとの開閉弁を設けて、上記送風機の能力範囲内で使用する通気領域を周方向外側から順に閉じて行くことができるようにした構成としてあるので、炉上流側にて一次空気の吹き込みを行う領域を、上記炉上流側風箱の中央部寄りに制限することが可能になる。これにより、ストーカ炉本体の炉上流側部分に滞留している被処理物の層に対しては、層厚の厚い幅方向の中央部に集中して一次空気を吹き込むことができるようになるため、吹き込まれた一次空気が被処理物の層を通過するために要する時間を延長できる。
(2)したがって、上記被処理物の層へ吹き込まれる一次空気は、その保有する乾燥能力のうち、被処理物の乾燥に寄与する割合が従来に比して大となり、このため、ストーカ炉本体の炉上流側部分の乾燥ゾーンにて、被処理物を、従来に比して少ない量の一次空気で効率よく乾燥できる。このため、炉上流側風箱より吹き込んでストーカ炉本体内にて被処理物を乾燥させるために用いる一次空気の通排気量を、従来に比して減少させることができる。
(3)よって、排ガス量を減少させることができて、排ガス処理装置の小型化を図ることができる。又、一次空気の通排気量の減少により、ダイオキシン類の生成につながる排ガス温度の低下や、廃棄物層の幅方向両端部の早期着火によるクリンカの発生等が生じる虞を抑えることができる。更に、被処理物の乾燥効率を向上させることにより、ストーカ炉本体の炉長の短縮化を図ることが可能となって、プラント全体の小型化に寄与することが期待できる。
(4)炉上流側風箱の各通気領域へ供給される一次空気の総通気量を検出する流量計又は一次空気の圧力を検出する圧力計を空気送給ラインに設け、該流量計又は圧力計から入力される信号に基づいて上記各通気領域ごとの開閉弁へ開閉指令を与える制御装置を備えた構成とし、更に、上記制御装置を、上記各通気領域へ供給される一次空気の総通気量が、ストーカ炉本体の炉上流側にて被処理物を乾燥させるために所望される通気量よりも大となる範囲内にて、両外側の周方向の通気領域への通気を順次制限できる機能を有してなるものとした構成とすることにより、炉上流側風箱よりストーカ炉本体の炉上流側にて被処理物を乾燥させるために所望される一次空気の通気量を確保した状態にて、炉上流側風箱より一次空気の吹き込みを行う領域を、該炉上流側風箱の中央部寄りにできるだけ狭くなるよう自動制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1乃至図3(イ)(ロ)(ハ)は本発明の回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置の実施の一形態を示すもので、図4(イ)(ロ)(ハ)に示したと同様に、水管壁構造としてあるストーカ炉本体1をカバーケーシング8内に回転可能に横置きして、入口側より供給される被処理物としての廃棄物14を、ストーカ炉本体1の回転により撹拌しながら炉下流側へ順次移送させ、この移送の間にストーカ炉本体1の下側に位置する風箱16を構成する炉上流側風箱17a、炉中間部風箱17b、炉下流側風箱17cから供給される一次空気5により廃棄物14を乾燥、熱分解、燃焼の過程を経て焼却処理するようにしてある回転ストーカ式焼却炉における上記炉上流側風箱17aを、ストーカ炉本体1の周方向に分割した従来の3つの分割流路19a,19b,19cよりも多い、すなわち、周方向に4つ以上に細分化した通気領域としての周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eを有する構成とする。更に、該各周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eには、送風機25より一次空気5を導くための空気送給ライン26の下流側端部を分岐させて分岐ライン26a,26b,26c,26d,26eとして接続し、該各分岐ライン26a,26b,26c,26d,26eにそれぞれ開閉弁27を個別に備え、細分化した周方向の各分割流路26a,24b,24c,24d,24eを、送風機25の能力範囲内で外側から順に閉じて行くようにして一次空気5を供給できるようにする。
【0023】
上記空気送給ライン26の分岐点よりも上流側位置には、上記炉上流側風箱17aの全体へ供給される一次空気5の量(総通気量)を計測するための流量計28が設けてある。
更に、上記炉上流側風箱17aの全体へ供給される一次空気5の圧力を計測するための圧力計29も設けてある。
【0024】
更に、上記流量計28より入力される信号に基づいて上記各分岐ライン26a,26b,26c,26d,26e上の開閉弁27へ開閉指令を与える制御装置30を備える。その他の構成は図4(イ)(ロ)(ハ)に示したものと同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0025】
上記制御装置30は、図2に制御フローを示すように構成してある。上記送風機25を定格運転して回転ストーカ式焼却炉の運転を開始している状態において、先ず、上記流量計28より入力される信号に基づいて、空気送給ライン26を通して炉上流側風箱17aの全分割流路24a,24b,24c,24d,24eへ供給されている一次空気5の総通気量を所定の時間間隔で定期的に計測する(ステップ1:S1)。
【0026】
次に、上記一次空気5の総通気量の計測値が、ストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aとなる炉上流側部分にて廃棄物14を乾燥させるために予め設定してある所望の通気量(以下、目標通気量という)よりも大となっているか否かを判断する(ステップ2:S2)。
【0027】
上記ステップ2にて上記一次空気5の総通気量の計測値が、上記目標通気量よりも大となっていると判断された場合には、炉上流側風箱17aの各周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eにおける通気中の周方向分割流路のうち、最も外側に位置する両側の周方向分割流路、たとえば、図3(イ)に示す如く、すべての周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eが通気中の場合には、図3(ロ)に示す如く、両側部の周方向分割流路24aと24eに接続されている分岐ライン26aと26e上の開閉弁27へ指令を与えてそれぞれ閉操作して、上記各周方向分割流路24aと24eへの通気を停止させる(ステップ3:S3)。
【0028】
このようにして、通気中であった周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eのうち、一番外側に位置する周方向分割流路24a,24eからの通気が停止されると、一次空気5の通気は中央寄りの周方向分割流路24b,24c,24dに制限されるようになる。これにより、上記炉上流側風箱17aよりストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aとなる炉上流側部分へ一次空気5を吹き込む領域の幅が狭くなることから、一次空気5は、炉底部に滞留している廃棄物層のうち、層厚の厚い幅方向中央部へ集中して供給されるようになる。同時に、一次空気5の吹き込み領域が層厚の厚くなっている廃棄物層の幅方向中央部へ制限されることに伴い、供給される一次空気5の圧力損失が増大し、一次空気5の総通気量が減少するようになる(ステップ4:S4)。
【0029】
よって、その後、再びステップ1へ戻って、一次空気5の総通気量の計測を行った後、ステップ2にて、総通気量計測値と目標通気量との比較を行い、まだ一次空気5の総通気量計測値が目標通気量よりも大となっている場合には、ステップ3により、図3(ハ)に示す如く、通気中の各周方向分割流路24b,24c,24dのうち、最も外側に位置する両側の周方向分割流路24bと24dに接続されている分岐ライン26bと26d上の開閉弁27を閉操作して、上記各周方向分割流路24b,24dへの通気を停止させ、これにより、一次空気5の通気を中央部の幅方向分割流路24cのみに制限する。これにより、上記炉上流側風箱17aよりストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aとなる炉上流側部分へ一次空気5を吹き込む領域の幅は更に狭くなり、一次空気5は、炉底部に滞留している廃棄物層のうち、層厚の厚い幅方向の中央部にのみ集中的に供給されるようになる。同時に、一次空気5の吹き込み領域が層厚の厚くなっている廃棄物層の幅方向中央部のみに制限されることに伴い、供給される一次空気5の圧力損失は更に増大し、一次空気5の総通気量は更に減少するようになる(ステップ4:S4)。
【0030】
一方、上記ステップ3により、炉上流側風箱17aにおける通気中の各周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eのうち、最も外側の周方向分割流路24aと24e(図3(ロ)参照)、あるいは、24bと24d(図3(ハ)参照)への一次空気5の供給を停止させることに伴って、ステップ4で示したように圧力損失の増大による一次空気5の総通気量が減少するときに、ステップ1に戻って計測される一次空気5の総通気量計測値が、ステップ2において目標通気量よりも大となっていないと判断された場合、もしくは、上記のように一次空気5の供給を、炉上流側風箱17aにおける中央部の周方向分割流路24b,24c,24d(図3(ロ)参照)、あるいは、24cのみ(図3(ハ)参照)に制限している状態にて、ストーカ炉本体1へ供給される廃棄物14のごみ質が変化することによって圧力損失の増大が引き起こされて、一次空気5の総通気量が減少し、これにより、ステップ1にて定期的に計測される一次空気5の総通気量計測値が、ステップ2において目標通気量よりも大となっていないと判断された場合には、図3(ロ)から図3(イ)のように、通気中の周方向分割流路24b,24c,24dの両側に隣接する周方向分割流路24aと24eに接続されている分岐ライン26aと26e上の開閉弁27、あるいは、図3(ハ)から図3(ロ)のように、通気中の周方向分割流路24cの両側に隣接する周方向分割流路24bと24dに接続されている分岐ライン26bと26d上の開閉弁27をそれぞれ開操作させて、対応する周方向分割流路24aと24e、あるいは、24bと24dからの通気を再開させる(ステップ5:S5)。
【0031】
このようにして、通気中であった周方向分割流路24b,24c,24d、あるいは、24cの両側に隣接する周方向分割流路24aと24e、あるいは、24bと24dからの通気が再開されると、炉上流側風箱17aよりストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aとなる炉上流側部分へ一次空気5を吹き込む領域の幅が広げられることから、一次空気5は、炉底部に滞留している廃棄物層のうち、層厚のより薄い幅方向の両側へも供給されるようになる。これにより、供給される一次空気5の圧力損失が減少し、一次空気5の総通気量が増加されるようになる(ステップ6:S6)。
【0032】
よって、その後は再びステップ1へ戻って、一次空気5の総通気量の計測を行ってから、上記ステップ2にて総通気量計測値と、目標通気量とを比較し、その結果に応じてステップ3とステップ4、又は、ステップ5とステップ6の手順を繰り返し行わせるようにすることにより、上記炉上流側風箱17aの全体では、目標通気量が確保できる範囲内において、通気される周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eが中央寄りに制限されて、ストーカ炉本体1における乾燥ゾーン1aとなる炉上流側部分へ一次空気5の吹き込まれる領域は、廃棄物層の幅方向の中央部へ集中されるようになる。
【0033】
このように、本発明の回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置によれば、ストーカ炉本体1の炉底部に滞留する廃棄物14の層に対しては、送風機25の定格運転により目標通気量が確保できる範囲内にて、層厚の厚い幅方向の中央部に集中して一次空気5が吹き込まれるようになることから、吹き込まれた一次空気5が廃棄物層を通過するために要する時間が延長される。よって、上記廃棄物層へ吹き込まれた一次空気5は、廃棄物層を通過する間にその保有する乾燥能力が廃棄物14の乾燥のために十分に利用されるようになり、このため、乾燥ゾーン1aでは、廃棄物14が、従来に比して少ない量の一次空気5で効率よく乾燥されるようになる。
【0034】
したがって、炉上流側風箱17aよりストーカ炉本体1内の乾燥ゾーン1aへ廃棄物14を乾燥させるために吹き込む一次空気5の通気量、すなわち、上記乾燥ゾーン1aにおける一次空気5の通排気量を、従来に比して減少させることができる。
【0035】
更に、炉上流側風箱17aの周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eのうち、通気する流路を中央寄りのものに制限することにより、シール装置20とストーカ炉本体1側のシール用フィン21によるシール部にて完全なシール作用を行うことが難しいことに起因して、たとえ、中央寄りの周方向分割流路からその外側へ隣接する周方向分割流路へ、すなわち、たとえば、図3(ロ)に示すように周方向分割流路24b,24c,24dより通気を行っているときに、周方向分割流路24bから24aへ、あるいは、24dから24eへの一次空気5の漏れが生じたり、図3(ハ)に示すように周方向分割流路24cのみ通気を行っているときに、該周方向分割流路24cからその両側の周方向分割流路24b、24dへの一次空気5の漏れが生じたとしても、カバーケーシング8側まで達する虞を抑制でき、このことによっても、一次空気5の通排気量を従来に比して抑えることが可能になる。
【0036】
このため、排ガス量を減少させることができて、排ガス処理装置の小型化を図ることができる。又、一次空気5の通排気量の減少により、ダイオキシン類の生成につながる排ガス温度の低下や、廃棄物層の幅方向両端部の早期着火によるクリンカの発生等が生じる虞を抑えることができる。更に、乾燥ゾーン1aにおける廃棄物14の乾燥効率を向上させることができることから、ストーカ炉本体1の炉長の短縮化を図ることが可能となって、プラント全体の小型化に寄与することが期待できる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、風箱16における炉上流側風箱17aは、ストーカ炉本体1の周方向に対して5分割した周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eを有するものとして示したが、ストーカ炉本体1の周方向に4分割以上で且つストーカ炉本体1を構成する各水管4の間隔ごとになるまでの間であれば、ストーカ炉本体1の周方向に任意の分割数に設定してよい。
【0038】
制御装置30により炉上流側風箱17aの各周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eに対して幅方向外側から順に通気の開始又は停止を行わせる制御は、空気送給ライン26上の流量計28にて検出される上記炉上流側風箱17aへの一次空気5の総通気量が、ストーカ炉本体1の乾燥ゾーン1aとなる炉上流側部分にて廃棄物14を乾燥させるために要求される目標通気量よりも大となっているか否かを基準として判断するものとして示したが、上記空気送給ライン26上の圧力計29により送風機25より炉上流側風箱17aへ供給される一次空気5の圧力を検出し、該検出される圧力が上記送風機25の能力を越えない範囲(所望の一次空気5の総通気量が得られる圧力範囲)に収まるように、上記各周方向分割流路24a,24b,24c,24d,24eへの通気の開始、停止を制御するようにしてもよい。
【0039】
空気送給ライン26の所要位置に、炉上流側風箱17a全体へ供給する一次空気量5を調整するための流量調整弁を設けると共に、上記空気送給ライン26における該流量調整弁よりも上流側位置に、炉中間部風箱17b及び炉下流側風箱17cへそれぞれ一次空気5を供給するための流量調整弁付きの空気送給ラインを分岐させて設けて、一台の送風機25より風箱16の長手方向の各風箱17a,17b,17cへ一次空気5を供給させるようにしてもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置の実施の一形態を示すもので、炉上流側風箱の概略切断正面図である。
【図2】図1の装置における制御装置の制御フローを示す図である。
【図3】図1の装置による炉上流側風箱における各周方向分割流路の一次空気の通気と通気停止の操作状態を示すもので、(イ)はすべての周方向分割流路より通気している状態を、(ロ)は両側部の周方向分割流路からの通気を停止して、炉上流側風箱における中央寄りの部分から通気を行っている状態を、(ハ)は中央部の周方向分割流路のみから通気を行っている状態を、それぞれ示す図1に対応する図である。
【図4】回転ストーカ式焼却炉の概要を示すもので、(イ)は切断側面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視拡大図、(ハ)は(ロ)のB部の拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ストーカ炉本体
5 一次空気
14 廃棄物(被処理物)
17a 炉上流側風箱(風箱)
24a,24b,24c,24d,24e 周方向分割流路(通気領域)
25 送風機
26 空気送給ライン
26a,26b,26c,26d,26e 分岐ライン(空気送給ライン)
27 開閉弁
28 流量計
29 圧力計
30 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に横置きされたストーカ炉本体に上流側から供給される被処理物を、該ストーカ炉本体の回転により撹拌しながら下流側へ移送する間に、風箱から供給される一次空気により乾燥、熱分解、燃焼の過程を経て焼却処分するようにしてある回転ストーカ式焼却炉における炉上流側へ一次空気を供給する風箱を、ストーカ炉本体の周方向に細分化した多数の通気領域を有するものとし、且つ該細分化した各通気領域に送風機より一次空気を導くようにする空気送給ラインに、各通気領域ごとの開閉弁を設けて、上記送風機の能力範囲内で使用する通気領域を周方向外側から順に閉じて行くことができるようにしたことを特徴とする回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置。
【請求項2】
炉上流側へ一次空気を供給する風箱を、ストーカ炉本体の周方向に4以上の通気領域に細分化するようにした請求項1記載の回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置。
【請求項3】
周方向の各通気領域へ供給される一次空気の総通気量を検出する流量計又は一次空気の圧力を検出する圧力計を空気送給ラインに設け、該流量計又は圧力計から入力される信号に基づいて上記各通気領域ごとの開閉弁へ開閉指令を与える制御装置を備えた請求項1又は2記載の回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置。
【請求項4】
制御装置を、周方向の各通気領域へ供給される一次空気の総通気量が、ストーカ炉本体の炉上流側にて被処理物を乾燥させるために所望される通気量よりも大となる範囲内において、両外側の周方向の通気領域への通気を順次制限できる機能を有してなるものとした請求項3記載の回転ストーカ式焼却炉の一次空気供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−57936(P2006−57936A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241156(P2004−241156)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】