説明

回転ドアの支持構造及び薄型表示装置並びに電子機器

【課題】スロット部を覆う回転ドアを、組立後は容易に外れないようにする。
【解決手段】回転ドア2の一方の支軸23の半径方向外側のアーム21に部分ピニオン25を突設し、部分ピニオン25と、筐体3側に配設したダンパー機構7の外周のピニオン8を噛合して回転ドア2の閉鎖時の回動速度を減速する回転ドアの支持構造において、アーム21の外側の筐体3上にブラケット37を突設し、ブラケット37の頂部に板金製のフレーム6の水平部6aを固着し、水平部6aのアーム21側を垂直下方へ折曲してその途中にダンパー機構7を保持し、垂直部6bの下端を水平部6aと反対方向水平に折曲して水平部6cとし、水平部6cの先端を上方へ折曲して、折曲部6dをアーム21の背面に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリカードの挿入スロット等を覆う回転ドアの支持構造及びその回転ドアを備えた薄型表示装置並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メモリカードを使用する電子機器におけるメモリカードの挿入スロットの構造としては、特許文献1に記載のものがある。これは挿入方向を水平にしたスロット口に、フラップドアと称される蓋が閉じ方向に付勢されて軸支されており、メモリカードを挿入したときに、その蓋がメモリカードの先端に押されて内側に回動して開く。また、メモリカードが抜き取られたときには、蓋がばね力で戻りスロット口を閉じ、スロット口からのゴミ等の異物の侵入を防止することができる。
【特許文献1】実開平7−36252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、薄型テレビに設けられたメモリカードの挿入スロットを覆う回転ドアの支持構造としては、図3〜図7および図11のように構成されることがある。図3〜図7に示されるように、メモリカードの挿入スロット4を、薄型テレビの背面側の筐体3の上端角部に配設し、その挿入スロット4への異物進入を防ぐために、挿入スロット4の上方が回転ドア2により覆われている。この回転ドア2は、筐体3の背面側への回動が可能である。
【0004】
筐体3には、図4に示されるように、挿入スロット4が形成され、その挿入スロット4の長手方向延長上の筐体3の内側に、回転ドア2のアーム21,22が挿入される鞘部31,32が突設されている。この鞘部31,32に、筐体3の外側から回転ドア2のアーム21,22が挿入される。また、筐体3の内側の鞘部31,32の延長上には、筐体3からブラケット33,34が突設されて、そのブラケット33,34の先端部に形成された軸孔35,36に、アーム21,22の先端近くの外側に突設された支軸23,24が嵌合される。
【0005】
この回転ドア2のアーム21,22を、ブラケット33,34に装着する場合は、支軸23,24の部分を互いに内側に押圧して、アーム21,22を弾性変形させて、ブラケット33,34の軸孔35,36に内側から嵌合させていた。また、支軸23の外側上方には、図7に示されるように、アーム21と一体に、円弧状に部分ピニオン25が形成されている。さらに、支軸23の基端側大径部の外周には、回転ドア2を閉じ方向に付勢するねじりコイルばね26が嵌着されている。ねじりコイルばね26の一端はアーム21側に係止され、他端が筐体3に押圧される。
【0006】
支軸23,24が軸孔35,36に嵌合されると、次に、図5および図11に示されるように、ブラケット33の側方に突設されたブラケット37に、L字形に折曲された金属板からなるフレーム5が取り付けられる。フレーム5は、ブラケット37の上端に突設された1対の凸部38に、孔が嵌合されることで上部が位置決めされ、下端が溝37aに嵌合されることで下部が位置決めされる。ここで、ブラケット37の上端のビス孔39にビスを螺合することで、フレーム5はブラケット37に固定される。
【0007】
フレーム5の側面には、流体機構により回転速度を一定値以下に制限するダンパーが設けられ、そのダンパー外周にピニオン51が嵌着されている。このピニオン51がアーム21側の部分ピニオン25に噛合される。その結果、回転ドア2が手によって開放操作されてから、手が離されると、ねじりコイルばね26のばね力により、回転ドア2は閉じ方向に回動を開始するが、ピニオン51により回動速度が一定速度以下に制限されて、急激に閉じられることが防止される。
【0008】
これらの回転ドア2の組立作業は、筐体3がまだ閉じられていない、開放状態で行われるため容易に行える作業である。しかしながら、筐体3が、いったん組付けられて閉じた後に、調整等のために、メモリカードの挿入スロット4に、作業者が手を挿入して、作業をすることがある。このとき、回転ドア2は、開放されるが、その操作の際に、回転ドア2の長手方向に不当な外力が加えられると、回転ドア2のアーム21,22が変形して、支軸23,24の一方が、軸孔35,36のいずれかから抜け出て、回転ドア2が筐体3から外れてしまうことがあった。
【0009】
いったん、回転ドア2が筐体3から外れてしまうと、筐体3の外側から、回転ドア2のアーム21,22を鞘部31,32に挿入しただけでは、アーム21,22を内側へ弾性変形させて、支軸23,24を軸孔35,36の位置に合わせをし、さらに、ピニオン51に部分ピニオン25を噛合させることができないため、回転ドア2を装着することは不可能であった。そのため、その場合は、筐体3をいったん取り外して開放し、筐体3の内側から装着しなければならず、そのための作業が、組立調整工程での大きなロスとなっていた。そこで、本発明は、回転ドアを筐体に組み込んだ後には、調整作業等の際に、簡単に外れないようにして、組立工程での作業ロスを低減することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る回転ドアの支持構造は、回動軸の両端の外側または内側に支軸を突設した断面コ字形の回転ドアを、前記支軸部分を内側または外側に押圧変形させながら軸孔に挿入嵌合させる回転ドアの支持構造において、少なくとも一方の支軸と軸孔の嵌合部分であって、支軸の基端部の背面に、支軸の軸方向の後退を阻止する突起を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る回転ドアの支持構造は、筐体に形成された開口部を回動自在に覆う回転ドアの両端内側に突設され1対のアームの先端外側に突設された支軸を、前記アームを内側に弾性変形させながら、筐体内側に突設された1対のブラケットに形成された軸孔に挿入嵌合する回転ドアの支持構造において、前記一方の支軸の基端部の背面に、支軸の軸方向の後退を阻止する突起を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る回転ドアの支持構造は、筐体に形成された開口部を回動自在に覆う回転ドアの両端内側に突設され1対のアームの先端外側に突設された支軸を、前記アームを内側に弾性変形させながら、筐体内側に突設された1対のブラケットに形成された軸孔に挿入嵌合するとともに、前記一方の支軸の半径方向外側のアームにピニオンの一部を突設し、該ピニオンと筐体側に配設したダンパー機構のピニオンとを噛合して回転ドアの閉鎖時の回動速度を減速する回転ドアの支持構造において、前記一方の支軸側のアームの回動軸方向外側の筐体に第3のブラケットを突設し、該第3ブラケットの頂部に板金製のフレームの第1の水平部を固着し、該第1水平部のアーム側を垂直下方へ折曲してその途中に前記ダンパー機構を保持し、該フレームの垂直部の下端を前記第1水平部と反対方向水平に折曲して第2の水平部とし、該第2水平部の先端を上方へ折曲して、該折曲部を前記一方の支軸側のアーム背面に配置したことを特徴とする。
【0013】
ここで、前記フレームの第2水平部は、前記一方の支軸側の軸孔が形成されたブラケットの基端部を回避して前記一方の支軸側のアーム先端側へ延設することが好ましい。また、前記一方の支軸側のアーム背面に配置された折曲部は、前記一方の支軸の背面に位置していることが好ましい。
【0014】
なお、前記回転ドアの支持構造は、メモリカードのスロット部に備えた薄型表示装置に適用可能であり、さらには、電子機器にも適用可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように本発明によれば、回転ドアにおける支軸の基端部の背面に、支軸の軸方向の後退を阻止する突起を設けたことで、回転ドアの支軸部分に、支軸が抜け出る方向に外力が加わった場合、支軸の背面部が突起に当接して支軸が軸孔から抜け出ることが阻止されて、回転ドアが外れることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明を薄型テレビのメモリカードのスロット部を覆う回転ドアに適用した場合の外観図であり、図2は図1の平面図である。図1および図2に示されるように、薄型テレビは、放送信号等を表示するための画像表示部11、画像表示部11を表示部以外で覆うように配置された筐体12、放送信号等のうち音声情報を送出するためのスピーカを内蔵し画面の左右に配置されたスピーカーボックス13、メモリカード15を挿入するためのスロット部14、これら一連の部材を一体的に支持するスタンド16から主に構成される。
【0017】
図3は、図2のスロット部14を斜め上方から見た斜視図である。スロット部14は、筐体12の背面側の筐体3の上端の角部に配設され、異物進入を防ぐために、回転ドア2により覆われている。この回転ドア2は、メモリカード15の挿抜の際、背面側への回動が可能である。図4は図3における筐体3の内側を示す分解斜視図であり、図5は図4の筐体3を拡大して示した斜視図であり、図6は図5の横断面図であり、図7は回転ドア2の単体を示す斜視図である。また、図8〜図9は、回転ドア2の一方の支軸側の組立てた状態を示す斜視図である。
【0018】
図4および図5に示されるように、筐体3には、挿入スロット4が形成され、その挿入スロット4の長手方向延長上の筐体3の内側に、回転ドア2のアーム21,22が挿入される鞘部31,32が突設されている。この鞘部31,32に、筐体3の外側から回転ドア2のアーム21,22が挿入される。また、筐体3の内側の鞘部31,32の延長上には、筐体3からブラケット33,34が突設されて、そのブラケット33,34の先端部に形成された軸孔35,36に、アーム21,22の先端近くの外側に突設された支軸23,24が嵌合される。
【0019】
この回転ドア2のアーム21,22を、ブラケット33,34に装着する場合は、支軸23,24の部分を互いに内側に押圧して、アーム21,22を弾性変形させて、ブラケット33,34の軸孔35,36に内側から嵌合させる。また、支軸23の外側上方には、図7に示されるように、アーム21と一体に、円弧状に部分ピニオン25が形成されている。さらに、支軸23の外側には、回転ドア2を閉じ方向に付勢するねじりコイルばね26が嵌着されている。ねじりコイルばね26の一端はアーム21側に係止され、他端が筐体3に押圧される。
【0020】
支軸23,24が軸孔35,36に嵌合されると、次に、図8〜図10に示されるように、ブラケット33の側方に突設されたブラケット37の先端に、金属板からなるフレーム6の水平部6aがビス止め(図示せず)により取り付けられる。水平部6aの右端が下方へ垂直に折曲されて、その垂直部6bの側面に、流体機構により回転速度を一定値以下に制限するダンパー7が設けられ、そのダンパー7の側面にピニオン8が嵌着されている。このピニオン8がアーム21側の部分ピニオン25に噛合される。その結果、回転ドア2が手によって開放操作されてから、手が離されると、ねじりコイルばね26のばね力により、回転ドア2は閉じ方向に回動を開始するが、部分ピニオン25がピニオン8に制動されて、回動速度が一定速度以下に制限され、急激に閉じられることが防止される。
【0021】
垂直部6bの下端は、ブラケット33,37が突設されている筐体3の面上で、右側に水平に折曲されるとともに、その水平部6cはブラケット33の基端部を回避するために、図8に示されるように、手前側に延設されている。水平部6cの右端は、アーム21の右側面の外側の位置で上方に折曲されて、垂直部6dが形成されている。垂直部6dの右端部は、図10に示されるように、上方へ突出して、その中心部のマーク6eの部分が、アーム21の左側面に突出されている支軸23の背面に位置している。
【0022】
このようにアーム21の支軸23の背面となる位置に、フレーム6の垂直部6dを近接して配設したことで、回転ドア2を装着した後、調整等のために回転ドア2が開閉操作され、アーム21に支軸23が抜ける方向に外力が加わっても、支軸23の背面に垂直部6dがあるため、支軸23は、アーム21の背面が垂直部6dに当接するまでの距離しか軸方向に移動できず、軸孔35から抜け出ることが阻止される。
【0023】
なお、フレーム6の組立順番は、アーム21の支軸23が、ブラケット33の軸孔35に嵌合された後、アーム21側の部分ピニオン25に、フレーム6側のピニオン8を噛合させた後、フレーム6をブラケット37にビス止めする。また、図示例は、回転ドア2のアーム21,22の先端外側に、支軸23,24を突設していたが、内側へ突設した場合も同様に構成することが可能である。また、本発明は、薄型テレビ等の薄型表示装置以外にも、回転ドアを備えた電子機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、メモリカードのスロット部を備えた薄型表示装置以外に、他の電子機器にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を薄型表示装置に適用した場合の外観図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2のスロット部を斜め上方から見た斜視図である。
【図4】図3における筐体の内側を示す分解斜視図である。
【図5】図4の筐体を拡大して示した斜視図である。
【図6】図5の横断面図である。
【図7】回転ドアの単体を示す斜視図である。
【図8】回転ドアの一方の支軸側の組立てた状態を示す斜視図である。
【図9】回転ドアの一方の支軸側の組立てた状態を示す斜視図である。
【図10】回転ドアの一方の支軸側の組立てた状態を示す斜視図である。
【図11】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
2 回転ドア
3 筐体
4 挿入スロット
6 フレーム
6a 水平部
6b 垂直部
6c 水平部
6d 垂直部
6e マーク
7 ダンパー
8 ピニオン
11 画像表示部
12 筐体
13 スピーカーボックス
14 スロット部
15 メモリカード
16 スタンド
21,22 アーム
23,24 支軸
25 部分ピニオン
26 ねじりコイルばね
31,32 鞘部
33,34 ブラケット
35,36 軸孔
37 ブラケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸の両端の外側または内側に支軸を突設した断面コ字形の回転ドアを、前記支軸部分を内側または外側に押圧変形させながら軸孔に挿入嵌合させる回転ドアの支持構造において、
少なくとも一方の支軸と軸孔の嵌合部分であって、支軸の基端部の背面に、支軸の軸方向の後退を阻止する突起を設けたことを特徴とする回転ドアの支持構造。
【請求項2】
筐体に形成された開口部を回動自在に覆う回転ドアの両端内側に突設され1対のアームの先端外側に突設された支軸を、前記アームを内側に弾性変形させながら、筐体内側に突設された1対のブラケットに形成された軸孔に挿入嵌合する回転ドアの支持構造において、
前記一方の支軸の基端部の背面に、支軸の軸方向の後退を阻止する突起を設けたことを特徴とする回転ドアの支持構造。
【請求項3】
筐体に形成された開口部を回動自在に覆う回転ドアの両端内側に突設され1対のアームの先端外側に突設された支軸を、前記アームを内側に弾性変形させながら、筐体内側に突設された1対のブラケットに形成された軸孔に挿入嵌合するとともに、前記一方の支軸の
半径方向外側のアームにピニオンの一部を突設し、該ピニオンと筐体側に配設したダンパ
―機構のピニオンとを噛合して回転ドアの閉鎖時の回動速度を減速する回転ドアの支持構造において、
前記一方の支軸側のアームの回動軸方向外側の筐体に第3のブラケットを突設し、該第3ブラケットの頂部に板金製のフレームの第1の水平部を固着し、該第1水平部のアーム側を垂直下方へ折曲してその途中に前記ダンパー機構を保持し、該フレームの垂直部の下端を前記第1水平部と反対方向水平に折曲して第2の水平部とし、該第2水平部の先端を上方へ折曲して、該折曲部を前記一方の支軸側のアーム背面に配置したことを特徴とする回転ドアの支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の回転ドアの支持構造において、
前記フレームの第2水平部は、前記一方の支軸側の軸孔が形成されたブラケットの基端部を回避して前記一方の支軸側のアーム先端側へ延設したことを特徴とする回転ドアの支持構造。
【請求項5】
請求項3または4に記載の回転ドアの支持構造において、
前記一方の支軸側のアーム背面に配置された折曲部は、前記一方の支軸の背面に位置していることを特徴とする回転ドアの支持構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の回転ドアの支持構造をメモリカードのスロット部に備えたことを特徴とする薄型表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の回転ドアの支持構造を有することを特徴とした電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−78254(P2008−78254A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253736(P2006−253736)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】